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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送ベルト監視システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
B65G43/02 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020024202
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2020132433
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019027460
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 高広
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐太
(72)【発明者】
【氏名】石井 信彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 邦王
(72)【発明者】
【氏名】吉村 介秀
(72)【発明者】
【氏名】大城 文彦
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 順平
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-007133(JP,A)
【文献】特開2000-119448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトを、複数のプーリ間に巻き掛けて使用する搬送装置であって、
少なくとも一部の領域が、発光剤を含むエラストマーで形成された、前記搬送ベルトと、
前記領域に光を照射可能な光源と、
前記領域に照射された前記光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光量に基づき、前記搬送ベルトの異常を検知する検知装置と、を備え、
前記搬送ベルトにおいて、前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域は、幅方向の長さが当該搬送ベルトの幅よりも小さく、当該搬送ベルトの長手方向に沿って略平行に直線状に伸びて形成されており、更に、前記領域の幅方向の少なくとも一方側の領域が、前記発光剤を含まないエラストマーで形成されている、搬送装置。
【請求項2】
前記光源が発する光は、近赤外光であり、
前記発光剤は、前記近赤外光が照射されて蛍光発光する、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記検知装置が、前記受光部で受光した光量に基づき、前記搬送ベルトの異常を検知した場合、外部に報知する報知装置を、更に、備えている、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記報知装置は、音による報知、発光による報知、及び、前記光量に基づく信号を表示装置に表示することによる報知、の少なくとも1つを行う、請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記光源および前記受光部は、複数のプーリ間に巻き掛けられた前記搬送ベルトの内周面側に設置されている、請求項1~4の何れかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域の幅方向の両側の領域は、前記発光剤を含まないエラストマーで形成されている、請求項1~5の何れかに記載の搬送装置。
【請求項7】
前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域は、当該搬送ベルトの幅方向中央を長手方向に沿って形成されている、請求項1~の何れかに記載の搬送装置。
【請求項8】
前記搬送ベルトは、前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域を有する、蛇行防止桟、耳シール、及び、たて桟の少なくとも1つを備えている、請求項1~7の何れかに記載の搬送装置。
【請求項9】
前記搬送ベルトの外周面は、帆布で形成されている、請求項1~8の何れかに記載の搬送装置。
【請求項10】
前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域は、当該搬送ベルトの内周面側の、当該搬送ベルトの幅方向両端を長手方向に沿って形成されている、請求項1~9の何れかに記載の搬送装置。
【請求項11】
少なくとも一部の領域が発光剤を含むエラストマーで形成された、搬送ベルトの前記領域に光を照射可能な光源と、
前記領域に照射された前記光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光量に基づき、前記搬送ベルトの異常を検知する検知装置と、を備え、
前記搬送ベルトにおいて、前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域は、幅方向の長さが当該搬送ベルトの幅よりも小さく、当該搬送ベルトの長手方向に沿って略平行に直線状に伸びて形成されており、更に、前記領域の幅方向の少なくとも一方側の領域が、前記発光剤を含まないエラストマーで形成されている、搬送ベルト監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトの蛇行および摩耗や欠損などを監視することができる搬送装置及び搬送ベルト監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベルトコンベアに用いられる搬送ベルトとして、芯体帆布とカバー層とが積層された二層構造を有する平ベルトが知られている。このような搬送ベルトは、長尺の積層シートを所定の長さに切断し、その両端部を接合して無端状で使用される。無端状の平ベルトを複数のプーリに巻きかけ、モータなどの動力源により平ベルトを駆動することで、ベルトコンベアに載せられた搬送物を搬送することができる。
【0003】
カバー層を形成する材料としては、強度と柔軟性とを両立できることからエラストマー(例えばゴムや熱可塑性エラストマーなど)が用いられる。ゴム製の搬送ベルトは、大型化が容易であり耐熱性や耐摩耗性に優れることから、鉱業や製鉄などの工業用途に適している。また、熱可塑性エラストマー製の搬送ベルトは、非粘着性、耐油性、抗菌・防かび性などの特性を付与しやすいことから製パン、製菓、食肉加工などの食品用途で好んで用いられる。ただし、ゴムと熱可塑性エラストマーとをブレンドした搬送ベルトも開発されており、材質の違いによらず、あらゆる用途に用いることができる。
