(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】ジカウイルスに対する免疫応答を誘導するためのヌクレオシド改変RNA
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230724BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230724BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230724BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230724BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230724BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230724BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230724BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20230724BHJP
A61K 31/7088 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K39/12
A61P37/04
A61P31/14
A61K39/39
A61K9/127
A61K9/72
A61K39/00 H
A61K31/7088
(21)【出願番号】P 2019558335
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 US2018013270
(87)【国際公開番号】W WO2018132537
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-05
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ワイズマン,ドリュー
(72)【発明者】
【氏名】パーディ,ノーバート
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,マイケル
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】Npj Vaccines,2016年,1,16021
【文献】Journal of Controlled Release,2015年,217 ,pp.345-351
【文献】Database GenBank,ACCESSION :KJ776791, VERSION:KJ776791.2, ,DEFINITION :Zika virus strain H/PF/2013, complete genome,2016年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/KJ776791.2
【文献】Database GenBank ,ACCESSION:AHZ13508 ,VERSION:AHZ13508.1 ,DEFINITION :polyprotein [Zika virus],2016年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/631250743
【文献】Center for Infectious Disease Research and Policy,2017年01月10日,from internet 10 Dec 2021,https://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2017/01/zika-mrna-vaccine-enters-clinical-trial-angola-reports-cases
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてジカウイルス(ZIKV)に対する免疫応答を誘導するための組成物であって、少なくとも1つのZIKV抗原をコードしている
、改変されたヌクレオシドを有するリボヌクレオチドを含む少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNA
分子を含み、少なくとも1つのZIKV抗原は、配列番号2を含むアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAが、プソイドウリジンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAが、1-メチル-プソイドウリジンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAが、精製されたヌクレオシド改変RNA
である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのZIKV抗原が、MHCクラスII由来のシグナルペプチドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのヌクレオシド改変RNA
分子が、配列番号1
に示されるDNA配列から転写されたRNA配列を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アジュバントを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAが、少なくとも1つのアジュバントを更にコードしている、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
脂質ナノ粒子(LNP)を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAが、前記LNP内に封入されている、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ワクチンである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
対象においてジカウイルス(ZIKV)に対する適応免疫応答を誘導する医薬の調製における、少なくとも1つのZIKV抗原をコードしている
、改変されたヌクレオシドを有するリボヌクレオチドを含む少なくとも1つのヌクレオシド改変RNA
分子を含む組成物の使用であって、少なくとも1つのZIKV抗原は、配列番号2を含むアミノ酸配列を含み、さらに少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入されている、使用。
【請求項13】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAが、プソイドウリジンを含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAが、1-メチル-プソイドウリジンを含む、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAが、精製されたヌクレオシド改変RNAである、請求項12記載の使用。
【請求項16】
前記少なくとも1つのZIKV抗原が、MHCクラスII由来のシグナルペプチドを含む、請求項12記載の使用。
【請求項17】
前記少なくとも1つのヌクレオシド改変RNA
分子が、配列番号1
に示されるDNA配列から転写されたRNA配列を含む、請求項12記載の使用。
【請求項18】
医薬の調製においてアジュバントの使用を更に含む、請求項12記載の使用。
【請求項19】
前記少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAが、少なくとも1つのアジュバントを更にコードしている、請求項12記載の使用。
【請求項20】
前記組成物が、脂質ナノ粒子(LNP)を更に含む、請求項12記載の使用。
【請求項21】
前記少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAが、前記LNP内に封入されている、請求項20記載の使用。
【請求項22】
組成物が、ワクチンである、請求項12記載の使用。
【請求項23】
前記組成物が、皮内、皮下、吸入、鼻腔内、及び筋肉内からなる群から選択される送達経路による送達のために構成される、請求項12記載の使用。
【請求項24】
前記組成物が、組成物の単回投与のために構成される、請求項12記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が、組成物の複数回投与のために構成される、請求項12記載の使用。
【請求項26】
前記組成物が、対象におけるZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を治療又は予防する、請求項12記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.§119(e)の下、2017年1月11日に出願された米国仮特許出願第62/444,931号に対する優先権の利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
連邦支援の研究又は開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたA1050484、A1084860、AI058607、及びAI100645の下、政府の支援を受けて成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
背景技術
1947年に初めて同定された(Dick et al., 1952, Trans R Soc Trop Med Hyg, 46: 509-520)ジカウイルス(ZIKV)は、最近、新生児における小頭症及び他の出生時欠損並びに成人におけるギランバレー症候群に関連付けられたフラビウイルスである(Pierson and Graham, 2016, Cell, 625-631)。黄熱、日本脳炎、及びデングウイルスを含む他の近縁フラビウイルスについては有効なワクチンが承認されている(Beck and Barrett, 2015, Expert Rev Vaccines, 14: 1479-1492;Jarmer et al., 2014, J Virol, 88: 13845-13857;Guy and Jackson, 2016, Nat Rev, Microbiol, 14: 45-54)が、ZIKVのためのワクチン候補は、最近になってやっと開発された(Larocca et al., 2016, Nature, 536: 474-478;Abbink et al., 2016, Science, 353, 1129-1132;Dowd et al., 2016, Science, 354, 237-240)。Larocca及び共同研究者は、マウスにおいてZIKV感染からの完全防御を誘導する精製不活化ウイルスワクチン及びプラスミドDNAワクチンを作製した(Larocca et al., 2016, Nature, 536: 474-478)。同じ研究室で、これらワクチンプラットフォーム及びアカゲザルアデノウイルス血清型52ベクター(RhAd52)が非ヒト霊長類(NHP)においてZIKVに対する完全防御を惹起することも立証された(Abbink et al., 2016, Science, 353, 1129-1132)。ごく最近、Dowd及び共同研究者は、2回の免疫後に強力な免疫応答を誘導する2つのプラスミドDNAワクチンについて記載しており、該ワクチンは、マウス及びNHPをZIKV感染から防御した(Dowd et al., 2016, Science, 354, 237-240)。理想のワクチンは、安全であり、そして、血清学的前歴にかかわらず、単回免疫後に防御免疫を誘導する。今日までに報告されたジカワクチン候補のうち、NHPにおいて単回免疫後に防御を付与することが示されているのはRhAd52プラットフォームのみであるが、ヒトにおけるこのアカゲザルアデノウイルスベクターの有効性は現在決定されていない。更に、アデノウイルス血清型に対する既存の免疫が、このようなベクターの有効性を制限することがあり(Ledgerwood et al., 2010, Vaccine, 29: 304-313; Sumida et al., 2004, J Virol, 78: 2666-2673)、そして、ヒトではRhAd52を含むアカゲザルアデノウイルスに対する低い中和価が検出されている(Abbink et al., 2015, J Virol, 89: 1512-1522)。
【0004】
したがって、ZIKV感染を治療及び予防するための改善された組成物及び方法が当技術分野において必要とされている。本発明は、この満たされていない必要性を満たす。
【0005】
発明の概要
一態様では、本発明は、対象においてジカウイルス(ZIKV)に対する免疫応答を誘導するための組成物であって、少なくとも1つのZIKV抗原をコードしている少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAを含む組成物を提供する。
【0006】
一実施態様では、該少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAは、プソイドウリジンを含む。一実施態様では、該少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAは、1-メチル-プソイドウリジンを含む。一実施態様では、該少なくとも1つの単離されたヌクレオシド改変RNAは、精製されたヌクレオシド改変RNAを含む。
【0007】
一実施態様では、該少なくとも1つのZIKV抗原は、エンベロープ(E)タンパク質、前駆膜(prM)タンパク質、膜(M)タンパク質、及びカプシド(C)タンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのZIKV抗原を含む。一実施態様では、該少なくとも1つのZIKV抗原がprM及びEのタンパク質を含む、請求項5記載の組成物。一実施態様では、該少なくとも1つのZIKV抗原は、MHCクラスII由来のシグナルペプチドを含む。
【0008】
一実施態様では、該少なくとも1つのZIKV抗原は、配列番号2を含むアミノ酸配列を含む。一実施態様では、該少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAは、配列番号1を含むヌクレオチド配列を含む。
【0009】
一実施態様では、該組成物は、ワクチンである。一実施態様では、該組成物は、アジュバントを更に含む。一実施態様では、該少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAは、少なくとも1つのアジュバントを更にコードしている。
【0010】
一実施態様では、該組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。一実施態様では、該少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAは、該LNP内に封入されている。一実施態様では、該LNPは、式(I):
【化1】
の構造を有する化合物又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、プロドラッグ、若しくは立体異性体を含む
(式中、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、又は炭素-炭素二重結合であり;
R
1a及びR
1bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
1aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
2a及びR
2bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
2aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
2bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
2b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
3a及びR
3bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
3aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
3bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
3b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
4a及びR
4bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
4aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチル又はシクロアルキルであり;
R
7は、各存在において独立して、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
8及びR
9は、それぞれ独立して、非置換C
1-C
12アルキルであるか;又はR
8及びR
9は、これらが結合している窒素原子と共に、1個の窒素原子を含む5、6、若しくは7員の複素環を形成し;
a及びdは、それぞれ独立して、0~24の整数であり;
b及びcは、それぞれ独立して、1~24の整数であり;そして、
eは、1又は2である)。
【0011】
一実施態様では、該LNPは、式(II):
【化2】
の構造を有する化合物又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、プロドラッグ、若しくは立体異性体を含む
(式中、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)NR
a、-OC(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)O-、又は直接結合であり;
G
1は、C
1-C
2アルキレン、-(C=O)-、-O(C=O)-、-SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、又は直接結合であり;
G
2は、-C(=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR
a、又は直接結合であり;
G
3は、C
1-C
6アルキレンであり;
R
aは、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
1a及びR
1bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか;又は(b)R
1aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
2a及びR
2bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか;又は(b)R
2aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
2bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
2b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
3a及びR
3bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか;又は(b)R
3aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
3bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
3b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
4a及びR
4bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか;又は(b)R
4aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、H又はメチルであり;
R
7は、C
4-C
20アルキルであり;
R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
1-C
12アルキルであるか;又はR
8及びR
9は、これらが結合している窒素原子と共に、5、6、若しくは7員の複素環を形成し;
a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、1~24の整数であり;そして、
xは、0、1、又は2である)。
【0012】
一実施態様では、該LNPは、式(III):
【化3】
の構造を有する化合物又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、プロドラッグ、若しくは立体異性体を含む
(式中、
L
1又はL
2の一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-、又は-NR
aC(=O)O-であり、そして、L
1又はL
2の他方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-、若しくは-NR
aC(=O)O-、又は直接結合であり;
G
1及びG
2は、それぞれ独立して、非置換C
1-C
12アルキレン又はC
1-C
12アルケニレンであり;
G
3は、C
1-C
24アルキレン、C
1-C
24アルケニレン、C
3-C
8シクロアルキレン、C
3-C
8シクロアルケニレンであり;
R
aは、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C
6-C
24アルキル又はC
6-C
24アルケニルであり;
R
3は、H、OR
5、CN、-C(=O)OR
4、-OC(=O)R
4、又は-NR
5C(=O)R
4であり;
R
4は、C
1-C
12アルキルであり;
R
5は、H又はC
1-C
6アルキルであり;そして、
xは、0、1、又は2である)。
【0013】
一実施態様では、該LNPは、以下の構造:
【化4】
のうちの1つを有する化合物を含む。
【0014】
一実施態様では、該LNPは、以下の構造(IV):
【化5】
を有するペグ化脂質又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、若しくは立体異性体を含む(式中、
R
10及びR
11は、それぞれ独立して、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和の、10~30個の炭素原子を含有するアルキル鎖であって、場合により、1つ以上のエステル結合が割り込んでいるアルキル鎖であり;そして、
zは、30~60の範囲の平均値を有する)。
【0015】
一実施態様では、該ペグ化脂質は、以下の構造(IVa):
【化6】
を有する(式中、nは、該ペグ化脂質の平均分子量が約2500g/molになるように選択される整数である)。
【0016】
一態様では、本発明は、対象においてジカウイルス(ZIKV)に対する適応免疫応答を誘導する方法を提供する。該方法は、少なくとも1つのZIKV抗原をコードしている少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む。
【0017】
一実施態様では、該組成物は、皮内、皮下、吸入、鼻腔内、及び筋肉内からなる群から選択される送達経路によって投与される。
【0018】
一実施態様では、該方法は、該組成物の単回投与を含む。一実施態様では、該方法は、該組成物の1回超(すなわち、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、又はそれ以上)の投与を含む。
【0019】
一実施態様では、該方法は、対象におけるZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を治療又は予防する。一実施態様では、該方法は、対象の胎児におけるZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を治療又は予防する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の本発明の実施態様の詳細な説明は、添付図面と併せて読んだときにより十分に理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施態様の正確な配置及び手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【
図1A-1D】
図1A~1Gを含む
図1は、ヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNPによる免疫が、ZIKV特異的Tヘルパー及び中和抗体の応答を惹起することを立証する実験の結果を示す。
図1A~
図1D、ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNP(n=8)又は対照ポリ(C)RNA-LNP(n=4) 30μgでC57BL/6マウスを免疫した。(
図1A)2週目に、細胞内サイトカイン染色によって抗原特異的CD4+ T細胞を検出した。(
図1B)ELISA、(
図1C)ZIKV MR-766を使用したPRNT、及び(
図1D)ZIKV H/PF/2013を使用したRVPによって抗体応答をモニタした。
図1E~
図1G、ZIKV mRNA-LNP(n=10)又はポリ(C)RNA-LNP(n=5)で同様にBALB/cマウスを免疫し、そして、(
図1E)ELISA、(
図1F)MR-766を使用したPRNT、及び(
図1G)H/PF/2013を使用したRVPによってモニタした。点は、個々のマウスを表し;横線は、平均を示し;破線は、検出限界を示す。
図1D及び
図1Gにおける対照は、8週目時点で得られたものである。
*図1Aでは、P<0.05(対応のないt検定);ワクチン及び対照の群における抗体応答を、マンホイットニー検定によって各時点において比較した、全ての比較についてP<0.01(
図1B~
図1G)。
【
図1E-1G】
図1A~1Gを含む
図1は、ヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNPによる免疫が、ZIKV特異的Tヘルパー及び中和抗体の応答を惹起することを立証する実験の結果を示す。
図1A~
図1D、ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNP(n=8)又は対照ポリ(C)RNA-LNP(n=4) 30μgでC57BL/6マウスを免疫した。(
図1A)2週目に、細胞内サイトカイン染色によって抗原特異的CD4+ T細胞を検出した。(
図1B)ELISA、(
図1C)ZIKV MR-766を使用したPRNT、及び(
図1D)ZIKV H/PF/2013を使用したRVPによって抗体応答をモニタした。
図1E~
図1G、ZIKV mRNA-LNP(n=10)又はポリ(C)RNA-LNP(n=5)で同様にBALB/cマウスを免疫し、そして、(
図1E)ELISA、(
図1F)MR-766を使用したPRNT、及び(
図1G)H/PF/2013を使用したRVPによってモニタした。点は、個々のマウスを表し;横線は、平均を示し;破線は、検出限界を示す。
図1D及び
図1Gにおける対照は、8週目時点で得られたものである。
*図1Aでは、P<0.05(対応のないt検定);ワクチン及び対照の群における抗体応答を、マンホイットニー検定によって各時点において比較した、全ての比較についてP<0.01(
図1B~
図1G)。
【
図2A-2B】
図2A及び
図2Bを含む
図2は、ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNPの単回免疫が、マウスにおいてZIKVチャレンジからの迅速かつ持続的な防御を提供することを立証する実験の結果を示す。ZIKV prM-E mRNA-LNP又は対照ポリ(C)RNA-LNP 30μgで免疫したBALB/cマウスを、ワクチン接種後(
図2A)2週目(1群あたりn=9)又は(
図2B)20週目(n=5 対照マウス;n=10 ZIKV mRNAマウス)にZIKV PRVABC59 200PFUでi.v.チャレンジし、そして、ZIKVカプシドRNAについてqRT-PCRによって血漿ウイルス量を測定した。記号‡は、2本の重複している曲線を示す。破線は、検出限界(200コピー/mL)を示し、検出不可能な曲線は個々のマウスを示すためにずらした。ワクチン及び対照の群における3日目の血流中のウイルスの存在をマンホイットニー検定によって比較した、両チャレンジについてP<0.001。
【
図3A-3C】
図3A~3Cを含む
図3は、ヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNPによる免疫が、非ヒト霊長類において強力なZIKV特異的中和抗体応答を惹起することを立証する実験の結果を示す。ZIKV prM-E mRNA-LNP 600μg(n=4)、200μg(n=3)、又は50μg(n=3)でアカゲザルを免疫し、そして、(
図3A)ELISA、(
図3B)ZIKV MEX I-44を使用するFRNT、及び(
図3C)ZIKV H/PF/2013を使用するRVPによって抗体応答を定量した。プレチャレンジのみ及びチャレンジしていない動物のデータを示す。点は、個々のサルを表し;破線は、検出限界を示し;横線は、平均を示す。用量群における免疫応答をクラスカルワリス検定によって比較した、全ての比較についてP>0.05。
【
図4】
図4は、ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNPの単回免疫が、免疫後5週目におけるZIKVチャレンジからアカゲザルを防御することを立証する実験の結果を示す。6頭のワクチン接種されていない対照アカゲザル及び0週目にZIKV mRNA-LNP 50μg(n=3)、200μg(n=1)、又は600μg(n=1)を投与した5頭のワクチン接種されたアカゲザルを、5週目にZIKV PRVABC59 10
4TCID50でs.c.チャレンジした。ZIKVカプシドRNAについてqRT-PCRによって血漿中のウイルス量を測定した。破線は、その下の値が検出限界未満である閾値(50コピー/mL)を示し、そして、検出不可能な値は個々のマウスを示すためにずらした。ワクチン及び対照の群における3日目及び5日目の血流中のウイルスの存在をマンホイットニー検定によって比較した、P<0.001。
【
図5A-5C】
図5A~
図5Cを含む
図5は、ZIKV prM-E mRNAの設計及び特性評価を示す。(
図5A)ZIKV mRNAは、MHCクラスII由来のシグナルペプチド(SP)、並びにZIKV H/PF/2013由来のprM及びEの糖タンパク質をコードしている。(
図5B)mRNAを293T細胞(n=3)、ヒトDC(n=2)、又はマウスDC(n=2)にトランスフェクトした。ネガティブコントロールとしてルシフェラーゼmRNAがトランスフェクトされた細胞を使用して、細胞溶解物及び上清中のEタンパク質の発現をウエスタンブロットによってプロービングした。(
図5C)トランスフェクトされた293T細胞由来のZIKV mRNA上清を、0.5% Triton X-100の存在及び非存在下で超遠心し、続いて、インプット(IN)、ペレット(P)、及び最終上清(S)の画分のウエスタンブロットを行うことによって特性評価(n=3)した。
【
図6】
図6は、ZIKV prM-Eをコードしている改変mRNAが翻訳され、そして、サブウイルス粒子を分泌することを立証する実験の結果を示す。
【
図7】
図7は、ヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNP免疫が多機能性ZIKV E特異的CD4+ T細胞応答を惹起することを立証する実験の結果を示す。ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNP(n=8)又は対照ポリ(C)RNA-LNP(n=4) 30μgでC57BL/6マウスを免疫した。2週目に、細胞内サイトカイン染色によって抗原特異的CD4+ T細胞を検出した。棒グラフは、CD4+ T細胞によって産生されたサイトカインの組み合わせの平均頻度を示す。エラーバーはSEMを示し、そして、アスタリスクは、スチューデントt検定による有意差(p<0.05)を示す。
