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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20230724BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/44
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020032592
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135213
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一将
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】大島 誉寿
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲志
(72)【発明者】
【氏名】今井 済
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072501(JP,A)
【文献】特開2016-114439(JP,A)
【文献】特表2009-536319(JP,A)
【文献】特表2009-522561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0033878(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0011152(US,A1)
【文献】米国特許第6873721(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の部材が規則的に配列された集合体と、前記集合体における配列方向と略平行に形成された前記集合体の面に接触する接触板との接触領域の欠陥を検査する検査装置であって、
前記接触領域を探傷して、前記接触領域を示す探傷画像を生成する画像生成部と、
入力された前記探傷画像を、前記接触領域における前記部材の配列を規則的に並べ直した正規化画像に変換して出力する画像変換部と、
前記画像変換部に入力される前記探傷画像と、前記正規化画像とを比較し、前記欠陥の有無を判定する欠陥判定部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記画像変換部は、1または複数の前記探傷画像から抽出した、前記欠陥が無いとみなされる複数の基準画像に基づき、前記正規化画像を出力するように機械学習させて作成される請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数の基準画像は、前記接触領域に連続する、前記集合体の厚み、および、前記接触板の厚みのうちのいずれか一方または両方が異なる複数の前記探傷画像から抽出される請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
1または複数の部材が規則的に配列された集合体と、前記集合体における配列方向と略平行に形成された前記集合体の面に接触する接触板との接触領域の欠陥を検査する検査方法であって、
前記接触領域を探傷して、前記接触領域を示す探傷画像を生成する工程と、
1または複数の前記探傷画像から抽出した複数の基準画像に基づき、前記接触領域における前記部材の配列を規則的に並べ直した正規化画像が出力されるように機械学習させて作成された画像変換部に、前記探傷画像を入力し、前記正規化画像を取得する工程と、
前記画像変換部に入力される前記探傷画像と、前記正規化画像とを比較し、前記欠陥の有無を判定する工程と、
を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチ構造体は、軽量性、剛性、および、薄肉性に優れている。このため、サンドイッチ構造体は、航空機、自動車、建造物部材等に広く利用されている。サンドイッチ構造体は、芯材(コア)と、芯材の両面に配された表皮材(スキン)で構成される多層構造体である。芯材は、例えば、金属製のハニカム構造体で構成される。表皮材は、例えば、樹脂(例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化樹脂))または金属で構成される。芯材と表皮材とは、接着剤で接着される。
【0003】
このような多層構造体における層同士の接触領域、例えば、芯材と表皮材との接触領域を検査する技術として、超音波探傷技術が利用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-163406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような超音波探傷技術では、超音波探傷信号に基づく画像を検査員が目視して欠陥の有無を検査する。このため、検査員によって欠陥を見落とされるおそれがあったり、検査に長時間を要したりするという課題がある。
【0006】
