IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図1
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図2
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図3
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図4
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図5
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図6
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図7
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図8
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図9
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図10
  • 特許-絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/60 20060101AFI20230724BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20230724BHJP
   G11B 5/455 20060101ALI20230724BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20230724BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20230724BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20230724BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20230724BHJP
【FI】
G11B5/60 C
G11B5/60 P
G11B21/21 D
G11B5/455 C
G01R27/02 R
G01R31/50
G01R31/52
G01R31/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020010199
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021118012
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 涼介
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-038380(JP,A)
【文献】特開平09-178771(JP,A)
【文献】特開平11-344539(JP,A)
【文献】特開平09-196968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/60
G11B 5/455
G11B 21/21
G01R 27/02
G01R 31/50 - 31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被測定部の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置であって、
基準面とワーク載置面とを有した下側治具と、
前記基準面と対向する当接面を有した上側治具と、
前記上側治具に設けられ前記ワーク載置面に向けて突出するプローブと該プローブを下方に付勢するばねとを含むプローブユニットと、
前記上側治具を前記下側治具に向けて降下させるサーボモータを含み、前記プローブを前記被測定部に接触させかつ前記当接面を前記基準面に当接させる昇降機構と、
前記プローブが前記被測定部に接触しかつ前記当接面が前記基準面に当接した状態において、前記サーボモータのトルクが増加し所定値に達すると、前記トルクが維持された状態において前記プローブにより前記被測定部の絶縁抵抗を測定する制御部と、
を具備したことを特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置において、
複数のサスペンションが所定ピッチで並ぶサスペンション連鎖品を搬送する搬送機構を有し、
前記搬送機構が前記サスペンションのテールパッド部を前記ワーク載置面に載置するアクチュエータを含むことを特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置において、
前記プローブユニットが、
前記被測定部の第1の接触部に接する第1のプローブと、
前記第1のプローブを下方に付勢する第1のばねと、
前記被測定部の第2の接触部に接する第2のプローブと、