【
図8A-8B】
図8A及び
図8Bを含む
図8は、マウスにおけるZIKV Eタンパク質特異的IgG濃度を測定する実験の結果を示す。免疫された(
図8A)C57BL/6マウス(n=4 対照;n=8 ZIKV mRNA-LNP)又は(
図8B)BALB/cマウス(n=5 対照;n=10 ZIKV mRNA-LNP)由来の血清をELISAによってアッセイし、そして、標準物質としてマウスモノクローナルmAb NR-4747を用いてZIKV Eタンパク質特異的IgG濃度の推定値を計算した。点は、個々のマウスを表し;横線は、平均を示す。ワクチン及び対照の群における応答を、マンホイットニー検定によって各時点において比較した、全ての比較についてP<0.01。
【
図9】
図9は、ヒト抗ZIKV中和mAbの中和曲線を示す。PRNTアッセイにおけるポジティブコントロールとしてヒトZIKV中和モノクローナル抗体であるAb3594によってZIKV MR-766を中和した。代表的な曲線を示す(n=4)。EC50=0.026±5.4μg mL
-1(平均±s.d.)。
【
図10A-10B】
図10A及び
図10Bを含む
図10は、ZIKV prM-E mRNA-LNPで免疫されたアカゲザルにおいて中和抗体がZIKV MR-766に対して応答することを立証する実験の結果を示す。免疫されたアカゲザル由来の血清を、指定の時点においてPRNTアッセイ(
図10A)又はRVPアッセイ(
図10B)を使用してZIKV MR-766の中和について分析した。陰影部分は、検出限界未満の値を示し;横線は、平均を示し;記号は、個々の動物を示す。用量群における免疫応答をクラスカルワリス検定によって比較した、全ての比較についてP>0.05。
【0021】
詳細な説明
本発明は、対象においてZIKVに対する免疫応答を誘導するための組成物及び方法に関する。特定の実施態様では、本発明は、少なくとも1つのZIKV抗原をコードしている少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAを含む組成物を提供する。例えば、一実施態様では、該組成物は、少なくとも1つのZIKV抗原をコードしている少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAを含むワクチンであって、対象において少なくとも1つのZIKV抗原に対する免疫応答を誘導し、したがって、対象においてZIKVウイルス又はZIKVに関連する病状に対する免疫応答を誘導するワクチンである。特定の実施態様では、該少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAは、ZIKVの前駆膜(prM)タンパク質、ZIKVのエンベロープ(E)タンパク質、又はこれらの組み合わせをコードしている。一実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、ZIKVのprM及びE(prM-E)タンパク質を両方コードしている。一実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、MHCクラスII由来のシグナルペプチド(SP)を含むタンパク質をコードしている。一実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、MHCクラスII由来のSP、ZKIVのprM、及びZKIVのEを含むタンパク質をコードしている。特定の実施態様では、該少なくとも1つのヌクレオシド改変RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)内に封入されている。
【0022】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書で使用するとき、以下の用語はそれぞれ、この章においてそれに関連付けられる意味を有する。
【0024】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的目的語の1つ又は1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書において使用される。一例として、「an element(要素)」は、1つの要素又は1つ超の要素を意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき「約」は、量、持続時間等の測定可能な値に言及するとき、指定の値から±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1%のばらつきを包含することを意味するが、それは、このようなばらつきが開示される方法を実施するのに適しているためである。
【0026】
用語「抗体」は、本明細書で使用するとき、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源又は組み換え源に由来するインタクトな免疫グロブリンであってもよく、そして、該インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、及びF(ab)2、並びに単鎖抗体及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0027】
用語「抗体断片」とは、インタクトな抗体の一部を指し、そして、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvの断片、線状抗体、scFv抗体、並びに抗体断片から形成される多特異的抗体を含むが、これらに限定されない。
【0028】
「抗体重鎖」とは、本明細書で使用するとき、その天然に存在する立体構造において全ての抗体分子に存在する2種のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0029】
「抗体軽鎖」とは、本明細書で使用するとき、その天然に存在する立体構造において全ての抗体分子に存在する2種のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ及びλ軽鎖とは、2つの主な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0030】
用語「合成抗体」とは、本明細書で使用するとき、例えば、バクテリオファージによって発現された抗体等、組み換えDNA技術を用いて生成された抗体を意味する。また、この用語は、抗体をコードしているDNA分子の合成によって生成され、そして、DNA分子が抗体タンパク質又は該抗体を特定するアミノ酸配列を発現する抗体であって、該DNA又はアミノ酸の配列が、当技術分野において利用可能であり、そして、周知である合成DNA又はアミノ酸シークエンス技術を使用して得られた抗体を意味するとも解釈すべきである。また、この用語は、抗体をコードしているRNA分子の合成によって生成された抗体を意味するとも解釈すべきである。該RNA分子は、抗体タンパク質又は該抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、該RNAは、当技術分野において利用可能であり、そして、周知であるDNA(合成又はクローン化)を転写又は他の技術を使用して得られた。
【0031】
用語「抗原」又は「Ag」は、本明細書で使用するとき、適応免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫原性担当細胞(immunogenically-competent cells)の活性化、又は両方を含み得る。当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の巨大分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。更に、抗原は、組み換え又はゲノムのDNA又はRNAに由来してもよい。したがって、当業者は、適応免疫応答を惹起するタンパク質をコードしているヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNA又はRNAが、この用語が本明細書で使用されるときの「抗原」をコードしていることを理解するであろう。更に、当業者は、抗原が必ずしも遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によって単独でコードされていなくてもよいことを理解するであろう。本発明が、1つ超の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むがこれに限定されないこと、そして、これらヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を惹起するために様々な組み合わせで配置されることは容易に明らかである。更に、当業者は、抗原が全く「遺伝子」によってコードされていなくてもよいことを理解するであろう。抗原が合成的に生成されてもよく、生体試料に由来していてもよいことは容易に明らかである。このような生体試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞、又は生体液を含み得るが、これらに限定されない。
【0032】
用語「アジュバント」は、本明細書で使用するとき、抗原特異的適応免疫応答を増強する任意の分子として定義される。
【0033】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持することができず、そして、該疾患が寛解しない場合、該動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、動物がホメオスタシスを維持することはできるが、該動物の健康状態が該障害が存在しないときよりも好ましくない健康状態である。未処置のまま放置しても、障害は、必ずしも動物の健康状態を更に悪化させるわけではない。
【0034】
「有効量」とは、本明細書で使用するとき、治療的又は予防的な効果をもたらす量を意味する。
【0035】
「コードする」とは、所定の配列のヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)又は所定の配列のアミノ酸のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び巨大分子を合成するためのテンプレートとして機能するポリヌクレオチド、例えば、遺伝子、cDNA、又はmRNAにおける特定の配列のヌクレオチドの固有の特性、並びにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞又は他の生物系においてタンパク質が生成される場合、該タンパク質をコードしている。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、そして、通常配列表に提供されるコード鎖及び遺伝子又はcDNAを転写するためのテンプレートとして使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子若しくはcDNAのタンパク質又は他の生成物をコードしていると称することができる。
【0036】
「発現ベクター」とは、発現するヌクレオチド配列に機能可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって又はインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターは、組み換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッドな又はリポソーム内に含有されている)RNA、及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)等、当技術分野において公知のものを全て含む。
【0037】
「相同」とは、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を指す。2つの比較される配列の両方におけるある位置が、同じ塩基又はアミノ酸のモノマーサブユニットによって占有されているとき、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおけるある位置がアデニンによって占有されている場合、該分子はその位置において相同である。2つの配列間の相同性の割合は、比較される位置の数で除し、100を乗じた、該2つの配列によって共有されている一致するか又は相同な位置の数の関数である。例えば、2つの配列における10の位置のうちの6つが一致しているか又は相同である場合、該2つの配列は60%相同である。一例として、DNA配列ATTGCC及びTATGGCは、50%相同性を共有している。一般に、相同性が最大になるように2つの配列を整列させたときに比較を行う。
【0038】
「免疫原」とは、免疫応答を生じさせるために体内に導入される任意の物質を指す。その物質は、身体分子、例えば、タンパク質であってもよく、又はDNA、mRNA、若しくはウイルス等、ベクターによってコードされていてもよい。
【0039】
「免疫応答」とは、この用語が本明細書で使用されるとき、非限定的な例として、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び/又は抗原提示細胞(APC)においてエフェクタ機能を活性化及び/又は誘導することを含むプロセスを意味する。したがって、免疫応答は、当業者に理解される通り、ヘルパーT細胞又は細胞傷害性T細胞の活性又は応答の任意の検出可能な抗原特異的活性化及び/又は誘導、抗体の産生、抗原提示細胞の活性又は浸潤、マクロファージの活性又は浸潤、好中球の活性又は浸潤等を含むが、これらに限定されない。
【0040】
「単離された」とは、天然の状態から変化している又は取り出されたことを意味する。例えば、生存している動物において天然に存在している核酸又はペプチドは「単離され」ていないが、その天然状態の共存している物質から部分的に又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離され」ている。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもでき、又は例えば宿主細胞等の非ネイティブな環境中に存在することもできる。
【0041】
本発明の状況では、一般的に存在するヌクレオシド(N-グリコシド結合を介してリボース又はデオキシリボースの糖に結合しているヌクレオベース)について以下の略記を使用する。「A」はアデノシンを指し、「C」はシチジンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、そして、「U」はウリジンを指す。
【0042】
特に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、そして、同じアミノ酸配列をコードしている全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードしているヌクレオチド配列という言い回しは、該タンパク質をコードしているヌクレオチド配列が幾つかのバージョンではイントロンを含有し得る限りにおいてイントロンを含んでいてもよい。
【0043】
用語「調節する」とは、本明細書で使用するとき、処置若しくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して及び/又は未処置である以外同一の対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増大又は減少を媒介することを意味する。この用語は、ネイティブのシグナル又は応答を撹乱し及び/又は影響を及ぼし、それによって、対象、例えばヒトにおける有益な処置的応答を媒介することを包含する。
【0044】
特に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、そして、同じアミノ酸配列をコードしている全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質及びRNAをコードしているヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。更に、該ヌクレオチド配列は、細胞における翻訳機構によって翻訳され得る改変ヌクレオシドを含有していてもよい。例えば、ウリジンが全てプソイドウリジン、1-メチルプソイドウリジン、又は別の改変ヌクレオシドで置き換えられているmRNAである。
【0045】
用語「機能可能に連結された」とは、異種核酸配列を発現させる、制御配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置されているとき、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能可能に連結されている。例えば、プロモータがコード配列の転写又は発現に影響を与える場合、プロモータはコード配列に機能可能に連結されている。一般的に、機能可能に連結されたDNA又はRNAの配列は隣接しており、そして、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合、同じ読み枠で存在する。
【0046】
用語「患者」、「対象」、「個体」等は、本明細書において互換的に使用され、そして、インビトロであろうとインサイツであろうと、本明細書に記載される方法に従う任意の動物又はその細胞を指す。特定の非限定的な実施態様では、患者、対象、又は個体は、ヒトである。
【0047】
用語「ポリヌクレオチド」とは、本明細書で使用するとき、ヌクレオチドの鎖として定義される。更に、核酸は、ヌクレオチドのポリマーである。したがって、核酸及びポリヌクレオチドは、本明細書で使用するとき、互換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、該ポリヌクレオチドが単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るという一般知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用するとき、ポリヌクレオチドは、組み換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCR(商標)を使用した組み換えライブラリ又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含むがこれに限定されない当技術分野において利用可能な任意の手段によって、及び合成手段によって得られた全ての核酸配列を含むが、これらに限定されない。
【0048】
特定の例では、本発明のポリヌクレオチド又は核酸は、「ヌクレオシド改変核酸」であり、これは、少なくとも1つの改変ヌクレオシドを含む核酸を指す。「改変ヌクレオシド」とは、改変を含むヌクレオシドを指す。例えば、100を超える異なるヌクレオシド改変がRNAで同定されている(Rozenski, et al., 1999, The RNA Modification Database: 1999 update. Nucl Acids Res 27: 196-197)。
【0049】
特定の実施態様では、「プソイドウリジン」とは、別の実施態様では、m1acp3Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジンを指す。別の実施態様では、該用語は、m1Ψ(1-メチルプソイドウリジン)を指す。別の実施態様では、該用語は、Ψm(2’-O-メチルプソイドウリジンを指す。別の実施態様では、該用語は、m5D(5-メチルジヒドロウリジン)を指す。別の実施態様では、該用語は、m3Ψ(3-メチルプソイドウリジン)を指す。別の実施態様では、該用語は、それ以上改変されていないプソイドウリジン部分を指す。別の実施態様では、該用語は、上記プソイドウリジンのいずれかの一リン酸塩、二リン酸塩、又は三リン酸塩を指す。別の実施態様では、該用語は、当技術分野において公知の任意の他のプソイドウリジンを指す。各可能性は、本発明の別個の実施態様を表す。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は互換的に使用され、そして、ペプチド結合によって機能可能に連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有していなければならず、そして、タンパク質又はペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数は限定されない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに接合している2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用するとき、この用語は、例えば一般的に当技術分野においてペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも称される短鎖、及び一般的に当技術分野においてタンパク質と称されるより長い鎖の両方を指し、これらには多くの種類が存在する。「ポリペプチド」は、例えば、数ある中でも、生物学的に活性のある断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組み合わせを含む。
【0051】
用語「プロモータ」は、本明細書で使用するとき、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるのに必要な、細胞の合成機構によって認識されるか又は合成機構に導入されるDNA配列として定義される。例えば、プロモータは、バクテリオファージRNAポリメラーゼによって認識され、そして、インビトロ転写によってmRNAを生成するために使用される。
【0052】
用語「特異的に結合する」とは、抗体に関して本明細書で使用するとき、特定の抗原は認識するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識も結合もしない抗体を意味する。例えば、ある種に由来する抗原に特異的に結合する抗体は、1つ以上の他の種に由来する抗原にも結合することがある。しかし、このような異種間反応性は、それ自体、抗体の特異的であるとの分類を変化させない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の異なるアレル型にも結合することがある。しかし、このような交差反応性は、それ自体、抗体の特異的であるとの分類を変化させない。幾つかの例では、用語「特異的結合」又は「特異的に結合」は、抗体、タンパク質、又はペプチドと第2の化学種との相互作用に関連して使用することができ、該相互作用が化学種における特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味し;例えば、抗体は、広くタンパク質を認識し、そして、結合するのではなく、特定のタンパク質構造を認識し、そして、結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」及び抗体を含む反応において、エピトープAを含有する分子(又は遊離している未標識のA)の存在が、抗体に対して結合する標識されたAの量を低減する。
【0053】
用語「処置」とは、本明細書で使用するとき、治療及び/又は予防を意味する。処置効果は、疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の抑制、減少、寛解、又は根絶によって得られる。
【0054】
用語「処置的に有効な量」とは、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家が求めている組織、系、又は対象の生物学的又は医学的な応答を惹起する対象化合物の量を指す。用語「処置的に有効な量」は、投与されたとき、処置される障害又は疾患の徴候又は症状のうちの1つ以上の発現を予防するか又はある程度軽減するのに十分な化合物の量を含む。処置的に有効な量は、化合物、疾患及びその重篤度、並びに処置される対象の年齢、体重等に依存して変動する。
【0055】
疾患を「処置する」とは、この用語が本明細書で使用されるとき、対象が経験した疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重篤度を低減することを意味する。
【0056】
用語「トランスフェクト」又は「形質転換」又は「形質導入」は、本明細書で使用するとき、外因性核酸を宿主細胞に移入又は導入するプロセスを指す。「トランスフェクト」又は「形質転換」又は「形質導入」された細胞は、外因性核酸がトランスフェクト、形質転換、又は形質導入されたものである。該細胞は、初代対象細胞及びその後代を含む。
【0057】
「転写制御下」又は「機能可能に連結された」という言い回しは、本明細書で使用するとき、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するためにポリヌクレオチドに関して正確な位置及び配向でプロモータが存在することを意味する。
【0058】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、そして、該単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性の化合物に結合しているポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが、当技術分野において公知である。したがって、用語「ベクター」は、自己複製プラスミド又はウイルスを含む。この用語は、核酸の細胞への移入を促進する非プラスミド及び非ウイルスの化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等を含むとも解釈すべきである。ウイルスベクターの例は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等を含むが、これらに限定されない。
【0059】
範囲:この開示全体を通して、発明の様々な態様を範囲形式で提示することがある。範囲形式での記載は単に便宜上及び簡潔化のためであり、そして、本発明の範囲に対する確固たる限定であると解釈すべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の具体的に開示された全ての可能な部分範囲及び個々の数値を含むとみなすべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の具体的に開示された部分範囲、並びに例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6等のその範囲内の個々の数字を含むとみなすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0060】
説明
本発明は、対象においてZIKVに対する免疫応答を誘導するための組成物及び方法に関する。特定の実施態様では、本発明は、ZIKV抗原をコードしている核酸分子を含む組成物であって、該ZIKV抗原が対象においてZIKVに対する免疫応答を誘導する組成物を提供する。幾つかの実施態様では、誘導される免疫応答は、適応免疫応答である。例えば、特定の実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原をコードしている核酸分子を含むワクチンを含む。特定の実施態様では、該ZIKV抗原は、防御抗体の発現を誘導する。特定の実施態様では、該ZIKV抗原は、アジュバント機能を提供する。
【0061】
一実施態様では、本発明の組成物は、インビトロで転写された(IVT)RNAを含む。例えば、特定の実施態様では、本発明の組成物は、ZIKV抗原をコードしているIVT RNAであって、該ZIKV抗原が適応免疫応答を誘導するIVT RNAを含む。特定の実施態様では、該ZIKV抗原は、ZIKVエンベロープ(E)タンパク質、ZIKV前駆膜(prM)タンパク質、ZIKV膜(M)タンパク質、ZIKVカプシド(C)タンパク質、ZIKV NS1、ZIKV NS2A、ZIKV NS2B、ZIKV NS3、ZIKV NS4A、ZIKV NS4B、ZIKV NS5、又はこれらの断片のうちの少なくとも1つである。
【0062】
特定の実施態様では、本組成物の抗原をコードしている核酸は、ヌクレオシド改変RNAである。本発明は、ZIKV抗原をコードしているヌクレオシド改変RNAがZIKVに対するロバストかつ持続性の免疫応答を誘導するという知見に部分的に基づいている。更に、該ZIKV抗原をコードしているヌクレオシド改変RNAは、抗原特異的抗体産生を誘導することが観察された。該ヌクレオシド改変RNAは、現在のZIKVワクチンストラテジと同等又はより優れた適応免疫応答を誘導することが立証される。
【0063】
特定の実施態様では、本組成物の抗原をコードしている核酸は、精製されたヌクレオシド改変RNAである。例えば、特定の実施態様では、該組成物は、二本鎖の夾雑物を含まないように精製される。
【0064】
特定の実施態様では、該組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。例えば、一実施態様では、該組成物は、LNP内に封入されている、ZIKV抗原をコードしている核酸分子を含む。特定の例では、該LNPは、核酸分子の細胞取り込みを増強する。
【0065】
特定の実施態様では、該組成物は、アジュバントを含む。特定の実施態様では、該組成物は、アジュバントをコードしている核酸分子を含む。例えば、一実施態様では、該組成物は、アジュバントをコードしているヌクレオシド改変RNAを含む。一実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原及びアジュバントをコードしているヌクレオシド改変RNAを含む。一実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原をコードしている第1のヌクレオシド改変RNAと、アジュバントをコードしている第2のヌクレオシド改変RNAとを含む。一実施態様では、該組成物は、アジュバント及びLNPをコードしているヌクレオシド改変RNAであって、該LNPがアジュバント活性を有するRNAを含む。
【0066】
一実施態様では、本発明は、対象においてZIKVに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。幾つかの実施態様では、該方法は、ZIKV抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードしている1つ以上のヌクレオシド改変RNAを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0067】
一実施態様では、該方法は、例えば、皮内投与又は皮内投与を含む、該組成物を対象に全身投与することを含む。特定の実施態様では、該方法は、複数の用量を対象に投与することを含む。別の実施態様では、該方法は、単一用量の組成物を投与することを含み、該単一用量は、適応免疫応答を誘導するのに有効である。一実施態様では、該方法は、持続性の又は長期に及ぶ免疫応答を提供する。
【0068】
ワクチン
一実施態様では、本発明は、対象においてZIKVに対する免疫応答を誘導するための免疫原性組成物を提供する。例えば、一実施態様では、該免疫原性組成物は、ワクチンである。組成物がワクチンとして有用であるためには、該組成物は、細胞、組織、又は哺乳類(例えば、ヒト)においてZIKV抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。特定の例では、ワクチンは、哺乳類において防御免疫応答を誘導する。本明細書で使用するとき、「免疫原性組成物」は、抗原(例えば、ペプチド又はポリペプチド)、抗原をコードしている核酸、抗原若しくは細胞成分を発現若しくは提示している細胞、又はこれらの組み合わせを含み得る。具体的な実施態様では、該組成物は、本明細書に記載される任意のペプチド抗原の全て若しくは一部、又はその免疫原性的機能等価物を含むかコードしている。他の実施態様では、該組成物は、追加の免疫賦活剤又はこのような剤をコードしている核酸を含む混合物中に存在する。免疫賦活剤は、追加の抗原、免疫調節剤、抗原提示細胞、脂質ナノ粒子、又はアジュバントを含むが、これらに限定されない。他の実施態様では、追加の剤のうちの1つ以上は、任意の組み合わせにおいて、抗原又は免疫賦活剤に共有結合している。
【0069】
本発明の状況では、用語「ワクチン」とは、動物に接種された際に免疫応答を誘導する組成物を指す。幾つかの実施態様では、誘導された免疫応答は、防御免疫を提供する。
