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特許7317724液注入器システムの容積補償システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】液注入器システムの容積補償システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20230724BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20230724BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20230724BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/145 500
A61M5/168 506
A61M5/168 514
A61M5/168 516
A61M5/172
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019571308
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018048294
(87)【国際公開番号】W WO2019046267
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】62/552,430
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マクダーモット
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スポーン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・バローン
(72)【発明者】
【氏名】チェルシー・マーシュ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0222768(US,A1)
【文献】特表2007-526784(JP,A)
【文献】特開2008-229370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/168
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個または複数の液リザーバを用いて注入処置中に液注入器システムによって輸液される液の容積を補正する方法であって、前記方法は、
前記液注入器システムの、少なくとも1つの前記液リザーバ内の第1の液の液容積を決定するステップと、
第1のプログラム設定された容積の前記第1の液が注入される圧力を決定するステップと、
前記少なくとも1つの液リザーバ、前記少なくとも1つの液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素について式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップであって、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
C1は前記少なくとも1つの液リザーバの前記システム容積コンプライアンスであり、A1は前記少なくとも1つの液リザーバの位置スケーラであり、V1は前記少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積であり、B1は前記少なくとも1つの液リザーバの圧力定数であり、P1は前記少なくとも1つの液リザーバ内の液の圧力であり、O1は前記少なくとも1つの液リザーバの補償係数である、ステップと、
式(2)にしたがって前記少なくとも1つの液リザーバ内の前記液の容積コンプライアンス係数を予測するステップであって、
VC1=PV1+C1(2)
VC1は前記少なくとも1つの液リザーバ内の前記液の前記容積コンプライアンス係数であり、PV1は前記第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は前記少なくとも1つの液リザーバの前記システム容積コンプライアンスである、ステップと、
(i)前記少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい付加分の液容積の輸液をもたらすこと、(ii)前記少なくとも1つの液リザーバ内で前記駆動部材が移動する前記距離を少なめに駆動し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい量だけ少ない前記液容積の輸液をもたらすこと、(iii)前記少なくとも1つの液リザーバ内の前記液の輸液時間を延長し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい付加分の液容積の輸液をもたらすこと、および(iv)前記少なくとも1つの液リザーバ内の前記液の前記輸液時間を短縮し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい量だけ少ない前記液容積の輸液をもたらすことのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように前記容積コンプライアンス係数を補償するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの液リザーバは、前記第1の液が入る少なくとも1つの第1の液リザーバと、第2の液が入る少なくとも1つの第2の液リザーバとを備えており、前記方法は、
前記液注入器システムの、前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内の前記第2の液の液容積を決定するステップと、
プログラム設定された容積の前記第2の液が注入される第2の圧力を決定するステップと、
前記少なくとも1つの第2の液リザーバ、前記第2の液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素について式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップであって、
C2=A2・V2+B2・P2+O2(1)
C2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバの前記システム容積コンプライアンスであり、A2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバの位置スケーラであり、V2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバの利用可能な容積であり、B2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバの圧力定数であり、P2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の圧力であり、O2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバの補償係数である、ステップと、
式(2)にしたがって前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内の前記液の容積コンプライアンス係数を予測するステップであって、
VC2=PV2+C2(2)
VC2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバの前記容積コンプライアンス係数であり、PV2前記少なくとも1つの第2の液リザーバのプログラム設定された容積であり、C2は前記少なくとも1つの第2の液リザーバのシステム容積コンプライアンスである、ステップと、
(i)前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい付加分の液容積の輸液をもたらすこと、(ii)前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内で前記駆動部材が移動する距離を少なめに駆動し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい量だけ少ない前記液容積の輸液をもたらすこと、(iii)前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内の前記第2の液の輸液時間を延長し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい付加分の液容積の輸液をもたらすこと、および(iv)前記少なくとも1つの第2の液リザーバ内の前記第2の液の前記輸液時間を短縮し、前記容積コンプライアンス係数に略等しい量だけ少ない前記液容積の輸液をもたらすことのうちの1つにより、前記プログラム設定された液容積の前記第2の液を輸液するように前記少なくとも1つの第2の液リザーバの前記容積コンプライアンス係数を補償するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの液リザーバは、前記第1の液が入る少なくとも1つの第1の液リザーバと、前記第2の液が入る前記少なくとも1つの第2の液リザーバと、第3の液が入る少なくとも1つの第3の液リザーバとを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液リザーバに、少なくとも、前記プログラム設定された容積に対応する容積の液に加えて式(1)による前記システム容積コンプライアンスに相当する量の液が入っているか否かを判断することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの液リザーバ、前記少なくとも1つの第2の液リザーバおよび前記少なくとも1つの第3の液リザーバは、シリンジ、ローリングダイアフラムシリンジ、蠕動ポンプおよび圧縮可能なバッグからなる群から個別に選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの液リザーバ、前記少なくとも1つの第2の液リザーバおよび前記少なくとも1つの第3の液リザーバのうちの少なくとも1つはシリンジである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記シリンジは、前記駆動部材に動作可能に接続されるプランジャを備え、前記駆動部材は、直線作動ピストンおよびモータ駆動ピストンから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の液リザーバ、前記少なくとも1つの第2の液リザーバおよび前記少なくとも1つの第3の液リザーバのうちの少なくとも1つはローリングダイアフラムシリンジである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの液リザーバの前記容積コンプライアンス係数を補償するステップは、
前記少なくとも1つの液リザーバ内で前記駆動部材が移動する前記距離を多めに駆動するステップと、
前記容積コンプライアンス係数に相当する付加容積の前記第1の液を注入するステップと
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
付加分の容積の前記第1の液を注入した後に前記少なくとも1つの液リザーバを流体的に隔離するようにバルブを閉鎖するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの液リザーバの前記容積コンプライアンス係数を補償するステップは、前記少なくとも1つの液リザーバ内の前記第1の液の輸液時間を延長するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の液の前記輸液時間を延長するステップは、前記容積コンプライアンス係数に相当する付加分の容積の前記第1の液を輸液するのに十分な量だけ前記輸液時間を延長するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの液リザーバから輸液されている液の補正された容積に対応する値をユーザに報告するステップであって、前記補正された容積は、前記プログラム設定された容積および前記システム容積コンプライアンスを考慮に入れた容積である、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
輸液システムであって、
液注入器と、
第1の液が入るように構成されている少なくとも1つの第1の液リザーバと、
前記少なくとも1つの第1の液リザーバから前記第1の液を押し出すように構成されている少なくとも1つの第1の駆動部材と、
前記少なくとも1つの第1の駆動部材と操作可能に通信するコントローラであって、前記コントローラは、指示を含むコンピュータ可読メモリを備え、この指示は、前記コントローラによって実行されるとき、
前記液注入器システムの、前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の液容積を決定することと、
第1のプログラム設定された容積の前記第1の液が注入される圧力を決定することと、
前記少なくとも1つの第1の液リザーバ、前記少なくとも1つの第1の液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素について式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定することであって、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
