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<図1>
  • 特許-流量調整弁 図1
  • 特許-流量調整弁 図2
  • 特許-流量調整弁 図3
  • 特許-流量調整弁 図4
  • 特許-流量調整弁 図5
  • 特許-流量調整弁 図6
  • 特許-流量調整弁 図7
  • 特許-流量調整弁 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】流量調整弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
F16K31/68 A
F16K31/68 S
F16K31/68 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020154027
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047957
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】大澤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-171989(JP,U)
【文献】実開昭52-088063(JP,U)
【文献】特開平08-042791(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105757303(CN,A)
【文献】特表2010-505204(JP,A)
【文献】特開平04-316792(JP,A)
【文献】特開平04-262195(JP,A)
【文献】特開平08-075092(JP,A)
【文献】特開平08-042790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12 - 31/165
F16K 31/36 - 31/42
F16K 31/64 - 31/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過する流体の流量を調整可能な流量調整弁であって、
前記流体が導入される一次ポートと、
前記一次ポートから流入した前記流体を通過させる弁ポートを有する弁本体と、
前記弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、
前記弁ポートを通過した前記流体を送り出す二次ポートと、
前記弁体を駆動する駆動エレメントと、
前記駆動エレメントと前記弁体との間に設けられる伝達手段と、を備え、
前記駆動エレメントは、封入ガスが封入された封入空間を区画するための感圧部材を有し、前記封入空間の圧力が高くなるほど鉛直方向上側への弁開力が大きくなるように構成され、
前記弁体には、前記一次ポートと前記二次ポートとを連通可能な連通部が形成され、
前記伝達手段は、前記弁開力を前記弁体に伝達するとともに前記連通部の少なくとも一部を閉塞し、前記弁体に対して鉛直方向の下側に相対移動することで前記連通部を開放可能に設けられていることを特徴とする流量調整弁。
【請求項2】
前記連通部は、貫通孔状に形成され、
前記伝達部材は、前記連通部に挿通される被挿通部を有することを特徴とする請求項1に記載の流量調整弁。
【請求項3】
前記弁体に所定の弁閉力を付与する弁閉力付与手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量調整弁。
【請求項4】
通過する流体の流量を調整可能な流量調整弁であって、
前記流体が導入される一次ポートと、
前記一次ポートから流入した前記流体を通過させる弁ポートを有する弁本体と、
前記弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、
前記弁ポートを通過した前記流体を送り出す二次ポートと、
前記弁体を駆動する駆動エレメントと、を備え、
前記駆動エレメントは、封入ガスが封入された封入空間を区画するための感圧部材を有し、前記封入空間の圧力が高くなるほど鉛直方向上側への弁閉力が大きくなるように構成され、
前記弁体は、前記弁ポートに対し、鉛直方向の下側に配置されて開度を変更するように構成され
前記弁体に所定の弁開力を付与する弁開力付与手段と、
前記弁開力を前記弁体に伝達する弁開力伝達手段と、をさらに備え、
前記弁体は、前記弁開力伝達手段に対して鉛直方向の下側に相対移動可能に設けられ、
前記弁開力伝達手段は、前記弁ポートに対して鉛直方向の上側に配置される基部と、前記弁ポートに挿通されるとともに前記弁体に力を伝達する被挿通部と、を有し、