【0070】
本発明のワクチンは、その核酸及び/又は細胞成分の組成が変動し得る。非限定的な例では、ZIKV抗原をコードしている核酸は、アジュバントと共に製剤化されてもよい。無論、本明細書に記載される様々な組成物は、追加の成分を更に含んでいてもよいことが理解される。例えば、1つ以上のワクチン成分は、脂質、リポソーム、又は脂質ナノ粒子に含まれていてよい。別の非限定的な例では、ワクチンは、1つ以上のアジュバントを含み得る。本発明のワクチン及びその様々な成分は、本開示に鑑みて、本明細書に開示される任意の方法によって又は当業者に公知の通り、調製及び/又は投与され得る。
【0071】
ZIKV抗原の発現による免疫の誘導は、ZIKV抗原に対する、宿主における免疫系の全て又は任意の部分のインビボ又はインビトロにおける応答を観察することによって検出することができる。
【0072】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出する方法は周知である。生体に侵入する外来物質は、APCの作用によってT細胞及びB細胞に提示される。抗原特異的にAPCによって提示される抗原に対して応答するT細胞は、抗原による刺激によって細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球又はCTLとも称される)に分化する。これら抗原で刺激された細胞は、次いで、増殖する。このプロセスは、本明細書ではT細胞の「活性化」と称される。したがって、ポリペプチド若しくはペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープによるCTLの誘導は、APCによってポリペプチド若しくはペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープをT細胞に提示させ、そして、該CTLの誘導を検出することによって評価することができる。更に、APCは、B細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、及びNK細胞を活性化する効果を有する。
【0073】
APCとして樹状細胞(DC)を使用してCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野において周知である。DCは、APCの中でもロバストなCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。本発明の方法では、最初に、ポリペプチド若しくはペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープをDCによって発現させ、次いで、このDCをT細胞と接触させる。DCと接触した後に対象となる細胞に対して細胞傷害効果を有するT細胞が検出されることは、ポリペプチド若しくはペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープが細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することを示す。更に、誘導された免疫応答は、ELISPOTアッセイ等の抗IFNガンマ抗体を使用して可視化することによって、固定化されたペプチド又はペプチドの組み合わせを有する抗原提示細胞の存在下でCTLによって産生及び放出されるIFNガンマを測定することによって調べることもできる。
【0074】
DCの他に、末梢血単核球(PBMC)をAPCとして使用することもできる。CTLの誘導は、GM-CSF及びIL-4の存在下でPBMCを培養することによって増強されると報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
【0075】
これら方法によってCTL誘導活性を有すると確認された抗原は、DC活性化効果、及びその後のCTL誘導活性を有する抗原である。更に、APCによる抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLは、抗原関連障害に対するワクチンとして使用することもできる。
【0076】
ZIKV抗原の発現による免疫の誘導は、ZIKV抗原に対する抗体産生の誘導を観察することによって更に確認することができる。例えば、抗原に対する抗体が、該抗原をコードしている組成物で免疫された実験動物において誘導されたとき及びこの抗体によって抗原関連病状が抑制されたとき、該組成物は免疫を誘導すると判定される。
【0077】
ZIKV抗原の発現による免疫の誘導は、CD4+ T細胞の誘導を観察することによって更に確認することができる。CD4+ T細胞は、標的細胞を溶解させることもできるが、主に、CTL及び抗体の産生を含む他の種類の免疫応答の誘導を支援する。CD4+ T細胞の支援の種類は、Th1、Th2、Th9、Th17、制御性T、又は濾胞ヘルパーT(Tfh)の細胞として特徴付けることができる。CD4+ T細胞の各サブタイプは、特定の種類の免疫応答を支援する。一実施態様では、前記組成物は、強力な抗体応答を駆動する濾胞ヘルパーT細胞を選択的に誘導する。
【0078】
本発明の処置化合物又は組成物は、疾患又は障害に罹患しているか又は発現するリスクを有する(又は発現しやすい)対象に予防的に(すなわち、疾患又は障害を予防するために)又は治療的に(すなわち、疾患又は障害を治療するために)投与され得る。このような対象は、標準的な臨床方法を使用して同定することができる。本発明の状況では、予防的投与は、疾患の明らかな臨床症状が顕在化する前に行われ、その結果、疾患又は障害が予防されるか又はその進行が遅延する。医学分野の状況では、用語「予防」は、疾患による死亡率又は罹患率の荷重を低減する任意の活性を包含する。予防は、一次、二次、及び三次の予防レベルで行ってよい。一次予防は疾患の発現を回避するが、二次及び三次のレベルの予防は、疾患の進行及び症状の出現を予防することに加えて、回復機能によって既存の疾患の負の影響を低減し、そして、疾患に関連する合併症を低減することを目的とした活性を包含する。
【0079】
抗原
本発明は、対象において免疫応答を誘導する組成物を提供する。一実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原を含む。一実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原をコードしている核酸配列を含む。例えば、特定の実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原をコードしているヌクレオシド改変RNAを含む。特定の実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原をコードしている精製されたヌクレオシド改変RNAを含む。抗原は、対象において免疫応答を誘導するポリペプチド、ペプチド、又はタンパク質を含み得るが、これらに限定されない。
【0080】
一実施態様では、抗原は、ZIKVに関連するポリペプチド又はペプチドを含み、その結果、該抗原は、該抗原、ひいてはZIKVに対する免疫応答を誘導する。一実施態様では、抗原は、ZIKVに関連するポリペプチド又はペプチドの断片を含み、その結果、該抗原は、ZIKVに対する免疫応答を誘導する。
【0081】
特定の実施態様では、該ZIKV抗原は、ZIKVエンベロープ(E)タンパク質、ZIKV前駆膜(prM)タンパク質、ZIKV膜(M)タンパク質、ZIKVカプシド(C)タンパク質、ZIKV NS1、ZIKV NS2A、ZIKV NS2B、ZIKV NS3、ZIKV NS4A、ZIKV NS4B、ZIKV NS5、又はこれらの断片のうちの少なくとも1つである。
【0082】
一実施態様では、該抗原は、MHCクラスII由来のシグナルペプチド(SP)を含むタンパク質を含む。一実施態様では、該抗原は、MHCクラスII由来のSP、ZKIVのprM、及びZKIVのEを含む。
【0083】
一実施態様では、該組成物は、SP-prM-Eをコードしている核酸配列を含み、該核酸配列は、以下を含む:
【化7】
一実施態様では、該組成物は、1つ以上の残基が本明細書の他の箇所に記載される通り改変ヌクレオシドで置き換えられている、ヌクレオシドが改変された配列番号1を含む。
【0084】
一実施態様では、該組成物は、以下を含むアミノ酸配列を有する、SP-prM-Eをコードしている核酸配列を含む:
【化8】
【0085】
ZIKV抗原は、任意の種類又は株のZIKVのものであってよい。例えば、一実施態様では、該ZIKV抗原は、
【化9】
を含むがこれらに限定されないZIKV株のタンパク質又はその断片である。
【0086】
特定の実施態様では、該ZIKV抗原は、本明細書に記載されるZIKV抗原のアミノ酸配列と実質的に相同であり、そして、元のアミノ酸配列の免疫原性機能を保持しているアミノ酸配列を含む。例えば、特定の実施態様では、該ZIKV抗原のアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%の同一性の程度を有する。
【0087】
一実施態様では、該ZIKV抗原は、核酸分子の核酸配列によってコードされている。特定の実施態様では、該核酸配列は、DNA、RNA、cDNA、これらの変異体、これらの断片、又はこれらの組み合わせを含む。一実施態様では、該核酸配列は、改変核酸配列を含む。例えば、一実施態様では、ZIKV抗原をコードしている核酸配列は、本明細書の他の箇所に詳細に記載される通りヌクレオシド改変RNAを含む。特定の例では、該核酸配列は、ペプチド結合によって抗原に連結しているリンカー又はタグの配列をコードしている追加の配列を含む。
【0088】
アジュバント
一実施態様では、該組成物は、アジュバントを含む。一実施態様では、該組成物は、アジュバントをコードしている核酸分子を含む。一実施態様では、該アジュバントをコードしている核酸分子は、IVT RNAである。一実施態様では、該アジュバントをコードしている核酸分子は、ヌクレオシド改変RNAである。
【0089】
例示的なアジュバントは、アルファ-インターフェロン、ガンマ-インターフェロン、血小板由来の成長因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、上皮成長因子(EGF)、皮膚T細胞誘引性ケモカイン(CTACK)、上皮胸腺発現ケモカイン(TECK)、粘膜関連上皮ケモカイン(MEC)、IL-12、IL-15、MHC、CD80、CD86を含むが、これらに限定されない。有用なアジュバントであり得る他の遺伝子は、以下をコードしているものを含む:MCP-I、MIP-Ia、MIP-Ip、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-I、VLA-I、Mac-1、pl50.95、PECAM、ICAM-I、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、G-CSF、IL-4、IL-18の突然変異型、CD40、CD40L、血管成長因子、線維芽細胞成長因子、IL-7、神経成長因子、血管内皮成長因子、Fas、TNF受容体、Fit、Apo-1、p55、WSL-I、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-I、Ap-I、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性NIK、SAP K、SAP-I、JNK、インターフェロン応答遺伝子、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANK LIGAND、Ox40、Ox40 LIGAND、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP 1、TAP2、抗CTLA4-sc、抗LAG3-Ig、抗TIM3-Ig、及びこれらの機能的断片。
【0090】
特定の実施態様では、前記組成物は、脂質ナノ粒子を含み、該脂質ナノ粒子は、アジュバントとして作用する。
【0091】
核酸
一実施態様では、本発明は、ヌクレオシド改変核酸分子を含む。一実施態様では、該ヌクレオシド改変核酸分子は、ZIKV抗原をコードしている。一実施態様では、該ヌクレオシド改変核酸分子は、1つ以上のZIKV抗原を含む複数の抗原をコードしている。特定の実施態様では、該ヌクレオシド改変核酸分子は、ZIKV抗原に対する適応免疫応答を誘導するZIKV抗原をコードしている。一実施態様では、本発明は、アジュバントをコードしているヌクレオシド改変核酸分子を含む。
【0092】
あるいは、結果として生じるポリヌクレオチドが本発明に係るポリペプチドをコードしている限り、本明細書に記載される通りZIKV抗原又はアジュバントをコードしているヌクレオチド配列は、元のヌクレオチド配列に対する配列変異、例えば、1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入、及び/又は欠失を含んでいてもよい。したがって、本発明の範囲は、本明細書に列挙されるヌクレオチド配列と実質的に相同であり、そして、対象となるZIKV抗原又はアジュバントをコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0093】
本明細書で使用するとき、あるヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列が、本明細書に記載されるヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性の程度を有するとき、該ヌクレオチド配列と「実質的に相同」である。抗原をコードしているヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列は、典型的には、例えば保存的又は非保存的な置換を導入することによって、該ヌクレオチド配列に含有されている情報に基づいて抗原を産生する生物から単離することができる。可能性のある改変の他の例は、配列における1つ以上のヌクレオチドの挿入、配列の末端のいずれかにおける1つ以上のヌクレオチドの付加、又は配列の任意の末端若しくは内部における1つ以上のヌクレオチドの挿入を含む。2つのポリヌクレオチド間の同一性の程度は、コンピュータアルゴリズム及び当業者に広く知られている方法を使用して決定される。
【0094】
更に、本発明の範囲は、本明細書に列挙されるアミノ酸配列と実質的に相同であり、そして、元のアミノ酸配列の免疫原性機能を保持しているアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0095】
本明細書で使用するとき、あるアミノ酸配列は、そのアミノ酸配列が、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性の程度を有するとき、該アミノ酸配列と「実質的に相同」である。2つのアミノ酸配列間の同一性は、BLASTNアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))を使用することによって決定され得る。
【0096】
一実施態様では、本発明は、ZIKV抗原をコードしているヌクレオチド配列を含むコンストラクトに関する。一実施態様では、該コンストラクトは、複数のZIKV抗原をコードしている複数のヌクレオチド配列を含む。例えば、特定の実施態様では、該コンストラクトは、1個以上、2個以上、5個以上、又は10個全てのZIKV抗原をコードしている。一実施態様では、本発明は、アジュバントをコードしているヌクレオチド配列を含むコンストラクトに関する。一実施態様では、該コンストラクトは、ZIKV抗原をコードしている第1のヌクレオチド配列とアジュバントをコードしている第2のヌクレオチド配列とを含む。
【0097】
一実施態様では、該組成物は、複数のコンストラクトを含み、各コンストラクトは1つ以上のZIKV抗原をコードしている。特定の実施態様では、該組成物は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、15個以上、又は20個以上のコンストラクトを含む。一実施態様では、該組成物は、ZIKV抗原をコードしているヌクレオチド配列を含む第1のコンストラクトとアジュバントをコードしているヌクレオチド配列を含む第2のコンストラクトとを含む。
【0098】
別の具体的な実施態様では、該コンストラクトは、翻訳制御エレメントに機能可能に結合している。本発明のヌクレオチド配列を発現させるための機能可能に結合している制御配列を該コンストラクトに組み込み、それによって、発現カセットを形成することができる。
【0099】
ベクター
ZIKV抗原又はアジュバントをコードしている核酸配列は、当技術分野において公知の組み換え方法を使用して、例えば、標準的な技術を使用して、遺伝子を発現している細胞由来のライブラリをスクリーニングすることによって、該遺伝子を含むことが知られているベクターからそれを誘導することによって、又は細胞及びそれを含有している組織から直接単離することによって得ることができる。あるいは、対象となる遺伝子は、合成で生成することもできる。
【0100】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、PCRによって生成された線状DNA配列、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターに該核酸をクローニングすることができる。特に対象となるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、シークエンシングベクター、及びインビトロ転写に最適化されたベクターを含む。
【0101】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビース、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、炭水化物、ペプチド、カチオン性ポリマー、及びリポソームを含む脂質ベースの系を含む。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0102】
非ウイルス送達系を利用する場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。核酸を宿主細胞に導入(インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)するために脂質製剤を使用することが想到される。別の態様では、核酸を脂質と関連付けてもよい。脂質と関連付けられた核酸は、リポソームの水性内部に封入されていてもよく、リポソームの脂質二重層内に散在していてもよく、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方に結合する連結分子を介してリポソームに付着していてもよく、リポソームに捕捉されていてもよく、リポソームと複合体を形成していてもよく、脂質を含有する溶液に分散していてもよく、脂質と混合されていてもよく、脂質と合わせられていてもよく、脂質中に分散物として含有されていてもよく、ミセルに含有されているか若しくはミセルと複合体を形成していてもよく、又は別の方法で脂質と関連付けられてよい。脂質、脂質/RNA、又は脂質/発現ベクターに関連する組成物は、溶液中の任意の特定の構造には限定されない。例えば、該組成物は、二重層構造中に、ミセルとして、又は「崩壊した」構造と共に存在し得る。また、該組成物は、単に溶液中に散在していてもよく、恐らく、サイズも形状も均一ではない凝集体を形成する。脂質は、天然の又は合成の脂質であってよい脂肪質の物質である。例えば、脂質は、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴に加えて、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドを含有する化合物の分類を含む。
【0103】
使用するのに好適な脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma, St. Louis, MOから入手することができ;ジセチルホスファート(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手することができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中脂質の原液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは唯一の溶媒として使用されるが、その理由は、メタノールよりも容易に蒸発するためである。「リポソーム」は、閉鎖された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される様々な単層及び多重層の脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内側水性媒体とを含む小胞構造を有すると特徴付けることができる。多重層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。該多重層リポソームは、リン脂質を過剰の水性溶液に懸濁させたときに自然に形成される。閉鎖構造が形成される前に脂質成分は自己再構成し、そして、脂質二重層間に水及び溶解している溶質を捕捉する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかし、正常小胞構造とは異なる構造を溶液中に有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造とみなしてもよく、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在してもよい。また、リポフェクタミン-核酸複合体も想到される。
【0104】
外因性核酸を宿主細胞に導入するか又は別の方法で本発明の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法に関係なく、宿主細胞中のmRNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを実施することができる。このようなアッセイは、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、ノーザンブロッティング及びRT-PCR;「生化学的」アッセイ、例えば、例えば免疫原性手段(ELISA及びウエスタンブロット)又は本発明の範囲内の剤を同定するための本明細書に記載されるアッセイによる特定のペプチドの有無の検出等を含む。
【0105】
インビトロで転写されたRNA
一実施態様では、本発明の組成物は、ZIKV抗原をコードしているインビトロで転写された(IVT)RNAを含む。一実施態様では、本発明の組成物は、複数のZIKV抗原をコードしているIVT RNAを含む。一実施態様では、本発明の組成物は、アジュバントをコードしているIVT RNAを含む。一実施態様では、本発明の組成物は、1つ以上のZIKV抗原及び1つ以上のアジュバントをコードしているIVT RNAを含む。
【0106】
一実施態様では、IVT RNAを一過的トランスフェクションの形態として細胞に導入することができる。該RNAは、合成によって生成されたプラスミドDNAテンプレートを使用してインビトロ転写によって生成される。適切なプライマー及びRNAポリメラーゼを使用して、任意の起源由来の対象となるDNAをPCRによってインビトロmRNA合成のためのテンプレートに直接変換することができる。DNAの起源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、又は任意の他の適切な起源のDNAであってよい。一実施態様では、インビトロ転写に望ましいテンプレートは、適応免疫応答を誘導することができるZIKV抗原である。一実施態様では、インビトロ転写に望ましいテンプレートは、適応免疫応答を増強することができるアジュバントである。
【0107】
一実施態様では、PCRに使用されるDNAは、オープンリーディングフレームを含有する。該DNAは、生物のゲノム由来の天然に存在するDNA配列由来であってよい。一実施態様では、該DNAは、遺伝子の一部の対象となる完全長遺伝子である。該遺伝子は、5’及び/又は3’非翻訳領域(UTR)の一部又は全てを含み得る。該遺伝子は、エキソン及びイントロンを含み得る。一実施態様では、該PCRに使用されるDNAは、ヒト遺伝子である。別の実施態様では、該PCRに使用されるDNAは、5’及び3’UTRを含むヒト遺伝子である。別の実施態様では、該PCRに使用されるDNAは、細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌を含む病原体又は共生生物由来の遺伝子である。別の実施態様では、該PCRに使用されるDNAは、5’及び3’UTRを含む、細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌を含む病原体又は共生生物由来のものある。あるいは、該DNAは、天然に存在する生物では通常発現しない人工DNAであってもよい。例示的な人工DNA配列は、互いにライゲーションされて融合タンパク質をコードしているオープンリーディングフレームを形成する遺伝子の部分を含有するものである。互いにライゲーションされるDNAの部分は、単一の生物由来であってもよく、又は1つ超の生物由来であってもよい。
【0108】
PCRのためのDNAの起源として使用することができる遺伝子は、生物において適応免疫応答を誘導又は増強するポリペプチドをコードしている遺伝子を含む。特定の例では、該遺伝子は、短期間処置に有用である。特定の例では、該遺伝子は、発現した遺伝子の投与量に関しての安全上の懸念が限られている。
【0109】
様々な実施態様では、プラスミドを使用して、トランスフェクションに使用されるmRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを生成する。
【0110】
安定性及び/又は翻訳効率を促進する能力を有する化学構造を使用してもよい。特定の実施態様では、該RNAは、5’及び3’UTRを有する。一実施態様では、該5’UTRは、ゼロ~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加される5’及び3’UTR配列の長さは、UTRの様々な領域にアニーリングするPCR用のプライマーを設計することを含むがこれらに限定されない、様々な方法によって変化させることができる。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するのに必要な5’及び3’UTRの長さを調節することができる。
【0111】
5’及び3’UTRは、対象となる遺伝子についての天然に存在する内因性の5’及び3’UTRであってよい。あるいは、フォワード及びリバースのプライマーにUTR配列を組み込むことによって又はテンプレートの任意の他の改変によって、対象となる遺伝子に対して内因性ではないUTR配列を付加することもできる。該対象となる遺伝子に対して内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を調節するために有用であり得る。例えば、3’UTR配列におけるAUリッチなエレメントは、mRNAの安定性を低下させ得ることが知られている。したがって、当業者に周知のUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を増大させるように3’UTRを選択又は設計することができる。
【0112】
一実施態様では、5’UTRは、内因性遺伝子のKozak配列を含有していてよい。あるいは、対象となる遺伝子に対して内因性ではない5’UTRが上記の通りPCRによって付加されているとき、5’UTR配列を付加することによってコンセンサスKozak配列を再設計することができる。Kozak配列は、一部のRNA転写物の翻訳の効率を増大させることができるが、効率的翻訳を可能にするために全てのRNAに必要であるとは考えられない。多くのmRNAについてのKozak配列の必要性は、当技術分野において公知である。他の実施態様では、5’UTRは、そのRNAゲノムが細胞内で安定であるRNAウイルスに由来していてよい。他の実施態様では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害するために、様々なヌクレオチドアナログを3’又は5’UTRにおいて使用してよい。
【0113】
遺伝子のクローニングを必要とすることなくDNAテンプレートからRNAを合成することを可能にするためには、転写される配列の上流のDNAテンプレートに転写のプロモータを結合させなければならない。RNAポリメラーゼのためのプロモータとして機能する配列をフォワードプライマーの5’末端に付加したとき、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物にRNAポリメラーゼプロモータが組み込まれる。一実施態様では、該プロモータは、本明細書の他の箇所に記載される通り、T7 RNAポリメラーゼプロモータである。他の有用なプロモータは、T3及びSP6のRNAポリメラーゼプロモータを含むがこれらに限定されない。T7、T3、及びSP6のプロモータのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。
【0114】
一実施態様では、該mRNAは、リボソームの結合、翻訳の開始、及び細胞内におけるmRNAの安定性を決定する5’末端におけるキャップ及び3’ポリ(A)テールの両方を有する。環状DNAテンプレート、例えば、プラスミドDNAでは、RNAポリメラーゼは、真核細胞において発現するのに適していない長い鎖状生成物を生成する。3’UTRの末端で線状化されたプラスミドDNAの転写の結果、通常のサイズのmRNAが生じ、これは、転写後にポリアデニル化されたとき、真核生物のトランスフェクションにおいて有効である。
【0115】
線状DNAテンプレートでは、ファージT7 RNAポリメラーゼは、テンプレートの最後の塩基を越えて転写物の3’末端を伸ばす(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003)。
【0116】
DNAテンプレートにポリA/Tストレッチを組み込む従来の方法は、分子クローニングである。しかし、プラスミドDNAに組み込まれたポリA/T配列はプラスミドの不安定性を引き起こすことがあるが、これは、プラスミド伝播のために組み換え能力のない細菌細胞を使用することを通して緩和することができる。
【0117】
ポリ(A)ポリメラーゼ、例えば、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)又は酵母ポリAポリメラーゼを使用して、インビトロ転写後にRNAのポリ(A)テールを更に伸ばすことができる。一実施態様では、100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドにポリ(A)テールの長さを増大させた結果、RNAの翻訳効率が約2倍増大する。更に、3’末端に様々な化学基を結合させて、mRNAの安定性を増大させることができる。このような結合は、改変/人工ヌクレオチド、アプタマー、及び他の化合物を含有し得る。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してATPアナログをポリ(A)テールに組み込むことができる。ATPアナログは、RNAの安定性を更に増大させることができる。
【0118】
また、5’キャップもmRNA分子に対して安定性を付与する。一実施態様では、5’cap1構造を含めるような方法によってRNAが生成される。このようなcap1構造は、ワクシニアキャッピング酵素及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素(CellScript, Madison, WI)を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野において公知の、そして、本明細書に記載される技術を使用して5’キャップが提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001);Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001);Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0119】
