(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】FLT3を標的にするキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230724BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230724BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20230724BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230724BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230724BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230724BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230724BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230724BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230724BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230724BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230724BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230724BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230724BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230724BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230724BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230724BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230724BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K16/40
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12Q1/02
A61K31/7088
A61K35/17
A61K38/16
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
G01N33/53 Y
C12P21/08
C12N15/54
(21)【出願番号】P 2019566197
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(86)【国際出願番号】 US2018035492
(87)【国際公開番号】W WO2018222935
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-124227
【微生物の受託番号】ATCC PTA-124228
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】バーブラ・ジョンソン・サス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エリザベス・デットリング
(72)【発明者】
【氏名】シーザー・アドルフォ・サマー
(72)【発明者】
【氏名】イック・アンディ・イェウン
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ・マーク・ハムゼ
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/053889(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297884(US,A1)
【文献】特表2017-513478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
C07K 14/705
C07K 16/40
C07K 19/00
C12N 15/13
C12N 15/54
C12N 15/63
C12N 5/10
C12Q 1/02
A61K 31/7088
A61K 35/17
A61K 38/16
A61K 39/395
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 35/02
G01N 33/53
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外リガンド結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖可変断片(scFv)を含み、ここで、
(a)前記VH領域は、配列番号90、91、または92に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号93または94に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号95に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号171に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号172に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号173に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
(b)前記VH領域は、配列番号84、85、または86に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号87または88に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号89に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号168に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号169に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号170に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
(c)前記VH領域は、配列番号49、44、または50に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号51または52に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号53に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号150に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号151に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号152に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
(d)前記VH領域は、配列番号60、61、または62に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号63または64に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号65に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号156に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号157に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号158に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、または
(e)前記VH領域は、配列番号43、44、または45に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号46または47に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号48に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号147に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号148に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号149に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記VH領域は、配列番号84、85、または86に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号87または88に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号89に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号168に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号169に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号170に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項3】
前記VH領域は、配列番号60、61、または62に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号63または64に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号65に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号156に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号157に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号158に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項4】
前記VH領域は、配列番号43、44、または45に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号46または47に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号48に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号147に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号148に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号149に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項5】
細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖可変断片(scFv)を含み、前記VH領域は、配列番号49、44、もしくは50に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号51もしくは52に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号53に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み、前記VL領域は、配列番号150に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号151に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号152に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項6】
細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖可変断片(scFv)を含み、前記VH領域は、配列番号90、91、または92に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1;配列番号93または94に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2;および配列番号95に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み;かつ前記VL領域は、配列番号171に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1;配列番号172に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2;および配列番号173に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項7】
前記VH領域は、CDR内にない残基に1個もしくは数個の保存的アミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項8】
前記VL領域が、CDR内にないアミノ酸に1個もしくは数個のアミノ酸置換を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項9】
細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)であって、
ここで、前記細胞外ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖可変断片(scFv)を含み、
(a)前記VH領域は、配列番号20に示される配列を含み、かつ前記VL領域は、配列番号19に示される配列を含む;
(b)前記VH領域は、配列番号18に示される配列を含み、かつ前記VL領域は、配列番号17に示される配列を含む;
(c)前記VH領域は、配列番号6に示される配列を含み、かつ前記VL領域は、配列番号5に示される配列を含む;
(d)前記VH領域は、配列番号10に示される配列を含み、かつ前記VL領域は、配列番号9に示される配列を含む;または
(e)前記VH領域は、配列番号4に示される配列を含み、かつ前記VL領域は、配列番号3に示される配列を含む、
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項10】
前記VH領域は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、前記VL領域は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1、5、および7~9のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項11】
前記VH領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記VL領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1、6、および7~9のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項12】
前記VH領域は、配列番号18に示される配列を含み、かつ前記VL領域は、配列番号17に示される配列を含む、請求項1、2、および7~9のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項13】
前記VH領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記VL領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1、4、および7~9のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項14】
前記VH領域は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、前記VL領域は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1、3、および7~9のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項15】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項16】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBドメインを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項17】
第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項18】
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBドメインを含む、請求項17に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項19】
前記細胞外リガンド結合ドメインと前記第1の膜貫通ドメインとの間にストークドメインを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項20】
前記ストークドメインは、CD8αヒンジ、IgG1ヒンジ、およびFcγRIIIαヒンジからなる群から選択される、請求項19に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項21】
モノクローナル抗体に特異的な1つ以上のエピトープを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項22】
前記エピトープは、CD52エピトープ、CD20エピトープ、CD3エピトープ、CD41エピトープ、CD25エピトープ、CD30エピトープ、EGFRエピトープ、TNFαエピトープ、VEGFエピトープ、補体タンパク質C5エピトープ、CD11aエピトープ、CD33エピトープ、α4インテグリンエピトープ、IgE Fc領域エピトープ、RSVタンパク質Fエピトープ、IL-6受容体エピトープ、HER2受容体エピトープ、インテグリンα
4β
7エピトープ、BAFF(B細胞活性化因子)エピトープ、IL-1βエピトープ、RANKLエピトープ、CTLA4エピトープ、CD34エピトープ、IL-12エピトープ、IL-23エピトープ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項23】
前記エピトープは、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ムロモナブ-CD3、トシツモマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、QBEND-10、またはウステキヌマブによって特異的に認識されるエピトープである、請求項21または22に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項24】
前記エピトープはCD20エピトープである、請求項21~23のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項25】
前記CD20エピトープは、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含む、請求項24に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項26】
前記FLT3特異的CARは、配列番号235、236、237または242に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項27】
前記FLT3特異的CARは、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR
【請求項28】
前記FLT3特異的CARは、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項29】
前記FLT3特異的CARは、配列番号237に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項30】
前記第1の膜貫通ドメインは、CD8α鎖膜貫通ドメインを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項31】
FLT3に特異的ではない第2の細胞外リガンド結合ドメインを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項32】
前記細胞外リガンド結合ドメイン(複数可)、前記第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)は、単一のポリペプチド上にある、請求項1~31のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項33】
第2の膜貫通ドメインを含み、前記第1の膜貫通ドメインおよび前記細胞外リガンド結合ドメイン(複数可)は第1のポリペプチド上にあり、前記第2の膜貫通ドメインおよび前記細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)は第2のポリペプチド上にあり、前記第1の膜貫通ドメインは、高親和性IgE受容体(FcεRI)のα鎖由来の膜貫通ドメインを含み、前記第2の膜貫通ドメインは、FcεRIのγ鎖またはβ鎖由来の膜貫通ドメインを含む、請求項1~
29のいずれか一項に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項34】
共刺激分子由来の細胞内シグナル伝達ドメインに融合した第3の膜貫通ドメインを含む第3のポリペプチドを含み、前記第3の膜貫通ドメインは、FcεRIのγ鎖またはβ鎖由来の膜貫通ドメインを含む、請求項33に記載のFLT3特異的CAR。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載のFLT3特異的CARをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドは、ATCC受託番号PTA-124227を有するベクターの核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドは、ATCC受託番号PTA-124228を有するベクターの核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号253に示される核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号248に示される核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号247に示される核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号246に示される核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号245に示される核酸配列を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
請求項35~42のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項44】
請求項1~34のいずれか一項に記載のFLT3特異的CARを発現する、遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項45】
FLT3に特異的ではない別のCARを含む、請求項44に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項46】
自殺ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項44または45に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項47】
前記自殺ポリペプチドはRQR8である、請求項46に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項48】
前記免疫細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、またはヘルパーTリンパ球に由来する、請求項44~47のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項49】
1つ以上の内在性遺伝子の破壊を含み、前記内在性遺伝子は、TCRα、TCRβ、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、または免疫チェックポイントタンパク質をコードする、請求項44~48のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項50】
前記免疫チェックポイントタンパク質はプログラム死-1(PD-1)である、請求項49に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項51】
前記免疫細胞は、健常なドナーから得られる、請求項44~50のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項52】
前記免疫細胞は、疾患または障害に罹患したドナーから得られる、請求項44~50のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項53】
薬物として使用するための、請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項54】
前記薬物は、多発性骨髄腫、悪性形質細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞性白血病、形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(脚型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に生ずる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、および他の造血細胞に関連する癌からなる群から選択される癌の治療において使用するための、請求項53に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項55】
請求項44~54のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞であって、前記FLT3特異的CARは、ScFvを含む細胞外ドメインを含み、
-前記scFvは、10nM~80nMを含むK
DでヒトFLT3の前記細胞外ドメインに結合するか、または
-前記scFvは、1nM~100nMを含むK
DでヒトFLT3の前記細胞外ドメインのドメイン4に結合するか、または
-前記scFvは、5nM~30nMを含むK
DでヒトFLT3の前記細胞外ドメインのドメイン2~3に結合する、遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項56】
請求項44~55のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を含む細胞集団であって、
(ii)前記細胞集団は、20%、30%もしくは40%を上回る幹細胞メモリーおよび中枢メモリー細胞のパーセンテージを含み、かつ/または
(iii)前記細胞集団は、10%、20%、30%もしくは40%を上回るFLT3発現する細胞の溶解のパーセンテージを達成する、遺伝子操作された免疫細胞を含む細胞集団。
【請求項57】
FLT3特異的CARを発現する免疫細胞を遺伝子操作するインビトロの方法であって、
a.免疫細胞を提供することと、
b. 前記細胞に、請求項1~34のいずれか一項に記載のFLT3特異的CARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することと、を含み、
それによって前記免疫細胞が前記FLT3特異的CARを発現する、方法。
【請求項58】
免疫細胞を遺伝子操作するインビトロの方法であって、
a.免疫細胞を提供することと、
b.前記細胞に、請求項1~34のいずれか一項に記載のFLT3特異的CARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することと、
c.前記細胞に、FLT3に特異的ではないCARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することと、を含む、方法。
【請求項59】
治療を必要とする対象を治療する方法における使用のための薬学的組成物であって、前記方法が、
a.請求項1~34のいずれか一項に記載のFLT3特異的CARを発現する免疫細胞集団を提供することと、
b.前記免疫細胞集団を前記対象に投与することと、を含み、
ここで前記薬学的組成物が、前記免疫細胞集団を含む、薬学的組成物。
【請求項60】
請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項61】
治療を必要とする対象におけるFLT3に関連した疾患または障害を治療する方法における使用のための薬学的組成物であって、前記方法が、有効量の請求項60に記載の薬学的組成物または請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を、前記対象に投与することを含み、ここで前記薬学的組成物が、請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項62】
前記FLT3に関連した疾患または障害は癌である、請求項61に記載の薬学的組成物。
【請求項63】
前記癌は、多発性骨髄腫、悪性形質細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞性白血病、形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(脚型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に生ずる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、および他の造血細胞に関連する癌からなる群から選択される、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項64】
FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍増殖または進行を阻害する方法における使用のための薬学的組成物であって、前記方法が、有効量の請求項60に記載の薬学的組成物または請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を、前記対象に投与することを含み、ここで、前記薬学的組成物が請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項65】
阻害を必要とする対象におけるFLT3を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法における使用のための薬学的組成物であって、前記方法が、有効量の請求項60に記載の薬学的組成物または請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を、前記対象に投与することを含み、ここで、前記薬学的組成物が請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項66】
FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍退縮を誘導する方法における使用のための薬学的組成物であって、前記方法が、有効量の請求項60に記載の薬学的組成物または請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を、前記対象に投与することを含み、ここで、前記薬学的組成物が請求項44~52のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項67】