【0004】
ところで、複数のプーリに巻きかけられた搬送ベルトを走行させると、張力のバランスなどによっては搬送ベルトが一方向に片寄ったり、蛇行したりする場合がある。このような片寄りや蛇行が発生すると、搬送物をうまく搬送できなかったり、搬送ベルトが損傷したりするといった不具合が発生する。
【0005】
そこで、搬送ベルトの蛇行を検出する方法として、特許文献1には、コンベヤベルトの耳部挿入用凹部を有する本体の一側に光源部を設け、前記耳部挿入用凹部を介して前記光源部と反対側に受光部を設け、光源部から受光部へ至る光をコンベヤベルト耳部で遮断させることにより蛇行を検出する、コンベヤベルト蛇行検出装置が開示されている。そして、コンベヤベルトの耳部の蛇行状態は光源部からの光の遮断量となって検出できることが記載されている。
【0006】
一方、蛇行自体を防止する方法として、特許文献2には、ベルト本体の下面に長手方向に沿って断面V型のガイドを少なくとも一個固着し、且つ、該V型ガイドの底面中央部に所定形状の縦溝を設けたことを特徴とするVガイド付搬送ベルトが開示されている。そして、Vガイド付搬送ベルトと、前記V型ガイドと嵌合するガイド溝を有するプーリとを組み合わせることで、蛇行を防止できることが記載されている。
【0007】
特許文献2の構成とすることで蛇行を防止することは可能であるが、Vガイド付搬送ベルト(蛇行防止桟付搬送ベルト)に特有の別の問題が発生する。つまり、V型ガイド(蛇行防止桟)はプーリに設けられたガイド溝に嵌合して走行するために、摩耗しやすいという欠点がある。さらに、V型ガイド(蛇行防止桟)はベルト本体と比較して変形が大きくなるため、亀裂が発生して欠損しやすいという欠点がある。V型ガイド(蛇行防止桟)の摩耗や欠損が発生すると、V型ガイド(蛇行防止桟)がガイド溝から逸脱しやすくなるため、搬送ベルトの交換などを行う必要があるが、搬送ベルトがベルトコンベアに装着された状態ではV型ガイド(蛇行防止桟)が装置の内部に位置するために、摩耗や欠損を目視で確認するのが困難である。
【0008】
また、搬送ベルトの破損を検出する方法として、特許文献3には、ベルトコンベヤのベルトを光学的に撮像し、撮像した画像を受光素子上に結像させ、この受光素子から送出される電気信号の大きさの変化からベルトの破損を検出することを特徴とするベルトコンベヤの破損検出方法が開示されている。そして、このような構成とすることでベルトに裂け目が生じていないときと裂け目が生じた場合では受光素子から出力される電気信号の大きさに差が生じるために、直ちに破損を検出し得ると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開昭59-108727号公報
【文献】実開平1-126317号公報
【文献】特開昭59-92817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の方法は、ベルトの蛇行を検出することはできるが、摩耗や欠損を検出することはできない。また、特許文献3に記載の方法は、裂け目を検出することはできるが、蛇行や摩耗を検出することはできない。さらに、光学的に撮像した信号を処理するので、搬送ベルトに異物が付着した場合などは検出が困難となる虞がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、搬送ベルトを用いた搬送装置に関し、搬送ベルトの蛇行を検出できるとともに、摩耗や欠損をも確実に検出できる搬送装置及び搬送ベルト監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、搬送ベルトを、複数のプーリ間に巻き掛けて使用する搬送装置であって、
少なくとも一部の領域が、発光剤を含むエラストマーで形成された、前記搬送ベルトと、
前記領域に光を照射可能な光源と、
前記領域に照射された前記光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光量に基づき、前記搬送ベルトの異常を検知する検知装置と、を備えることを特徴としている。
【0013】
光源が照射する光によって搬送ベルトの発光剤が含まれる領域が発光し、受光部がその光量を受光して電圧などの信号に変換して出力する。仮に、搬送ベルトに、蛇行、摩耗、および欠損などの異常が発生した場合には、受光部で受光した光量に基づく電圧などの信号に変化(具体的には出力電圧の低下)が発生するので、光量に基づき、搬送ベルトに、蛇行、摩耗、および欠損などの異常が生じていることを、人が常時監視することなく、検知することができる。
【0014】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記光源が発する光は、近赤外光であり、
前記発光剤は、前記近赤外光が照射されて蛍光発光することを特徴としている。
【0015】
光源に透過性の高い近赤外光を用いることで、搬送ベルトの、発光剤を含む領域の表面に搬送物や異物などが付着した場合でも、受光部は光量を正確に受光することができる。
【0016】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記検知装置が、前記受光部で受光した光量に基づき、前記搬送ベルトの異常を検知した場合、外部に報知する報知装置を、更に、備えていることを特徴としている。
【0017】
光量に基づき、搬送ベルトに、蛇行、摩耗、および欠損などの異常が生じていることを検知した場合、外部に居る人に向けて報知することができる。
【0018】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記報知装置は、音による報知、発光による報知、及び、前記光量に基づく信号を表示装置に表示することによる報知、の少なくとも1つを行うことを特徴としている。
【0019】
受光部で受光した光量に基づき、搬送ベルトに、蛇行、摩耗、および欠損などの異常が生じたことを報知する場合に、音によって人の聴覚に報知することができる。また、騒音などにより、音が聞こえにくい場合でも、発光によって人の視覚に報知することができる。また、発光による報知が死角によって感知することができない場合であっても、光量に基づく信号を表示装置に表示することで、問題なく確認することができる。
【0020】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記光源および前記受光部は、複数のプーリ間に巻き掛けられた前記搬送ベルトの内周面側に設置されていることを特徴としている。
【0021】
