(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230724BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230724BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230724BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 658F
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
(21)【出願番号】P 2020046909
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】藤農 佑樹
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204529(JP,A)
【文献】特開2014-146666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209999(US,A1)
【文献】米国特許第08541834(US,B2)
【文献】特開2018-046253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0083110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と
、
前記第1電極の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上から前記第2半導体領域及び前記第1半導体領域を通り前記第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、
前記トレンチ内に、前記第1絶縁膜を介して前記第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、
前記第2電
極と前記第2半導体層の間に設けられ
前記第1絶縁材料を含む第5絶縁膜と、前記第2電
極の間
に設けられ、前記第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、
前記第2電極
及び前記第1絶縁
膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して前記第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、
前記第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、
を備え、
前記トレンチの下部において、少なくとも一部は前記第2絶縁膜が設けられず、
前記第2絶縁膜の上端と前記第1電極の距離は、前記第2電極の上端と前記第1電極の距離より長い、
半導体装置。
【請求項2】
第1電極と
、
前記第1電極の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上から前記第2半導体領域及び前記第1半導体領域を通り前記第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、
前記トレンチ内に、前記第1絶縁膜を介して前記第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、
前記第2電
極と前記第2半導体層の間に設けられ
前記第1絶縁材料を含む第5絶縁膜と、前記第2電
極の間
に設けられ、前記第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、
前記第2電極
及び前記第1絶縁
膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して前記第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、
前記第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、
を備え、
前記トレンチの下部において、少なくとも一部は前記第2絶縁膜が設けられず、
前記第2絶縁膜は、第1部分と、前記第1部分の上に設けられ前記第1部分より水平方向の膜厚の厚い第2部分と、を有する、
半導体装置。
【請求項3】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上から前記第2半導体領域及び前記第1半導体領域を通り前記第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、
前記トレンチ内に、前記第1絶縁膜を介して前記第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、
前記第2電極の側面と前記第2半導体層の間に設けられた第5絶縁膜と、前記第2電極の側面の間において、前記第2電極の下端から前記第2電極の高さの40%の位置と、前記第2電極の上端の位置の間に設けられ、前記第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、
前記第2電極、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して前記第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、
前記第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、
前記第2電極の側面と前記第2絶縁膜の間に設けられ前記第1絶縁材料を含む第3絶縁膜と、