多数の異なる方法のいずれか、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems, Cologne, Germany))、(ECM 830 (BTX)(Harvard Instruments, Boston, Mass.)又はGene Pulser II(BioRad, Denver, Colo.)、Multiporator(Eppendort, Hamburg Germany)、リポフェクションを使用するカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマー封入、ペプチド媒介トランスフェクション、又は微粒子銃粒子送達システム、例えば、「遺伝子銃」(例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)を参照)を含むがこれらに限定されない市販されている方法を使用して、RNAを標的細胞に導入することができる。特定の実施態様では、本発明のRNAは、TransIT(登録商標)-mRNA transfection Kit(Mirus, Madison WI)の使用を含む方法で細胞に導入され、これは、場合によっては、高効率、低毒性のトランスフェクションを提供する。
【0120】
ヌクレオシド改変RNA
一実施態様では、本発明の組成物は、本明細書に記載されるZIKV抗原をコードしているヌクレオシド改変核酸を含む。一実施態様では、本発明の組成物は、1つ以上のZIKV抗原を含む複数の抗原をコードしているヌクレオシド改変核酸分子を含む。一実施態様では、本発明の組成物は、本明細書に記載されるアジュバントをコードしているヌクレオシド改変核酸を含む。一実施態様では、本発明の組成物は、1つ以上のZIKV抗原及び1つ以上のアジュバントをコードしているヌクレオシド改変核酸を含む。
【0121】
例えば、一実施態様では、該組成物は、ヌクレオシド改変RNAを含む。一実施態様では、該組成物は、ヌクレオシド改変mRNAを含む。ヌクレオシド改変mRNAは、例えば、安定性が増大する、自然免疫原性が低いか又は存在しない、及び翻訳が増強される等を含む、改変されていないmRNAよりも優れた具体的な利点を有する。本発明において有用なヌクレオシド改変mRNAは、米国特許第8,278,036号、同題8,691,966号、及び同題8,835,108号に更に記載されており、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
特定の実施態様では、ヌクレオシド改変mRNAは、任意の病態生理学的経路を活性化せず、非常に効率的にかつ送達のほぼ直後に翻訳され、そして、数日間継続するインビボにおける連続タンパク質生成のためのテンプレートとして機能する(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840;Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)。生理学的効果を発揮するのに必要なmRNAの量は少ないので、ヒトの処置に適用可能である。例えば、本明細書に記載される通り、ZIKV抗原をコードしているヌクレオシド改変mRNAは、抗原特異的抗体を生成する能力が立証されている。例えば、特定の例では、ヌクレオシド改変mRNAによってコードされている抗原は、改変されていないmRNAによってコードされている抗原と比較して、抗原特異的抗体生成のより多くの生成を誘導する。
【0123】
特定の例では、コードmRNAを送達することによるタンパク質の発現は、タンパク質、プラスミドDNA、又はウイルスベクターを使用する方法よりも優れた多くの効果を有する。mRNAのトランスフェクション中、所望のタンパク質のコード配列が細胞に送達される唯一の物質であり、したがって、プラスミド骨格、ウイルス遺伝子、及びウイルスタンパク質に関連する副作用が全て回避される。より重要なことに、DNA及びウイルスベースのベクターとは異なり、mRNAは、ゲノムに組み込まれるリスクを有さず、そして、mRNA送達直後にタンパク質生成が開始される。例えば、コードmRNAのインビボ注入の15~30分間以内に高濃度の循環タンパク質が測定されている。特定の実施態様では、タンパク質ではなくmRNAを使用することは多くの利点も有する。循環中のタンパク質の半減期は短いことが多く、したがって、タンパク質処置は頻回投与を必要とするが、mRNAは、数日間にわたって連続タンパク質生成のためのテンプレートを提供する。タンパク質の精製は問題があり、そして、タンパク質は、凝集体及び有害作用を引き起こす他の不純物を含有する場合がある(Kromminga and Schellekens, 2005, Ann NY Acad Sci 1050:257-265)。
【0124】
特定の実施態様では、前記ヌクレオシド改変RNAは、天然に存在する改変ヌクレオシドであるプソイドウリジンを含む。特定の実施態様では、プソイドウリジンを含めると、mRNAがより安定、非免疫原性、そして、高度に翻訳可能になる(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840;Anderson et al., 2010, Nucleic Acids Res 38:5884-5892;Anderson et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:9329-9338;Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:e142;Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953;Kariko et al., 2005, Immunity 23:165-175)。
【0125】
RNA中にプソイドウリジンを含む改変ヌクレオシドが存在すると、その自然免疫原性が抑制されることが立証されている(Kariko et al., 2005, Immunity 23:165-175)。更に、プソイドウリジンを含有する、タンパク質をコードしており、インビトロで転写されるRNAは、改変ヌクレオシドを含有しないか又は他の改変ヌクレオシドを含有するRNAよりも効率的に翻訳され得る(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840)。その後、プソイドウリジンの存在が、RNAの安定性を改善し(Anderson et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:9329-9338)、そして、PKRの活性化及び翻訳の阻害の両方を軽減する(Anderson et al., 2010, Nucleic Acids Res 38:5884-5892)ことが示されている。
【0126】
特定の実施態様では、該ヌクレオシド改変核酸分子は、精製されたヌクレオシド改変核酸分子である。例えば、特定の実施態様では、該組成物は、二本鎖の夾雑物を除去するために精製される。特定の例では、分取高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)精製手順を使用して、優れた翻訳能を有し、そして、自然免疫原性を有しないプソイドウリジン含有RNAを得る(Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:e142)。エリスロポエチンをコードしているHPLCで精製されたプソイドウリジン含有RNAをマウス及びアカゲザルに投与した結果、血清EPO濃度が著しく増加し(Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)、したがって、プソイドウリジン含有mRNAがインビボタンパク質療法に好適であることが確認された。特定の実施態様では、該ヌクレオシド改変核酸分子は、非HPLC法を使用して精製される。特定の例では、該ヌクレオシド改変核酸分子は、HPLC及び高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)を含むがこれらに限定されないクロマトグラフィ法を使用して精製される。例示的なFPLCベースの精製手順は、Weissman et al., 2013, Methods Mol Biol, 969: 43-54に記載されている。例示的な精製手順は、米国特許出願公開第2016/0032316号にも記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0127】
本発明は、プソイドウリジン又は改変ヌクレオシドを含むRNA、オリゴリボヌクレオチド、及びポリリボヌクレオチドの分子を包含する。特定の実施態様では、該組成物は、抗原をコードしている単離された核酸を含み、該核酸は、プソイドウリジン又は改変ヌクレオシドを含む。特定の実施態様では、該組成物は、抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードしている単離された核酸を含むベクターを含み、該核酸は、プソイドウリジン又は改変ヌクレオシドを含む。
【0128】
一実施態様では、本発明のヌクレオシド改変RNAは、本明細書の他の箇所に記載されるIVT RNAである。例えば、特定の実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、T7ファージRNAポリメラーゼによって合成される。別の実施態様では、該ヌクレオシド改変mRNAは、SP6ファージRNAポリメラーゼによって合成される。別の実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、T3ファージRNAポリメラーゼによって合成される。
【0129】
一実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m1acp3Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジンである。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m1Ψ(1-メチルプソイドウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、Ψm(2’-O-メチルプソイドウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m5D(5-メチルジヒドロウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m3Ψ(3-メチルプソイドウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、それ以上改変されていないプソイドウリジン部分である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、上記プソイドウリジンのいずれかの一リン酸塩、二リン酸塩、又は三リン酸塩である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、当技術分野において公知の任意の他のプソイドウリジン様ヌクレオシドである。
【0130】
別の実施態様では、本発明のヌクレオシド改変RNAにおいて改変されているヌクレオシドは、ウリジン(U)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、シチジン(C)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、アデノシン(A)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、グアノシン(G)である。
【0131】
別の実施態様では、本発明の改変ヌクレオシドは、m5C(5-メチルシチジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m5U(5-メチルウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m6A(N6-メチルアデノシン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、s2U(2-チオウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、Ψ(プソイドウリジン)である。別の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、Um(2’-O-メチルウリジン)である。
【0132】
他の実施態様では、該改変ヌクレオシドは、m1A(1-メチルアデノシン);m2A(2-メチルアデノシン);Am(2’-O-メチルアデノシン);ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン);i6A(N6-イソペンテニルアデノシン);ms2i6A(2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン);io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン);t6A(N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);ms2t6A(2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);m6t6A(N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);hn6A(N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);Ar(p)(2’-O-リボシルアデノシン(リン酸塩));I(イノシン);m1I(1-メチルイノシン);m1Im(1,2’-O-ジメチルイノシン);m3C(3-メチルシチジン);Cm(2’-O-メチルシチジン);s2C(2-チオシチジン);ac4C(N4-アセチルシチジン);f5C(5-ホルミルシチジン);m5Cm(5,2’-O-ジメチルシチジン);ac4Cm(N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン);k2C(リシジン);m1G(1-メチルグアノシン);m2G(N2-メチルグアノシン);m7G(7-メチルグアノシン);Gm(2’-O-メチルグアノシン);m2
2G(N2,N2-ジメチルグアノシン);m2Gm(N2,2’-O-ジメチルグアノシン);m2
2Gm(N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン);Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸塩));yW(ワイブトシン);o2yW(ペルオキシワイブトシン);OHyW(ヒドロキシワイブトシン);OHyW*(不十分に改変されたヒドロキシワイブトシン);imG(ワイオシン);mimG(メチルワイオシン);Q(キューオシン);oQ(エポキシキューオシン);galQ(ガラクトシル-キューオシン);manQ(マンノシル-キューオシン);preQ0(7-シアノ-7-デアザグアノシン);preQ1(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン);G+(アルカエオシン);D(ジヒドロウリジン);m5Um(5,2’-O-ジメチルウリジン);s4U(4-チオウリジン);m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン);s2Um(2-チオ-2’-O-メチルウリジン);acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン);ho5U(5-ヒドロキシウリジン);mo5U(5-メトキシウリジン);cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸);mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル);chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン));mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル);mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン);mcm5Um(5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン);mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン);nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン);mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン);mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン);mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン);ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン);ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン);cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン);cmnm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン);cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン);m6
2A(N6,N6-ジメチルアデノシン);Im(2’-O-メチルイノシン);m4C(N4-メチルシチジン);m4Cm(N4,2’-O-ジメチルシチジン);hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン);m3U(3-メチルウリジン);cm5U(5-カルボキシメチルウリジン);m6Am(N6,2’-O-ジメチルアデノシン);m6
2Am(N6,N6,O-2’-トリメチルアデノシン);m2,7G(N2,7-ジメチルグアノシン);m2,2,7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン);m3Um(3,2’-O-ジメチルウリジン);m5D(5-メチルジヒドロウリジン);f5Cm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン);m1Gm(1,2’-O-ジメチルグアノシン);m1Am(1,2’-O-ジメチルアデノシン);τm5U(5-タウリノメチルウリジン);τm5s2U(5-タウリノメチル-2-チオウリジン));imG-14(4-デメチルワイオシン);imG2(イソワイオシン);又はac6A(N6-アセチルアデノシン)である。
【0133】
別の実施態様では、本発明のヌクレオシド改変RNAは、上記改変のうちの2つ以上の組み合わせを含む。別の実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、上記改変のうちの3つ以上の組み合わせを含む。別の実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、上記改変のうちの3つ超の組み合わせを含む。
【0134】
様々な実施態様では、本発明のヌクレオシド改変における残基の0.1%~100%が改変されている(例えば、プソイドウリジン又は別の改変ヌクレオシド塩基の存在によって)。一実施態様では、改変残基の割合は0.1%である。別の実施態様では、改変残基の割合は0.2%である。別の実施態様では、該割合は0.3%である。別の実施態様では、該割合は0.4%である。別の実施態様では、該割合は0.5%である。別の実施態様では、該割合は0.6%である。別の実施態様では、該割合は0.7%である。別の実施態様では、該割合は0.8%である。別の実施態様では、該割合は0.9%である。別の実施態様では、該割合は1%である。別の実施態様では、該割合は1.5%である。別の実施態様では、該割合は2%である。別の実施態様では、該割合は2.5%である。別の実施態様では、該割合は3%である。別の実施態様では、該割合は4%である。別の実施態様では、該割合は5%である。別の実施態様では、該割合は6%である。別の実施態様では、該割合は7%である。別の実施態様では、該割合は8%である。別の実施態様では、該割合は9%である。別の実施態様では、該割合は10%である。別の実施態様では、該割合は12%である。別の実施態様では、該割合は14%である。別の実施態様では、該割合は16%である。別の実施態様では、該割合は18%である。別の実施態様では、該割合は20%である。別の実施態様では、該割合は25%である。別の実施態様では、該割合は30%である。別の実施態様では、該割合は35%である。別の実施態様では、該割合は40%である。別の実施態様では、該割合は45%である。別の実施態様では、該割合は50%である。別の実施態様では、該割合は55%である。別の実施態様では、該割合は60%である。別の実施態様では、該割合は65%である。別の実施態様では、該割合は70%である。別の実施態様では、該割合は75%である。別の実施態様では、該割合は80%である。別の実施態様では、該割合は85%である。別の実施態様では、該割合は90%である。別の実施態様では、該割合は91%である。別の実施態様では、該割合は92%である。別の実施態様では、該割合は93%である。別の実施態様では、該割合は94%である。別の実施態様では、該割合は95%である。別の実施態様では、該割合は96%である。別の実施態様では、該割合は97%である。別の実施態様では、該割合は98%である。別の実施態様では、該割合は99%である。別の実施態様では、該割合は100%である。
【0135】
別の実施態様では、該割合は5%未満である。別の実施態様では、該割合は3%未満である。別の実施態様では、該割合は1%未満である。別の実施態様では、該割合は2%未満である。別の実施態様では、該割合は4%未満である。別の実施態様では、該割合は6%未満である。別の実施態様では、該割合は8%未満である。別の実施態様では、該割合は10%未満である。別の実施態様では、該割合は12%未満である。別の実施態様では、該割合は15%未満である。別の実施態様では、該割合は20%未満である。別の実施態様では、該割合は30%未満である。別の実施態様では、該割合は40%未満である。別の実施態様では、該割合は50%未満である。別の実施態様では、該割合は60%未満である。別の実施態様では、該割合は70%未満である。
【0136】
別の実施態様では、所与のヌクレオシドの残基(すなわち、ウリジン、シチジン、グアノシン、又はアデノシン)の0.1%が改変されている。別の実施態様では、改変残基の割合は0.2%である。別の実施態様では、該割合は0.3%である。別の実施態様では、該割合は0.4%である。別の実施態様では、該割合は0.5%である。別の実施態様では、該割合は0.6%である。別の実施態様では、該割合は0.7%である。別の実施態様では、該割合は0.8%である。別の実施態様では、該割合は0.9%である。別の実施態様では、該割合は1%である。別の実施態様では、該割合は1.5%である。別の実施態様では、該割合は2%である。別の実施態様では、該割合は2.5%である。別の実施態様では、該割合は3%である。別の実施態様では、該割合は4%である。別の実施態様では、該割合は5%である。別の実施態様では、該割合は6%である。別の実施態様では、該割合は7%である。別の実施態様では、該割合は8%である。別の実施態様では、該割合は9%である。別の実施態様では、該割合は10%である。別の実施態様では、該割合は12%である。別の実施態様では、該割合は14%である。別の実施態様では、該割合は16%である。別の実施態様では、該割合は18%である。別の実施態様では、該割合は20%である。別の実施態様では、該割合は25%である。別の実施態様では、該割合は30%である。別の実施態様では、該割合は35%である。別の実施態様では、該割合は40%である。別の実施態様では、該割合は45%である。別の実施態様では、該割合は50%である。別の実施態様では、該割合は55%である。別の実施態様では、該割合は60%である。別の実施態様では、該割合は65%である。別の実施態様では、該割合は70%である。別の実施態様では、該割合は75%である。別の実施態様では、該割合は80%である。別の実施態様では、該割合は85%である。別の実施態様では、該割合は90%である。別の実施態様では、該割合は91%である。別の実施態様では、該割合は92%である。別の実施態様では、該割合は93%である。別の実施態様では、該割合は94%である。別の実施態様では、該割合は95%である。別の実施態様では、該割合は96%である。別の実施態様では、該割合は97%である。別の実施態様では、該割合は98%である。別の実施態様では、該割合は99%である。別の実施態様では、該割合は100%である。別の実施態様では、改変されている所与のヌクレオシドの割合は、8%未満である。別の実施態様では、該割合は10%未満である。別の実施態様では、該割合は5%未満である。別の実施態様では、該割合は3%未満である。別の実施態様では、該割合は1%未満である。別の実施態様では、該割合は2%未満である。別の実施態様では、該割合は4%未満である。別の実施態様では、該割合は6%未満である。別の実施態様では、該割合は12%未満である。別の実施態様では、該割合は15%未満である。別の実施態様では、該割合は20%未満である。別の実施態様では、該割合は30%未満である。別の実施態様では、該割合は40%未満である。別の実施態様では、該割合は50%未満である。別の実施態様では、該割合は60%未満である。別の実施態様では、該割合は70%未満である。
【0137】
別の実施態様では、本発明のヌクレオシド改変RNAは、同じ配列を有する改変されていないRNA分子よりも効率的に細胞内で翻訳される。別の実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、標的細胞によって翻訳される能力が増強されている。別の実施態様では、翻訳は、その改変されていない対応物に対して2倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は3倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は4倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は5倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は6倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は7倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は8倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は9倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は10倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は15倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は20倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は50倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は100倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は200倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は500倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は1000倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、翻訳は2000倍の係数だけ増強される。別の実施態様では、該係数は10~1000倍である。別の実施態様では、該係数は10~100倍である。別の実施態様では、該係数は10~200倍である。別の実施態様では、該係数は10~300倍である。別の実施態様では、該係数は10~500倍である。別の実施態様では、該係数は20~1000倍である。別の実施態様では、該係数は30~1000倍である。別の実施態様では、該係数は50~1000倍である。別の実施態様では、該係数は100~1000倍である。別の実施態様では、該係数は200~1000倍である。別の実施態様では、任意の他の著しい量又は量の範囲だけ翻訳が増強される。
【0138】
別の実施態様では、本発明のヌクレオシド改変抗原をコードしているRNAは、同じ配列の改変されていない、インビトロで合成されたRNAと比較して、著しくよりロバストな適応免疫応答を誘導する。別の実施態様では、該改変RNA分子は、その改変されていない対応物よりも2倍多い適応免疫応答を誘導する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、3倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、4倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、5倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、6倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、7倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、8倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、9倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、10倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、15倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、20倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、50倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、100倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、200倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、500倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、1000倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、2000倍の係数だけ増大する。別の実施態様では、該適応免疫応答は、別の倍数差だけ増大する。
【0139】
別の実施態様では、「著しくよりロバストな適応免疫応答を誘導する」とは、適応免疫応答の検出可能な増大を指す。別の実施態様では、この用語は、適応免疫応答の倍数増大を指す(例えば、1の倍数増大は上に列挙されている)。別の実施態様では、この用語は、同様に有効な適応免疫応答を誘導しながら、改変されていないRNA分子よりも低い用量又は頻度で該ヌクレオシド改変RNAを投与することができるような増大を指す。別の実施態様では、該増大は、単一用量を使用して該ヌクレオシド改変RNAを投与して有効な適応免疫応答を誘導することができるようなものである。
【0140】