前記方法は、ヌクレオシド類似体療法薬を前記対象に投与することを含む、請求項61~66のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項68】
前記ヌクレオシド類似体療法薬は、フルダラビンまたはクロファラビンである、請求項67に記載の薬学的組成物。
【請求項69】
前記方法は、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、エピジェネティック修飾因子、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤、ヘッジホッグ阻害剤もしくはイソクエン酸脱水素酵素(IDH)阻害剤、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与することを含む、請求項61~66のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項70】
前記方法は、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤もしくはヘッジホッグ阻害剤、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与することを含む、請求項61~66のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項71】
前記方法は、レナリドミドを前記対象に投与することを含む、請求項61~66のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項72】
免疫細胞集団のインビトロ選別のための方法であって、前記免疫細胞集団のサブセットは、請求項21~25のいずれか一項に記載のFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作された免疫細胞を含み、前記方法は、
a.前記免疫細胞集団を前記エピトープに特異的なモノクローナル抗体と接触させることと、
b.前記モノクローナル抗体に結合する前記免疫細胞を選択して、遺伝子操作された免疫細胞に富む細胞集団を得ることと、を含む、方法。
【請求項73】
前記エピトープに特異的な前記モノクローナル抗体はフルオロフォアにコンジュゲートされ、任意選択的に、前記モノクローナル抗体に結合する前記細胞を選別するステップは蛍光活性化細胞選別(FACS)によって行われる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記エピトープに特異的な前記モノクローナル抗体は磁気粒子にコンジュゲートされ、任意選択的に、前記モノクローナル抗体に結合する前記細胞を選別するステップは磁気活性化細胞選別(MACS)によって行われる、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記エピトープはCD20エピトープである、請求項72~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記CD20エピトープは配列番号229に示されるアミノ酸配列を有し、任意選択的に、前記モノクローナル抗体はリツキシマブである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
遺伝子操作された免疫細胞に富む前記細胞集団は、少なくとも70%のFLT3 CARを発現する免疫細胞を含む、請求項72~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
対象から遺伝子操作された免疫細胞を枯渇させるための方法における使用のための薬学的組成物であって、前記対象は、請求項21~25のいずれか一項に記載のFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作された免疫細胞を投与されており、前記方法は、前記エピトープに特異的なモノクローナル抗体を前記対象に投与することを含み、ここで、前記薬学的組成物が、前記エピトープに特異的なモノクローナル抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項79】
前記エピトープはCD20エピトープである、請求項78に記載の薬学的組成物。
【請求項80】
前記CD20エピトープは配列番号229に示されるアミノ酸配列を有し、任意選択的に、前記モノクローナル抗体はリツキシマブである、請求項79に記載の薬学的組成物。
【請求項81】
前記モノクローナル抗体は、補体系を活性化させることができる分子にコンジュゲートされている、請求項78~80のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項82】
細胞傷害性薬物が前記モノクローナル抗体に結合されている、請求項78~80のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項83】
請求項21~25のいずれか一項に記載のFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子操作された免疫細胞を投与された対象において、内在性FLT3を発現する骨髄前駆体細胞の回収を促進するための方法における使用のための薬学的組成物であって、前記方法が前記エピトープに特異的なモノクローナル抗体を前記対象に投与することを含み、ここで、前記薬学的組成物が、前記エピトープに特異的なモノクローナル抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項84】
前記エピトープはCD20エピトープである、請求項83に記載の薬学的組成物。
【請求項85】
前記CD20エピトープは配列番号229に示されるアミノ酸配列を有し、任意選択的に、前記モノクローナル抗体はリツキシマブである、請求項84に記載の薬学的組成物。
【請求項86】
前記モノクローナル抗体は、補体系を活性化させることができる分子にコンジュゲートされている、請求項83~85のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項87】
細胞傷害性薬物は前記モノクローナル抗体に結合されている、請求項83~85のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/514,634号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
2017年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/514,574号および2018年4月20日に出願された同62/660,908号、ならびに2018年5月31日に出願されたPCT出願、表題「ANTIBODIES SPECIFIC FOR FLT3 AND THEIR USES」の内容は全て、FLT3特異的抗体を開示しており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介して電子的に出願されており、.txtフォーマットで電子的に提出された配列表を含む。.txtファイルは、2018年5月24日に作成され、238KBのサイズを有する「ALGN_010_01WO_SeqList_ST25.txt」という表題の配列表を含む。この.txtファイルに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)特異的抗体、FLT3に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)(FLT3 CAR)、FLT3 CARをコードするポリヌクレオチド、およびFLT3特異的CARを含む遺伝子操作された免疫細胞(例えば、FLT3特異的CAR-T細胞)が本明細書に提供される。本発明はさらに、FLT3特異的CARを発現するように免疫細胞を遺伝子操作するための方法、ならびにFLT3に関連する状態(例えば、FLT3を発現する悪性細胞)を治療するために、FLT3特異的抗体およびFLT3特異的CAR-T細胞を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
悪性腫瘍関連抗原を認識するように遺伝子組み換えされた免疫細胞の養子移入は、癌の治療に対する新しいアプローチとして有望である(例えば、Brenner et al.,Current Opinion in Immunology,22(2):251-257(2010);Rosenberg et al.,Nature Reviews Cancer,8(4):299-308(2008)を参照されたい)。T細胞は、抗原認識部分およびT細胞活性化ドメインからなる融合タンパク質であるキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子組み換えすることができる(例えば、Eshhar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90(2):720-724(1993)、およびSadelain et al.,Curr.Opin.Immunol,21(2):215-223(2009)を参照されたい)。
【0006】
FLT3は、急性骨髄性白血病(AML)標的抗原であり、健康な細胞と比較してAML患者の芽細胞に過剰発現し、大半の患者の細胞に発現する(Carow et al,Feb 2,1996 Blood:87(3);Birg et al.Nov 1992 Blood:80(10))。FLT3は、AML患者において頻繁に突然変異する遺伝子であり、突然変異は予後不良と関連している(Abu-Duhier et al.Br J Haematol.2000 Oct;111(1):190-5,Yamamoto et al.April 15,2001;Blood:97(8))。小分子FLT3阻害剤は、臨床試験において活性を示しているが、その応答は、抵抗性の獲得に起因して通常は一過性である。さらに、キナーゼ阻害剤は、FLT3の突然変異型を発現する患者のごく一部を治療するに過ぎず、改善された治療薬の性急な必要性が強調される。
【0007】
したがって、癌、および特にFLT3の異常発現に関与する悪性腫瘍の代替治療の必要性が存在する。この必要性に対応する方法および組成物が本明細書に提供される。
【発明の概要】
【0008】
Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に特異的に結合する抗体または抗原、FLT3に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)、およびそのようなCARを発現する遺伝子操作された免疫細胞(例えば、FLT3特異的CAR-T細胞)が本明細書に提供される。また、そのような抗体、CAR、および免疫細胞の作製も提供される。さらに、例えば、FLT3を発現する悪性細胞に関連する状態(例えば、癌)の治療のための、そのような抗体、CAR、および遺伝子操作された免疫細胞の使用も提供される。一態様において、FLT3に特異的に結合する単離された抗体が本明細書に提供され、抗体は、表2に列挙される部分的なVH配列のいずれか1つを有する重鎖可変(VH)領域および/または表2に列挙される部分的なVL配列のいずれか1つを有する軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0009】
別の態様において、FLT3に特異的に結合する単離された抗体が本明細書に提供され、抗体は、(a)表3に列挙される相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域ならびに/(b)表3に列挙されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0010】
また、FLT3に結合するキメラ抗原受容体(CAR)も本明細書に提供される。T細胞におけるFLT3特異的CARの発現は、FLT3と接触するとT細胞を活性化するのに効果的であることが実証されている。本明細書に提供されるFLT3特異的CARは、ヒトFLT3に結合し、FLT3を発現する細胞と接触すると細胞傷害活性を呈する。
【0011】
したがって、別の態様において、細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)が本明細書に提供され、細胞外ドメインは、FLT3の細胞外ドメインに結合する単鎖Fv断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFLT3 CARが本明細書に提供され、細胞外ドメインは、FLT3標的の特定のドメインに結合する、例えば、配列番号199(ドメイン1)、配列番号200(ドメイン2)、配列番号201(ドメイン3)、配列番号254(ドメイン2-3)、配列番号202(ドメイン4)もしくは配列番号203(ドメイン5)、配列番号254(ドメイン2-3)または配列番号202(ドメイン4)に結合するscFvを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、scFvを含む細胞外ドメインを含み、scFvは、FLT3標的のドメイン4(配列番号202)に結合する。
【0013】
いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、scFvを含む細胞外ドメインを含み、scFvは、FLT3標的のドメイン2(配列番号200)に結合する。
【0014】
FLT3特異的CARの細胞外ドメインはscFvを含み、scFvは重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHおよびVL領域は各々、FLT3に特異的な3つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、VH領域は、(i)配列番号37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、294、295、296、300、301、305、306、307、311、312、316、317、もしくは318に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、297、298、302、303、308、309、313、314、319、320、もしくは322に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域2(CDR2)、および(iii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、299、304、310、315、もしくは321に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/またはVL領域は、(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、323、326、328、331、336、338、340、343、345、348、もしくは350に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、324、329、332、334、341、もしくは346に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域2(CDR2)、および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、325、327、330、333、335、337、339、342、344、347、もしくは349に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域3(CDR3)を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、scFvを含むFLT3特異的CARが提供され、scFvは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、または293に示される配列を有するVH領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、scFvを含むFLT3特異的CARが提供され、scFvは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、または292に示される配列を有するVL領域を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、VH領域およびVL領域を含むscFVを含むFLT3特異的CARが提供され、VH領域は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、または293に示される配列を有し、VL領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、または292に示される配列を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、もしくは293に示される配列、またはCDR内にない残基に1個もしくは数個の保存的アミノ酸置換を有するその変異体を含み、かつ/あるいは、VL領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、もしくは292に示されるアミノ酸配列、またはCDR内にないアミノ酸に1個もしくは数個のアミノ酸置換を有するその変異体を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号90、91、または92に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号93または94に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号95に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み、軽鎖可変領域(VL)は、以下のCDRを含む:配列番号171に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号172に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号173に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3。
【0021】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号43、44、または45に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号46または47に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み、軽鎖可変領域(VL)は、以下のCDRを含む:配列番号147に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号148に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号149に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3。
【0023】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号49、44、または50に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号51または52に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号53に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み、軽鎖可変領域(VL)は、以下のCDRを含む:配列番号150に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号151に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号152に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3。
【0025】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号60、61、または62に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号63または64に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号65に示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み、軽鎖可変領域(VL)は、以下のCDRを含む:配列番号156に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号157に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号158に示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3。
【0027】
いくつかの実施形態において、VH領域は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、各CDRは、Kabatの定義、Chothiaの定義、Kabatの定義とChothiaの定義との組み合わせ、AbM定義、またはCDRの接触定義に従って定義される。
【0029】
いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBドメインを含む。いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBドメインを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるFLT3特異的CARは、細胞外リガンド結合ドメインと第1の膜貫通ドメインとの間にストークドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、ストークドメインは、CD8αヒンジ、IgG1ヒンジ、およびFcγRIIIαヒンジからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ストークドメインは、ヒトCD8αヒンジ、ヒトIgG1ヒンジ、またはヒトFcγRIIIαヒンジである。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるFLT3特異的CARは、1つ以上のモノクローナル抗体に特異的な1つ以上のエピトープを含み得る。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体に特異的なエピトープは、CD20エピトープである。いくつかの実施形態において、CD20エピトープは、配列番号229または配列番号230に示されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、配列番号235、236、237または242に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、第1の膜貫通ドメインはCD8α鎖膜貫通ドメインを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、FLT3に特異的ではない別の細胞外リガンド結合ドメインを含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメイン(複数可)、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)は、単一のポリペプチド上にある。
【0036】
いくつかの実施形態において、CARは、第2の膜貫通ドメインを含むことができ、第1の膜貫通ドメインおよび細胞外リガンド結合ドメイン(複数可)は第1のポリペプチド上にあり、第2の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)は第2のポリペプチド上にある。例示的な実施形態において、第1の膜貫通ドメインは、高親和性IgE受容体(FcεRI)のα鎖由来の膜貫通ドメインを含み、第2の膜貫通ドメインは、FcεRIのγ鎖またはβ鎖由来の膜貫通ドメインを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、CARは、共刺激分子由来の細胞内シグナル伝達ドメインに融合した第3の膜貫通ドメインを含む第3のポリペプチドを含むことができ、第3の膜貫通ドメインは、FcεRIのγ鎖またはβ鎖由来の膜貫通ドメインを含む。
【0038】
別の態様において、本明細書に記載のFLT3特異的CARをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドが本明細書に提供される。
【0039】
別の態様において、本明細書に記載のFLT3特異的CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが本明細書に提供される。
【0040】
別の態様において、その細胞表面膜に、本明細書に記載のFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞は、FLT3に特異的ではない別のCARを含むことができる。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞は、自殺ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態において、自殺ポリペプチドはRQR8である。
【0041】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、またはヘルパーTリンパ球に由来する。
【0042】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞は、1つ以上の内在性遺伝子の破壊を含むことができ、内在性遺伝子は、TCRα、TCRβ、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、または免疫チェックポイントタンパク質、例えばプログラム死-1(PD-1)等をコードする。
【0043】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞は、健常なドナーから得られる。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞は、疾患または障害に苦しむ個体から得られる。
【0044】
別の態様において、その細胞表面膜に、薬物として使用するための本明細書に記載のFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞が本明細書に提供される。別の態様において、薬物として使用するためのFLT3特異的抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARを発現する免疫細胞またはFLT3特異的抗体を含む薬物は、FLT3関連疾患または障害の治療に使用される。一実施形態において、FLT3関連疾患または障害は、リンパ腫または白血病等の造血系起源の癌である。いくつかの実施形態において、癌は、多発性骨髄腫、悪性形質細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞性白血病、形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(脚型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に生ずる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、および他の造血細胞に関連する癌、例えば、ALLまたはAMLからなる群から選択される。
【0045】
一態様において、本明細書に記載のFLT特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む細胞集団が本明細書に提供され、(ii)上記細胞集団は、20%、30%もしくは40%を上回る幹細胞メモリーおよび中枢メモリー細胞の割合を含み、かつ/または(iii)上記細胞集団は、10%、20%、30%もしくは40%を上回るFLT3を発現する細胞の溶解割合を達成する。
【0046】
別の態様において、本明細書に記載のFLT3特異的CARのいずれか1つを発現する免疫細胞を遺伝子操作する方法が本明細書に提供され、方法は、免疫細胞を提供することと、細胞に上記FLT3特異的CARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することと、を含み、それによって上記免疫細胞が上記FLT3特異的CARを発現する。
【0047】
いくつかの実施形態において、方法は、免疫細胞を提供することと、細胞に上記FLT3特異的CARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することと、FLT3に特異的ではないCARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することと、を含む。
【0048】
別の態様において、FLT3関連疾患または障害に罹患する対象を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、表面に本明細書に記載のFLT3特異的CARを発現する免疫細胞を提供することと、上記対象に上記免疫細胞を投与することと、を含む。本発明はまた、FLT3関連疾患または障害に罹患する対象を治療する方法も提供し、方法は、本明細書に記載のFLT3特異的抗体を提供することと、上記対象に上記抗体を投与することと、を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む薬学的組成物が本明細書に提供される。他の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のFLT3特異的抗体のいずれかを含む薬学的組成物を提供する。
【0050】
別の態様において、対象におけるFLT3を発現する悪性細胞に関連する状態を治療する方法であって、本明細書に記載の遺伝子操作された免疫細胞または本明細書に記載のFLT3特異的抗体を含む有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、状態は癌である。いくつかの実施形態において、癌は、リンパ腫または白血病等の造血系起源の癌である。いくつかの実施形態において、癌は、多発性骨髄腫、悪性形質細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞性白血病、形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(脚型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に生ずる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、および他の造血細胞に関連する癌、例えば、ALLまたはAMLからなる群から選択される。
【0051】
別の態様において、FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍の増殖または進行を阻害する方法であって、本明細書に記載の遺伝子操作された免疫細胞または本明細書に記載のFLT3特異的抗体を含む有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0052】
別の態様において、対象におけるFLT3を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法であって、有効量の本明細書に記載の遺伝子操作された免疫細胞または本明細書に記載のFLT3特異的抗体を含む有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0053】
別の態様において、FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、有効量の本明細書に記載の遺伝子操作された免疫細胞または本明細書に記載のFLT3特異的抗体を含む有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記方法のいずれも、1つ以上の追加の治療薬、例えば、モノクローナル抗体および/または化学療法剤等を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、例えば、チェックポイント阻害剤に結合する抗体、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体等であり得る。いくつかの実施形態において、上記方法のいずれも、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、エピジェネティック修飾因子、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤、例えば、レナリドミド、ヘッジホッグ阻害剤またはイソクエン酸脱水素酵素(IDH)阻害剤を対象に投与することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】非形質導入対照と比較してP3A1 CAR構築物を用いた活性化T細胞の効率的な形質導入を示す代表的なFACSプロットと、CAR発現T細胞の割合および平均蛍光強度(MFI)としての全構築物の形質導入効率を示す。