そこで、本開示は、このような課題に鑑み、多層構造体における層同士の接触領域の欠陥の有無を短時間で精度よく検査することが可能な検査装置および検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る検査装置は、1または複数の部材が規則的に配列された集合体と、集合体における配列方向と略平行に形成された集合体の面に接触する接触板との接触領域の欠陥を検査する検査装置であって、接触領域を探傷して、接触領域を示す探傷画像を生成する画像生成部と、入力された探傷画像を、接触領域における部材の配列を規則的に並べ直した正規化画像に変換して出力する画像変換部と、画像変換部に入力される探傷画像と、正規化画像とを比較し、欠陥の有無を判定する欠陥判定部と、を備える。
【0008】
また、画像変換部は、1または複数の探傷画像から抽出した、欠陥が無いとみなされる複数の基準画像に基づき、正規化画像を出力するように機械学習させて作成されてもよい。
【0009】
また、複数の基準画像は、接触領域に連続する、集合体の厚み、および、接触板の厚みのうちのいずれか一方または両方が異なる複数の探傷画像から抽出されてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る検査方法は、1または複数の部材が規則的に配列された集合体と、集合体における配列方向と略平行に形成された集合体の面に接触する接触板との接触領域の欠陥を検査する検査方法であって、接触領域を探傷して、接触領域を示す探傷画像を生成する工程と、1または複数の探傷画像から抽出した複数の基準画像に基づき、接触領域における部材の配列を規則的に並べ直した正規化画像が出力されるように機械学習させて作成された画像変換部に、探傷画像を入力し、正規化画像を取得する工程と、画像変換部に入力される探傷画像と、正規化画像とを比較し、欠陥の有無を判定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、欠陥の有無を短時間で精度よく検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の検査装置を説明する図である。
図2図2Aは、検査対象物の斜視図である。図2Bは、検査対象物の分解斜視図である。
図3図3は、制御装置を説明する図である。
図4図4は、探傷画像および基準画像を説明する図である。
図5図5は、画像変換部の生成について説明する図である。
図6図6は、画像変換部による検査画像の抽出を説明する図である。
図7図7は、画像変換部および欠陥判定部の機能を説明する図である。
図8図8は、実施形態の検査方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[検査装置100]
図1は、本実施形態の検査装置100を説明する図である。本実施形態の図1をはじめとする以下の図では、検査対象物10に対し、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸を図示の通り定義している。
【0015】
図1に示すように、検査装置100は、検査対象物10内の欠陥、特に、非接触箇所を検査する。本実施形態において、検査対象物10は、サンドイッチ構造体である。検査対象物10は、集合体20と、第1接触板30と、第2接触板40とを含む。
【0016】
図2は、検査対象物10を説明する図である。図2Aは、検査対象物10の斜視図である。図2Bは、検査対象物10の分解斜視図である。図2A図2Bに示すように、検査対象物10は、集合体20と、第1接触板30と、第2接触板40とを含む。
【0017】
集合体20は、芯材として機能する。集合体20は、1または複数の部材22が規則的に配列された構造体である。本実施形態において、部材22は、図2A図2B中、XY断面(部材22の延在方向(図2A図2B中、Z軸方向)と直交する断面)が六角形の六角筒である。つまり、集合体20は、ハニカム構造体である。また、集合体20は、金属で構成される。集合体20には、切削加工等によって、集合体20における部材22の配列方向(図2A図2B中、X軸方向およびY軸方向)と略平行な面24、26が形成される。面24、26は、略平坦な面である。面26は、面24の反対側の面である。集合体20の厚み(図2A図2B中、Z軸方向の長さ)は、略一定である。
【0018】
第1接触板30(接触板)は、表皮材として機能する。第1接触板30は、樹脂(例えば、FRP)または金属で構成される。第1接触板30は、底面32と、上面34と、側面36とを含む。底面32は、図2A図2B中、XY平面に延在した略平坦な面である。本実施形態において、第1接触板30の底面32は、集合体20の面24に接触する。
【0019】
上面34は、底面32の反対側の面である。上面34は、第1面34aと、第2面34bと、第3面34cとを含む。第1面34a、第2面34b、および、第3面34cは、図2A図2B中、X軸方向に並列される。
【0020】
第1面34aは、図2A図2B中、XY平面に延在した略平坦な面である。第1面34aは、底面32と所定距離T1離隔する。つまり、第1接触板30における第1面34aの箇所の厚み(図2A図2B中、Z軸方向の長さ)は、T1である。
【0021】
第2面34bは、図2A図2B中、XY平面に延在した略平坦な面である。第2面34bは、底面32と所定距離T2離隔する。つまり、第1接触板30における第2面34bの箇所の厚みは、T2である。距離(厚み)T2は、距離(厚み)T1よりも短い。例えば、距離T1は、距離T2の1.5倍程度である。
【0022】