前記基部には、その上側の空間と下側の空間とを連通させる連通部が形成されていることを特徴とする流量調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷媒(流体)を用いて冷却対象を冷却する冷却装置等において、冷却対象の温度に応じて弁開度が調整されて冷媒の流量を調整可能な流量調整弁が設けられることがある。従来、このような流量調整弁として、弁自体にブリードポート作用を有する穴を設けた膨張弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された膨張弁では、弁に形成された穴を、始動用圧力バランス穴として用いている。即ち、この膨張弁では、弁の全閉時においても低圧パイプ内の空間と高圧パイプ内の空間とが連通し、冷媒が通過可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭52-088063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流量調整弁を冷却装置等に設ける場合、故障やトラブル等が発生した場合であっても、流体の流量を確保することが求められる場合があった。例えば、弁体を駆動する駆動エレメントにおけるダイヤフラム等の感圧部材が破損することにより、弁開力又は弁閉力が生じなくなって弁体が移動不能となり、弁開度が調整不能な状態(以下、「調整不能状態」とする)となる可能性があった。このような場合に、特許文献1に記載されたように弁に穴を形成すれば、調整不能状態となっても穴の大きさに応じた流量の冷媒を通過させることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたように弁に穴を形成する構成では、膨張弁における最低流量が穴の大きさによって決まってしまうため、流量確保のために穴を大きく形成すると低流量域における流量制御が困難になってしまうという不都合があった。即ち、低流量制御を容易としつつ調整不能状態において流体の流量を確保することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、低流量制御が容易であり且つ調整不能状態において流体の流量を確保することができる流量調整弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流量調整弁は、通過する流体の流量を調整可能な流量調整弁であって、前記流体が導入される一次ポートと、前記一次ポートから流入した前記流体を通過させる弁ポートを有する弁本体と、前記弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、前記弁ポートを通過した前記流体を送り出す二次ポートと、前記弁体を駆動する駆動エレメントと、前記駆動エレメントと前記弁体との間に設けられる伝達手段と、を備え、前記駆動エレメントは、封入ガスが封入された封入空間を区画するための感圧部材を有し、前記封入空間の圧力が高くなるほど鉛直方向上側への弁開力が大きくなるように構成され、前記弁体には、前記一次ポートと前記二次ポートとを連通可能な連通部が形成され、前記伝達手段は、前記弁開力を前記弁体に伝達するとともに前記連通部の少なくとも一部を閉塞し、前記弁体に対して鉛直方向の下側に相対移動することで前記連通部を開放可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
以上のような本発明によれば、伝達手段が弁体の連通部の少なくとも一部を閉塞していることで、駆動エレメントが通常に動作している場合において連通部を通過可能な流体の流量を、調整不能状態において通過可能な流体の流量に対して低減することができ、低流量制御が容易となる。また、伝達手段が弁体に対して鉛直方向の下側に相対移動することで連通部を開放可能であることにより、感圧部材に故障等が生じて鉛直方向上側への弁開力が得られなくなり調整不能状態となった場合、伝達手段が重力によって鉛直方向下側に移動し、弁体の連通部を開放する。従って、本発明によれば低流量制御を容易としつつ調整不能状態において流体の流量を確保することができる。
【0009】
この際、本発明の流量調整弁では、前記連通部は、貫通孔状に形成され、前記伝達部材は、前記連通部に挿通される被挿通部を有することが好ましい。このような構成によれば、被挿通部が貫通孔状の連通部に挿通されることで、弁体の移動方向と交差する面内において、弁体と伝達手段との相対位置のずれを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の流量調整弁では、前記弁体に所定の弁閉力を付与する弁閉力付与手段をさらに備えることが好ましい。このような構成によれば、弁閉力付与手段の弁閉力と駆動エレメントの弁開力とのバランスによって弁ポートの開度を調節することができ、流量制御を容易とすることができる。
【0011】
本発明の流量調整弁は、通過する流体の流量を調整可能な流量調整弁であって、前記流体が導入される一次ポートと、前記一次ポートから流入した前記流体を通過させる弁ポートを有する弁本体と、前記弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、前記弁ポートを通過した前記流体を送り出す二次ポートと、前記弁体を駆動する駆動エレメントと、を備え、前記駆動エレメントは、封入ガスが封入された封入空間を区画するための感圧部材を有し、前記封入空間の圧力が高くなるほど鉛直方向上側への弁閉力が大きくなるように構成され、前記弁体は、前記弁ポートに対し、鉛直方向の下側に配置されて開度を変更するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
