(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】眼科用製品
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
A61J1/05 313A
(21)【出願番号】P 2019556768
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2018044307
(87)【国際公開番号】W WO2019107569
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2017232133
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田坂 文孝
(72)【発明者】
【氏名】三好 直人
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆司
(72)【発明者】
【氏名】桃川 雄介
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-104870(JP,A)
【文献】特開平08-071124(JP,A)
【文献】特開2005-298448(JP,A)
【文献】特開2002-282338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが
3以上、7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品
であって、前記樹脂に対して、0.08超乃至10%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含み、前記眼科用組成物がポリソルベート80を含有し、防腐剤を実質的に含有しない、眼科用製品(但し、前記眼科用組成物はアズレン類を含まない)。
【請求項2】
前記眼科用組成物と接触している前記樹脂の一部または全部が銀担持リン酸ジルコニウムを含む、請求項1に記載の眼科用製品。
【請求項3】
前記樹脂に対して、0.08超乃至5%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む、請求項1または2に記載の眼科用製品。
【請求項4】
前記樹脂に対して、0.08超乃至1%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む、請求項1または2に記載の眼科用製品。
【請求項5】
前記銀担持リン酸ジルコニウムが、銀をイオン濃度で0.001~20%(w/w)含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項6】
樹脂に対して、
0.08超乃至10%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが
3以上、7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品であって、
前記眼科用組成物と接触している前記樹脂の一部または全部が銀担持リン酸ジルコニウムを含み、
前記銀担持リン酸ジルコニウムが、銀をイオン濃度で0.001~20%(w/w)含み、
前記眼科用組成物が
ポリソルベート80を含有し、防腐剤を実質的に含有しない、眼科用製品(但し、前記眼科用組成物はアズレン類を含まない)。
【請求項7】
前記眼科用組成物が
、等張化剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項8】
前記等張化剤が、イオン性等張化剤および/または非イオン性等張化剤である、請求項7に記載の眼科用製品。
【請求項9】
前記イオン性等張化剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸およびホウ砂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
8に記載の眼科用製品。
【請求項10】
前記非イオン性等張化剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよびマンニトールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
8に記載の眼科用製品。
【請求項11】
前記マルチドーズ型点眼容器の容器本体の容量が5~20mLである、請求項1~
10のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項12】
前記眼科用組成物の総容量が2~20mLである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項13】
前記眼科用組成物が点眼剤である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項14】
前記眼科用製品が点眼剤製品である、請求項1~
13のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項15】
防腐剤を実質的に含有せず、ポリソルベート80を含有し、pHが
3以上、7未満である眼科用組成物であって、
前記眼科用組成物が、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に収容され