を備え、
前記第2電極の高さの40%の位置より下の前記トレンチ内における前記第1絶縁膜は、前記第1絶縁材料のみを含む、半導体装置。
【請求項4】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上から前記第2半導体領域及び前記第1半導体領域を通り前記第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、
前記トレンチ内に、前記第1絶縁膜を介して前記第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、
前記第2電極の側面と前記第2半導体層の間に設けられた第5絶縁膜と、前記第2電極の側面の間において、前記第2電極の下端から前記第2電極の高さの40%の位置と、前記第2電極の上端の位置の間に設けられ、前記第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、
前記第2電極、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して前記第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、
前記第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、
前記第2電極の側面と前記第2絶縁膜の間に設けられ前記第1絶縁材料を含む第3絶縁膜と、
を備え、
前記第2電極の高さの40%の位置より下の前記トレンチ内における前記第1絶縁膜は、前記第2絶縁材料を含まない、半導体装置。
【請求項5】
前記第2電極の側面と前記第2半導体層の間における前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第2絶縁膜が設けられていない前記第2電極の側面と前記第2半導体層の間における前記第1絶縁膜の膜厚の30%以上である請求項1
乃至請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2電極の側面と前記第2絶縁膜の間に設けられ前記第1絶縁材料を含む第3絶縁膜をさらに備える請求項
1、請求項2又は請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2絶縁膜は、第1部分と、前記第1部分の上に設けられ前記第1部分より水平方向の膜厚の厚い第2部分と、を有する請求項
1、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2電極は、第3部分と、前記第3部分の上に設けられ前記第3部分より水平方向の膜厚の厚い第4部分と、を有する請求項1乃至請求項
7いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1絶縁材料は酸化ケイ素であり、前記第2絶縁材料は窒化ケイ素である請求項1乃至請求項
8いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2半導体層の間に設けられた第1半導体層をさらに備える請求項1、請求項2、請求項4乃至請求項9いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2絶縁膜は、前記第2電極の側面と、前記第2電極の側面と前記第2半導体層の間の前記第5絶縁膜の間に設けられた請求項1乃至請求項10いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2絶縁膜の下端と前記第1電極の距離は、前記第2電極の下端と前記第1電極の距離より長い請求項1乃至請求項11いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2絶縁膜は、少なくとも前記第2電極の下部の側面と前記第5絶縁膜の間には設けられていない請求項1乃至請求項12いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2絶縁膜は、第1絶縁部と、第2絶縁部と、を有し、
前記第1絶縁部の下端と前記第2絶縁部の下端は互いに離間して設けられている請求項1乃至請求項13いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体装置は、電力変換等の用途に用いられる。このような半導体装置については、耐圧の高いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-146666号公報
【文献】Kenya Kobayashi, Hiroaki Kato, Toshifumi Nishiguchi, Saya Shimomura, Tetsuya Ohno, Tatsuya Nishiwaki, Kikuo Aida, Kentaro Ichinoseki, Kohei Oasa and Yusuke Kawaguchi, “100-V Class Two-step-oxide Field-Plate Trench MOSFET to Achieve Optimum RESURF Effect and Ultralow On-resistance”, Proceedings of ISPSD 2019, pp. 