別の実施態様では、本発明のヌクレオシド改変RNAは、同じ配列の改変されていない、インビトロで合成されたRNA分子よりも著しく低い自然免疫原性を示す。別の実施態様では、該改変RNA分子は、その改変されていない対応物よりも2倍少ない自然免疫応答を示す。別の実施態様では、自然免疫原性は、3倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、4倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、5倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、6倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、7倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、8倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、9倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、10倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、15倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、20倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、50倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、100倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、200倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、500倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、1000倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、2000倍の係数だけ低下する。別の実施態様では、自然免疫原性は、別の倍数差だけ低下する。
【0141】
別の実施態様では、「著しく低い自然免疫原性を示す」とは、自然免疫原性の検出可能な低下を指す。別の実施態様では、この用語は、自然免疫原性の倍数低下を指す(例えば、1の倍数低下は上に列挙されている)。別の実施態様では、この用語は、検出可能な自然免疫応答を誘発することなく有効量の該ヌクレオシド改変RNAを投与することができるような低下を指す。別の実施態様では、この用語は、改変RNAによってコードされているタンパク質の生成を検出可能に低減するのに十分な自然免疫応答を惹起することなく、該ヌクレオシド改変RNAを繰り返し投与することができるような低下を指す。別の実施態様では、該低下は、改変RNAによってコードされているタンパク質の検出可能な生成を排除するのに十分な自然免疫応答を惹起することなく、該ヌクレオシド改変RNAを繰り返し投与することができるようなものである。
【0142】
脂質ナノ粒子
一実施態様では、ヌクレオシド改変RNAの送達は、本明細書の他の箇所に記載される例示的なRNAトランスフェクション法を含む、任意の好適な送達方法を含む。特定の実施態様では、ヌクレオシド改変RNAの対象への送達は、接触の工程の前に、該ヌクレオシド改変RNAをトランスフェクション試薬と混合することを含む。別の実施態様では、本発明の方法は、更に、ヌクレオシド改変RNAをトランスフェクション試薬と共に投与することを含む。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、カチオン性脂質試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、カチオン性ポリマー試薬である。
【0143】
別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、脂質ベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、タンパク質ベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、炭水化物ベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、カチオン性脂質ベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、カチオン性ポリマーベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミンベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、リン酸カルシウムである。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、Lipofectin(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)、又はTransIT(登録商標)である。別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、当技術分野において公知の任意の他のトランスフェクション試薬である。
【0144】
別の実施態様では、該トランスフェクション試薬は、リポソームを形成する。別の実施態様では、リポソームは、細胞内安定性を増大させ、取り込み効率を増大させ、そして、生物学的活性を改善する。別の実施態様では、リポソームは、細胞膜を構成する脂質と同様に配置された脂質で構成された中空球形小胞である。該リポソームは、別の実施態様では、水溶性化合物を捕捉するための内部水性空間を有し、そして、直径0.05~数マイクロメートルのサイズの範囲である。別の実施態様では、リポソームは、生物学的活性型でRNAを細胞に送達することができる。
【0145】
一実施態様では、該組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)と本明細書に記載される1つ以上の核酸分子とを含む。例えば、一実施態様では、該組成物は、LNPと1つ以上の抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードしている1つ以上のヌクレオシド改変RNA分子とを含む。
【0146】
用語「脂質ナノ粒子」とは、1つ以上の脂質、例えば、式(I)、(II)、又は(III)の脂質を含む、ナノメートルの桁(例えば、1~1,000nm)の少なくとも1つの直径を有する粒子を指す。幾つかの実施態様では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載されるヌクレオシド改変RNAを含む製剤に含まれる。幾つかの実施態様では、このような脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質(例えば、式(I)、(II)、又は(III)の脂質)と、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、及びポリマー複合脂質(例えば、化合物Iva等の構造(IV)のペグ化脂質等のペグ化脂質)から選択される1つ以上の賦形剤とを含む。幾つかの実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、脂質ナノ粒子の脂質部分、又は該脂質ナノ粒子の脂質部分の一部又は全てによって包まれている水性空間に封入され、それによって、酵素分解又は宿主生物若しくは細胞の機構によって誘導される他の望ましくない効果、例えば、有害な免疫応答から該RNAを保護する。
【0147】
様々な実施態様では、該脂質ナノ粒子は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、又は約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、又は150nmの平均直径を有し、そして、実質的に非毒性である。特定の実施態様では、該ヌクレオシド改変RNAは、脂質ナノ粒子中に存在するとき、水性溶液中でヌクレアーゼによる分解に対して耐性を有する。
【0148】
該LNPは、1つ以上の核酸分子が付着するか又は1つ以上の核酸分子が封入される粒子を形成することができる任意の脂質を含み得る。用語「脂質」とは、脂肪酸の誘導体である有機化合物の群(例えば、エステル)を指し、そして、一般的に、水には不溶性であるが、多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする。脂質は、通常、少なくとも3つの分類に分けられる:(1)脂肪及び油、並びに蝋を含む「単純脂質」;(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」;並びに(3)ステロイド等の「誘導脂質」。
【0149】
一実施態様では、該LNPは、1つ以上のカチオン性脂質及び1つ以上の安定化脂質を含む。安定化脂質は、中性脂質及びペグ化脂質を含む。
【0150】
一実施態様では、該LNPは、カチオン性脂質を含む。本明細書で使用するとき、用語「カチオン性脂質」とは、pHが該脂質のイオン化可能基のpKよりも低いときにはカチオン性であるか又はカチオン性になる(プロトン化)が、より高いpH値では次第により中性になる脂質を指す。次いで、pKよりも低いpH値では、該脂質は、負に帯電している核酸と結合することができる。特定の実施態様では、該カチオン性脂質は、pH低下時に正電荷と仮定される双性イオン性脂質を含む。
【0151】
特定の実施態様では、該カチオン性脂質は、生理学的pH等の選択的pHにおいて正味の正電荷を有する多数の脂質種のいずれかを含む。このような脂質は、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)を含むが、これらに限定されない。更に、カチオン性脂質の多数の商業的調製品が入手可能であり、本発明において使用することができる。これらは、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMA及び1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む市販されているカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y.製);LIPOFECTAMINE(登録商標)(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(DOSPA)及び(DOPE)を含む市販されているカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL);及びTRANSFECTAM(登録商標)(エタノール中ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を含む市販されているカチオン性脂質、Promega Corp., Madison, Wis.製)を含む。以下の脂質は、カチオン性であり、そして、生理学的pH未満では正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0152】
一実施態様では、該カチオン性脂質はアミノ脂質である。本発明において有用な好適なアミノ脂質は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2012/016184号に記載されているものを含む。代表的なアミノ脂質は、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)を含むが、これらに限定されない。
【0153】
好適なアミノ脂質は、以下の式を有するものを含む:
【化10】
(式中、R
1及びR
2は、同一であるか又は異なり、そして、独立して、場合により置換されているC
10-C
24アルキル、場合により置換されているC
10-C
24アルケニル、場合により置換されているC
10-C
24アルキニル、又は場合により置換されているC
10-C
24アシルであり;
R
3及びR
4は、同一であるか又は異なり、そして、独立して、場合により置換されているC
1-C
6アルキル、場合により置換されているC
2-C
6アルケニル、又は場合により置換されているC
2-C
6アルキニルであるか、あるいは、R
3及びR
4が結合して、4~6個の炭素原子並びに窒素及び酸素から選択される1又は2個のヘテロ原子の場合により置換されている複素環を形成し得;
R
5は、存在しないか又は存在し、そして、存在するとき、水素又はC
1-C
6アルキルであり;
m、n、及びpは、同一であるか又は異なり、そして、独立して、0又は1であるが、ただし、m、n、及びpは、同時に0ではなく;
qは、0、1、2、3、又は4であり;そして、
Y及びZは、同一であるか又は異なり、そして、独立して、O、S、又はNHである)。
【0154】
一実施態様では、R1及びR2は、それぞれリノレイルであり、そして、該アミノ脂質は、ジリノレイルアミノ脂質である。一実施態様では、該アミノ脂質は、ジリノレイルアミノ脂質である。
【0155】
代表的な有用なジリノレイルアミノ脂質は、以下の式:
【化11】
(式中、nは、0、1、2、3、又は4である)
を有する。
【0156】
一実施態様では、該カチオン性脂質は、DLin-K-DMAである。一実施態様では、該カチオン性脂質は、DLin-KC2-DMA(式中nが2である上記DLin-K-DMA)である。
【0157】
一実施態様では、該LNPのカチオン性脂質成分は、式(I):
【化12】
の構造又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、プロドラッグ、若しくは立体異性体を有する
(式中、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、又は炭素-炭素二重結合であり;
R
1a及びR
1bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
1aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
2a及びR
2bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
2aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
2bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
2b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
3a及びR
3bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
3aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
3bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
3b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
4a及びR
4bは、各存在において独立して、(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
4aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチル又はシクロアルキルであり;
R
7は、各存在において独立して、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
1-C
12アルキルであるか;又はR
8及びR
9は、これらが結合している窒素原子と共に、1個の窒素原子を含む5、6、若しくは7員の複素環を形成し;
a及びdは、それぞれ独立して、0~24の整数であり;
b及びcは、それぞれ独立して、1~24の整数であり;そして、
eは、1又は2である)。
【0158】
式(I)の特定の実施態様では、R1a、R2a、R3a、若しくはR4aのうちの少なくとも1つがC1-C12アルキルであるか、又はL1若しくはL2のうちの少なくとも1つが-O(C=O)-若しくは-(C=O)O-である。他の実施態様では、R1a及びR1bは、aが6であるときイソプロピルではない、又はaが8であるときn-ブチルではない。
【0159】
式(I)の更なる実施態様では、R1a、R2a、R3a、若しくはR4aのうちの少なくとも1つがC1-C12アルキルであるか、又はL1若しくはL2のうちの少なくとも1つが-O(C=O)-若しくは-(C=O)O-であり;そして、
R1a及びR1bは、aが6であるときイソプロピルではない、又はaが8であるときn-ブチルではない。
【0160】
式(I)の他の実施態様では、R8及びR9は、それぞれ独立して、非置換C1-C12アルキルであるか;又はR8及びR9は、これらが結合している窒素原子と共に、1個の窒素原子を含む5、6、若しくは7員の複素環を形成する。
【0161】
式(I)の特定の実施態様では、L1又はL2のいずれか1つは、-O(C=O)-又は炭素-炭素二重結合であり得る。L1及びL2は、それぞれ-O(C=O)-であってもよく、又はそれぞれ炭素-炭素二重結合であってもよい。
【0162】
式(I)の幾つかの実施態様では、L1又はL2の一方が-O(C=O)-である。他の実施態様では、L1及びL2の両方が-O(C=O)-である。
【0163】
式(I)の幾つかの実施態様では、L1又はL2の一方が-(C=O)O-である。他の実施態様では、L1及びL2の両方が-(C=O)O-である。
【0164】
式(I)の幾つかの他の実施態様では、L1又はL2の一方が炭素-炭素二重結合である。他の実施態様では、L1及びL2の両方が炭素-炭素二重結合である。
【0165】
式(I)の更に他の実施態様では、L1又はL2の一方は-O(C=O)-であり、そして、L1又はL2の他方は-(C=O)O-である。更なる実施態様では、L1又はL2の一方は-O(C=O)-であり、そして、L1又はL2の他方は炭素-炭素二重結合である。更なる実施態様では、L1又はL2の一方は-(C=O)O-であり、そして、L1又はL2の他方は炭素-炭素二重結合である。
【0166】
「炭素-炭素」二重結合は、本明細書全体を通して使用するとき、以下の構造のうちの1つを指すと理解される:
【化13】
(式中、R
a及びR
bは、各存在において独立して、H又は置換基である)。例えば、幾つかの実施態様では、R
a及びR
bは、各存在において独立して、H、C
1-C
12アルキル、又はシクロアルキル、例えば、H又はC
1-C
12アルキルである。
【0167】
他の実施態様では、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ia):
【化14】
を有する。
【0168】
他の実施態様では、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ib):
【化15】
を有する。
【0169】
更に他の実施態様では、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ic):
【化16】
を有する。
【0170】
式(I)の脂質化合物の特定の実施態様では、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、2~12の整数又は4~12の整数である。他の実施態様では、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、8~12又は5~9の整数である。幾つかの特定の実施態様では、aは0である。幾つかの実施態様では、aは1である。他の実施態様では、aは2である。更なる実施態様では、aは3である。更に他の実施態様では、aは4である。幾つかの実施態様では、aは5である。他の実施態様では、aは6である。更なる実施態様では、aは7である。更に他の実施態様では、aは8である。幾つかの実施態様では、aは9である。他の実施態様では、aは10である。更なる実施態様では、aは11である。更に他の実施態様では、aは12である。幾つかの実施態様では、aは13である。他の実施態様では、aは14である。更なる実施態様では、aは15である。更に他の実施態様では、aは16である。
【0171】
式(I)の幾つかの他の実施態様では、bは1である。他の実施態様では、bは2である。更なる実施態様では、bは3である。更に他の実施態様では、bは4である。幾つかの実施態様では、bは5である。他の実施態様では、bは6である。更なる実施態様では、bは7である。更に他の実施態様では、bは8である。幾つかの実施態様では、bは9である。他の実施態様では、bは10である。更なる実施態様では、bは11である。更に他の実施態様では、bは12である。幾つかの実施態様では、bは13である。他の実施態様では、bは14である。更なる実施態様では、bは15である。更に他の実施態様では、bは16である。
【0172】
式(I)の幾つかの更なる実施態様では、cは1である。他の実施態様では、cは2である。更なる実施態様では、cは3である。更に他の実施態様では、cは4である。幾つかの実施態様では、cは5である。他の実施態様では、cは6である。更なる実施態様では、cは7である。更に他の実施態様では、cは8である。幾つかの実施態様では、cは9である。他の実施態様では、cは10である。更なる実施態様では、cは11である。更に他の実施態様では、cは12である。幾つかの実施態様では、cは13である。他の実施態様では、cは14である。更なる実施態様では、cは15である。更に他の実施態様では、cは16である。
【0173】
式(I)の幾つかの特定の他の実施態様では、dは0である。幾つかの実施態様では、dは1である。他の実施態様では、dは2である。更なる実施態様では、dは3である。更に他の実施態様では、dは4である。幾つかの実施態様では、dは5である。他の実施態様では、dは6である。更なる実施態様では、dは7である。更に他の実施態様では、dは8である。幾つかの実施態様では、dは9である。他の実施態様では、dは10である。更なる実施態様では、dは11である。更に他の実施態様では、dは12である。幾つかの実施態様では、dは13である。他の実施態様では、dは14である。更なる実施態様では、dは15である。更に他の実施態様では、dは16である。
【0174】
式(I)の幾つかの他の様々な実施態様では、a及びdは同一である。幾つかの他の実施態様では、b及びcは同一である。幾つかの他の特定の実施態様では、a及びdは同一であり、そして、b及びcは同一である。
【0175】
式(I)におけるaとbとの合計及びcとdとの合計は、所望の特性を有する式(I)の脂質を得るために変動させ得る係数である。一実施態様では、a及びbは、これらの合計が14~24の範囲の整数になるように選択される。他の実施態様では、c及びdは、これらの合計が14~24の範囲の整数になるように選択される。更なる実施態様では、aとbとの合計及びcとdとの合計は、同一である。例えば、幾つかの実施態様では、aとbとの合計及びcとdとの合計は、いずれも、14~24の範囲であり得る同じ整数である。更なる実施態様では、a、b、c、及びdは、aとbとの合計及びcとdとの合計が12以上になるように選択される。
【0176】
式(I)の幾つかの実施態様では、eは1である。他の実施態様では、eは2である。
【0177】
式(I)の置換基R1a、R2a、R3a、及びR4aは、特に限定されない。特定の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aは、各存在においてHである。特定の他の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つは、C1-C12アルキルである。特定の他の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つは、C1-C8アルキルである。特定の他の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つは、C1-C6アルキルである。前述の実施態様のうちの幾つかでは、該C1-C8アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、又はn-オクチルである。
【0178】
式(I)の特定の実施態様では、R1a、R1b、R4a、及びR4bは、各存在において、C1-C12アルキルである。
【0179】
式(I)の更なる実施態様では、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうちの少なくとも1つがHであるか、又はR1b、R2b、R3b、及びR4bが各存在においてHである。
【0180】
式(I)の特定の実施態様では、R1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。前述の他の実施態様では、R4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。
【0181】
式(I)のR5及びR6における置換基は、前述の実施態様において特に限定されない。特定の実施態様では、R5又はR6の一方又は両方がメチルである。特定の他の実施態様では、R5又はR6の一方又は両方が、シクロアルキル、例えばシクロヘキシルである。これら実施態様では、該シクロアルキルは、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。特定の他の実施態様では、該シクロアルキルは、C1-C12アルキル、例えばtert-ブチルで置換されている。
【0182】
R7における置換基は、前述の式(I)の実施態様において特に限定されない。特定の実施態様では、少なくとも1つのR7はHである。幾つかの他の実施態様では、R7は、各存在においてHである。特定の他の実施態様では、R7は、C1-C12アルキルである。
【0183】
前述の式(I)の実施態様の特定の他のものでは、R8又はR9の一方がメチルである。他の実施態様では、R8及びR9の両方がメチルである。
【0184】
式(I)の幾つかの異なる実施態様では、R8及びR9は、これらが結合している窒素原子と共に、5、6、又は7員の複素環を形成する。前述の幾つかの実施態様では、R8及びR9は、これらが結合している窒素原子と共に、5員複素環、例えば、ピロリジニル環を形成する。
【0185】
様々な異なる実施態様では、式(I)の脂質は、以下の表1に記載される構造のうちの1つを有する。
【表1】
【0186】
幾つかの実施態様では、該LNPは、式(I)の脂質と、ヌクレオシド改変RNAと、中性脂質、ステロイド、及びペグ化脂質から選択される1つ以上の賦形剤とを含む。幾つかの実施態様では、式(I)の脂質は、化合物I-5である。幾つかの実施態様では、式(I)の脂質は、化合物I-6である。
【0187】
幾つかの他の実施態様では、該LNPのカチオン性脂質成分は、式(II):
【化17】
の構造又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、プロドラッグ、若しくは立体異性体を有する
(式中、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)NR
a、-OC(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)O-、又は直接結合であり;
G
1は、C
1-C
2アルキレン、-(C=O)-、-O(C=O)-、-SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、又は直接結合であり;
G
2は、-C(=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR
a、又は直接結合であり;
G
3は、C
1-C
6アルキレンであり;
R
aは、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
1a及びR
1bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
1aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
2a及びR
2bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
2aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
2bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
2b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
3a及びR
3bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
3aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
3bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
3b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
4a及びR
4bは、各存在において独立して:(a)H若しくはC
1-C
12アルキルであるか、又は(b)R
4aは、H若しくはC
1-C
12アルキルであり、そして、R
4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR
4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成し;
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、H又はメチルであり;
R
7は、C
4-C
20アルキルであり;
R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
1-C
12アルキルであるか;又はR
8及びR
9は、これらが結合している窒素原子と共に、5、6、若しくは7員の複素環を形成し;
a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、1~24の整数であり;そして、
xは、0、1、又は2である)。
【0188】
式(II)の幾つかの実施態様では、L1及びL2は、それぞれ独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、又は直接結合である。他の実施態様では、G1及びG2は、それぞれ独立して、-(C=O)-又は直接結合である。幾つかの異なる実施態様では、L1及びL2は、それぞれ独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、又は直接結合であり;そして、G1及びG2は、それぞれ独立して、-(C=O)-又は直接結合である。
【0189】
式(II)の幾つかの異なる実施態様では、L1及びL2は、それぞれ独立して、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRa-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、-NRaC(=O)NRa、-OC(=O)NRa-、-NRaC(=O)O-、-NRaS(O)xNRa-、-NRaS(O)x-、又は-S(O)xNRa-である。
【0190】
式(II)の前述の実施態様の他のものでは、該脂質化合物は、以下の構造(IIA)又は(IIB):
【化18】
のうちの1つを有する。
【0191】
式(II)の幾つかの実施態様では、該脂質化合物は、構造(IIA)を有する。他の実施態様では、該脂質化合物は、構造(IIB)を有する。
【0192】
式(II)の前述の実施態様のいずれかでは、L1又はL2の一方は、-O(C=O)-である。例えば、幾つかの実施態様では、L1及びL2のそれぞれが-O(C=O)-である。
【0193】
式(II)の幾つかの異なる実施態様では、L1又はL2の一方は、-(C=O)O-である。例えば、幾つかの実施態様では、L1及びL2のそれぞれが-(C=O)O-である。
【0194】
式(II)の様々な実施態様では、L1又はL2の一方は、直接結合である。本明細書で使用するとき、「直接結合」は、基(例えば、L1又はL2)が存在しないことを意味する。例えば、幾つかの実施態様では、L1及びL2のそれぞれが直接結合である。
【0195】
式(II)の他の異なる実施態様では、R1a及びR1bの少なくとも1つの存在において、R1aは、H若しくはC1-C12アルキルであり、そして、R1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。
【0196】
式(II)の更に他の異なる実施態様では、R4a及びR4bの少なくとも1つの存在において、R4aは、H若しくはC1-C12アルキルであり、そして、R4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。
【0197】
