(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】記録装置、記録方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019236751
(22)【出願日】2019-12-26
(62)【分割の表示】P 2019153800の分割
【原出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】595140170
【氏名又は名称】東京海上日動火災保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100209794
【氏名又は名称】三瓶 真弘
(72)【発明者】
【氏名】沓沢 一晃
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059559(JP,A)
【文献】特開2013-161238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃に基づいて映像を記録する記録装置であって、
車両の加速度を示す加速度デー
タを取得する
加速度データ取得部と、
前記
加速度データ取得部で取得した前記加速
度が、複数の事故種別の各々に対応する判定基準のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、映像を記録すべき衝撃が生じたと判定する判定部と、
を
備え、
前記判定部は、前後方向の前記加速度の大きさの最大値と、上下方向の前記加速度の大きさの最大値との合計値が、所定閾値より大きく、かつ、前後方向の前記加速度の大きさの最大値が計測された時刻と、上下方向の前記加速度の大きさの最大値が計測された時刻とが所定期間内に存在する場合に、前記複数の事故種別のうち一の事故種別に対応する判定条件を満たすと判定する、記録装置。
【請求項2】
前記複数の事故種別には、第1事故種別、第2事故種別及び
前記一の事故種別である第3事故種別が含まれており、
前記判定部は、
前記第1事故種別に対応する判定条件、
前記第2事故種別に対応する判定条件、及び、
前記第3事故種別に対応する判定条件のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、前記衝撃が生じたと判定する、
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記判定部は、同一時刻における左右方向の前記加速度の大きさと、前後方向の前記加速度の大きさとの合計値が、第2閾値より大きい場合に、前記第2事故種別に対応する判定条件を満たすと判定する、
請求項
2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記判定部は、更に
、上下方向の前記加速度の大きさが第5閾値を超える場合であって、かつ、上下方向の前記加速度の大きさが、上下方向の前記加速度の大きさと左右方向又は前後方向の前記加速度の大きさと
の合
計値の所定割合以下である場合
、前記衝撃が生じたと判定する、
請求項2
又は3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記判定部は、所定の判定期間における左右方向の
前記加速度の大きさ及び前後方向の
前記加速度の大きさの合計値が所定の範囲内である場合、前記衝撃が生じたと判定しない、
請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
衝撃に基づいて映像を記録する記録装置が行う記録方法であって、
車両の加速度を示す加速度デー
タを取得するステップと、
取得した前記加速
度が、複数の事故種別の各々に対応する判定基準のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、映像を記録すべき衝撃が生じたと判定するステップと、
を
備え、
前記判定するステップは、前後方向の前記加速度の大きさの最大値と、上下方向の前記加速度の大きさの最大値との合計値が、所定閾値より大きく、かつ、前後方向の前記加速度の大きさの最大値が計測された時刻と、上下方向の前記加速度の大きさの最大値が計測された時刻とが所定期間内に存在する場合に、前記複数の事故種別のうち一の事故種別に対応する判定条件を満たすと判定する、記録方法。
【請求項7】
衝撃に基づいて映像を記録するコンピュータに、
車両の加速度を示す加速度デー
タを取得するステップと、
取得した前記加速
度が、複数の事故種別の各々に対応する判定基準のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、映像を記録すべき衝撃が生じたと判定するステップと、