、前記樹脂に対して、0.08超乃至10%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含むことを特徴とする眼科用組成物(但し、前記眼科用組成物はアズレン類を含まない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼容器には、複数回使用可能なマルチドーズ型点眼容器と1回使い切りユニットドーズ型点眼容器がある。マルチドーズ型点眼容器は、一定期間複数回使用することから菌類等の繁殖を防止するために眼科用組成物に塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤が配合されるのが一般的である。しかし、例えば、防腐剤である塩化ベンザルコニウムには細胞障害性があり、曝露量が増えると角膜上皮障害を引き起こす可能性があることから防腐剤を含まないことがより望ましい。そのため、防腐剤を含まない眼科用組成物を収容する点眼容器として、上述のユニットドーズ点眼容器が使用されている。また、近年では、導出孔に逆流防止弁を有することで防腐効果を発揮する容器やフィルター付きのデラミボトルとすることで防腐効果を発揮する容器など、物理的な構造によって防腐剤を含まずとも防腐効果を発揮するマルチドーズ型点眼容器(PFMD(Preservative Free
Multi Dose)容器)も使用されている(例えば特許文献1など)。
【0003】
ところで、特許文献2には、容器の全面または所要部分に抗菌性ゼオライトが分散保持されたユニットドーズ型点眼容器が開示されており(技術分野、請求項1、22など)、点眼容器の抗菌力が確認されたことが示されている(試験例-1)。しかし、一般にユニットドーズ型点眼容器は1回使い切りのためコストが高く、かさばる、あるいは開封がしにくいといった使用上の欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-80055号公報
【文献】国際公開WO97/01493号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様の課題は、上述の逆流防止弁やフィルター付きデラミボトルなど物理的な構造を施さなくても、一定期間複数回使用できる眼科用製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品が優れた保存効力を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の一態様に係る眼科用製品は、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された構成である。
【0008】
また、本発明の他の態様に係る眼科用製品は、樹脂に対して、0.08~10%(w/w)の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品であって、前記眼科用組成物と接触している前記樹脂の一部または全部が銀担持リン酸ジルコニウムを含み、前記銀担持リン酸ジルコニウムが、銀をイオン濃度で0.001~20%(w/w)含み、前記眼科用組成物が防腐剤を実質的に含有しない、構成である。
【0009】
さらに、本発明のさらに他の態様に係る眼科用組成物は、pHが7未満である眼科用組成物であって、前記眼科用組成物が、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に収容されている。
【発明の効果】
【0010】
銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品は、優れた保存効力を有する。本発明の態様によれば、上述の逆流防止弁やフィルター付きデラミボトルなど物理的な構造を施さなくても、一定期間複数回使用でき、上述のユニットドーズ型点眼容器の欠点もないことから有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に関してさらに詳しく説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」または「A乃至B」は、「A以上(Aを含みかつAよりも大きい)、B以下(Bを含みかつBよりも小さい)」を意味する。また、「A超乃至B」は、「Aを超え(Aより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0012】
本発明の一実施形態は、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器(以下、「本点眼容器」ともいう)に、pHが7未満である眼科用組成物(以下、「本組成物」ともいう)が収容された眼科用製品(以下、「本製品」ともいう)を提供する。ここで、「本製品」としては、例えば、点眼剤の製品(「点眼剤製品」ともいう)が挙げられる。
【0013】
本発明の一実施形態において、「眼科用組成物」とは、眼疾患などの予防および/または治療に使用するための組成物のことをいう。その剤型としては、例えば、点眼剤が挙げられる。ここで点眼剤とは点眼液または点眼薬と同義であり、コンタクトレンズ用点眼剤も点眼剤の定義に含まれる。
【0014】
本組成物の形態としては、特に制限されないが、例えば、水溶液、懸濁液、乳濁液、ゲルなどが挙げられる。
【0015】
本組成物が点眼剤、特に水性点眼剤である場合、溶媒として水を含有することが好ましい。水の例としては、滅菌精製水、注射用水等を挙げることができる。水の含有量としては、例えば、80%(w/v)以上100%(w/v)未満であることが好ましく、85%(w/v)以上99.5%(w/v)%以下であることがより好ましく、90%(w/v)以上99.2%(w/v)以下であることがさらに好ましい。
【0016】
本組成物は、保存効力をより発揮するために、添加物として防腐剤を含んでもよいが、後述の実施例に示すように、本製品は高い保存効力を有することから、眼科用組成物に一般に使用される防腐剤を含有しなくてもよい。防腐剤の例としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ベンゾドデシニウム臭化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、クロルヘキシジンなどが挙げられる。