C1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバの前記システム容積コンプライアンスであり、A1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバの位置スケーラであり、V1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバの利用可能な容積であり、B1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバの圧力定数であり、P1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の圧力であり、O1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバの補償係数である、決定することと、
式(2)にしたがって前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の容積コンプライアンス係数を予測することであって、
VC1=PV1+C1(2)
VC1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の前記容積コンプライアンス係数であり、PV1は前記第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は前記少なくとも1つの第1の液リザーバの前記システム容積コンプライアンスである、予測することと、
前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内で前記少なくとも1つの第1の駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内で前記少なくとも1つの第1の駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の輸液時間を延長すること、および前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の前記輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように前記容積コンプライアンス係数を補償することと
を前記コントローラに行わせる、コントローラと
を備える輸液システム。
【請求項15】
前記コンピュータ可読メモリはさらなる指示を含んでおり、このさらなる指示は、前記コントローラによって実行されるとき、前記容積コンプライアンス係数を補償することを前記コントローラに行わせ、すなわち、
前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内で前記駆動部材が移動する前記距離を多めに駆動することと、
前記容積コンプライアンス係数に相当する付加容積の前記第1の液を注入することと
を前記コントローラに行わせる、請求項14に記載の輸液システム。
【請求項16】
前記コンピュータ可読メモリは指示を含んでおり、この指示は、前記コントローラによって実行されるとき、前記容積コンプライアンス係数を補償することを前記コントローラに行わせ、すなわち、
前記容積コンプライアンス係数に相当する前記第1の液の付加分の容積を輸液するのに十分な量だけ前記少なくとも1つの第1の液リザーバ内の前記第1の液の前記輸液時間を延長すること
を前記コントローラに行わせる、請求項14に記載の輸液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の参照
本出願は、発明の名称が「液注入器システムの容積補償システムおよび方法」であり、出願日が2017年8月31日である米国仮出願第62/552,430号の優先権を主張する。この仮出願の開示の全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、医療用液注入器などの液注入器を較正するシステムおよび方法に関し、さらに、注入処置中に液の輸液超過や輸液不足を補償するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの医療診断および治療処置では、医師などの施術者が患者に単一または複数の医療用液を注入する。近年、造影剤溶液(多くの場合に単に「コントラスト」と称する)、生理食塩水等のフラッシング剤およびその他医療用液などの液の加圧注入用の注入器作動型シリンジおよび液注入器を有する多くの輸液システムが、血管造影、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波、磁気共鳴イメージング(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)およびその他画像検査などの処置での使用向けに開発されている。大まかに言えば、これらの輸液システムは、予め設定された量の液を所望の流量で輸液するように設計されている。
【0004】
患者に輸液される液の実際の流量(すなわち輸液容積)は、所望の流量(すなわち所望の容積)に可能な限り近くなることを目標とする。ただし、輸液システムの実際のパフォーマンスは、輸液システムのインピーダンス、コンプライアンスおよびキャパシタンス全体に起因する多くの因子に応じる。いくつかの輸液処置では、輸液システムのインピーダンス、コンプライアンスおよびキャパシタンスにより、所望の流量(すなわち所望の容積)を基点として液流量超過や液流量不足(すなわち容積超過輸液や容積不足輸液)が生じる場合がある。
【0005】
結論を示すと、既存の手法では、システムのインピーダンス、コンプライアンスおよび/またはキャパシタンスに起因する液の輸液不足や輸液超過に対応することができない。その結果、最適ボーラス輸注量よりも少なくなるおそれがあり、かつ/または輸液システムの動作後に比較的大量の液が無駄になる可能性があり、かつ/または患者に輸液される液が不足する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本技術では、液注入器の較正を改善して、所望の容積の液を所望の流量で患者により確実に輸液する必要がある。液注入器を較正する改良システムおよび方法と、輸液システムの実行量の特性を評価して、液流量および輸液された容積の点で所望の実行量を実際の実行量に相関させる改良システムおよび方法とがさらに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの例では、注入処置時に患者に輸液される液の容積を較正する改良システムおよび方法が開示されている。本開示に係る実施形態では、インピーダンス、コンプライアンスおよび/またはキャパシタンスに起因する患者に輸液される容積の不正確さを補正する方法が開示されている。本システムおよび方法により輸液容積の誤差の原因に対処する。いくつかの実施形態では、注入プロトコール中に患者から加圧液充填シリンジを隔離する栓またはその他遮断特徴を備える液注入器に本システムおよび方法を適用してもよい。
【0008】
本開示に係る実施形態では、注入器システムのインピーダンス、コンプライアンスおよび/またはキャパシタンス(注入器構成要素のもの、使い捨て構成要素のもの、シリンジのものなど)に起因する誤差の原因を考慮してこれに基づいて輸液超過容積または輸液不足容積を予測するシステムおよび方法が提供される。
【0009】
第1の実施形態に係れば、本開示では、1個または複数の液リザーバを用いて注入処置中に液注入器システムによって輸液される液の容積を補正する方法を提供する。この方法は、液注入器システムの、少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の液容積を決定するステップと、第1のプログラム設定された容積の第1の液が注入される圧力を決定するステップと、少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素のうちの少なくとも1つについて式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップと、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
式(2)にしたがって少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測するステップと、
VC1=PV1+C1(2)
少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように容積コンプライアンス係数を補償するステップとを含んでもよい。式(1)を参照して、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A1は少なくとも1つの液リザーバの位置スケーラであり、V1は少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積であり、B1は少なくとも1つの液リザーバの圧力定数であり、P1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の圧力であり、O1は少なくとも1つの液リザーバの補償係数である。式(2)を参照して、VC1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数であり、PV1は第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスである。
【0010】
特定の実施形態に係れば、式(1)のシステムコンプライアンス容積は以下の式(3)にしたがって決定され、
z-1=c・y0.5+b/x0.5+a(3)
zはシステム容積コンプライアンス(C)であり、cは位置スケーラ(A)であり、yは少なくとも1つの液リザーバ(V1)の利用可能な容積であり、bは圧力定数(B)であり、xは少なくとも1つの液リザーバを用いる場合の液の圧力(P1)であり、aは補償係数(O)である。特定の実施形態では、aは0.112~0.115の範囲の値を持ち、bは10.35~10.45の範囲の値を持ち、cは-0.01465~-0.01495の範囲の値を持つ。特定の実施形態では、c=-0.014863432、b=10.39086かつa=0.11422056である。
【0011】
本開示に係る例では、開示されている方法をメモリに記憶し、プロセッサによって制御し、注入プロトコールが開始される毎に自動的に実行してもよい。他の例に係れば、ユーザが促すときにこの方法を実行してもよい。
【0012】
別の実施形態に係れば、本開示では、本出願で説明されている様々な方法のいずれかを実行することができる輸液システムを提供する。いくつかの実施形態では、輸液システムは、液注入器と、第1の液が入るように構成されている少なくとも1つの第1の液リザーバと、少なくとも1つの第1の液リザーバから液を押し出すように構成されている少なくとも1つの第1の駆動部材と、少なくとも1つの第1の駆動部材と操作可能に通信するコントローラとを備える。
【0013】
様々な実施形態におけるコントローラは、指示を含むコンピュータ可読メモリを備え、この指示は、コントローラによって実行されるとき、液注入器システムの、少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の液容積を決定することと、第1のプログラム設定された容積の第1の液が注入される圧力を決定することと、少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素のうちの少なくとも1つについて式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定することであって、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A1は少なくとも1つの液リザーバの位置スケーラであり、V1は少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積であり、B1は少なくとも1つの液リザーバの圧力定数であり、P1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の圧力であり、O1は少なくとも1つの液リザーバの補償係数である、決定することと、式(2)にしたがって少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測することであって、
VC1=PV1+C1(2)
VC1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数であり、PV1は第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスである、予測することと、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように容積コンプライアンス係数を補償することとをコントローラに行わせる。
【0014】
本開示に係れば、1個または複数のシリンジに液を充填したりこのシリンジから液を吐出したりする様々な時点でキャパシタンスチェックを実行してもよい。キャパシタンスのチェックすなわち測定をリアルタイムで、注入毎に行ったり注入の中の選択した時間に行ったりして、注入プロトコール中に正確な液容積を確実に輸液してもよい。
【0015】
本開示に係るシステムおよび方法の例を用いて、栓が閉鎖された後の、能動制御部を有する注入器システムに閉じ込められた液の容積を決定してもよい。
【0016】
ここで説明されている容積の不正確さ、すなわち、液注入器および/または医療用液のインピーダンス、コンプライアンスやキャパシタンス特性による輸液不足は、図5を参照して説明されているような「閉鎖」システム、すなわち能動制御部を有するシステムに一般的に関連する状態であると解するものとする。したがって、このような注入器システムにはここで説明されている補正(その例が図9および図10A図10Dのものに関連して説明されている)を特に適用可能である。
【0017】
