(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230724BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G06F3/041 500
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2020005158
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 祥太
(72)【発明者】
【氏名】坪内 孝太
(72)【発明者】
【氏名】池松 香
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067214(JP,A)
【文献】特開2014-006766(JP,A)
【文献】特開2013-003978(JP,A)
【文献】特開2011-170834(JP,A)
【文献】特開2014-106836(JP,A)
【文献】特開2015-111328(JP,A)
【文献】特開2017-117014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0010653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ面に対する操作体の近接に応じた電流値を出力するタッチセンサから前記電流値を取得する電流値取得部と、
前記操作体の1回のタップ動作によって前記電流値が変化している期間であるタップ期間を検出する期間検出部と、
前記タップ期間に取得される前記電流値に基づいて、前記電流値の変化に関するパラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記パラメータを用いて、前記タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定するタップ判定部と、を備え
、
前記電流値取得部は、前記タッチセンサから前記タッチ面の単位領域ごとの前記電流値を取得し、
前記パラメータ算出部は、前記タップ期間内の前記単位領域ごとの前記電流値の分布の変化に基づいて、前記タップ期間内の前記タッチ面に対する前記操作体の位置ずれ量を前記パラメータとして算出する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記パラメータ算出部は、前記タップ期間内の前記電流値の最大値、または、前記タップ期間内の前記電流値の最大変化率のうち、少なくとも一つを前記パラメータとして算出する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置において、
前記電流値取得部は、前記タッチセンサから前記タッチ面の単位領域ごとの前記電流値を取得し、
前記パラメータ算出部は、前記タップ期間内の前記単位領域ごとの前記電流値の分布、または、前記タップ期間内の所定値以上の前記電流値に対応する前記単位領域の数のうち、少なくとも一つを前記パラメータとして算出する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記タップ判定部は、前記パラメータと、前記タップ期間の時間とを用いて、前記タップ動作が前記シングルタップであるか、前記ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記タップ判定部により、前記タップ動作が前記ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であると判定された場合において、前記ダブルタップに対応するイベントをバックグラウンドで実行する出力制御部をさらに備える
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記タップ判定部は、少なくとも前記パラメータを入力とする判定モデルを用いて、前記タップ動作が前記シングルタップであるか、前記ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
コンピューターにより、タッチセンサを介して入力される入力操作の種類を判定する情報処理方法であって、
前記コンピューターは、電流値取得部、期間検出部、パラメータ算出部、およびタップ判定部を備え、
前記電流値取得部が、タッチ面に対する操作体の近接に応じた電流値を出力するタッチセンサから前記電流値を取得するステップと、
前記期間検出部が、前記操作体の1回のタップ動作によって前記電流値が変化している期間であるタップ期間を検出するステップと、
前記パラメータ算出部が、前記タップ期間に取得される前記電流値に基づいて、前記電流値の変化に関するパラメータを算出するステップと、
前記タップ判定部が、前記パラメータを用いて、前記タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定するステップと、を実施