99-102, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、オン抵抗をより低減することが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、第1電極と、第1電極の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、第2半導体領域の上から第2半導体領域及び第1半導体領域を通り第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、トレンチ内に、第1絶縁膜を介して第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、第2電極と第2半導体層の間に設けられ第1絶縁材料を含む第5絶縁膜と、第2電極の間に設けられ、第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、第2電極及び第1絶縁膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、を備え、トレンチの下部において、少なくとも一部は第2絶縁膜が設けられず、第2絶縁膜の上端と第1電極の距離は、第2電極の上端と第1電極の距離より長い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の要部の模式断面図である。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の要部の模式断面図である。
【
図4】第1実施形態の他の態様の半導体装置の模式断面図である。
【
図5】第1実施形態の他の態様の半導体装置の要部の模式断面図である。
【
図6】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図7】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図8】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図9】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図10】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図11】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図12】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図13】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図14】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図15】第1実施形態の半導体装置の作用効果を示す模式図である。
【
図16】第2実施形態の半導体装置の要部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0008】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0009】
以下、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明する。
【0010】
以下の説明において、n+、n、n-および、p+、p、p-の表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn+はnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、n-はnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、p-はpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n+型、n-型を単にn型、p+型、p-型を単にp型と記載する場合もある。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1電極と、第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、第2半導体領域の上から第2半導体領域及び第1半導体領域を通り第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、トレンチ内に、第1絶縁膜を介して第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、第2電極の側面と第2半導体層の間に設けられた第5絶縁膜と、第2電極の側面の間において、第2電極の下端から第2電極の高さの40%の位置と、第2電極の上端の位置の間に設けられ、第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、第2電極、第1絶縁膜及び第2絶縁膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、を備え、第2電極の高さの40%の位置より下のトレンチ内における第1絶縁膜は、第1絶縁材料のみを含む。
【0012】
また、本実施形態の半導体装置は、第1電極と、第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、第2半導体領域の上から第2半導体領域及び第1半導体領域を通り第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、第1絶縁材料を含む第1絶縁膜と、トレンチ内に、第1絶縁膜を介して第2半導体層に対向して設けられた第2電極と、第2電極の側面と第2半導体層の間に設けられた第5絶縁膜と、第2電極の側面の間において、第2電極の下端から第2電極の高さの40%の位置と、第2電極の上端の位置の間に設けられ、第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜と、第2電極、第1絶縁膜及び第2絶縁膜の上に設けられ、ゲート絶縁膜を介して第1半導体領域に対向して設けられた第3電極と、第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられた第4電極と、を備え、第2電極の高さの40%の位置より下のトレンチ内における第1絶縁膜は、第2絶縁材料を含まない。