第3面34cは、一方の端部が第1面34aに連続し、他方の端部が第2面34bに連続する。第3面34cと底面32との距離は、一方の端部から他方の端部に向かうに従って漸減する。第3面34cにおける一方の端部と底面32との距離は、T1である。第3面34cにおける他方の端部と底面32との距離は、T2である。つまり、第1接触板30における第3面34cの箇所の厚みは、図2A図2B中、X軸方向に向かうに従って漸減する。
【0023】
側面36は、底面32と上面34とに連続する。側面36は、図2A図2B中、Z軸方向に延在する略平坦な面である。
【0024】
第2接触板40は、表皮材として機能する。第2接触板40は、樹脂(例えば、FRP)または金属で構成される。第2接触板40は、厚み(図2A図2B中、Z軸方向の長さ)が略一定の板である。第2接触板40の上面42は、図2A図2B中、XY平面に延在した略平坦な面である。第2接触板40の上面42は、集合体20の面26に接触する。
【0025】
検査対象物10において、集合体20と第1接触板30(面24と底面32)、および、集合体20と第2接触板40(面26と上面42)とは、接着剤によって接着される。本実施形態において、接着剤は、樹脂を含む。
【0026】
検査装置100は、集合体20と第1接触板30との接触領域(面24と底面32との接触箇所)における非接触箇所(欠陥)を検査する。
【0027】
図1に戻って説明すると、検査装置100は、探傷装置110と、制御装置150とを含む。本実施形態において、探傷装置110は、超音波探傷装置である。探傷装置110は、探触子112と、超音波送受信器114と、探傷制御部116とを含む。
【0028】
探触子112は、振動子を備える。探触子112は、検査対象物10に超音波(超音波ビーム)を発信したり、検査対象物10から反射された超音波を受信して電気信号に変換したりする。本実施形態において、探触子112は、検査対象物10の第1接触板30(上面34)に接触され、図1中、Y軸方向に走査される。
【0029】
超音波送受信器114は、例えば、パルサレシーバである。超音波送受信器114は、探触子112の振動子に電力を供給し、振動子を振動させて超音波(超音波ビーム)を送信(発信)させる。また、超音波送受信器114は、探触子112の振動子から入力された電気信号を、例えばデジタル値で表される振動情報に変換して探傷制御部116に送信する。
【0030】
探傷制御部116は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。探傷制御部116は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。また、探傷制御部116は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して探傷装置110全体を管理および制御する。
【0031】
探傷制御部116は、超音波送受信器114を制御して、探触子112に超音波を送信させたり、超音波送受信器114から送信された振動情報(探触子112が受信した超音波に基づく情報)を受信したりする。
【0032】
また、本実施形態において、探傷制御部116は、画像生成部120として機能する。画像生成部120は、超音波送受信器114から送信された振動情報に基づき、探傷画像を生成する。探傷画像は、集合体20と第1接触板30との接触領域を示す画像である。探傷画像については、後に詳述する。
【0033】
そして、探傷制御部116は、画像生成部120によって生成された探傷画像を制御装置150に送信する。
【0034】
制御装置150は、画像生成部120によって送信された探傷画像に基づき、集合体20と第1接触板30との接触領域における欠陥の有無を検出する。
【0035】
図3は、制御装置150を説明する図である。制御装置150は、例えば、サーバー(例えば、NAS:Network Attached Storage)である。図3に示すように、制御装置150は、メモリ160と、中央制御部170と、表示部180とを含む。
【0036】
メモリ160は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。メモリ160は、後述する中央制御部170に用いられるプログラムや各種データを記憶する。本実施形態において、メモリ160は、画像フォルダ162、結果フォルダ164としても機能する。
【0037】
画像フォルダ162は、画像生成部120によって生成された探傷画像を保持する。結果フォルダ164は、後述する結果画像等を保持する。
【0038】
中央制御部170は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部170は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部170は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して制御装置150全体を管理および制御する。
【0039】
本実施形態において、中央制御部170は、画像変換部172、欠陥判定部174としても機能する。以下、まず、画像変換部172の生成について説明し、続いて、画像変換部172および欠陥判定部174の機能について説明する。
【0040】
[画像変換部172の生成]
画像変換部172は、1または複数の探傷画像から抽出した複数の基準画像に基づき、正規化画像を出力するように機械学習させて作成される。
【0041】