以上のような本発明によれば、駆動エレメントが鉛直方向上側への弁閉力を弁体に付与するように構成されていることから、感圧部材に故障等が生じて鉛直方向上側への弁閉力が得られなくなり、調整不能状態となった場合、弁体が重力によって鉛直方向下側に移動する。これにより、弁ポートが開放されて流体の流量を確保することができる。このとき、弁体に連通部を形成する必要がなく、低流量制御が容易である。
【0013】
この際、本発明の流量調整弁では、前記弁体に所定の弁開力を付与する弁開力付与手段と、前記弁開力を前記弁体に伝達する弁開力伝達手段と、をさらに備え、前記弁体は、前記弁開力伝達手段に対して鉛直方向の下側に相対移動可能に設けられ、前記弁開力伝達手段は、前記弁ポートに対して鉛直方向の上側に配置される基部と、前記弁ポートに挿通されるとともに前記弁体に力を伝達する被挿通部と、を有し、前記基部には、その上側の空間と下側の空間とを連通させる連通部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、弁開力付与手段の弁開力と駆動エレメントの弁閉力とのバランスによって弁ポートの開度を調節することができ、流量制御を容易とすることができる。さらに、弁開力伝達手段の基部に連通部が形成されていることで、調整不能状態において弁閉力伝達手段によって弁ポートが閉塞されてしまうことを抑制し、流体の流量を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流量調整弁によれば、低流量制御が容易であり且つ調整不能状態において流体の流量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一例である第1実施形態にかかる流量調整弁が設けられた冷却装置を示すシステム図である。
図2】前記流量調整弁において弁ポートの開度が最大となった様子を示す断面図である。
図3】前記流量調整弁において弁ポートの開度が最小となった様子を示す断面図である。
図4】前記流量調整弁が調整不能状態となった様子を示す断面図である。
図5】本発明の一例である第2実施形態にかかる流量調整弁が設けられた加熱装置を示すシステム図である。
図6】前記流量調整弁において弁ポートの開度が最小となった様子を示す断面図である。
図7】前記流量調整弁において弁ポートの開度が最大となった様子を示す断面図である。
図8】前記流量調整弁が調整不能状態となった様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。第2実施形態においては、第1実施形態と共通する構成には共通の符号を付し、説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態の流量調整弁1Aは、図1に示すような冷却装置100に設けられる。冷却装置100は、流量調整弁1Aと、冷媒(流体)を所定方向に送り出す送流体手段としてのポンプ101と、冷媒を放熱する放熱手段としての放熱器102と、受熱部としての冷却器(例えばコールドプレート)103と、を備え、冷媒が循環する流路を形成する。この冷却装置100は、純水やフッ素系不活性液体(例えばフロリナート(登録商標)や、ガルデン(登録商標)、ノベック(登録商標))等の絶縁性の冷媒を用い、例えば電気自動車やハイブリッド車等に搭載される電気機器を冷却する。即ち、電気自動車やハイブリッド車にはモータやインバータ等の発熱を伴う発熱部品が搭載されており、冷却装置100はこれらの発熱部品を冷却する。あるいは、大型のコンピュータシステムやサーバ等に搭載される電子部品を冷却する。即ち、大型のコンピュータシステムやサーバ等にはCPUやメモリ等の発熱量の大きい発熱部品が搭載されており、冷却装置100はこれらの発熱部品を冷却する。複数の発熱部品を1つのユニット(冷却対象)と捉え、図1に示す例では、冷却装置100は1つの冷却対象201を冷却するものとするが、冷却装置が冷却する冷却対象の数は任意である。冷却装置が複数の冷却対象を冷却する場合、冷却対象の数と同数の流量調整弁及び冷却器が設けられるとともに、これらが並列に接続されていることが好ましい。
【0018】
ポンプ101によって送り出された冷媒は、流量調整弁1Aを通過し、冷却対象201に接触するように設けられた冷却器103内を通過することで冷却対象201と熱交換し、放熱器102によって放熱され、再びポンプ101に戻る。尚、冷却器103は、冷媒を通過させるとともに冷却対象201から受熱することで受熱部として機能するものであればよく、冷却対象201から冷媒に充分に熱伝達させることができるものであればよい。即ち、冷却器103と冷却対象201とが直接接触してもよいし、熱伝達部材を介して冷却対象201から冷却器103に熱伝達される構成であってもよい。尚、冷却対象201の発熱量に基づいて、ポンプ101が送り出す冷媒の流量が調節されてもよい。
【0019】