光源や受光部を、搬送ベルトの外周面側に設置すると搬送物の搬送の障害となったり、搬送物が障害となって検出が不正確となったりする虞がある。そこで、光源及び受光部を搬送ベルトの内周面側に設置すれば、そのような障害もなく、さらに省スペース化も可能となる。
【0022】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記発光剤を含むエラストマーで形成された領域は、所定幅で当該搬送ベルトの長手方向に沿って形成されていることを特徴としている。
【0023】
搬送ベルトに形成された、発光剤を含む領域のベルト幅の程度により、搬送ベルトが蛇行したと判断する基準を設定することができる。例えば、発光剤を含む領域のベルト幅を小さくすれば、搬送ベルトがベルト幅方向に僅かにずれた場合でも、搬送ベルトの異常として検知することができる(検知精度を高めることができる)。一方、発光剤を含む領域のベルト幅を大きくすれば、搬送ベルトがベルト幅方向に僅かにずれた程度では、搬送ベルトの異常とは判断しないようにすることができる(検知精度を緩めることができる)。
【0024】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記発光剤を含むエラストマーで形成された領域は、幅が当該搬送ベルトの幅よりも小さく、当該搬送ベルトの幅方向中央を長手方向に沿って形成されていることを特徴としている。
【0025】
発光剤を含む領域の幅を、搬送ベルトの幅よりも小さくして、その発光剤を含む領域を搬送ベルトの幅方向中央を長手方向に沿って形成することにより、その発光剤を含む領域の両側は、発光剤を含まない領域になるため、搬送ベルトの蛇行に関する異常の検知を正確に判断することができる。
【0026】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記搬送ベルトは、前記発光剤を含むエラストマーで形成された領域を有する、蛇行防止桟、耳シール、及び、たて桟の少なくとも1つを備えていることを特徴としている。
【0027】
蛇行防止桟、耳シール、及び、たて桟は搬送ベルトの長手方向に略平行に直線状に伸びて存在するので、これらの構成を、発光剤を含むエラストマーで形成された領域にすることにより、搬送ベルトの蛇行に関する異常の検知がし易くなる。また、蛇行防止桟、耳シール、及び、たて桟は、変形が大きいために欠損が生じやすかったり、他の部品と接触して摩耗が発生しやすかったりするので、摩耗および欠損を検出したい要望が強い箇所であることから、本発明の効果を有効に活用することができる。
【0028】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記搬送ベルトの外周面が、帆布で形成されていることを特徴としている。
【0029】
上記構成によれば、帆布の搬送物に対する離型性の高さや摩擦係数の小ささを利用して、搬送物を搬送ベルト上で一時的に滞留させる、アキューム用途に好適に用いることができる。
【0030】
また、本発明は、上記の搬送装置において、
前記発光剤を含むエラストマーで形成された前記領域は、当該搬送ベルトの内周面側の、当該搬送ベルトの幅方向両端を長手方向に沿って形成されていることを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、搬送ベルトの蛇行、及び、搬送ベルトの裏面の摩耗や搬送ベルトの両端の摩耗を、検出することができる。
【0032】
また、本発明は、少なくとも一部の領域が発光剤を含むエラストマーで形成された、搬送ベルトの前記領域に光を照射可能な光源と、
前記領域に照射された前記光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光量に基づき、前記搬送ベルトの異常を検知する検知装置と、を備える、搬送ベルト監視システムである。
【0033】
光源が照射する光によって搬送ベルトの発光剤が含まれる領域が発光し、受光部がその光量を受光して電圧などの信号に変換して出力する。仮に、搬送ベルトに、蛇行、摩耗、および欠損などの異常が発生した場合には、受光部で受光した光量に基づく電圧などの信号に変化(具体的には出力電圧の低下)が発生するので、光量に基づき、搬送ベルトに、蛇行、摩耗、および欠損などの異常が生じていることを、人が常時監視することなく、検知することができる。
【発明の効果】
【0034】
搬送ベルトを用いた搬送装置に関し、搬送ベルトの蛇行を検出できるとともに、摩耗や欠損をも確実に検出できる搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態に係る搬送装置の斜視図である。
図2】実施形態に係る搬送装置のブロック図である。
図3図1の搬送装置のA-A断面図である。
図4】搬送ベルトの蛇行防止桟の一部に欠損が生じた状態を示す説明図である。
図5】搬送ベルトを走行させている際の時間と出力電圧(光量)の関係を示すグラフである。
図6】搬送ベルトの蛇行防止桟がプーリのガイド溝から外れて、搬送ベルトの蛇行が発生した状態を示す説明図である。
図7】その他の実施形態1に係る搬送ベルトの説明図である。
図8】耳シール、たて桟、蛇行防止桟を備えた搬送ベルトの説明図である。
図9】発光剤を含む耳シールを備えた搬送ベルトの検知動作の説明図である。
図10】発光剤を含むたて桟を備えた搬送ベルトの検知動作の説明図である。
図11】カバー層全体に発光剤を含有させた搬送ベルトの検知動作の説明図である。
図12】カバー層の一部に発光剤を含有させた搬送ベルトの検知動作の説明図である。
図13】その他の実施形態2に係る搬送ベルトの説明図である。
図14】裏面の両端に発光剤を含む熱可塑性エラストマー層を積層させた搬送ベルトの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施形態)
以下、本発明の搬送装置1の実施形態を図面に従って説明する。
【0037】
(搬送装置1)
搬送装置1は、図1及び図2に示すように、駆動プーリ11と第1従動プーリ12と第2従動プーリ13と第3従動プーリ14と第4従動プーリ15とに巻き掛けられた、搬送ベルト2と、光源3及び受光部4を備えた光センサ5と、制御部6(検知装置に相当)と、アラーム7(報知装置に相当)と、LEDランプ8(報知装置に相当)と、制御部6に任意に接続されるパーソナルコンピュータ9(表示装置に相当するモニタ付)とを備えている。この搬送装置1は、図示しないモータ駆動により、駆動プーリ11を回転させることにより搬送ベルト2を走行させて、搬送ベルト2の外周面上の搬送物を搬送する。
【0038】
(搬送ベルト2)