【
図2】フローサイトメトリーによって評価した、種々のCAR構築物で形質導入されたT細胞における活性化マーカーCD25および4-1BBの発現を示す。
【
図3】CD62Lおよび/またはCD45ROマーカーの発現のフローサイトメトリー分析によって決定された、培養終了時のCAR-T細胞の表現型を示す。
【
図4】長期死滅アッセイの全体的な実験デザインと、6日目の増殖倍率および細胞傷害活性(溶解の割合)として測定された、標的細胞への反復曝露に対する異なるCAR-T細胞の応答を示す。
【
図5】ヒトAMLの同所性マウスモデルを用いて、2つの用量でP3A1またはP3E10構築物を発現するCAR-T細胞の抗腫瘍活性を示す。全光束として定量化された生物発光シグナル(光子/秒)を、異なる時点で示す。
【
図6】抗CD20抗体リツキシマブによって誘導された補体依存性細胞傷害性(CDC)に対するCD20エピトープを含むFLT3特異的CARを発現するFLT3特異的CARの感受性を示す。
【
図7】CD20エピトープを発現する抗マウスFLT3 CAR T細胞で処理し、後にリツキシマブを投与したマウスにおける内在性骨髄前駆細胞の回復を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
一態様において、本明細書に開示される発明は、キメラ抗原受容体(CAR)、およびFLT3(例えば、ヒトFLT3)に特異的に結合するCARを含む免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)を提供する。本発明はまた、これらのCARをコードするポリヌクレオチド、これらのCARを発現する免疫細胞を含む組成物、ならびにこれらのCARおよびCAR発現免疫細胞を作製する方法および使用する方法も提供する。本発明はまた、本明細書に記載のFLT3特異的CARおよびこれらのCARを発現する免疫細胞を使用して、FLT3を発現する悪性細胞によって媒介される癌等の対象におけるFLT3媒介性病理に関連する状態を治療するための方法も提供する。
【0057】
一態様において、本明細書に開示される発明は、FLT3(例えば、ヒトFLT3)に特異的に結合する抗体を提供する。本発明はまた、これらの抗体を含む組成物およびこれらの抗体を使用する方法も提供する。例えば、これらの抗体を使用して、対象におけるFLT3媒介性病理、例えば、癌に関連する状態を治療するための方法が本明細書に提供される。
【0058】
一般的な技法
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当該技術分野の技術の範囲内である分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の慣例的な技法を用いる。そのような技法は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach (D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)に完全に説明されている。
【0059】
定義
本 明細書で使用される「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、リガンドに結合することが可能であるか、または細胞表面分子と相互作用することが可能であるポリペプチドを指す。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の病態に関連した標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択され得る。
【0060】
「ストークドメイン」または「ヒンジドメイン」は、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに結合するように機能する任意のポリペプチドを指すために本明細書において互換的に使用される。特に、ストークドメインは、細胞外リガンド結合ドメインにより高い柔軟性および利便性を提供するために使用される。
【0061】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを伝達し、特殊な機能を果たすよう細胞を誘導するタンパク質の一部を指す。
【0062】
本明細書で使用される「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、限定されないが増殖等の細胞による共刺激応答を媒介する免疫細胞、例えばT細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体を含む。共刺激分子の例として、CD27、CD28、CD8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83等に特異的に結合するリガンドが挙げられる。
【0063】
「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族共刺激シグナル分子に特異的に結合し、それによって、例えば、ペプチドを負荷したMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって提供される一次シグナルに加えて、増殖活性化、分化等を含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを提供する抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドは、限定されないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、トールリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3に特異的に結合するリガンドを含む。また、共刺激リガンドは、とりわけ、T細胞上に存在する共刺激分子に特異的に結合する抗体、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドも包含する。
【0064】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的に特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、この用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけではなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv等)、単鎖(scFv)およびドメイン抗体(例えば、サメおよびラクダ科抗体を含む)、ならびに抗体を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成も包含する。抗体は、任意のクラス、例えば、IgG、IgA、IgE、IgD、またはIgM(またはそのサブクラス)の抗体を含み、また抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。5つの主要な免疫グロブリンのクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、α、β、ε、γ、およびμと称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
【0065】
抗体の「抗原結合断片」または「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用される場合、所与の抗体(例えば、FLT3)に特異的に結合する能力を有するインタクトな抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片によって果たされ得る。抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989)、ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0066】
標的(例えば、FLT3タンパク質)に「特異的に結合する」抗体、抗原結合断片、抗体コンジュゲート、またはポリペプチドは、当該技術分野で十分に理解されている用語であり、そのような特異的な結合を決定するための方法も当該技術分野で周知である。分子は、代替的な細胞または物質と反応または会合する場合と比較して、より頻繁に、より迅速に、より長い期間、かつ/またはより高い親和性で、特定の細胞または物質と反応または会合する場合に、「特異的結合」を示すといわれる。抗体は、他の物質と結合する場合と比較して、より高い親和性、結合活性で、より迅速に、かつ/またはより長い期間結合する場合に、標的と「特異的に結合する」。例えば、FLT3エピトープに特異的に結合する抗体は、他のFLT3エピトープまたは非FLT3エピトープに結合する場合と比較して、より高い親和性、結合活性で、より迅速に、かつ/またはより長い期間このエピトープと結合する抗体である。また、この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的に結合してもまたはしなくてもよいことも理解されたい。そのため、「特異的な結合」は、必ずしも排他的な結合を(含むことができるが)必要としない。必ずではないが、一般的に、結合への言及は特異的な結合を意味する。
【0067】
抗体の「可変領域」は、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当該技術分野で既知のように、重鎖および軽鎖の可変領域は、各々、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって極めて近接して一緒に保持され、他の鎖からのCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技術が存在する:(1)異種間の配列多様性に基づく手法(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health, Bethesda MD))、および(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法(Al-lazikani et al.,1997,J.Molec.Biol.273:927-948)。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかの手法によって、または両方の手法の組み合わせによって定義されるCDRを指し得る。
【0068】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothia、KabatおよびChothiaの両方の集積、AbM、接触の定義、ならびに/もしくは立体構造的定義、または当該技術分野で周知の任意のCDR決定方法に従って同定される、可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatらによって最初に定義された超可変領域として同定され得る。例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.C.を参照されたい。また、CDRの位置は、Chothiaによって最初に記載された構造的ループ構造として同定することもできる。例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989を参照されたい。CDR同定のための他の手法として、KabatとChothiaの折衷案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在はAccelrys(登録商標))を用いて誘導される「AbM定義」、またはMacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745,1996に記載されている、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」が挙げられる。本明細書においてCDRの「立体構造的定義」と称される別の手法において、CDRの位置は、抗原結合へのエンタルピー的寄与を行う残基として同定され得る。例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1156-1166,2008を参照されたい。さらに他のCDR境界定義は、上記手法のうちの1つに厳密に従わなくてもよいが、それにもかかわらず、KabatのCDRの少なくとも一部分と重複する:但し、特定の残基もしくは残基の群、またはさらにはCDR全体が、抗原結合に大幅な影響を与えないという予測または実験的発見を考慮して、短縮または伸長され得る。本明細書で使用される場合、CDRは、手法の組み合わせを含む、当該技術分野で既知の任意の手法によって定義されたCDRを指すことができる。本明細書において使用される方法は、これらの手法のいずれかに従って定義されたCDRを利用し得る。1つより多くのCDRを含有する任意の所与の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、接触、および/または立体構造的定義のいずれかに従って定義され得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一抗原部位に対するものであり、高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対するものである。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られるものとして抗体の特徴を示しているのであって、任意の特定の方法による抗体の産生を必要すると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature 256:495,1975によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいか、または米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によって作製されてもよい。また、モノクローナル抗体は、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554,1990に記載される技法を用いて生成されるファージライブラリーから単離されてもよい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列等)である、非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。一態様において、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体内にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列内にも見られないが、抗体の性能をさらに洗練させ、かつ最適化するために含められる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの一部も含む。WO99/58572に記載されるように修飾されたFc領域を有する応対が好ましい。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対して修飾された1つ以上のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2、またはCDR H3)を有し、これらはまた、元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも称される。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または当業者に既知のもしくは本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製された抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。そのような例の1つは、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を用いて産生することができる。一実施形態において、ヒト抗体はファージライブラリーから選択され、ファージライブラリーはヒト抗体を発現する(Vaughan et al.,Nature Biotechnology,14:309-314,1996;Sheets et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:6157-6162,1998;Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381,1991;Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581,1991)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座が内在性遺伝子座の代わりに遺伝子導入で導入された動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されたマウスの免疫化によって作製することもできる。この手法は、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、および同第5,661,016号に記載されている。代替として、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって調製されてもよい(そのようなBリンパ球は、個体からもしくはcDNAの単一細胞クローニングから回収され得るか、またはインビトロで免疫されていてもよい)。例えば、Cole et al.Monoclonal Antibodiesand Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77,1985;Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95,1991、および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0072】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列がある種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指すことを意図する。
【0073】
「一価抗体」は、1分子当たり1つの抗原結合部位を含む(例えば、IgGまたはFab)。いくつかの場合において、一価抗体は、1つより多くの抗原結合部位を有することができるが、抗原結合部位は異なる抗原に由来する。
【0074】
「二価抗体」は、1分子当たり2つの抗原結合部位を含む(例えば、IgG)。いくつかの場合において、2つの結合部位は同じ抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は二重特異性であり得る。
【0075】
本発明の抗体は、当該技術分野で周知の技法、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、もしくはそのような技術の組み合せ、または当該技術分野で容易に明らかとなる他の技術を使用して産生することができる(例えば、Jayasena,S.D.,Clin.Chem.,45:1628-50,1999およびFellouse,F.A.,et al,J.MoI.Biol.,373(4):924-40,2007)を参照されたい。
【0076】
当該技術分野で既知のように、本明細書において互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖に組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体を含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、鎖が集合する前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーション等によって、重合後にさらに修飾されてもよい。他の種類の修飾として、例えば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1つ以上の類似体による置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)を有するものおよび荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を有するもの、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)を含有するもの、インターカレータ(例えば、アクリジン、ソラレン等)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾結合(例えば、αアノマー核酸等)を有するもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾型が挙げられる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれも、例えば、ホスホネート基、リン酸基によって置き換えられ、標準的な保護基によって保護され、もしくは追加のヌクレオチドに対する追加の結合を調製するように活性化され得るか、または固体支持体にコンジュゲートされ得る。5’および3’末端OHは、リン酸化することができるか、またはアミンもしくは1~20炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化され得る。また、ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環糖類似体、αまたはβ-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体およびメチルリボシド等の脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当該技術分野で一般的に既知であるリボース糖もしくはデオキシリボース糖の類似型も含有することができる。1つ以上のホスホジエステル結合が、代替の結合基によって置き換えられてもよい。これらの代替の結合基は、限定されないが、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)(式中、各RまたはR’は、独立して、H、または任意選択的にエーテル(-O-)結合を含有する置換もしくは非置換のアルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである)によって置き換えられた実施形態を含む。ポリヌクレオチドにおける全ての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書において言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0077】
当該技術分野で既知のように、抗体の「定常領域」は、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはさらには少なくとも99%純粋な(すなわち、混入物を含まない)材料を指す。
【0079】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチドインサートを組み込むためのベクター(複数可)のレシピエントであり得るか、またはレシピエントであった、個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫を含み、該子孫は、天然の、偶発的な、または計画的な突然変異に起因して、(形態において、またはゲノムDNA補体において)元の親細胞と必ずしも完全に同一ではない場合がある。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)をインビボでトランスフェクトした細胞を含む。
【0080】
当該技術分野で既知のように、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域または変異体のFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動する場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端に伸びるように定義される。Fc領域の残基の番号付けは、Kabatの場合と同様にEUインデックスのものである。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、CH2およびCH3の2つの定常領域を含む。
【0081】
当該技術分野で使用される場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(γ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的にスプライシングされた形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、主としてその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。FcRは、Ravetch and Kinet,Ann.Rev.Immunol.,9:457-92,1991;Capel et al.,Immunomethods,4:25-34,1994;およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.,126:330-41,1995に概説されている。「FcR」はまた、新生児受容体FcRnも含み、これは母親のIgGを胎児に移行することに関与している(Guyer et al.,J.Immunol.,117:587,1976;and Kim et al.,J.Immunol.,24:249,1994)。
【0082】
「競合する」という用語は、抗体に関して本明細書で使用される場合、第1の抗体またはその抗原結合断片(または部分)が、第2の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に同様の様式でエピトープに結合し、したがって、第1の抗体とその同族エピトープとの結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能に低下することを意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も第1の抗体の存在下で検出可能に低下する代替例は、当てはまる場合もあるが、その必要はない。すなわち、第1の抗体は、第1の抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を第2の抗体が阻害することなく、第2の抗体のそのエピトープへの結合を阻害することができるしかしながら、各抗体が、他の抗体のその同族エピトープまたはリガンドとの結合を、同じ程度まで、より高い程度まで、またはより低い程度まで、検出可能に阻害する場合、その抗体は、それらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合について互いに「交差競合する」と言われる。競合抗体および交差競合抗体は、どちらも本発明によって包含される。そのような競合または交差競合が起こる機構(例えば、立体障害、立体構造変化、または共通エピトープもしくはその部分への結合)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供される教示に基づいて、そのような競合抗体および/または交差競合抗体が包含され、本明細書に開示される方法に有用であり得ることを理解するであろう。
【0083】
本明細書で使用される場合、「自己」は、患者を治療するために使用される細胞、細胞株、または細胞集団が、上記患者に由来することを意味する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「同種」は、患者を治療するために使用される細胞または細胞集団が、上記患者に由来しないが、ドナーに由来することを意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法である。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果は、限定されないが以下のうちの1つ以上を含む:新生細胞もしくは癌性細胞の増殖の低減(もしくは破壊)、新生細胞の転移の阻害、FLT3発現腫瘍のサイズの縮小もしくは減少、FLT3関連疾患(例えば、癌)の緩解、FLT3関連疾患(例えば、癌)から生じる症状の減少、FLT3関連疾患(例えば、癌)を罹患している者の生活の質の向上、FLT3関連疾患(例えば、癌)を治療するのに必要な他の薬物の用量の減少、FLT3関連疾患(例えば、癌)の進行の遅延、FLT3関連疾患(例えば、癌)の治癒、および/またはFLT3関連疾患(例えば、癌)を有する患者の生存時間の延長。
【0086】
「寛解」は、FLT3特異的CARまたはFLT3特異的CAR-T細胞を投与しない場合と比較して1つ以上の症状の軽減または改善を意味する。「寛解」はまた、症状の継続期間の短縮または減少も含む。
【0087】
本明細書で使用される場合、薬物、化合物、または薬学的組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の1つ以上の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用に関して、有益なまたは所望の結果は、疾患、その合併症、および疾患の発症中に提示される中間的な病理学的表現型の生化学的、組織学的および/または行動的症状を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、重症度の軽減、または発症の遅延を含む。治療的使用に関して、有益なまたは所望の結果は、種々のFLT3関連疾患もしくは状態(例えば、多発性骨髄腫)の1つ以上の症状の発生率の低減もしくはその寛解、疾患を治療するのに必要な他の薬物の用量の減少、別の薬物の効果の増強、および/または患者のFLT3関連疾患の進行の遅延等の臨床結果を含む。有効投与量は、1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的のために、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効投与量は、直接的または間接的のいずれかで予防的または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されても、または達成されなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、1つ以上の治療剤の投与に関連して考慮され得、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合、単剤を有効量で投与することが考慮され得る。
【0088】
「個体」、「患者」または「対象」は、本明細書において互換的に使用され、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されないが、ヒト、サル、ブタ、他の家畜、競技用動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類(マウス、ラット、モルモット等を含む)を含む。対象は、哺乳動物であり、本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態において、対象はヒトまたはサル、例えば、カニクイザルである。
【0089】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞内で、対象となる1つ以上の遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達することが可能であり、いくつかの実施形態において、発現することが可能な構築物を意味する。ベクターの例として、限定されないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム内に封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、および産生細胞等のある特定の真核細胞が挙げられる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を誘導する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーター等のプロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」は、活性成分と組み合わされたときに、成分が生物活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例として、限定されないが、標準的な薬学的担体、例えば、リン酸緩衝溶液、水、油/水エマルジョン等のエマルジョン、および種々の種類の湿潤剤のいずれかが挙げられる。エアロゾルまたは非経口投与用の例示的な希釈剤は、リン酸緩衝溶液(PBS)または(0.9%)生理食塩水である。そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990;およびRemington,The Science and Practice of Pharmacy 21st Ed.Mack Publishing,2005を参照されたい)。