前記第2のプローブを下方に付勢する第2のばねとを有し、
前記第1のプローブの先端が前記第1の接触部に当接し、前記第2のプローブの先端が前記第2の接触部に当接し、前記第1のばねと前記第2のばねとがそれぞれ圧縮された状態において、前記当接面が前記基準面に当接することを特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置において、
前記下側治具が前記基準面よりも低い位置に存する前記ワーク載置面を有し、
前記上側治具が前記当接面よりも高い位置に存するプローブ取付面を有したことを特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置において、
前記基準面と前記当接面とがそれぞれ水平方向に延びる平面からなり、
前記基準面と前記当接面とが互いに平行であることを特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項6】
ワークの被測定部の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定方法において、
測定ステージに設けられた下側治具のワーク載置面に前記ワークの前記被測定部を載置し、
プローブを有する上側治具を前記被測定部に向けてサーボモータによって降下させ、
前記プローブの先端を前記被測定部に当接させ、
前記プローブをばねによって前記被測定部に向けて付勢し、
前記プローブの先端が前記被測定部に当接した状態において前記上側治具を前記サーボモータによってさらに降下させ、
前記上側治具の当接面を前記下側治具の基準面に当接させ、
前記当接面が前記基準面に当接した状態において前記サーボモータのトルクが上昇し、
前記トルクが所定値に達すると、前記トルクが維持された状態において、前記プローブによって前記被測定部の絶縁抵抗を測定することを特徴とする絶縁抵抗測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の絶縁抵抗測定方法において、前記ワークの加工に用いる金型セットの下側治具を前記下側治具用い、前記金型セットの上側治具を前記上側治具用いることを特徴とする絶縁抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばディスク装置用サスペンション等の被測定部の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置にディスク装置が使用されている。ディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームにディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、フレキシャ(flexure)などを備えている。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、スライダが設けられている。スライダには、ディスクに記録されたデータの読取りや書込み等のアクセスを行なうための素子が設けられている。
【0004】
前記フレキシャは、薄いステンレス鋼の板からなるメタルベースと、メタルベース上に形成された配線部を含んでいる。配線部は、ポリイミド等の電気絶縁材料からなるベース絶縁層と、ベース絶縁層上に形成された銅からなる複数の導体などを含んでいる。導体の一方の端部は、スライダに設けられた素子やフレキシャに設けられた電子部品に接続される。導体の他方の端部はアンプ等の電子機器に接続される。
【0005】
従来のサスペンションの一例が特許文献1に記載されている。そのサスペンションのフレキシャは、長さ方向に延びるフレキシャテールを有している。フレキシャテールの端部にテールパッド部が形成されている。テールパッド部には、アンプ等の電子回路に接続するための端子(テール電極)が配置されている。配線部の絶縁層はポリイミド等の樹脂からなり、その厚さは2-20μmときわめて薄い。しかし配線部の信頼性の要求は高く、絶縁性についても高度の信頼性が要求されている。このため全てのサスペンションについて、配線部の絶縁抵抗を測定すること(いわゆる全数検査)が求められている。
【0006】
フレキシャに設けられた配線部等の被測定部の絶縁性を検査するために、絶縁抵抗測定装置を用いて絶縁抵抗が検査されることがある。たとえば一対のプローブのうちの一方をテールパッド部の端子(テール電極)に接触させ、他方のプローブをフレキシャのメタルベースに接触させることによって、絶縁抵抗が測定される。このためプロービングを正確にかつ安定的に行なうことが求められている。たとえば特許文献2に記載されているように、プロービングを安定させるためにプローブの周囲に空気流を供給することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9679592号明細書