本実施形態の搬送ベルト2は、図3に示すように、芯体帆布21と、カバー層22とを積層させた、無端状のベルト本体部20、及び、ベルト本体部20の内周面側の幅方向中央にベルト長手方向に沿って形成された、断面V型(幅方向の断面が台形状)の蛇行防止桟23を有している。この蛇行防止桟23は、駆動プーリ11、第2従動プーリ13、及び、第3従動プーリ14のそれぞれの外周面に設けられた、ガイド溝111(駆動プーリ11)、ガイド溝131(第2従動プーリ13)、及び、ガイド溝141(第3従動プーリ14)、のそれぞれに嵌合することにより、搬送ベルト2が、駆動プーリ11、第2従動プーリ13、及び、第3従動プーリ14からずれて蛇行することを防止する。なお、図3では、搬送ベルト2と第2従動プーリ13のガイド溝131との関係を示しているが、搬送ベルト2と駆動プーリ11のガイド溝111との関係、及び、搬送ベルト2と第3従動プーリ14のガイド溝141との関係も図3と同様の位置関係となる。
【0039】
(芯体帆布21)
芯体帆布21は、経糸と緯糸を交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織等)である。例えば、経糸、緯糸をほぼ直角に交差して織られた平織り布が使用できる。経糸・緯糸の材質としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、綿繊維などが用いられる。また、経糸・緯糸は、複数本のフィラメント(長繊維)を撚り合せたマルチフィラメント糸、または一本のフィラメントからなるモノフィラメント糸や、ステープル(短繊維)を撚り合せたスパン糸(紡績糸)を用いてもよい。経糸・緯糸の繊度は、フィラメント糸の場合は、500~1500dtexであり、スパン糸の場合は、5~22番手である。経糸密度は、70~150本/5cm、緯糸密度は、45~80本/5cmである。
【0040】
また、芯体帆布21の厚さは、例えば、0.3~2.0mmであって、特に0.5~1.2mmが好ましい。芯体帆布21の厚みが、0.5mmよりも薄いと、物品の搬送に必要なベルトの強度や耐久性が確保できず、1.2mmよりも厚いと、屈曲性が低下してしまうためである。
【0041】
また、芯体帆布21には、カバー層22との接着性を向上させるため、接着処理をしている。接着処理は、有機溶媒に溶かした接着剤を芯体帆布21にコーティング、または、芯体帆布21を有機溶媒に溶かした接着剤に浸漬することにより行う。接着剤としては、加工性・強度に優れた熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーが好ましく、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーとしては、ポリエーテル系ポリウレタン、又は、ポリカーボネート系ポリウレタンが好ましく、柔軟性と耐加水分解性とを両立できることから、ポリエーテル系ポリウレタンエラストマーが特に好ましい。接着剤を溶かす有機溶媒としては、メチルエチルケトン/シクロヘキサン/テトラヒドロフランの混合溶媒が好ましい。
【0042】
(カバー層22)
カバー層22は、弾性材料で形成されている。カバー層22の材質は、例えば、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、およびポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーである。ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、およびポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーは、耐摩耗性に優れている。ポリウレタン系の熱可塑性エラストマーは、加工性や強度に優れるため、カバー層22の材質として特に好ましい。その中でも、耐加水分解性に優れたポリエーテル系ポリウレタンエラストマー、または、耐熱性および耐薬品性に優れたカーボネート系ポリウレタンエラストマーがより好ましい。カバー層22の厚みは、例えば、0.2~1.0mmである。カバー層22のJIS-A硬度(JISK6253-3(2012)に準拠し、タイプAデュロメータで測定した硬度)は、例えば、60~95度である。
【0043】
(蛇行防止桟23)
蛇行防止桟23は、発光剤を含む、ポリウレタン(PU)系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリオレフィン系の、熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂)から形成されている(発光剤を含むエラストマーで形成された領域に相当)。具体的には、発光剤を樹脂(特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー等でもよい)に練り込んだマスターバッチと、熱可塑性エラストマー(PU系、PVC系、またはポリオレフィン系)とを混合して発光剤を含む熱可塑性エラストマー組成物を作製し、作製した組成物から蛇行防止桟23が成形される。
【0044】
発光剤には、後述する光源3から照射される近赤外光を受光した際に発光する、近赤外蛍光材料を使用しており、特に限定されず公知のものを使用することができる。例えば、近赤外蛍光材料としては、無機系近赤外蛍光材料および有機系近赤外蛍光材料が挙げられる。
【0045】
無機系近赤外蛍光材料としては、希土類元素をドープした材料が例示できる。この際、希土類元素としては、特に制限されないが、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられる。
【0046】
有機系近赤外蛍光材料としては、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ジチオール金属塩系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、インドフェノール系色素、シアミン系色素、スチリル系色素、アルミニウム系色素、ジイモニウム系色素、アゾ系色素、アゾ-ホウ素系色素、ローダミンやフルオレセインに代表されるキサンテン系色素、ボロンジピロメテン(BODIPY)系色素、スクアリウム系色素、ペリレン系色素等の化合物が挙げられる。
【0047】
また、発光剤の光学特性として、吸収スペクトル、極大吸収波長、モル吸光係数、蛍光スペクトル、ストークスシフト、蛍光強度、蛍光スペクトル形状、量子収率を考慮することが好ましい。これらの光学特性は、色素の周辺環境によって変化する。すなわち、分散する樹脂の種類、樹脂の添加剤種類、色素濃度によっても変化する。
【0048】
(光源3及び受光部4を備えた光センサ5)