【0092】
「kon」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはCARのscFvの抗原への会合の速度定数を指す。
【0093】
「koff」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体/抗原複合体からの抗体またはCARのscFvの解離の速度定数を指す。
【0094】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体-抗原相互作用またはscFv-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0095】
本明細書における「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象となる実施形態を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。数値範囲は、その範囲を画定する数値を含む。
【0096】
実施形態が「含む」という文言を用いて本明細書に記載される場合は必ず、「~からなる」および/または「~から本質的になる」の観点から記載された別様の類似の実施形態も提供されることを理解されたい。
【0097】
本発明の態様または実施形態が選択肢のマーカッシュ群または他の代替的な分類の観点から記載される場合、本発明は、全体として列挙される群全体だけでなく、群の各メンバーを個々に、および主群の全ての考えられる亜群、また群メンバーの1つ以上を欠く主群も包含する。本発明はまた、請求される発明の群メンバーのいずれかの1つ以上を明示的に除外することも想定する。
【0098】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。本明細書および特許請求の範囲全体にわたって、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」等の変形は、述べられた整数または整数の群の包含を暗示するが、任意の他の整数または整数の群の除外を暗示しないことが理解されよう。文脈上別段の必要がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0099】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載されるものと同様のまたは等価な方法および材料もまた、本発明の実行または試験において使用され得る。材料、方法、および例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。
【0100】
FLT3抗体
本開示は、FLT3[例えば、ヒトFLT3(例えば、受託番号:NP_004110または配列番号198)]に結合し、以下の特徴のうちのいずれか1つ以上を特徴とする抗体を提供する:(a)対象においてFLT3を発現する悪性細胞に関連する状態(例えば、AML等の癌)の1つ以上の症状を治療する、予防する、寛解させる、(b)対象(FLT3を発現する悪性腫瘍を有する)における腫瘍の増殖または進行を阻害する、(c)対象(FLT3を発現する1つ以上の悪性細胞を有する)においてFLT3を発現する癌(悪性)細胞の転移を阻害する、(d)FLT3を発現する腫瘍の退縮(例えば、長期退縮)を誘導する、(e)FLT3を発現する悪性細胞において細胞傷害活性を発揮する、(f)まだ同定されていない他の因子とのFLT3相互作用をブロックする、および/または(g)近傍でFLT3を発現していない悪性細胞を死滅させるもしくはその増殖を阻害するバイスタンダー効果を誘導する。
【0101】
一態様において、FLT3に特異的に結合する単離された抗体が提供され、抗体は、(a)(i) 37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、246、もしくは247に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、248、249、251、252、253、もしくは255に示される配列を含むVH CDR2、およびiii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、245、250、もしくは254に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域、ならびに/または(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、257、261、263、265、268、270、273、もしくは275に示される配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、259、266、もしくは271に示される配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、256、258、260、262、264、267、269、272、もしくは274に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0102】
別の態様において、FLT3に特異的に結合する単離された抗体が提供され、抗体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、もしくは293に示される配列を含むVH領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、もしくは292に示される配列を含むVL領域を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、FLT3に特異的に結合する単離された抗体が提供され、抗体は、配列番号275、289、もしくは291に示される配列を含むVH領域、および/または配列番号274、288、もしくは290に示される配列を含むVL領域を含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、表2に列挙される部分的軽鎖配列のいずれか1つおよび/または表2に列挙される部分的重鎖配列のいずれか1つを有する抗体が提供される。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1、IgG2もしくはIgG2Δa、IgG3、またはIgG4サブクラスのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、グリコシル化された定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、1つ以上のヒトFcγ受容体(複数可)に対して減少した結合親和性を有する定常領域を含む。
【0106】
本明細書に提供される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc等)、キメラ抗体、単鎖(ScFv)、および/またはヒト化抗体を包含し得る。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他の起源(キメラもしくはヒト化抗体を含む)であり得る。
【0107】
FLT3特異的CARおよびその作製方法
FLT3(例えば、ヒトFLT3(例えば、配列番号198)または受託番号:NP_004110)に結合するCARが本明細書に提供される。本明細書に提供されるFLT3特異的CARは、単鎖CARおよび多鎖CARを含む。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、T細胞の特異性および反応性をMHCに制限されない様式でFLT3にリダイレクトする能力を有する。MHCに制限されない抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは関係なく抗原を認識し、したがって腫瘍エスケープの主要な機構を回避する能力を与える。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるCARは、細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、単鎖Fv断片(scFv))、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインは、1つのポリペプチド内、すなわち、単鎖内に存在する。多鎖CARおよびポリペプチドも本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、多鎖CARは、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメインを含む第1のポリペプチドと、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドとを含み、ポリペプチドは一緒に集合して多鎖CARを形成する。
【0109】
いくつかの実施形態において、FLT3特異的多鎖CARは、IgE(FcεRI)の高親和性受容体に基づく。肥満細胞および好塩基球上で発現されるFcεRIは、アレルギー反応を誘発する。FcεRIは、単一のαサブユニット、単一のβサブユニット、および2つのジスルフィド結合γサブユニットからなる四量体複合体である。αサブユニットは、IgE結合ドメインを含有する。βおよびγサブユニットは、シグナル伝達を媒介するITAMを含有する。いくつかの実施形態において、FcRα鎖の細胞外ドメインが欠失され、FLT3特異的細胞外リガンド結合ドメインによって置き換えられる。いくつかの実施形態において、多鎖FLT3特異的CARは、FLT3に特異的に結合するscFv、CD8αヒンジ、およびFcRβ鎖のITAMを含む。いくつかの実施形態において、CARは、FcRγ鎖を含んでも含まなくてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメインは、柔軟なリンカーによって連結された標的抗原特異的モノクローナル抗体の軽鎖可変(VL)領域および重鎖可変(VH)領域を含むscFvを含む。単鎖可変領域断片は、短い連結ペプチドを使用することにより軽鎖および/または重鎖可変領域を連結させることによって作製される(Bird et al.,Science 242:423-426,1988)。連結ペプチドの一例は、アミノ酸配列(GGGGS)3(配列番号232)を有するGSリンカーであり、これは、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端との間のおよそ3.5nmを架橋する他の配列のリンカーも設計および使用されている(Bird et al.,1988、上記参照)。一般に、リンカーは、短い柔軟なポリペプチドであり得、例えば、約20またはそれ未満のアミノ酸残基から構成され得る。リンカーは、ひいては、薬物の付着または固体支持体への付着等の追加の機能のために修飾することができる。単鎖変異体は、組換え、または合成のいずれかにより産生することができる。scFvの合成による産生のために、自動シンセサイザーが使用され得る。scFvの組換えによる産生には、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫、もしくは哺乳動物細胞等の真核生物、またはE.coli等の原核生物のいずれかの適切な宿主細胞内に導入することができる。対象となるscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーション等の日常的な操作によって作製することができる。結果として得られるscFvは、当該技術分野で既知の標準的なタンパク質精製技法を使用して単離することができる。
【0111】
FLT3細胞外ドメインは、5つの免疫グロブリンドメインからなり、ドメイン5が細胞膜に最も近接し、ドメイン1が最も離れている(直線状に、Verstraete,July 7,2011;Blood:118(1))。5つのFLT3細胞外ドメインの配列を下の表1に列挙する。
【表1】
【0112】
ドメイン2-3は、ドメイン2およびドメイン3の配列(配列番号254)を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン1、2、3、4または5に結合する。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン1に結合する。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン2に結合する。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン3に結合する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン4に結合する。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン5に結合する。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン2-3に結合する。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARの細胞外リガンド結合ドメインは、FLT3細胞外ドメインのドメイン2-3または4に結合する。
【0121】
別の態様において、FLT3に特異的に結合するCARが提供され、CARは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、もしくは293に示される配列を有するVH領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、もしくは292に示される配列を有するVL領域を含む細胞外リガンド結合ドメインを含む。いくつかの実施形態において、VHおよびVLは、柔軟なリンカーによって一緒に連結される。いくつかの実施形態において、柔軟なリンカーは、配列番号232に示されるアミノ酸配列を含む。
【0122】
別の態様において、細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)が提供され、細胞外ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖Fv断片(scFv)を含み、VH領域は、(i)配列番号37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、294、295、296、300、301、305、306、307、311、312、316、317、または318に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、297、298、302、303、308、309、313、314、319、320、または322に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域2(CDR2)、および(iii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、299、304、310、315、または321に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域3(CDR3)を含む。
【0123】
別の態様において、細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)が提供され、細胞外ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖Fv断片(scFv)を含み、VL領域(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、323、326、328、331、336、338、340、343、345、348、または350に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、324、329、332、334、341、または346に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域2(CDR2)、および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、325、327、330、333、335、337、339、342、344、347、または349に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域3(CDR3)を含む。
別の態様において、細胞外リガンド結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むFLT3特異的キメラ抗原受容体(CAR)が提供され、細胞外ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖Fv断片(scFv)を含み、(a)VH領域は、(i)配列番号37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、294、295、296、300、301、305、306、307、311、312、316、317、または318に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、297、298、302、303、308、309、313、314、319、320、または322に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域2(CDR2)、および(iii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、299、304、310、315、または321に示されるアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域3(CDR3)を含み、(b)VL領域は、(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、323、326、328、331、336、338、340、343、345、348、または350に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、324、329、332、334、341、または346に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域2(CDR2)、および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、325、327、330、333、335、337、339、342、344、347、または349に示されるアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域3(CDR3)を含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、本発明のCARは、表2に列挙される部分的軽鎖配列のいずれか1つおよび/または表2に列挙される部分的重鎖配列のいずれか1つを有する細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0125】
表2において、下線の配列はKabatによるCDR配列であり、太線はChothiaによるCDR配列であるが、例外として、P4F6、P4C7、P3A1、P5A3、P9B5、P9F1、P1B4、P1B11、P7H3、P3E10、P1A5、P5F7、P4H11、P15F7、P12B6、P8B6、P14G2、およびP7F9の重鎖CDR2配列では、ChothiaのCDR配列に下線が引かれ、KabatのCDR配列が太字で示されている。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【0126】
また、FLT3に対する抗体の抗原結合ドメインのCDR部分またはFLT3に対するCARの細胞外リガンド結合ドメインのCDR部分(Chothia、KabatのCDR、およびCDR接触領域を含む)も本明細書に提供される。CDR領域の決定は、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。いくつかの実施形態において、CDRはKabatのCDRとChothiaのCDRとの組み合わせ(「組み合わせたCR」または「拡張されたCDR」とも称される)であり得ることを理解されたい。いくつかの実施形態において、CDRはKabatのCDRである。他の実施形態において、CDRはChothiaのCDRである。換言すると、1つより多くのCDRを含む実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、組み合わせCDR、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。表3は、本明細書に提供されるCDR配列の例を提供する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0127】
本発明は、CARの特性に著しく影響を与えない修飾を有する機能的に等価なCAR、ならびに増強または低下した活性および/または親和性を有する変異体を含む、表2に示す本発明のCARおよびポリペプチドに対する修飾を包含する。例えば、アミノ酸配列を突然変異させて、FLT3に対する所望の結合親和性を有する抗体を得ることができる。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野におけるルーティンであり、本明細書に詳細に記載する必要はない。修飾ポリペプチドの例として、アミノ酸残基の保存的置換、機能的活性を著しく有害に変化させない、またはポリペプチドのそのリガンドに対する親和性を成熟させる(増強する)アミノ酸の1つ以上の欠失もしくは付加、または化学的類似体の使用を有するポリペプチドが挙げられる。
【0128】
アミノ酸配列挿入は、1個の残基から、100個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグと融合された抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体は、血液循環中の抗体の半減期を延長する酵素またはポリペプチドの、抗体のN末端またはC末端への融合を含む。
【0129】
置換変異体は、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その代わりに異なる残基が挿入されている。置換突然変異誘発の最も興味深い部位は超可変領域を含むが、FRの変更もまた企図される。保存的置換は、「保存的置換」の見出しの下で表4に示されている。そのような置換が生物活性に変化をもたらす場合、表4に「例示的置換」と示されるか、またはアミノ酸クラスを参照してさらに詳細に後述される、より実質的な変化が導入され得、生成物がスクリーニングされ得る。
表4:アミノ酸置換
【表4】
【0130】
いくつかの実施形態において、P4F6、P4C7、P3A1、P5A3、P9B5、P9F1、P1B4、P1B11、P7H3、P3E10、P1A5、P5F7、P4H11、P15F7、P12B6、P8B6、P14G2、P7F9、P08B06EE、P04A04、P01A05、P08B03、P5F7g、P10A02g、P10A04g、P10A05g、P10A07g、P10B03g、P10B06g、P5F7g2、P5F7g3、およびP5F7g4を含む細胞外ドメインを含むCARを含む本明細書に記載のCARとFLT3への結合について競合する細胞外リガンド結合ドメインを含むCARが本明細書に提供される。
【0131】
いくつかの実施形態において、FLT3に特異的に結合するCARが本明細書に提供され、CARは、配列番号4に示される配列を含むVH領域および/または配列番号3に示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、FLT3に特異的に結合するCARが本明細書に提供され、CARは、配列番号6に示される配列を含むVH領域および/または配列番号5に示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、本発明はFLT3に特異的に結合するCARを提供し、CARは、配列番号10に示される配列を含むVH領域および/または配列番号9に示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、FLT3に特異的に結合するCARが本明細書に提供され、CARは、配列番号20に示される配列を含むVH領域および/または配列番号19に示される配列を含むVL領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、CAR接触領域に基づくFLT3抗体に対する抗体のCDR部分を含むCARも提供する。CDR接触領域は、抗原に対する抗体に特異性を付与する抗体の領域である。一般に、CDR接触領域は、CDR内、および抗体が特異的抗原に結合するための適切なループ構造を維持するために限定されたVernierゾーン内に残基位置を含む。例えば、Makabe et al.,J.Biol.Chem.,283:1156-1166,2007を参照されたい。CDR接触領域の決定は、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。
【0133】
FLT3(ヒトFLT3(例えば、(配列番号198)等)に対する本明細書に記載のFLT3特異的CARのリガンド結合ドメインの結合親和性(KD)は、例えば、約0.1~約1000nM、例えば約0.5nM~約500nM、または例えば、約1nM~約250nMであり得る。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約1000nm、750nm、500nm、400nm、300nm、250nm、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、19nm、18nm、17nm、16nm、15nM、10nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nMまたは0.1nMのいずれかであり得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、FLT3に対する本明細書に記載のFLT3特異的CARのリガンド結合ドメインのscFvの結合親和性(KD)は、約10nM~約100nM、約10nM~約90nM、約10nM~約80nM、約20nM~約70nM、約25nM~約75nM、または約40nM~約110nMである。一実施形態において、本段落に記載されるscFvの結合親和性は、ヒトFLT3に対するものである。
【0135】
いくつかの実施形態において、ヒトFLT3の細胞外ドメインのドメイン4に対する本明細書に記載のFLT3特異的CARのリガンド結合ドメインのscFvの結合親和性(KD)は、約1nM~約100nM、約10nM~約100nM、約20nM~約100nM、約25nM~約105nM、約40nM~約80nM、約40nM~約100nM、または約50nM~約100nMである。
【0136】
いくつかの実施形態において、ヒトFLT3の細胞外ドメインのドメイン2-3に対する本明細書に記載のFLT3特異的CARのリガンド結合ドメインのscFvの結合親和性(KD)は、約5nM~30nM、約5nM~約25nM、約10nM~約30nM、約10nM~約40nM、または約10nM~約25nMである。
【0137】
例示的な実施形態において、ScFvのKDは実施例1に開示されるように測定される。
【0138】
いくつかの実施形態において、結合親和性は、約1000nm、900nm、800nm、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nMのいずれかよりも低い。
【0139】
モノクローナル抗体特異的エピトープ
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるFLT3特異的CARのいずれか1つの細胞外ドメインは、モノクローナル抗体に特異的な(すなわち、モノクローナル抗体によって特異的に認識される)1つ以上のエピトープを含み得る。これらのエピトープは、本明細書においてmAb特異的エピトープとも称される。これらの実施形態において、細胞外ドメインは、FLT3に特異的に結合するVHおよびVLポリペプチド、ならびに1つ以上のモノクローナル抗体(mAb)に結合する1つ以上のエピトープを含む。mAb特異的エピトープを含むCARは、単鎖または多鎖であり得る。
【0140】
本明細書に記載のCARの細胞外ドメインにモノクローナル抗体に特異的なエピトープを含めることにより、CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞の選別および枯渇を可能にする。いくつかの実施形態において、この特徴はまた、CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞の投与によって枯渇された内在性FLT3を発現する細胞の回復を促進する。
【0141】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、mAb特異的エピトープを含むCARを有する遺伝子操作された免疫細胞を選別するおよび/または枯渇させるための方法、ならびに骨髄前駆細胞等の内在性FLT3を発現する細胞の回復を促進するための方法に関する。
【0142】
いくつかのエピトープ-モノクローナル抗体対、具体的には、非限定的な例としてCD20エピトープ/リツキシマブ等の医学的使用が既に承認されているものを用いて、モノクローナル抗体特異的エピトープを含むCARを生成することができる。
【0143】
いくつかの実施形態において、エピトープに特異的なモノクローナル抗体は、細胞傷害性薬物にコンジュゲートされ得る。また、補体系の成分(複数可)を移植した遺伝子操作された抗体を用いてCDC細胞傷害性を促進することも可能である。いくつかの実施形態において、CAR-T細胞の活性化は、エピトープを認識する抗体を用いて細胞を枯渇させることによって調節することができる。
【0144】
本発明はまた、mAb特異的エピトープ(複数可)を発現するFLT3特異的CARを有する遺伝子操作された免疫細胞を選別するための方法、ならびにこれらのCARを有する遺伝子操作された免疫細胞の活性化が上記CARの外部リガンド結合ドメインを標的とする抗体を用いて細胞を枯渇させることによって調節される治療方法も包含する。
【0145】
モノクローナル抗体によって特異的に認識される1つ以上のエピトープを含むCARは、WO2016/120216に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。エピトープは、当該技術分野で既知の任意の数のエピトープから選択され得る。いくつかの実施形態において、エピトープは、医学的使用が承認されているモノクローナル抗体の標的、例えば、限定されないが、リツキシマブによって認識されるCD20エピトープ等であり得る。いくつかの実施形態において、エピトープは、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含む。
CPYSNPSLC(配列番号229)
【0146】
いくつかの実施形態において、エピトープは、CARのscFvとヒンジとの間に位置し得る。いくつかの実施形態において、リンカーによって分離された同じエピトープの2つの例がCARに使用され得る。例えば、GSGGGGSCPYSNPSLCSGGGGSCPYSNPSLCSGGGGS(配列番号230)に示されるような、リンカーによって分離された配列番号229に示されるエピトープの2つのコピーを含むポリペプチドは、軽鎖可変領域とヒンジとの間に位置するCAR内に使用することができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、VHおよびVLポリペプチドならびにmAb特異的エピトープ(複数可)を含むCARの細胞外結合ドメインは、エピトープの挿入位置およびリンカーの使用に応じて異なる構造を有し得る。例えば、mAb特異的エピトープを含むFLT3特異的CARの細胞外結合ドメインは、以下の構造のうちの1つを有してもよく、
V1-L1-V2-(L)x-エピトープ1-(L)x-;
V1-L1-V2-(L)x-エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-;
V1-L1-V2-(L)x-エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x-;
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-L1-V2;
(L)x-エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-V1-L1-V2;
エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x-V1-L1-V2;