を実行させるためのプログラム
であって、
前記判定するステップは、前後方向の前記加速度の大きさの最大値と、上下方向の前記加速度の大きさの最大値との合計値が、所定閾値より大きく、かつ、前後方向の前記加速度の大きさの最大値が計測された時刻と、上下方向の前記加速度の大きさの最大値が計測された時刻とが所定期間内に存在する場合に、前記複数の事故種別のうち一の事故種別に対応する判定条件を満たすと判定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、記録方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車が走行している間、進行方向等の映像を例えば常時記録しておくことが可
能なドライブレコーダと呼ばれる車載カメラが提供されている。ドライバーは、自身が運
転する自動車にドライブレコーダを取り付けておくことで、事故発生時の状況説明や事故
が生じた原因の推定等に役立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本来、ドライブレコーダが記録すべき映像は、事故発生時の映像である。しかしながら
、現在提供されているドライブレコーダは、基本的に、単純に加速度の値が閾値を超えた
タイミングで、そのタイミングの前後の映像を記録するものが多い。そのため、単なる車
両操作が行われたタイミングや、車両に何らかの振動が生じたタイミングなど、事故とは
関係のないタイミングで映像が記録されてしまうことが多い。
【0005】
そこで、本発明は、映像を記録すべき衝撃の発生有無をより高精度に検出することを可
能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る記録装置は、衝撃に基づいて映像を記録する記録装置であって、車両の加速度を示す加速度データを取得する加速度データ取得部と、加速度データ取得部で取得した加速度が、複数の事故種別の各々に対応する判定基準のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、映像を記録すべき衝撃が生じたと判定する判定部と、を備え、判定部は、前後方向の加速度の大きさの最大値と、上下方向の加速度の大きさの最大値との合計値が、所定閾値より大きく、かつ、前後方向の加速度の大きさの最大値が計測された時刻と、上下方向の加速度の大きさの最大値が計測された時刻とが所定期間内に存在する場合に、複数の事故種別のうち一の事故種別に対応する判定条件を満たすと判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、映像を記録すべき衝撃の発生有無をより高精度に検出することを可能
にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るドライブレコーダの構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るドライブレコーダの機能ブロック構成例を示す図である。
【
図4】衝撃の有無を判定する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】加速度センサにて検出された加速度の一例を示す図である。
【
図6】加速度センサにて検出された加速度の一例を示す図である。
【
図7】付則条件2の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一
の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<装置構成>
図1は、本実施形態に係るドライブレコーダ10の構成例を示す図である。ドライブレ
コーダ10は、プロセッサ11、メモリ12、入力デバイス13、出力デバイス14、撮
影装置15、加速度センサ16、GPSモジュール17及び記憶媒体18を有する。
【0011】
入力デバイス13は、例えば、操作ボタン、タッチパネル及びマイク等である。出力デ
バイス14は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。撮影装置15は、ド
ライブレコーダ10の前方を撮影するカメラである。撮影装置15には、更に、車両の後
方を撮影するカメラが含まれていてもよい。加速度センサ16は、ドライブレコーダ10
の前後方向、左右方向及び上下方向の加速度を測定するセンサである。GPSモジュール
17は、GPS衛星の電波を受信してドライブレコーダ10の現在位置を測定するセンサ