図4は、探傷画像210および基準画像220を説明する図である。上記したように、探触子112は、第1接触板30の上面34を、図1図2A図2B中、Y軸方向に走査する。図4に示すように、探傷画像210は、集合体20と第1接触板30との接触領域を示す画像である。探傷画像210において、集合体20(部材22)と第1接触板30との接触箇所と、非接触箇所とは、異なる態様で示される。図4中、探傷画像210における接触箇所を着色で示し、非接触箇所を白色で示す。
【0042】
図4に示すように、探傷画像210において、集合体20と第1接触板30との接触箇所は、部材22の形状(ここでは、六角形)を維持して示される。一方、探傷画像210において、集合体20と第1接触板30との非接触箇所Kは、探傷画像210において欠落して示される。非接触箇所Kの形状は、部材22の形状とは異なる。
【0043】
画像変換部172を作成する際、まず、1または複数の探傷画像210から基準画像220が抽出される。基準画像220は、探傷画像210の一部を所定の大きさで切り取った画像である。所定の大きさは、探傷画像210より小さい。基準画像220は、例えば、矩形形状(正方形)である。探傷画像210から基準画像220が抽出される際、非接触箇所Kが基準画像220に含まれないように、非接触箇所Kが無いとみなされる基準画像220が抽出される。
【0044】
本実施形態では、複数の探傷画像210から複数の基準画像220が抽出される。具体的に説明すると、探傷装置110によって、第1接触板30の第1面34aを走査して得られた探傷画像210、第1接触板30の第2面34bを走査して得られた探傷画像210、および、第1接触板30の第3面34cを走査して得られた探傷画像210それぞれから1または複数の基準画像220が抽出される。つまり、検査対象物10のうち、第1接触板30の厚みが異なる箇所を探傷することで得られた複数の探傷画像210それぞれから複数の基準画像220が抽出される。換言すれば、接触領域に連続する、第1接触板30の厚みが異なる複数の探傷画像210それぞれから基準画像220が抽出される。
【0045】
なお、第1接触板30の厚みが大きい探傷画像210(第1面34aを走査して得られた探傷画像210)は、第1接触板30の厚みが小さい探傷画像210(第2面34bを走査して得られた210)よりも不鮮明となり易い(ぼやけ易い)。このため、抽出された基準画像220には、鮮明な基準画像220と、不鮮明な基準画像220とが含まれる。基準画像220は、例えば、100枚抽出される。なお、画像変換部172の生成に要する基準画像220の数は、多い方がよい。
【0046】
図5は、画像変換部172の生成について説明する図である。図5に示すように、画像変換部172は、探傷画像210から抽出された複数の基準画像220に基づき、正規化画像230が出力されるように機械学習させて生成される。換言すれば、複数の基準画像220に基づいて、画像変換部172が機械学習して正規化画像230を出力する。正規化画像230は、接触領域における部材22の配列を規則的に並べ直した画像である。機械学習は、例えば、深層学習である。機械学習のアルゴリズムは、例えば、オートエンコーダ、または、CNN(Convolutional neural network)である。なお、機械学習のアルゴリズムは、様々な既存技術を適用できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0047】
したがって、非接触箇所Kが含まれない、部材22の配列を規則的に並べ直した正規化画像230が出力されるように画像変換部172が生成される。つまり、画像変換部172は、入力された画像に対し、非接触箇所K(欠落部分)を補完したり、部材22の位置のズレを補正したりして、正規化画像230に変換する。なお、画像変換部172は、鮮明な探傷画像210が入力された場合には、鮮明な正規化画像230が出力され、不鮮明な探傷画像210が入力された場合には、不鮮明な正規化画像230が出力されるように生成される。こうして生成された画像変換部172は、制御装置150に保持される。
【0048】
[画像変換部172、欠陥判定部174の機能]
制御装置150に保持された画像変換部172は、画像フォルダ162を常時監視し、画像フォルダ162に探傷画像210が入力されたら、探傷画像210から所定の大きさの検査画像を切り取る(抽出する)。
【0049】
図6は、画像変換部172による検査画像250の抽出を説明する図である。図6に示すように、画像変換部172は、探傷画像210から検査画像250を抽出する。つまり、検査画像250は、探傷画像210の一部を所定の大きさで切り取った画像である。検査画像250は、例えば、矩形形状(正方形)である。画像変換部172は、探傷画像210全域が漏れなく検査されるように、過去に抽出した検査画像250と今回抽出する検査画像250とが一部重畳するように、検査画像250を抽出する。例えば、画像変換部172は、図6に示すように、過去に抽出した検査画像250の上下方向および左右方向の4方向の一部に重畳されるように、新たに検査画像250を抽出する。検査画像250には、非接触箇所Kが含まれる場合も非接触箇所Kが含まれない場合もある。なお、検査画像250の大きさは、基準画像220の大きさと実質的に等しい。
【0050】