ポンプ101としては、液体状態の冷媒(液冷媒)を送り出すためのポンプを用いることが好ましい。このとき、冷却器103及び流量調整弁1Aを通過する冷媒は液体であることが好ましいが、冷却装置100の流路の一部において冷媒が気液混合状態となってもよい。放熱器102は、自然に放熱する方式であってもよいし、送風されて放熱する方式であってもよいし、あるいは、水冷方式であってもよい。
【0020】
以下に、流量調整弁1Aの詳細について説明する。流量調整弁1Aは、図2、3に示すように、弁本体としてのハウジング2と、一次側導管3と、二次側導管4と、弁体5と、弁体5に弁閉方向の力を付与する弁閉力付与手段としての圧縮ばね6と、駆動エレメント7と、伝達手段8と、を備える。以下では、鉛直方向をZ方向とし、鉛直方向の上側をZ方向の上側とするとともに単に「上側」と呼ぶことがあり、鉛直方向の下側をZ方向の下側とするとともに単に「下側」と呼ぶことがある。一次側導管3と二次側導管4とは水平面内に沿って平行に延びており、これらの延在方向をX方向とし、X方向及びZ方向の両方に直交する方向をY方向とする。また、流量調整弁1Aでは、各部材間で力が伝わることで弁体5が移動するが、特に説明がない限り各部材同士は直接接触してもよいし、他の部材を介して力が伝わるようになっていてもよい。
【0021】
ハウジング2は、全体が金属部材によって構成され、X方向の一方側(図2における左側)に開口した一次ポート21と、X方向の他方側(図2における右側)に開口した二次ポート22と、一次ポート21と二次ポート22との間に延びる第1隔壁部23と、第1隔壁部23の下側に設けられた第2隔壁部24と、を有する。
【0022】
一次ポート21と二次ポート22とは、中心部同士がZ方向にオフセットして配置され、一次ポート21の中心部の方が上側に配置されている。一次ポート21には一次側導管3が接続され、二次ポート22には二次側導管4が接続される。
【0023】
ハウジング2は、図示の例では一つの部品によって箱状に構成されているが、複数の部品が組み合わされることで箱状となってもよい。例えば、ハウジング2は、上側が開口したハウジング本体と、ハウジング本体の開口を塞ぐ蓋部と、を有していてもよい。
【0024】
第1隔壁部23は、一次ポート21の下端部と二次ポート22の上端部との間においてXY平面に沿って延びている。第2隔壁部24は、第1隔壁部23に対して略平行に延びるとともに、間隔を開けて配置されている。ハウジング2内には、第1隔壁部23の上側の第1空間A1と、第1隔壁部23の下側且つ第2隔壁部24の上側の第2空間A2と、が形成される。第1隔壁部23には、第1空間A1と第2空間A2とを連通させ、一次ポート21から流入した冷媒を通過させる弁ポート231が形成されている。第1空間A1は、一次ポート21に連通する空間であって、弁体5を収容する。第2空間A2は、二次ポート22に連通する空間であって、弁ポート231を通過した冷媒が流出する。尚、第1隔壁部23には、弁ポート231に加えてブリード孔が形成されていてもよく、即ちこのブリード孔によって第1空間A1と第2空間A2とが常に連通するようになっていてもよい。
【0025】
第2隔壁部24には、第2空間A2と、第2隔壁部24の下側における空間(後述する第3空間A3)と、を連通する貫通孔241が形成されている。貫通孔241は、Z方向から見て弁ポート231に重なる位置に形成されている。尚、貫通孔241が均圧孔として機能してもよいし、貫通孔241とは独立した均圧孔を第2隔壁部24に形成してもよい。
【0026】
弁体5は、ハウジング2に移動自在に設けられて弁ポート231の開度を変更するものであって、上面に形成されたばね受け部51と、下側に形成されたテーパ状のニードル部52と、を有し、全体が下側を頂点側とする円錐台状に形成されている。弁体5には、Z方向に沿って延びるとともに全体を貫通する(ばね受け部51が形成された上面からニードル部52の先端に亘る)連通部53が形成されている。ばね受け部51は、圧縮ばね6と当接することでZ方向の下側への弁閉力(付勢力)が付与される部分である。ニードル部52が弁ポート231の周囲の弁座部231Aに対して接近または離隔することで、弁ポート231の開度(弁開度)が調節されるようになっている。連通部53は、例えば断面円状の貫通孔状に形成されており、後述するように一次ポート21と二次ポート22とを連通可能に形成されている。
【0027】
圧縮ばね6は、Z方向を軸方向とするコイル状に形成され、ハウジング2における上側の板部と弁体5のばね受け部51との間に配置される。圧縮ばね6は、弁体5に対して所定の弁閉力(付勢力)を付与するように、自然状態から圧縮されて配置される。
【0028】
駆動エレメント7は、金属製の上ケース71及び下ケース72と、感圧部材としてのダイヤフラム73と、を有する。上ケース71は、下側に開口した有底筒状(箱状)に形成され、下ケース72は、上側に開口した有底筒状に形成されている。上ケース71は、ハウジング2の下方側端部に対して気密に固定される。駆動エレメント7が感圧部材としてのダイヤフラム73を有することで、流量調整弁1全体を小型化することができる。