し、
前記電流値取得部は、前記タッチセンサから前記タッチ面の単位領域ごとの前記電流値を取得し、
前記パラメータ算出部は、前記タップ期間内の前記単位領域ごとの前記電流値の分布の変化に基づいて、前記タップ期間内の前記タッチ面に対する前記操作体の位置ずれ量を前記パラメータとして算出することを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
コンピューターにより読み取り実行可能な情報処理プログラムであって、
前記コンピューターを請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを介してユーザの入力操作を受け付ける情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサを介してユーザの入力操作を受け付け、当該入力操作に応じた処理(イベント)を実行する情報処理装置が存在する。このような情報処理装置は、タッチセンサのタッチ面に対する操作体のタップ動作を検出し、1回のタップ動作によるシングルタップと、2回のタップ動作によるダブルタップとを、それぞれ異なる入力操作として受け付ける(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の情報処理装置では、タップ動作が1回検出された後、2回目のタップ動作が検出される可能性のある所定時間内に2回目のタップ動作が検出されるか否かによって、シングルタップとダブルタップとを識別する判定処理が行われる。しかし、このような判定処理は、シングルタップに対応するイベントの遅延を増大させてしまう。
例えば、入力操作がダブルタップである場合、情報処理装置は、2回目のタップ動作が検出された直後にダブルタップを識別できるため、ダブルタップに対応するイベントの遅延時間は100msec程度である。一方、入力操作がシングルタップである場合、情報処理装置は、1回目のタップ操作を検出した時点から所定時間(例えば300msec程度)待機した後に、シングルタップを識別するため、シングルタップに対応するイベントの遅延時間は400msec程度である。このようなシングルタップの遅延時間は、ユーザに対して処理の遅れを認識させてしまう。
【0005】
本発明は、シングルタップに対応するイベントの遅延時間を低減可能な情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理装置は、タッチ面に対する操作体の近接に応じた電流値を出力するタッチセンサから前記電流値を取得する電流値取得部と、前記操作体の1回のタップ動作によって前記電流値が変化している期間であるタップ期間を検出する期間検出部と、前記タップ期間に取得される前記電流値に基づいて、前記電流値の変化に関するパラメータを算出するパラメータ算出部と、前記パラメータを用いて、前記タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定するタップ判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、操作体がタッチ面に対してタップ動作することに伴って、タッチセンサから出力される電流値が変化する。そこで、1回のタップ動作(判定対象タップ動作)により電流値が変化する期間をタップ期間として検出し、タップ期間における電流値の変化に関するパラメータを算出し、当該パラメータに基づいて、判定対象タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定する。
ここで、タップ期間における電流値は、判定対象タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップの1回目のタップ動作であるかによって、互いに異なる変化を示すため、この変化に関するパラメータを利用することで、判定対象タップ動作を好適に判定できる。また、この判定処理は、1回のタップ動作が終了した直後に行うことができるため、従来のような待機時間を設けなくてもよい。これにより、シングルタップイベントの遅延時間を従来技術よりも大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるタッチ入力装置を示すブロック図。
【
図2】前記実施形態のタッチセンサの電極構造を示す模式図。
【
図3】前記実施形態にかかる情報処理方法の流れを説明するフローチャート。
【
図4】前記実施形態の電流値の時間変化を示すグラフ。
【
図5】実施例における判定処理のタイミングを説明するタイムチャート。
【
図6】比較例における判定処理のタイミングを説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のタッチ入力装置1は、操作体が接触可能なタッチ面210を有するタッチセンサ2と、タッチセンサ2を介してユーザの入力操作を受け付け、当該入力操作に応じた処理(イベント)を実行する情報処理装置10とを備える。