【0017】
本発明の一実施形態において、本組成物が防腐剤を実質的に含有しないことが好ましい。「防腐剤を実質的に含有しない」とは、防腐剤を全く含有しないか、または限られた量の防腐剤を含有することを意味する。ここで、「限られた量の防腐剤を含有する」とは、防腐剤の防腐効力を発揮しない量を意味する。例えば、防腐剤単独で医薬としての防腐効力を発揮しない量を意味することが挙げられる。具体的には、防腐剤の種類によっても異なるが、例えば、好ましくは約0.01%(w/w)以下の防腐剤を含有することをいい、より好ましくは約0.005%(w/w)以下の防腐剤を含有することをいい、さらに好ましくは約0.001%(w/w)以下の防腐剤を含有することをいい、よりさらに好ましくは約0.0005%(w/w)以下の防腐剤を含有することをいい、特に好ましくは約0.0001%(w/w)以下の防腐剤を含有することをいう。
【0018】
本発明の一実施形態において、「マルチドーズ型点眼容器」は、本組成物を収容する容器本体、容器本体に収容された本組成物を注出する注出口を有する注出部、および注出口をふさぐキャップを備えた点眼容器であって、キャップの開封、再封を自由に行うことができる点眼容器のことをいう。ここで、マルチドーズ型点眼容器は、容器本体に装着可能な中栓を注出部として使用してもよいし、本組成物を収容する収容部(容器本体)と注出部が一体成型された容器本体および注出口をふさぐキャップから構成されていてもよい。当該容器の形状、大きさについては特に制限されるものではなく、収容する本組成物の含量、種類、性質等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
当該マルチドーズ型容器には、通常一定期間使用するために複数回分の眼科用組成物が収容されている。
【0020】
本発明の一実施形態において、マルチドーズ型点眼容器の容器本体の容量は眼科用製品に許容される範囲内にあれば特に制限されないが、5~20mLが好ましく、5~15mLがより好ましく、5~10mLがさらに好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態において、マルチドーズ型点眼容器に収容される眼科用組成物の総容量は、眼科用製品に許容される範囲内にあれば特に制限されないが、2~20mLが好ましく、2~10mLがより好ましく、2~5mLがさらに好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態において、マルチドーズ型点眼容器は樹脂で形成されるが、その材質は特に限定されない。例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を挙げることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、銀担持リン酸ジルコニウムはマルチドーズ型点眼容器の樹脂に含まれていれば特に制限されないが、眼科用組成物の保存効力を発揮させるためには、容器本体の樹脂に含まれていることが好ましく、本組成物と接触している樹脂の一部または全部に少なくとも含まれていることがより好ましい。また、銀担持リン酸ジルコニウムがマルチドーズ型点眼容器の樹脂に含まれるとは、銀担持リン酸ジルコニウムがマルチドーズ型点眼容器の樹脂に分散保持されていることを意味する。
【0024】
なお、本発明の一実施形態において、「ユニットドーズ型容器」とは、瓶口部にキャップが融着封止され、使用時に当該キャップと瓶形本体との融着部を破断開封して使用することを目的とした点眼容器のことをいう。当該ユニットドーズ型容器には、1回使い切りのために1回使用分の水性組成物が収容されているのが一般的である。また、一般に、ユニットドーズ型点眼容器の容器本体の容量は0.1~1mLであり、通常0.1mL~0.5mLの眼科用組成物が収容される。
【0025】
一般に、眼科用組成物の単位容量あたりの容器本体への全接触面積は、マルチドーズ型点眼容器の方がユニットドーズ型点眼容器よりも小さい。
【0026】
本発明の一実施形態におけるマルチドーズ型点眼容器は、抗菌剤として銀が担持されたリン酸ジルコニウム(以下、単に「銀担持リン酸ジルコニウム」ともいう)を含む樹脂で形成されている。
【0027】
銀担持リン酸ジルコニウムは、無機イオン交換体である六方晶リン酸ジルコニウムに、イオン交換法を用いて銀イオンを担持させたものである。
【0028】
銀担持リン酸ジルコニウムは、ノバロン(登録商標)AGとして東亞合成株式会社から販売されている。
【0029】
銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器は、銀担持リン酸ジルコニウムを配合して練り込んだ加熱融解状の樹脂を成形することによって製造することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、銀担持リン酸ジルコニウムは、樹脂に対して、0.08~10%(w/w)の濃度で含まれることが好ましく、0.08超乃至10%(w/w)以下の濃度で含まれることがより好ましく、0.08超乃至5%(w/w)以下の濃度で含まれることがさらに好ましく、0.08超乃至1%(w/w)以下の濃度で含まれることが特に好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態において、銀担持リン酸ジルコニウム中の銀はイオン濃度で、0.001~20%(w/w)含むことが好ましく、0.01~20%(w/w)含むことがより好ましく、0.1~20%(w/w)含むことがさらに好ましく、0.5~15%(w/w)含むことがよりさらに好ましく、1~15%(w/w)含むことがことさら好ましく、5~15%(w/w)含むことが特に好ましい。