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-L1-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x;
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-L1-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x-;
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-L1-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x-エピトープ4-(L)x-;
(L)x-エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-V1-L1-V2-(L)x-エピトープ3-(L)x-;
(L)x-エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-V1-L1-V2-(L)x-エピトープ3-(L)x-エピトープ4-(L)x-;
V1-(L)x-エピトープ1-(L)x-V2;
V1-(L)x-エピトープ1-(L)x-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x;
V1-(L)x-エピトープ1-(L)x-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x;
V1-(L)x-エピトープ1-(L)x-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x-エピトープ4-(L)x;
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-(L)x-エピトープ2-(L)x-V2;または
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-(L)x-エピトープ2-(L)x-V2-(L)x-エピトープ3-(L)x;
式中、
V1はVLであり、かつV2はVHであるか、またはV1はVHであり、かつV2はVLであり、
L1は、VH鎖をVL鎖に連結するのに適切なリンカーであり、
Lは、グリシン残基およびセリン残基を含むリンカーであり、細胞外結合ドメインにおける各Lの存在は、同じ細胞外結合ドメイン内の他のLの存在と同一であってもまたは異なってもよく(例えば、SGGGG、GGGGS、またはSGGGGS)、
xは、0または1であり、各xの存在は、他のものとは独立して選択され、
エピトープ1、エピトープ2、エピトープ3およびエピトープ4は、mAb特異的エピトープであり、同一であってもまたは異なってもよい。いくつかの実施形態において、エピトープ1、エピトープ2およびエピトープ4は、配列番号229のアミノ酸配列を有するmAb特異的エピトープであり、エピトープ3は、配列番号231のアミノ酸配列を有するmAb特異的エピトープである。
【0148】
いくつかの実施形態において、CARの細胞外結合ドメインは、以下の配列
V1-L1-V2-(L)x-エピトープ1-(L)x-エピトープ2-(L)x-;または
(L)x-エピトープ1-(L)x-V1-L1-V2-(L)x-エピトープ2-(L)x-エピトープ3-(L)x-エピトープ4-(L)x-を含み、式中、V1、V2、L1、L、xおよびエピトープ1、エピトープ2、エピトープ3およびエピトープ4は、上で定義した通りである。
【0149】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるFLT3特異的CARのいずれか1つは、CD52エピトープ、CD20エピトープ、CD3エピトープ、CD41エピトープ、CD25エピトープ、CD30エピトープ、EGFRエピトープ、TNFαエピトープ、VEGFエピトープ、補体タンパク質C5エピトープ、CD11aエピトープ、CD33エピトープ、αー4インテグリンエピトープ、IgE Fc領域エピトープ、RSVタンパク質Fエピトープ、IL-6受容体エピトープ、HER2受容体エピトープ、インテグリンα4β7エピトープ、BAFF(B細胞活性化因子)エピトープ、IL-1βエピトープ、RANKLエピトープ、CTLA4エピトープ、CD34エピトープ、IL-12エピトープ、および/またはIL-23エピトープから選択される1つ以上のmAb特異的エピトープを含み得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるFLT3特異的CARは、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ムロモナブ-CD3、トシツモマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、QBEND-10および/またはウステキヌマブによって特異的に認識されるエピトープから選択される1つ以上のmAb特異的エピトープを含み得る。
【0151】
いくつかの実施形態において、FLT3特異的CARは、表5に開示されるエピトープから選択される1つ以上のmAb特異的エピトープを含む。
表5:本発明のFLT3特異的CARの細胞外結合ドメインにおいて使用することができるmAb特異的エピトープの例(例えば、ミモトープおよびエピトープならびに対応するmAb等)
【表5】
【0152】
本発明によるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞の活性化および免疫応答をもたらす、細胞外リガンド結合ドメインの標的への結合の後の細胞内シグナル伝達に関与する。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現される免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つを活性化する能力を有する。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、CARにおいて使用される細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、限定されないが、抗原受容体の会合後にシグナル伝達を開始するために協調的に作用するT細胞受容体および共受容体の細胞質配列、ならびに同じ機能的能力を有するこれらの配列の誘導体または変異体および合成配列であり得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原依存性の一次活性化を開始するもの、および二次または共刺激シグナルを提供するために抗原非依存的に作用するものの、2つの異なるクラスの細胞質シグナル配列を含む。一次細胞質シグナル伝達配列は、ITAMの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフとして知られるシグナル伝達モチーフを含むことができる。ITAMは、syk/zap70クラスチロシンキナーゼのための結合部位として機能する様々な受容体の細胞質内テールに見られる十分に定義された細胞シグナル伝達モチーフである。本明細書において使用されるITAMの例は、TCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものを非限定的な例として含むことができる。いくつかの実施形態において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号210に示されるアミノ酸配列と少なくとも約70%、例えば、少なくとも80%、または少なくとも90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCD3ζシグナル配達ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子のドメインを含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、41BB(GenBank:AAA53133.)およびCD28(NP_006130.1)の断片からなる群から選択される共刺激分子の一部を含む。いくつかの実施形態において、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号209および配列番号213に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、または少なくとも90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号209および配列番号214に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、または少なくとも90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む。
【0155】
CARは、細胞の表面膜上に発現される。したがって、CARは、膜貫通ドメインを含むことができる。本明細書に開示されるCARのための適切な膜貫通ドメインは、(a)例えば、免疫細胞、例えば、限定されないが、リンパ球またはナチュラルキラー(NK)細胞等の細胞の表面に発現され、(b)予め定義された標的細胞に対する免疫細胞の細胞応答を誘導するためにリガンド結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用する能力を有する。膜貫通ドメインは、天然由来、または合成起源に由来するかのいずれかでもよい。膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。非限定的な例として、膜貫通ポリペプチドは、α、β、γもしくはδ等のT細胞受容体のサブユニット、CD3複合体を構成するポリペプチド、IL-2受容体のp55(α鎖)、p75(β鎖)もしくはγ鎖、Fc受容体、具体的にはFcγ受容体IIIのサブユニット、またはCDタンパク質であり得る。代替として、膜貫通ドメインは合成であってもよく、ロイシンおよびバリン等の疎水性残基を主に含み得る。いくつかの実施形態において、上記膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)に由来する。
【0156】
膜貫通ドメインは、ストークドメイン(ヒンジドメインとも称される)によって細胞外リガンド結合ドメインに連結される。ストークドメインは、最大300個のアミノ酸、例えば、10~100個のアミノ酸または25~50個のアミノ酸を含み得る。ストーク領域は、天然に存在する分子の全部または一部、例えば、CD8、CD4、もしくはCD28の細胞外領域の全部もしくは一部、または抗体定常領域の全部もしくは一部に由来し得る。代替として、ストークドメインは、天然に存在するストーク配列に対応する合成配列であり得るか、または完全に合成のストーク配列であり得る。いくつかの実施形態において、上記ストークドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)の一部である。別の具体的な実施例において、上記膜貫通ドメインおよびヒンジドメインは、例えば、配列番号206および208からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を含むヒトCD8α鎖の一部を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARのストークドメインは、CD8αヒンジ、IgG1ヒンジ、またはFcγRIIIαヒンジを含む。いくつかの実施形態において、ストークドメインは、ヒトCD8αヒンジ、ヒトIgG1ヒンジ、またはヒトFcγRIIIαヒンジを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCARは、FLT3に特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメイン、CD8αヒトヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、および4-1BBシグナル伝達ドメインを含むことができる。
【0157】
表6は、本明細書に開示されるCARに使用することができるドメインの例示的な配列を提供する。
表6:CAR成分の例示的な配列
【表6-1】
【表6-2】
【0158】
標的抗原の下方制御または突然変異は、癌細胞において一般的に観察され、抗原を消失したエスケープ変異体を形成する。したがって、腫瘍エスケープを相殺し、免疫細胞を標的に対してより特異的にするために、FLT3特異的CARは、標的において異なる要素に同時に結合し、それによって免疫細胞の活性化および機能を強化するために、1つ以上の追加の細胞外リガンド結合ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメインは、同じ膜貫通ポリペプチド上にタンデムで配置されてもよく、また任意選択的にリンカーによって分離されてもよい。いくつかの実施形態において、上記異なる細胞外リガンド結合ドメインは、CARを校正する異なる膜貫通ポリペプチド上に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明は、各CARが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団に関する。具体的には、本発明は、免疫細胞を提供することと、各CARが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を該細胞の表面に発現させることとを含む、免疫細胞を遺伝子操作する方法に関する。別の具体的な実施例において、本発明は、免疫細胞を提供することと、各々が異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを該細胞に導入することとを含む、免疫細胞を遺伝子操作する方法に関する。CARの集団とは、各々が異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上のCARを意味する。本明細書による異なる細胞外リガンド結合ドメインは、例えば、標的において異なる要素に同時に結合し、それによって免疫細胞の活性化および機能を強化することができる。本発明はまた、各々が異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を含む単離された免疫細胞にも関する。
【0159】
別の態様において、本明細書に記載のCARおよびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドが本明細書に提供される。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の手順によって作製し、発現させることができる。
【0160】
別の態様において、本発明の細胞のいずれかを含む組成物(薬学的組成物等)が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載のCARのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を含む。さらに他の実施形態において、組成物は、以下の配列番号245および配列番号246に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P3E10重鎖可変領域
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGAGCAGAGGTGAAGAAGCCAGGCAGCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCGGCACATTCTCTAGCTACGCCATCCAGTGGGTGCGGCAGGCACCAGGACAGGGCCTGGAGTGGATGGGAGGAATCGTGGGAAGCTGGGGCCTGGCAAACTACGCCCAGAAGTTTCAGGGCAGAGTGACCATCACCACCGATAAGTCTACAAGCACCGCCTATATGGAGCTGTCCTCTCTGAGGTCCGAGGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCACCTCCGCCTTCGGCGAGCTGGCATCTTGGGGACAGGGCACACTGGTGACCGTGAGCTCC(配列番号245)
P3E10軽鎖可変領域
GAGATCGTGCTGACACAGAGCCCAGGCACCCTGTCCCTGTCTCCAGGAGAGAGGGCCACACTGTCCTGTAGGGCCAGCCAGTCCGTGCCTTCTAGCCAGCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCAGGCCAGGCCCCCAGACTGCTGATCTATGACGCCTCCTCTAGAGCCACAGGCATCCCAGATAGGTTCTCTGGCAGCGGCTCCGGCACCGACTTTACACTGACCATCTCCAGGCTGGAGCCCGAGGATTTCGCCGTGTACTATTGCCAGCAGTACGGCAGCTCCCCTCTGACATTTGGCCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAGG(配列番号246)
【0161】
さらに他の実施形態において、組成物は、以下の配列番号247および配列番号248に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P3A1重鎖可変領域
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGAGCAGAGGTGAAGAAGCCCGGCAGCTCCGTGAAGGTGTCTTGCAAGGCCAGCGGCGGCACATTCTCTAGCTACGATATCTCTTGGGTGAGGCAGGCCCCAGGCCAGGGACTGGAGTGGATGGGAGGAATCATCCCCGTGAGCGGAAGGGCAAACTACGCACAGAAGTTTCAGGGCCGGGTGACCATCACCACAGACAAGTCCACATCTACCGCCTATATGGAGCTGTCCTCTCTGAGAAGCGAGGATACAGCCGTGTACTATTGCGCCAGAGTGAGGCCTACCTACTGGCCACTGGACTATTGGGGCCAGGGCACACTGGTGACCGTGAGCTCC(配列番号247)
P3A1軽鎖可変領域
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCATCTAGCCTGAGCGCCTCCGTGGGCGATAGAGTGACAATCACCTGTAGGGCCTCTCAGAGCATCTCCTCTTACCTGAATTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCTAAGCTGCTGATCTACGCAGCAAGCTCCCTGCAGTCCGGAGTGCCATCTCGGTTCTCCGGCTCTGGCAGCGGCACAGACTTTACACTGACCATCTCTAGCCTGCAGCCTGAGGATTTCGCCACCTACTATTGCCAGCAGTCCTATTCTACACCACTGACCTTTGGCCAGGGCACAAAGGTGGAGATCAAG(配列番号248)
【0162】
さらに他の実施形態において、組成物は、以下の配列番号249および配列番号250に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P9B5重鎖可変領域
GAGGTGCAGCTGCTGGAGAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCTGGCGGCTCTCTGAGACTGAGCTGCGCAGCATCCGGCTTCATCTTTGCCTCTTACGCAATGAGCTGGGTGAGGCAGGCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGGTGAGCGAGATCAGCTCCTCTGGCGGCAGCACCACATATGCCGACTCCGTGAAGGGCCGCTTCACAATCAGCCGGGACAACTCTAAGAATACCCTGTACCTGCAGATGAACTCCCTGAGAGCCGAGGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCAGAGATAGAGTGATGGCCGGCCTGGGCTATGACCCATTTGATTACTGGGGCCAGGGCACACTGGTGACCGTGAGCTCC(配列番号249)
P9B5軽鎖可変領域
CAGAGCGTGCTGACCCAGCCACCTTCCGCCTCTGGAACACCCGGCCAGAGGGTGACCATCAGCTGTTCCGGCTCTAGCTCCAACATCGGCTCCAATTACGTGTATTGGTACCAGCAGCTGCCCGGCACAGCCCCTAAGCTGCTGATCTACAGAAACAATCAGAGGCCATCTGGCGTGCCCGACCGCTTCTCTGGCAGCAAGTCCGGCACCTCTGCCAGCCTGGCAATCAGCGGACTGCGGTCCGAGGACGAGGCCGATTACTATTGCGCAGCATGGGACGATTCCCTGTCTGGAGTGGTGTTTGGCGGCGGCACAAAGCTGACCGTGCTG(配列番号250)
【0163】
さらに他の実施形態において、組成物は、以下の配列番号251および配列番号252に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P4C7重鎖可変領域
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGAGCAGAGGTGAAGAAGCCTGGCAGCTCCGTGAAGGTGTCTTGCAAGGCCAGCGGCGGCACATTCTCTAGCTACACCATCTCCTGGGTGCGGCAGGCCCCAGGCCAGGGACTGGAGTGGATGGGAGGAATCATCCCAGCCTTCGGCATCGCCAACTACGCCCAGAAGTTTCAGGGCCGCGTGACAATCACCGCCGACAAGTCCACATCTACCGCCTATATGGAGCTGTCCTCTCTGCGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTATTGCGCCAAGGGCGGCAGCTACTCCCTGGACTATTTTGATATCTGGGGCCAGGGCACACTGGTGACCGTGAGCTCC(配列番号251)
P4C7軽鎖可変領域
GAGATCGTGCTGACACAGTCCCCTGGCACCCTGTCTCTGAGCCCAGGCGAGAGGGCCACACTGTCCTGTAGGGCATCTCAGTACGTGTCCGCCTCTCTGCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCTGGCCAGGCCCCAAGACTGCTGATCTACGGAGCATCCACAAGAGCCACCGGCATCCCCGACAGGTTCAGCGGCTCCGGCTCTGGAACCGACTTCACCCTGACCATCTCTAGACTGGAGCCTGAGGACTTCGCCGTGTACTATTGCCAGCAGTATGCCAGGTCTAGCACATTTGGCCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAG(配列番号252)
【0164】
発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与が、本明細書にさらに記載される。
【0165】
別の態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法が本明細書に提供される。
【0166】
そのような任意の配列に相補的なポリヌクレオチドも本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードもしくはアンチセンス)または二本鎖であってもよく、DNA分子(ゲノム、cDNAもしくは合成)またはRNA分子であってもよい。RNA分子は、イントロンを含有し、かつDNA分子と一対一の様式で対応するHnRNAと、イントロンを含有しないmRNA分子とを含む。追加のコード配列または非コード配列が、必ずではないが、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよく、ポリヌクレオチドは、必ずではないが、他の分子および/または支持物質に連結されてもよい。
【0167】
ポリヌクレオチドは、天然の配列(すなわち、抗体またはその一部をコードする内在性配列)を含んでもよいか、またはそのような配列の変異体を含んでもよい。ポリヌクレオチド変異体は、コードされたポリペプチドの免疫反応性が、天然の免疫反応性分子と比較して減衰されないように、1つ以上の置換、付加、欠失、および/または挿入を含有する。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する影響は、一般に、本明細書に記載されるように評価され得る。変異体、一般に、天然の抗体またはその一部をコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%の同一性、または少なくとも約80%の同一性、またはさらには少なくとも約90%もしくは95%の同一性を示す。
【0168】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、以下に記載されるように最大限一致するように整列させたときに2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じである場合に「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較し、配列類似性の局所的領域を同定することによって行われる。本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後、配列が、連続した位置の同じ数の参照配列と比較され得る、少なくとも約20の連続した位置、通常30~約75、または40~約50のセグメントを指す。
【0169】
比較のための配列の最適なアラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイート(DNASTAR,Inc.、Madison,WI)内のMegalignプログラムを使用して、デフォルトパラメータを用いて実施され得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを具現化する:Dayhoff,M.O.,1978,A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358;Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153;Myers,E.W.and Muller W.,1988,CABIOS 4:11-17;Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.11:105;Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406-425;Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726-730。
【0170】
一般に、「配列同一性の割合」は、少なくとも20の位置の比較ウィンドウにわたって最適に整列させた2つの配列を比較することにより決定され、この場合、これらの2つの配列の最適なアラインメントのために、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部が、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常は5~15パーセント、または10~12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。割合は、両方の配列中に同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、マッチする位置の数を得、マッチする位置の数を参照配列中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、その結果に100を乗じて配列同一性の割合を得ることによって算出される。
【0171】
変異体は、または代替として、天然の遺伝子、またはその一部もしくは補体に実質的に相同であってもよい。そのようなポリヌクレオチド変異体は、中程度にストリンジェントな条件下で、天然の抗体をコードする天然に存在するDNA配列(または相補的配列)とハイブリダイズすることができる。
【0172】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で予備洗浄し、50℃~65℃、5×SSCで一晩ハイブリダイズした後、0.1%SDSを含有する2×、0.5×および0.2×SSCの各々により65℃で20分間、2回洗浄することを含む。
【0173】
本明細書で使用される場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、以下の通りである。(1)洗浄のために低イオン強度および高温を用いる、例えば、50℃の0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミド、および0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、および750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを42℃で用いる;または(3)50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハルト液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で用い、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃および50%ホルムアミド中55℃で洗浄した後、EDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を55℃で行う。当業者は、プローブ長さ等の因子に対応するように、温度、イオン強度等を必要に応じてどのように調節するかを認識するであろう。
【0174】
遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが当業者に理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドの中には、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を有するものがある。それにもかかわらず、コドン使用における差異のために異なるポリヌクレオチドは、本発明によって明確に企図される。さらに、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換等の1つ以上の突然変異の結果として変化した内在性遺伝子である結果として得られるmRNAおよびタンパク質は、必ずではないが、変化した構造または機能を有し得る。対立遺伝子は、標準的な技法(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列の比較)を用いて同定してもよい。
【0175】
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを用いて得ることができる。化学的なポリヌクレオチド合成の方法は当該技術分野で周知であり、本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書に提供される配列および市販のDNA合成機を使用して、所望のDNA配列を産生することができる。
【0176】
本明細書においてさらに論じられるように、組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入することができ、次にベクターを複製および増幅のために適切な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の手段によって宿主細胞に挿入され得る。細胞は、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F-交配または電気穿孔を用いて外因性ポリヌクレオチドを導入することにより形質転換される。一旦導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組込みベクターとして細胞内に維持され得るか(プラスミド等)、または宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法により宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい。
【0177】
代替として、PCRはDNA配列の複製を可能にする。PCR技術は当該技術分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullis et al.eds.,Birkauswer Press, Boston,1994に記載されている。