図7は、画像変換部172および欠陥判定部174の機能を説明する図である。図7に示すように、画像変換部172は、抽出した1の検査画像250を入力として、1の正規化画像230に変換して出力する。なお、上記したように、画像変換部172は、入力された画像に対し、非接触箇所K(欠落部分)を補完したり、部材22の位置のズレを補正したりして、正規化画像230に変換する。このため、入力された検査画像250に非接触箇所Kが含まれていても、画像変換部172は、非接触箇所Kにあたかも部材22が存在しているかのような正規化画像230を出力する。
【0051】
そして、画像変換部172は、画像フォルダ162に保持されたすべての探傷画像210それぞれから、複数の検査画像250を抽出し、抽出した複数の検査画像250に対応する複数の正規化画像230をそれぞれ出力する。
【0052】
欠陥判定部174は、画像変換部172に入力される検査画像250と、正規化画像230とを比較し、欠陥の有無を判定する。本実施形態において、欠陥判定部174は、画像変換部172に入力される検査画像250の各画素の輝度と、正規化画像230各画素の輝度の差分を示す差分画像260を生成する。そして、欠陥判定部174は、画像変換部172によって出力された複数の検査画像250に対応する複数の差分画像260をそれぞれ生成し、生成した複数の差分画像260を統合して、探傷画像210に対応する、統合差分画像を生成する。
【0053】
欠陥判定部174は、統合差分画像に対し、輝度の差分が所定値以上か否かに応じて二値化した二値化画像を生成する。そして、欠陥判定部174は、二値化画像において、輝度の差分が所定値以上の領域(以下、「差分領域」という)を抽出する。また、欠陥判定部174は、二値化画像における、差分領域の大きさ(差分領域の長軸の長さおよび短軸の長さ)、および、差分領域の位置(例えば、差分領域の重心の位置)を特定する。
【0054】
そして、欠陥判定部174は、所定の大きさより大きい差分領域を欠陥と判定する。つまり、欠陥判定部174は、二値化画像において、所定の大きさより大きい差分領域が抽出された場合、検査対象物10に欠陥があると判定する。なお、所定の大きさは、例えば、部材22における、図2A図2B中、XY断面の大きさ、または、部材22の孔の大きさである。
【0055】
また、欠陥判定部174は、抽出した差分領域を示す指標を探傷画像210に重畳した結果画像を生成する。こうして、欠陥判定部174によって生成された結果画像、差分領域の大きさを示す情報、および、差分領域の位置を示す情報は、結果フォルダ164に出力される。
【0056】
表示部180は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。表示部180は、結果フォルダ164に保持された二値化された統合差分画像、統合差分画像において抽出された差分領域の大きさを示す情報、および、統合差分画像における差分領域の位置を示す情報を表示する。
【0057】
[検査方法]
続いて、検査装置100を用いた検査方法を説明する。図8は、本実施形態の検査方法の流れを示すフローチャートである。図8に示すように、検査方法は、探傷画像生成工程S110、正規化画像取得工程S120、欠陥判定工程S130、欠陥数判定工程S140、合格判定工程S150、不合格判定工程S160を含む。以下、各工程について説明する。
【0058】
[探傷画像生成工程S110]
探傷画像生成工程S110は、探傷装置110が、集合体20と第1接触板30との接触領域を探傷して、接触領域を示す探傷画像210を生成する工程である。探傷装置110によって生成された探傷画像210は、制御装置150の画像フォルダ162に送信される。
【0059】
[正規化画像取得工程S120]
正規化画像取得工程S120は、制御装置150の画像変換部172が、検査画像250(探傷画像210)を入力とし、正規化画像230を取得する工程である。なお、上記したように、画像変換部172は、1または複数の探傷画像210から抽出した複数の基準画像220に基づき、正規化画像230を出力するように機械学習させて事前に作成されている。
【0060】
[欠陥判定工程S130]
欠陥判定工程S130は、欠陥判定部174が、画像変換部172に入力される検査画像250(探傷画像210)と、正規化画像230とを比較し、欠陥の有無を判定する工程である。
【0061】
[欠陥数判定工程S140]
欠陥数判定工程S140は、欠陥判定部174が、欠陥判定工程S130の結果を参照し、集合体20と第1接触板30との接触領域における単位検査範囲内の欠陥の数が所定数以上であるか否かを判定する工程である。その結果、欠陥判定部174は、欠陥の数が所定数以上ではないと判定した場合(S140におけるNO)、合格判定工程S150に処理を移す。一方、欠陥判定部174は、欠陥の数が所定数以上であると判定した場合(S140におけるYES)、不合格判定工程S160に処理を移す。
【0062】
[合格判定工程S150]
合格判定工程S150は、欠陥判定部174が検査対象物10を合格と判定する工程である。合格と判定された検査対象物10は、次の工程に搬送されたり、出荷されたりする。
【0063】
[不合格判定工程S160]
不合格判定工程S160は、欠陥判定部174が検査対象物10を不合格と判定する工程である。不合格と判定された検査対象物10の結果画像は、表示部180に表示される。そして、検査員によって、結果画像における差分領域の大きさ、位置等が判定され、最終的に検査対象物10が不合格であるか合格であるかが判定される。こうして、不合格と判定された検査対象物10は、例えば、修理または廃棄される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態にかかる検査装置100およびこれを用いた検査方法は、画像変換部172および欠陥判定部174を備える。これにより、検査装置100は、探傷画像210を検査員が目視して非接触箇所Kの有無を検査する従来技術と比較して、短時間で精度よく非接触箇所Kの有無を検査することができる。また、検査装置100は、非接触箇所Kの見落としの確率を著しく低減することが可能となる。