である。ドライブレコーダ10は、GPSモジュール17を用いて測定した現在位置の移
動速度に基づいて、ドライブレコーダ10が搭載された車両の車速データを取得すること
ができる。記憶媒体18は、SDカード等の不揮発性メモリであり、撮影装置15で撮影
された映像が記録される。記憶媒体18は取り外し可能であってもよい。
【0012】
図2に、ドライブレコーダ10の一例を示す。ドライブレコーダ10の正面には、撮影
装置15のレンズが設けられている。固定部20は、車両のフロントガラスにドライブレ
コーダ10を固定するための土台である。加速度センサ16が測定する前後方向の加速度
は、X軸方向の加速度に該当する。同様に、左右方向の加速度は、Y軸方向の加速度に該
当し、上下方向の加速度は、Z軸方向の加速度に該当する。
【0013】
なお、
図1に示すハードウェア構成は一例に過ぎず、本実施形態に係るドライブレコー
ダ10のハードウェア構成は
図1に示すハードウェア構成に限定されない。例えば、更に
、車載コンピュータから出力される車速データを入力可能なインタフェースを備えていて
もよいし、無線による通信を行うための通信IFを備えていてもよい。また、GPSモジ
ュール17等の一部のハードウェアが省略されていてもよい。
【0014】
本実施形態に係るドライブレコーダ10(記録装置)は、ドライブレコーダ10が取り
付けられた車両の加速度及び車速を取得し、取得した加速度及び車速に基づいて、映像を
記録すべき衝撃が生じたか否かを判定する。また、映像を記録すべき衝撃が生じた場合、
衝撃が生じたと判定したタイミングの前後の映像データを記録する。
【0015】
<機能ブロック構成>
図3は、本実施形態に係るドライブレコーダ10の機能ブロック構成例を示す図である
。ドライブレコーダ10は、記憶部100と、取得部101と、判定部102と、記録部
103とを含む。記憶部100は、ドライブレコーダ10が備えるメモリ12及び/又は
記憶媒体18を用いて実現することができる。また、取得部101と、判定部102と、
記録部103とは、ドライブレコーダ10のプロセッサ11が、メモリ12に記憶された
プログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶
媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み
取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であって
もよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-R
OM等の記憶媒体であってもよい。
【0016】
記憶部100は、判定部102が事故の有無を判定する際に用いる各種の判定基準デー
タと、撮影装置15で撮影された映像である映像データとを格納する。
【0017】
取得部101は、加速度センサ16で測定された加速度データと車両の車速を示す車速
データとを取得する機能を有する。
【0018】
判定部102は、取得部101にて取得された加速度及び車速が、判定基準データに含
まれる複数の事故種別の各々に対応する判定基準のうち、少なくともいずれか一つに該当
する場合に、映像を記録すべき衝撃が生じたと判定する機能を有する。より具体的には、
判定部102は、取得部101にて取得された加速度及び車速が、小事故(第1事故種別
)に対応する判定条件、中事故(第2事故種別)に対応する判定条件、及び、大事故(第
3事故種別)に対応する判定条件のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、映
像を記録すべき衝撃が生じたと判定する。
【0019】
小事故とは、車両に加わる衝撃が小さい事故であり、例えば、車と人との衝突事故及び
概ね10km以下程度の極低速での衝突事故や、実際に衝突に至らないまでもドライバー
が急ブレーキをかけて車両を停車させたような状態を想定している。中事故とは、車両に
加わる衝撃が中程度の事故であり、例えば、衝突時の速度が10km~20km程度の事
故を想定している。大事故とは、エアバックが開放するレベルの事故であり、例えば、衝
突時の速度が20km以上の事故を想定している。
【0020】
なお、小事故、中事故及び大事故の定義は一例にすぎず、本実施形態が、これに限定さ
れるものではない。また、小事故、中事故及び大事故の定義を説明する際に用いた衝突時
の速度は、説明の都合上、衝撃の大きさをイメージし易くするために用いたに過ぎず、こ
れに限定されるものではない。本実施形態は、小事故、中事故及び大事故という3段階の
分類に限定されず。車両に加わる衝撃の大きさによって、更に多くの事故種別に分類され