【0178】
RNAは、適切なベクター中に単離されたDNAを用いること、および適切な宿主細胞にそれを挿入することによって得ることができる。細胞が複製し、DNAがRNAに転写されると、次いでRNAは、例えば、Sambrook et al.,1989(上記参照)に記述されるような、当業者に周知の方法を用いて単離することができる。
【0179】
適切なクローニングベクターは、標準的な技法に従って構築されてもよいか、または当該技術分野において利用可能な多数のクローニングベクターから選択されてもよい。選択されたクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞によって変化し得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼのための単一の標的を有してもよく、かつ/またはベクターを含有するクローンを選択する際に使用することができるマーカーの遺伝子を保持してもよい。適切な例として、プラスミドおよび最近ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3およびpAT28等のシャトルベクターが挙げられる。これらのおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、およびInvitrogen等の商業的供給業者から入手可能である。
【0180】
発現ベクターは、一般に、本発明によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可欠な部分としてのいずれかで、宿主細胞において複製可能でなければならないことが暗示される。適切な発現ベクターとして、限定されないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスおよびコスミドを含むウイルスベクター、ならびにPCT公開第WO87/04462号に開示される発現ベクター(複数可)が挙げられる。ベクター成分は、限定されないが、以下のうちの1つ以上を含み得る:シグナル配列;複製の起点;1つ以上のマーカー遺伝子;適当な転写調節要素(プロモーター、エンハンサー、およびターミネーター等)。発現(すなわち、翻訳)には、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドン等の、1つ以上の翻訳調節要素も通常は必要である。
【0181】
対象となるポリヌクレオチドを含有するベクターは、電気穿孔、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を用いるトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルス等の感染病原体である場合)を含む、多くの適切な手段のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、細胞宿主の特徴に依存することが多い。
【0182】
本明細書に開示のFLT3特異的CARをコードするポリヌクレオチドは、発現カセットまたは発現ベクター(例えば、細菌宿主細胞に導入するためのプラスミド、またはウイルスベクター、例えば、昆虫宿主細胞のトランスフェクションのためのバキュロウイルスベクター、またはプラスミドもしくはウイルスベクター、例えば、哺乳動物宿主細胞のトランスフェクションのためのレンチウイルス)中に存在し得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドまたはベクターは、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列、例えば、限定されないが、2Aペプチドをコードする配列を含むことができる。ピコルナウイルスのアフトウイルス亜群において同定された2Aペプチドは、あるコドンから次のコドンへと、該コドンによってコードされる2つのアミノ酸間にペプチド結合を形成することなく、リボソーム「スキップ」を引き起こす((Donnelly and Elliott 2001;Atkins, Wills et al.2007;Doronina,Wu et al.2008)を参照されたい)。「コドン」とは、リボソームによって1つのアミノ酸残基に翻訳されたmRNA上の(またはDNA分子のセンス鎖上の)3つのヌクレオチドを意味する。したがって、ポリペプチドがインフレームの2Aオリゴペプチド配列によって分離されている場合、mRNA内の単一の連続したオープンリーディングフレームから2つのポリペプチドを合成することができる。そのようなリボソームスキップ機構は、当該技術分野において周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされたいくつかのタンパク質の発現のために、いくつかのベクターによって使用されることが分かっている。
【0183】
膜貫通ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に誘導するために、いくつかの実施形態において、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても知られる)が、ポリヌクレオチド配列またはベクター配列に提供される。分泌シグナル配列は、膜貫通核酸配列に作動可能に連結される、すなわち、2つの配列が正しいリーディングフレームにおいて結合し、新しく合成されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路内に誘導するように配置される。分泌シグナル配列は、一般的に、対象となるポリペプチドをコードする核酸配列の5’に位置するが、ある特定の分泌シグナル配列は、目的となる核酸配列の他の場所に位置してもよい(例えば、Welchらの米国特許第5,037,743号、Hollandらの米国特許第5,143,830号を参照されたい)。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号204または215に示されるアミノ酸配列を含む。当業者は、遺伝暗号の縮重を考慮して、これらのポリヌクレオチド分子間においてかなりの配列変動が可能であることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、本発明の核酸配列は、哺乳動物細胞における発現のために、例えば、霊長類(例えば、ヒトまたはサル)細胞における発現のためにコドン最適化される。コドン最適化は、対象となる配列において、所与の種の高発現遺伝子において通常は稀であるコドンを、そのような種の高発現遺伝子において通常は高頻度であるコドンへと交換することを指し、そのようなコドンは、交換されるコドンとしてアミノ酸をコードする。
【0184】
免疫細胞を遺伝子操作する方法
免疫療法に使用するための免疫細胞を調製する方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、方法は、免疫細胞を得ること、本発明によるCARを免疫細胞に導入すること、および細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態において、細胞を提供すること、および細胞の表面に少なくとも1つの上述のCARを発現させることを含む、免疫細胞を遺伝子操作する方法に関する。免疫細胞を遺伝子操作するための方法は、例えば、PCT特許出願公開第WO/2014/039523号、同第WO/2014/184741号、同第WO/2014/191128号、同第WO/2014/184744号、および同第WO/2014/184143号に記載されており、これらは各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、方法は、上述のCARをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトすること、および細胞においてポリヌクレオチドを発現させることを含む。
【0185】
細胞を遺伝子操作する前に、様々な非限定的な方法によって対象から細胞の起源を得ることができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾組織、および腫瘍を含む、多数の非限定的な起源から得ることができる。いくつかの実施形態において、入手可能であり、当業者に既知である任意の数のT細胞株が使用され得る。いくつかの実施形態において、細胞は、健常なドナー、または疾患もしくは障害に罹患するドナー、例えば、癌と診断された固体もしくは感染症と診断された固体に由来してもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、異なる表現型の特徴を提示する混合細胞集団の一部であってもよい。
【0186】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、細胞において安定に発現されるようにレンチウイルスベクターに存在する。
【0187】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、限定されないが、TCRの成分、免疫抑制剤の標的、HLA遺伝子、および/または免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PDCD1もしくはCTLA-4等を発現する少なくとも1つの遺伝子を破壊または不活性化することによって細胞を遺伝子組み換えするステップをさらに含んでもよい。遺伝子を破壊または不活性化することにより、対象となる遺伝子が機能的タンパク質の形態では発現されないことが意図される。いくつかの実施形態において、破壊または不活性化される遺伝子は、例えば、限定されないが、TCRα、TCRβ、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、デオキシシチジンキナーゼ(DCK)、PD-1、およびCTLA-4からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は、選択的DNA切断によって遺伝子を選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを細胞に導入することにより1つ以上の遺伝子を不活性化することを含む。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALE-ヌクレアーゼ)またはCas9エンドヌクレアーゼであり得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子を不活性化する能力を強化するために、レアカットエンドヌクレアーゼとともに追加の触媒ドメインが使用される。例えば、追加の触媒ドメインは、DNA末端プロセシング酵素であってもよい。DNA末端プロセシング酵素の非限定的な例として、5-3′エキソヌクレアーゼ、3-5′エキソヌクレアーゼ、5-3′アルカリ性エキソヌクレアーゼ、5′フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、加水分解酵素および鋳型非依存性DNAポリメラーゼが挙げられる。そのような触媒ドメインの非限定的な例は、hExoI(EXO1_HUMAN)、酵母ExoI(EXO1_YEAST)、E.coli ExoI、ヒトTREX2、マウスTREX1、ヒトTREX1、ウシTREX1、ラットTREX1、TdT(末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ)ヒトDNA2、酵母DNA2(DNA2_YEAST)からなる群から選択されるタンパク質ドメインまたは該タンパク質ドメインの触媒的に活性な誘導体からなる。いくつかの実施形態において、追加の触媒ドメインは、3′-5′-エキソヌクレアーゼ活性を有することができ、いくつかの実施形態において、上記追加の触媒ドメインはTREX、例えば、TREX2触媒ドメイン(WO2012/058458)である。いくつかの実施形態において、上記触媒ドメインは、単鎖TREXポリペプチドによってコードされる。追加の触媒ドメインは、ヌクレアーゼ融合タンパク質またはキメラタンパク質に融合され得る。いくつかの実施形態において、追加の触媒ドメインは、例えば、ペプチドリンカーを用いて、融合される。
【0189】
いくつかの実施形態において、方法は、標的核酸配列と外因性核酸との間で相同組換えが起こるように、少なくとも標的核酸配列の一部に相同な配列を含む外因性核酸を細胞に導入するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記外因性核酸は、それぞれ標的核酸配列の領域5′および3′に相同な第1および第2の部分を含む。外因性核酸はまた、標的核酸配列の領域5′および3′と相同性を有しない、第1の部分と第2の部分との間に位置する第3の部分を含んでもよい。標的核酸配列の切断後、相同組換え事象は、標的核酸配列と外因性核酸との間で刺激される。いくつかの実施形態において、少なくとも約50bp、約100bp超、または約200bp超の相同配列が、ドナー基質内で使用され得る。外因性核酸は、例えば、限定されないが、約200bp~約6000bp、例えば、約1000bp~約2000bpであり得る。共有される核酸相同性は、破断部位の上流および下流に隣接する領域に位置し、導入される核酸配列は1つのアーム間に位置する。
【0190】
いくつかの実施形態において、核酸は、上記切断の上流の配列に対する第1の相同性領域、TCRα、TCRβ、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、デオキシシチジンキナーゼ(DCK)、および免疫チェックポイントタンパク質、例えば、プログラム死-1(PD-1)からなる群から選択される標的遺伝子を不活性化するための配列、ならびに切断の下流の配列に対する第2の相同性領域を連続して含む。ポリヌクレオチド導入ステップは、レアカットエンドヌクレアーゼの導入または発現と同時、その前、またはその後であり得る。破断事象が発生した標的核酸配列の位置に応じて、例えば、外因性核酸が遺伝子のオープンリーディングフレーム内に位置する場合、または新しい配列または対象となる遺伝子を導入するために、そのような外因性核酸を用いて遺伝子をノックアウトすることができる。そのような外因性核酸の使用による配列挿入は、遺伝子の修正もしくは置換(非限定的な例として対立遺伝子の交換)によって、既存の標的遺伝子を改変するために使用することができるか、または標的遺伝子の修正もしくは置換(非限定的な例としてプロモーター交換)によって、標的遺伝子の発現を上方制御もしくは下方制御するために使用することができる。いくつかの実施形態において、TCRα、TCRβ、CD52、GR、DCK、および免疫チェックポイントタンパク質からなる群から選択される遺伝子の不活性化は、特定のTALE-ヌクレアーゼによって標的とされる正確なゲノム位置で行うことができ、この場合、上記TALE-ヌクレアーゼは切断を触媒し、外因性核酸は、少なくとも相同性領域と、TCRα、TCRβ、CD52、GR、DCK、相同組換えによって組み込まれる免疫チェックポイントタンパク質からなる群から選択される1つの標的遺伝子を不活性化するための配列とを連続して含む。いくつかの実施形態において、いくつかの遺伝子は、それぞれいくつかのTALE-ヌクレアーゼを用いること、および、特定の遺伝子不活性化のための1つの定義された遺伝子およびいくつかの特定のポリヌクレオチドを特異的に標的とすることにより、連続的にまたは同時に不活性化することができる。
【0191】
いくつかの実施形態において、方法は、TCRα、TCRβ、CD52、GR、DCK、および免疫チェックポイントタンパク質からなる群から選択される1つ以上の追加の遺伝子の不活性化を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子の不活性化は、レアカットエンドヌクレアーゼが細胞ゲノムの標的配列における切断を特異的に触媒するように、少なくとも1つのレアカットエンドヌクレアーゼを細胞に導入すること、ならびに任意選択的に、切断の上流の配列に対する第1の相同性領域、細胞のゲノムに挿入される配列、および切断の下流の配列に対する第2の相同性領域を連続して含む外因性核酸を細胞に導入することによって達成することができ、この場合、導入された外因性核酸が遺伝子を不活性化し、少なくとも1つの対象となる組換えタンパク質をコードする少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチド配列を組み込む。いくつかの実施形態において、外因性ポリヌクレオチド配列は、TCRα、TCRβ、CD52、GR、DCK、および免疫チェックポイントタンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする遺伝子内に組み込まれる。
【0192】
別の態様において、細胞を遺伝子組み換えするステップは、免疫抑制剤の標的を発現する少なくとも1つの遺伝子を不活性化することによりT細胞を修飾すること、および任意選択的に免疫抑制剤の存在下で細胞を増殖させることを含み得る。免疫抑制剤は、いくつかの作用機序のうちの1つによって免疫機能を抑制する薬剤である。免疫抑制剤は、免疫応答の程度および/またはvoracityを低減する。免疫抑制剤の非限定的な例として、カルシニューリン阻害剤、ラパマイシンの標的、インターロイキン-2α鎖遮断薬、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、ジヒドロ葉酸還元酵素、コルチコステロイド、および代謝拮抗型免疫抑制薬が挙げられる。いくつかの細胞傷害性免疫抑制剤は、DNA合成を阻害することにより作用する。他は、T細胞の活性化を通して、またはヘルパー細胞の活性化を阻害することによって作用し得る。本明細書による方法は、T細胞における免疫抑制剤の標的を不活性化することにより、免疫療法のためにT細胞に免疫抑制耐性を付与することができる。非限定的な例として、免疫抑制剤の標的は、例えば、限定されないが、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、FKBPファミリー遺伝子メンバー、およびシクロフィリンファミリー遺伝子メンバー等の免疫抑制剤に対する受容体であり得る。
【0193】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子組み換えは、レアカットエンドヌクレアーゼが1つの標的遺伝子における切断を特異的に触媒し、それによって標的遺伝子を不活性化するように、1つのレアカットエンドヌクレアーゼの、遺伝子操作するために提供された細胞における発現に関与する。いくつかの実施形態において、細胞を遺伝子操作する方法は、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む:例えば、細胞培養物から、または血液試料から、T細胞を提供するステップ;免疫抑制剤の標的を発現するT細胞において遺伝子を選択するステップ;DNA切断によって、例えば、免疫抑制剤の標的をコードする遺伝子の二本鎖破壊によって、選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをT細胞に導入するステップ、および任意選択的に免疫抑制剤の存在下で、細胞を増殖させるステップ。
【0194】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、細胞培養物から、または血液試料から、T細胞を提供すること;遺伝子が免疫抑制剤の標的を発現するT細胞において遺伝子を選択すること;DNA切断によって、例えば、免疫抑制剤の標的をコードする遺伝子の二本鎖破壊によって、選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードする核酸をT細胞にトランスフェクトして、レアカットエンドヌクレアーゼをT細胞に発現させること;および任意選択的に免疫抑制剤の存在下で、細胞を増殖させることを含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼは、CD52またはGRを特異的に標的とする。いくつかの実施形態において、不活性化のために選択された遺伝子はCD52をコードし、免役抑制療法はCD52抗原を標的とするヒト化抗体を含む。いくつかの実施形態において、不活性化のために選択された遺伝子はGRをコードし、免役抑制療法はデキサメタゾン等のコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態において、不活性化のために選択された遺伝子はFKBPファミリー遺伝子メンバーまたはその変異体であり、免役抑制療法はタクロリムスまたはフジマイシンとしても知られるFK506を含む。いくつかの実施形態において、FKBPファミリー遺伝子メンバーはFKBP12またはその変異体である。いくつかの実施形態において、不活性化のために選択された遺伝子はシクロフィリンファミリー遺伝子メンバーまたはその変異体であり、免役抑制療法はシクロスポリンを含む。
【0196】
いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALE-ヌクレアーゼ(TALEN)であり得る。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。
【0197】
また、免疫療法に適したT細胞を遺伝子操作する方法も本明細書に提供され、方法は、少なくとも免疫チェックポイントタンパク質を不活性化することによりT細胞を遺伝子組み換えすることを含む。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントタンパク質は、例えば、PD-1および/またはCTLA-4である。いくつかの実施形態において、細胞を遺伝子組み換えする方法は、少なくとも1つの免疫チェックポイントタンパク質を不活性化することによりT細胞を修飾すること、および細胞を増殖させることを含む。免疫チェックポイントタンパク質は、限定されないが、免疫細胞を直接阻害する、プログラム死1(PD-1、PDCD1またはCD279としても知られる、受託番号:NM_005018)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4、CD152としても知られる、GenBank受託番号AF414120.1)、LAG3(CD223としても知られる、受託番号:NM_002286.5)、Tim3(HAVCR2としても知られる、GenBank受託番号:JX049979.1)、BTLA(CD272としても知られる、受託番号:NM_181780.3)、BY55(CD160としても知られる、GenBank受託番号:CR541888.1)、TIGIT(VSTM3としても知られる、受託番号:NM_173799)、B7H5(C10orf54としても知られる、マウスVISTA遺伝子の相同体、受託番号:NM_022153.1)、LAIR1(CD305としても知られる、GenBank受託番号:CR542051.1)、SIGLEC10(GeneBank受託番号:AY358337.1)、2B4(CD244としても知られる、受託番号:NM_001166664.1)。例えば、CTLA-4は、ある特定のCD4およびCD8T細胞上に発現される細胞表面タンパク質であり、抗原提示細胞上でそのリガンド(B7-1およびB7-2)によって会合されると、T細胞活性化およびエフェクター機能が阻害される。
【0198】
いくつかの実施形態において、細胞を遺伝子操作するための上記方法は、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む:例えば、細胞培養物から、または血液試料から、T細胞を提供するステップ;DNA切断によって、例えば、免疫チェックポイントタンパク質をコードする1つの遺伝子の二本鎖破壊によって、選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをT細胞に導入するステップ;および細胞を増殖させるステップ。いくつかの実施形態において、方法は、例えば、細胞培養物から、または血液試料から、T細胞を提供すること;DNA切断によって、例えば、免疫チェックポイントタンパク質をコードする遺伝子の二本鎖破壊によって、選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードする核酸を上記T細胞にトランスフェクトすること;レアカットエンドヌクレアーゼをT細胞に発現させること;細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼは、PD-1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、TCRα、およびTCRβからなる群から選択される遺伝子を特異的に標的とする。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALE-ヌクレアーゼであり得る。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。
【0199】
いくつかの実施形態において、本発明は、同種免疫療法に特に適切であり得る。そのような実施形態において、細胞は、T細胞中のT細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を不活性化すること、およびT細胞を増殖させることを含む方法によって改変されてもよい。いくつかの実施形態において、本方法の遺伝子組み換えは、レアカットエンドヌクレアーゼが1つの標的遺伝子における切断を特異的に触媒し、それによって標的遺伝子を不活性化するように、1つのレアカットエンドヌクレアーゼの、遺伝子操作するために提供された細胞における発現に依存する。いくつかの実施形態において、細胞を遺伝子操作する上記方法は、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む:例えば、細胞培養物から、または血液試料から、T細胞を提供するステップ;DNA切断によって、例えば、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1つの遺伝子の二本鎖破壊によって、選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをT細胞に導入するステップ、および細胞を増殖させるステップ。
【0200】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、細胞培養物から、または血液試料から、T細胞を提供すること;DNA切断によって、例えば、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1つの遺伝子の二本鎖破壊によって、選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードする核酸を上記T細胞にトランスフェクトすること;レアカットエンドヌクレアーゼをT細胞に発現させること;細胞表面上でTCRを発現しない形質転換されたT細胞を選別すること;および細胞を増殖させることを含む。
【0201】
いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALE-ヌクレアーゼであり得る。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態において、TALE-ヌクレアーゼは、TCRαまたはTCRβをコードする配列を認識して切断する。いくつかの実施形態において、TALE-ヌクレアーゼは、配列番号219、220、221、222、223、224、225、または226に示されるアミノ酸配列から選択されるポリペプチド配列を含む。
TALE-ヌクレアーゼのポリペプチド配列:
反復配列TRAC_T01-L
LTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号219)
反復配列TRAC_T01-R
LTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号220)
反復配列TRBC_T01-L
LTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号221)
反復配列TRBC_T01-R
NPQRSTVWYLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号222)
反復配列TRBC_T02-L
LTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号223)
反復配列TRBC_T02-R
LTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号224)
反復配列CD52_T02-L
LTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号225)
反復配列CD52_T02-R
LTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQALLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALE(配列番号226)
【0202】
別の態様において、細胞を遺伝子組み換えする1つの別のステップは、pTα(プレTCRαとしても知られる)またはその機能的変異体をT細胞に導入し、任意選択的にCD3複合体の刺激を介して該細胞を増殖させることを含む、TCRα欠損T細胞を増殖させる方法であってもよい。いくつかの実施形態において、方法は、a)CD3表面発現を支持するために少なくともpTαの断面をコードする核酸を細胞にトランスフェクトすること、b)上記pTαを細胞に発現させること、およびc)任意選択的にCD3複合体の刺激を介して該細胞を増殖させることを含む。
【0203】
また、T細胞の増殖のための方法のステップを含む、免疫療法のためにT細胞を調製する方法も提供される。いくつかの実施形態において、pTαポリヌクレオチド配列は、ランダムに、または相同組換えによって導入することができる。いくつかの実施形態において、挿入は、TCRα遺伝子の不活性化に関連し得る。
【0204】
pTαの異なる機能的変異体が使用されてもよい。ペプチドの「機能的変異体」は、ペプチド全体またはその断片のいずれかに実質的に類似する分子を指す。pTαまたはその機能的変異体の「断片」は、分子の任意のサブセット、すなわち、全長pTαよりも短いペプチドを指す。いくつかの実施形態において、pTαまたは機能的変異体は、例えば、全長pTαまたはC末端切断pTα型であり得る。C末端切断pTαは、C末端に1つ以上の残基を欠く。非限定的な例として、C末端切断pTα型は、タンパク質のC末端から18、48、62、78、92、110または114個の残基を欠く。ペプチドのアミノ酸配列変異体は、ペプチドをコードするDNAにおける突然変異によって調製することができる。そのような機能的変異体は、アミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失、または挿入もしくは置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせもまた最終構築物に到達するために作製され得るが、但し、最終構築物は、所望の活性、具体的には機能的CD3複合体の修復を有するものとする。例示的な実施形態において、二量体化に影響を与えるように、少なくとも1つの突然変異が上述の異なるpTα型に導入される。非限定的な例として、突然変異した残基は、ヒトpTαタンパク質の少なくともW46R、D22A、K24A、R102AもしくはR117A、またはpTαファミリーもしくは相同体メンバーにCLUSTALW法を用いて整列させた位置であり得る。例えば、上述のpTαまたはその変異体は、突然変異した残基W46Rまたは突然変異した残基D22A、K24A、R102AおよびR117Aを含む。いくつかの実施形態において、上記pTαまたは変異体はまた、非限定的な例としてCD28、OX40、ICOS、CD27、CD137(4-1BB)およびCD8等のシグナル伝達ドメインに融合される。上述のpTαまたは変異体の細胞外ドメインは、TCRαタンパク質の断片、特にTCRαの膜貫通および細胞内ドメインに融合することができる。pTα変異体はまた、TCRαの細胞内ドメインに融合することもできる。
【0205】
いくつかの実施形態において、pTα型は、細胞外リガンド結合ドメインに融合することができる。いくつかの実施形態において、pTαまたはその機能的変異体は、柔軟なリンカーによって連結された標的抗原特異的モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変断片を含む単鎖抗体断片(scFv)に融合される。
【0206】
「TCRα欠損T細胞」という用語は、機能的TCRα鎖の発現を欠く単離されたT細胞を指すこれは、異なる手段によって達成され得、非限定的な例として、T細胞がその細胞表面上でいずれの機能的TCRαも発現しないようにT細胞を遺伝子操作することによって、またはT細胞がその表面上でごく少量の機能的TCRα鎖を産生するようにT細胞を遺伝子操作することによって、またはTCRα鎖の突然変異もしくは切断型を発現するようにT細胞を遺伝子操作することによって、達成され得る。TCRα欠損細胞は、もはやCD3複合体を介して増殖することはできない。したがって、この問題を克服し、TCRα欠損細胞の増殖を可能にするために、pTαまたはその機能的変異体を細胞に導入し、そうすることで機能的CD3複合体を修復する。いくつかの実施形態において、方法は、T細胞受容体(TCR)の1つの成分をコードする1つの遺伝子のDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを上記T細胞に導入することをさらに含む。いくつかの実施形態において、レアカットエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。