式(II)の更なる実施態様では、R2a及びR2bの少なくとも1つの存在において、R2aは、H若しくはC1-C12アルキルであり、そして、R2bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR2b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。
【0198】
式(II)の他の異なる実施態様では、R3a及びR3bの少なくとも1つの存在において、R3aは、H若しくはC1-C12アルキルであり、そして、R3bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR3b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。
【0199】
式(II)の様々な他の実施態様では、該脂質化合物は、以下の構造(IIC)又は(IID):
【化19】
(式中、e、f、g、及びhは、それぞれ独立して、1~12の整数である)
のうちの1つを有する。
【0200】
式(II)の幾つかの実施態様では、該脂質化合物は、構造(IIC)を有する。他の実施態様では、該脂質化合物は、構造(IID)を有する。
【0201】
構造(IIC)又は(IID)の様々な実施態様では、e、f、g、及びhは、それぞれ独立して、4~10の整数である。
【0202】
式(II)の特定の実施態様では、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、2~12の整数又は4~12の整数である。他の実施態様では、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、8~12又は5~9の整数である。幾つかの特定の実施態様では、aは0である。幾つかの実施態様では、aは1である。他の実施態様では、aは2である。更なる実施態様では、aは3である。更に他の実施態様では、aは4である。幾つかの実施態様では、aは5である。他の実施態様では、aは6である。更なる実施態様では、aは7である。更に他の実施態様では、aは8である。幾つかの実施態様では、aは9である。他の実施態様では、aは10である。更なる実施態様では、aは11である。更に他の実施態様では、aは12である。幾つかの実施態様では、aは13である。他の実施態様では、aは14である。更なる実施態様では、aは15である。更に他の実施態様では、aは16である。
【0203】
式(II)の幾つかの実施態様では、bは1である。他の実施態様では、bは2である。更なる実施態様では、bは3である。更に他の実施態様では、bは4である。幾つかの実施態様では、bは5である。他の実施態様では、bは6である。更なる実施態様では、bは7である。更に他の実施態様では、bは8である。幾つかの実施態様では、bは9である。他の実施態様では、bは10である。更なる実施態様では、bは11である。更に他の実施態様では、bは12である。幾つかの実施態様では、bは13である。他の実施態様では、bは14である。更なる実施態様では、bは15である。更に他の実施態様では、bは16である。
【0204】
式(II)の幾つかの実施態様では、cは1である。他の実施態様では、cは2である。更なる実施態様では、cは3である。更に他の実施態様では、cは4である。幾つかの実施態様では、cは5である。他の実施態様では、cは6である。更なる実施態様では、cは7である。更に他の実施態様では、cは8である。幾つかの実施態様では、cは9である。他の実施態様では、cは10である。更なる実施態様では、cは11である。更に他の実施態様では、cは12である。幾つかの実施態様では、cは13である。他の実施態様では、cは14である。更なる実施態様では、cは15である。更に他の実施態様では、cは16である。
【0205】
式(II)の幾つかの特定の実施態様では、dは0である。幾つかの実施態様では、dは1である。他の実施態様では、dは2である。更なる実施態様では、dは3である。更に他の実施態様では、dは4である。幾つかの実施態様では、dは5である。他の実施態様では、dは6である。更なる実施態様では、dは7である。更に他の実施態様では、dは8である。幾つかの実施態様では、dは9である。他の実施態様では、dは10である。更なる実施態様では、dは11である。更に他の実施態様では、dは12である。幾つかの実施態様では、dは13である。他の実施態様では、dは14である。更なる実施態様では、dは15である。更に他の実施態様では、dは16である。
【0206】
式(II)の幾つかの実施態様では、eは1である。他の実施態様では、eは2である。更なる実施態様では、eは3である。更に他の実施態様では、eは4である。幾つかの実施態様では、eは5である。他の実施態様では、eは6である。更なる実施態様では、eは7である。更に他の実施態様では、eは8である。幾つかの実施態様では、eは9である。他の実施態様では、eは10である。更なる実施態様では、eは11である。更に他の実施態様では、eは12である。
【0207】
式(II)の幾つかの実施態様では、fは1である。他の実施態様では、fは2である。更なる実施態様では、fは3である。更に他の実施態様では、fは4である。幾つかの実施態様では、fは5である。他の実施態様では、fは6である。更なる実施態様では、fは7である。更に他の実施態様では、fは8である。幾つかの実施態様では、fは9である。他の実施態様では、fは10である。更なる実施態様では、fは11である。更に他の実施態様では、fは12である。
【0208】
式(II)の幾つかの実施態様では、gは1である。他の実施態様では、gは2である。更なる実施態様では、gは3である。更に他の実施態様では、gは4である。幾つかの実施態様では、gは5である。他の実施態様では、gは6である。更なる実施態様では、gは7である。更に他の実施態様では、gは8である。幾つかの実施態様では、gは9である。他の実施態様では、gは10である。更なる実施態様では、gは11である。更に他の実施態様では、gは12である。
【0209】
式(II)の幾つかの実施態様では、hは1である。他の実施態様では、eは2である。更なる実施態様では、hは3である。更に他の実施態様では、hは4である。幾つかの実施態様では、eは5である。他の実施態様では、hは6である。更なる実施態様では、hは7である。更に他の実施態様では、hは8である。幾つかの実施態様では、hは9である。他の実施態様では、hは10である。更なる実施態様では、hは11である。更に他の実施態様では、hは12である。
【0210】
式(II)の幾つかの他の様々な実施態様では、a及びdは同一である。幾つかの他の実施態様では、b及びcは同一である。幾つかの他の特定の実施態様では、a及びdは同一であり、そして、b及びcは同一である。
【0211】
式(II)のaとbとの合計及びcとdとの合計は、所望の特性を有する脂質を得るために変動させ得る係数である。一実施態様では、a及びbは、これらの合計が14~24の範囲の整数になるように選択される。他の実施態様では、c及びdは、これらの合計が14~24の範囲の整数になるように選択される。更なる実施態様では、aとbとの合計及びcとdとの合計は、同一である。例えば、幾つかの実施態様では、aとbとの合計及びcとdとの合計は、いずれも、14~24の範囲であり得る同じ整数である。更なる実施態様では、a、b、c、及びdは、aとbとの合計及びcとdとの合計が12以上になるように選択される。
【0212】
式(II)の置換基R1a、R2a、R3a、及びR4aは、特に限定されない。幾つかの実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つはHである。特定の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aは、各存在においてHである。特定の他の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つは、C1-C12アルキルである。特定の他の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つは、C1-C8アルキルである。特定の他の実施態様では、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの少なくとも1つは、C1-C6アルキルである。前述の実施態様のうちの幾つかでは、該C1-C8アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、又はn-オクチルである。
【0213】
式(II)の特定の実施態様では、R1a、R1b、R4a、及びR4bは、各存在において、C1-C12アルキルである。
【0214】
式(II)の更なる実施態様では、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうちの少なくとも1つがHであるか、又はR1b、R2b、R3b、及びR4bが各存在においてHである。
【0215】
式(II)の特定の実施態様では、R1bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR1b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。前述の他の実施態様では、R4bは、それが結合している炭素原子と共に、隣接するR4b及びそれが結合している炭素原子と一緒になって、炭素-炭素二重結合を形成する。
【0216】
式(II)のR5及びR6における置換基は、前述の実施態様において特に限定されない。特定の実施態様では、R5又はR6の一方がメチルである。他の実施態様では、R5又はR6のそれぞれがメチルである。
【0217】
式(II)のR7における置換基は、前述の実施態様において特に限定されない。特定の実施態様では、R7は、C6-C16アルキルである。幾つかの他の実施態様では、R7は、C6-C9アルキルである。これら実施態様のうちの幾つかでは、R7は、-(C=O)ORb、-O(C=O)Rb、-C(=O)Rb、-ORb、-S(O)xRb、-S-SRb、-C(=O)SRb、-SC(=O)Rb、-NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRaRb、-OC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)ORb、-NRaS(O)xNRaRb、-NRaS(O)xRb、又は-S(O)xNRaRb(式中、Raは、H又はC1-C12アルキルであり;Rbは、C1-C15アルキルであり;そして、xは、0、1、又は2である)で置換されている。例えば、幾つかの実施態様では、R7は、-(C=O)ORb又は-O(C=O)Rbで置換されている。
【0218】
式(II)の前述の実施態様のうちの様々なものでは、R
bは、分枝状C
1-C
15アルキルである。例えば、幾つかの実施態様では、R
bは、以下の構造:
【化20】
のうちの1つを有する。
【0219】
前述の式(II)の実施態様の特定の他のものでは、R8又はR9の一方がメチルである。他の実施態様では、R8及びR9の両方がメチルである。
【0220】
式(II)の幾つかの異なる実施態様では、R8及びR9は、これらが結合している窒素原子と共に、5、6、又は7員の複素環を形成する。前述の幾つかの実施態様では、R8及びR9は、これらが結合している窒素原子と共に、5員複素環、例えば、ピロリジニル環を形成する。前述の幾つかの異なる実施態様では、R8及びR9は、これらが結合している窒素原子と共に、6員複素環、例えば、ピペラジニル環を形成する。
【0221】
式(II)の前述の脂質の更に他の実施態様では、G3は、C2-C4アルキレン、例えば、C3アルキレンである。
【0222】
様々な異なる実施態様では、該脂質化合物は、以下の表2に記載される構造のうちの1つを有する。
【表2】
【0223】
幾つかの実施態様では、該LNPは、式(II)の脂質と、ヌクレオシド改変RNAと、中性脂質、ステロイド、及びペグ化脂質から選択される1つ以上の賦形剤とを含む。幾つかの実施態様では、式(II)の脂質は、化合物II-9である。幾つかの実施態様では、式(II)の脂質は、化合物II-10である。幾つかの実施態様では、式(II)の脂質は、化合物II-11である。幾つかの実施態様では、式(II)の脂質は、化合物II-12である。幾つかの実施態様では、式(II)の脂質は、化合物II-32である。
【0224】
幾つかの他の実施態様では、該LNPのカチオン性脂質成分は、式(III):
【化21】
の構造又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、プロドラッグ、若しくは立体異性体を有する
(式中、
L
1又はL
2の一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-、又は-NR
aC(=O)O-であり、そして、L
1又はL
2の他方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-、若しくは-NR
aC(=O)O-、又は直接結合であり;
G
1及びG
2は、それぞれ独立して、非置換C
1-C
12アルキレン又はC
1-C
12アルケニレンであり;
G
3は、C
1-C
24アルキレン、C
1-C
24アルケニレン、C
3-C
8シクロアルキレン、C
3-C
8シクロアルケニレンであり;
R
aは、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C
6-C
24アルキル又はC
6-C
24アルケニルであり;
R
3は、H、OR
5、CN、-C(=O)OR
4、-OC(=O)R
4、又は-NR
5C(=O)R
4であり;
R
4は、C
1-C
12アルキルであり;
R
5は、H又はC
1-C
6アルキルであり;そして、
xは、0、1、又は2である)。
【0225】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、該脂質は、以下の構造(IIIA)又は(IIIB):
【化22】
(式中、
Aは、3~8員のシクロアルキル又はシクロアルキレンの環であり;
R
6は、各存在において独立して、H、OH、又はC
1-C
24アルキルであり;
nは、1~15の範囲の整数である)
のうちの1つを有する。
【0226】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、該脂質は、構造(IIIA)を有し、そして、他の実施態様では、該脂質は、構造(IIIB)を有する。
【0227】
式(II)の他の実施態様では、該脂質は、以下の構造(IIC)又は(IID):
【化23】
(式中、y及びzは、それぞれ独立して、1~12の範囲の整数である)
のうちの1つを有する。
【0228】
式(III)の前述の実施態様のいずれかでは、L1又はL2の一方は、-O(C=O)-である。例えば、幾つかの実施態様では、L1及びL2のそれぞれが-O(C=O)-である。前述のいずれかの幾つかの異なる実施態様では、L1及びL2は、それぞれ独立して、-(C=O)O-又は-O(C=O)-である。例えば、幾つかの実施態様では、L1及びL2のそれぞれが-(C=O)O-である。
【0229】
式(III)の幾つかの異なる実施態様では、該脂質は、以下の構造(IIIE)又は(IIIF):
【化24】
のうちの1つを有する。
【0230】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、該脂質は、以下の構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)、又は(IIIJ):
【化25】
のうちの1つを有する。
【0231】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、nは、2~12、例えば、2~8又は2~4の範囲の整数である。例えば、幾つかの実施態様では、nは、3、4、5、又は6である。幾つかの実施形態では、nは3である。幾つかの実施形態では、nは4である。幾つかの実施形態では、nは5である。幾つかの実施形態では、nは6である。
【0232】
式(III)の前述の実施態様の幾つかの他のものでは、y及びzは、それぞれ独立して、2~10の範囲の整数である。例えば、幾つかの実施態様では、y及びzは、それぞれ独立して、4~9又は4~6の範囲の整数である。
【0233】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、R6はHである。前述の実施態様のうちの他のものでは、R6はC1-C24アルキルである。他の実施態様では、R6はOHである。
【0234】
式(III)の幾つかの実施態様では、G3は置換されていない。他の実施態様では、G3は置換されている。様々な異なる実施態様では、G3は、直鎖状C1-C24アルキレン又は直鎖状C1-C24アルケニレンである。
【0235】
式(III)の幾つかの他の前述の実施態様では、R
1若しくはR
2、又は両方は、C
6-C
24アルケニルである。例えば、幾つかの実施態様では、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、以下の構造:
【化26】
(式中、
R
7a及びR
7bは、各存在において独立して、H又はC
1-C
12アルキルであり;そして、
aは、2~12の整数であり、
R
7a、R
7b、及びaは、それぞれ、R
1及びR
2がそれぞれ独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される。例えば、幾つかの実施態様では、aは、5~9又は8~12の範囲の整数である)
を有する。
【0236】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、R7aの少なくとも1つの存在はHである。例えば、幾つかの実施態様では、R7aは、各存在においてHである。前述の他の異なる実施態様では、R7bの少なくとも1つの存在は、C1-C8アルキルである。例えば、幾つかの実施態様では、C1-C8アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、又はn-オクチルである。
【0237】
式(III)の異なる実施態様では、R
1若しくはR
2、又は両方は、以下の構造:
【化27】
のうちの1つを有する。
【0238】
式(III)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、R3は、OH、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4、又は-NHC(=O)R4である。幾つかの実施態様では、R4は、メチル又はエチルである。
【0239】
様々な異なる実施態様では、式(III)のカチオン性脂質は、以下の表3に記載される構造のうちの1つを有する。
【表3】
【0240】
幾つかの実施態様では、該LNPは、式(III)の脂質と、ヌクレオシド改変RNAと、中性脂質、ステロイド、及びペグ化脂質から選択される1つ以上の賦形剤とを含む。幾つかの実施態様では、式(III)の脂質は、化合物III-3である。幾つかの実施態様では、式(III)の脂質は、化合物III-7である。
【0241】
特定の実施態様では、該カチオン性脂質は、約30~約95モルパーセントの量で該LNP中に存在する。一実施態様では、該カチオン性脂質は、約30~約70モルパーセントの量で該LNP中に存在する。一実施態様では、該カチオン性脂質は、約40~約60モルパーセントの量で該LNP中に存在する。一実施態様では、該カチオン性脂質は、約50モルパーセントの量で該LNP中に存在する。一実施態様では、該LNPは、カチオン性脂質のみを含む。
【0242】
特定の実施態様では、該LNPは、粒子の形成中に該粒子の形成を安定化する1つ以上の追加の脂質を含む。
【0243】
好適な安定化脂質は、中性脂質及びアニオン性脂質を含む。
【0244】
用語「中性脂質」とは、生理学的pHにおいて非荷電又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する多数の脂質種のうちのいずれか1つを指す。代表的な中性脂質は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドを含む。
【0245】
例示的な中性脂質は、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチル PE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、並びに1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(transDOPE)を含む。一実施態様では、該中性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0246】
幾つかの実施態様では、該LNPは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、及びSMから選択される中性脂質を含む。様々な実施態様では、該カチオン性脂質(例えば、式(I)の脂質)の該中性脂質に対するモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0247】
様々な実施態様では、該LNPは、更に、ステロイド又はステロイドアナログを含む。「ステロイド」は、以下の炭素骨格:
【化28】
を含む化合物である。
【0248】
特定の実施態様では、該ステロイド又はステロイドアナログは、コレステロールである。これら実施態様のうちの幾つかでは、該カチオン性脂質(例えば、式(I)の脂質)のコレステロールに対するモル比は、約2:1~1:1である。
【0249】
用語「アニオン性脂質」とは、生理学的pHにおいて負に帯電している任意の脂質を指す。これら脂質は、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリールホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に結合している他のアニオン性修飾基を含む。
【0250】
特定の実施態様では、該LNPは、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)を含む。特定の実施態様では、該LNPは、ステロール、例えば、コレステロールを含む。
【0251】
幾つかの実施態様では、該LNPは、ポリマー複合脂質を含む。用語「ポリマー複合脂質」とは、脂質部分とポリマー部分とを両方含む分子を指す。ポリマー複合脂質の例は、ペグ化脂質である。用語「ペグ化脂質」とは、脂質部分とポリエチレングリコール部分とを両方含む分子を指す。ペグ化脂質は、当技術分野において公知であり、そして、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-s- DMG)等を含む。
【0252】
特定の実施態様では、該LNPは、ポリエチレングリコール脂質(ペグ化脂質)である追加の安定化脂質を含む。好適なポリエチレングリコール脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロールを含む。代表的なポリエチレングリコール脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGを含む。一実施態様では、該ポリエチレングリコール脂質は、N-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスチルオキシルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。一実施態様では、該ポリエチレングリコール脂質は、PEG-c-DOMG)である。他の実施態様では、該LNPは、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノーロアミン(PEG-PE)、PEGスクシナートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオアート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、又はPEGジアルコキシプロピルカルバマート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバマート又は2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバマートを含む。様々な実施態様では、カチオン性脂質のペグ化脂質に対するモル比は、約100:1~約25:1の範囲である。
【0253】
幾つかの実施態様では、該LNPは、以下の構造(IV):
【化29】
を有するペグ化脂質又はその薬学的に許容し得る塩、互変異性体、若しくは立体異性体を含む(式中、
R
10及びR
11は、それぞれ独立して、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和の、10~30個の炭素原子を含有するアルキル鎖であって、場合により、1つ以上のエステル結合が割り込んでいるアルキル鎖であり;そして、
zは、30~60の範囲の平均値を有する)。
【0254】
ペグ化脂質(IV)の前述の実施態様のうちの幾つかでは、R10及びR11は、zが42であるとき、両方ともがn-オクタデシルではない。幾つかの他の実施態様では、R10及びR11は、それぞれ独立して、10~18個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。幾つかの実施態様では、R10及びR11は、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。幾つかの他の実施態様では、R10及びR11は、それぞれ独立して、12個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。幾つかの他の実施態様では、R10及びR11は、それぞれ独立して、14個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。他の実施態様では、R10及びR11は、それぞれ独立して、16個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。更なる実施態様では、R10及びR11は、それぞれ独立して、18個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。更に他の実施態様では、R10は、12個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖であり、そして、R11は、14個の炭素原子を含有する、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。
【0255】
様々な実施態様では、zは、(II)のPEG部分が約400~約6000g/molの平均分子量を有するように選択される範囲に及ぶ。幾つかの実施態様では、平均zは、約45である。
【0256】
他の実施態様では、該ペグ化脂質は、以下の構造:
【化30】
(式中、nは、該ペグ化脂質の平均分子量が約2500g/molになるように選択される整数である)
のうちの1つを有する。
【0257】
特定の実施態様では、該追加の脂質は、約1~約10モルパーセントの量で該LNP中に存在する。一実施態様では、該追加の脂質は、約1~約5モルパーセントの量で該LNP中に存在する。一実施態様では、該追加の脂質は、約1モルパーセント又は約1.5モルパーセントで該LNP中に存在する。
【0258】
幾つかの実施態様では、該LNPは、式(I)の脂質、ヌクレオシド改変RNA、中性脂質、ステロイド、及びペグ化脂質を含む。幾つかの実施態様では、式(I)の脂質は、化合物I-6である。異なる実施態様では、該中性脂質は、DSPCである。他の実施態様では、該ステロイドは、コレステロールである。更に異なる実施態様では、該ペグ化脂質は、化合物IVaである。
【0259】
特定の実施態様では、該LNPは、該LNPに細胞又は細胞集団をターゲティングさせることができる1つ以上のターゲティング部分を含む。例えば、一実施態様では、該ターゲティング部分は、細胞表面上にみられる受容体に該LNPを導くリガンドである。
【0260】
特定の実施態様では、該LNPは、1つ以上の内部移行ドメインを含む。例えば、一実施態様では、該LNPは、細胞に結合して該LNPの内部移行を誘導する1つ以上のドメインを含む。例えば、一実施態様では、該1つ以上の内部移行ドメインは、細胞表面上にみられる受容体に結合して、該LNPの受容体媒介取り込みを誘導する。特定の実施態様では、該LNPは、インビボにおいて生体分子に結合することができ、この場合、LNPが結合した生体分子は、次いで、細胞表面受容体によって認識されて、内部移行を誘導することができる。例えば、一実施態様では、該LNPは、該LNP及び関連するカーゴの取り込みを引き起こす全身性ApoEに結合する。
【0261】
他の例示的なLNP及びその製造は、例えば、米国特許出願公開第20120276209号、Semple et al., 2010, Nat Biotechnol., 28(2):172-176;Akinc et al., 2010, Mol Ther., 18(7): 1357-1364;Basha et al., 2011, Mol Ther, 19(12): 2186-2200;Leung et al., 2012, J Phys Chem C Nanomater Interfaces, 116(34): 18440-18450;Lee et al., 2012, Int J Cancer., 131(5): E781-90;Belliveau et al., 2012, Mol Ther nucleic Acids, 1: e37;Jayaraman et al., 2012, Angew Chem Int Ed Engl., 51(34): 8529-8533;Mui et al., 2013, Mol Ther Nucleic Acids. 2, e139;Maier et al., 2013, Mol Ther., 21(8): 1570-1578;及びTam et al., 2013, Nanomedicine, 9(5): 665-74等、当技術分野において記載されており、これらはそれぞれ全体が参照により組み入れられる。
【0262】
以下の反応スキームは、式(I)、(II)、又は(III)の脂質を作製する方法を示す。
【0263】
【化31】
式(I)の脂質の実施態様(例えば、化合物A-5)は、一般反応スキーム1(「方法A」)に従って調製することができ、式中、Rは、飽和若しくは不飽和のC
1-C
24アルキル又は飽和若しくは不飽和のシクロアルキルであり、mは0又は1であり、そして、nは1~24の整数である。一般反応スキーム1を参照すると、構造A-1の化合物は、商業的供給源から購入することもでき、又は当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。A-1、A-2、及びDMAPの混合物をDCCで処理して、臭化物A-3を与える。臭化物A-3、塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、及びN,N-ジメチルジアミンA-4の混合物を、任意の必要な後処理又は精製の工程後にA-5を生成するのに十分な温度及び時間で加熱する。
【0264】
【化32】
式(I)の化合物の他の実施態様(例えば、化合物B-5)は、一般反応スキーム2(「方法B」)に従って調製することができ、式中、Rは、飽和若しくは不飽和のC
1-C
24アルキル又は飽和若しくは不飽和のシクロアルキルであり、mは0又は1であり、そして、nは1~24の整数である。一般反応スキーム2に示す通り、構造B-1の化合物は、商業的供給源から購入することもでき、又は当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。B-1の溶液(1当量)を酸塩化物B-2(1当量)及び塩基(例えば、トリエチルアミン)で処理する。粗生成物を酸化剤(例えば、塩化クロム酸ピリジナム)で処理し、そして、中間体生成物B-3を回収する。次いで、粗B-3の溶液、酸(例えば、酢酸)、及びN,N-ジメチルアミノアミンB-4を還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)で処理して、任意の必要な後処理及び/又は精製の後にB-5を得る。
【0265】
出発物質A-1及びB-1は飽和メチレン炭素のみを含むと上には記載されているが、炭素-炭素二重結合を含む化合物を調製するために、炭素-炭素二重結合を含む出発物質を使用してもよいことに留意すべきである。