【文献】特開2010-32435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サスペンションの絶縁抵抗を測定する際には、プローブを被測定部に確実に接触させる必要がある。しかし微小な部品であるサスペンションの生産ラインにおいて、プローブを被測定部に能率良くかつ安定的に接触させることは容易でない。たとえば被測定部の湿度変化による影響や、被測定部の形状ばらつき、変形の度合いなどの影響を受け、測定結果にノイズが入るなどして正確な測定を期待できないこともある。このためサスペンションの生産ライン上で絶縁抵抗を測定する際のプロービングを能率良くかつ正確に行なうことが可能な絶縁抵抗測定装置が望まれていた。
【0009】
従って本発明の目的は、たとえばディスク装置用サスペンション等の絶縁抵抗を測定する際のプロービングを能率良く、しかも正確に行なうことができる絶縁抵抗測定装置と、絶縁抵抗測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態は、たとえばディスク装置用サスペンション等のワークの被測定部の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置であって、基準面とワーク載置面とを有した下側治具と、前記基準面と対向する当接面を有した上側治具と、前記上側治具に設けられ前記ワーク載置面に向けて突出するプローブと該プローブを下方に付勢するばねとを含むプローブユニットと、昇降機構と、制御部とを備えている。前記昇降機構は、前記上側治具を前記下側治具に向けて降下させるサーボモータを含み、前記プローブを前記被測定部に接触させかつ前記当接面を前記基準面に当接させる。前記制御部は、前記プローブが前記被測定部に接触しかつ前記当接面が前記基準面に当接した状態において、前記サーボモータのトルクが増加し所定値に達すると、前記トルクが維持された状態において前記プローブにより前記被測定部の絶縁抵抗を測定する。
【0011】
ワークの一例は、複数のサスペンションが所定ピッチで並ぶサスペンション連鎖品である。前記絶縁抵抗測定装置が前記サスペンション連鎖品を移動させるための搬送機構を有してもよい。前記搬送機構は、前記サスペンションのテールパッド部を前記ワーク載置面に載置するアクチュエータを有してもよい。
【0012】
前記プローブユニットが、前記被測定部の第1の接触部に接する第1のプローブと、前記第1のプローブを下方に付勢する第1のばねと、前記被測定部の第2の接触部に接する第2のプローブと、前記第2のプローブを下方に付勢する第2のばねとを有してもよい。前記第1のプローブの先端が前記第1の接触部に当接し、前記第2のプローブの先端が前記第2の接触部に当接し、前記第1のばねと前記第2のばねとがそれぞれ圧縮された状態において、前記当接面が前記基準面に当接する。
【0013】
前記下側治具が前記基準面よりも低い位置に存する前記ワーク載置面を有し、前記上側治具が前記当接面よりも高い位置に存するプローブ取付面を有していてもよい。また前記基準面と前記当接面とがそれぞれ水平方向に延びる平面からなり、前記基準面と前記当接面とが互いに平行であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定の際のプロービングを能率良くかつ正確に行なうことができる。このため、たとえばディスク装置用サスペンション等のワークの絶縁抵抗を能率良くかつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】1つの実施形態に係る絶縁抵抗測定装置を模式的に示す斜視図。
図2図1に示された絶縁抵抗測定装置の治具ユニットの側面図。
図3図2に示された治具ユニットの上側治具が上昇した状態を一部断面で表した側面図。
図4図2に示された治具ユニットの上側治具が降下した状態を一部断面で表した側面図。
図5図1に示された絶縁抵抗測定装置の処理の流れを示すフローチャート。
図6図1に示された絶縁抵抗測定装置のサーボモータの作動経過時間とトルクとの関係を表した図。
図7図1に示された絶縁抵抗測定装置のプローブとサスペンションの一部を模式的に表した斜視図。
図8】ディスク装置の一例を示す斜視図。
図9図8に示されたディスク装置の一部の断面図。
図10】ディスク装置用サスペンションの一例を示す平面図。
図11】サスペンション連鎖品の一部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に1つの実施形態に係る絶縁抵抗測定装置について、図1から図7を参照して説明する。測定対象物(ワーク)の一例は、ディスクドライブ用サスペンションである。まずディスク装置用サスペンションの一例について、図8から図11を参照して説明する。
【0017】
図8に示すようにディスク装置(ハードディスク装置)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク(磁気ディスク)4と、ピボット軸5を中心に旋回するキャリッジ6と、キャリッジ6を旋回させるポジショニング用モータ7とを有している。ケース2は図示しない蓋によって密閉される。
【0018】