【0207】
いくつかの実施形態において、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、電気穿孔によって細胞内に直接的に導入されるmRNAであり得る。いくつかの実施形態において、cytoPulse技術を用いて、細胞内に材料を送達するために生細胞を一時的に透過性にすることができる。パラメータは、最小限の死亡率を伴う高トランスフェクション効率のための条件を決定するために改変することができる。
【0208】
また、T細胞をトランスフェクトする方法も本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、方法は、T細胞をRNAと接触させることと、(a)1センチメートル当たり約2250~3000Vの電圧範囲の電気パルス;(b)0.1msのパルス幅;(c)ステップ(a)とステップ(b)の電気パルスの間の約0.2~10msのパルス間隔;(d)約100msのパルス幅、およびステップ(b)の電気パルスとステップ(c)の第1の電気パルスとの間の約100msのパルス間隔を伴う、約2250~3000Vの電圧範囲の電気パルス;ならびに(e)約0.2msのパルス幅および4回の電気パルスの各々の間の2msのパルス間隔を伴う、約325Vの電圧の4つの電気パルスからなるアジャイルパルスシーケンスをT細胞に印加することと、を含む。いくつかの実施形態において、T細胞をトランスフェクトする方法は、上記T細胞をRNAと接触させることと、(a)1センチメートル当たり約2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2400、2450、2500、2600、2700、2800、2900または3000Vの電圧の電気パルス;(b)0.1msのパルス幅;(c)ステップ(a)とステップ(b)の電気パルスの間の約0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10msのパルス間隔;(d)100msのパルス幅、およびステップ(b)の電気パルスとステップ(c)の第1の電気パルスとの間の100msのパルス間隔を伴う、約2250、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2400、2450、2500、2600、2700、2800、2900または3000Vの電圧範囲の1つの電気パルス、および(e)約0.2msのパルス幅および4回の電気パルスの各々の間の約2msのパルス間隔を伴う、約325Vの電圧の4つの電気パルスからなるアジャイルパルスシーケンスをT細胞に印加することとを含む。上述の値の範囲に含まれる任意の値が、本出願において開示される。電気穿孔培地は、当該技術分野で既知の任意の適切な培地であり得る。いくつかの実施形態において、電気穿孔培地は、約0.01~約1.0ミリシーメンスに及ぶ範囲の伝導性を有する。
【0209】
いくつかの実施形態において、非限定的な例として、RNAは、レアカッティングエンドヌクレアーゼ、半TALEヌクレアーゼ等のレアカッティングエンドヌクレアーゼの1つのモノマー、CAR、多鎖キメラ抗原受容体の少なくとも1つの成分、pTαまたはその機能性変異体、外因性核酸、および/または1つの追加の触媒ドメインをコードする。
【0210】
遺伝子操作された免疫細胞
本発明はまた、本明細書に記載のCARポリヌクレオチドのいずれかを含む遺伝子操作された免疫細胞も提供する。いくつかの実施形態において、CARは、プラスミドベクターを介して導入遺伝子として免疫細胞に導入することができる。いくつかの実施形態において、プラスミドベクターは、例えば、ベクターを受容する細胞の同定および/または選択を提供する選択マーカーも含有し得る。
【0211】
CARポリペプチドは、細胞にCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入した後に、細胞内でインサイツで合成されてもよい。代替として、CARポリペプチドは、細胞外で産生して、次いで細胞に導入してもよい。ポリヌクレオチド構築物を細胞に導入するための方法は、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態において、安定な形質転換法を用いて、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに組み込むことができる。他の実施形態において、一過性形質転換法を用いて、ポリヌクレオチド構築物を一過性に発現させることができ、ポリヌクレオチド構築物は細胞のゲノムに組み込まれない。他の実施形態において、ウイルス媒介法が用いられてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソーム等の任意の適切な手段によって細胞に導入され得る。一過性形質転換法として、例えば、限定されないが、マイクロインジェクション、電気穿孔または微粒子中が挙げられる。ポリヌクレオチドは、例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター等のベクターに含まれてもよい。
【0212】
また、本明細書に提供される細胞を遺伝子操作する上述の方法によって得られる単離された細胞および細胞株も本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、少なくとも1つの上述のCARを含む。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、各CARが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を含む。
【0213】
また、上述の方法のいずれか1つに従って得られる免疫細胞も本明細書に提供される。異種DNAを発現させることができる任意の免疫細胞を、対象となるCARを発現させる目的に使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のCARのいずれか1つを発現させるために使用される免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態において、CARを発現させるために使用される免疫細胞は、例えば、限定されないが、幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成人幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であり得る。代表的なヒト幹細胞はCD34+細胞である。
【0214】
いくつかの実施形態において、細胞表面膜に本発明のFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞は、10%、20%、30%、40%、50%、または60%を超える幹細胞メモリーおよび中枢メモリー細胞の割合を含む。いくつかの実施形態において、細胞表面膜に本発明のFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞は、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約15%~約50%、約15%~約40%、約20%~約60%、または約20%~約70%の幹細胞メモリーおよび中枢メモリー細胞の割合を含む。
【0215】
いくつかの実施形態において、幹細胞メモリーおよび中枢メモリー細胞の割合は、実施例2dに開示されるように測定される。
【0216】
本明細書に記載のCARのいずれか1つを発現させるために使用される免疫細胞はまた、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、NK細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球もしくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球からなる群に由来し得る。
【0217】
一実施形態において、免疫細胞は、本明細書に記載のCARのいずれか1つを発現させる炎症性Tリンパ球である。一実施形態において、免疫細胞は、本明細書に記載のCARのいずれか1つを発現させる細胞傷害性Tリンパ球である。一実施形態において、免疫細胞は、本明細書に記載のCARのいずれか1つを発現させる調節性Tリンパ球である。一実施形態において、免疫細胞は、本明細書に記載のCARのいずれか1つを発現させるヘルパーTリンパ球である。
【0218】
また、上述の方法のいずれかに従って形質転換されたT細胞から得られる細胞株も本明細書に提供される。また、免役抑制療法に耐性を示す改変された細胞も本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、本発明による単離された細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0219】
本発明の免疫細胞は、例えば、限定されないが、米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、第6,867,041号、および米国特許出願公開第20060121005号に概説される方法を用いて、T細胞の遺伝子組み換えの前または後のいずれかに活性化および増殖させることができる。T細胞はインビトロまたはインビボで増殖させることができる。一般に、本発明のT細胞は、例えば、T細胞の表面上でCD3 TCR複合体および共刺激分子を刺激してT細胞の活性化シグナルを発生させる作用物質との接触によって増殖させることができる。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)、またはフィトヘマグルチニン(PHA)のような分裂促進性レクチン等の化学物質を使用して、T細胞の活性化シグナルを発生させることができる。
【0220】
いくつかの実施形態において、T細胞集団は、例えば、表面上に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD2抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと併せたプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって、インビトロで刺激することができる。T細胞表面上のアクセサリー分子の共刺激には、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。T細胞培養に適切な条件は、血清(例えば、ウシ胎仔血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-2、IL-15、TGFp、およびTNF、または当業者に基地の細胞成長用の他の添加剤を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640、またはX-vivo 5、(Lonza))を含む。細胞成長用の他の添加剤として、限定されないが、界面活性剤、プラズマネート、および還元剤、例えば、N-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールが挙げられる。培地は、無血清、あるいは適切な量の血清(もしくは血漿)または所定のホルモンのセット、ならびに/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカイン(複数可)を補充したかのいずれかの、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンを添加した、RPMI 1640、A1M-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1、およびX-Vivo 20、Optimizerを含み得る。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件下で、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)下で維持される。様々な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特徴を示し得る。
【0221】
いくつかの実施形態において、本発明の細胞は、組織または細胞と共培養することによって増殖させることができる。細胞はまた、インビボで、例えば、対象に細胞を投与した後に対象の血液中で増殖させることもできる。
【0222】
いくつかの実施形態において、本発明による単離された細胞は、CD52、GR、PD-1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、HLA、TCRαおよびTCRβからなる群から選択される1つの不活性化遺伝子を含み、かつ/またはCAR、多鎖CAR、および/もしくはpTα導入遺伝子を発現する。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、多鎖CARを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明による単離された細胞は、CD52およびGR、CD52およびTCRα、CDR52およびTCRβ、GRおよびTCRα、GRおよびTCRβ、TCRαおよびTCRβ、PD-1およびTCRα、PD-1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、Tim3およびTCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、2B4およびTCRβからなる群から選択される2つの不活性化遺伝子を含み、かつ/またはCAR、多鎖CAR、およびpTα導入遺伝子を発現する。
【0223】
いくつかの実施形態において、TCRは、TCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子(複数可)を不活性化することにより本発明による細胞において機能的ではなくなる。いくつかの実施形態において、個体に由来する改変された細胞を得るための方法が提供され、細胞は、主要組織適合複合体(MHC)シグナル伝達経路とは無関係に増殖することができる。本発明によって得れらやすい、MHCシグナル伝達経路とは無関係に増殖することができる改変された細胞は、本発明の範囲に包含される本明細書に開示される改変された細胞は、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主疾患(GvHD)に対して、それを必要とする個体を治療する際に使用することができ、したがって、上記個体に不活性化されたTCRαおよび/またはTCRβ遺伝子を含む有効量の改変された細胞を投与することを含む、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主疾患(GvHD)に対してそれを必要とする患者を治療する方法は、本発明の範囲内である。
【0224】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は1つ以上の化学療法薬に対して耐性であるように遺伝子操作される。化学療法薬は、例えば、プリンヌクレオチド類似体(PNA)であってもよく、したがって、免疫細胞を養子免疫療法と化学療法を組み合わせた癌治療に適したものにする。例示的なPNAとして、例えば、単独のまたは組み合わせた、クロファラビン、フルダラビン、およびシタラビンが挙げられる。PNAは、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)によってモノ-、ジ-、およびトリ-リン酸PNAに代謝される。これらのトリ-リン酸形態は、DNA合成についてATPと競合し、アポトーシス促進剤として作用し、トリヌクレオチド産生に関与するリボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)の強力な阻害剤である。不活性化されたdCK遺伝子を含むFLT3特異的CAR-T細胞が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、dCKノックアウト細胞は、例えば、mRNAの電気穿孔によってdCK遺伝子に向けられた特異的TAL-ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを用いて、T細胞のトランスフェクションによって作製される。dCKノックアウトFLT3特異的CAR-T細胞は、例えば、クロファラビンおよび/またはフルダラビンを含むPNAに耐性を示し、FLT3を発現する細胞に対するT細胞細胞傷害活性を維持する。
【0225】
いくつかの実施形態において、本発明の単離された細胞または細胞株は、pTαまたはその機能的変異体を含み得る。いくつかの実施形態において、単離された細胞または細胞株は、TCRα遺伝子を不活性化することによりさらに遺伝子組み換えされ得る。
【0226】
いくつかの実施形態において、CAR-T細胞は、例えばRQR8等の自殺ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013153391Aを参照されたい。ポリヌクレオチドを含むCAR-T細胞において、CAR-T細胞の表面に自殺ポリペプチドを発現させる。いくつかの実施形態において、自殺ポリペプチドは、配列番号227に示されるアミノ酸配列を含む。
CPYSNPSLCSGGGGSELPTQGTFSNVSTNVSPAKPTTTACPYSNPSLCSGGGGSP APRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLS LVITLYCNHRNRRRVCKCPRPVV(配列番号227)
【0227】
自殺ポリペプチドは、アミノ末端にシグナルペプチドも含み得る。いくつかの実施形態において、自殺ポリペプチドは、配列番号228に示されるアミノ酸配列を含む。
MGTSLLCWMALCLLGADHADACPYSNPSLCSGGGGSELPTQGTFSNVSTNVSPAKPTTTACPYSNPSLCSGGGGSPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPRPVV(配列番号228)
【0228】
自殺ポリペプチドをCAR-T細胞の表面に発現させる場合、リツキシマブのポリペプチドのリツキシマブエピトープへの結合が細胞の溶解を引き起こす。1つより多くのリツキシマブの分子が、細胞表面に発現されるポリペプチドごとに結合し得る。ポリペプチドの各リツキシマブエピトープは、リツキシマブの別個の分子に結合し得る。例えば、対象にリツキシマブを投与することにより、FLT3特異的CAR-T細胞の欠失がインビボで起こり得る。移入された細胞を欠失させる決定は、例えば、容認できないレベルの毒性が検出される場合等、移入された細胞に起因する、対象において検出される望ましくない効果から生じ得る。
【0229】
いくつかの実施形態において、患者に投与されると、細胞表面に本明細書に記載のFLT3特異的CARのいずれか1つを発現する遺伝子操作された免疫細胞は、患者の内在性FLT3を発現する細胞を減少させる、死滅させる、または溶解することができる。一実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARのいずれか1つを発現する遺伝子操作された免疫細胞による、FLT3を発現する内在性細胞またはFLT3を発現する細胞株の細胞の縮小または溶解の割合は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上である。一実施形態において、本明細書に記載のFLT3特異的CARのいずれか1つを発現する遺伝子操作された免疫細胞による、FLT3を発現する内在性細胞またはFLT3を発現する細胞株の細胞の縮小または溶解の割合は、約5%~約95%、約10%~約95%、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約25%~約75%、または約25%~約60%である。一実施形態において、内在性FLT3を発現する細胞は、内在性FLT3を発現する骨髄細胞である。
【0230】
一実施形態において、細胞表面膜に本発明のFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞による、標的細胞、例えば、FLT3を発現する細胞株の縮小または溶解の割合は、実施例2eに開示されるアッセイを用いて測定することができる。
【0231】
CAR陽性免疫細胞を選別するための方法
一態様において、免疫細胞集団のインビトロ選別のための方法が提供され、免疫細胞集団のサブセットは、本明細書に記載のモノクローナル抗体に特異的なエピトープを含むFLT3特異的CARのいずれか1つを発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む。方法は、免疫細胞集団をエピトープに特異的なモノクローナル抗体と接触させることと、モノクローナル抗体に結合する免疫細胞を選択して、FLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞が濃縮された細胞集団を得ることと、を含む。
【0232】
いくつかの実施形態において、上記エピトープに特異的な上記モノクローナル抗体は、任意選択的にフルオロフォアにコンジュゲートされる。この実施形態において、モノクローナル抗体に結合する細胞を選択するステップは、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって行われ得る。いくつかの実施形態において、上記エピトープに特異的な上記モノクローナル抗体は、任意選択的に磁器粒子にコンジュゲートされる。この実施形態において、モノクローナル抗体に結合する細胞を選択するステップは、磁気活性化細胞選別(MACS)によって行われ得る。
【0233】
いくつかの実施形態において、CARの細胞外結合ドメインは、配列番号262のmAb特異的エピトープを含む。いくつかの実施形態において、CARの細胞外結合ドメインは、配列番号262のmAb特異的エピトープを含み、免疫細胞集団を接触させるために使用される抗体はQBEND-10である。
【0234】
いくつかの実施形態において、CARの細胞外結合ドメインは、配列番号229のmAb特異的エピトープを含む。いくつかの実施形態において、CARの細胞外結合ドメインは、配列番号229のmAb特異的エピトープを含み、免疫細胞集団を接触させるために使用される抗体はリツキシマブである。
【0235】
いくつかの実施形態において、上述の免疫細胞のインビトロ選別のための方法を用いて得られるFLT3 CAR発現免疫細胞の集団は、FLT3 CAR発現免疫細胞の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%を含む。いくつかの実施形態において、上述のCAR発現免疫細胞のインビトロ選別のための方法を用いて得られるFLT3 CAR発現免疫細胞の集団は、FLT3 CAR発現免疫細胞の少なくとも85%を含む。
【0236】
いくつかの実施形態において、インビトロ選別法に使用されるmAbは、当業者によって日常的に実現されるようなカラムまたはビーズ等の支持体に先に結合される。いくつかの実施形態において、CARを発現する免疫細胞はT細胞である。
【0237】
本発明によれば、レシピエントに投与される細胞は、起源集団からインビトロで濃縮され得る。起源集団を増殖させる方法は当該技術分野において周知であり、当業者に周知の密度遠心分離、免疫磁気ビーズ精製、アフィニティクロマトグラフィ、および蛍光活性化細胞選別の組み合わせを用いた、CD34抗原等の抗原を発現する細胞の選択を含み得る。
【0238】
フローサイトメトリーは、当該技術分野において広く使用されており、細胞集団内の特定の細胞型を選別および定量化するための、当業者に周知の方法である。一般に、フローサイトメトリーは、主として光学的手段によって、細胞の成分または構造的特性を定量化するための方法である。構造的特性を定量化することによって異なる細胞型を区別することができるため、フローサイトメトリーおよび細胞選別は、混合物中の異なる表現型の細胞を計数および選別するために使用することができる。
【0239】
フローサイトメトリー分析は、2つの基本的なステップを含む:1)選択された細胞型を、1つ以上の標識されたマーカーによって標識するステップ、および2)集団内の細胞の総数に対する標識された細胞の数を決定するステップ。
【0240】
細胞型を標識する主な方法は、標識された抗体を、特定の細胞型によって発現されるマーカーに結合させることによる。抗体は、蛍光化合物で直接標識されるか、または、例えば、一次抗体を認識する蛍光標識された二次抗体を使用して間接的にかのいずれかで標識される。
【0241】
いくつかの実施形態において、CARを発現する免疫細胞を選別するために用いられる方法は、磁気活性化細胞選別(MACS)である。
【0242】
磁気活性化細胞選別(MACS)は、超常磁性ナノ粒子およびカラムを使用することにより、表面抗原(CD分子)に応じて種々の細胞集団の分離のための方法である。それは、純粋な細胞集団を得るために少数の単純なステップを要する。単一細胞懸濁駅中の細胞を、ミクロビーズで磁気的に標識する。細胞に優しいコーティングで覆われた強磁性球から構成されるカラムに試料を適用し、細胞の迅速かつ穏やかな分離を可能にする。未標識の細胞は通過するが、磁気的に標識された細胞はカラム内に保持される。フロースルーは、未標識の細胞画分として収集することができる。短い洗浄ステップの後、カラムを分離機から取り外し、磁気的に標識された細胞をカラムから溶出させる。
【0243】
いくつかの実施形態において、CARを発現する免疫細胞を選別するための方法に使用されるmAbは、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ムロモナブ-CD3、トシツモマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、QBEND-10および/またはウステキヌマブから選択される。いくつかの実施形態において、上記mAbはリツキシマブである。別の実施形態において、上記mAbはQBEND-10である。
【0244】
治療用途
FLT3特異的CARを発現する、上述の方法によって得られる単離された細胞、またはそのような単離された細胞に由来する細胞株は、薬物として使用することができる。同様に、本明細書に開示されるFLT3特異的抗体も、薬物として使用することができる。いくつかの実施形態において、そのような薬物は、FLT3関連疾患または障害を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、FLT3関連疾患または障害は、FLT3を発現する悪性細胞、例えば、癌を含む。いくつかの実施形態において、癌は、リンパ腫または白血病等の造血系起源の癌である。いくつかの実施形態において、癌は、多発性骨髄腫 悪性形質細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞性白血病、形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(脚型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に生ずる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、または他の造血細胞関連癌である。例示的な実施形態において、癌はAMLである。例示的な実施形態において、癌はALLである。
【0245】
いくつかの実施形態において、本発明による単離された細胞、または単離された細胞に由来する細胞株、または抗体は、それを必要とする対象における癌を治療するための薬物の製造に使用することができる。
【0246】
また、対象を治療するための方法も本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、方法は、本発明の免疫細胞を、それを必要とする対象に提供することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、本発明の形質転換された免疫細胞を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、方法は、本発明の抗体を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0247】
いくつかの実施形態において、本発明のT細胞は、ロバストなインビボT細胞増殖を受けることができ、長期間にわたって存続し得る。
【0248】
本発明の治療方法は、寛解的、治癒的、または予防的であり得る。本発明の方法は、自己免疫療法の一部であるか、または同種免疫療法の処置の一部であるかのいずれかであり得る。本発明は、特に同種免疫療法に適している。標準的なプロトコルを用いて、ドナー由来のT細胞を非アロ反応性細胞に形質転換することができ、必要に応じて複製し、それによって1人または数人の対象に投与され得るCAR-T細胞を産生することができる。そのようなCAR-T細胞療法は、「既製の」治療製品として利用可能にすることができる。
【0249】
開示された方法を用いて使用され得る方法は、前の項に記載されている。治療は、例えば、癌と診断された対象を治療するために使用することができる。治療され得る癌として、例えば、限定されないが、上に列挙した癌のいずれかを含むBリンパ球に関与する癌が挙げられる。本発明のCARおよびCAR-T細胞で治療される癌の種類として、限定されないが、ある特定の白血病またはリンパ悪性腫瘍が挙げられる。成人腫瘍/癌および小児腫瘍/癌も含まれる。いくつかの実施形態において、治療は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光療法、および放射線療法からなる群から選択される癌に対する1つ以上の両方と組み合わせることができる。
【0250】
いくつかの実施形態において、治療は、免役抑制療法を受けている対象に施すことができる。実際に、本発明は概して、免疫抑制剤の受容体をコードする遺伝子の不活性化に起因して、少なくとも1つの免疫抑制剤に耐性を示すように作製された細胞または細胞集団に依存する。この態様において、免役抑制療法は、対象内での本発明によるT細胞の選択および増殖の助けとなるべきである。本発明による細胞または細胞集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、埋入または移植によるものを含む任意の都合のよい様式で実行され得る。本明細書に組成物は、対象に、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内に、静脈内もしくはリンパ管内注射によって、または腹腔内に投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。
【0251】
いくつかの実施形態において、細胞または細胞集団の投与は、例えば、体重1kg当たり約104~約109個の細胞(これらの範囲内の細胞数の全ての整数値を含む)の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、細胞または細胞集団の投与は、例えば、体重1kg当たり約105~106個の細胞(これらの範囲内の細胞数の全ての整数値を含む)の投与を含み得る。細胞または細胞集団は、1回以上の用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、上記有効量の細胞が単回用量として投与され得る。いくつかの実施形態において、上記有効量の細胞が、ある期間にわたって1回より多くの用量として投与され得る。投与のタイミングは、担当医師の判断の範囲内であり、対象の臨床状態に依存する。細胞または細胞集団は、血液バンクまたはドナー等の任意の起源から得ることができる。個々の必要性は異なるが、特定の疾患または状態のための所与の細胞型の有効量の最適な範囲の決定は、当該技術分野の範囲内である。有効量は、治療効果または予防効果を提供する量を意味する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康、および体重、ある場合には同時治療の種類、治療の頻度、ならびに所望される効果の性質に依存する。いくつかの実施形態において、有効量の細胞またはこれらの細胞を含む組成物は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態において、投与は静脈内投与であり得る。いくつかの実施形態において、投与は腫瘍内注射によって直接行われてもよい。
【0252】