【0013】
図1は、本実施形態の半導体装置100の模式断面図である。
図2は、本実施形態の半導体装置100の要部の模式断面図である。
図2は、第1トレンチ20を説明するための図である。
図3は、本実施形態の半導体装置100の要部の模式図である。
図3は、第2トレンチ40を説明するための図である。半導体装置100は、例えば、縦型のMOSFETである。
【0014】
半導体装置100は、ドレイン層10と、ドリフト層12と、ベース領域14と、ソース領域16と、第1トレンチ20と、第1絶縁膜22と、フィールドプレート電極24と、第2絶縁膜26と、第3絶縁膜30と、第4絶縁膜32と、第5絶縁膜34と、第6絶縁膜36と、ゲート絶縁膜37と、第2トレンチ40と、第7絶縁膜42と、フィールドプレート電極44と、第8絶縁膜46と、ゲート絶縁膜47と、第9絶縁膜50と、第10絶縁膜52と、第11絶縁膜54と、第12絶縁膜56と、ドレイン電極60と、ゲート電極62と、バリアメタル64と、ソース電極66と、層間絶縁膜70と、を備える。
【0015】
なお、ドレイン電極60は第1電極の一例である。ドレイン層10は、第1半導体層の一例である。ドリフト層12は、第2半導体層の一例である。ベース領域14は、第1半導体領域の一例である。ソース領域16は、第2半導体領域の一例である。第1トレンチ20は、トレンチの一例である。フィールドプレート電極24は、第2電極の一例である。ゲート電極62は、第3電極の一例である。ソース電極66は、第4電極の一例である。
【0016】
ドレイン層10は、MOSFETのドレインとして機能する層である。ドレイン層10は、例えば、n+型の半導体材料を含む。
【0017】
ドレイン電極60は、ドレイン層10の下に設けられ、ドレイン層10と電気的に接続されている。言い換えると、ドレイン層10は、ドレイン電極60の上に設けられている。ドレイン電極60は、MOSFETのドレイン電極として機能する電極である。
【0018】
ドリフト層12は、ドレイン層10の上に設けられている。ドリフト層12は、MOSFETのドリフト層として機能する層である。ドリフト層12は、例えば、n-型の半導体材料を含む。
【0019】
ベース領域14は、ドリフト層12の上に設けられている。ベース領域14は、MOSFETのベースとして機能する。ベース領域14は、ゲート電極62に電圧が印加された場合にチャネルを形成し、ソース領域16とドレイン層10の間にキャリアが流れることを可能とする領域である。ベース領域14は、例えば、p型の半導体材料を含む。半導体装置100は、ベース領域14としての、ベース領域14a、14b及び14cを含む。
【0020】
ソース領域16は、ベース領域14の上に設けられている。ソース領域16は、MOSFETのソースとして機能する領域である。ゲート電極62に適切な電圧が印加された場合に、ソース領域16とドレイン層10の間にキャリアが流れる。ソース領域16は、例えば、n+型の半導体材料を含む。半導体装置100は、ソース領域16としての、ソース領域16a、16b、16c及び16dを含む。
【0021】
ここで、X方向と、X方向に対して垂直に交差するY方向と、X方向及びY方向に垂直に交差するZ方向を定義する。ドレイン層10及びドリフト層12は、X方向及びY方向に平行なXY平面に平行(水平方向)に設けられた層である。Z方向は、ドレイン層10及びドリフト層12が積層された方向である。
【0022】
第1トレンチ20は、ソース領域16の上からソース領域16及びベース領域14を通りドリフト層12に到達するように設けられている。
【0023】
第1絶縁膜22は、第1トレンチ20内に設けられている。第1絶縁膜22は、第1絶縁材料を含む。第1絶縁材料は、例えばSiOx(酸化ケイ素)であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
フィールドプレート電極24は、第1トレンチ20内において、第1絶縁膜22を介してドリフト層12に対向して設けられている。例えば、フィールドプレート電極24は、ドリフト層12と並んで設けられている。フィールドプレート電極24は、例えば、ソース電極66とドレイン電極60の間の逆方向電界の集中を緩和して、耐圧を増加させるために設けられている。フィールドプレート電極24は、Z方向に延伸して設けられている。フィールドプレート電極24は、例えば、
図1の奥行き方向に設けられた、図示されていない部分において、上方に延びた部分を有する。そして、フィールドプレート電極24は、かかる上方に延びた部分を用いて、ソース電極66と電気的に接続されている。なお、フィールドプレート電極24とソース電極66の接続のされ方は、これに限定されるものではない。
【0025】
第2絶縁膜26としての第2絶縁膜26aは、第1トレンチ20内において、フィールドプレート電極の側面24cと第5絶縁膜34の間に設けられている。また、第2絶縁膜26aは、フィールドプレート電極の下端24aからフィールドプレート電極24の高さの40%の位置と、フィールドプレート電極の上端24bの位置の間に設けられている。「フィールドプレート電極の下端24aからフィールドプレート電極24の高さの40%の位置」について説明する。フィールドプレート電極の下端24aを通るXY平面P
1とフィールドプレート電極の上端24bを通るXY平面P
3の距離をL
1とする。次に、フィールドプレート電極の下端24aを通るXY平面P