光センサ5は、光源3及び受光部4を備えたユニットであり、図2に示すように、第1従動プーリ12と第4従動プーリ15との間で、搬送ベルト2の内周面側に配置されている。ここで、光センサ5の配置場所は、省スペース化の観点から、搬送ベルト2の内周面側に配置されるのが好ましく、搬送ベルト2の内周面側であれば、第2従動プーリ13の近傍や第3従動プーリ14の近傍や駆動プーリ11の近傍に配置してもよい。ただし、場所的な制約がない場合や、光センサ5の交換の利便性を考慮して、光センサ5の配置場所を、搬送ベルト2の外周面側(特に搬送物が載置されない側)にしてもよい。
【0049】
光源3は、レーザーやLEDを光源として特定波長の近赤外光を照射可能としている。本実施形態では、この光源3から、発光剤が含まれた蛇行防止桟23(搬送ベルト2の走行中)に対して、近赤外光が照射される。これにより、蛇行防止桟23に含まれた発光剤が発光する。この近赤外光は、赤外線の中でも波長が短い光線であり、通常、700~2500nmの波長領域を有する電磁波である。近赤外光はX線や紫外線に比べて波長が長いため、光エネルギーは0.9~1.7eVと小さい。また、近赤外光は透過性に優れるため、照射対象となる箇所(本実施形態では蛇行防止桟23)に、搬送物の一部や異物などが付着している場合でも、近赤外光を高い精度で対象物に照射することができる。また、発光剤側としても、光源3から照射され、搬送ベルト2に付着した異物などを透過して到達した近赤外線によって励起し、近赤外蛍光を発するので、蛍光側も異物があったとしても近赤外光が透過するので、さらに検知に有利である。
【0050】
受光部4は、光源3から照射された近赤外光により、蛇行防止桟23に含まれた発光剤が蛍光する光を検出・観測できればよく、特に限定されない。例えば、公知のCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどのセンサを利用することができる。
【0051】
光センサ5の構成は、搬送ベルト2に含まれる蛍光剤の蛍光特性、光源3や受光部4の特性を考慮して適宜選択することができる。
【0052】
(制御部6)
制御部6は、搬送装置1を統括管理するものであり、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶装置を備えている(図示せず)。また、バスには、光センサ5、アラーム7、LEDランプ8などが接続され、入出力インターフェースにはパーソナルコンピュータ9が接続されている。
【0053】
制御部6は、詳細は後述するが、プログラム制御により、光センサ5の受光部4で受光(観測)した蛍光の強度(発光量)を電圧に変換(計算)する。そして、この出力電圧の変化に基づき、搬送ベルト2の異常、例えば、搬送ベルト2の蛇行、摩耗、損傷などの有無を判断する。
【0054】
(アラーム7及びLEDランプ8)
アラーム7は、搬送装置1において走行中に、搬送ベルト2に異常が生じた場合、警報音(音による報知)を出力可能なものであれば、特に限定されない。LEDランプ8は、搬送装置1において搬送ベルト2が正常に走行している場合には緑色が点灯し、搬送ベルト2等に異常が生じた場合には、赤色点滅表示(発光による報知)を行う。
【0055】
(パーソナルコンピュータ9)
パーソナルコンピュータ9は、市販されているコンピュータであり、入力部(操作ボタン、キーボード、タッチパネル等)、CPU、記憶装置、モニタなどを備えており、光センサ5で検知した光の光量に基づく情報や、制御部6が判断した、搬送ベルト2の異常の有無などの情報をモニタに表示可能としている。なお、パーソナルコンピュータ9の専用ソフトを使用して、制御部6で実行するプログラムの内容や、搬送ベルト2の異常の有無の判断基準となるデータ(後述する、搬送ベルト2が正常であると判断される出力電圧の閾値等)を更新することができる。また、本実施形態では、パーソナルコンピュータ9は、搬送ベルト2の異常の有無などの情報をモニタに表示するために使用している。
【0056】
(搬送ベルトの異常の検知動作)
次に、搬送装置1において搬送ベルト2が走行している際に実行される、搬送ベルト2の異常(蛇行、摩耗、損傷)の有無の検知動作について説明する。
【0057】
搬送装置1において、搬送ベルト2を走行させている際に、搬送ベルト2の内周面側に設けられた、発光剤を含有する蛇行防止桟23に対して、光センサ5の光源3から近赤外光を照射する。そうすると、蛇行防止桟23に含まれる近赤外蛍光材料が励起され近赤外線を蛍光発光する。そして、その蛍光を受光部4で観測する。この受光部4での蛍光の観測に伴い、制御部6が、受光部4で観測した蛍光の強度(発光量)を電圧に変換する。なお、蛍光の強度(発光量)を電圧に変換した値は、出力したり、パーソナルコンピュータ9のモニタに映し出したりすることができる。
【0058】
ここで、蛍光の強度(発光量)は、近赤外線の透過性により発光剤を含む領域の厚み方向にも、励起させる近赤外線が透過するので、蛇行防止桟23に含まれる発光剤の量と相関があり、発光剤が多いほど発光量が多くなり、出力電圧が高くなる。逆に、蛇行防止桟23が摩耗して減量したり、欠損したりすると、発光剤の量が減少するので発光量が少なくなり、出力電圧が低下する。そのため、制御部6は、蛍光の強度(発光量)を電圧に変換した出力電圧の値が、所定の閾値(搬送ベルト2が正常であると判断される値)未満になったと判断した場合、アラーム7によって警報音を発したり、LEDランプ8を赤色点滅表示させたりすることで、搬送ベルト2の異常を報知することができる。また、パーソナルコンピュータ9のモニタに、蛇行防止桟23の蛍光の強度(発光量)を映し出すことで、搬送ベルト2の異常の状態を確認することもできる(図4のモニタ参照)。また、搬送ベルト2の異常を検知した場合には、搬送装置1の搬送を停止させることもできる。これにより、搬送ベルト2に、蛇行、摩耗、欠損などの異常が生じていることを検知した場合、外部に居る人に向けて報知することができる。
【0059】
例えば、図4に示すように、搬送ベルト2の蛇行防止桟23の一部に欠損が生じた場合、図5(A)に示すように、搬送ベルト2を走行させている際の時間軸に対応する、出力電圧の値は、欠損が生じた部分(タイミング)で急激に低下する。このように蛇行防止桟23に欠損が生じることにより出力される出力電圧の値が、予め設定された閾値を、所定時間(一時的)下回った場合には、制御部6は、蛇行防止桟23の一部に欠損が生じていると判断する。
【0060】
また、例えば、搬送ベルト2の蛇行防止桟23が摩耗した場合、図5(B)に示すように、搬送ベルト2を走行させている際の時間軸に対応する、出力電圧の値は、摩耗の生じ具合により全体的に低下する。このように蛇行防止桟23に摩耗が生じることにより出力される出力電圧の値が、予め設定された閾値を、所定時間(比較的長時間、搬送ベルトが1周する時間等)、僅かに下回った場合には、制御部6は、蛇行防止桟23が摩耗していると判断する。