図9は、ディスク装置1の一部を模式的に示した断面図である。キャリッジ6にアーム8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部付近に磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。
【0019】
ディスク4が回転すると、ディスク4とスライダ11との間にエアベアリングが形成される。ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、スライダ11がディスク4の所望トラックへ移動する。スライダ11には、ディスク4にデータを記録するための素子と、ディスク4に記録されたデータを読取るための素子とが設けられている。
【0020】
図10に示されたヘッドジンバルアセンブリ12は、サスペンション10と、サスペンション10に搭載されたスライダ11とを有している。サスペンション10は、ベースプレート15と、ロードビーム16と、フレキシャ20などを含んでいる。ベースプレート15のボス部15aは、キャリッジのアーム8(図8図9に示す)に固定される。ロードビーム16はステンレス鋼の板からなる。
【0021】
フレキシャ20は、ロードビーム16に重なる部分21と、ベースプレート15の後方に延びるフレキシャテール22などを備えている。フレキシャテール22はテールパッド部22aを含んでいる。テールパッド部22aには、アンプ等の電子機器に接続される端子(テール電極)25が配置されている。
【0022】
フレキシャ20は、メタルベース30(図10に一部を示す)と、メタルベース30に沿って配置された配線部31とを含んでいる。メタルベース30は、レーザ溶接等の溶接部32によってロードビーム16に固定されている。メタルベース30は、電気的なグランドとしても利用される。
【0023】
配線部31は、メタルベース30上に形成されたポリイミド等の絶縁材料からなる絶縁層と、絶縁層上に形成された複数の導体とを有している。導体の一方の端部は、スライダに設けられた素子等に電気的に接続される。導体の他方の端部は、テールパッド部22aの端子25と導通している。
【0024】
図11はサスペンション連鎖品(suspension chain blank)40の一部を示している。サスペンション連鎖品40は、多数のサスペンション10を製造する過程で作られる中間製品である。サスペンション連鎖品40は、フレーム41と、フレーム41に所定ピッチで配置された複数のロードビーム16と、各ロードビーム16に固定されたベースプレート15と、各ロードビーム16に固定されたフレキシャ20とを含んでいる。
【0025】
サスペンション連鎖品40に設けられた複数のサスペンション10は、フレーム41に所定間隔(ピッチP1)で配置されている。フレーム41は、ロードビーム16と共通のステンレス鋼の板からなる。複数のロードビーム16がそれぞれ接続部42において、フレーム41と一体につながっている。
【0026】
サスペンション連鎖品40に設けられたフレキシャ20の絶縁抵抗が、本実施形態に係る絶縁抵抗測定装置50(図1から図4に示す)によって検査される。検査が行われたのち、サスペンション連鎖品40の接続部42が金型セットによって切断されることにより、サスペンション10がフレーム41から切離される。
【0027】
以下に、1つの実施形態に係る絶縁抵抗測定装置50の構成と作用について、図1から図7を参照して説明する。測定対象物(ワーク)の一例は、サスペンション連鎖品40(図11に示す)に設けられたサスペンション10である。なお測定対象物がサスペンション10以外の電子機器であってもよい。
【0028】
図1に示された絶縁抵抗測定装置50は、測定ステージ51に配置された治具ユニット52と、制御部53と、測定結果等を表示する表示部54と、ワーク(サスペンション連鎖品40)を移動させる搬送機構55とを有している。搬送機構55は、サスペンション連鎖品40をサスペンション10が並んでいる方向(矢印M1で示す方向)に、サスペンション10の配置間隔(ピッチP1)ずつ、間欠的に移動させる。
【0029】
搬送機構55の一例は、サスペンション連鎖品40を載置するワーク支持部材56と、ガイド部材57と、アクチュエータ58とを含んでいる。ワーク支持部材56は、サスペンション連鎖品40を所定位置に保持することができる。ガイド部材57は、サスペンション連鎖品40が移動する方向、すなわちサスペンション10が並んでいる方向(矢印M1で示す方向)に延びている。
【0030】
アクチュエータ58の一例は、制御部53によって電気的に制御されるサーボモータである。アクチュエータ58は、ボールねじ等の力伝達機構59を介して、ワーク支持部材56をガイド部材57に沿う方向(図1に矢印M1で示す方向)に、ピッチP1ずつ、間欠的に移動させる。
【0031】
図11に示すようにサスペンション連鎖品40は、所定ピッチP1で並ぶ複数のサスペンション10を含んでいる。搬送機構55は、サスペンション連鎖品40をピッチP1ずつ間欠的に移動させることにより、複数のフレキシャ20のそれぞれのテールパッド部22aを1個づつ測定ステージ51に送る。1つのサスペンション10の測定が終了したのち、サスペンション連鎖品40をピッチP1だけ移動させることにより、次に測定すべきサスペンション10のテールパッド部22aが測定ステージ51に送られる。