【0032】
本発明の一実施形態において、点眼容器は薄肉であることから、銀担持リン酸ジルコニウムの平均粒径は0.01~3μmであることが好ましく、0.1~2μmであることがより好ましい。
【0033】
本組成物は、種々の薬物を単独または適宜組み合わせて適当量含有してもよい。当該薬物は、医薬として許容される薬物であれば特に限定されない。例えば、眼疾患の予防及び/又は治療に使用される薬物が挙げられる。なお、ここで「薬物」は、薬の「有効成分」と同義である。
【0034】
本発明の一実施形態において、薬物としては、薬物の塩も含まれ、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩;臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;鉄、亜鉛などとの金属塩;アンモニアとの塩;トリエチレンジアミン、2-アミノエタノール、2,2-イミノビス(エタノール)、1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-2-D-ソルビトール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、プロカイン、N,N-ビス(フェニルメチル)-1,2-エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0035】
本組成物に含有される薬物またはその塩は、水和物または溶媒和物の形態をとってもよい。
【0036】
本組成物には、汎用されている技術を用い、必要に応じて製薬学的に許容される添加物を配合することができる。例えば、界面活性剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、抗酸化剤、高分子量重合体等を配合することができる。好ましくは、本組成物は、界面活性剤および等張化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む。
【0037】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を配合することができる。
【0038】
アニオン性界面活性剤の例としては、硫酸塩系界面活性剤、リン脂質等が挙げられ、硫酸塩系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム塩、アルキルベンゼン硫酸塩等が挙げられる。リン脂質としては、例えば、レシチン等が挙げられる。
【0039】
カチオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、アルキルアミンポリオキシエチレン付加物、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、脂肪酸ポリアミン縮合物、アルキルイミダゾリン、1-アシルアミノエチル-2-アルキルイミダゾリン、1-ヒドロキシルエチル-2-アルキルイミダゾリン等が挙げられる。
【0040】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS等が挙げられる。
【0041】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
【0042】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65等が挙げられる。ポリソルベート80が特に好ましい。
【0043】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は10~100が好ましく、20~80がより好ましく、40~70が特に好ましく、60が最も好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられる。
【0044】
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は5~100が好ましく、20~50がより好ましく、30~40が特に好ましく、35が最も好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられる。
【0045】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール等が挙げられる。
【0046】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0047】
ビタミンE TPGSは、トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルともいう。
【0048】
本組成物に界面活性剤を配合する場合の界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類等により適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.01~3%(w/v)がさらに好ましく、0.01~1%(w/v)がよりさらに好ましい。
【0049】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本組成物には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を配合することができる。例えば、リン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。
【0051】
リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。
【0052】