1からの距離がL
2=0.4L
1になるような、すなわちL
2がL
1の40%になるような、XY平面P
2を考える。このXY平面P
2の位置が、「フィールドプレート電極の下端24aからフィールドプレート電極24の高さの40%の位置」である。言い換えると、第2絶縁膜26aは、XY平面P
2とXY平面P
3の間に設けられている。なお、第2絶縁膜26aは、さらにXY平面P
3の上に設けられていてもかまわない。
図2では、第2絶縁膜26aが、XY平面P
3の上に設けられている場合を示している。
【0026】
同様に、第2絶縁膜26としての第2絶縁膜26bは、第1トレンチ20内において、フィールドプレート電極の側面24dと第6絶縁膜36の間に設けられている。また、第2絶縁膜26bは、フィールドプレート電極の下端24aからフィールドプレート電極24の高さの40%の位置と、フィールドプレート電極の上端24bの位置の間に設けられている。
【0027】
また、第2絶縁膜26aは、第1部分26a1と、第1部分26a1の上に設けられた第2部分26a2と、を有していても良い。その場合、第2部分26a2の膜厚は、第1部分26a1の膜厚より厚い。ここで膜厚は、例えばXY平面に平行な面内(水平面内)における長さである。
【0028】
同様に、第2絶縁膜26bは、第3部分26b1と、第3部分26b1の上に設けられた第4部分26b2と、を有していても良い。その場合、第4部分26b2の膜厚は、第3部分26b1の膜厚より厚い。ここで膜厚は、例えばXY平面に平行な面内(水平面内)における長さである。
【0029】
フィールドプレート電極の側面24cとドリフト層12の間における第2絶縁膜26の膜厚W2は、第2絶縁膜26が設けられていないフィールドプレート電極の側面24cとドリフト層12の間における第1絶縁膜22の膜厚W1の30%以上であることが好ましい。ここで膜厚は、例えばXY平面に平行な面内における長さである。
【0030】
第2絶縁膜26は、第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む。第2絶縁材料は例えばSiNx(窒化ケイ素)であるが、これに限定されるものではない。
【0031】
第3絶縁膜30は、第1トレンチ20内において、フィールドプレート電極の側面24cと第2絶縁膜26aの間に設けられている。第3絶縁膜30は、第1絶縁材料を含む。
【0032】
第4絶縁膜32は、第1トレンチ20内において、フィールドプレート電極の側面24dと第2絶縁膜26bの間に設けられている。第4絶縁膜32は、第1絶縁材料を含む。
【0033】
第5絶縁膜34は、第1トレンチ20内において、ドリフト層12と第2絶縁膜26aの間に設けられている。第5絶縁膜34は、第1絶縁材料を含む。
【0034】
第6絶縁膜36は、第1トレンチ20内において、ドリフト層12と第2絶縁膜26bの間に設けられている。第6絶縁膜36は、第1絶縁材料を含む。
【0035】
ゲート電極62としての第1ゲート電極62aは、フィールドプレート電極24の上に、ゲート絶縁膜37を介してベース領域14に対向して設けられている。第1ゲート電極62aは、MOSFETのゲートとして機能する電極である。ゲート絶縁膜37は、例えば、第1絶縁材料を含む。
【0036】
例えば、第1絶縁膜22、第3絶縁膜30、第4絶縁膜32、第5絶縁膜34、第6絶縁膜36及びゲート絶縁膜37は、同じ工程で同時に形成されていてもかまわないし、別の工程で形成されていてもかまわない。
【0037】
第2トレンチ40は、ソース領域16の上からソース領域16及びベース領域14を通りドリフト層12に到達するように設けられている。
【0038】
第7絶縁膜42は、第2トレンチ40内に設けられている。第7絶縁膜42は、第1絶縁材料を含む。
【0039】
フィールドプレート電極44は、第2トレンチ40内において、第7絶縁膜42を介してドリフト層12に対向して設けられている。例えば、フィールドプレート電極44は、ドリフト層12と並んで設けられている。フィールドプレート電極44は、例えば、ソース電極66とドレイン電極60の間の逆方向電界の集中を緩和して、耐圧を増加させるために設けられている。フィールドプレート電極44は、Z方向に延伸して設けられている。フィールドプレート電極44は、例えば、
図1の奥行き方向に設けられた、図示されていない部分において、上方に延びた部分を有する。そして、フィールドプレート電極44は、かかる上方に延びた部分を用いて、ソース電極66と電気的に接続されている。なお、フィールドプレート電極44とソース電極66の接続のされ方は、これに限定されるものではない。
【0040】
第8絶縁膜46としての第8絶縁膜46aは、第2トレンチ40内において、フィールドプレート電極の側面44cと第11絶縁膜54の間に設けられている。また、第8絶縁膜46aは、フィールドプレート電極の下端44aからフィールドプレート電極44の高さの40%の位置と、フィールドプレート電極の上端44bの位置の間に設けられている。言い換えると、第8絶縁膜46aは、XY平面P
2とXY平面P
3の間に設けられている。なお、第8絶縁膜46aは、さらにXY平面P
3の上に設けられていてもかまわない。
図3では、第8絶縁膜46aが、XY平面P
3の上に設けられている場合を示している。
【0041】
同様に、第8絶縁膜46としての第8絶縁膜46bは、第2トレンチ40内において、フィールドプレート電極の側面44dと第12絶縁膜56の間に設けられている。また、第8絶縁膜46bは、フィールドプレート電極の下端44aからフィールドプレート電極44の高さの40%の位置と、フィールドプレート電極の上端44bの位置の間に設けられている。
【0042】