【0032】
図2は治具ユニット52の側面図である。治具ユニット52は、治具ユニット52の本体をなすフレーム構体70と、フレーム構体70の下側支持部70aに配置された下側治具71と、下側治具71の上方に設けられた上側治具72と、上側治具72に設けられたプローブユニット73と、フレーム構体70の上側支持部70bに配置されたサーボモータ74とを含んでいる。
【0033】
図2に示すように上側治具72は、サーボモータ74によって、上昇側の退避位置Y1(上昇側ストローク端)と、下降側の加圧位置Y2(下降側ストローク端)との間を移動する。サーボモータ74は、電気的な回路構成とメモリ等を有する制御部53(図1に示す)によって制御される。サーボモータ74は電力によって回転し、トルクを発生する。サーボモータ74の回転はボールねじ機構などの力伝達機構75によって上下方向の直線運動に変換され、接続部材76に伝達される。
【0034】
図3は、上側治具72が下側治具71から離れて上昇側ストローク端まで移動した状態を示している。図4は、上側治具72が下降側ストローク端まで移動し、上側治具72と下側治具71とが互いに接した状態を示している。下側治具71は、水平方向に延びる平面からなる基準面80と、基準面80よりも高さH1だけ低い位置に形成されたワーク載置面81とを有している。
【0035】
ワーク載置面81にサスペンション10の被測定部(たとえばテールパッド部22a)が載置される。ワーク載置面81は水平方向に延びる平面からなる。このため基準面80とワーク載置面81とは互いに平行である。ワーク載置面81は、樹脂やセラミック等の電気絶縁性を有する絶縁部材82の上面に形成されている。
【0036】
上側治具72は、下側治具71の基準面80と対向する当接面85と、当接面85よりも高さH2だけ高い位置に形成されたプローブ取付面86とを有している。当接面85は水平方向に延びる平面からなる。プローブ取付面86にプローブユニット73が配置されている。上側治具72の当接面85は基準面80と平行に水平方向に延びている。このため上側治具72が下降ストローク端まで移動すると、下側治具71の基準面80と上側治具72の当接面85とが互いに面接触をなして当接する。
【0037】
プローブユニット73は、第1のプローブ91と第2のプローブ92とを有している。これらのプローブ91,92は、それぞれワーク載置面81の上方に配置されている。プローブ91,92の先端91a,92aは、それぞれワーク載置面81に向かって突出している。
【0038】
図3に示されるように上側治具72が下側治具71から離れた状態において、プローブ91,92の先端91a,92aは、それぞれ上側治具72の当接面85から長さL1分だけ下方に突出している。なお、第1のプローブ91と、第2のプローブ92と、それ以外の追加のプローブを有していてもよい。
【0039】
第1のプローブ91は、たとえばテールパッド部22aの端子25のうち、測定すべき特定の端子25aと接するように、端子25aの上方に配置されている。第2のプローブ92は、たとえばテールパッド部22aのメタルベース30と接するように、メタルベース30の上方に配置されている。テールパッド部22aの特定の端子25aは、第1のプローブ91が接する第1の接触部の一例である。メタルベース30は、第2のプローブ92が接する第2の接触部の一例である。
【0040】
サーボモータ74と、力伝達機構75と、接続部材76とによって、昇降機構77が構成されている。昇降機構77はサーボモータ74のトルクによって、上側治具72を下側治具71に向けて降下させる。そして第1のプローブ91と第2のプローブ92とを、それぞれ被測定部の第1の接触部と第2の接触部とに接触させ、かつ、当接面85を基準面80に当接させる機能を担っている。
【0041】
第1のプローブ91と第2のプローブ92とは、プローブケース95に対して上下方向に移動可能であり、それぞれプローブケース95に収容された第1のばね96と第2のばね97とによって、下方に付勢されている。
【0042】
図4は、上側治具72の当接面85が基準面80に接する位置(下降側ストローク端)まで下降した状態を示している。上側治具72が下降側ストローク端まで降下する途中で、第1のプローブ91の先端91aが端子25aに当接するとともに、端子25aの高さに応じて第1のばね96が圧縮される。このため第1のプローブ91は、第1のばね96が圧縮された状態のもとで、端子25aとの電気的な接触が維持される。また第2のプローブ92の先端92aがメタルベース30に当接するとともに、メタルベース30の高さに応じて第2のばね97が圧縮される。このため第2のプローブ92は、第2のばね97が圧縮された状態のもとで、メタルベース30との電気的な接触が維持される。
【0043】