【0266】
【化33】
式(I)の脂質の異なる実施態様(例えば、化合物C-7又はC-9)は、一般反応スキーム3(「方法C」)に従って調製することができ、式中、Rは、飽和若しくは不飽和のC
1-C
24アルキル又は飽和若しくは不飽和のシクロアルキルであり、mは0又は1であり、そして、nは1~24の整数である。一般反応スキーム3を参照すると、構造C-1の化合物は、商業的供給源から購入することもでき、又は当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。
【0267】
【化34】
式(II)の化合物の実施態様(例えば、化合物D-5及びD-7)は、一般反応スキーム4(「方法D」)に従って調製することができ、式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5、R
6、R
8、R
9、L
1、L
2、G
1、G
2、G
3、a、b、c、及びdは、本明細書に定義される通りであり、そして、R
7’は、R
7又はC
3-C
19アルキルを表す。一般反応スキーム1を参照すると、構造D-1及びD-2の化合物は、商業的供給源から購入することもでき、又は当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。D-1及びD-2の溶液を還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)で処理して、任意の必要な後処理の後にD-3を得る。D-3の溶液及び塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)を塩化アシルD-4(又はカルボン酸及びDCC)で処理して、任意の必要な後処理及び/又は精製の後にD-5を得る。D-5をLiAlH4 D-6で還元して、任意の必要な後処理及び/又は精製の後にD-7を与えることができる。
【0268】
【化35】
式(II)の脂質の実施態様(例えば、化合物E-5)は、一般反応スキーム5(「方法E」)に従って調製することができ、式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、L
1、L
2、G
3、a、b、c、及びdは、本明細書に定義される通りである。一般反応スキーム2を参照すると、構造E-1及びE-2の化合物は、商業的供給源から購入することもでき、又は当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。E-1(過剰)、E-2、及び塩基(例えば、炭酸カリウム)の混合物を加熱して、必要な後処理の後にE-3を得る。E-3の溶液及び塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)を塩化アシルE-4(又はカルボン酸及びDCC)で処理して、任意の必要な後処理及び/又は精製の後にE-5を得る。
【0269】
【化36】
一般反応スキーム6は、式(III)の脂質を調製するための例示的な方法(方法F)を提供する。一般反応スキーム6におけるG
1、G
3、R
1、及びR
3は、式(III)について本明細書に定義される通りであり、そして、G1’は、G1の一炭素短いホモログを指す。構造F-1の化合物は、購入するか又は当技術分野において公知の方法に従って調製する。適切な縮合条件(例えば、DCC)下においてF-1をジオールF-2と反応させて、エステル/アルコールF-3を生成し、次いで、これを酸化(例えば、PCC)させてアルデヒドF-4にする。還元的アミノ化条件下においてF-4をアミンF-5と反応させて、式(III)の脂質を生成する。
【0270】
式(III)の脂質を調製するための様々な別のストラテジを当業者は利用可能であることに留意すべきである。例えば、式(III)の他の脂質(式中、L1及びL2は、エステル以外である)は、適切な出発物質を使用して同様の方法に従って調製することができる。更に、一般反応スキーム6は、式(III)の脂質(式中、G1及びG2は同一である)の調製について記載しているが、これは、本発明の必須の態様ではなく、そして、化合物(式中、G1及びG2が異なる)を生成するために上記反応スキームを改変することが可能である。
【0271】
本明細書に記載されるプロセスにおいて、中間体化合物の官能基を好適な保護基によって保護する必要がある場合があることを当業者は理解するであろう。このような官能基は、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、及びカルボン酸を含む。ヒドロキシに好適な保護基は、トリアルキルシリル又はジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、又はトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジル等を含む。アミノ、アミジノ、及びグアニジノに好適な保護基は、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等を含む。メルカプトに好適な保護基は、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリール、又はアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチル等を含む。カルボン酸に好適な保護基は、アルキル、アリール、又はアリールアルキルエステルを含む。保護基は、標準的な技術に従って付加又は除去することができ、該技術は、当業者に公知であり、そして、本明細書に記載される通りである。保護基の使用については、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳細に記載されている。当業者であれば理解する通り、保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂、又は2-クロロトリチル-クロリド樹脂等のポリマー樹脂であってもよい。
【0272】
医薬組成物
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知であるか又は今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、このような調製方法は、活性成分を担体又は1つ以上の他の副成分と関連付け、次いで、必要な場合又は望ましい場合、生成物を所望の単一用量又は多用量の単位に成形又は包装する工程を含む。
【0273】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトに倫理的に投与するのに好適な医薬組成物を対象とするが、当業者であれば、このような組成物が、一般に、あらゆる動物に投与するのに好適であることを理解するであろう。医薬組成物を様々な動物に投与するのに好適なものにするために、ヒトに投与するのに好適な医薬組成物を改変することは十分に理解されており、そして、通常の技能を有する家畜薬理学者は、もし存在するとすれば単なる通常の実験を用いてこのような改変を設計及び実施することができる。本発明の医薬組成物の投与が想到される対象は、ヒト及び他の霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、及びイヌ等の商業的に関連する哺乳類を含む哺乳類を含むが、これらに限定されない。
【0274】
本発明の方法において有用な医薬組成物は、眼内、経口、直腸内、膣内、非経口、局所、肺内、鼻腔内、頬側、静脈内、脳室内、皮内、筋肉内、又は別の投与経路に好適な製剤で調製、包装、又は販売することができる。他の想到される製剤は、計画中の(projected)ナノ粒子、リポソーム調製品、活性成分を含有する再密閉赤血球、及び免疫原性ベースの製剤を含む。
【0275】
本発明の医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、又は複数の単一単位用量として調製、包装、又は販売され得る。本明細書で使用するとき、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む医薬組成物の別個の量である。活性成分の量は、一般に、活性成分の投薬量と等しく、これは、このような投薬量の便利な割合、例えば、このような投薬量の半分又は三分の一等で対象に投与される。
【0276】
本発明の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容し得る担体、及び任意の追加成分の相対量は、処置される対象のアイデンティティ、大きさ、及び状態に依存し、そして、該組成物が投与される経路に更に依存して変動する。一例として、該組成物は、0.1%~100%(w/w) 活性成分を含み得る。
【0277】
活性成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1つ以上の追加の医薬的活性剤を更に含み得る。
【0278】
本発明の医薬組成物の制御放出又は持続放出の製剤は、従来の技術を使用して作製することができる。
【0279】
本明細書で使用するとき、医薬組成物の「非経口投与」は、被検体の組織に物理的な侵入口を形成すること(breaching)を特徴とする投与及び該組織における侵入口を通じた医薬組成物の投与の任意の経路を含む。したがって、非経口投与は、例えば、該組成物の注射による、外科的切開を通じた該組成物の適用による、組織透過性非外科創傷を通じた該組成物の適用による医薬組成物の投与を含むが、これらに限定されない。具体的には、非経口投与は、眼内、硝子体内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、胸骨内(intrasternal)注射、腫瘍内、静脈内、脳室内、及び腎臓透析点滴技術を含むことが想到されるが、これらに限定されない。
【0280】
非経口投与に好適な医薬組成物の製剤は、薬学的に許容し得る担体、例えば、滅菌水又は滅菌等張食塩水等と合わせて活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に好適な形態で調製、包装、又は販売され得る。注射可能な製剤は、アンプル又は保存剤を含む多回投与用容器等の単位剤形で調製、包装、又は販売され得る。非経口投与用の製剤は、懸濁剤、液剤、油性又は水性のビヒクル中エマルション、ペースト剤、及び移植可能な持続放出性又は生分解性の製剤を含むが、これらに限定されない。このような製剤は、懸濁化剤、安定剤、又は分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加成分を更に含んでいてよい。非経口投与用の製剤の一実施態様では、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で活性成分が提供された後、再構成された組成物が非経口投与される。
【0281】
該医薬組成物は、滅菌された注射可能な水性又は油性の懸濁剤又は液剤の形態で調製、包装、又は販売され得る。この懸濁剤又は液剤は、公知の分野に従って製剤化され得、そして、活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤等の追加成分を含んでいてよい。このような滅菌された注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒、例えば、水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容し得る希釈剤及び溶媒は、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油、例えば、合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含むが、これらに限定されない。有用である他の非経口的に投与可能な製剤は、微結晶性形態で、リポソーム調製品で、又は生分解性ポリマー系の成分として活性成分を含むものを含む。制御放出又は移植のための組成物は、薬学的に許容し得る高分子又は疎水性の材料、例えば、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、又は難溶性塩等を含んでいてよい。
【0282】
本発明の医薬組成物は、頬側口腔を介して肺内投与するのに好適な製剤で調製、包装、又は販売され得る。このような製剤は、活性成分を含み、そして、約0.5~約7ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含み得る。特定の実施態様では、該製剤は、活性成分を含み、そして、約1~約6ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含み得る。このような組成物は、便利なことに、乾燥粉末容器を備える装置であって、該容器に噴射剤流を導いて粉末を分散させる装置を使用して、又は密閉容器内に低沸点噴射剤に溶解又は懸濁している活性成分を含む装置等の自己推進溶媒/粉末分注容器を使用して投与するための乾燥粉末の形態である。特定の実施態様では、このような粉末は、該粒子の少なくとも98重量%が0.5ナノメートル超の直径を有し、そして、該粒子の95個数%が7ナノメートル未満の直径を有する粒子を含む。特定の実施態様では、該粒子の少なくとも95重量%が1ナノメートル超の直径を有し、そして、該粒子の少なくとも90個数%が6ナノメートル未満の直径を有する。特定の実施態様では、乾燥粉末組成物は、糖等の固体微粉希釈剤を含み、そして、便利なことに、単位剤形で提供される。
【0283】
低沸点噴射剤は、一般に、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般に、該噴射剤は、該組成物の50~99.9%(w/w)を構成し得、そして、該活性成分は、該組成物の0.1~20%(w/w)を構成し得る。該噴射剤は、例えば、液体非イオン性若しくは固体アニオン性の界面活性剤、又は固体希釈剤(特定の例では、活性成分を含む粒子と同じ桁の粒径を有する)等の追加成分を更に含んでいてよい。
【0284】
非経口投与に好適な医薬組成物の製剤は、薬学的に許容し得る担体、例えば、滅菌水又は滅菌等張食塩水等と合わせて活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に好適な形態で調製、包装、又は販売され得る。注射可能な製剤は、アンプル又は保存剤を含む多回投与用容器等の単位剤形で調製、包装、又は販売され得る。非経口投与用の製剤は、懸濁剤、液剤、油性又は水性のビヒクル中エマルション、ペースト剤、及び移植可能な持続放出性又は生分解性の製剤を含むが、これらに限定されない。このような製剤は、懸濁化剤、安定剤、又は分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加成分を更に含んでいてよい。非経口投与用の製剤の一実施態様では、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で活性成分が提供された後、再構成された組成物が非経口投与される。
【0285】
該医薬組成物は、滅菌された注射可能な水性又は油性の懸濁剤又は液剤の形態で調製、包装、又は販売され得る。この懸濁剤又は液剤は、公知の分野に従って製剤化され得、そして、活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤等の追加成分を含んでいてよい。このような滅菌された注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒、例えば、水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容し得る希釈剤及び溶媒は、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油、例えば、合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含むが、これらに限定されない。有用である他の非経口的に投与可能な製剤は、微結晶性形態で、リポソーム調製品で、又は生分解性ポリマー系の成分として活性成分を含むものを含む。持続放出又は移植のための組成物は、薬学的に許容し得る高分子又は疎水性の材料、例えば、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、又は難溶性塩等を含んでいてよい。
【0286】
本明細書で使用するとき、「追加成分」は、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:賦形剤:表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;風味剤;着色剤;保存剤;生理学的分解性組成物、例えば、ゼラチン;水性のビヒクル及び溶媒;油性のビヒクル及び溶媒;懸濁化剤;分散又は湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;並びに薬学的に許容し得る高分子又は疎水性の材料。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「追加成分」は、当技術分野において公知であり、そして、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (1985, Genaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0287】
処置方法
本発明は、対象においてZIKVに対する適応免疫応答を誘導する方法であって、1つ以上のZIKV抗原をコードしている1つ以上の単離された核酸を含む組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0288】
一実施態様では、該方法は、対象において、ZIKV、ZIKV感染症、又はZIKVに関連する疾患若しくは障害に対する免疫を提供する。したがって、本発明は、ZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0289】
一実施態様では、該組成物は、ZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を有する対象に投与される。一実施態様では、該組成物は、ZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を発現するリスクを有する対象に投与される。例えば、該組成物は、ZIKVと接触するリスクを有する対象に投与され得る。一実施態様では、該組成物は、ZIKVが蔓延している地理的区域に居住している、旅行した、又は旅行する予定のある対象に投与される。一実施態様では、該組成物は、ZIKVが蔓延している地理的区域に居住している、旅行した、又は旅行する予定のある別人と接触しているか又は接触すると予測される対象に投与される。一実施態様では、該組成物は、職業又は性的接触を通してZIKVに意識的に曝露されたことのある対象に投与される。2016年時点でZIKVが蔓延している例示的な地理的区域は、南米、中米、カリブ、プエルトリコ、及びフロリダを含むが、これらに限定されない。
【0290】
一実施態様では、該組成物は、対象の胚、胎児、又はこれから生まれてくる子供においてZIKVに関連する感染症、疾患、又は障害を予防するために、妊娠しているか又は妊娠する可能性のある対象に投与される。例えば、特定の実施態様では、該組成物は、対象の胚、胎児、又はこれから生まれてくる子供においてZIKVに対する免疫応答を誘導する。
【0291】
一実施態様では、該方法は、1つ以上のZIKV抗原及び1つ以上のアジュバントをコードしている1つ以上のヌクレオシド改変核酸分子を含む組成物を投与することを含む。一実施態様では、該方法は、1つ以上のZIKV抗原をコードしている第1のヌクレオシド改変核酸分子と1つ以上のアジュバントをコードしている第2のヌクレオシド改変核酸分子とを含む組成物を投与することを含む。一実施態様では、該方法は、1つ以上のZIKV抗原をコードしている1つ以上のヌクレオシド改変核酸分子を含む第1の組成物を投与することと、1つ以上のアジュバントをコードしている1つ以上のヌクレオシド改変核酸分子を含む第2の組成物を投与することとを含む。
【0292】
特定の実施態様では、該方法は、複数のZIKV抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードしている複数のヌクレオシド改変核酸分子を対象に投与することを含む。
【0293】
特定の実施態様では、本発明の方法は、投与後少なくとも数日間にわたって、本明細書に記載されるZIKV抗原又はアジュバントを持続的に発現させる。特定の実施態様では、本発明の方法は、投与後少なくとも2週間、本明細書に記載されるZIKV抗原又はアジュバントを持続的に発現させる。特定の実施態様では、本発明の方法は、投与後少なくとも1ヶ月間、本明細書に記載されるZIKV抗原又はアジュバントを持続的に発現させる。しかし、該方法は、特定の実施態様では、核酸が対象のゲノムに組み込まれない特定の実施態様のように、一過的発現も提供する。
【0294】
特定の実施態様では、該方法は、本明細書に記載されるZIKV抗原又はアジュバントの安定的発現を提供するヌクレオシド改変RNAを投与することを含む。幾つかの実施態様では、ヌクレオシド改変RNAを投与した結果、自然免疫応答はわずかしか又は全く生じないが、有効な適応免疫応答を誘導する。
【0295】
特定の実施態様では、該方法は、ZIKVに対する持続性防御を提供する。例えば、特定の実施態様では、該方法は、2週間超にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、1ヶ月間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、2ヶ月間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、3ヶ月間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、4ヶ月間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、5ヶ月間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、6ヶ月間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。特定の実施態様では、該方法は、1年間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を提供する。
【0296】
一実施態様では、該組成物の単回免疫は、1ヶ月間以上、2ヶ月間以上、3ヶ月間以上、4ヶ月間以上、5ヶ月間以上、6ヶ月間以上、又は1年間以上にわたってZIKVに対する持続性防御を誘導する。
【0297】
処置方法における本発明の組成物の投与は、当技術分野において公知の方法を使用して、多数の異なる方法で達成することができる。一実施態様では、本発明の方法は、例えば、経腸又は非経口の投与を含む、対象の全身投与を含む。特定の実施態様では、該方法は、該組成物の皮内送達を含む。別の実施態様では、該方法は、該組成物の静脈内送達を含む。幾つかの実施態様では、該方法は、該組成物の筋肉内送達を含む。一実施態様では、該方法は、該組成物の皮下送達を含む。一実施態様では、該方法は、該組成物の吸入を含む。一実施態様では、該方法は、該組成物の鼻腔内送達を含む。
【0298】
本発明の組成物は、単独で又は別の剤と組み合わせて対象に投与され得ることが理解される。
【0299】
したがって、本発明の治療又は予防の方法は、本発明の方法を実施するために本明細書に記載されるZIKV抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードしている医薬組成物を使用することを包含する。本発明を実施するのに有用な医薬組成物は、1ng/kg/日~100mg/kg/日の用量を送達するために投与され得る。一実施態様では、本発明は、哺乳類において本発明の化合物の濃度が10nM~10μMになる用量を投与することを想定する。
【0300】
典型的には、ヒト等の哺乳類に本発明の方法において投与され得る投薬量は、哺乳類の体重1キログラムあたり0.01μg~約50mgの量の範囲であるが、投与される正確な投薬量は、哺乳類の種類及び処置される疾患状態の種類、哺乳類の年齢、並びに投与の経路を含むがこれらに限定されない任意の数の要因に依存して変動する。特定の実施態様では、該化合物の投薬量は、哺乳類の体重1キログラムあたり約0.1μg~約10mgで変動する。特定の実施態様では、該投薬量は、哺乳類の体重1キログラムあたり約1μg~約1mgで変動する。
【0301】
該組成物は、毎日数回の頻度で哺乳類に投与されてもよく、あるいは1日1回、1週間に1回、2週間毎に1回、1ヶ月間に1回等のより低頻度で、又は数ヶ月間毎に1回若しくは更には1年間に1回以下等の更により低頻度で投与されてもよい。投与頻度は、当業者には容易に明らかになり、そして、処置される疾患の種類及び重篤度、哺乳類の種類及び年齢等であるがこれらに限定されない任意の数の要因に依存する。
【0302】
特定の実施態様では、本発明の免疫原性組成物又はワクチンの投与は、単回投与によって実施されてもよく、又は複数回投与によってブーストされてもよい。
【0303】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載される1つ以上のZIKV抗原又はアジュバントをコードしている1つ以上の組成物を投与することを含む方法を含む。特定の実施態様では、該方法は、組み合わせの投与の全体的効果が、各ZIKV抗原又はアジュバントの投与の効果の合計におよそ等しい相加効果を有する。他の実施態様では、該方法は、組み合わせの投与の全体的効果が、各ZIKV抗原又はアジュバントの投与の効果の合計よりも大きい相乗効果を有する。
【0304】
実験例
本発明は、以下の実験例を参照して更に詳細に説明される。これら例は、説明目的のためだけに提供され、そして、特に指定しない限り、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されるとみなされるべきではなく、本明細書に提供される教示の結果として明らかになる任意の及び全ての変形を包含するとみなされるべきである。
【0305】
更なる説明なしに、当業者は、前述の記載及び以下の具体例を使用して、本発明を作製及び利用し、そして、請求される方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、いかなる方法でも本開示の残部を限定すると解釈されるべきではない。
【0306】
実施例1:単一低用量のヌクレオシド改変mRNAのワクチン接種によるジカウイルス防御
2013 ZIKV大流行株の前駆膜及びエンベロープ(prM-E)の糖タンパク質をコードしている、脂質ナノ粒子に封入されたヌクレオシド改変mRNA(mRNA-LNP)による単一低用量の皮内免疫が、マウス及び非ヒト霊長類において強力かつ持続性の中和抗体応答を惹起したことを本明細書で立証する。ヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNP 30μgによる免疫は、ワクチン接種の2週間後又は5ヶ月後にZIKVチャレンジからマウスを防御し、そして、単一用量 50μgが、ワクチン接種の5週間後に非ヒト霊長類をチャレンジから防御するのに十分であった。これらデータは、該ヌクレオシド改変mRNA-LNPが迅速かつ持続性の防御免疫を惹起し、したがって、ZIKVに対して世界的規模で戦うための新規かつ有望なワクチン候補となることを立証する。
【0307】
これら実験で使用された方法及び材料について次に記載する。
【0308】
抗体試薬
汎フラビウイルスマウスモノクローナル抗体4G2、クローンD1-4G2-4-15(EMD Millipore MAB10216)を使用して、ウエスタンブロットによってZIKV Eタンパク質を検出した。以下の抗体をフローサイトメトリーに使用した:抗CD4 PerCP/Cy5.5(Clone GK1.5、Biolegend)、抗CD3 APC-Cy7(Clone 145-2C11、BD Biosciences)、抗CD27 PE(Clone LG.3A10、BD Biosciences)、抗TNF-α PE-Cy7(Clone MP6-XT22、BD Biosciences)、抗IFN-γ AF700(Clone XMG1.2、BD Biosciences)、抗IL-2 APC(Clone JES6-5H4、BD Biosciences)。死細胞と残屑とを識別するために、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(Life Technologies)を使用した。以下の抗体をELISAアッセイに使用した:ヤギ抗マウスIgG HRP(Sigma 4416)、ヤギ抗サルIgG HRP(Sigma 2054)、及びZIKV Eタンパク質結合mAb NR-4747クローンE19(BEI Resources)。
【0309】
タンパク質試薬
精製された組み換えZIKV Eタンパク質(Aalto Bioreagents AZ 6312)を、ELISAではEタンパク質特異的IgGを検出するために、ウエスタンブロットではポジティブコントロールとして、そして、マウス脾細胞刺激において使用した。
【0310】
mRNA生成
コドン最適化された(Thess et al., 2015, Mol Ther, 23: 1456-1464)ZIKV株H/PF/2013(GenBank: KJ776791)prM-E糖タンパク質をコードしている線状化プラスミド(pTEV-ZIKVprM-E-A101)においてT7 RNAポリメラーゼを使用して、既に記載されている通り(Pardi et al, 2013, Methods Mol Biol, 969, 29-42)mRNAを生成した。101ヌクレオチド長のポリ(A)テールを含有するようにmRNAを転写した。UTPの代わりに1-メチルプソイドウリジン-5’-三リン酸(TriLink)を使用して、改変ヌクレオシドを含有するmRNAを生成した。m7Gキャッピングキットを使用して2’-O-メチルトランスフェラーゼでmRNAをキャッピングしてcap1を得、そして、記載されている通り(Weissman et al., 2013, Methods Mol Biol, 969: 43-54)高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)法によって精製した。アガロースゲル電気泳動によってmRNAを分析し、そして、-20℃で冷凍保存した。
【0311】
細胞培養
2mM L-グルタミン(Life Technologies)及び10% ウシ胎児血清(FCS)(HyClone)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(完全培地)中でヒト胚腎臓(HEK)293T細胞(ATCC)を培養した。ATCCを入手した後、そして、拡大及び凍結保存する前に、該293T細胞株をマイコプラズマの夾雑について確認した。ヒト樹状細胞(huDCs)は、記載されている通り(Kariko et al, 2008, Mol Ther, 16: 1833-1840)単球から生成し、そして、50μg/mL 組み換えヒトGM-CSF及び100μg/mL 組み換えヒトIL-4(R&D systems)を添加した、2mM L-グルタミン(Life Technologies)及び10% ウシ胎児血清(FCS)(HyClone)を含有するRPMI 1640培地(完全培地)中で成長させた。3日間毎にIL-4及びGM-CSFを含有する新鮮培地を添加することによって細胞を維持し、そして、7日目に使用した。マウス樹状細胞(muDC)は、動物の大腿から入手した骨髄細胞から生成し、そして、50μg/mL マウスGM-CSF(R&D systems)を添加した完全培地中で成長させた。3日間毎にマウスGM-CSFを含有する新鮮培地を添加することによって細胞を維持し、そして、7日目に使用した。
【0312】
mRNAトランスフェクション
製造業者の指示書に従ってTransIT-mRNA(Mirus Bio)を用いてヒト及びマウスのDC並びにHEK 293T細胞のトランスフェクションを実施した:mRNA(0.3μg)を、無血清培地 17μL中TransIT-mRNA Reagent(0.34μL)及びBoost Reagent(0.22μL)と合わせ、そして、完全培地 183μL中2×105細胞に複合体を添加した。上清を回収し、そして、トランスフェクションの18時間後にRIPAバッファ(Sigma)中氷上で1時間細胞を溶解させた。
【0313】
エンベロープタンパク質発現のウエスタンブロット解析