第9絶縁膜50は、第2トレンチ40内において、フィールドプレート電極の側面44cと第8絶縁膜46aの間に設けられている。第9絶縁膜50は、第1絶縁材料を含む。
【0043】
第10絶縁膜52は、第2トレンチ40内において、フィールドプレート電極の側面44dと第8絶縁膜46bの間に設けられている。第10絶縁膜52は、第1絶縁材料を含む。
【0044】
第11絶縁膜54は、第2トレンチ40内において、ドリフト層12と第8絶縁膜46aの間に設けられている。第11絶縁膜54は、第1絶縁材料を含む。
【0045】
第12絶縁膜56は、第2トレンチ40内において、ドリフト層12と第8絶縁膜46bの間に設けられている。第12絶縁膜56は、第1絶縁材料を含む。
【0046】
ゲート電極62としての第2ゲート電極62bは、フィールドプレート電極44の上に、ゲート絶縁膜47を介してベース領域14に対向して設けられている。第2ゲート電極62bは、MOSFETのゲートとして機能する電極である。ゲート絶縁膜47は、例えば、第1絶縁材料を含む。
【0047】
例えば、第7絶縁膜42、第9絶縁膜50、第10絶縁膜52、第11絶縁膜54、第12絶縁膜56及びゲート絶縁膜47は、同じ工程で同時に形成されていてもかまわないし、別の工程で形成されていてもかまわない。
【0048】
層間絶縁膜70としての層間絶縁膜70aは、第1ゲート電極62a、ソース領域16a及びソース領域16bの上に設けられている。層間絶縁膜70としての層間絶縁膜70bは、第2ゲート電極62b、ソース領域16c及びソース領域16dの上に設けられている。
【0049】
ソース電極66は、ベース領域14、ソース領域16及び層間絶縁膜70の上に設けられている。ソース電極66は、MOSFETのソースとして機能する電極である。
【0050】
バリアメタル64は、ソース電極66とベース領域14、ソース領域16及び層間絶縁膜70との間に設けられている。バリアメタル64は、ソース電極66と、半導体装置100に用いられている半導体材料との、反応防止のために用いられる膜である。バリアメタル64は、例えばTi(チタン)、TiN(窒化チタン)、Ta(タンタル)又はTaN(窒化タンタル)等を含む。
【0051】
図4は、本実施形態の他の態様の半導体装置110の模式断面図である。
図5は、第1実施形態の他の態様の半導体装置110の要部の模式断面図である。第2絶縁膜26a及び第2絶縁膜26bの上下方向の膜厚に差は設けられていなくても良い。同様に、第8絶縁膜46a及び第8絶縁膜46bの上下方向の膜厚に差は設けられていなくても良い。
【0052】
ドレイン層10、ドリフト層12、ベース領域14及びソース領域16に用いられる半導体材料は、例えばシリコン(Si)である。しかし、ドレイン層10、ドリフト層12、ベース領域14及びソース領域16に用いられる半導体材料は、例えば炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)又はヒ化ガリウム(GaAs)等の他の半導体材料であってもかまわない。
【0053】
半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n型不純物としては例えばヒ素(As)、リン(P)又はアンチモン(Sb)を、またp型不純物としては例えばB(ホウ素)を、それぞれ用いることができる。
【0054】
ゲート電極62、フィールドプレート電極24及びフィールドプレート電極44は、不純物を含むポリシリコン等の導電材料を含む。
【0055】
ドレイン電極60及びソース電極66は、例えばアルミニウム(Al)等の金属を含む。
【0056】
図6ないし
図14は、本実施形態の半導体装置100の製造工程を示す模式断面図である。
【0057】
まず、ドレイン層10の上に、ドリフト層12及びベース領域14を形成する。例えば、ドレイン層10をSi基板である半導体基板とし、ドレイン層10の上にエピタキシャル成長によりドリフト層12を形成する。しかし、ドレイン層10及びドリフト層12の製造工程は、上記に限定されるものではない。次に、ドリフト層12の上に例えば熱酸化法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)により、例えば酸化シリコンである第1絶縁材料を含む絶縁膜80を形成する(
図6)。次に例えばフォトリソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)を用いて、絶縁膜80の一部を除去する(
図7)。次に、絶縁膜80をマスクにして、ソース領域16の上からドリフト層12に到達するトレンチ82及びトレンチ84を形成する(
図8)。次に、ドリフト層12の上、トレンチ82内及びトレンチ84内に、熱酸化法又はCVDにより、例えば酸化シリコンである第1絶縁材料を含む第6絶縁膜36よび第12絶縁膜56を形成する(
図9)。次に、例えばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により、第6絶縁膜36および第12絶縁膜56の上に、例えば窒化ケイ素である第2絶縁材料を含む絶縁膜90を形成する(
図10)。
【0058】
次に、例えばフォトリソグラフィ及びRIEを用いて、トレンチ82の底部及びトレンチ84の底部における、第6絶縁膜36及び第12絶縁膜56の上に形成された絶縁膜90の一部、及び第6絶縁膜36よび第12絶縁膜56の一部を除去する。次に、例えば異方性エッチングであるRIE及び等方性エッチングであるCDE(Chemical Dry Etching)を用いて、トレンチ82及びトレンチ84よりも下方に延伸した、トレンチ86及びトレンチ88を形成する。トレンチ82内における第6絶縁膜36の上記一部の除去により、第6絶縁膜36は、第5絶縁膜34及び第6絶縁膜36となる。トレンチ84内における第12絶縁膜56の上記一部の除去により、第12絶縁膜56は、第11絶縁膜54及び第12絶縁膜56となる(