本発明のいくつかの実施形態において、細胞は、限定されないが、モノクローナル抗体療法、CCR2アンタゴニスト(例えば、INC-8761)、抗ウイルス療法、シドホビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても知られる)等の薬剤を用いた治療、またはMS患者のためのナタリズマブ治療、または乾癬患者のためのエファリズマブ治療、またはPMLのための他の治療を含む、任意の数の関連する治療モダリティと併せて(例えば、その前に、それと同時に、またはその後に)対象に投与される。いくつかの実施形態において、FLT3特異的CAR-T細胞は、以下のうちの1つ以上と併せて対象に投与される:抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブペムブロリズマブ、もしくはPF-06801591)、抗PD-L1抗体(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、またはデュルバルマブ)、抗OX40抗体(例えば、PF-04518600)、抗4-1BB抗体(例えば、PF-05082566)、抗MCSF抗体(例えば、PD-0360324)、抗GITR抗体、および/または抗TIGIT抗体。いくつかの実施形態において、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含むFLT3特異的CARは、抗PD-L1抗体アベルマブと併せて対象に投与される。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸、およびFK506、抗体、またはCAMPATH等の他の免疫除去剤、抗CD3抗体もしくは他の抗体療法剤、サイトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および/または照射と組み合わせて使用されてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子誘導性のシグナル伝達にとって重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Henderson,Naya et al.1991;Liu,Albers et al.1992;Bierer,Hollander et al.1993)。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、ミドスタウリンおよびスニチニブ等の受容体チロシンキナーゼ阻害剤、ラパマイシンおよびエベロリムス等のmTOR阻害剤、ボリノスタット等のエピジェネティック修飾因子、ボルテゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、レナリドミド等の免疫調節剤、エリスモデギブおよびPF-04449913等のヘッジホッグ阻害剤、またはAG-120およびAG-221等のAG-120およびAG-221イソクエン酸脱水素酵素(IDH)阻害剤と組み合わせて使用されてもよい。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビン等の化学療法剤、体外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATH等の抗体のいずれかを用いたT細胞除去療法と併せて(例えば、その前に、それと同時に、またはその後に)対象に投与される。いくつかの実施形態において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサン等のB細胞除去療法の後に投与される。例えば、いくつかの実施形態において、対象は、高用量化学療法に続いて末梢血幹細胞移植を用いる標準的な治療を受けることができる。ある特定の実施形態において、移植後に、対象は、増殖した本発明の免疫細胞の注入を受ける。いくつかの実施形態において、増殖細胞は手術の前または後に投与される。
【0253】
いくつかの実施形態において、上記細胞を投与された対象からFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を枯渇させるための方法が提供される。枯渇は、阻害または排除によるものであり得る。
【0254】
一態様において、モノクローナル抗体に特異的なエピトープを含むFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を枯渇させるための方法は、上記遺伝子操作された免疫細胞をエピトープに特異的なモノクローナル抗体と接触させることを含む。
【0255】
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体に特異的なエピトープを含むFLT3特異的CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を投与された対象から枯渇させるための方法は、エピトープに特異的なモノクローナル抗体を対象に投与することを含む。これらの実施形態において、CARの細胞外ドメインに存在するエピトープに特異的なモノクローナル抗体の対象への投与は、遺伝子操作されたCAR発現免疫細胞の活性を対象から排除するまたは阻害する。一態様において、遺伝子操作されたCAR発現免疫細胞の枯渇は、FLT3を発現する細胞の内在性集団の回復を可能にする。
【0256】
一態様において、本発明は、モノクローナル抗体に特異的なエピトープを含むFLT3特異的CARを細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞を投与された対象において、内在性FLT3を発現する細胞の回復を促進するための方法に関し、方法は、エピトープに特異的なモノクローナル抗体を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、内在性FLT3を発現する細胞は、内在性FLT3を発現する骨髄細胞である。一態様において、「回復」という用語は、内在性FLT3を発現する細胞の数を増加させることを指す。内在性FLT3を発現する細胞の数は、FLT3 CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞による内在性FLT3を発現する細胞の増殖の増加に起因して、かつ/または内在性FLT3を発現する細胞の排除の低下に起因して増加し得る。いくつかの実施形態において、対象へのモノクローナル抗体の投与は、FLT3 CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を枯渇させ、対象における内在性FLT3を発現する細胞、例えば、内在性FLT3を発現する骨髄前駆細胞の数を増加させる。一実施形態において、対象へのモノクローナル抗体の投与は、内在性FLT3を発現する細胞の数を、モノクローナル抗体の投与前の内在性FLT3を発現する細胞の数と比較して少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%増加させる。
【0257】
一態様において、対象におけるFLT3媒介性の状態を治療するための方法が提供され、方法は、(a)1つ以上のモノクローナル抗体に特異的な1つ以上のエピトープを含むFLT3特異的CARを細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞を対象に投与することと、(b)後に、エピトープに特異的な1つ以上のモノクローナル抗体を対象に投与することにより、対象から遺伝子操作された免疫細胞を枯渇させることと、を含む。
【0258】
いくつかの実施形態において、CARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を枯渇させるための方法において使用されるmAbは、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ムロモナブ-CD3、トシツモマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、QBEND-10、ウステキヌマブ、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0259】
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体に特異的な上記エピトープ(mAb特異的エピトープ)は、CD20エピトープまたはミモトープ、例えば、配列番号229であり、エピトープに特異的なmAbはリツキシマブである。
【0260】
いくつかの実施形態において、対象にモノクローナル抗体を投与するステップは、対象にモノクローナル抗体を注入することを含む。いくつかの実施形態において、対象に投与されるエピトープ特異的mAbの量は、対象においてCARを発現する免疫細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を排除するのに十分である。
【0261】
いくつかの実施形態において、対象にモノクローナル抗体を投与するステップは、対象に375mg/m2のリツキシマブを1週間に1回または数回注入することを含む。
【0262】
いくつかの実施形態において、mAb特異的エピトープを含むCARを発現する免疫細胞(CAR発現免疫細胞)を、エピトープ特異的mAbを用いたCDCアッセイにおいて枯渇させる場合、生存するCAR発現免疫細胞の量は、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少する。
【0263】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬物は、CAR発現免疫細胞を枯渇させるために使用されるエピトープ特異的mAbにカップリングされる。モノクローナル抗体の標的化能力を細胞傷害性薬物の細胞死滅能と組み合わせることにより、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、薬物単独の使用と比較して、健常組織と疾患組織との間の高精度の識別を可能にする。いくつかのADCについて販売承認が得られた:それらを作成するための技術、具体的にはリンカーに関する技術は、以下の先行技術に豊富に提示されている(Payne,G.(2003)Cancer Cell 3:207-212;Trail et al(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:328-337;Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605-614;Niculescu-Duvaz and Springer(1997)Adv.Drug Del.Rev.26:151-172;米国特許第4,975,278号)。
【0264】
いくつかの実施形態において、注入されるエピトープ特異的mAbは、補体依存性細胞傷害性(CDC)を促進することができる分子と予めコンジュゲートされる。したがって、補体系は、生物から病原体を取り除く抗体の能力を補助するかまたは補完する。いくつかあるうちの1つによって刺激されると、細胞を死滅させる膜攻撃複合体の応答および活性化の大量の増幅として、活性化カスケードが誘発される。グリカン等の異なる分子がmAbをコンジュゲートするために用いられ得る[Courtois,A,Gac-Breton,S.,Berthou,C,Guezennec,J.,Bordron,A.and Boisset,C.(2012,Complement dependent cytotoxicity activity of therapeutic antibody fragments is acquired by immunogenic glycan coupling,Electronic Journal of Biotechnology ISSN:0717-3458;http://www.ejbiotechnology.info DOI:10.2225/voll5-issue5)。
【0265】
キット
本発明はまた、本発明の方法に使用するためのキットも提供する。本発明のキットは、本明細書に記載されるFLT3特異的CARをコードするポリヌクレオチド、FLT3特異的CARをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子操作された免疫細胞、またはFLT特異的抗体を含む1つ以上の容器、および本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従って使用するための指示書を含む。一般に、これらの指示書は、上述の治療的処置のための遺伝子操作された免疫細胞の投与の説明を含む。
【0266】
本明細書に記載される遺伝子操作された免疫細胞または抗体の使用に関する指示書は、一般に、目的の治療のための投与量、投与スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)または部分単位用量であり得る。本発明のキットにおいて供給される指示書は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上に書かれた指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光学式記憶ディスク上に保持された指示)も許容可能である。
【0267】
本発明のキットは、適切にパッケージングされている。適切なパッケージングは、限定されないが、バイアル、ビン、ジャー、可撓性パッケージング(例えば、密封されたマイラーバッグまたはプラスチックバッグ)等を含む。また、吸入器、鼻腔内投与デバイス(例えば、噴霧器)またはミニポンプ等の注入デバイス等の特定のデバイスと組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能な栓を有する静脈内輸液バッグまたはバイアルであってもよい)。容器もまた、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能な栓を有する静脈内輸液バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、FLT3特異的CARまたはFLT3特異的抗体である。容器はさらに、第2の薬学的活性薬剤を含んでもよい。
【0268】
キットは、任意選択的に、緩衝液等の追加成分および解釈情報を提供し得る。通常、キットは、容器と、容器上のまたは容器に関連付けられたラベルまたは添付文書(複数可)とを含む。
【0269】
以下の実施例は、例示目的のために提供されるに過ぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に示されかつ記載されるものに加えて、本発明の種々の修正が、前述の記載から当業者に明らかになり、かつ添付の特許請求の範囲の範疇内に属する。
【0270】
本発明の代表的な材料は、2017年6月1日に、American Type Culture Collection(10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110-2209,USA)において寄託された。ATCC受託番号PTA-124228を有するベクターP3E10-VLは、P3E10軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドであり、ATCC受託番号PTA-124227を有するベクターP3E10-VHは、P3E10重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。寄託は、「特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項およびその下位の規制」(ブダペスト条約)の下で行われた。これにより、寄託の日から30年間にわたり寄託物の生存培養の維持が保証される。寄託物は、ブダペスト条約の条項の下で、かつPfizer,Inc.とATCCとの間の合意を条件として、ATCCによって利用可能となり、これは関連米国特許の発行または任意の米国もしくは外国特許出願の公衆への公開がなされた場合、いずれか早い方に際して、公衆が寄託物の培養物の子孫を恒久的かつ無制限に利用可能であることを保証し、また米国特許商標庁長官が米国特許法第122条およびそれに準ずる長官規則(特に886OG638に関して米国特許規則1.14を含む)に従って資格があると決定した者が子孫を利用可能であることを保証する。
【0271】
本出願の譲受人は、寄託された材料の培養物が適切な条件下で培養されている時に、死滅するか、紛失するか、破壊された場合には、通知後直ちにその材料が別の同じ材料と交換されることに同意している。寄託された材料の利用可能性は、任意の政府当局によりその特許法に従って付与された権利に違反して本発明を実施することの許諾であると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0272】
実施例1:37℃でのヒトFLT3/FLT3抗体の相互作用の動態および親和性
本実施例は、37℃での種々の抗FLT3抗体の動態および親和性を決定する。全ての実験は、Biacore T200表面プラズモン共鳴バイオセンサー(GE Lifesciences、Piscataway NJ)で行われた。
【0273】
センサーチップの調製は、10mM HEPES、150mM NaCl、0.05%(v/v)Tween-20(pH7.4)の)ランニング緩衝液を用いて25℃で行われた。抗ヒトFcセンサーチップは、Biacore CM4センサーチップの全てのフローセルを400mM EDCおよび100mM NHSの1:1(v/v)混合物で7分間、10μL/分の流速で活性化することにより作製された。抗ヒトFc試薬(ヤギ抗ヒトIgG Fc、SouthernBiotechカタログ番号2081-01)を10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)中で30μg/mLに希釈し、7分間20μL/分で全てのフローセルに注入した。全てのフローセルを150mMホウ酸緩衝液(pH8.5)中の100mMエチレンジアミンで7分間10μL/分でブロックした。
【0274】
実験は、10mM HEPES、150mM NaCl、0.05%(v/v)Tween-20(pH7.4)、1mg/mL BSAのランニング緩衝液を用いて37℃で行われた。FLT3抗体を未希釈の上清から10μL/分の流速で1分間下流のフローセル(フローセル2、3および4)上に捕捉した。各フローセル上に異なる抗体を捕捉した。フローセル1は、参照表面として使用された。FLT3抗体の捕捉後、分析物(緩衝液、hFLT3)を30μL/分で全てのフローセルに2分間注入した。分析物注入後、解離を10分間モニタリングし、続いて75mMリン酸の1分間注入を3回行って全てのフローセルを再生させた。各捕捉FLT3抗体について以下の分析物注入を行った:緩衝液、11nM hFLT3、33nM hFLT3、100nM hFLT3および300nM hFLT3。二重参照の目的で各捕捉FLT3抗体の緩衝液サイクルを収集した(Myszka,D.G.Improving biosensor analysis.J.Mol.Recognit.12,279-284(1999)に記載されるような二重参照)。二重参照したセンサーグラムを、マストランスポート結合モデルを用いて単純な1:1のラングミュアに全体的に適合させた。
【0275】
試験した抗FLT3抗体の動態および親和性パラメータを表7に示す。表7に示される抗体は、同じ名称を有する表8に示されるCARと同じVHおよびVL領域を共有する。
【表7】
【0276】
実施例2:FLT3特異的CAR-T細胞の生成
a)プラスミド
下の表8に列挙される以下のコドン最適化されたFLT3 CAR配列を合成し、EcoRI(5’)およびMluI(3’)制限部位を使用してpLVX-EF1a-IRES-Puro(Clontech)等のレンチウイルスベクターにサブクローニングした(したがってIRES-Puroカセットを除去した)。
表8:例示的FLT3特異的CAR
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【0277】
いくつかの実験において、CARをコードする配列の前にはBFP(青色蛍光タンパク質)等の蛍光タンパク質をコードする配列があり、自己切断2Aペプチドをコードする配列によってそのような配列から分離されている。レンチウイルスは、psPAX2、HIV-1 gag-polパッケージングプラスミド、およびVSV-G発現プラスミドpMD2.Gを用いて産生された。
【0278】
b)T細胞活性化およびレンチウイルス形質導入
Pan T Cell単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から未処理のT細胞を単離し、ヒトCD2、CD3、およびCD28に対する抗体で3日間活性化した(T細胞活性化/増殖キット、Miltenyi Biotec)。レンチウイルスベクター(LV)は、6ウェルプレートにおいて、サブコンフルエントなHEK-293T/17(American Type Culture Collection(ATCC))細胞の一過性トランスフェクションによって産生された。端的に述べると、pLVX、psPAX2プラスミド、およびpMD2.Gプラスミドを、製造業者の説明に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、それぞれ4:3:1の比でトランスフェクトした。翌日、培地をT細胞培養培地(X-vivo-15培地中の5%ヒトAB血清(Lonza))と交換し、トランスフェクションの48時間後にLV上清を採取し、0.45μmシリンジフィルター(Millipore)を通して濾過した。活性化されたT細胞を、40ng/ml IL-2を含有するT細胞培養培地において0.25×106細胞/mLで播種し、等しい量の新鮮なLV上清を加えることによって形質導入した。以下のCAR構築物を含むLVをこれらの実験に使用した:P1A5、P1B4、P3A1、P3E10、P4C7、P4H11、P7H3、P9B5、P12B6、およびP14G2。細胞を37℃および5%CO2で3日間培養し、フローサイトメトリー分析に使用するか、または20ng/ml IL-2を含有する新鮮なT細胞培養培地において増殖させた。
【0279】
c)フローサイトメトリーによる形質導入効率の測定
異なるFLT3 CARレンチウイルス構築物の形質導入効率を決定するために、形質導入の72時間後にT細胞のフローサイトメトリー分析を行った。端的に述べると、前方散乱および側方散乱パラメータを用いて単一細胞にゲートをかけ、形質導入効率をBFP陽性細胞の割合として算出した。他の場合には、CAR分子中のCD20エピトープに結合する抗CD20抗体リツキシマブで染色した後、FITCコンジュゲート抗ヒトIgGで染色することによりCARを発現する細胞を検出した。
図1は、活性化T細胞が、様々な効率(30%~70%)の異なるFLT3 CAR構築物で効率的に形質導入されたことを示す。
【0280】
d)FLT3FLT3 CAR-T細胞は培養中に分化するが、高い割合のメモリーT細胞サブセットを維持する
培養中のCAR-T細胞における活性化マーカーCD25および4-1BB(CD137)の発現は、T細胞の疲弊およびエフェクターメモリー表現型への分化の増加と関連付けられている(Long et al.,2015)。この実験では、P1A5、P1B4、P3A1、P3E10、P4C7、P4H11、P7H3、P9B5、P12B6、およびP14G2 CARで形質導入されたT細胞を、刺激後10日目にCD25およびCD137抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。CD25および4-1BBに陽性のCAR-T細胞の割合によってT細胞活性化の程度を決定した非形質導入(NT)T細胞集団は、比較のために含まれる(
図2)。いくつかのFLT3FLT3 CAR(P1A5、P12B6およびP14G2)の発現は、「活性化された」状態と関連していたのに対し(
図2)、P9B5、P3E10、P4C7、およびP3A1を含む他のFLT3FLT3 CARの発現は、非形質導入細胞に匹敵する活性化マーカーのレベルをもたらした。(
図2)。より高いレベルの活性化マーカーの発現は、CAR-T細胞の分化の増加につながり、それは刺激後15日目にそれらの細胞表面上のCD62LおよびCD45ROの発現を測定することにより評価することができる。この実験では、CAR-T細胞を特異的抗体を用いてそのようなマーカーで染色し、増加する分化の程度により4つの異なるカテゴリーまたはサブセットに分類した:1)CD62L
HIGH CD45RO
LOW幹細胞メモリー(Tscm)細胞;2)CD62L
HIGH CD45RO
HIGH中枢メモリー(Tcm)細胞;CD62L
LOW CD45RO
HIGHエフェクターメモリー(Tem)細胞;およびCD62L
LOW CD45RO
LOWエフェクター(Teff)細胞。
図3は、刺激後15日目のP9B5 CAR-T細胞(低分化)およびP14G2 CAR-T細胞(高分化)の代表的なFACSプロット、ならびに全ての異なるFLT3FLT3 CAR-T細胞のT細胞サブセット組成物を示す。培養が終了するまでには、「活性化された」表現型を呈するCAR-T細胞も、より分化した表現型(すなわち、より高い割合のTem細胞およびより低い割合のTscm細胞)を示した(
図3)。具体的には、P9B5、P3A1、P7H3、およびP3E10 FLT3 CARの発現は、高い割合の幹細胞メモリーおよび中枢メモリー細胞と関連しており、それはALLおよびCLL対象における残留性および抗腫瘍効果の増加と相関されている(Xu et al.,Blood.2014;123(24):3750-3759)。
【0281】
e)インビトロ増殖および長期死滅活性アッセイ
同族抗原を発現する標的細胞を増殖および溶解させるCAR-T細胞の能力は、それらのインビトロでの活性を評価するための有効な手段である。標的細胞の生存を発光によりモニタリングするために、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するようFLT3発現Molm13細胞を安定に形質導入した。これらのLuc+標的細胞を、次いでFLT3 CAR-T細胞とともにインキュベートし、CAR-T細胞の死滅活性および増殖を、それぞれ、発光および生存細胞計数により測定した。エフェクター細胞(CAR-T細胞)にストレスをかけるように設計された、よりストリンジェントなアッセイでは、元の培養物に新しい標的細胞を定期的に加え、培養終了時に発光によりCAR-T細胞の長期死滅活性を決定した(
図4)。幹細胞メモリーおよび中枢メモリーT細胞のより高い増殖能と一致して、P9B5、P3A1、P7H3、およびP3E10 CAR-T細胞集団は、インビトロでより高い標的依存性増殖および長期細胞傷害活性を示したのに対し、P12B6およびP14G2等の分化の程度がより高いCAR-T細胞は、標的細胞の存在下では十分に増殖せず、低い死滅活性を示した。
【0282】
f)同所性マウスアッセイにおけるFLT3特異的CAR-T細胞の活性
本実施例は、Eol1同所性モデルを用いて、FLT3 CAR-T細胞によるAMLの治療を示す。同所性モデルにおいて、ルシフェラーゼおよびGFPを発現するEol1細胞を用いてFLT3 CAR-T細胞のインビボ有効性試験を行った。30万個のEol1 Luc2AGFP細胞を、尾静脈を介して6~8週齢の雌CB17/SCID動物に静脈内注射した。D-ルシフェリン(Regis Technologies、Morton Grove,IL)(15mg/mLで動物1匹当たり200uL)の腹腔内注射に続くイ ソフルランによる麻酔、およびその後の全身生物発光イメージング(BLI)により、腫瘍量のモニタリングが可能になる。腫瘍細胞によって発現されたルシフェラーゼとルシフェリンとの相互作用によって放出された生物発光シグナルを、IVIS Spectrum CT(Perkin Elmer、MA)を使用したイメージングにより取得し、Living Image 4.4(Caliper Life Sciences、Alameda,CA)を使用して全光束(光子/秒)として定量化した。
【0283】
全光束が全ての動物で平均30E6に達したとき(腫瘍移植後10日目)、動物を3つの群に無作為化した。各群に以下の細胞のうちの1つを投与した:1)対照として使用された非形質導入T細胞、2)P3E10を発現するFLT3 CAR-T細胞(「P3E10 V1」)、または3)P3A1を発現するFLT3 CAR-T細胞(「P3A1 v1」)。細胞1~3は全てTCRαを有する。FLT3 CAR-T細胞を上記実施例に記載されるように調製した。FLT3 CAR構築物P3E10およびP3A1を上の表8に示す。単回用量の250万個または500万個の対照(NT)またはFLT3 CAR-T(P3E10もしくはP3A1)細胞を、ボーラス尾静脈注射によって投与した。Eol1同所性モデルのエンドポイントである全体重の15%超が減少したときに動物を屠殺した。
【0284】
試験の結果を
図5に要約する。単回用量の500万個のP3E10もしくはP3A1 FLT3 CAR-T細胞または250万個のP3E10 FLT3 CAR-T細胞では、腫瘍移植後13~43日目から陰性対照と比較してより低い全光束が得られたしたがって、FLT3 CAR-T細胞による治療は、陰性対照と比較して腫瘍の進行を阻害した。
【0285】
これらの結果は、FLT3 CAR-T細胞が腫瘍の進行を阻害するのに効果的であることを実証するものである。
【0286】
実施例3:CD20エピトープを発現するFLT3特異的CAR T細胞の枯渇
a)CD20エピトープを発現するFLT3特異的CAR T細胞は、リツキシマブの存在下において補体依存性細胞傷害性(CDC)に対して感受性である。
抗CD20抗体の存在下におけるFLT3特異的CAR T細胞の補体に対する感受性を、CDCアッセイを用いてインビトロで評価した。この実験のために、細胞外ドメインにCD20エピトープを含有するFLT3 CARの発現のためのレンチウイルス構築物で形質導入したT細胞を、リツキシマブ(100μg/mL)の存在下または非存在下で25%の補体(AbDセロテック)と混合し、37℃および5%CO
2で4時間インキュベートした。ビオチン化FLT3タンパク質を用いたフローサイトメトリー分析によりFLT3 CAR-T細胞の枯渇を決定した。
図6は、FLT3 CARおよびCD20エピトープを発現する細胞が、抗体および補体の存在下で効率的に枯渇されたこと、一方で、CD20エピトープを発現しない対照FLT3特異的CAR T細胞には最小限の影響しか見られなかったことを示す。
【0287】
これらの結果は、CD20エピトープを発現するFLT3特異的CAR-T細胞が、リツキシマブおよび補体の存在下においてインビトロで枯渇され得ることを実証するものである。
【0288】
b)リツキシマブ投与後のFLT3 CAR T細胞の枯渇は、NSGマウスにおけるFLT3を発現する骨髄前駆細胞の回復を可能にする。
CD20エピトープを発現するFLT3特異的CAR T細胞の枯渇を媒介し、骨髄の回復を促進する抗CD20抗体リツキシマブの能力をマウスにおいて試験した。この実験では、骨髄前駆細胞(α-マウスFLT3 CAR T)の表面上のマウスFLT3タンパク質に結合することができ、かつリツキシマブによって認識されるCD20エピトープを含むFLT3 CAR、またはマウスFLT3タンパク質への結合は無視できるほど低い対照CARのいずれかを発現するT細胞でマウスを処理した。骨髄細胞のフローサイトメトリー分析を用いて、対照CAR T細胞を投与したマウスまたは未処理のマウスと比較して前駆細胞の減少として認められる、FLT3を発現する造血前駆細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害活性を実証した(
図7、パネルB)。CAR T細胞死滅活性が確認された後、連続4日間、マウスにリツキシマブを投与し、13日目にフローサイトメトリーによって循環する残存CAR T細胞を数えた。
図7、パネルCは、これらのマウスの血液中のFLT3 CAR T細胞が、リツキシマブを投与されなかった対照群と比較して枯渇されたことを示す。最後に、骨髄細胞のフローサイトメトリー分析により、リツキシマブ(20日目)を投与したマウスのみが骨髄細胞の回復を示したことを実証した(
図7、パネルD)。
【0289】
この実験は、CD20エピトープを発現するFLT3 CAR T細胞のリツキシマブ依存性枯渇が骨髄等のFLT3発現組織に対する損傷を軽減し、残存前駆細胞からの迅速な骨髄の回復を可能にすることを実証するものである。
【0290】
種々の用途、方法、キット、および組成物を参照して開示した教示を説明してきたが、本明細書の教示および後述の特許請求される発明から逸脱することなく、種々の変更および修正が行われ得ることを理解されたい。前述の実施例は、開示される教示をより良好に例示するために提供されるものであって、本明細書に提示される教示の範囲を限定することを意図するものではない。本教示をこれらの例示的な実施形態の観点から説明してきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数の変形および修正が過度の実験を用いることなく可能であることを容易に理解するであろう。全てのそのような変形および修正は、本教示の範囲内である。
【0291】
特許、特許出願、論文、教科書等を含む本明細書に引用される全ての参考文献、およびそれらに引用されている参考文献は、それらが既に組み込まれていない程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。限定されないが、定義された用語、用語の使用法、記載された技法を含む、組み込まれた文献および同様の材料のうちの1つ以上が本出願と異なるまたは矛盾する事象では、本出願が支配する。
【0292】
前述の説明および実施例は、本発明のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図されるベストモードを記載するしかしながら、前述の記載が文面上いかに詳細であろうとも、本発明は、多くの様式で実施することができ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることを理解されたい。
【配列表】