液注入器の注入器位置較正のためのシステムおよび方法の様々な態様が番号を付した以下の項の1項以上に開示されている。
【0018】
第1項.1個または複数の液リザーバを用いて注入処置中に液注入器システムによって輸液される液の容積を補正する方法であって、液注入器システムの、少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の液容積を決定するステップと、第1のプログラム設定された容積の第1の液が注入される圧力を決定するステップと、少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素のうちの少なくとも1つについて式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップであって、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A1は少なくとも1つの液リザーバの位置スケーラであり、V1は少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積であり、B1は少なくとも1つの液リザーバの圧力定数であり、P1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の圧力であり、O1は少なくとも1つの液リザーバの補償係数である、ステップと、式(2)にしたがって少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測するステップであって、
VC1=PV1+C1(2)
VC1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数であり、PV1は第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスである、ステップと、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように容積コンプライアンス係数を補償するステップとを含む方法。
【0019】
第2項.少なくとも1つの液リザーバは、第1の液が入る少なくとも1つの第1の液リザーバと、第2の液が入る少なくとも1つの第2の液リザーバとを備えており、方法は、液注入器システムの、少なくとも1つの第2の液リザーバ内の第2の液の液容積を決定するステップと、プログラム設定された容積の第2の液が注入される第2の圧力を決定するステップと、少なくとも1つの第2の液リザーバ、第2のリザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素について式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップであって、
C2=A2・V2+B2・P2+O2(1)
C2は少なくとも1つの第2の液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A2は少なくとも1つの第2の液リザーバの位置スケーラであり、V2は少なくとも1つの第2の液リザーバの利用可能な容積であり、B2は少なくとも1つの第2の液リザーバの圧力定数であり、P2は少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の圧力であり、O2は少なくとも1つの第2の液リザーバの補償係数である、ステップと、式(2)にしたがって少なくとも1つの第2のリザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測するステップであって、
VC2=PV2+C2(2)
VC2は少なくとも1つの第2の液リザーバの容積コンプライアンス係数であり、PV2はプログラム設定された容積(少なくとも1つの第2の液リザーバ)であり、C2は少なくとも1つの第2の液リザーバのシステム容積コンプライアンスである、ステップと、少なくとも1つの第2の液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの第2の液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積の第2の液を輸液するように少なくとも1つの第2の液リザーバの容積コンプライアンス係数を補償するステップとをさらに備える、第1項に記載の方法。
【0020】
第3項.少なくとも1つの液リザーバは、第1の液が入る少なくとも1つの第1の液リザーバと、第2の液が入る少なくとも1つの第2の液リザーバと、第3の液が入る少なくとも1つの第3の液リザーバとを備える、第1項または第2項に記載の方法。
【0021】
第4項.少なくとも1つの液リザーバに、少なくとも、プログラム設定された容積に対応する容積の液に加えて式(1)によるシステム容積コンプライアンスに相当する量の液が入っているか否かを判断するステップをさらに備える、第1項から第3項のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
第5項.少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの第2の液リザーバおよび少なくとも1つの第3の液リザーバは、シリンジ、ローリングダイアフラムシリンジ、蠕動ポンプおよび圧縮可能なバッグからなる群から個別に選択される、第1項から第4項のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
第6項.少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの第2の液リザーバおよび少なくとも1つの第3の液リザーバのうちの少なくとも1つはシリンジである、第1項から第4項のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
第7項.シリンジは、直線作動ピストンおよびモータ駆動ピストンから選択される駆動部材に動作可能に接続されるプランジャを備える、第6項に記載の方法。
【0025】
第8項.少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの第2の液リザーバおよび少なくとも1つの第3の液リザーバのうちの少なくとも1つはローリングダイアフラムシリンジである、第1項から第4項のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
第9項.ローリングダイアフラムシリンジの近位端は、直線作動ピストンおよびモータ駆動ピストンから選択される駆動部材に動作可能に接続される、第8項に記載の方法。
【0027】
第10項.式(1)のシステムコンプライアンス容積は以下の式(3)にしたがって決定され、
z-1=c・y0.5+b/x0.5+a(3)
zはシステム容積コンプライアンス(C)であり、cは位置スケーラ(A)であり、yは少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積(V1)であり、bは圧力定数(B)であり、xは少なくとも1つの液リザーバを用いる場合の液の圧力(P1)であり、aは補償係数(O)である、第6項から第9項のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
第11項.aは0.112~0.115の範囲の値を持ち、bは10.35~10.45の範囲の値を持ち、cは-0.01465~-0.01495の範囲の値を持つ、第10項に記載の方法。
【0029】
第12項.少なくとも1つの液リザーバの容積コンプライアンス係数を補償するステップは、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動するステップと、容積コンプライアンス係数に相当する付加容積の第1の液を注入するステップとを含む、第1項から第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
第13項.付加分の容積の第1の液を注入した後に患者から少なくとも1つの液リザーバを流体的に隔離するようにバルブを閉鎖するステップをさらに備える、第12項に記載の方法。
【0031】
第14項.少なくとも1つの液リザーバの容積コンプライアンス係数を補償するステップは、少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の輸液時間を延長するステップを含む、第1項から第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
第15項.第1の液の輸液時間を延長するステップは、容積コンプライアンス係数に相当する付加分の容積の第1の液を輸液するのに十分な量だけ輸液時間を延長するステップを含む、第14項に記載の方法。
【0033】
第16項.少なくとも1つの液リザーバから患者に輸液されている液の補正された容積に対応する値をユーザに報告するステップであって、補正された容積は、プログラム設定された容積およびシステム容積コンプライアンスを考慮に入れた容積である、ステップをさらに含む、第1項から第15項のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
第17項.輸液システムであって、液注入器と、第1の液が入るように構成されている少なくとも1つの第1の液リザーバと、少なくとも1つの第1の液リザーバから液を押し出すように構成されている少なくとも1つの第1の駆動部材と、少なくとも1つの第1の駆動部材と操作可能に通信するコントローラであって、コントローラは、指示を含むコンピュータ可読メモリを備え、この指示は、コントローラによって実行されるとき、液注入器システムの、少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の液容積を決定することと、第1のプログラム設定された容積の第1の液が注入される圧力を決定することと、少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素のうちの少なくとも1つについて式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定することであって、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A1は少なくとも1つの液リザーバの位置スケーラであり、V1は少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積であり、B1は少なくとも1つの液リザーバの圧力定数であり、P1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の圧力であり、O1は少なくとも1つの液リザーバの補償係数である、決定することと、式(2)にしたがって少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測することであって、
VC1=PV1+C1(2)
VC1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数であり、PV1は第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスである、予測することと、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように容積コンプライアンス係数を補償することとをコントローラに行わせる、コントローラとを備える輸液システム。
【0035】
第18項.コントローラは、以下の式(3)にしたがって式(1)のシステムコンプライアンス容積を決定するように構成されており、
z-1=c・y0.5+b/x0.5+a(3)
zはシステム容積コンプライアンス(C)であり、cは位置スケーラ(A)であり、yは少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積(V1)であり、bは圧力定数(B)であり、xは少なくとも1つの液リザーバを用いる場合の液の圧力(P1)であり、aは補償係数(O)である、第17項に記載の輸液システム。
【0036】
第19項.aは0.112~0.115の範囲の値を持ち、bは10.35~10.45の範囲の値を持ち、cは-0.01465~-0.01495の範囲の値を持つ、第18項に記載の輸液システム。
【0037】
第20項.コンピュータ可読メモリはさらなる指示を含んでおり、このさらなる指示は、コントローラによって実行されるとき、容積コンプライアンス係数を補償することをコントローラに行わせ、すなわち、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動することと、容積コンプライアンス係数に相当する付加容積の第1の液を注入することとをコントローラに行わせる、第17項から第19項のいずれか一項に記載の輸液システム。
【0038】
第21項.コンピュータ可読メモリはさらなる指示を含んでおり、このさらなる指示は、コントローラによって実行されるとき、容積コンプライアンス係数を補償することをコントローラに行わせ、すなわち、容積コンプライアンス係数に相当する第1の液の付加分の容積を輸液するのに十分な量だけ少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の輸液時間を延長することをコントローラに行わせる、第17項から第19項のいずれか一項に記載の輸液システム。
【0039】
液注入器の輸液の誤差の補正のためのシステムおよび方法のこれらおよび他の特徴および特性ならびに構成の関連要素および部品の組み合わせの動作方法および機能および製造の経済性は、添付の図面を参照して以下の説明および添付の請求項を考慮すれば明らかになる。添付の図面のすべては本明細書の一部を形成し、図面中、同様の参照番号は様々な図の対応する部分を示す。ただし、図面は例示および説明のみを目的としていることが当然明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本開示の一例に係る輸液システムの斜視図である。