なお、タッチ入力装置1は、例えばパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの電子機器に用いられる。タッチセンサ2は、電子機器が有する表示部に重畳して配置されるタッチパネルを構成してもよいし、当該表示部とは別に配置されるタッチパッドを構成してもよい。
【0010】
〔タッチセンサ〕
本実施形態のタッチセンサ2は、タッチ検出方式として、投影型静電容量方式のうちの相互容量方式を採用しており、タッチ面210に沿って配置される電極構造を有するタッチ部21と、タッチ部21に駆動信号Saを送信する送信部22と、タッチ部21を介して駆動信号Saを受信する受信部23とを有する。
【0011】
図2は、タッチセンサ2の具体的構造を示す模式図である。
図2に示すように、タッチ部21は、一方向に沿って配置された複数の送信電極Tx(x=1、2、・・・n)と、当該一方向に直交する方向に沿って配置された複数の受信電極Rx(x=1、2、・・・n)とを有する。送信電極Txと受信電極Rxとが交差する電極交点Piは、タッチ面210の単位領域に対応し、各電極交点Piには静電容量C
0が形成される。
【0012】
送信部22は、複数の送信電極Txに対して順に、交流信号である駆動信号Saを送信する。
受信部23は、いずれかの送信電極Txに駆動信号Saが送信されている間、複数の受信電極Rxから順に駆動信号Saを受信する。これにより、受信部23は、送信電極Txから受信電極Rxへ各電極交点Piを経由して伝送された駆動信号Saを順に受信する。
【0013】
ここで、指などの接地された操作体が電極交点Piに近接すると、操作体に応じた容量が静電容量C0に割り込んで結合し、電極交点Piから操作体を介して駆動信号Saの電流の一部がグランドへ流出する。これにより、受信部23が受信する駆動信号Saのレベル(電位)が減少する。
そこで、受信部23は、各電極交点Piを介して受信した駆動信号Saの電圧を検出し、駆動信号Saの検出電圧と送信部22による駆動信号Saの発振電圧との差、すなわち、駆動信号Saのレベル変化量を算出する。そして、受信部23は、電極交点Piごとに、駆動信号Saのレベル変化量に対応する出力値を示す検出信号Sdを生成し、情報処理装置10に出力する。
【0014】
〔情報処理装置〕
情報処理装置10は、コンピューターにより構成され、記憶部11および制御部12等を含んで構成されている。
記憶部11は、メモリまたはハードディスク等により構成されたデータ記録装置である。記憶部11には、情報処理装置10を制御するための情報処理プログラム(ソフトウェア)、および、後述の判定モデル110が記録されている。
【0015】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路およびRAM(Random Access Memory)等の記録回路により構成される。制御部12は、記憶部11等に記録されている情報処理プログラムをRAMに展開し、RAMに展開されたプログラムとの協働により各種処理を実行する。そして、制御部12は、記憶部11に記録された情報処理プログラムを読み込み実行することで、電流値取得部121、タッチ検出部122、期間検出部123、パラメータ算出部124、タップ判定部125、操作判定部126、出力制御部127、および、モデル生成部128として機能する。
【0016】
電流値取得部121は、受信部23から出力される検出信号Sdを所定周期でサンプリングし、検出信号Sdの出力値(電流値Ia)と当該電流値Iaに対応する単位領域の座標情報とを取得する。すなわち、電流値取得部121は、タッチ面210の単位領域ごとの電流値Iaを取得する。
【0017】
タッチ検出部122は、電流値取得部121により電流値Iaと当該電流値Iaに対応する単位領域の座標情報とに基づいて、タッチ面210に対して操作体が接触した座標であるタッチ座標を検出する。
期間検出部123は、タッチ面210に操作体が接触した接触期間を検出し、この接触期間のうち、タップ動作の条件を満たす接触期間をタップ期間Ttとして検出する。ここで、タップ動作の条件とは、例えば、接触期間が所定時間以下であって、かつ、当該接触期間内におけるタッチ座標の移動量が所定量以下となることである。
【0018】
パラメータ算出部124は、タップ期間Ttに取得される電流値Iaに基づいて、この電流値Iaの変化に関する一つ以上のパラメータ(以下、電流パラメータと称する場合がある)を算出する。なお、電流パラメータの詳細については後述する。
【0019】
タップ判定部125は、タップ期間Ttの時間と、パラメータ算出部124により算出された電流パラメータとに基づいて、タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定する。
なお、シングルタップとは、操作体が1回タップ動作を行う操作に対応する。ダブルタップとは、操作体が2回連続してタップ動作を行う操作に対応する。
【0020】