【0061】
また、例えば、図6に示すように、搬送ベルト2の蛇行防止桟23が、第2従動プーリ13のガイド溝131から外れて、搬送ベルト2が第2従動プーリ13に乗り上げ、蛇行が発生した場合、光源3と、蛇行防止桟23との位置関係が崩れて(蛇行防止桟23に近赤外光が照射されなくなるので)、欠損の場合と同様に、出力電圧の値は、蛇行が生じた部分(タイミング)で急激に低下する。このように搬送ベルト2に蛇行が生じることにより出力される出力電圧の値が、予め設定された閾値を、所定時間(一時的)下回った場合には、制御部6は、搬送ベルト2に蛇行が生じていると判断する。
【0062】
なお、上記閾値は、搬送装置1の使用者が自由に設定できる値で、どの閾値で欠損や摩耗が生じたと判断するかにより決定される。
【0063】
また、発光剤の添加量と出力電圧の関係について確認するために、下記測定を行った。発光剤を樹脂に練り込んだマスターバッチと、熱可塑性エラストマーとの重量比を変えて混合した、発光剤を含む熱可塑性エラストマー組成物を作製し、これに光源3から近赤外光を照射し、受光部4で観測した蛍光の強度を、電圧に変換した出力電圧の値を測定した。その測定結果を表1に示す。これによれば、マスターバッチ(発光剤)の添加量(重量比)が多くなるほど、出力電圧が大きくなる傾向を確認することができた。
【0064】
【表1】
【0065】
上記搬送装置1によれば、光源3が照射する近赤外光によって発光剤が含まれる蛇行防止桟23(領域)が蛍光発光し、受光部4が蛍光発光した光を受光して電圧などの信号に変換して出力する。仮に、搬送ベルト2に、蛇行、摩耗、欠損などの異常が発生した場合には、受光部4で受光した光量に基づく電圧などの信号に変化(具体的には出力電圧の低下)が発生するので、光量に基づき、搬送ベルト2に、蛇行、摩耗、欠損などの異常が生じていることを、人が常時監視することなく、検知することができる。
【0066】
また、上記搬送装置1によれば、受光部4で受光した光量に基づき、搬送ベルト2に、蛇行、摩耗、欠損などの異常が生じたことを報知する場合に、アラーム7の警報音によって人の聴覚に報知することができる。また、騒音などにより、アラーム7の警報音が聞こえにくい場合でも、LEDランプ8の赤色点滅表示によって人の視覚に報知することができる。また、赤色点滅表示による報知が死角によって感知することができない場合であっても、パーソナルコンピュータ9のモニタに、蛇行防止桟23の蛍光の強度(発光量)を映し出すことで、搬送ベルト2の異常の状態を表示することで、問題なく確認することができる。
【0067】
(その他の実施形態1)
上記実施形態では、芯体帆布21と、カバー層22とを積層させた、無端状のベルト本体部20に蛇行防止桟23を設けた搬送ベルト2について説明したが、搬送ベルトは平ベルトであってもよい。例えば、図7(A)に示すように、芯体帆布21とカバー層22とを積層した搬送ベルト102である。また、図7(B)に示すように、芯体帆布223の両面にカバー層(外周側の表面カバー層222と内周側の裏面カバー層221)を設けた、搬送ベルト202である。また、図7(C)に示すように、芯体帆布324と芯体帆布325との間に、中間層321を配置した、四層構造(上から表面カバー層322、芯体帆布324、中間層321、芯体帆布325)の搬送ベルト302である。なお、中間層321の材質は表面カバー層322と同じものを用いることができる(中間層321の材質は表面カバー層322と異なっていてもよい)。中間層321の厚みは、例えば、0.2~1.0mmである。また、図7(D)に示すように、四層構造の搬送ベルト302の内周面側に、裏面カバー層423を設けた、五層構造(上から表面カバー層422、芯体帆布424、中間層421、芯体帆布425、裏面カバー層423)の搬送ベルト402である。
【0068】
また、図8(E)に示すように、上記例示した平ベルトの側面や、本実施形態の蛇行防止桟を設けた搬送ベルトの側面をベルト長手方向に「耳シール530」で補強した搬送ベルト502であってもよい(図9参照)。この耳シール530は、搬送ベルト端面からの芯体帆布のホツレ防止に対して高い効果を発揮する。
【0069】
また、図8(F)に示すように、上記例示した搬送ベルトの外周面(搬送物を載置する側、なお、側面でもよい)や、本実施形態の蛇行防止桟を設けた搬送ベルトの外周面(搬送物を載置する側、なお、側面でもよい)に、荷こぼれ(搬送物が搬送ベルトの幅方向の端部から落ちること)を防止するための「たて桟630」を設けた搬送ベルト602であってもよい。
【0070】
また、図8(G)に示すように、上記例示した搬送ベルトに、「蛇行防止桟23」を設けた搬送ベルト2であってもよい(本実施形態参照)。蛇行防止桟23は、断面V型形状、矩形、台形状などの形状をしていてもよい。
【0071】
なお、耳シール530、たて桟630、蛇行防止桟23はそれぞれ単独でも組み合わせても搬送ベルトに設けることができる。また、耳シール530、たて桟630、蛇行防止桟23をそれぞれ単独又は組み合わせた、搬送ベルトのベルト本体部には、図7(A)~(D)で例示した、平ベルトを採用してもよい。
【0072】
(耳シール530に発光剤を含有させた搬送ベルト)
図9に示すように、側面を耳シール530で補強した搬送ベルト502において、耳シール530を、上述した蛇行防止桟23同様に、発光剤を含む、ポリウレタン(PU)系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリオレフィン系の、熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂)によって形成してもよい。この場合、光源3から、発光剤が含まれた耳シール530(搬送ベルト502の走行中)に対して、近赤外光を照射することにより、耳シール530に含まれた発光剤が蛍光発光するので、受光部4でその蛍光を観測する。そして、制御部6が受光部4で観測した蛍光の強度(発光量)に基づき、搬送ベルト502の耳シール530の摩耗や損傷、及び、搬送ベルト502の蛇行を検知することができる。
【0073】
(たて桟630に発光剤を含有させた搬送ベルト)
図10に示すように、外周側に、荷こぼれを防止するためのたて桟630を設けた搬送ベルト602において、たて桟630を、上述した耳シール530同様に、発光剤を含む、ポリウレタン(PU)系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリオレフィン系の、熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂)によって形成してもよい。この場合、光源3から、発光剤が含まれた、たて桟630(搬送ベルト602の走行中)に対して、近赤外光を照射することにより、たて桟630に含まれた発光剤が蛍光発光するので、受光部4でその蛍光を観測する。そして、制御部6が受光部4で観測した蛍光の強度(発光量)に基づき、搬送ベルト602のたて桟630の摩耗や損傷、及び、搬送ベルト602の蛇行を検知することができる。