図2図1の輸液システムとともに用いるように構成されているシリンジの側面断面図である。
図3】本開示の別の例に係る輸液システムの斜視図である。
図4図3の輸液システムとともに用いるように構成されているシリンジの側面断面図である。
図5】本開示の別の例に係る輸液システムの斜視図である。
図6図5の輸液システムとともに用いるように構成されている多用途使い捨てシステムの正面斜視図である。
図7A】液リザーバの一実施形態の内径の変化を内部液圧力の関数として示すグラフ表示である。
図7B】コンプライアンス容積膨張を経た液注入の実際のプロファイルと比較した期待フロープロファイルのグラフ表示である。
図8A】能動制御部を有する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として200ミリリットル(mL)の容積からの輸液の割合を示すグラフである。
図8B】能動制御部を有する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として125ミリリットル(mL)の容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図8C】能動制御部を有する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として75ミリリットルの容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図8D】能動制御部を有する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として10ミリリットル(mL)の容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図9】本開示に係る注入システムのコンプライアンスに関連する液の輸液されない容積を、残っている注入容積および圧力の関数として示すグラフである。
図10A】能動制御部を有し、本開示に係る補正を適用する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として160ミリリットル(mL)の容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図10B】能動制御部を有し、本開示に係る補正を適用する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として125ミリリットル(mL)の容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図10C】能動制御部を有し、本開示に係る補正を適用する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として75ミリリットル(mL)の容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図10D】能動制御部を有し、本開示に係る補正を適用する例示的な単一容器注入器システムについて圧力の関数として10ミリリットル(mL)の容積から輸液される所望の液の割合を示すグラフである。
図11】本開示に係る方法のステップを提供するフローチャートである。
図12】一実施形態に係る注入プロトコール中の容積補償の方法のステップを提供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
明細書および請求項で用いられている「ある」、「一つの」および「その」の単数形は、文脈上明確に別義を示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0042】
以下の説明のために、用語「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、「短手方向」、「長手方向」およびこれらの派生語は、図面で向けられているように開示に関係するものとする。
【0043】
本発明ではこれとは別の様々な向きをとることができるため、「左」、「右」、「内」、「外」、「上」、「下」などの空間的用語や方向的用語は限定を課すものとは見なされない。
【0044】
明細書および請求項で用いられているすべての数は用語「約」によってすべての場合に修正されると解するものとする。用語「約」は、記載されている値のプラスまたはマイナス10パーセントの範囲を意味する。
【0045】
別段の記載のない限り、本出願で開示されているすべての範囲または比率はこれに包含される一切の部分範囲または部分比率を含むと解するものとする。たとえば、記載されている範囲「1~10」または比率「1対10」は1である最小値と10である最大値との間(両端を含む)の一切の部分範囲、すなわち、たとえば、1~6.1(1対6.1)、3.5~7.8(3.5対7.8)および5.5~10(5.5対10)などであるが、これらに限定されない1以上の最小値から始まり10以下の最大値で終わる、すべての部分範囲または部分比率を含むと見なされる。
【0046】
用語「少なくとも」は「以上」を意味する。
【0047】
用語「含む」は「備える」と同義である。
【0048】
シリンジおよび/またはプランジャに関連して用いられる場合の用語「近位」は、シリンジおよび/またはプランジャが液注入器に接続されるように向けられる場合に液注入器に最も近いシリンジおよび/またはプランジャの部分を指す。用語「遠位」は、シリンジおよび/またはプランジャが液注入器に接続されるように向けられる場合に液注入器から最も遠いシリンジおよび/またはプランジャの部分を指す。用語「径方向」は、近位端と遠位端との間で延びるシリンジ、プランジャおよび/またはピストンの長手方向軸に直交する断面平面内の方向を指す。用語「周方向」は、シリンジ、プランジャおよび/またはピストンの側壁の内面または外面まわりの方向を指す。用語「軸方向」は、近位端と遠位端との間で延びるシリンジ、ピストンおよび/またはピストンの長手方向軸に沿う方向を指す。輸液構成要素に適用するのに用いる場合の用語「開放」は、たとえば、ノズルを通じたり管類構成要素やカテーテルの開放端を通じたりしてシステムが出口と流体接続することを意味する。開放システムでは、たとえば、管類の直径、液経路の狭窄、印加圧力、粘度などのシステムおよび液の物理的パラメータによって流れが決まる小径液経路に液を流し込むことにより、液流が制限される場合がある。輸液要素に適用するのに用いる場合の用語「閉鎖」は、たとえば、栓、高クラッキング圧力バルブ、ピンチバルブなどのバルブによって液流が停止する箇所でシステムが出口と流体接続しないことを意味する。本出願で用いられている用語「スラック」は、部品間のギャップ、負荷時の機械的構成要素の圧縮(印加圧力などによる)、負荷時の機械的構成要素の撓み(印加圧力などによる)によって生じる機構のクリアランスやロストモーションを含む機械的なスラックを意味し、力を加えた後の液注入時からの液の加圧輸液の遅延をもたらすものである。
【0049】
本開示では、反する記載が明記されている箇所を除き、代替例および代替ステップ列を想定してもよいと解するものとする。また、添付の図面に図示され、以下明細書に記載されている特定のデバイスおよびプロセスは本開示の例示的な実施形態にすぎないとも解するものとする。したがって、本出願で開示されている例に関連する特定の寸法および他の物理的特性は限定を課すものとは見なされない。
【0050】
輸液システムのインピーダンスの特性を評価して、所望の輸液システム実行量と実際の輸液システム実行量との差を最小にするには、エネルギ源からのエネルギがどのようにシステムで用いられるかや、どのようにシステム内を移動するかを考慮する必要がある。輸液システムからのエネルギ出力または損失は、摩擦力による熱損失や輸液システムでなされる仕事や慣性効果の形態をとる場合がある。たとえば、圧力下でカテーテルを通じて輸液される最中に加圧液によって運ばれるエネルギの一部は、液の抵抗加熱、摩擦加熱、または散逸加熱を通じて損失する。これに加えて、液を加圧輸液すると、ここで説明されているように、システム構成要素の体積全体の増加またはシステム構成要素に対する圧縮力の増加に関するシステムのポテンシャルエネルギも増加させる可能性がある。さらに、輸液システム内を移動する加圧液の運動エネルギが輸液システムの実行性全体に影響する可能性がある。たとえば、造影剤を移動させる慣性力と、システムに関連する容器および管類の膨張とにより、注入器シリンジ内のシリンジプランジャの動きと、カテーテルから患者への造影剤の動きとの間に段階に関するずれが生じる場合がある。
【0051】
一部の血管造影処置で1,200psi程度になる場合がある高い注入圧力に起因して、シリンジ、患者に接続される管類および液注入器の構成要素などの輸液システムの様々な構成要素の膨張や圧縮が生じる場合がある。これらは、シリンジおよび管類内の液の容積が、注入処置で輸液されるように選定された所望の量を超えるおそれがある程度に生じる場合がある。液の量のこのような増加はシステムのキャパシタンスにより発生する。システムキャパシタンスの総計(コンプライアンスや弾性とも称する)は、輸液システムの構成要素の膨大、圧縮および/または撓み時に捕らえられる液の量(すなわち、容積超過分などの容積の変化)を表す。一般的に、キャパシタンスは注入圧力に正相関し、かつシリンジ内の造影剤および生理食塩水の容積に逆相関する。言い換えれば、キャパシタンスは注入圧力の増加およびシリンジ内の液の容積の増加にともなって増加する。システムキャパシタンスの総計は各輸液システムに固有であり、システム内に残っている液の圧力および容積のほかに複数の因子に依存する。当該因子には、注入器の構造、シリンジ、プランジャ、シリンジの周囲の圧力ジャケットおよび患者に液を輸液する液ラインを構成するのに用いられる材料の機械的特性、シリンジ、プランジャ、圧力ジャケットの寸法、圧力下で液が通過しなければならない管類やその他オリフィスの直径、高クラッキング圧力バルブ、栓、ピンチバルブなどのバルブの存在ならびに温度、粘度および密度などの液特性が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、図7Aに示されているように、液に印加される圧力が増加するにつれて、液が充填されたシリンジの内径が拡大する(ΔIDで示されている)。ある程度、内径のこの変化により、液注入中に輸液されないおそれがあるコンプライアンス容積が生じ、注入容積が不正確になる。ただし、図7Aに示されているこの解析手法では、ただ1つの構成要素のコンプライアンス容積しか表されておらず、リザーバの軸方向の伸び、プランジャの圧縮やシステムの荷重を受ける構成要素の撓みを考えに入れることが容易ではない場合がある。したがって、いくつかの実施形態に係れば、複数の圧力、容積およびコンプライアンス箇所の測定値を取得する実証的手法を用い、システムのコンプライアンスをプロットし、システムコンプライアンスを表す式を決定してもよい。
【0052】
図7Bは、下流センサによって測定しながらプロファイルを得た(730)実際の流れと比較した第1の液710および第2の液720の期待フロープロファイルの差を示す液注入プロトコール700を示す。2つの曲線の差により、注入の終了時(たとえば、指定時間後のステップ730)にコンプライアンス容積を戻したり、本出願の方法の実施形態に係る補償が行われたりしない限り、容積の不正確さ、たとえば段階毎の容積の不正確さをまねくコンプライアンス容積が表されている。一実施形態に係れば、注入中の所定の時刻での任意の箇所での動的コンプライアンスに対応する正味の差を生じさせる2つの曲線間のΔの累計(プラスマイナス)を一定に保つように注入器をプログラムしてもよい。たとえば、コンプライアンス容積を補償するのに十分な量だけ液リザーバに関連する駆動部材が移動する距離を多めに駆動したり少なめに駆動したりすることによって、駆動容積補償プロセス中にプロセッサやコントローラがこの動的コンプライアンスを利用することで、期待フロープロファイル710および720に対応する期待容積にほぼ等しい容積を輸液してもよい。別の実施形態に係れば、測定や計算による動的コンプライアンス情報をプロセッサやコントローラが使用することで、所望のプロファイル710および720を発生させるように駆動部材のモータ速度および動きを調節してもよい。
【0053】
輸液システムの実行量の特性を評価して、液流量および輸液された容積の点で所望の実行量を実際の実行量に相関させるための様々な手法が存在するが、これらの手法は、包括的な仕方では輸液システムのインピーダンスおよび/またはキャパシタンスによる所望の実行量と実際の実行量との差に対応していない。たとえば、注入処置の所定の部分の終了時に患者への液流を停止させたり患者を流体的に隔離したりする栓またはその他装置などの能動制御部を含むいくつかのシステムでは、インピーダンスに関連する誤差により、患者に実際に輸液される内側液の容積が所望の容積とは異なる場合がある。本開示に係る例では、患者に輸液されるようにプログラム設定された容積は、たとえば、栓またはその他バルブを閉鎖したり、キャパシタンス容積を含まないプログラム設定された容積値で注入を停止したりすることによって隔離されるためにシリンジによって取り込まれるキャパシタンス容積が輸液されないので、所望の容積よりも少なくなる場合がある。
【0054】