操作判定部126は、1回目のタップ期間Tt後の所定時間(待機時間)内に2回目のタップ期間Ttが検出されるか否かに基づいて、ユーザの入力操作がシングルタップであるか、または、ダブルタップであるかを判定する。
【0021】
出力制御部127は、タップ判定部125または操作判定部126による判定結果に応じて、シングルタップに対応するイベント(シングルタップイベント)、または、ダブルタップに対応するイベント(ダブルタップイベント)を実行する。この出力制御部127は、ダブルタップイベントをバックグラウンドで処理することが可能である。
【0022】
モデル生成部128は、タップ期間Ttの時間と、電流パラメータと、入力操作の種類(シングルタップ、ダブルタップ)との関係性を機械学習することにより、判定モデル110を構築する。例えば、モデル生成部128は、操作判定部126により判定される入力操作の種類を正解データとして、タップ期間Ttの時間と電流パラメータとに組み合わせることで教師データを作成する。そして、モデル生成部128は、所定期間で蓄積された教師データに基づいて学習し、判定モデル110を生成する。
この判定モデル110は、操作体が行ったタップ動作の後に続けてタップ動作が行われるかを判定対象とするモデルであり、タップ動作に関するタップ期間Ttの時間および電流パラメータが入力されると、次のタップ動作が行われる可能性を示すスコアを出力する。判定モデル110が出力するスコアが高いほど、入力操作がダブルタップである可能性が高く、判定モデル110が出力するスコアが低いほど、入力操作がシングルタップである可能性が高い。
【0023】
[情報処理方法]
情報処理装置10によるタップ動作の判定処理の流れについて
図3のフローチャートを参照して説明する。
なお、情報処理装置10の稼働中、電流値取得部121は、受信部23から出力される検出信号Sdを所定周期でサンプリングし、検出信号Sdの出力値(電流値Ia)および電流値Iaに対応する単位領域の座標情報を取得する。
【0024】
まず、期間検出部123は、操作体のタップ動作によるタップ期間Ttを検出したか否かを判定する(ステップS1)。
具体的には、
図4に示すように、ノイズによる誤検出を防止するための閾値Ithが予め設定されており、期間検出部123は、特定の単位領域に対応する電流値Iaが閾値Ith以上になった時点を開始時刻tsとして検出し、当該電流値Iaが閾値Ith未満になった時刻を終了時刻teとして検出する。
そして、期間検出部123は、開始時刻tsから終了時刻teまでの接触期間が所定時間以下であり、かつ、当該接触期間内におけるタッチ座標の移動量が所定量以下である場合、タップ期間Ttを検出したと判定し、タップ期間Ttの時間を取得する。
以下、ステップS1で検出されたタップ期間Ttに対応するタップ動作を、判定対象タップ動作と称する。
【0025】
なお、
図4では、シングルタップのタップ動作、および、ダブルタップの1回目のタップ動作について、それぞれ、タップ期間Ttにおける特定の単位領域に対応する電流値Iaの変化を示している。
ここで、特定の単位領域に対応する電流値Iaとは、例えばタッチ座標の重心に相当する単位領域の電流値Ia、または、タッチ面210全体の単位領域におけるトータルの電流値Iaなどである。
【0026】
期間検出部123は、タップ期間Ttが検出された場合(ステップS1でYesの場合)、ステップS2に進み、ステップS1でNoの場合、タップ期間Ttが検出されるまでステップS1を繰り返す。
【0027】
ステップS2において、パラメータ算出部124は、ステップS1で検出されたタップ期間Ttにおける電流パラメータを算出する。この電流パラメータについて、
図4を参照して以下に説明する。
【0028】
図4に示すように、一般に、ダブルタップの1回目のタップ動作では、シングルタップのタップ動作と比較して、タップ動作を行う操作体の速度が速いことにより、タップ期間Ttが短く、タッチ面210に対する接触面積が素早く増加する。
また、ダブルタップの1回目のタップ動作は、シングルタップのタップ動作と比較して、タップ期間Tt内の電流値Iaの最大値が大きくなる傾向がある。
よって、パラメータ算出部124は、タップ期間Tt内の電流値Iaの最大変化率、または、タップ期間Tt内の電流値Iaの最大値を、電流パラメータとして算出することができる。
【0029】
また、指などの弾性を有する操作体を用いる場合、ダブルタップの1回目のタップ動作と、シングルタップのタップ動作との間では、力加減の差異によって、タッチ面210に対する操作体指の接触面積が異なる傾向がある。
よって、パラメータ算出部124は、タップ期間Tt内の単位領域ごとの電流値Iaの分布、または、タップ期間Tt内の所定値以上の電流値Iaに対応する単位領域の数を、電流パラメータとして算出することができる。
【0030】
さらに、ダブルタップの1回目のタップ動作では、シングルタップのタップ動作と比較して、タップ動作を行う操作体の速度が速いことにより、操作体がタッチ面210と衝突した際、タッチ面210に対する操作体の接触位置が若干ずれることがある。