図11)。
【0059】
次に、例えばLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)を用いて、絶縁膜90の下方の、トレンチ86の内壁及びトレンチ88の内壁について、熱酸化を行う。これにより、酸化ケイ素である第1絶縁材料を含む第1絶縁膜22が内側に設けられた第1トレンチ20、及び酸化ケイ素である第1絶縁材料を含む第7絶縁膜42が内側に設けられた第2トレンチ40が形成される。なお、例えば、絶縁膜90の周囲にも、第1絶縁材料を含む、第3絶縁膜30、第4絶縁膜32、第9絶縁膜50及び第10絶縁膜52が形成される。しかし窒化ケイ素の酸化速度はSiの酸化速度よりも低い。そのため、第3絶縁膜30および第4絶縁膜32の膜厚は第1絶縁膜22よりも薄く、第9絶縁膜50及び第10絶縁膜52の膜厚は第7絶縁膜42よりも薄い。第1絶縁膜22の内側とその上方及び第7絶縁膜42の内側とその上方には、空孔92及び空孔94が残る。(
図12)。第3絶縁膜30及び第4絶縁膜32、第9絶縁膜50及び第10絶縁膜52、並びに第1絶縁膜22及び第7絶縁膜42は、前記LOCOSのみで形成しても良く、前記LOCOSを実施した後に例えばCVD法で第1絶縁材料を含む膜を積み増しても良い。
【0060】
次に、空孔92の内側及び空孔94の内側に、例えばCVDを用いて、不純物を含むポリシリコンを含む、フィールドプレート電極24及びフィールドプレート電極44を、それぞれ形成する(
図13)。
【0061】
次に、エッチング及びCDEを用いて、フィールドプレート電極24及びフィールドプレート電極44の上方に設けられた、第3絶縁膜30、第4絶縁膜32、絶縁膜90、及び絶縁膜80のそれぞれの一部を除去する。第1トレンチ20内の絶縁膜90は、第2絶縁膜26である第2絶縁膜26a及び第2絶縁膜26bとなる。第2トレンチ40内の絶縁膜90は、第8絶縁膜46である第8絶縁膜46a及び第8絶縁膜46bとなる。ドリフト層12と第2絶縁膜26aの間の絶縁膜80は、第5絶縁膜34となる。ドリフト層12と第2絶縁膜26bの間の絶縁膜80は、第6絶縁膜36となる。ドリフト層12と第8絶縁膜46aの間の絶縁膜80は、第11絶縁膜54となる。ドリフト層12と第8絶縁膜46bの間の絶縁膜80は、第12絶縁膜56となる。(
図14)。
【0062】
次に、ゲート電極62、ベース領域14、ソース領域16、ゲート絶縁膜37、ゲート絶縁膜47、層間絶縁膜70、バリアメタル64、ソース電極66及びドレイン電極60を形成し、本実施形態の半導体装置100を得る。
【0063】
次に、本実施形態の作用効果を記載する。
【0064】
本実施形態のような、上下電極構造のMOSFETでは、スイッチングオフ時の素子耐圧を維持するために、ドリフト層12の不純物濃度および膜厚が所定の範囲に調整されている。ドリフト層12の不純物濃度および膜厚は、ドリフト層12を構成する半導体材料の物性限界で制限される。このため、素子耐圧とオン抵抗とのあいだには、トレードオフの関係が生じる。
【0065】
トレンチ型のゲート電極62の下に、ソース電極66あるいはゲート電極62に電気的に接続させたフィールドプレート電極24を設けるMOSFETがある。ゲート電極62の下にフィールドプレート電極24を設けることにより、ドレイン電極60に電圧が印加された際、トレンチ間に空乏層が広がる。これにより、素子耐圧が低下せずに、ドリフト層12の不純物濃度を上げることができ、その結果、フィールドプレート電極24を備えたMOSFETでは、オン抵抗を下げることができる。
【0066】
一方、フィールドプレート電極24を備えたMOSFETにおいては、例えば200V以上の耐圧が要求されるような用途の場合、所望の耐圧を得るために、トレンチを深くすると共にトレンチ内に形成された絶縁膜の膜厚を厚くしようとすると、MOSFETが形成された半導体基板(ウェハ)に応力がかかりすぎてウェハが反ることがあり、製造が難しいという問題があった。また、この問題を回避するために、トレンチの深さやトレンチ内の形成された絶縁膜の膜厚を抑えて、代わりに、ドリフト層12の一部のn型不純物濃度を、より低くすることで耐圧を高くする場合、オン抵抗が高くなってしまうという問題があった。また、いわゆるスーパージャンクション構造を用いる場合には、交互に設けられたp型不純物含有層とn型不純物含有層において、それぞれの不純物濃度が高くなる程にp型不純物含有量及びn型不純物含有量の制御が難しくなるため、特定の耐圧領域においては、フィールドプレート電極24を備えたMOSFETと比較すると、不純物濃度を上げることが難しいために、オン抵抗が高くなってしまうという問題があった。
【0067】
図15は、本実施形態の半導体装置100の作用効果を説明するための模式図である。
図15は、半導体装置の深さ方向における模式的な電界分布を示す図である。
図15(a)は、理想的な、矩形状の電界分布を示している。
図15(b)は、トレンチ内の絶縁膜の膜厚が均一である場合の模式図である。この場合、半導体装置の深さ方向における電界分布が不均一であるため、耐圧が低下してしまう。
【0068】
本実施形態の半導体装置100は、フィールドプレート電極の側面24cと第1絶縁膜22の間において、フィールドプレート電極の下端24aからフィールドプレート電極24の高さの40%の位置と、フィールドプレート電極の上端24bの位置の間に設けられ、第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を含む第2絶縁膜26を備える。
【0069】
例えば、本実施形態の半導体装置100の深さ方向における電界分布は、