本開示のいくつかの例では、注入処置時に患者に輸液される液の容積を較正する改良システムおよび方法が開示されている。本開示に係る実施形態では、インピーダンスおよび/またはキャパシタンスに起因する患者に輸液される容積の不正確さを補正する方法が開示されている。本システムおよび方法により輸液容積の誤差の原因に対処する。いくつかの実施形態では、注入プロトコール中に患者から加圧液充填シリンジを隔離する栓またはその他遮断特徴を備える液注入器に本システムおよび方法を適用してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態に係れば、本開示では、1個または複数の液リザーバを用いる注入処置中に液注入器システムによって輸液される液の容積を補正する方法を提供する。当該方法により、液リザーバの加圧の結果としての力による荷重がかかっているモータおよび駆動部材構成要素に関連する機械的スラック、力による荷重および歪みによる様々な注入器構成要素、駆動部材およびシリンジ構成要素の撓みならびに力が印加された状態で液圧的に膨大し得る液が入った構成要素に関連するコンプライアンスなどのシステムコンプライアンスの結果として失われる注入容積に少なくともある程度起因する注入プロトコール中の液容積の不正確さを補正してもよい。イメージング用造影剤、生理食塩水および/またはその他医療用液の様々な注入に関連するプログラム設定された容積の加圧状態医療用液を液リザーバが分注すると、圧力が印加されて、シリンジの液容積の少なくとも一部が、プログラム設定された注入容積において考慮に入れられないコンプライアンス容積に変換され、これにより、患者に注入されない結果、液の輸液不足をまねいたり、圧力荷重力が解放されるときにコンプライアンス容積が解放される際に液の輸液超過をまねいたりするおそれがある。本出願で説明されている様々なシステムおよび方法では、液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動することで、プログラム設定された容積の液と、コンプライアンス容積にほぼ等しい追加容積の液とを輸液することと、液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動することで、プログラム設定された容積からコンプライアンス容積を差し引いたものに等しい液容積を輸液することと、所望の容積の輸液を可能にするのに必要な時間だけ液リザーバ内の液の輸液時間を延長することと、液リザーバ内の液の輸液時間を短縮して所望の容積を超える液の輸液超過を避けることとのうちの1つの形態でコンプライアンス容積を考慮に入れることにより高い輸液正確度を実現する。ここで開示されている方法を用いて注入することができる医療用液には、CT、CV、MRやPET造影剤などのイメージング用造影剤、生理食塩水または正確な輸液容積が望まれるその他医療用液が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
加圧液リザーバに関連するキャパシタンス、コンプライアンスおよび/またはインピーダンスに関連する容積は、固有システムスラック、液種、液粘度、直径、容積、材料および出口パラメータ等のリザーバ構成、リザーバ内の液容積、印加される圧力荷重などの多くの因子に依存する。様々な実施形態に係れば、これらの因子の1つ以上を利用して、輸液システムおよび液リザーバ構成要素のシステム容積コンプライアンスをプロセッサが決定したり予測したりしてもよい。
【0057】
方法は、液注入器システムの、少なくとも1つの液リザーバ内の第1の液の液容積を決定するステップと、第1のプログラム設定された容積の第1の液が注入される圧力を決定するステップと、少なくとも1つの液リザーバ、少なくとも1つの液リザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素のうちの少なくとも1つについて式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップと、
C1=A1・V1+B1・P1+O1(1)
式(2)にしたがって少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測するステップと、
VC1=PV1+C1(2)
少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積を輸液するように容積コンプライアンス係数を補償するステップとを含んでもよい。式(1)を参照して、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A1は少なくとも1つの液リザーバの位置スケーラであり、V1は少なくとも1つの液リザーバの利用可能な容積であり、B1は少なくとも1つの液リザーバの圧力定数であり、P1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の圧力であり、O1は少なくとも1つの液リザーバの補償係数である。式(2)を参照して、VC1は少なくとも1つの液リザーバ内の液の容積コンプライアンス係数であり、PV1は第1の液のプログラム設定された容積であり、C1は少なくとも1つの液リザーバのシステム容積コンプライアンスである。
【0058】
他の実施形態では、液注入器は、単一または複数の医療用液を注入するように構成されている2つ、3つまたはさらに多くの液リザーバを備えるマルチリザーバ液注入器であってもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、液注入器は、第1の液が入る少なくとも1つの第1の液リザーバと、第2の液が入る少なくとも1つの第2の液リザーバとを備えてもよい。これらの実施形態に係れば、方法は、第2の液リザーバからの第2の液の液容積輸液をプロセッサに補正させるステップをさらに備えてもよい。当該注入器に係れば、注入プロトコールは、第1および第2の液の逐次注入を含んでもよく、かつ/または指定比率の第1および第2の液を混合物として注入するデュアルフロー注入プロトコールが可能であってもよい。ここで開示されている方法を用いて注入することができる医療用液には、CT、CV、MRやPET造影剤などのイメージング用造影剤、生理食塩水または正確な輸液容積が望まれるその他医療用液が含まれるが、これらに限定されない。方法は、液注入器システムの、少なくとも1つの第2の液リザーバ内の第2の液の液容積を決定するステップと、プログラム設定された容積の第2の液が注入される第2の圧力を決定するステップと、少なくとも1つの第2の液リザーバ、第2のリザーバに関連する1個または複数の液注入器機械的構成要素、および1個または複数の管類システム構成要素について式(1)にしたがってシステム容積コンプライアンスを決定するステップであって、
C2=A2・V2+B2・P2+O2(1)
C2は少なくとも1つの第2の液リザーバのシステム容積コンプライアンスであり、A2は少なくとも1つの第2の液リザーバの位置スケーラであり、V2は少なくとも1つの第2の液リザーバの利用可能な容積であり、B2は少なくとも1つの第2の液リザーバの圧力定数であり、P2は少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の圧力であり、O2は少なくとも1つの第2の液リザーバの補償係数である、ステップと、式(2)にしたがって少なくとも1つの第2のリザーバ内の液の容積コンプライアンス係数を予測するステップであって、
VC2=PV2+C2(2)
VC2は少なくとも1つの第2の液リザーバの容積コンプライアンス係数であり、PV2はプログラム設定された容積(少なくとも1つの第2の液リザーバ)であり、C2は少なくとも1つの第2の液リザーバのシステム容積コンプライアンスである、ステップと、少なくとも1つの第2の液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を多めに駆動すること、少なくとも1つの第2の液リザーバ内で駆動部材が移動する距離を少なめに駆動すること、少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の輸液時間を延長すること、および少なくとも1つの第2の液リザーバ内の液の輸液時間を短縮することのうちの1つにより、プログラム設定された液容積の第2の液を輸液するように少なくとも1つの第2の液リザーバの容積コンプライアンス係数を補償するステップとをさらに含んでもよい。
【0059】
他の実施形態に係れば、液注入器は、図6に示されているような、第1の液が入る少なくとも1つの第1の液リザーバと、第2の液が入る少なくとも1つの第2の液リザーバと、第3の液が入る少なくとも1つの第3の液リザーバとを含んでもよい。液注入器の様々な実施形態に係る液リザーバは、個別に、シリンジ、ローリングダイアフラムシリンジ、蠕動ポンプおよび圧縮可能なバッグであってもよい。特定の実施形態では、第1の液リザーバおよび第2の液リザーバを有し、第1の液リザーバと第2の液リザーバとの少なくとも一方がシリンジであるように液注入器を構成してもよい。様々な実施形態では、第1の液リザーバは第1のシリンジであってもよく、第2の液リザーバは第2のシリンジであってもよい。第3の液リザーバを備える実施形態では、第3の液リザーバもシリンジであってもよい。様々な実施形態に係るシリンジの1個または複数に最初にいかなる液も入っていなくてもよいし、他の実施形態では、シリンジの1個または複数が予め充填されたシリンジであってもよい。
【0060】
液注入器が少なくとも1つのシリンジを備える実施形態では、シリンジは、注入器のピストンなどの少なくとも1つの駆動部材に動作可能に接続されるプランジャを含んでもよい。リニアアクチュエータまたはモータのうちの1個または複数によって駆動部材を往復動作させてもよい。
【0061】
他の実施形態では、第1の液リザーバおよび第2の液リザーバを有し、第1の液リザーバと第2の液リザーバとの少なくとも一方がローリングダイアフラムシリンジであるように液注入器を構成してもよい。特定の実施形態では、第1の液リザーバは第1のローリングダイアフラムシリンジであってもよく、第2の液リザーバは第2のローリングダイアフラムシリンジであってもよい。第3の液リザーバを備える実施形態では、第3の液リザーバもローリングダイアフラムシリンジであってもよい。様々な実施形態に係るローリングダイアフラムシリンジの1個または複数に最初にいかなる液も入っていなくてもよいし、他の実施形態では、ローリングダイアフラムシリンジの1個または複数が予め充填されたローリングダイアフラムシリンジであってもよい。
【0062】
液注入器が少なくとも1つのローリングダイアフラムシリンジを備える実施形態では、液注入器は、ローリングダイアフラムの近位端壁に解放可能に係合するように構成されるピストンなどの少なくとも1つの駆動部材を含んでもよい。少なくとも1つのローリングダイアフラムシリンジに液を吸い入れてこれから吐出するようにリニアアクチュエータまたはモータのうちの1個または複数によって駆動部材を往復動作させてもよい。
【0063】
液注入器が少なくとも1つの蠕動ポンプを備える実施形態では、蠕動ポンプは、回転モータなどの駆動部材に動作可能に接続されるローラを含んでもよい。駆動部材をモータによって回転して、蠕動ポンプのローラを回転させて、液リザーバから液経路を通じて患者に液を押し出してもよい。
【0064】
液注入器が少なくとも1つの圧縮可能なバッグを備える実施形態では、圧縮可能なバッグをたとえばクラムシェルまたはその他圧縮部材によって圧縮して圧縮可能なバッグ内に入れられた液を吐出してもよい。様々な実施形態では、バッグに関連するコンプライアンスの量に応じて液を多めに吐出したり少なめに吐出したりするように圧縮部材の形状を調整したり制御したりして正確な容積輸液を実現してもよい。
【0065】
本出願で説明されている方法の様々な実施形態に係れば、少なくとも1つの液リザーバに、少なくとも、プログラム設定された容積に対応する容積の液に加えて式(1)によるシステム容積コンプライアンスに相当する量の液が入っているか否かを判断するステップをさらに含んでもよい。本実施形態に係れば、所望の容積の液を輸液するのに十分な液容積、すなわち、式(1)によって計算されるシステム容積コンプライアンスに関連する液容積をプログラム設定された容積に加えた容積に等しい容積が液リザーバにあるか否かをプロセッサが判断してもよい。たとえば、所望の容積を輸液するのに十分な液容積があるとプロセッサが判断する場合、プロセッサは、注入を続行するように注入器に指示してもよい。一方で、システム容積コンプライアンスを考慮した場合の、所望の容積を提供するのに十分な容積がないとプロセッサが判断する場合、プロセッサはユーザに警報を発してリザーバに十分な液が入っていないことを警告してもよい。これの代わりに、所望の容積を正確に供給するのに十分な容積が存在するように、付加分の液を液リザーバに吸い入れるようにプロセッサが注入器に指示してもよい。他の実施形態では、0mLの位置を決めて、プログラム設定された容積にコンプライアンス係数を加える必要を抑えるか、必要をなくしてもよい。
【0066】
たとえば、複数液型輸液プロセスおよび/またはデュアルフロー輸液プロセス中に選択的に閉鎖して液経路および/または他の液リザーバから流体的に隔離することができる複数の液リザーバを注入器が含む様々な実施形態に係れば、システムコンプライアンスは段階コンプライアンスおよび蓄積コンプライアンスに関連する因子を含む場合がある。本明細書で用いられている「段階コンプライアンス」は、リザーバが液経路と流体連通する場合である液注入中の輸液プロセスに関連する動的コンプライアンスを意味する。たとえば、開放液リザーバが加圧されると、システムのコンプライアンスが高まり、輸液プロセス中に液リザーバから輸液される液の容積に影響する。本明細書で用いられている「蓄積コンプライアンス」は、液リザーバが閉鎖されて流体的に隔離された後に輸液プロセスで蓄積されるコンプライアンスを意味する。たとえば、液リザーバが加圧されて第1の液を輸液する場合、たとえばバルブを閉鎖することによって液リザーバが流体的に隔離されるときに、蓄積コンプライアンスに変換される段階コンプライアンスが液リザーバにあることになる。流体的に隔離された液リザーバの蓄積コンプライアンスは、たとえばバルブを開放することによって液リザーバが液経路と流体連通する状態になるときに段階コンプライアンスに再変換されることになる。これの代わりに、第1のリザーバからの液と第2のリザーバからの第2の液とがともに輸液されるデュアルフロー動作では、第1および第2の液リザーバの当該蓄積コンプライアンスは、デュアルフロー液混合物の段階コンプライアンスに個別に寄与する場合があり、このことは、デュアルフロープロセス中の2つの液リザーバ間での圧力の均一化を考慮することも含む。