【0074】
(カバー層全体に発光剤を含有させた搬送ベルト)
図11に示すように、搬送ベルト102の外周側に設けられたカバー層22の全体を、発光剤を含む、ポリウレタン(PU)系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリオレフィン系の、熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂)によって形成してもよい。この場合、光源3から、発光剤が含まれた、カバー層22(搬送ベルト102の走行中)に対して、近赤外光を照射することにより、カバー層22に含まれた発光剤が蛍光発光するので、受光部4でその蛍光を観測する。そして、制御部6が受光部4で観測した蛍光の強度(発光量)に基づき、搬送ベルト102のカバー層22の摩耗や損傷を検知することができる。
【0075】
ただし、カバー層22において、発光剤がベルト幅方向の全体に亘って混入されているため、1つの光センサ5(光源3および受光部4)を設置するだけでは、搬送ベルト102の蛇行を検知できない場合がある。例えば、搬送ベルト102のベルト幅方向の一方端に近赤外光を照射可能な光センサ5Aのみを設置した場合(図11参照)、図11に示す、ベルト幅方向手前側に、搬送ベルト102がずれて蛇行した場合には、受光部4Aで観測した蛍光の強度(発光量)の変化に基づき、搬送ベルト102の蛇行を検知することができる。一方、図11に示す、ベルト幅方向奥手側に、搬送ベルト102がずれて蛇行した場合には、受光部4Aで観測した蛍光の強度(発光量)が変化しないことから、搬送ベルト102の蛇行を検知することができない。
【0076】
そこで、図11に示すように、搬送ベルト102のベルト幅方向の両端に2組の、光センサ5A(光源3A及び受光部4A)及び光センサ5B(光源3B及び受光部4B)を設置することにより、搬送ベルト102が蛇行した際には、光センサ5A又は光センサ5Bのどちらかの受光部で観測した蛍光の強度が変化(出力電圧の低下)するため、搬送ベルト102の蛇行についても検知することができる。
【0077】
(カバー層の一部に発光剤を含有させた搬送ベルト)
図12に示すように、搬送ベルト702の外周側に設けられたカバー層22の一部に発光剤を含む領域22A(発光剤を含む熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂))を設けてもよい。図12の搬送ベルト702では、発光剤を含む領域22Aは、カバー層22のベルト幅方向中央において、所定幅でベルト長手方向に沿って形成されている。ここで、発光剤を含む領域22Aは、ベルト幅方向の幅が、搬送ベルト702の幅よりも小さく、ベルト幅方向中央をベルト長手方向に沿って形成されていることが好ましい。なお、領域22Aは、ベルト長手方向と略平行に伸びる直線状であれば、ベルト幅方向中央に設けなくてもよい(搬送ベルト702の端側に設けてもよい)。
【0078】
上記発光剤を含む領域22Aのベルト幅方向の長さは、自由に設計することができる。この発光剤を含む領域22Aのベルト幅方向の長さの程度により、搬送ベルト702が蛇行したと制御部6が判断する基準を設定することができる。例えば、発光剤を含む領域22Aのベルト幅方向の長さを小さくすれば、搬送ベルト702がベルト幅方向に僅かにずれた場合でも、搬送ベルト702が蛇行したと判断することができる(蛇行の検知精度を高めることができる)。一方、発光剤を含む領域22Aのベルト幅方向の長さを大きくすれば、搬送ベルト702がベルト幅方向に僅かにずれた程度では、搬送ベルト702が蛇行したとは判断しないようにすることができる(蛇行の検知精度を緩めることができる)。
【0079】
また、発光剤を含む領域22Aのベルト幅方向の長さを、搬送ベルト702のベルト幅方向の長さよりも小さくして、その発光剤を含む領域22Aを搬送ベルト702の幅方向中央を長手方向に沿って形成することにより、その発光剤を含む領域22Aの両側は、発光剤を含まない領域22B(図12参照)になるため、搬送ベルト702の蛇行の検知を正確に判断することができる。
【0080】
また、カバー層全体に発光剤を含有させた搬送ベルト102の蛇行を検知する場合には、2組の光センサが必要であったが、カバー層の一部の領域22Aに発光剤を含有させた搬送ベルト702の蛇行を検知する場合には、1組の光センサで検知することが可能であるため、コストを抑制することができる。
【0081】
上記内容を総合すると、搬送ベルトの蛇行を容易に検出できるという点では、発光剤を含む領域は、ベルト長手方向に細く伸びる形態にするのがより好ましいと考えられる。そのため、蛇行防止桟、耳シール、荷こぼれ防止用のたて桟に、発光剤を混入するのが好ましい。また、蛇行防止桟、耳シール、荷こぼれ防止用のたて桟は、プーリや搬送物などに接触する箇所であったり、搬送ベルトの屈曲時にはベルト本体部よりも大きく変形を受けたりするため、摩耗や欠損が生じやすい部分である。そのため、蛇行防止桟、耳シール、たて桟などを備える搬送ベルトについては、これらの部分を監視しておけば搬送ベルトの異常を十分に検知することができる。
【0082】
また、蛇行防止桟、耳シール、荷こぼれ防止用のたて桟、カバー層の一部に、発光剤を含む領域を配置する場合、その表面にだけ発光剤を含む領域を設けても良い。
【0083】
(その他の実施形態2)
上記実施形態やその他の実施形態1では、搬送ベルトの外周面側(搬送物を載置する側)に、弾性材料で形成されたカバー層を配置している態様について説明したが、搬送ベルトの外周面が、芯体帆布で形成されていてもよい。
【0084】
例えば、搬送ベルトが平ベルトの場合を例示すると、図13(H)に示すように、一層の芯体帆布のみで構成された搬送ベルト702である。また、図13(I)に示すように、芯体帆布821の内周側に裏面カバー層822を積層した二層構造の搬送ベルト802である。また、図13(J)に示すように、外周側の芯体帆布921と内周側の芯体帆布923との間に中間層922を配置した三層構造の搬送ベルト902である。また、図13(K)に示すように、外周側から、芯体帆布1021、中間層1022、芯体帆布1023、裏面カバー層1024が積層された四層構造の搬送ベルト1002である。
【0085】
また、上記外周面が芯体帆布で形成された搬送ベルトにおいても、上述した耳シール530(発光剤を含む)、たて桟630(発光剤を含む)、蛇行防止桟23(発光剤を含む)は、それぞれ単独でも組み合わせても設けることができる。