ZIKV prM-Eがトランスフェクトされた細胞由来の全細胞溶解物及び上清を、非変性SDS-PAGE Western blotによってZIKV Eタンパク質についてアッセイした。サンプルを4×Laemmliバッファ(Bio-Rad)と合わせ、そして、200Vで45分間、4~15% プレキャストポリアクリルアミドCriterion TGXゲル(Bio-Rad)で分離した。10Vで1時間、半乾式装置(Ellard Instrumentation, Ltd.)を使用してPVDFメンブレンへの転写を実施した。該メンブレンを、0.5% Tween-20を含有するTBSバッファ中5% 脱脂粉乳でブロッキングした。1時間1:10,000 4G2E腹水、続いて、1時間二次ヤギ抗マウスIgG HRP 1:10,000を使用してEタンパク質を検出した。ブロッキングバッファ中において室温で抗体のインキュベーションを実施した。Luminata Forte基質(Millipore)及びKodak X-OMAT 1000Aプロセッサを使用してブロットを現像した。少なくとも2つの独立した実験を実施した。
【0314】
上清中のEタンパク質の特性評価
ZIKV prM-E mRNAをトランスフェクトしたHEK 293T細胞由来の上清を、サブウイルス粒子と同様にEタンパク質がペレット化し、そして、洗剤で破壊され得るかどうかについて試験した。氷上で1時間、PBSのみ又は0.5% Triton X-100を含むPBS中で上清をインキュベートした。次いで、Beckman TLA-55ロータ内において42,000rpmで2.5時間、サンプルを回転させた。次いで、該上清をペレットから除去し、該ペレットをPBS 50μLに再懸濁させた。次いで、等体積のインプット、ペレット、及び遠心後上清の画分を、本明細書の他の箇所に記載される通りウエスタンブロットによって分析した。
【0315】
mRNAの脂質ナノ粒子(LNP)製剤
pH4.0のmRNA水溶液を、エタノールに溶解している脂質の溶液と迅速に混合する自己組織化プロセス(Maier et al., 2013, Mol Ther, 21: 1570-1578)を使用して、FPLCで精製されたmRNA及びポリシチジル酸(ポリ(C)RNA)(Sigma)をLNPに封入した。この試験で使用したLNPは、イオン化可能なカチオン性脂質(Acuitas専売)/ホスファチジルコリン/コレステロール/PEG脂質(50:10:38.5:1.5mol/mol)を含有する既に記載されているもの(Maier et al., 2013, Mol Ther, 21: 1570-1578;Jayaraman et al., 2012, Angew Chem Int Ed Engl, 51: 8529-8533)と同様の組成であり、そして、RNAの全脂質に対する比が~0.05(wt/wt)になるように封入された。該LNPは、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd, Malvern, UK)機器を使用して動的光散乱によって測定したとき、~80nmの直径を有していた。RNA-LNP製剤を、~1μg/μLのRNA濃度で-80℃にて保存した。
【0316】
LNPのマウス及びアカゲザルへの投与
マウス:8週齢の雌のBALB/c及びC57BL/6のマウスをCharles River Laboratoriesから購入し、そして、マウスのケージを無作為にグループに割り当てた。統計的に有意な結果を保証するために、検出力分析を使用して全ての動物群のサイズを計算した。mRNA-LNPをPBSで希釈し、そして、3/10cc 291/2Gインスリン用シリンジ(BD Biosciences)を用いて動物に皮内注射した。腰部にわたる4つの注射部位(各30μL)を使用した。
【0317】
サル:ケタミンで麻酔した動物の背中を剃毛し、そして、PBSで希釈したmRNA-LNPを注射した。10箇所の注射部位(各60μL)を使用した。同様の年齢及び体重の動物を無作為に用量群に割り付けた。
【0318】
マウス及びアカゲザルからの血液回収
マウス:イソフルラン麻酔下で眼窩静脈叢から血液を回収した。血液を13,000rpmで10分間遠心分離し、そして、血清を-20℃で保存し、そして、ELISA及びウイルス中和のアッセイ用に使用した。EDTA-血漿を回収して、qRT-PCR分析用にRNAを単離した。
【0319】
サル:ケタミン麻酔下で大腿静脈穿刺によって血液を回収し、そして、血清及びEDTA-血漿を回収し、そして、ELISA、中和分析用に-80℃で保存し、そして、qRT-PCR分析用にRNAを単離した。
【0320】
脾細胞の刺激及び染色
脾臓由来の単一細胞懸濁液を完全培地中で作製した。脾細胞をPBSで1回洗浄し、そして、2×107細胞/mLで完全培地に再懸濁させた。2μg/mL 精製された組み換えZIKVウイルスEタンパク質を使用して、37℃で6時間、1サンプルあたり2×106細胞(100μL)を刺激した。Golgi Plug(ブレフェルジンA、BD Biosciences)及びGolgi Stop(モネンシン、BD Biosciences)を、完全培地でそれぞれ1:100及び1:143希釈し、そして、1時間後に細胞内サイトカインの分泌を阻害するために両方の希釈された試薬 20μLを各サンプルに添加した。各動物について未刺激サンプルが含まれていた。PMA(10ng/mL)-イオノマイシン(250ng/mL)(Sigma)で刺激されたサンプルをポジティブコントロールとして使用した。
【0321】
刺激後、細胞をPBSで洗浄し、そして、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(Life Technologies)を使用して染色し、次いで、CD4及びCD27について表面染色した。室温で30分間、抗体を細胞と共にインキュベートした。表面染色後、細胞をFACSバッファで洗浄し、そして、製造業者の指示に従ってCytofix/Cytoperm kit(BD Biosciences)を使用して固定した。固定後、該細胞を適切なパーム(perm)バッファで洗浄し、そして、室温で1時間、CD3、TNF-α、IFN-γ、及びIL-2に対する抗体と共にインキュベートした。染色後、該細胞を適切なパームバッファで洗浄し、固定し(1% パラホルムアルデヒドを含有するPBS)、そして、分析まで4℃で保存した。1回の技術的反復実験から結果を得た。
【0322】
フローサイトメトリー
脾細胞を改造LSR IIフローサイトメトリー(BD Biosciences)で分析した。1サンプルあたり10万事象を収集した。各機能についてのゲートを作製した後、Booleanゲートプラットフォームを使用して、3つの機能を試験したときの7つの応答パターンと等しい、可能性のあるサイトカインの組み合わせのフルアレイを作製した。Eタンパク質で刺激された陽性細胞の百分率から陽性未刺激細胞の百分率を減じることによってデータを表した。
【0323】
ZIKV E特異的IgGについての酵素免疫測定吸着法(ELISA)
Immulon 4HXB ELISAプレートを、4℃で一晩、0.1M 重炭酸ナトリウムバッファ中6μg/mL 精製された組み換えZIKV Eタンパク質でコーティングした。該プレートを、1時間PBS中2% BSAでブロッキングし、そして、洗浄バッファ(0.05% Tween-20を含むPBS)で3回洗浄した。マウス又はアカゲザルの血清をブロッキングバッファで希釈し、そして、室温で1時間プレート上においてインキュベートし、続いて、4回洗浄した。二次抗体HRP複合体をブロッキングバッファで1:10,000希釈し、そして、1時間プレート上においてインキュベートし、続いて、4回洗浄した。TMB基質(KPL)を該プレートに適用し、そして、2規定 硫酸で反応を停止させた。MRX Revelationマイクロプレートリーダーを使用して、450nmにおける吸光度を測定した。ZIKV Eタンパク質特異的IgGを2つの方法で分析した:バックグラウンドOD+0.01単位の合計よりも大きいODを与えるための血清の最大逆数希釈倍数(reciprocal dilution)として定義されるエンドポイント希釈力価として;そして、標準としてのマウスmAb NR-4747に基づく絶対IgG濃度の推定値として(マウスサンプルに対してのみ適用可能)。全てのサンプルを少なくとも技術的デュープリケートで実験した。
【0324】
ZIKV MR-766プラーク減少中和試験(PRNT)
ZIKV株MR-766(アフリカ系統、ウガンダ、1947年、GenBank: AY632535)(UTMB Arbovirus Reference Collection)をVero細胞(ATCC CCL-81)で生成し、そして、37℃で1時間、無血清DMEM(Corning)培地中熱不活化血清の漸増希釈物と共に50プラーク形成単位をインキュベートした。ウイルス/血清混合物(200μL)を、6ウェルフォーマットでVero細胞のコンフルエントな単層に添加し、そして、断続的に振動させながら37℃で1.5時間インキュベートした。次いで、最終濃度0.5% メチルセルロース(4,000センチポアズ)(Sigma)、1×DMEM(Gibco)、16mM HEPES、0.56% 重炭酸ナトリウム、1.6×GlutaMAX(Gibco)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Corning)、及び4μg/mL アンホテリシンB(Gibco)を含有するオーバーレイ 3mLを各ウェルに添加し、そして、5% CO2中において37℃で5日間プレートをインキュベートした。該オーバーレイを吸引し、そして、細胞を固定し、そして、25% メタノール、75% 脱イオン水中0.5% クリスタルバイオレット(Sigma)で染色した。ウェルを脱イオン水ですすいで、プラークを可視化した。50%阻害と交差した曲線の直線部分を通して直線をプロットし、そして、感染を50%中和するのに必要な血清の逆数希釈倍数を計算することによって、中和力価(EC50)を求めた。EC50力価は、1又は2回の技術的反復実験の平均として報告し、そして、検出限界を下回る値は、検出限界の半分として報告する。
【0325】
ZIKV MEX I-44フォーカス減少中和試験(FRNT)
ZIKV MEX I-44(アジア系統、メキシコ、2016年、GenBank: KX856011)ストックを、Vero 76(ATCC CRL-1587)細胞における伝播を介して生成し、そして、清澄化された細胞培養溶解物/上清として収集した。標準的なフォーカス形成アッセイを介してストック力価を定量した。37℃で1時間、標準的な用量のZIKVを熱不活化血清の2倍連続希釈物と合わせることによってFRNTを実施した。次いで、ウイルス-血清混合物(100μL)をVero 76単層上に接種し、37℃で1時間インキュベートし、そして、Avicel(FMC Biopolymer)含有成長培地で覆った。3日間インキュベートした後、プレートをホルマリンで固定し、透過処理し、ブロッキングし、そして、ビオチン結合4G2 mAb(ATCC HB-112)、ストレプトアビジン-HRP(BD Biosciences)、及びTrueBlue Peroxidase Substrate(KPL)とともに逐次インキュベートすることを介して染色した。ウイルスインプットを並行して確認した(許容し得る範囲:20~60フォーカス)。FRNT50(EC50力価)は、フォーカス数≦50% 中和カットオフを与える最大逆数希釈倍数として報告し、そして、幾何平均は、技術的デュープリケートについて計算した。
【0326】
レポーターウイルス粒子(RVP)生成
GFP発現WNVサブゲノムレプリコン(Dowd et al., 2016, Cell Rep, 16: 1485-1491;Pierson et al., 2006, Virology, 346: 53-65)を、ウイルス構造タンパク質(capsid-prM-E)をコードしているプラスミドで補完することによって、偽感染性RVPを生成した。簡潔に述べると、製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従ってLipofectamine 3000を使用して、HEK-293T細胞を構造遺伝子及びレプリコンプラスミド(3:1質量比)と同時にトランスフェクトすることを介して、ZIKV MR-766及びZIKV H/PF/2013 RVPを生成した。トランスフェクトされた細胞を30℃でインキュベートし、そして、3~6日目にRVP含有上清を収集した。ストックを0.2μmフィルタに通し、そして、アリコートを使用まで-80℃で保存した。濾過したRVP上清の連続希釈物をRaji-DCSIGNR細胞に感染させることによって、ストック力価を求めた。感染の48時間後にフローサイトメトリーによってGFP陽性細胞を評価し、そして、RVP力価を計算した。
【0327】
RVP中和アッセイ
用量応答曲線における情報価値のある点で確実に抗体が過剰になるように、既に力価が決定されたRVPを希釈し、そして、定常状態結合を可能にするために37℃で1時間マウス又はアカゲザルの血清の連続希釈物と共にインキュベートした。次いで、デュープリケートな技術的反復実験において、抗体RVP複合体をRaji-DCSIGNR細胞に感染させた。感染は、37℃で実施し、そして、24~48時間後にフローサイトメトリーによってGFP陽性感染細胞を検出した。非線形回帰によって中和結果を解析して、感染を半値中和(half-maximum neutralization)するのに必要な血清の逆数希釈倍数を推定した(EC50力価)(Prism 6, GraphPad)。血清の初期希釈物(RVP、細胞、及び血清の最終体積に基づく)をアッセイの信頼限界として設定した。非線形回帰によってこの閾値を下回ると予測された力価は、信頼限界の半分の力価として報告した。個々のEC50力価は、少なくとも2回の技術的反復実験の幾何平均として報告する。
【0328】
チャレンジZIKVウイルスの調製
マウス:チャレンジZIKV株PRVABC59(アジア系統、プエルトリコ、2016年、GenBank: KU501215)(BEI Resources NR-50240)をVero CCL81細胞中で成長させた。75~90%コンフルエントなT175フラスコに、無血清DMEM培地 10mL中MOI0.01のZIKVを接種した。5% CO2、37℃で1.5時間、断続的に穏やかに振動させながら該フラスコをインキュベートし、次いで、25mLの最終体積中最終濃度1.5% FCS、1×GlutaMAX(Gibco)、及び1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Corning)になるように、加温した培地を添加した。該フラスコを4日間又は細胞変性効果が見られるまでインキュベートした。次いで、上清を回収し、そして、Sorvall SureSpin 630ロータにおいて4℃で1時間20,000rpmで超遠心した。上清を除去し、そして、ペレットを無血清DMEM 1mLに再懸濁させ、分注し、そして、-80℃で保存した。チャレンジ前、ウイルスを解凍し、そして、PBSで2,000PFU/mLに希釈した。
【0329】
サル:チャレンジZIKV株PRVABC59をVero76 CRL-1587細胞において成長させた。80~85%コンフルエントなT150フラスコを伝播のために使用した。10% FCS(Gibco)、10% トリプトースホスファートブロス(Sigma Aldrich)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、及びL-グルタミン(Gibco)を添加した新鮮L-15培地(Gibco) 4mLで希釈したストックウイルス 100μLを用いて感染を実施し、そして、15分間毎に穏やかに撹拌しながら室温で1時間吸着させた。吸着後、各フラスコに新鮮L-15培地 7mLを入れ、そして、37℃で4日間インキュベートした。Eppendorf A-4-62ロータにおいて4℃で5分間1,200rpmで遠心分離することによって細胞残屑を除去した。ウイルスストックを分注し、そして、-80℃で保存した。
【0330】
マウス及びアカゲザルにおけるジカウイルスチャレンジ
マウス:ワクチン接種の2又は20週間後、マウスを失血させ、次いで、PBS 100μL中ZIKV-PR(PRVABC59) 200PFUで静脈内チャレンジした。血漿中のウイルス量(1mLあたりのZIKV RNAコピー数)を求めるために、チャレンジの3、5、及び7日間後に血液を回収した。
【0331】
サル:アカゲザルをケタミンで麻酔し、そして、PBSの体積1mL中104TCID50 ZIKV-PRを大腿後部に皮下注射した。血漿中のウイルス量(1mLあたりのZIKV RNAコピー数)を求めるために、チャレンジの1、3、5、及び7日間後に血液を回収した。
【0332】
ウイルス量の定量(qRT-PCR)
盲検化サンプルを使用して、QIAamp MinElute Virusスピンキット(Qiagen)を使用して血漿 200μL(アカゲザル)又は50μL(マウス)からRNAを単離した。7500 Real-Time PCRシステム(Applied Biosystems)においてSensiFAST Probe Lo-ROX One-Step Kit(Bioline BIO-78005)を使用して増幅するために、抽出したRNAを使用した。以下の通り、ZIKV BeH815744由来のカプシド遺伝子の保存領域を増幅するためにプライマー及びプローブを設計した:Fwd:GGAAAAAAGAGGCTATGGAAATAATAAAG(配列番号3);Rev:CTCCTTCCTAGCATTGATTATTCTCA(配列番号4);プローブ:AGTTCAAGAAAGATCTGGCTG(配列番号5)。プライマー及びプローブは最終濃度2μMで使用し、そして、以下のプログラムを実行した:30分間48℃、10分間95℃、続いて、15秒間95℃及び60℃で1分間を40サイクル。アッセイ感度は、アカゲザルのサンプルについては50コピー/mL、そして、マウスのサンプルについては200コピー/mLであった。結果は、少なくとも2回の技術的反復実験から計算する。
【0333】
統計解析
GraphPad Prism 5.0fを使用して、マンホイットニー及びクラスカルワリス(ダン補正を伴う)の検定を実施して、それぞれ、ワクチン接種したマウス及び対照のマウス、並びに様々な用量群のアカゲザルにおける免疫応答を比較した。SPICE 5.35及びMicrosoft Excelソフトウェアを使用してスチューデントt検定を実施して、ワクチン接種したマウス及び対照のマウスにおけるT細胞応答を比較した。
【0334】
次に、実験結果について説明する。
【0335】
幾つかの生ウイルスワクチン(Minor, 2015, Virology, 479-480: 379-392に概説)に関連する安全上のリスク及び抗ベクター免疫を回避しながら、強力な免疫応答を惹起することができる(Weissman, 2015, Expert Rev Vaccines, 14: 265-281及びSahin et al., 2014, Nat Rev Drug Discov, 13: 759-780)有望な新規ワクチン手法としてmRNAが浮上している。mRNAを使用するワクチン接種によって、他のワクチンプラットフォームよりも優れた幾つかの利点が得られる:(I)高い効率で任意のタンパク質を発現するように容易に設計することができる非感染性遺伝子ベクターである、(II)mRNAは宿主ゲノムに組み込まれない、(III)コスト効率が高くかつ高度に拡張可能な製造の可能性を有する、及び(IV)防御免疫応答を誘導するのに少用量で十分である。
【0336】
ZIKV H/PF/2013(フランス領ポリネシアから単離されたアジア系統)のprM-E糖タンパク質(Baronti et al., 2014, Genome Announc, 2)が改変ヌクレオシド1-メチルプソイドウリジン(m1Ψ)を含有するmRNAによってコードされており、これによって自然免疫センシングが阻止され、そして、インビボにおけるmRNA翻訳が増加する(Andries et al., 2015, J Control Release, 217: 337-344)新規の強力な抗ZIKVワクチンの設計を本明細書に提示する。ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNAを、インビボにおいて効率的かつ長期にわたるタンパク質発現を媒介することが示されている脂質ナノ粒子(LNP)中においてワクチン接種のために製剤化した(Pardi et al, 2015, J Control Release, 217: 345-351)。ZIKV及び他のフラビウイルスの研究によって、prMタンパク質及びEタンパク質の同時発現がサブウイルス粒子を構築及び分泌させるのに十分であることが立証されている(Dowd et al., 2016, Science, 354: 237-240;Wang et al., 2009, PLoS One 4: e8325)。まず、HEK 293T細胞並びにヒト及びマウスの樹状細胞(DC)をトランスフェクトすることによって、ZIKV prM-EをコードしているmRNAをインビトロにおいて特性評価した(
図5A)。ZIKV Eタンパク質は3つ全ての細胞種によって生成され、そして、293T細胞の上清に分泌された(
図5B及び
図6)。HIV gagについて提唱されている通り(Weissman et al., 2000, J Immunol, 165: 4710-4717)、DCもEタンパク質を分泌するかどうか及び容易にエンドサイトーシスによって取り込まれるかどうかについて調べた。293T細胞上清中のEタンパク質がサブウイルス粒子の特性を示したかどうかを試験するために、トランスフェクション上清を超遠心に供し、そして、インプット、ペレット、及び得られた上清の画分をEタンパク質についてプロービングした。prM-E mRNAによる粒子生成(Wang et al., 2009, PLoS One 4: e8325)と同様に、293T細胞から分泌された全てのEタンパク質が、PBSと共にインキュベートしたときにはペレット化したが、0.5% Triton X-100と共にインキュベートしたときにはペレット化しなかった(
図5C)。
【0337】
まず、C57BL/6マウスにおいて、ヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNPワクチンによって誘導される免疫応答を評価した。ZIKV prM-E mRNA-LNP又はポリ(C)RNA-LNP(ネガティブコントロール)30μgで動物を皮内(i.d.)免疫した。注射部位において炎症も他の有害事象も観察されなかった。ワクチン接種後2週目におけるZIKV Eタンパク質で刺激された脾細胞による細胞内IFN-γ、TNF-α、及びIL-2の生成に基づいて、多機能性Eタンパク質特異的CD4+ T細胞応答を検出した(
図1A及び
図7)。ZIKV mRNAワクチン接種マウスではZIKV E特異的血清IgGが迅速に発生し、そして、8~12週目に180,000(~90μg/mL)のエンドポイント力価で安定化した(
図1B及び
図8A)。2つの独立したアッセイを使用して抗ZIKV中和抗体(NAb)を測定した:標準的なプラーク減少中和試験(PRNT)及びZIKVレポーターウイルス粒子(RVP)アッセイ(Dowd et al., 2016, Science, 354: 237-240)。ZIKV MR-766(アフリカ系統、ウガンダ、1947年)に対する平均PRNT
50力価は、8週目に~1,300でピークに達し(
図1C)、そして、比較的安定であり、12週目にわずか2分の1に減少しただけであった。ZIKV H/PF/2013に対する平均RVP Nab力価(EC
50)は、8及び12週目に~10
5に達した(
図1D)。PRNTに比べてRVPアッセイでより高い中和力価が検出されたことは、前述のZIKV中和アッセイの比較と一致している(Dowd et al., 2016, Science, 354: 237-240)。更に、RVP力価のPRNT力価に対する比は固定されておらず、そして、動物モデル及びウイルスストックに応じて変動することに留意した。
【0338】
次に、同用量のヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNPの免疫原性をBALB/cマウスにおいて評価した。E特異的血清IgGは、8週目にピークに達し、そして、12~20週目には安定なままであった(エンドポイント力価~200,000;90~130μg/mL)(
図1E及び
図8B)。PRNT
50NAbは、16週目に最大1,300まで増加し、そして、20週目まで安定なままであった(
図1F)。RVP NAb力価は、8週目に50,000まで増大し、そして、20週目まで20,000を超えたままであった(
図1G)。
【0339】
ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNP又はポリ(C)RNA-LNP 30μgで免疫したBALB/cマウスにおいてチャレンジ試験を実施した。ZIKV PRVABC59(アジア系統、プエルトリコ、2015年) 200プラーク形成単位(PFU)で免疫した後2週目(短期)又は20週目(長期)に、マウスを静脈内(i.v.)チャレンジした。短期防御試験では、9頭の対照マウスのうちの8頭が3日目までにウイルス血症を発症し、中央ピークは~14,000コピー/mLであった。全てのZIKV mRNA免疫マウス(n=9)が検出可能なウイルス血症から防御された(
図2A)。長期試験では、全ての対照マウス(n=5)が3日目にウイルス血症を示し、中央ピークは1,200コピー/mLであったが、ZIKV mRNA免疫マウス(n=10)はいずれも、試験したいずれの時点でもウイルス血症を有していなかった(
図2B)。これらデータは、ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNPの単回免疫が、マウスにおいて異種ZIKV株による検出可能なウイルス血症からの持続的防御を惹起することを立証する。
【0340】
次に、ヒトにおけるZIKV感染の幾つかの特徴を再現する(Dudley et al, 2016, Nat Commun 7, 12204)非ヒト霊長類種であるアカゲザル(Macaca mulatta)においてヌクレオシド改変ZIKV mRNA-LNPワクチンの有効性を評価した。ZIKV prM-E mRNA-LNP 600μg、200μg、又は50μgの用量を皮内注射することによってアカゲザルを免疫した。マウスと同様に、注射部位において炎症も他の有害事象も観察されなかった。Eタンパク質特異的IgG及びNAbは3つ全てのワクチン用量によって効率的に誘導され、群間に統計的に有意な差はなかった。エンドポイントIgG力価は、全ての群において4週目までに>300,000に増加し、そして、12週目まで≧100,000で維持された(
図3A)。MR-766に対するPRNT
50 NAb力価は、2週目において~400のピークに達し(
図10A)、そして、4~12週目は~200で安定化していた。研究室間のNAb力価の比較を容易にするために、PRNTアッセイにおける、ヒト抗ZIKV中和mAbであるA3594の中和曲線を示す(
図9)。PRNTと類似のフォーマットを有するフォーカス減少中和試験(FRNT)で得られたNAb力価は、2及び4週目においてZIKV MEX I-44(アジア系統、メキシコ、2016年)に対して約400で安定していた(
図3B)。RVPアッセイによって、H/PF/2013に対するNAb力価が2週目において~10,000、そして、4週目において~17,000であり(
図3C)、そして、MR-766に対する力価が4週目において~3,000である(
図10B)ことが明らかになった。アジア及びアフリカの両系統のウイルスの中和は、1つの血清型のZIKVのみの存在を立証する以前の報告(Dowd et al., 2016, Cell Rep, 16: 1485-1491)と一致している。任意のアッセイにおいてヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNPワクチンによって惹起される抗体応答に対する有意な用量依存性効果が存在しないこと(クラスカルワリス検定、p>0.05)は、アカゲザルにおいてロバストな抗ZIKV免疫を誘導するのに50μgの低用量(約0.02mg/kg)で十分であるか又は恐らく十分よりも多いことを示唆する。
【0341】
10
4TCID
50 ZIKV-PRVABC59を5頭のワクチン接種した動物及び6頭のワクチン接種していない対照動物に皮下(s.c.)注射することによって、5週目にアカゲザルをチャレンジした(表4)。全ての対照動物は感染し、そして、血漿中のウイルスの存在の中央ピークは、7,000ZIKV RNAコピー/mL(
図4)であった。対照的に、ワクチン接種したアカゲザルは、ZIKV感染から高度に防御された。5頭の動物のうちの4頭(最低用量の50μgを与えた3頭及び中間用量の200μgを与えた1頭を含む)は、全ての時点において完全に防御され、検出可能なウイルスは存在しなかった(<50コピー/mL)。
【表4】
【0342】
この報告では、ヌクレオシド改変ZIKV prM-E mRNA-LNPによる単回低用量皮内免疫が、マウス及びアカゲザルの両方において防御的であり、そして、精製された不活化ウイルス(PIV)及びprM-E又はM-EをコードしているプラスミドDNAワクチンを含む複数の最近報告されたZIKVワクチン候補(Larocca et al., 2016, Nature, 536: 474-478;Abbink et al., 2016, Science, 353, 1129-1132;Dowd et al., 2016, Science, 354, 237-240)の単回免疫よりも高いNAb応答を惹起することを立証する。マウスでは、PRNT50 NAbは数ヶ月間にわたって次第に増加し、PIV又はDNAワクチンによる単回免疫によって誘導されるもの(Larocca et al., 2016, Nature, 536: 474-478;Dowd et al., 2016, Science, 354, 237-240)よりも50~100倍高いレベルまで増大する。ZIKV mRNA-LNPワクチンは、マウスにおいて少なくとも5ヶ月間維持され、そして、Nab力価が安定であったため恐らく遥かに長く維持される、完全な迅速かつ持続性の防御を付与した。また、マウスチャレンジ試験によって、2つの同一のアリコート及び用量のチャレンジウイルスストックを使用したとき、25週齢のマウスと比較して8週齢のBALB/cマウスでは、ZIKV PRVABC59がはるかにより効率的に(p=0.02、マンホイットニー検定)複製されることも明らかになった。以前の報告は、免疫担当マウスにおけるZIKVに関連する死亡率が1週齢~4週齢に減少することを示している(Lazear et al., 2016, Cell Host Microbe, 19: 720-730)が、成体マウスにおけるZIKVの複製は、未だ十分には説明されていない。この結果は、マウスにおける将来のZIKVワクチン試験に、そして、ZIKVの病原性の理解に関連し得る。
【0343】
アカゲザルでは、同一のポジティブコントロールを用いて同じ研究室で行われた同じアッセイを使用して、ZIKV prM-E mRNA-LNP 50μgによる単回免疫は、DNAワクチン 1mgの1回免疫によって誘導されるものよりも50倍高く、そして、DNAの2回免疫によって誘導されるものよりも2倍超高い(Dowd et al., 2016, Science, 354, 237-240)RVP Nab力価を誘導した。ZIKV mRNA-LNP NAb力価は、アカゲザルにおいてPIV又はRhAd52 ZIKVワクチンを1回注射することによって惹起されたものと重複し得るが、異なるアッセイフォーマットであるので正確には比較できない。ウイルスベクターワクチンとは対照的に、mRNA-LNPは抗ベクター免疫を誘導せず、そして、免疫原性を喪失させることなく繰り返し投与することができる。アカゲザルにおけるZIKV mRNA-LNPによって惹起されるFRNT nAb力価は、免疫の12週間後まで安定なレベルで維持され、これは、防御が持続性であり得ることを示唆する。
【0344】
本明細書に引用されるそれぞれ及び全ての特許、特許出願、及び公開の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明は特定の実施態様を参照して開示されているが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の当業者によって本発明の他の実施態様及び変形が考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのこのような実施態様及び等価な変形を含むとみなされることを意図する。
【配列表】