【0067】
以下のように段階コンプライアンスおよび蓄積コンプライアンスを考慮した場合の式(4)をプロセッサが利用して単一段階システム(すなわち、液リザーバから単一の液が流れる)での目標容積輸液分(シリンジシステムのピストン位置によって測定)を決定してもよい。
目標位置=開始位置-PV+SC-PC(4)
ここで、目標位置は計算された駆動部材の終了位置であり、開始位置は駆動部材の初期位置であり、PVはプログラム設定された容積であり、SCは蓄積コンプライアンスであり、PCは段階コンプライアンスである。これの代わりに、デュアルフロー注入プロセスについては、段階コンプライアンスおよび蓄積コンプライアンスを考慮した場合の式(5)をプロセッサが利用して液リザーバ毎に目標容積輸液分を決定してもよい。
目標位置=開始位置-(PV・混合割合)+SC-PC(5)
この場合、第1のリザーバが液注入を完了した後、バルブが閉鎖され、第2の残りのリザーバからの液の注入の流量が増加し、デュアルフロー注入の所望の流量に等しくなる。
【0068】
様々な実施形態では、方法は、補正されて液リザーバから患者に輸液されている実際の容積に対応する値をユーザに報告するステップを含んでもよい。補正された容積は、プログラム設定された容積およびシステムコンプライアンス容積を含むことになる。駆動部材の動きに基づく推定とは対照的に、実証的計算による輸液量をプロセッサがユーザに通知することができる。液注入プロセス中にいつでも値をユーザに提供してもよく、たとえば、ユーザが注入プロセスを一時停止する場合にユーザがいつでも輸液された液容積を確認することができるように、プロセッサに接続された表示部に動的に表示することすら行うことができる。
【0069】
他の実施形態に係れば、本開示では、ここで説明されている輸液容積補正の様々な方法を実行することができる輸液システムを提供する。いくつかの実施形態に係れば、輸液システムは、液注入器と、第1の液が入るように構成されている少なくとも1つの第1の液リザーバと、少なくとも1つの第1の液リザーバから液を押し出すように構成されている少なくとも1つの第1の駆動部材と、少なくとも1つの第1の駆動部材と操作可能に通信するコントローラとを備えることになる。様々な実施形態では、液注入器は、プロセッサと操作可能に通信する第2の駆動部材を含む第2の液リザーバを備えてもよく、さらに他の実施形態では、プロセッサと操作可能に通信する第3の駆動部材を含む第3の液リザーバを少なくとも含んでもよい。プロセッサは、指示を含むコンピュータ可読メモリを有するコントローラを含み、指示がコントローラによって実行されるときに、本出願の様々な実施形態で説明されている方法の様々なステップを実行してもよい。
【0070】
同様の参照符号が図面のいくつかの図にわたって同様の部分を指す図面を参照して、本開示は、概して、液注入器ならびに液注入器によって患者に少なめに輸液される容積を補正するシステムおよび方法を対象とする。液注入システムに関連するキャパシタンスの発生および課題に関する関連開示は、2017年3月3日に出願されたPCT国際出願第PCT/US2017/020637号に記載されており、この出願の開示は参照により本明細書に援用される。
【0071】
図1を参照して、自動液注入器すなわち動力式液注入器などの液注入器10(以下「注入器10」と称する)は、造影剤、生理食塩水溶液または任意の所望の医療用液などの液Fを充填することができる1個または複数のシリンジ12(以下「シリンジ12」と称する)と接続してこれを作動させるように構成されている。医療処置中に注入器10を用いることで、リニアアクチュエータやピストン要素などのピストン19(図2に図示)などの駆動部材を用いて各シリンジ12のプランジャ14を駆動することによって患者の体内に医療用液を注入してもよい。注入器10は、2つ、3つまたは4つ以上のシリンジを有するマルチシリンジ注入器であってもよく、数個のシリンジ12を並列の向きにしたり他の関係の向きにしたりして、注入器10に関連するそれぞれの駆動部材/ピストン19によって別々に作動させてもよい。たとえば、並列や他の関係で配置され、2つの異なる液が充填される2つ以上のシリンジを用いる例では、注入器10は、シリンジ12の一方または両方から液を逐次または同時に輸液するように構成してもよい。一実施形態に係れば、液注入器10は、2つのシリンジ12aおよび12b、すなわち、造影剤またはその他医療用液を輸液するための第1のシリンジ12aと、生理食塩水またはその他医学的に認められたフラッシング剤を輸液して造影剤を患者に向けてフラッシングするための第2のシリンジ12bとを有するデュアルヘッド注入器であってもよい。他の実施形態では、液注入器10は、3つのシリンジ12、すなわち、1つまたは2つの異なる造影剤またはその他医療用液を輸液するための第1および第2のシリンジと、生理食塩水またはその他医学的に認められたフラッシング剤を輸液して造影剤を患者に向けてフラッシングするための第3のシリンジとを有してもよい。様々な実施形態に係れば、コントラストと生理食塩水とを別々に輸液するように液注入器10を構成してもよい(たとえば、特定の期間に特定の容積の生理食塩水を輸液した後に特定の期間に特定の容積のコントラストを輸液し、その後、指定期間に第2の容積の生理食塩水を輸液して管類から患者内に向けて造影剤をフラッシングする)。様々な実施形態に係れば、コントラストおよび生理食塩水を別々に輸液したり混合物として輸液したりするように液注入器10を構成してもよい(たとえば
、特定の期間に特定の容積の生理食塩水を輸液した後に特定の容積のコントラストまたは指定比率のコントラストおよび生理食塩水(すなわち、「デュアルフロー」プロセス)を特定の期間に輸液し、その後、指定期間に第2の容積の生理食塩水を輸液して管類から患者内に向けて造影剤をフラッシングする)。特定の注入プロトコールを注入器に専門技術者がプログラム設定して(または予め記述したプロトコールを用いて)、所望の容積の生理食塩水、造影剤、特定比率の造影剤と生理食塩水との混合物などを溶液毎に所望の流量、期間および容積で輸液してもよい。液注入器10は、シリンジ12に液を充填するための少なくとも1つのバルク液源(図示せず)を有してもよく、いくつかの実施形態では、液注入器10が複数のバルク液源を有し、複数のシリンジの各々に1つずつ用いて、複数のシリンジの各々に所望の液を充填してもよい。
【0072】
液経路セット17が各シリンジ12と流体連通することで、患者のバスキュラーアクセス部位に挿入されるカテーテル(図示せず)に向けて各シリンジ12から液Fを輸液するために各シリンジをカテーテルと流体連通する状態にすることができる。いくつかの実施形態では、様々な駆動部材、バルブ、栓および流動調整構成を操作して、注入流量、継続時間、総注入容積、およびシリンジ12から出る液の比率(デュアルフロー注入プロトコールの各液の特定比率を含む)などのユーザが選択する注入パラメータに基づいて患者に対する生理食塩水およびコントラストの輸液を調整する液制御モジュール(図示せず)によって1個または複数のシリンジ12からの液流を調整してもよい。
【0073】
図2を参照して、モータ31によって動かされる往復駆動ピストンなどの駆動部材19は、注入器ハウジングの前端の開口を通ってそれぞれのシリンジポート13から延び、これに入るように構成してもよい。複数のシリンジを備える液注入器の実施形態では、シリンジ12毎に個別の駆動部材/ピストン19を設けてもよい。各駆動部材/ピストン19は、プランジャ14や、ローリングダイアフラムシリンジ(たとえば、PCT/US2017/056747、WO2016/172467およびWO2015/164783(これらの開示は本参照により本明細書に援用される)に記載のもの)の遠位端などのシリンジ12の少なくとも一部に動力を加えるように構成されている。駆動部材すなわちピストン19は、モータ31によって駆動されるボールねじシャフト、ボイスコイルアクチュエータ、ラック・アンド・ピニオンギアドライブ、リニアモータ、リニアアクチュエータなどの電気機械的駆動構成要素を介して往復動作可能であってもよい。モータ31は電動モータであってもよい。
【0074】
適切な前装填式液注入器10の例は、米国特許第5,383,858号、米国特許第7,553,294号、米国特許第7,666,169号、米国特許第9,173,995号、米国特許第9,199,033号および米国特許第9,474,857号ならびにPCT出願公開第WO2016/191485号およびWO2016/112163に開示されている。これらの開示の全体が参照により援用される。
【0075】
液注入器10の特定の実施形態の概略構造および機能を説明してきたが、以下、注入器10とともに用いるように構成されているシリンジ12の一実施形態を図2を参照して説明する。大まかに言えば、シリンジ12は、ガラス、金属または適切なメディカルグレードのプラスチック、望ましくは、透明であったりほぼ半透明であったりするプラスチック材料から形成される円筒形シリンジバレル18を有する。必要な引張応力および平面応力要件、水蒸気透過性および化学的/生物学的適合性を満たすようにシリンジ12の材料を選択することが望ましい。バレル18は、近位端20および遠位端24を有し、これらの間で側壁119がバレル18の中央を通って延びる長手方向軸15の長さに沿って延びている。いくつかの例では、遠位端24は、円筒形バレル18から遠位方向に細くなる円錐形状を持ってもよい。遠位端24からノズル22が延びている。バレル18は外面21および内面23を有し、液が入るように内部容積25が構成されている。バレル18の近位端20を、対応するピストン19すなわち駆動部材の往復運動によりバレル18を通って往復運動可能であるプランジャ14で封止してもよい。プランジャ14がバレル18を通って前進すると、プランジャ14はバレル18の内面23に接触して液密シールを形成する。
【0076】
いくつかの例では、注入器10のシリンジポート13(図1に図示)に着脱可能に挿入されるようにシリンジ12の近位端20の寸法を設定して構成することができる。いくつかの例では、注入器10のシリンジポート13に着脱可能に挿入されるように構成されている挿入部30をシリンジ12の近位端20が形成する一方で、シリンジ12の残りの部分は引き続きシリンジポート13の外側にある。
【0077】
図3に示されているようないくつかの例では、注入器10の各シリンジポート13に圧力ジャケット32を入れて保持するように注入器10を構成してもよい。図1および図3は2つのシリンジポート13を有する液注入器10を示しており、図3に示されている注入器10については、各シリンジポート13が、対応する圧力ジャケット32を有するが、液注入器10の他の例では、単一のシリンジポート13を含んだ上で対応する圧力ジャケット32を適宜含んだり、2つを超えるシリンジポート13を、対応する個数の任意に選択可能な圧力ジャケット32とともに含んだりしてもよい。圧力ジャケットを備える実施形態では、各圧力ジャケット32を、血管造影(CV)処置用のシリンジやローリングダイアフラムシリンジ34(その適切な例はPCT/US2017/056747、WO2016/172467およびWO2015/164783に記載されている)などのシリンジを収容するように構成してもよい。患者のバスキュラーアクセス部位に挿入されるカテーテル、針またはその他輸液接続部(図示せず)に接続される管類を通じてシリンジ34から液を輸液するために、各ローリングダイアフラムシリンジ34の放出端に、図1に示されている液経路セット17と同様の液経路セットを流体的に接続してもよい。様々な実施形態に係れば、シリンジ12または34は、充填済みシリンジであってもよい。すなわち、シリンジ製造者によって提供されるときに造影剤や生理食塩水などの医療用液をシリンジに予め充填してもよい。いくつかの実施形態に係れば、注入処置の前に、充填済みシリンジの放出端に尖ったものを突き刺したり別様に穿刺したりして、ここで説明されているように、液をシリンジから患者に至る液ラインに吐出することを可能にすることを要してもよい。
【0078】
図4を参照して、大まかに言えばローリングダイアフラムシリンジ34は内部容積38を決める中空本体36を含む。本体36は、前方端すなわち遠位端40と、後方端すなわち近位端42と、これらの間で延びる可撓性側壁44とを有する。近位端42を、ここで説明されているように、シリンジ内部を加圧してシリンジ内部に液を吸い込んだりシリンジ内部から液を吐出したりするピストンとして機能するように構成してもよい。ローリングダイアフラムシリンジ34の側壁44は、柔軟であったり曲げ易かったり撓み易かったりするがそれ自体を支持する本体を形成し、液注入器10の駆動部材すなわちピストンが作用する状態で「ローリングダイアフラム」としてそれ自体の上にローリングするように構成されている。駆動部材/ピストン19を、ローリングダイアフラムシリンジ34の近位端42にある駆動部材係合部分52に解放可能に係合するように構成してもよい(その例はPCT/US2017/056747に記載されている)。動作時、側壁44は、駆動部材/ピストン19が近位端42を遠位方向に動かすと側壁44の外面が径方向内方方向に折り返されるように折られ、曲がるように、駆動部材/ピストン19が近位端42を近位方向に後退させると径方向外方方向に逆の仕方で広げるようにローリングするように構成されている。
【0079】
引き続き図4を参照して、側壁44の後方部分すなわち近位部分は閉鎖端壁46に接続しており、側壁44の前方部分すなわち遠位部分は閉鎖端壁46の反対側にある放出ネック48を形成している。閉鎖端壁46は、側壁44の反転またはローリングの開始を容易にし、閉鎖端壁46の機械的強度を高め、かつ/または駆動部材/ピストン19の遠位端を受ける受け凹所を設けるように凹形状を持ってもよい。たとえば、閉鎖端壁46は、駆動部材/ピストン19の同様の形状の遠位端に直接接続する受け端凹所を形成してもよい。いくつかの例では、閉鎖端壁46の形状にほぼ一致するように駆動部材/ピストン19の少なくとも一部を成形してもよいし、これの代わりに、駆動部材/ピストン19が遠位方向に動く際の駆動部材/ピストン19からの圧力により、駆動部材/ピストン19の少なくとも一部の形状にほぼ一致するように端壁46を合致させてもよい。