本組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類等により適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~3%(w/v)がさらに好ましく、0.2~2%(w/v)が最も好ましい。
【0053】
これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本組成物には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。等張化剤の例としては、イオン性等張化剤、非イオン性等張化剤等が挙げられる。イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。本組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.01~10%(w/v)が好ましく、0.1~5%(w/v)がより好ましく、0.5~3%(w/v)が最も好ましい。
【0055】
これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本組成物には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。例えば、エデト酸、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、エデト酸二ナトリウムが好ましく、エデト酸二ナトリウム二水和物が特に好ましい。本組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤の含有量は、安定化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.0001~0.5%(w/v)が好ましく、0.0005~0.3%(w/v)がより好ましく、0.001~0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.002~0.08%(w/v)がもっと好ましく、0.003~0.07%(w/v)が一層好ましく、0.005~0.06%(w/v)が特に好ましく、0.007~0.05%(w/v)が最も好ましい。
【0057】
これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本組成物には、医薬品の添加物として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本組成物に抗酸化剤を配合する場合の抗酸化剤の含有量は、抗酸化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)がより好ましく、0.005~0.01%(w/v)が最も好ましい。
【0059】
これらの抗酸化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本組成物には、医薬品の添加物として使用可能な高分子量重合体を適宜配合することができる。高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。本組成物に高分子量重合体を配合する場合の高分子量重合体の含有量は、高分子量重合体の種類等により適宜調整することができるが、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.01~3%(w/v)がより好ましく、0.1~1%(w/v)が最も好ましい。
【0061】
これらの高分子量重合体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0062】
更に、本組成物の浸透圧は特定の値に制限されないが、生体に許容される範囲とされる。本発明の水性組成物の浸透圧は、例えば、100~1000mOsm、好ましくは200~500mOsm、より好ましくは250~350mOsmである。一般的に、水性組成物の浸透圧は少なからず水性組成物中の薬物や添加剤の量に影響を受ける。本発明において、浸透圧は浸透圧に影響を与え得るこれらの物質の量を適当に調整して、上記の範囲になるよう調整され得る。本発明の水性組成物の浸透圧は、通常の方法で測定されできることに留意すべきである。例えば、本発明の水性組成物の浸透圧は、第十五改正日本薬局方第の「浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)」に記載の方法に従って測定できる。
【0063】
本組成物のpHは眼科用製品に許容される範囲内にあれば特に制限されないが、7未満が好ましく、3以上7未満がより好ましく、3以上6以下がさらに好ましく、4以上6以下がよりさらに好ましく、5の近傍が特に好ましい。より具体的には、例えば、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8.5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8または6.9が挙げられる。本組成物のpHは、適宜、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸および/または水酸化ナトリウムなどのpH調節剤を添加物として配合して調節することができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の一態様は、以下に関する。
【0066】
〔1〕銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品。
【0067】
〔2〕前記眼科用組成物と接触している前記樹脂の一部または全部が銀担持リン酸ジルコニウムを含む、〔1〕に記載の眼科用製品。
【0068】