図15(c)のように模式的に示される。これにより、第1トレンチ20内の上部における絶縁膜の実効的な膜厚を、第1トレンチ20内の下部における絶縁膜の実効的な膜厚より薄くすることができる。これにより、逆方向電圧が加わったときの半導体装置100における電界分布をより矩形に近づけることができるため、耐圧の高い半導体装置の提供が可能になる。また、ドリフト層12の底部に、よりn型不純物濃度が低い層を別途設けなくても良いため、オン抵抗の増加を抑制しつつ耐圧の高い半導体装置の提供が可能になる。
【0070】
また、本実施形態の半導体装置100においては、フィールドプレート電極24の高さの40%の位置より下の第1トレンチ20内における第1絶縁膜22は、第1絶縁材料のみを含む。言い換えると、フィールドプレート電極24の高さの40%の位置より下の第1トレンチ20内における第1絶縁膜22は、第2絶縁材料を含まない。
【0071】
逆方向電界が半導体装置100に加わる際には、ドレイン電極60に高い電圧が加わる。一方、フィールドプレート電極24はソース電極66に接続してソース電極66と同電位として用いることが多いため、フィールドプレート電極24に加わる電圧は例えば0ボルトである。すると、高い電界は第1トレンチ20の底部に加わりやすいため、第1トレンチ20の底部が破壊されやすい。第1トレンチ20の底部及びその近傍に、第1絶縁材料より誘電率の高い第2絶縁材料を用いる場合には、第1トレンチ20の底部の絶縁膜の実効的膜厚がより薄くなるため、さらに当該破壊がおこりやすくなる。そこで、本実施形態の半導体装置100においては、フィールドプレート電極24の高さの40%の位置より下の第1トレンチ20内における第1絶縁膜22は、第1絶縁材料のみを含む、又は第2絶縁材料を含まないものとしている。
【0072】
フィールドプレート電極の側面24cと第2絶縁膜26aの間に設けられた第3絶縁膜30がさらに設けられることにより、フィールドプレート電極24と第2絶縁膜26の距離を、第3絶縁膜30の膜厚を用いて制御出来る。そのため、第1トレンチ20内の上部と下部における絶縁膜の実効的な膜厚の差異の制御とは独立して、全体的な絶縁膜厚を制御することが出来、耐圧の制御が容易になる。
【0073】
第2絶縁膜26が、第1部分26a1と、第1部分26a1の上に設けられ第1部分26a1より膜厚の厚い第2部分26a2と、を備えている。これにより、第1トレンチ20内の実効的な絶縁膜の膜厚が、第1部分26a1の近傍と第2部分26a2の近傍で異なることになる。これを用いると、逆方向電界が印加された際の電界分布をより矩形に近く制御することが可能になる。
【0074】
フィールドプレート電極の側面24cとドリフト層12の間における第2絶縁膜26の膜厚W2は、第2絶縁膜26が設けられていないフィールドプレート電極の側面24cとドリフト層12の間における第1絶縁膜22の膜厚W1の30%以上であることが好ましい。これは、30%未満である場合、第2絶縁膜26の膜厚W2が薄すぎて、第2絶縁膜26を設けることによる効果が十分に期待できないためである。
【0075】
第1絶縁材料として酸化ケイ素を用い、第2絶縁材料として窒化ケイ素を用いる場合には、酸化ケイ素が圧縮応力を有し窒化ケイ素が引っ張り応力を有するため、お互いに応力が相殺する。そのため、半導体基板(ウェハ)に応力がかかりすぎて半導体基板(ウェハ)が反ったりするという問題の発生を抑制できる。
【0076】
本実施形態の半導体装置100によれば、耐圧の高い半導体装置の提供が可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
本実施形態の半導体装置120は、フィールドプレート電極24が、第3部分24eと、第3部分24eの上に設けられ第3部分24eより膜厚の厚い第4部分24fと、を備える点で、第1実施形態と異なっている。ここで、第1実施形態と重複する内容の記載は省略する。
【0078】
図16は、本実施形態の半導体装置120の要部の模式断面図である。フィールドプレート電極24は、第3部分24eと、第3部分24eの上に設けられた第4部分24fと、を有する。第4部分24fの膜厚w
5は、第3部分24eの膜厚w
4より厚い。ここで膜厚は、例えばXY平面内の長さである。
【0079】
また、フィールドプレート電極44は、部分44eと、部分44eの上に設けられた部分44fと、を有する。部分44fの膜厚w7は、部分44eの膜厚w6よりここで膜厚は、例えばXY平面内の長さである。
【0080】
フィールドプレート電極24及びフィールドプレート電極44の膜厚が異なる部分を有することにより、さらに耐圧の高い半導体装置の提供が可能となる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10 ドレイン層(第1半導体層)
12 ドリフト層(第2半導体層)
14 ベース領域(第1半導体領域)
16 ソース領域(第2半導体領域)
20 第1トレンチ(トレンチ)
22 第1絶縁膜
24 フィールドプレート電極(第2電極)
24a フィールドプレート電極の下端
24b フィールドプレート電極の上端
24c フィールドプレート電極の側面
24d フィールドプレート電極の側面
24e 第3部分
24f 第4部分
26 第2絶縁膜
26a1 第1部分
26a2 第2部分
30 第3絶縁膜
32 第4絶縁膜
34 第5絶縁膜
36 第6絶縁膜
37 ゲート絶縁膜
40 第2トレンチ
42 第7絶縁膜
44 フィールドプレート電極
46 第8絶縁膜
47 ゲート絶縁膜
50 第9絶縁膜
52 第10絶縁膜
54 第11絶縁膜
56 第12絶縁膜
60 ドレイン電極(第1電極)
62 ゲート電極(第3電極)
64 バリアメタル
66 ソース電極(第4電極)
70 層間絶縁膜
100 半導体装置
110 半導体装置
120 半導体装置