てもよい。
【0021】
記録部103は、判定部102にて映像を記録すべき衝撃が生じたと判定された場合、
当該判定されたタイミングの前後の時間に撮影装置15で撮影された映像データを、記録
映像データとして記憶部100に記録する。
【0022】
<処理手順>
図4は、ドライブレコーダ10が衝撃の有無を判定する際の処理手順の一例を示すフロ
ーチャートである。判定部102は、ドライブレコーダ10の電源がONである間、
図4
に示すステップS10~ステップS18までの処理手順を繰り返し行うことで、衝撃の有
無を判定する。
【0023】
ステップS10で、取得部101は加速度データを取得する。より具体的には、取得部
101は、加速度センサ16により測定された、前後方向、左右方向及び上下方向の加速
度データを取得する。また、取得部101は、GPSモジュールで取得されたドライブレ
コーダ10の位置(すなわち車両の位置)の時間変化に基づいて算出される、ドライブレ
コーダ10の移動速度(すなわち車両の移動速度)を取得する。なお、取得部101は、
ドライブレコーダ10に車載コンピュータから出力される車速データが入力されている場
合、入力された当該車速データを取得するようにしてもよい。より正確な車速データを取
得することができる。
【0024】
なお、加速度センサ16からの出力値は、実際にドライブレコーダ10に加わる加速度
とは反対方向の加速度である。例えば、ドライバーが急ブレーキを踏むことで、ドライブ
レコーダ10に0.6Gの減速Gがかかったとする。この場合、加速度センサ16からは
、前方向(X方向)に0.6Gの加速度が生じたことを示すデータが出力される。以下の
説明では、
図5及び
図6に示す具体例の説明を除き、加速度や減速度とは、加速度センサ
16からの出力値ではなく、ドライブレコーダ10に生じた加速度や減速度を意味するも
のとする。また、減速度とは、負の加速度を意味するものとする。
【0025】
ステップS11で、判定部102は、取得した加速度が、小事故に該当する判定基準に
合致するか否かを判定する。合致する場合はステップS14に進み、合致しない場合はス
テップS12に進む。具体的には、判定部102は、前後方向の加速度の大きさについて
所定期間(第1期間)の移動平均値を算出し、算出した移動平均値が所定閾値(第1閾値
)より大きく、かつ、車速の減速度が所定の減速度(第1減速度)以上であることを検出
した場合、小事故に対応する判定基準を満たすと判定する。
【0026】
図5のAに、事故を察知したドライバーが急ブレーキを踏んで停止した場合に、加速度
センサ16にて検出された加速度の一例を示す。また、
図5のBに、車両が段差を乗り越
えた場合に、加速度センサ16にて検出された加速度の一例を示す。縦軸は前後方向の加
速度を示し、横軸は時間を示す。期間P1は、移動平均値を算出する所定期間(第1期間
)を示す。閾値P2は、所定閾値(第1閾値)を示す。グラフAC1及びAC2は、前後
方向加速度であり、グラフMA1及びMA2は、前後方向加速度の移動平均値である。所
定期間(第1期間)は、例えば0.5秒等であってもよいが、これに限定されるものでは
ない。また、所定閾値(第1閾値)は、例えば0.5~0.7G程度であってもよいが、
これに限定されるものではない。
【0027】
図5のAの例では、前後方向の加速度の移動平均値MA1が、時刻t1のタイミングで
閾値P2を上回っている。従って、判定部102は、時刻t1のタイミングで、加速度に
ついて小事故に該当する判定基準に合致すると判定する。一方、
図5のBの例では、前後
方向の加速度の移動平均値MA2が閾値P2を上回っていることはない。従って、判定部
102は、小事故に該当する判定基準に合致していないと判定する。
図4に戻り説明を続
ける。
【0028】
判定部102は、移動平均値が所定閾値(第1閾値)よりも大きくなった時刻t1のタ
イミングの前後の所定時間(第2期間)において、車速の減速度が所定の減速度(第1減
速度)以上であるか否かを判定するようにしてもよい。所定時間(第2期間)は、例えば
2秒や3秒といった時間長であってもよいが、これに限定されるものではない。また、判
定部102は、当該時刻t1のタイミングを、映像を記録すべき衝撃が生じたタイミング
であるとして、記録部103に対して当該タイミングの前後の映像データを記録するよう
に指示してもよい。
【0029】
前述した通り、小事故とは、車と人との衝突事故及び極低速での衝突事故や、事故に至
らないまでもドライバーが急ブレーキをかけて停車した状態を想定している。加速度の大
きさの移動平均値が所定閾値(第1閾値)であり、かつ減速度が所定の減速度以上である