【0065】
また、上記したように、画像変換部172は、複数の基準画像220に基づき、正規化画像230が出力されるように機械学習させて作成される。したがって、検査装置100は、欠陥を精度よく検出することができる。
【0066】
また、上記したように、探傷画像210は、第1接触板30の厚みによって鮮明度が異なる。このため、基準画像220と検査画像250とを単に比較する従来技術では、基準画像220と検査画像250の鮮明度を一致させることが困難であり、欠陥が無い箇所を欠陥と誤判定したり、欠陥を検出できなかったりするという問題があった。
【0067】
そこで、本実施形態の検査装置100では、画像変換部172の生成に用いられる基準画像220が、集合体20の面24に接触する第1接触板30の厚みが異なる、複数の探傷画像210それぞれから抽出される。そして、検査装置100は、このように抽出された、鮮明度の異なる複数の基準画像220に基づき、正規化画像230が出力されるように機械学習させて作成された画像変換部172を備える。これにより、検査装置100は、第1接触板30の厚みに拘わらず、その厚みに応じた正規化画像230を生成できる。したがって、検査装置100は、第1接触板30の厚みに拘わらず、欠陥を高精度に検出することが可能となる。
【0068】
また、上記したように、欠陥判定部174は、部材22の大きさ以上の差分領域を欠陥と判定する。これにより、部材22の接触が欠陥であると誤判定されてしまう事態を回避することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば、上述した実施形態において、検査対象物10がサンドイッチ構造体である場合を例に挙げた。しかし、検査対象物10は、1または複数の部材が規則的に配列された集合体と、集合体における配列方向と略平行な面に接触する接触板とを少なくとも含んでいればよい。つまり、検査対象物10は、第2接触板40を備えずともよい。
【0071】
また、上記実施形態において、部材22が六角筒である場合を例に挙げた。しかし、部材22の形状に限定はない。例えば、部材22は、三角筒、四角筒、円筒であってもよい。また、上記実施形態において、1の部材22が規則的に配列された集合体20を例に挙げた。しかし、集合体は、複数の部材22が規則的に配列されたものであってもよい。例えば、集合体は、三角筒と、六角筒とが規則的に配列されたものであってもよい。また、大きさ(径)の異なる円筒が規則的に配列されたものであってもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、厚みが一定ではない第1接触板30を例に挙げた。しかし、第1接触板30の厚みは略一定であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、集合体20は、厚みが略一定である場合を例に挙げた。しかし、集合体20の厚みは一定でなくてもよい。この場合、複数の基準画像220は、接触領域に接触する、集合体20の厚み、および、第1接触板30の厚みのうちのいずれか一方または両方が異なる複数の探傷画像210から抽出される。つまり、検査対象物10のうち、集合体20の厚み、および、第1接触板30の厚みのうちのいずれか一方または両方が異なる箇所を探傷することで得られた複数の探傷画像210それぞれから複数の基準画像220が抽出される。
【0074】
また、上記実施形態において、基準画像220および検査画像250が、探傷画像210の一部を所定の大きさで切り取った画像である場合を例に挙げた。しかし、基準画像220および検査画像250は、探傷画像210そのものであってもよい。
【0075】
また、上記実施形態において、探傷装置110が超音波探傷装置である場合を例に挙げた。しかし、探傷装置110は、集合体20と第1接触板30との接触領域を探傷して、探傷画像を生成することができれば、構成に限定はない。探傷装置110は、例えば、赤外線サーモグラフィであってもよい。
【0076】
また、上記実施形態において、メモリ160と、中央制御部170とが1の制御装置150に設けられる場合を例に挙げた。しかし、メモリ160と中央制御部170とは別体であってもよい。
【0077】
なお、本明細書の検査方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、検査装置および検査方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
S110 探傷画像生成工程
S120 正規化画像取得工程
S130 欠陥判定工程
20 集合体
22 部材
24 面(接触領域)
30 第1接触板(接触板)
32 底面(接触領域)
100 検査装置
120 画像生成部
172 画像変換部
174 欠陥判定部
210 探傷画像
220 基準画像
230 正規化画像
250 検査画像(探傷画像)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8