そこで、パラメータ算出部124は、タップ期間Tt内の単位領域ごとの電流値Iaの分布の変化に基づいて、タップ期間Tt内のタッチ面210に対する操作体の位置ずれ量を電流パラメータとして算出することができる。なお、この位置ずれ量は、タッチ座標の変化として検出されない程度の量であってもよい。
【0031】
以上のような電流パラメータを算出後、タップ判定部125は、タップ期間Ttの時間と、パラメータ算出部124により算出された1以上の電流パラメータとを判定モデル110に入力し、次のタップ動作が行われる可能性を示すスコアを判定モデル110から取得する(ステップS3)。
そして、タップ判定部125は、判定モデル110から取得したスコア、すなわち次のタップ動作が行われる可能性を示すスコアが閾値th1以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ここで、閾値th1は、判定対象タップ動作がダブルタップの1回目のタップ動作ある可能性が十分に高いことを示す下限値として予め設定される。
【0032】
スコアが閾値th1未満である場合(ステップS4でNoの場合)、タップ判定部125は、判定モデル110から取得したスコアが閾値th2以下であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、閾値th2は、閾値th1より小さい値であり、判定対象タップ動作がシングルタップのタップ動作である可能性が十分に高いことを示す上限値として予め設定される。
【0033】
スコアが閾値th2以下である場合(ステップS5でYesの場合)、タップ判定部125は、判定対象タップ動作がシングルタップのタップ動作であると判定し、出力制御部127は、シングルタップイベントを実行する(ステップS6)。
【0034】
一方、スコアが閾値th1以上である場合(ステップS4でYesの場合)、タップ判定部125は、判定対象タップ動作がダブルタップの1回目のタップ動作であると判定し、出力制御部127は、ダブルタップイベントをバックグラウンドで実行する(ステップS7)。
【0035】
ステップS7の後、または、ステップS5でNoの場合(スコアが閾値th2より大きく、かつ、閾値th1未満である場合)、操作判定部126は、タップ期間Ttの終了時刻teから所定の待機時間内に、期間検出部123がタップ期間Tt(2回目)を検出するか否かを判定する(ステップS8)。なお、ステップS8におけるタップ期間Ttの検出方法はステップS1と同様である。また、ステップS8における待機時間は、従来と同様、ダブルタップの2回目のタップ動作を検出可能である時間(例えば300msec程度)に設定される。
【0036】
待機時間内にタップ期間Tt(2回目)が検出された場合(ステップS8;Yesの場合)、操作判定部126は、入力操作がダブルタップであると判定し、出力制御部127は、ダブルタップイベントを実行する(ステップS9)。なお、出力制御部127は、ダブルタップイベントがバックグラウンドで実行されている場合には、その実行結果を出力する。
一方、待機時間内にタップ期間Tt(2回目)が検出されない場合(ステップS8;Noの場合)、操作判定部126は、入力操作がシングルタップであると判定し、出力制御部127は、ステップS6に移行し、ダブルタップイベントを実行する。
以上により、情報処理装置10によるタップ動作の判定処理が終了する。
【0037】
なお、前述のステップS8での操作判定部126による判定結果(入力操作の種類)は、ステップS1で検出されたタップ期間Ttの時間と、ステップS2で算出された電流パラメータと組み合わせられることで教師データを形成する。モデル生成部128は、この教師データに基づいて、判定モデル110を更新することができる。
【0038】
〔効果〕
本実施形態では、前述したように、操作体がタッチ面210に対してタップ動作することに伴って、タッチセンサ2から出力される検出信号Sdの電流値Iaが変化する。そこで、1回のタップ動作(判定対象タップ動作)により電流値Iaが変化する期間をタップ期間Ttとして検出し、タップ期間Ttにおける電流パラメータを算出し、当該電流パラメータに基づいて、判定対象タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップを構成する1回目のタップ動作であるかを判定する。
ここで、タップ期間Ttにおける電流パラメータは、判定対象タップ動作がシングルタップであるか、ダブルタップの1回目のタップ動作であるかによって、互いに異なる値を示すため、このような電流パラメータを利用することで判定対象タップ動作を好適に判定できる。また、判定対象タップ動作を判定する処理は、判定対象タップ動作が終了した直後に行うことができるため、従来のような待機時間を設けなくてもよい。これにより、シングルタップイベントの遅延時間を従来技術よりも大幅に低減させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、判定対象タップ動作がダブルタップを構成する1回目のタップ動作であると判定された場合、出力制御部127が、ダブルタップに対応するイベント(ダブルタップイベント)をバックグラウンドで実行する。これにより、ダブルタップイベントの遅延時間を従来技術よりも低減させることができる。