〔3〕前記樹脂に対して、0.08~10%(w/w)の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む、〔1〕または〔2〕に記載の眼科用製品。
【0069】
〔4〕前記樹脂に対して、0.08超乃至10%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む、〔1〕または〔2〕に記載の眼科用製品。
【0070】
〔5〕前記樹脂に対して、0.08超乃至5%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む、〔1〕または〔2〕に記載の眼科用製品。
【0071】
〔6〕前記樹脂に対して、0.08超乃至1%(w/w)以下の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む、〔1〕または〔2〕に記載の眼科用製品。
【0072】
〔7〕前記銀担持リン酸ジルコニウムが、銀をイオン濃度で0.001~20%(w/w)含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0073】
〔8〕前記眼科用組成物が防腐剤を実質的に含有しない、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0074】
〔9〕樹脂に対して、0.08~10%(w/w)の濃度の銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品であって、前記眼科用組成物と接触している前記樹脂の一部または全部が銀担持リン酸ジルコニウムを含み、前記銀担持リン酸ジルコニウムが、銀をイオン濃度で0.001~20%(w/w)含み、前記眼科用組成物が防腐剤を実質的に含有しない、眼科用製品。
【0075】
〔10〕前記眼科用組成物のpHが3以上、7未満である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0076】
〔11〕前記眼科用組成物が、界面活性剤および等張化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【0077】
〔12〕前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、〔11〕に記載の眼科用製品。
【0078】
〔13〕前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルおよびビタミンE TPGSからなる群から選択される少なくとも1種である、〔12〕に記載の眼科用製品。
【0079】
〔14〕前記等張化剤が、イオン性等張化剤および/または非イオン性等張化剤である、〔11〕に記載の眼科用製品。
【0080】
〔15〕前記イオン性等張化剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸およびホウ砂からなる群から選択される少なくとも1種である、〔14〕に記載の眼科用製品。
【0081】
〔16〕前記非イオン性等張化剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよびマンニトールからなる群から選択される少なくとも1種である、〔14〕に記載の眼科用製品。
【0082】
〔17〕前記マルチドーズ型点眼容器の容器本体の容量が5~20mLである、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0083】
〔18〕前記眼科用組成物の総容量が2~20mLである、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0084】
〔19〕前記眼科用組成物が点眼剤である、〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0085】
〔20〕前記眼科用製品が点眼剤製品である、〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の眼科用製品。
【0086】
〔21〕pHが7未満である眼科用組成物であって、前記眼科用組成物が、銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に収容されていることを特徴とする眼科用組成物。
【実施例】
【0087】
以下に、試験結果および製剤例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0088】
[保存効力試験-1]
銀担持体の種類が抗菌性能に及ぼす影響を検討した。
【0089】
(試料作製)
銀担持体が配合されたプラスチックプレートを作成した。
【0090】
<銀担持リン酸ジルコニウム配合プレート>
0.5%(w/w)の濃度の銀担持リン酸ジルコニウム(メーカー:東亞合成株式会社、製品名:ノバロン(登録商標)AG1100)が配合されたポリプロピレンプレート(高さ2mm;プレートの表と裏の表面積の合計は120cm2である)を作成した。
【0091】
<銀担持ゼオライト配合プレート>
0.5%(w/w)の濃度の銀担持ゼオライト(メーカー:シナミンゼオミック、製品名:DAW502)が配合されたポリエチレンプレート(高さ2mm;プレートの表と裏の表面積の合計は120cm2である)を作成した。
【0092】
(サンプル作成)
滅菌済みガラスパイレックス(登録商標)瓶に、作成したプラスチックプレートを入れ、次いで生理食塩水15mLを加え、当該プラスチックプレートを浸漬させて、試験に用いるサンプルを作成した。この場合、プラスチックプレートの生理食塩水との接液面積は8cm2/mLである。
【0093】
(試験方法)