第1のプローブ91と第2のプローブ92とは、それぞれ導電線100,101を介して制御部53に接続されている。制御部53は、プローブ91,92によって検出された電気的な出力を処理することにより、被測定部の絶縁抵抗を測定する。測定された絶縁抵抗に関する情報は、必要に応じて制御部53のメモリ等に記憶されるとともに、表示部54に表示される。
【0044】
サーボモータ74は電力によって回転し、トルクを発生する。サーボモータ74の回転が力伝達機構75によって直線運動に変換されることにより、上側治具72が上下方向に移動する。すなわち上側治具72は下側治具71に対して、上下方向に相対的に移動することができる。サーボモータ74は制御部53によって制御される。制御部53は、サーボモータ74に供給する電力に基づいて、トルクの大きさを電気的に検出する手段を有している。
【0045】
以下に本実施形態の絶縁抵抗測定装置50の作用について、図5から図7を参照して説明する。図5は、絶縁抵抗測定装置50の作用を示すフローチャートである。図6は、サーボモータ74の作動が開始してからの経過時間(横軸)とトルク(縦軸)との関係を表している。
【0046】
図5中のステップST1において、サーボモータ74の回転が開始する。サーボモータ74は第1の方向に回転する。これにより、上側治具72が退避位置(上昇側ストローク端)から下側治具71に向かって移動する。ステップST2では、上側治具72が下側治具71に向かって降下する途中で、第1のプローブ91の先端91aが端子25aに当接する。また第2のプローブ92の先端92aがメタルベース30に当接する。
【0047】
図7はテールパッド部22aの一部と、プローブ91,92とを模式的に表している。図7に示すように第1のプローブ91の先端91aがテールパッド部22aの特定の端子25aに当接する。第1のプローブ91の先端91aが端子25aに当接すると、図4に示すように第1のばね96が圧縮されるため、第1のプローブ91は一定の高さにとどまる。このため第1のプローブ91は、第1のばね96の反発荷重によって、適正な接触圧のもとで端子25aとの接触が維持される。
【0048】
図7に示すように第2のプローブ92の先端92aがテールパッド部22aのメタルベース30に当接する。第2のプローブ92の先端92aがメタルベース30に当接すると、図4に示すように第2のばね97が圧縮されるため、第2のプローブ92は一定の高さにとどまる。このため第2のプローブ92は、第2のばね97の反発荷重によって、適正な接触圧のもとでメタルベース30との接触が維持される。
【0049】
上側治具72がさらに降下すると、図5中のステップST3(図6中の時間t1)において、上側治具72の当接面85が下側治具71の基準面80に当接する。当接面85が基準面80に当接したのちも、サーボモータ74に電力が供給され続ける。このためサーボモータ74は回転を続けようとする。しかし当接面85が基準面80に突き当たっているため、上側治具72は、見かけ上、その高さで停止し続ける。
【0050】
このため図6に示す時間t1を境に、次第にサーボモータ74のトルクが増加し始めるとともに(図5中のステップST4)、下側治具71に対する上側治具72の加圧力が大きくなってゆく。上側治具72の見かけ上の高さは変化しないが、サーボモータ74のトルクは増加してゆく。そしてステップST5において、トルクが所定値(測定トリガ点)に達したか否かが判断される。
【0051】
図6中の時間t2においてトルクが所定値(測定トリガ点)に達すると、ステップST5が“YES”となり、ステップST6に進む。ステップST6では、サーボモータ74が所定のトルク(図7の例では80%のトルク)を維持するように、サーボモータ74に供給する電力(電圧または電流の少なくとも一方)が制御部53によって制御される。このため下側治具71に対する上側治具72の加圧力が維持され、この状態が図6中の時間t3まで維持される。このとき第1のプローブ91は端子25aに電気的に接したままである。第2のプローブ92はメタルベース30に当接したままである。
【0052】
図5中のステップST7では、図6中の時間t2からt3に達するまでの間に絶縁抵抗の測定が行われる。すなわち第1のプローブ91が接する端子25aと導通する導電部と、電気的なグランドとしてのメタルベース30との間の電気的な絶縁抵抗が測定される。測定に必要な時間は僅かであるが、時間t2からt3は測定に必要な時間よりも長く設定される。
【0053】
たとえば第1のプローブ91と第2のプローブ92との間に電圧を印加した状態において、端子25aに導通する導電部とメタルベース30との間の漏れ電流が検出される。検出された漏れ電流の大きさに基づいて、制御部53によって絶縁抵抗が求められる。こうして得られた絶縁抵抗のデータが制御部53等のメモリに保存されるとともに、必要に応じて表示部54に表示される。
【0054】