場合に小事故であると検出するようにしたことで、道路の微細な振動により小事故である
と誤って判定してしまうことを防止することが可能になる。
【0030】
また、ドライバーが急ブレーキをかけたことを、前後方向の加速度の大きさではなく減
速度を利用することで、減速度をより正確に判定することが可能になる。
【0031】
ステップS12で、判定部102は、加速度及び車速データが、中事故に該当する判定
基準に合致するか否かを判定する。合致する場合はステップS14に進み、合致しない場
合はステップS13に進む。具体的には、判定部102は、同一時刻における左右方向の
加速度の大きさと前後方向の加速度の大きさとを合計し、合計値が所定閾値(第2閾値)
より大きい場合に、中事故に対応する判定条件を満たすと判定する。所定閾値(第2閾値
)は、例えば2~4G程度であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
判定部102は、合計値が所定閾値(第2閾値)より大きくなった時刻t2のタイミン
グを、映像を記録すべき衝撃が生じたタイミングであるとして、記録部103に対して当
該タイミングの前後の映像データを記録するように指示してもよい。
【0033】
中事故に対応する判定基準では、左右方向及び前後方向の加速度を合成し、その合成値
が一定値を超えたか否かを検知するようにしている。これは、中事故は、小事故とは異な
り、車両同士が接触した場合は瞬間的に加速度が上昇してすぐに減少するためである。
【0034】
ステップS13で、判定部102は、加速度及び車速データが、大事故に該当する判定
基準に合致するか否かを判定する。合致する場合はステップS14に進み、合致しない場
合はステップS18に進む。具体的には、判定部102は、前後方向の加速度の大きさの
最大値と、上下方向の加速度の大きさの最大値との合計値が、所定閾値(第3閾値)より
大きく、かつ、前後方向の加速度の大きさの最大値が計測された時刻と、上下方向の加速
度の大きさの最大値が計測された時刻とが所定期間内(第3期間内)に存在する場合に、
大事故に対応する判定条件を満たすと判定する。
【0035】
図6のA及びBに、大事故が生じた場合に、加速度センサ16にて検出された加速度の
一例を示す。
図6のAの縦軸は前後方向の加速度を示し、横軸は時間を示す。
図6のBの
縦軸は左右方向の加速度を示し、横軸は時間を示す。グラフAC3は前後方向の加速度で
あり、グラフAC4は、左右方向の加速度の移動平均値である。判定部102は、前後方
向の加速度の最大値g1と、左右方向の加速度の最大値g2との合計値が所定閾値(第3
閾値)より大きく、かつ、前後方向の加速度の最大値g1が計測された時刻t3と、左右
方向の加速度の最大値g2が計測された時刻t4とが所定期間内(第3期間内)に存在す
る場合に、大事故に対応する判定条件を満たすと判定する。所定期間内(第3期間内)は
、例えば0.05~0.1秒等であってもよいが、これに限定されるものではない。また
、所定閾値(第3閾値)は、例えば6~8G程度であってもよいが、これに限定されるも
のではない。
【0036】
大事故に対応する判定基準では、中事故に対応する判定基準のように同一時刻における
加速度の値を合計するのみならず、異なる時刻における加速度の値を合計することを許容
している。これは、特に重大な事故であるほど、衝撃の発生する時間が短くなり、また前
後方向及び左右方向に衝撃の入るタイミングに微妙なずれが起きやすくなることから、同
一時刻における加速度の値を合計するだけでは、大事故をより正確に判定することが難し
いためである。
【0037】
微妙なずれが起きると、中事故のように瞬間値を合成する方法では適切に判定ができな
くなるが、前後方向及び左右方向の加速度それぞれの最大値、すなわち異なる時間におけ
る加速度の値を合計することを許容することで当該問題を解決するようにしている。
【0038】
ステップS14で、取得部101は、ドライブレコーダ10が設置されている車両の種
別が大型車であるか否かを示す情報を取得する。ドライブレコーダ10が設置されている
車両の種別は、ドライブレコーダ10を車両に設置する際に、ドライブレコーダ10が備
えるユーザインターフェース等を介してユーザにより予め設定された種別であってもよい
。なお、大型車とは、例えば、トラック、バス、トレーラー等といった車両を意味する。
車両の種別が大型車である場合にはステップS15の処理手順に進み、大型車ではない場
合にはステップS16の処理手順に進む。
【0039】
ステップS15で、判定部102は、車両の種別が大型車である場合、更に、車速の減
速度が所定の減速度(第4減速度)以上であるか否かを判定する。所定の減速度以上であ