【0040】
例えば、本実施形態の実施例(
図5参照)と比較例(
図6参照)とのそれぞれについて、ダブルタップおよびシングルタップを例示する。なお、比較例では、従来技術と同様、1回目のタップ動作が検出された後の待機時間内に2回目のタップ動作が検出されるか否かに基づいて、入力操作がシングルタップまたはダブルタップのいずれであるかを判定する。
【0041】
図6に示すように、比較例においてシングルタップが行われる場合、判定処理の時刻は、タップ終了時刻t11から所定の待機時間が経過した時刻t12であり、この時刻t12後の時刻t13にてシングルタップイベントが実行される。
【0042】
一方、
図5に示すように、実施例においてシングルタップが行われる場合、電流パラメータを用いた判定処理の時刻は、タップ終了時刻t1とほぼ同時刻であり、タップ終了時刻t1の直後の時刻t2において、シングルタップイベントを実行することができる。
よって、実施例のシングルタップイベントの遅延時間Td1(
図5参照)は、比較例のシングルタップイベントの遅延時間Td2(
図6参照)と比較して大幅に短縮される。
【0043】
また、
図6に示すように、比較例においてダブルタップが行われる場合、判定処理の時刻は、2回目のタップ終了時刻t14であり、この時刻t14後の時刻t15にてダブルタップイベントが実行される。
【0044】
一方、
図5に示すように、本実施形態においてダブルタップが行われる場合、電流パラメータを用いた判定処理の時刻は、タップ終了時刻t3とほぼ同時刻である。そして、このタップ終了時刻t3から2回目のタップ終了時刻t4までの間の時間において、ダブルタップイベントをバックグラウンドで処理できるため、時刻t4とほぼ同時にダブルタップイベントの処理結果を出力することができる。
よって、実施例のダブルタップイベントの実行時刻を、比較例のシングルタップイベントの実行時刻よりも早めることが可能になる。
【0045】
本実施形態に例示した電流パラメータおよびタップ期間Ttの時間は、ユーザごとに、あるいは、複数のユーザにおいて、ダブルタップの1回目のタップ動作とシングルタップのタップ動作との間で異なる傾向を示す。よって、電流パラメータおよびタップ期間Ttを入力とした判定モデル110を用いて、タップ動作を判定することにより、ユーザの傾向に適した高精度な判定を行うことができる。
【0046】
〔変形例〕
前記実施形態では、情報処理装置10がモデル生成部128を有しているが、本発明はこれに限られない。例えば、情報処理装置10を含むタッチ入力装置1がユーザの端末装置として構成され、複数の端末装置と通信可能なサーバ装置が存在する場合、このサーバ装置がモデル生成部128を有していてもよい。この場合、モデル生成部128は、複数のユーザから取得したデータを学習データとして用いることにより、判定モデル110を生成することができる。また、モデル生成部128は、ユーザの属性(性別または年齢層など)に合わせた判定モデル110を生成してもよい。サーバ装置は、モデル生成部128により生成された判定モデル110を、各端末装置に送信することができる。
【0047】
前記実施形態では、電流パラメータとタップ期間Ttの時間との両方を判定モデル110に入力しているが、電流パラメータのみであってもよい。
また、前記実施形態では、タップ判定部125は、判定モデル110を用いて、判定対象タップ動作の種類を判定しているが、本発明はこれに限られない。例えば、タップ判定部125は、電流パラメータおよびタップ期間Ttの時間のそれぞれについて、閾値との比較を行うことにより、判定対象タップ動作の種類を判定してもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、タッチ部21が複数の電極交点Piを有することにより、タッチ面210が複数の単位領域を有するが、本発明はこれに限られず、少なくとも1つの電極交点Pi(単位領域)があればよい。
【0049】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0050】
1…タッチ入力装置、10…情報処理装置、11…記憶部、110…判定モデル、12…制御部、121…電流値取得部、122…タッチ検出部、123…期間検出部、124…パラメータ算出部、125…タップ判定部、126…操作判定部、127…出力制御部、128…モデル生成部、2…タッチセンサ、21…タッチ部、210…タッチ面、22…送信部、23…受信部、Ia…電流値、Pi…電極交点、Rx…受信電極、Tx…送信電極、Sa…駆動信号、Sd…検出信号、Tt…タップ期間。