【0080】
端壁46は、ほぼドーム形状の構造を持つ中央部分50と、中央部分50から近位方向に延びる駆動部材係合部分52とを有してもよい。駆動部材係合部分52は、たとえば、駆動部材/ピストンが後退するときに、液注入器10の駆動部材/ピストン19上の対応する係合機構と解放可能に相互に作用するように構成されている。ローリングダイアフラムシリンジ34は、任意の適切なメディカルグレードのプラスチックやポリマー材料、望ましくは、透明であったりほぼ半透明であったりするプラスチック材料製であってもよい。必要な引張応力および平面応力要件、水蒸気透過性および化学的/生物学的適合性を満たすようにローリングダイアフラムシリンジ34の材料を選択することが望ましい。
【0081】
図5を参照して、本開示の別の例に係る液注入器10が示されている。注入器10は、様々な機械的駆動構成要素、機械的駆動構成要素を駆動するのに必要な電気的構成要素および動力構成要素ならびに往復運動可能なピストン(図示せず)の動作を制御するのに用いられる電子メモリおよび電子制御デバイスなどの制御構成要素を収容するハウジング54を有する。液注入器10は、液注入器10に着脱可能に接続可能な複数患者用使い捨てシステム(MUDS)56をさらに有する。MUDS56は1個または複数のシリンジやポンプ58を有する。いくつかの態様では、シリンジ58の個数は液注入器10のピストンの個数に対応する。図6に示されているようないくつかの例では、MUDS56は並列配置の3つのシリンジ58a~58cを有する。各シリンジ58a~58cは、MUDS液経路62を介してそれぞれのバルク液源(図示せず)に接続するためのバルク液コネクタ60を有する。MUDS液経路62を可撓性チューブとして形成して、バルク液コネクタ60に接続される可撓性チューブの末端に穿刺要素を設けてもよい。図5に示されている注入器10および対応するMUDS56はWO2016/112163に詳細に記載されており、その開示は本参照により本明細書に援用される。
【0082】
MUDS56は1個または複数のシリンジやポンプ58a~58cを備えてもよい。いくつかの態様では、シリンジ58の個数は液注入器10の駆動部材/ピストンの個数に対応する。図5および図6に示されているようないくつかの例では、MUDS56は並列配置の3つのシリンジ58a~58cを有する。各シリンジ58a~58cは、MUDS液経路62を介してそれぞれのバルク液源(図示せず)に接続するためのバルク液コネクタ60を有する。MUDS液経路62を、バルク液コネクタ60に接続される可撓性チューブとして形成して、バルク液コネクタ60の末端に穿刺要素があってもよい。
【0083】
図6を参照して、MUDS56は、1個または複数のシリンジ58a~58cを支持するフレーム64を有する。フレーム64にシリンジ58a~58cを着脱可能に接続しても着脱不能に接続してもよい。各シリンジ58a~58cは、細長いほぼ円筒形のシリンジ本体を有する。各シリンジ58a~58cは、バルク液源からの液をシリンジ58a~58cに充填するためのMUDS液経路62と流体連通する充填ポート66を有する。各シリンジ58a~58cは、その遠位端の末端部分に放出出口すなわち放出管68をさらに有する。各シリンジ58a~58cの放出出口68はマニホールド70と流体連通する。各放出出口68にはバルブ72が関連づけられ、バルブ72は、充填ポート66がシリンジ内部と流体連通する一方で放出出口68がシリンジ内部から流体隔離される充填位置と、放出出口68がシリンジ内部と流体連通する一方で充填ポート66がシリンジ内部から流体隔離される輸液位置との間で動作可能である。マニホールド70は、各シリンジ58a~58cと流体連通し、かつ液を患者に輸液する使い捨て液経路要素(図示せず)に接続されるように構成されているポート76と流体連通する液出口ライン74と流体連通する液通路を有する。
【0084】
液注入器10、たとえば、図1図3および図5に示されている液注入器のいずれかについての様々な実施形態では、モータ31(図2)によって駆動部材/ピストン19を遠位方向に往復駆動する動力を発生してシリンジ12,34やMUDS56内の液を放出する。モータ31は、駆動部材/ピストン19を往復運動させるように駆動部材/ピストン19に動作可能に接続されるギアおよびシャフトなどの駆動構成要素を有してもよい。入力電流や出力トルクなどの動作特性を、それに関連する流量や圧力および許容誤差に相関させるように各モータ31を較正しなければならない。ここで示されているように、特に、2つ以上のモータによって駆動される2つ以上のシリンジを有する液注入器でのモータ性能特性のなんらかの変動など、液注入器10の様々な構成要素のいずれかに由来する変動や仕様外の挙動を補償する較正が望ましいといえる。たとえば、あるモータ31のモータ入力トルクの注入器出力圧力への変換が、別のモータ31では異なる場合がある。この変動は液注入器10の駆動系の許容誤差の変動によってさらに悪化するおそれがある。液注入器10の流量や圧力の正確度は、モータ31を較正するのに用いられるシステムおよび方法に正相関する。
【0085】
本開示の一例に係れば、図1図6に関して上述されている液注入器10は、第1の段階で第1の液F1を注入した後に第2の段階で第2の液F2を注入することを含む多段階液注入を行うように構成してもよい。第1の段階では、少なくとも第1のシリンジ、たとえば、図1のシリンジ12aまたは図5図6のシリンジ58bおよび/または58cのうちの1つから第1の液F1を注入する。第2の段階では、少なくとも第2のシリンジ、たとえば、図1のシリンジ12bまたは図5図6のシリンジ58aから第2の液F2を注入する。以下、図5図6を参照して第1および第2のシリンジを説明する。したがって、これらを第1のシリンジ58bおよび第2のシリンジ58aと称することになる。ただし、ここで説明されているシステムおよび方法は、図1のシリンジ12a~12b、図3図4に示されている2つ以上のローリングダイアフラムシリンジ34を有する注入器や、液注入システムに最小個数である2つのシリンジがあるその他一切のセットのいずれにも同様に適用可能であると解するものとする。
【0086】
第1のシリンジ58bの第1の液F1と第2のシリンジ58aの第2の液F2とは、異なる粘度などの異なる特性を有する医療用液などの異なる液であってもよい。これの代わりに、第1の液F1と第2の液F2とは同じ液、たとえば同じ医療用液である一方で、異なる濃度や温度の液であってもよいし、異なる流量で輸液される同じ液であってもよい。たとえば、第1および第2の液F1,F2は、異なる粘度、温度および/または密度のうちの1つまたは複数を持ってもよい。本開示の一例では、第1の液F1は、第1の粘度を持つ、ここで説明されているような造影剤であり、第2の液F2は、典型的には第1の粘度よりも低い第2の粘度を持つ生理食塩水であってもよい。いくつかの実施形態では、液注入器は、第3の液F3を含む第3のシリンジ58cを有してもよく、第3の液F3は第1の液F1および第2の液F2と同じでも異なってもよい。たとえば、F3は造影剤であってもよく、当該造影剤は第1の液F1と同じであってもよいし、F3はF1とは異なる造影剤であってもよいし、F3はF1と同じコントラストタイプでF1とは異なる濃度のものであってもよい。多段階注入の第1の段階では、第1の液F1すなわちコントラストを、注入器10にプログラム設定された第1の既定流量で第1のシリンジ58bから注入してもよい。第1の既定流量での第1の液F1の輸液は、第1のシリンジ58bのプランジャをピストン19で駆動するなどして、第1のシリンジ58b内の第1の液F1に圧力を印加することにより実現される。この場合、所望の第1の既定流量を実現するのに必要な印加圧力は第1の液F1の第1の粘度の関数である。第1の液F1のコントラストの粘度は一般的に高いので、生理食塩水のようなより低い粘度を持つ液について同じ流量を実現するのに必要な印加圧力と比較して、既定流量を実現するのにより高い印加圧力が一般的には必要である。多段階注入の第1の段階に続いて、第2の段階は、第2のシリンジ58aからの第2の液F2すなわち生理食塩水の注入を含む。第2の液F2の第2の既定流量は第1の液F1の第1の既定流量と同じでも、それを超えても、それ未満でもよい。第1の既定流量と第2の既定流量とが同じになるようにしようとする液注入では、第1の液F1の第1の粘度と第2の液F2の第2の粘度との差により、第2の液F2を輸液するのに必要な圧力が第1の液F1を輸液するのに必要な圧力と異なる場合がある。本例では、同じ流量を得るために、第1の液F1すなわち造影剤に印加される圧力は、第2の液F2すなわち生理食塩水に印加される圧力よりも一般的に高い。他の例では、第2の液F2の第2の既定流量が第1の液F1の第1の既定流量と異なってもよいが、この場合も第1の液F1の既定流量と第2の液F2の既定流量とを実現するのに必要な圧力は異なってもよい。
【0087】
図8A図8Dは、液注入器は能動制御部を有し、インピーダンス補正は適用されていない、単一容器を有する例示的な注入システムの圧力の関数として輸液される所望の容積の割合を示すグラフである。ただし、本開示は、複数の液容器を有する液注入器に関してもよいと解するものとする。
【0088】
図8A図8Dをさらに参照して、患者に注入しようとする医療用液の容積には不確かさの許容範囲すなわち仕様限界(すなわち、許容可能な輸液容積値の範囲であり、図8A図8Dの各々に破線で示されている)がある場合がある。図8A図8Dの各々は許容可能な耐用限度値について仕様上限および下限の割合を示す。図8A図8Dに示されているように、能動制御部を有し、インピーダンスおよび/またはキャパシタンス補正を行わない注入システムの実施形態では、所定の注入プロトコールの仕様下限未満の液の容積を注入することが多い。この誤差は圧力(x軸に示されている圧力)が増加するにつれてかつ/またはシリンジから輸液される液の容積が減少するにつれてより顕著になる。グラフではデータ点をつないでフィッティングして曲線にしている。ここで説明されている容積の不正確さ、すなわち、液注入器および/または液のインピーダンスおよび/またはキャパシタンス特性による輸液不足は、図5および図6を参照して説明されているような「閉鎖」システム、すなわち能動制御部を有するシステムに一般的に関連する状態であると解するものとする。したがって、このような注入器システムにはここで説明されている補正(その例が図9および図10A図10Dに関連して説明されている)を特に適用可能である。図1図4に示されているような他の注入器も、たとえば、管類セット中のものなどの栓、ピンチバルブおよび/または高圧クラッキングバルブが注入システムに組み込まれる場合に、本出願で説明されている方法を利用してもよい。これに加えて、能動制御部無しのシステムでは、キャパシタンスに起因する容積が漏れたり患者に注入されたりすることが望ましくない場合、リザーバが液経路から流体的に隔離された後、本出願で説明されている方法を適用して、多めに駆動してコンプライアンス容積を与えたらすぐに注入段階の終了時にピストンのコンプライアンス容積相当位置を引き戻してもよい。
【0089】
図9は、圧力と、シリンジなどの容器内に残っている注入容積との関数として輸液されない液の容積を示す3次元グラフを示す。図9に示されている実施形態に示されているように、容器内の設定圧力および設定残容積での輸液不足分に対して決定されたデータ点が3次元グラフにプロットされており、これらのデータにしたがって面がマッピングされている。システムの輸液不足容積をマッピングし、フィッティングして3D面にすることにより、リザーバ容積および圧力に基づいて容積の不正確さを予測することができる式を導出することができる。他のシステムでは、残っている注入容積および圧力の因子として輸液不足容積の他の3D面カーブが得られる場合があり、別の面の式を決定して3つの変数間の相関を確立することができるので、システムのインピーダンスおよび/またはキャパシタンス特性を考慮した正確な輸液プロトコールを開発することができることに留意するべきである。
【0090】
さらに図9を参照して、例示的な液注入器のインピーダンスおよびキャパシタンス特性から以下の式(3)にしたがって輸液不足が得られる。
z-1=c・y0.5+b/x0.5+a(3)
ここで、zは、輸液超過容積や輸液不足容積などのシステム容積コンプライアンス(C)(ミリリットル(mL)などの任意の適切な容積単位で測定してもよい)であり、yは注入時点での少なくとも1つの液リザーバ内の利用可能な容積(V1)であり、xは、少なくとも1つの液リザーバを用いる場合の液の圧力(P1)(ポンド/平方インチ(psi)やキロパスカル(kPA)などの任意の適切な圧力単位で測定してもよい)であり、cは位置スケーラ(A)であり、bは圧力定数(B)であり、aは補償係数(O)であり、補償係数は特定の面についての定数であってもよい。このようにして液の輸液不足容積が決定されると、患者に注入される液を適切な量だけ補正して増加して、液注入器および/または液のキャパシタンスおよびインピーダンスにより失われた容積を補償することができる。輸液不足の予測容積(すなわちz)を輸液するように算定された距離だけピストンを液注入器により多めに駆動して患者への液の正確な注入投与量を確保することができる。値「z」を「補正容積」とも称してもよい。
【0091】