る場合にはステップS16に進み、所定の減速度未満である場合は、ステップS18の処
理手順に進む。所定の減速度(第4減速度)は、小事故に対応する判定基準で説明した、
所定の減速度(第1減速度)と同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0040】
大型車では、荷物の積み下ろしや、車両のような重量物を積載することによる走行中の
振動等によって、車両本体に大きな衝撃が生じる可能性があるが、ステップS15の処理
手順を設けることで、このようなケースで誤判定が生じる可能性を抑制することができる
。
【0041】
ステップS16で、判定部102は、以下に説明する付則条件のうち、少なくとも1つ
の付則条件に合致すると判定した場合、ステップS17の処理手順に進み、全ての付則条
件に合致しないと判定した場合、ステップS18の処理手順に進むようにしてもよい。若
しくは、判定部102は、以下に説明する付則条件のうち全ての付則条件に合致すると判
定した場合、ステップS17の処理手順に進み、少なくとも1つの付則条件に合致すると
判定した場合、ステップS18の処理手順に進むようにしてもよい。
【0042】
(付則条件1)
判定部102は、車速がゼロになったことを検出した場合に、映像を記録すべき衝撃が
生じたと判定するようにしてもよい。車速がゼロであるか否かを判定するタイミングは、
例えば、映像を記録すべき衝撃が生じたと判定したタイミングから所定の時間経過後(例
えば10秒後や15秒後等)とするようにしてもよい。これは、通常、事故が発生すると
車両は停車するためである。また、当該タイミングにおいて車速がゼロになっていない場
合、すなわち車両が走行している場合、事故等は生じていないと考えられることから、映
像を記録すべき衝撃ではないと判定するようにしてもよい。
【0043】
(付則条件2)
図7は、付則条件2の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0044】
ステップS20で、判定部102は、上下方向の加速度の大きさが所定の閾値(第5閾
値)以下であるか否かを判定する。所定の閾値以下である場合、ステップS22の処理手
順に進む。所定の閾値を超える場合、ステップS21の処理手順に進む。所定の閾値は、
例えば0.1Gであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
ステップS21で、判定部102は、上下方向の加速度の大きさが所定の閾値(第5閾
値)を超える場合であり、かつ、上下方向の加速度の大きさが、上下方向の加速度の大き
さと左右方向の加速度の大きさとを合計した値、若しくは、上下方向の加速度の大きさと
前後方向の加速度の大きさとを合計した値のうち、所定の割合以下であるか否かを判定す
る。所定の割合以下である場合、ステップS22の処理手順に進む。所定の割合を超える
場合、ステップS23の処理手順に進む。所定の割合は、例えば2%であってもよいが、
これに限定されるものではない。
【0046】
ステップS22で、判定部102は、衝撃を検知したと判定する。ステップS23で、
判定部102は、衝撃を検知していないと判定する。
【0047】
基本的に加速度が大きいほど事故である可能性が高いものの、左右方向の加速度と比し
て上下方向に強い加速度が生じる場合、段差等で車両が上下に跳ねただけであるというケ
ースが想定されるためである。付則条件2を設けることで、このようなケースで誤判定が
生じる可能性を抑制することができる。
図4に戻り説明を続ける。
【0048】
(付則条件3)
判定部102は、更に、所定の判定期間における左右方向の加速度の大きさ、前後方向
の加速度の大きさ及び上下方向の加速度の合計値が、所定の範囲(第6範囲)である場合
、映像を記録すべき衝撃が生じたとは判定しないようにしてもよい。所定の判定期間は、
例えば2分前から現時刻まで等であってもよいが、これに限定されるものではない。また
、所定の範囲(第6範囲)とは、ドライブレコーダ10が正しく取り付けられている場合
に通常測定される加速度から、ドライブレコーダ10がフロントガラスから剥がれかけて
いる場合に測定される加速度までの範囲に設定されることが望ましい。
【0049】
ドライブレコーダ10が、フロントガラスから外れて落下したケースのうち、事故とは
無関係に落下するようなケースでは、落下前から接着剤が剥がれかけており、長時間にわ
たってドライブレコーダ10がふらついているケースが多い。従って、付則条件3を適用
することで、ドライブレコーダ10の取り付け不良による誤検出を抑制することができる
。
【0050】