保存効力試験は、第十五改正日本薬局方の保存効力試験法を参考に行った。試験菌を接種し、14日後、28日後に菌数を測定した。本試験では、試験菌として、Esherichia Coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)を用いた。
【0094】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。なお、表1の試験結果(初期値、14日後、28日後)は、菌数経時変化(個/mL)を示している。
【0095】
【表1】
(考察)
表1に示すように、銀担持リン酸ジルコニウムは、銀担持ゼオライトよりも高い抗菌力を有することが示された。
【0096】
[重金属評価試験]
試料中の重金属を評価した。
【0097】
(試料調製)
銀担持体が配合されたプラスチックプレートを作成した。
【0098】
<銀担持リン酸ジルコニウム配合プレート>
0.5%(w/w)または1.0%(w/w)の濃度の銀担持リン酸ジルコニウム(メーカー:東亞合成株式会社、製品名:ノバロン(登録商標)AG1100)が配合されたポリプロピレンプレートをそれぞれ作成した。
【0099】
<銀担持ゼオライト配合プレート>
1%(w/w)、2%(w/w)または3%(w/w)の濃度の銀担持ゼオライト(メーカー:カネボウ、製品名:BM-102TG)が配合されたポリプロピレンプレートをそれぞれ作成した。
【0100】
<銀担持ガラス配合プレート>
1%(w/w)の濃度の銀担持ガラス(メーカー:石塚ガラス、製品名:JN)が配合されたポリプロピレンプレートを作成した。
【0101】
(試験方法)
日局一般試験法「プラスチック製医薬品容器試験法」1灰化試験1・2重金属(点眼剤用プラスチック容器の規格及び試験法について(薬発336号(平成8年3月28日))の別添、重金属)に準じて試料中の重金属を評価した。
【0102】
(判定基準)
日局一般試験法「プラスチック製医薬品容器試験法」1灰化試験1・2重金属(点眼剤用プラスチック容器の規格及び試験法について(薬発336号(平成8年3月28日))の別添、重金属)に準じて試験したとき、検液の色が比較液より濃くない(20ppm以下)場合を合格とする。ただし、容器切片採取量は1.0gとする。
【0103】
(試験結果)
表2に試験結果を示す。
【0104】
【表2】
表2に示すように、銀担持リン酸ジルコニウムが配合されたプレートでは、検液の色は比較液より濃くならず、上記判定基準を満たした。一方、銀担持ゼオライトや銀担持ガラスが配合されたプレートでは、分析不能で、上記判定基準を満たすか判定できなかった。
【0105】
(考察)
以上の重金属評価試験の結果から、銀担持リン酸ジルコニウムが点眼剤用プラスチック容器に好ましいことが示された。
【0106】
[保存効力試験-2]
銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器を用いて、保存効力試験を行った。
【0107】
(試料調製)
点眼液1:
表3に示す処方に従って、点眼液1を調製した。具体的には、ジクアホソルナトリウム(API;3g)、エデト酸ナトリウム(キレート剤;0.01g)、濃グリセリン(等張化剤;1.4g)を水に溶解し、希塩酸(pH調節剤)を加えて、pHを5付近とした後、水を適量加えて全量を100mLとした。
【0108】
点眼液2:
表3に示す処方に従って、点眼液2を調製した。具体的には、ジクアホソルナトリウム(API;3g)、エデト酸ナトリウム(キレート剤;0.01g)、ホウ酸(等張化剤;1.1g)を水に溶解し、水酸化ナトリウム(pH調節剤)を加えて、pHを5付近とした後、水を適量加えて全量を100mLとした。
【0109】
点眼液3:
表3に示す処方に従って、点眼液3を調製した。具体的には、ジクアホソルナトリウム(API;3g)、エデト酸ナトリウム(キレート剤;0.01g)、濃グリセリン(等張化剤;1.4g)を水に溶解し、希塩酸(pH調節剤)を加えて、pHを5付近とした後、水を適量加えて全量を100mLとした。
【0110】
点眼液4:
表3に示す処方に従って、点眼液4を調製した。具体的には、ジクアホソルナトリウム(API;3g)、エデト酸ナトリウム(キレート剤;0.01g)、ホウ酸(等張化剤;1.1g)を水に溶解し、水酸化ナトリウム(pH調節剤)を加えて、pHを5付近とした後、水を適量加えて全量を100mLとした。
【0111】
なお、APIとしてジクアホソルナトリウムを用いたが、点眼液中で保存すると目視可能な不溶性析出物が発生するおそれがあることからキレート剤であるエデト酸ナトリウムを添加した(国際公開WO2012-090994号パンフレット参照)。
【0112】
点眼容器:
加熱溶解したポリエチレン樹脂に、銀をイオン濃度で10%(w/w)含む平均粒径1μmの銀担持リン酸ジルコニウムを0.08%(w/w)または1%(w/w)添加して均一に練り込み、点眼容器の容器本体(容積7.9mL、高さ45.2mm、胴型19.45mm)を製造した。銀担持リン酸ジルコニウムは、東亞合成株式会社製の銀系無機抗菌剤「ノバロン(登録商標)AG」1100を使用した。
【0113】
【表3】
(試験方法)
保存効力試験は、第十七改正日本薬局方の保存効力試験法に準拠して行なった。本試験では、試験菌株として、Esherichia Coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、Staphylococcus aureus(S.aureus)、Candida albicans(C.albicans)およびAspergillus brasiliensis(A.brasiliensis)を用いた。これらの菌株をそれぞれカンテン斜面培地の表面に接種して前培養した。前培養用のカンテン培地としては、細菌の場合はソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地を、真菌の場合はサブロー・ブドウ糖カンテン培地を用いた。細菌の場合は30~35℃で18~24時間、Candida albicansは20~25℃で44~52時間、Aspergillus brasiliensisは20~25℃で1週間又は十分な胞子が形成されるまで前培養した。