【0086】
また、図13(I)の搬送ベルト802の裏面カバー層822の全体や、図13(K)の搬送ベルト1002の裏面カバー層1024の全体を、発光剤を含む、ポリウレタン(PU)系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリオレフィン系の、熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂)によって形成してもよい。
【0087】
また、図13(H)~図13(K)の搬送ベルト702、802、902、1002の外周側に設けられた芯体帆布(搬送ベルト702の芯体帆布、芯体帆布821、芯体帆布921、芯体帆布1021)の表面の一部に発光剤を含む領域(発光剤を含む熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂))を設けたり、積層させたりしてもよい。
【0088】
また、図13(H)、図13(J)の搬送ベルト702、902の内周側に設けられた芯体帆布(搬送ベルト702の芯体帆布、芯体帆布923)の裏面の一部に発光剤を含む領域(発光剤を含む熱可塑性エラストマー(または熱可塑性樹脂))を設けたり、積層させたりしてもよい。例えば、図14に示すように、搬送ベルト702(芯体帆布)の裏面(内周面側)のベルト幅方向両端に、ベルト長手方向に沿った、発光剤を含む熱可塑性エラストマー層740(または熱可塑性樹脂)を積層してもよい。これにより、搬送ベルト702の蛇行、及び、搬送ベルト702の裏面の摩耗や搬送ベルト702の両端の摩耗を、検出することができる。なお、搬送ベルトの裏面(内周側)の両端に積層される、発光剤を含む熱可塑性エラストマー層740は、図13(H)~図13(K)に例示した、搬送ベルト702、802、902、1002だけでなく、上記実施形態の搬送ベルト2やその他の実施形態1で例示した搬送ベルト102、202、302、402、502、602にも適用することができる。
【0089】
上記その他の実施形態2に例示した搬送ベルトに示すように、外周面(搬送物を載置する側)に芯体帆布を配置することにより、外周面にカバー層(ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、およびポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーなどの弾性部材)を配置した搬送ベルトに比べて、搬送物に対する離型性を向上させたり、摩擦係数を小さくしたりすることができる。この搬送物に対する離型性の高さや摩擦係数の小ささを利用して、搬送物を搬送ベルト上で一時的に滞留させる、アキューム用途に好適に用いることができる。
【0090】
(変形例)
上記実施形態では、主に、搬送ベルトの材質に熱可塑性エラストマーを採用したものについて説明したが、これに限らず、ゴム製の搬送ベルトであってもよい。この場合、例えば、発光剤をゴムに練り込んだマスターバッチと、ゴムとを混合して発光剤を含むゴム組成物を作製し、作製したゴム組成物から蛇行防止桟23を形成する。従って、搬送ベルトは、少なくともその一部が、発光剤を含むエラストマー(ゴム、熱可塑性エラストマー)によって形成されている。
【0091】
また、上記実施形態では、搬送ベルト2の内周側に配置された光源3から近赤外光を蛇行防止桟23に照射し、同じく搬送ベルト2の内周側に配置された受光部4によって受光している(発光剤が含まれた蛇行防止桟23に反射させて受光している)。しかし、この配置関係に限らず、搬送ベルト2の内周側に配置された光源3から近赤外光を蛇行防止桟23に照射し、搬送ベルト2の外周側に配置された受光部4によって受光してもよい(発光剤が含まれた蛇行防止桟23を透過させて受光している)。同様に、搬送ベルト2の外周側に配置された光源3から近赤外光を蛇行防止桟23に照射し、搬送ベルト2の内周側に配置された受光部4によって受光してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、受光部4において観測した蛍光の強度(発光量)を電圧に変換して、搬送ベルト2の異常を検出しているが、受光部4において観測した蛍光から、光学特性に基づき、吸収スペクトル、極大吸収波長、吸光度、モル吸光係数、蛍光スペクトル、蛍光強度、蛍光量子収率、ストークスシフト(極大吸収波長と極大蛍光波長の差)などを算出し、これらの値の変化により、搬送ベルト2の異常を判断してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、搬送ベルト2の異常を検知した場合に、アラーム7によって警報音を発したり、LEDランプ8を赤色点滅表示させたり、パーソナルコンピュータ9のモニタに、蛇行防止桟23の蛍光の強度(発光量)を映し出すことで、搬送ベルト2の異常を報知している。即ち、アラーム7、LEDランプ8、パーソナルコンピュータ9のモニタは、搬送ベルト2の異常を検知した場合、外部に報知する報知装置の役割を果たしている。しかし、報知装置としてはこれらに限らず、スマートフォンやタブレットや携帯端末に搬送ベルト2の異常を知らせるソフトウェアであってもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、制御部6が、蛍光の強度(発光量)を電圧に変換した出力電圧の値の変化により、搬送ベルト2の異常を検知しているが、制御部6の役割をパーソナルコンピュータ9において実行してもよい。この場合、搬送装置1に制御部6を設けなくてもよい。
【0095】
なお、上記実施形態において、光源3及び受光部4を備えた光センサ5と制御部6とは、本発明の1つである搬送ベルト監視システムを構成する。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。上記実施形態及び実施例では、搬送ベルトとして蛇行防止桟付の平ベルトを例に説明したが、タイミングベルト、Vベルト、Vリブドベルトなど各種ベルトに適用可能である。また、本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく、上記した実施形態及び実施例の組み合わせ、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 搬送装置
2 搬送ベルト
3 光源
4 受光部
5 光センサ
6 制御部
7 アラーム
8 LEDランプ
9 パーソナルコンピュータ
11 駆動プーリ
12 第1従動プーリ
13 第2従動プーリ
14 第3従動プーリ
15 第4従動プーリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14