<変形例>
以上、
図4を用いて説明した処理手順において、一部の処理手順をスキップしてもよい
。例えば、ステップS14~16は省略されてもよい。この場合、ステップS11、ステ
ップS12又はステップS13の処理手順において、合致すると判定された場合、ステッ
プS17の処理手順に進むようにしてもよい。
【0051】
また、例えば、ステップS16の処理手順は省略されてもよい。この場合、ステップS
14の処理手順において、車両は大型車ではないと判定された場合、及び、ステップS1
5の処理手順において、速度が急減したと判定された場合、ステップS17の処理手順に
進むようにしてもよい。
【0052】
また、例えば、ステップS14及びステップS15の処理手順は省略されてもよい。こ
の場合、ステップS11、ステップS12又はステップS13の処理手順において、合致
すると判定された場合、ステップS16の処理手順に進むようにしてもよい。
【0053】
また、判定部102が、衝撃の有無を判定するために用いた各種の閾値及び期間につい
ては、車両の種別により異なる設定値であってもよい。例えば、車両が乗用車である場合
と、大型車である場合とでは、各種の閾値及び期間は異なる設定値であってもよい。
【0054】
また、前述した中事故に該当する判定基準は、大事故に該当する判定基準と同一の判定
ロジックとし、所定閾値及び所定期間の設定を、中事故と大事故とで異なる値に設定する
ようにしてもよい。
【0055】
また、判定部102は、ステップS11-NOの処理手順の後、ステップS12-NO
の処理手順の後、又はステップS13-NOの処理手順の後で、更に、小事故の条件にお
いて閾値の値を小さい値に変更した条件と、中事故の条件において閾値の値を小さい値に
変更した条件の両方の条件に合致するか否かを判定するようにしてもよい。
【0056】
具体的には、判定部102は、前後方向の加速度の大きさについて所定期間(第1期間
)の移動平均値を算出し、算出した移動平均値が所定閾値(第1閾値よりも小さい値であ
る第6閾値)より大きく、かつ、車速の減速度が所定の減速度(第1減速度)以上である
という条件と、同一時刻における左右方向の加速度の大きさと前後方向の加速度の大きさ
とを合計し、合計値が所定閾値(第2閾値よりも小さい値である第7閾値)より大きいと
いう条件との両方の条件を満たすか否かを判定する。両方の条件を満たす場合、判定部1
02はステップS14の処理手順に進み、いずれか一方の条件を満たさない場合、判定部
102はステップS18の処理手順に進む。これにより、急ブレーキ後に軽い接触が発生
したケースにて映像を記録することが可能になる。
【0057】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、ドライブレコーダ10は、加速度と車速とが、複数の
事故種別の各々に対応する判定基準のうち、少なくともいずれか一つに該当する場合に、
映像を記録すべき衝撃が生じたと判定するようにした。これにより、映像を記録すべき衝
撃の発生有無をより高精度に検出することを可能にする技術を提供することが可能になる
。
【0058】
また、小事故、中事故及び大事故に該当すると判定した場合であっても、更に、付則条
件に合致するか否かを判定するようにした。これにより、段差で車両が上下に跳ねたとい
うケースや、ドライブレコーダ10の取り付け不良による誤判定を抑止することができ、
映像を記録すべき衝撃の発生有無を更に高精度に検出することが可能になる。
【0059】
また、車両の種別が大型車である場合には、車両が急減速したか否かを判定するように
した。これにより、大型車特有の振動や衝撃による誤判定を抑止することができ、映像を
記録すべき衝撃の発生有無を更に高精度に検出することが可能になる。
【0060】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定
して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実
施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したもの
に限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構
成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…ドライブレコーダ、11…プロセッサ、12…メモリ、13…入力デバイス、1
4…出力デバイス、15…撮影装置、16…加速度センサ、17…GPSモジュール、1
8…記憶媒体、100…記憶部、101…取得部、102…判定部、103…記録部