図5中のステップST8において、所定時間が経過したか否か(時間t3に達したか否か)が判断される。時間t3に達していなければ(ステップST8において“NO”)、ステップST9においてトルクが維持され、ステップST8にもどる。所定時間が経過すると(ステップST8において“YES”)、ステップST10に進む。ステップST10では、サーボモータ74が第2の方向に回転する。これにより、時間t3以降は上側治具72が上昇することにより、上側治具72が下側治具71から離れる。そして図3に示す待機位置(昇降側ストローク端)に上側治具72が復帰する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の絶縁抵抗測定方法は、下記の工程を含んでいる。
(1)測定ステージ51に設けられた治具ユニット52の下側治具71のワーク載置面81に、ワークとしてのサスペンション連鎖品40のテールパッド部22aを載置し、
(2)第1のプローブ91と第2のプローブ92とが配置された上側治具72を、被測定部としてのテールパッド部22aに向けて、昇降機構77のサーボモータ74によって降下させ、
(3)第1のプローブ91の先端91aを被測定部の第1の接触部(たとえばテールパッド部の端子25a)に当接させ、かつ、第1のプローブ91を第1のばね96によって第1の接触部に向けて付勢し、
(4)第2のプローブ92の先端92aを被測定部の第2の接触部(たとえばメタルベース30)に当接させ、かつ、第2のプローブ92を第2のばね97によって第2の接触部に向けて付勢し、
(5)プローブ91,92がそれぞれ第1の接触部と第2の接触部に当接した状態において、上側治具72をサーボモータ74によってさらに降下させ、
(6)上側治具72の当接面85を下側治具71の基準面80に当接させ、
(7)当接面85が基準面80に当接した状態において、サーボモータ74のトルクが上昇し、
(8)前記トルクが所定値に達すると、前記トルクが維持された状態において、プローブ91,92によって被測定部の絶縁抵抗を測定する。
【0056】
本実施形態の絶縁抵抗測定装置50によれば、上側治具72の当接面85が下側治具71の基準面80に当接することにより、下側治具71と上側治具72との相対位置が保たれる。この状態において、第1のばね96の反発荷重により、第1のプローブ91と第1の接触部(たとえば端子25a)との電気的な接触が、一定の接触圧のもとで維持される。また第2のばね97の反発荷重により、第2のプローブ92と第2の接触部(たとえばメタルベース30)との電気的な接触が、一定の接触圧のもとで維持される。
【0057】
このためサスペンション10の生産ライン上で、測定のためのプロービングを能率良く行なうことができる。しかもプローブ91,92の接触圧が安定し、被測定部の湿度変化や形状ばらつき、変形の度合いなどの影響を受けにくく、正確なプロービングが可能となった。このため絶縁抵抗をより正確に測定することができ、サスペンション10等の配線部を含む電気回路の絶縁性を適正に評価することが可能となった。
【0058】
本実施形態の治具ユニット52は、下側治具71のワーク載置面81が電気絶縁性の材料からなる絶縁部材82によって形成されている。このため、測定値のばらつきの原因となる電気的ノイズが下側治具71を通じて測定信号に混入することが低減され、測定精度をさらに向上することができた。
【0059】
サスペンション10の製造工程において、サスペンション10の一部を曲げたり切断したりするために、下型と上型とを含む金型セットが使用されることがある。本実施形態の治具ユニット52は、サスペンション10の製造工程で使用される金型セットの下型と上型とを、そのまま治具ユニット52の下側治具71と上側治具72として使用している。このため治具ユニット52のコストを節減することができた。しかも下側治具71と上側治具72との相対位置を高精度に規制することができた。これにより、生産ライン上でのプローブ91,92の位置決め精度が高く、より正確なプロービングが可能となった。
【0060】
なお本発明を実施するに当たり、絶縁抵抗測定装置を構成する各要素を種々に変更して実施できることは言うまでもない。たとえば下側治具、上側治具、プローブユニット、サーボモータ等を種々に変更して実施できる。測定対象物(ワーク)はサスペンション以外の電子部品であってもよい。また被測定部は、テールパッド部の端子やメタルベース以外であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…ディスク装置用サスペンション、20…フレキシャ、22…フレキシャテール、22a…テールパッド部、25,25a…端子(第1の接触部)、30…メタルベース(第2の接触部)、40…サスペンション連鎖品、50…絶縁抵抗測定装置、51…測定ステージ、52…治具ユニット、53…制御部、54…表示部、55…搬送機構、70…フレーム構体、70a…下側支持部、70b…上側支持部、71…下側治具、72…上側治具、73…プローブユニット、74…サーボモータ、77…昇降機構、80…基準面、81…ワーク載置面、82…絶縁部材、85…当接面、86…プローブ取付面、91…第1のプローブ、92…第2のプローブ、96…第1のばね、97…第2のばね。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11