【0114】
点眼液1~4を5本の滅菌済みの上記点眼容器に5mLずつ分注し、中栓を装着し、キャップで密封した。60℃で1か月遮光保存した後、前培養した試験菌を105~106個/mLとなるよう接種した。なお、試験菌は混合せず、それぞれ単独に各検体に接種した。保存開始から1週、2週及び4週保存後に各混合試料から0.5mLをサンプリングした液を培養し、生菌数の測定を行った。
【0115】
表4に従い、保存効力を判定した。
【0116】
【表4】
(試験結果)
試験結果を表5に示す。なお、表5の試験結果は検査時の生菌数が接種した菌数に比べてどの程度減少したかをlog reductionで示しており、たとえば「1」の場合には、検査時の生菌数が接種菌数の10%に減少したことを示している。
【0117】
【表5】
表5に示された通り、製品3、4は、60℃1か月保存後においても、保存効力を有することが示された。
【0118】
一般に、眼科用組成物の単位容量あたりの容器本体への全接触面積は、マルチドーズ型点眼容器の方がユニットドーズ型点眼容器よりも小さい。マルチドーズ型点眼容器であっても本製品が優れた保存効力を有することが示された。
【0119】
[保存効力試験-3]
銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器を用いて、保存効力試験を行った。
【0120】
(試料調製)
点眼液:
表6に示す処方に従って、点眼液5を調製した。具体的には、濃グリセリン(1.3g)、リン酸水素ナトリウム水和物(1.0g)を水に溶解し、pH調節剤(1N水酸化ナトリウム溶液/硫酸)を加えて、pHを5.0とした後、水を適量加えて全量を100mLとした。点眼液6~8も表6に示す処方に従って、点眼液5と同様に調製した。
【0121】
点眼容器:
加熱溶解したポリエチレン樹脂に、銀をイオン濃度で10%(w/w)含む平均粒径1μmの銀担持リン酸ジルコニウムを0.5%(w/w)添加して均一に練り込み、点眼容器の容器本体(容積7.9mL、高さ45.2mm、胴型19.45mm)を製造した。銀担持リン酸ジルコニウムは、東亞合成株式会社製の銀系無機抗菌剤「ノバロン(登録商標)AG」1100を使用した。
【0122】
【表6】
(試験方法)
保存効力試験は、第十七改正日本薬局方の保存効力試験法を参考に行なった。本試験では、試験菌株として、Esherichia Coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)およびStaphylococcus aureus(S.aureus)を用いた。これらの菌株をそれぞれカンテン斜面培地の表面に接種して前培養した。前培養用のカンテン培地としては、ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地を用いた。30~35℃で18~24時間前培養した。
【0123】
点眼液5~8を5本の滅菌済みの上記点眼容器に5mLずつ分注し、中栓を装着し、キャップで密封した。60℃で1か月遮光保存後、前培養した試験菌を105~106個/mLとなるよう接種した。なお、試験菌は混合せず、それぞれ単独に各検体に接種した。保存開始から1週及び2週保存後に各混合試料から0.5mLをサンプリングした液を培養し、生菌数の測定を行った。
【0124】
表7に従い、保存効力を判定した。
【0125】
【表7】
(試験結果)
試験結果を表8に示す。なお、表8の試験結果は検査時の生菌数が接種した菌数に比べてどの程度減少したかをlog reductionで示しており、たとえば「1」の場合には、検査時の生菌数が接種菌数の10%に減少したことを示している。
【0126】
【表8】
表8に示された通り、pHが中性付近の点眼液を収容する本製品の保存効力は低かったが(比較例1)、pHが酸性付近の点眼液を収容する本製品は、60℃1か月保存後においても高い保存効力を有することが示された(実施例1~3)。特に、pHが酸性付近であって、ポリソルベート80を含有する点眼液を収容する本製品は優れた保存効力を有することが示された(実施例3)。
【0127】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみに限定されるものでない。
【0128】
(製剤例1:水性点眼液)
100mL中
リン酸水素ナトリウム 0.2g
濃グリセリン 2.4g
エデト酸ナトリウム 0.01g
pH調節剤 適量
水 適量
リン酸水素ナトリウム(0.2g)、濃グリセリン(2.4g)、エデト酸ナトリウム(0.01g)を水に溶解し、pH調節剤(塩酸または水酸化ナトリウム溶液)を加えて、pHを5.0とした後、水を適量加えて全量を100mLとし、十分に撹拌することで点眼液を調製できる。
【0129】
(製剤例2:水性点眼液)
100mL中
濃グリセリン 1.2g
ホウ酸 1.0g
pH調節剤 適量
水 適量
濃グリセリン(1.2g)、ホウ酸(1.0g)を水に溶解し、pH調節剤(塩酸または水酸化ナトリウム溶液)を加えて、pHを5.0とした後、水を適量加えて全量を100mLとし、十分に撹拌することで点眼液を調製できる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
銀担持リン酸ジルコニウムを含む樹脂で形成されたマルチドーズ型点眼容器に、pHが7未満である眼科用組成物が収容された眼科用製品が優れた保存効力を有する。本発明は、上述の逆流防止弁やフィルター付きデラミボトルなど物理的な構造を施さなくても、一定期間複数回使用でき、上述のユニットドーズ型点眼容器の欠点もないことから有用である。