式(3)の係数の値は、観測された注入パラメータについて面カーブにフィッティングするのに適する値を持ってもよい。いくつかの実施形態では、計算されたコンプライアンス値が0mL超~20mL、たとえば3mL~10mLの範囲をとるように、定数cは-0.01~-0.025の範囲の値を持ち、bは8.00~12.00の範囲の値を持ち、aは0.050~0.150の範囲の値を持ってもよい。他の実施形態では、計算されたコンプライアンス値が0mL超~20mL、たとえば3mL~10mLの範囲をとるように、aは0.112~0.115の範囲の値を持ち、bは10.35~10.45の範囲の値を持ち、cは-0.01465~-0.01495の範囲の値を持ってもよい。たとえば、図9をさらに参照して、一実施形態に係る係数は、図9に示されている面カーブに最もフィッティングするものとして決定された値c=-0.014863432、b=10.39086およびa=0.11422056を持ってもよい。ただし、係数a、bおよびcの値は、注入器構成要素(たとえば、モータ構成要素中の構成要素、注入器構成要素間の境界部)のスラック、シリンジのキャパシタンス膨大、管類セットのキャパシタンス膨大、液特性(温度、濃度および/または粘度等)など、特定の注入器システムのインピーダンスおよび/またはキャパシタンス特性、シリンジの構成や医療用液の特性に依存すると解するものとする。したがって、図9にあるような3次元面の例は、液注入器と、液注入器で用いられる使い捨てシリンジおよび液経路セットと、注入される液とによって異なってもよい。
【0092】
図5および図9を参照して、式(1)による補正容積の決定は、いつでも、たとえば、毎日の開始時や、用いられる液注入器毎に多用途シリンジセット(図5に関して説明されているMUDSなど)の初回使用前に実行してもよいし、各注入処置前やその最中に各シリンジに対して実行してもよいし、以前に記憶されて当該システムの寿命にわたって一切の注入に用いられる工場出荷時のデフォルト設定であることが可能である。本開示に係る方法をコンピューティングデバイス300のメモリに記憶し、たとえば、新しい多用途シリンジセットが設置されるときにコンピューティングデバイスのコントローラによって自動的に適用しかつ/またはユーザ入力により適用してもよい。
【0093】
図9にあるような式(1)を液注入器用の例示的な多用途シリンジセットに適用する場合、上記開示に係る例を実施するための例示的なステップは以下の通りである。注入プロトコールのためにシリンジに十分な容積が確実にあるようにする。すなわち、プロトコールのために患者に注入される液の量に加えて、システム内のインピーダンスおよび/またはキャパシタンスによる輸液不足容積を補償するための液の追加容積が確実にあるようにする。これは、CTコントラスト/生理食塩水注入プロトコールでの200mLシリンジについての限定を課さない一例における5~10mL超過や、約7mL(または11mLなどのその他容積の液)など、十分に超過した液を、シリンジに充填されるようにプログラム設定された容積の液に、上記の係数およびパラメータを用いた式(1)の例にしたがって加えることで従来の仕方で実現することができる。これにより、未補正の容積を注入器が輸液した後にピストンを多めに駆動することで計算された輸液不足容積を患者に輸液することを可能にすることにより、輸液不足を補償するのに十分な液がシリンジに確実に入れられる。いくつかの実施形態では、プライミング/パージ動作で用いられる液容積を補償するのにさらに多量の液をシリンジに充填することも要してもよい。これにより、プライミング/パージ後、輸液不足の補償を可能にするのに未補正の容積を超える十分に超過した液が残る。シリンジに未補正の容積と輸液不足補償容積とを含む十分な容積が入っていない状況で、正しい量の液を輸液するのに十分な容積がないことについて注入器が専門技術者に対して警報を発してもよい。この一例として、100mLの注入をプログラムし、パージ後にシリンジ内に107mL未満しかない場合に容積が不十分であることをユーザに警告するものがあってもよい。200mLの注入については、注入器はシリンジを215mLの容積まで充填し、207mLまで先にパージして、輸液不足を補償するのに十分に超過した液を保持する。上記とは異なり、大容積のシリンジを用いて少容積の液しか注入しない場合には輸液不足容積が極少になることが知られている。したがって、ピストンがシリンジの遠位端近傍にある場合、輸液不足を補償するのに僅か約3mLの超過容積が利用可能状態にあることしか要さない。いくつかの例では、ここで説明されているよ
うにゼロ位置がリコイルゼロにあるように設定し、ピストンを当該ゼロを超えて許容される最大圧力まで駆動することにより、これをさらに低減してもよい。本開示の方法を適用する際に様々な場面を考慮に入れるようにプロセッサをプログラムして、液の無駄を最小にし、患者への液の正確な輸液の問題を受け持ってもよい。
【0094】
図10A図10Dは、図8A図8Dおよび図9に関して説明されている例示的な注入システムの圧力の関数として輸液される所望の容積の割合を示すグラフであり、本グラフでは、液注入器が能動制御部を有し、ここで説明されている方法にしたがって注入器プロセッサによって本開示に係る補正容積を計算および適用している。図10A図10Dに見られるように、所望の容積の割合は圧力の関数としてより一定であり、注入プロトコールで必要な液の正確な容積の輸液を示す仕様限界内に収まっている。システムの容積の不正確さの構成要素について補正することにより、輸液される容積の正確度は一貫して仕様限界内に収まることが期待される。
【0095】
図11は、本開示のいくつかの実施形態に係る、注入プロトコールのための液の液容積を補正する例示的な方法のステップを示すフローチャートを含む。ステップ210は、液注入器の少なくとも1つのシリンジによって輸液される液の容積を決定することを含む。ステップ220は、当該容積の液が注入される圧力を決定することを含む。ステップ230は、以下の式(3)などの、シリンジシステムの特定の圧力および注入容積に関連する面カーブにより決定される式にしたがって液の輸液不足容積を計算することを含む。
z-1=c・y0.5+b/x0.5+a(3)
ここで、zは、輸液超過容積や輸液不足容積などのシステム容積コンプライアンス(C)(ミリリットル(mL)などの任意の適切な容積単位で測定してもよい)であり、yは注入時点での少なくとも1つの液リザーバ内の利用可能な容積(V1)であり、xは、少なくとも1つの液リザーバを用いる場合の液の圧力(P1)(ポンド/平方インチ(psi)などの任意の適切な圧力単位で測定してもよい)であり、cは位置スケーラ(A)であり、bは圧力定数(B)であり、aは補償係数(O)であり、補償係数は液注入器のインピーダンス特性に基づいたり、当該特性によって決定されたりする特定の面についての定数であってもよい。ステップ240は、zに対応する量だけ液注入器のピストンを多めに駆動して正確な量の液を患者に輸液することを含む。
【0096】
図12は、本開示のいくつかの実施形態に係る、注入プロトコールのための液の液容積を補正する例示的な方法のステップを示すフローチャートである。注入処置中にシリンジなどの液リザーバから輸液される単一または複数の液の単一または複数の所望の容積をユーザがプログラムする(1210)。その後、液リザーバのプログラム設定された容積または現在の容積と駆動部材の現在の位置(X1)とに基づいて、ピストンなどの最初の最終駆動部材位置(X2)を液注入システムのプロセッサが計算し(1220)、液注入処置を液注入器が開始する(1230)。その後、注入中にリアルタイムで、または最初の最終駆動部材位置(X2)にピストンが到達するかのいずれかで、液の圧力とリザーバに残っている液の容積とをシステムが測定する(1240)。システム特性と圧力および容積測定値とに基づいて、システムのコンプライアンスをシステムが計算し(1250)、最終駆動部材位置を最初の最終駆動部材位置X2からコンプライアンス補正された最終駆動部材位置X2´に更新する(1260)。その後、コンプライアンス補正位置X2´に基づいて、注入が完了したか否か、すなわち、駆動部材が最終コンプライアンス補正位置X2´にあるかをシステムが判断する(1290)。駆動部材が最終コンプライアンス補正位置X2´にないとシステムが判断する場合、システムは、注入が完了し、駆動部材が最終コンプライアンス補正位置X2´にあるとシステムが判断するまで必要であれば何度もステップ1240、1250、1260および1290を繰り返す。駆動部材が最終コンプライアンス補正位置X2´にあるとシステムが判断する場合、システムがバルブ(たとえば栓)を閉鎖する(1270)。ステップ1270で栓を閉鎖すると、リザーバに液のコンプライアンスが、蓄積コンプライアンスとして閉じ込められる。システムは、蓄積コンプライアンスすなわち閉じ込められたコンプライアンスを適宜解放するか、これの代わりに多段階注入プロトコールの次の段階に進む(1280)。後者が行われる場合、蓄積コンプライアンスをリザーバからの液が含むことになり、そのリザーバを用いる次の注入段階では、液容積の計算でコンプライアンスが考慮に入れられることになる(すなわち、蓄積コンプライアンスによってすでにコンプライアンスが考慮に入れられているので、
駆動部材が最終駆動部材位置X2で移動する距離をシステムが調節する必要がない場合がある)。
【0097】
実施例1
実証的にシステムのコンプライアンスを判断するのに以下の試験セットアップを用いた。図6に係る多用途使い捨てシステム(MUDS)56を図5に示されている注入器システム10に挿入し、各リザーバに圧力トランスデューサを取り付けてリアルタイム圧力データを取り込んだ。各リザーバには設定容積まで充填した。出口液ラインをポート76に接続し、次に、MUDS56に取り付け、栓バルブ72を閉鎖した。その後、指定されたリザーバ58a~58cのピストンを前進させることによりシステムを既定の圧力まで加圧した。所望の圧力に達した後、ピストンを停止させた。その後、栓72を開放し、変位した実験室の水を化学天秤で測定した。密度および質量を用いてこの変位した液の容積を計算した。この変位した液の容積を、これに固有のプランジャ位置と圧力との組み合わせに対するコンプライアンス容積として記録した。200mL~10mLの充填容積でデータ点を取得し、各位置で25psi~300psiの範囲の圧力を発生させた。その後、このデータを用いて、システム内の当該リザーバのコンプライアンスの図9に示されている面マップを作成した。複数のMUDSセット56を3つのリザーバ位置すべてと複数の注入器システムとともに用いて、注入器10のシステムコンプライアンスのロバストな特性評価を得た。この面プロットは、データにフィットする式を表す。この式はプランジャ位置および圧力の入力をコンプライアンス容積の出力とともに持つ。このコンプライアンスの計算には2つのフィードバックループ、すなわちピストン位置および圧力が含まれていた。このことは、この関係を用いて、予想される使用状態の範囲の任意の点でコンプライアンスをシステムが計算できたことを意味する。
【0098】
以下は、図9を参照した本開示に係る方法の例示的な実施例である。ステップAは5mL/sで100mLの注入を開始するステップであり、注入には最初に20秒の継続期間がある。ステップBでは、注入圧力を測定する。注入圧力は200psiの定常状態に達する。ステップCでは、ステップAおよびBの上記のパラメータに式(3)を適用する。これにより、輸液された未補正の容積がプログラム設定された容積よりも4.05mL少ないと予測される。ステップDでは、たとえば、注入開始時の容積位置よりも104.05mL少ない最終位置を設定することにより、104.05mLの液を患者に輸液した後にその位置になるように注入の最終位置を調節する。(開始充填位置が107mLの場合、処置完了後の注入器の最終位置は2.95mLになるはずである)。ステップEでは、補正された容積の液を患者に輸液し、最終位置に達した後に栓を閉鎖してリザーバ内の液を隔離する。ステップEでは、閉じ込められた4.05mLのコンプライアンスによって生じた圧力を解放し、シリンジを0psiまで戻してその公称容積状態に戻す。いくつかの実施形態では、後続の段階の注入を実施する場合は閉じ込められたコンプライアンス圧力を解放する必要はなく、後続の段階のコンプライアンス値で考慮してもよい。
【0099】
最も実施容易かつ好ましい例であると現在考えられているものに基づいて例示目的で本開示を詳細に説明してきたが、このような詳細は当該目的のためのものにすぎず、本開示は開示されている例に限定されず、そうではなく、修正および均等構成をカバーすることを意図していると解するものとする。たとえば、本開示では、可能な範囲で、任意の例の、1個または複数の特徴をその他一切の例の、1個または複数の特徴と組み合わせることができることを意図していると解するものとする。
【符号の説明】
【0100】
10 前装填式液注入器、注入器システム
12 シリンジ
12a 第1のシリンジ
12b 第2のシリンジ
13 シリンジポート
14 プランジャ
15 長手方向軸
17 液経路セット
18 円筒形シリンジバレル、円筒形バレル
19 駆動部材、ピストン
20 近位端
21 外面
22 ノズル
23 内面
24 遠位端
25 内部容積
30 挿入部
31 モータ
32 圧力ジャケット
34 ローリングダイアフラムシリンジ
36 中空本体
38 内部容積
40 遠位端
42 近位端
44 可撓性側壁
46 閉鎖端壁
48 放出ネック
50 中央部分
52 駆動部材係合部分
54 ハウジング
56 MUDSセット
58a シリンジ、ポンプ、リザーバ
58b シリンジ、ポンプ、リザーバ
58c シリンジ、ポンプ、リザーバ
58 シリンジ、ポンプ
60 バルク液コネクタ
62 MUDS液経路
64 フレーム
66 充填ポート
68 放出出口、放出管
70 マニホールド
72 栓バルブ、栓
74 液出口ライン
76 ポート
119 側壁
300 コンピューティングデバイス
700 液注入プロトコール
710 第1の液の期待フロープロファイル
720 第2の液の期待フロープロファイル
F1 第1の液
F2 第2の液
F3 第3の液
X2 最初の最終駆動部材位置
X2’ 補正された最終駆動部材位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12