【0029】
ダイヤフラム73は、弁体5に対して弁開力を付与可能なものであって、外周縁部が上ケース71と下ケース72とによって挟み込まれることで保持され、ダイヤフラム73と上ケース71及び下ケース72とが気密に固定される。上記のように上ケース71がハウジング2に対して気密に固定されることから、ハウジング2の下面と上ケース71とダイヤフラム73とによって囲まれた第3空間A3が形成される。第3空間A3は、貫通孔241や他の均圧孔によってハウジング2内の第2空間A2と連通され、冷媒が導入される空間となっている。
【0030】
下ケース72の上側の開口がダイヤフラム73によって覆われることにより、封入空間A4が形成される。ダイヤフラム73は、上ケース71によって形成される第3空間A3と、下ケース72によって形成される封入空間A4と、を区画する。封入空間A4には、封入ガスとして、例えば二酸化炭素が封入される。封入ガスは、使用される温度域で気体状態として存在するものであり、且つ、温度に対する圧力変化が冷媒よりも大きいものであればよく、安定性や環境負荷等を考慮して封入ガスの種類が適宜に選択されればよい。
【0031】
伝達手段8は、例えば金属製であって、第3空間A3に配置される基部81と、基部81からZ方向に沿って上側に向かって延びる延在部82と、弁体5の連通部53に挿通される被挿通部83と、を一体に有する。基部81は、例えば板状やブロック状に形成され、その下面がダイヤフラム73に当接することにより力を受けるようになっている。延在部82は、例えば円柱状等の棒状に形成され、貫通孔241及び弁ポート231に挿通可能な寸法を有している。延在部82の外径は弁体5の連通部53の内径よりも大きく、延在部82は連通部53に挿通不能であるとともに連通部53全体を下側から閉塞可能となっている。
【0032】
挿通部83は、延在部82よりも外径が小さく且つ延在部82の上面821から上側に突出し、弁体5の断面形状(本実施形態では円状)と同様の断面形状を有する。挿通部83の外径は連通部53の内径と同程度か若干小さく、挿通部83が連通部53に挿通可能となっている。
【0033】
ここで、弁体5と伝達手段8との間でどのように力が伝達されるかについて説明する。上記のように延在部82の外径が連通部53の内径よりも大きいことから、延在部82の上面821が弁体5の下面54に当接可能となっている。これにより、弁体5と伝達手段8とは、相手に近づこうとした際には相手に力が伝達され、相手から遠ざかろうとした際には力が伝達されないようになっている。即ち、ダイヤフラム73から力を受けた伝達手段8が上側に移動する際、上面821と下面54とが当接することで弁体5に力が伝達され、弁体5が上側に移動する。また、圧縮ばね6から力を受けた弁体5が下側に移動する際、上面821と下面54とが当接することで伝達手段8に力が伝達され、伝達手段8が下側に移動する。
【0034】
圧縮ばね6の弁閉力が駆動エレメント7の弁開力に対して充分に大きい場合、弁体5は下側に移動し、弁座部231Aに着座してそれ以上下側に移動することができなくなる。この状態において、駆動エレメント7の弁開力がさらに低下した場合、伝達手段8は下側に移動することができる。このように、伝達手段8は、弁体5に対して鉛直方向の下側に相対移動可能に設けられている。
【0035】
以上のような流量調整弁1Aでは、想定される温度範囲において封入空間A4の方が第3空間A3よりも圧力が高く、冷却対象201の温度が上昇するほど圧力差が大きくなっていく。駆動エレメント7は、この圧力差に応じた弁開力を弁体5に付与するようになっている。尚、弁体5が弁開方向に移動して圧縮ばね6が圧縮されると、圧縮ばね6の弁閉力が大きくなるが、この弁閉力の変化量は、駆動エレメント7の弁開力の変化量に比べて小さくなっている。従って、冷却対象201の温度が上昇するほど弁ポート231の開度が大きくなり、通過する冷媒の流量が増大して冷却対象201をより冷却しようとする。このように、流量調整弁1Aでは冷却対象201の温度に応じて通過する冷媒の流量が調整される。
【0036】
上記では、流量調整弁1Aにおいて駆動エレメント7が通常に動作し、弁体5が移動することで弁開度が調整される(以下、このような状態を「通常状態」とする)ものとしたが、例えばダイヤフラム73に割れ等の損傷が発生することにより、第3空間A3と封入空間A4とが連通する場合がある(図4参照)。第3空間A3と封入空間A4とが連通すると、ダイヤフラム73の上下の空間の圧力差によって弁開力を生じさせることが困難となる。従って、弁体5に対しては主として圧縮ばね6による弁閉力が作用し、弁体5が弁座部231Aに着座して全閉状態となるとともに、冷却対象201の温度が変化しても弁体5を移動させることができず(弁ポート231の開度を調整することができず)調整不能状態となる。
【0037】
このとき、伝達手段8には、Z方向下側への重力が作用する。また、上記のように伝達手段8は弁体5に対して鉛直方向の下側に相対移動可能に設けられている。従って、調整不能状態において、伝達手段8に作用する重力が駆動エレメント7の弁開力(上側への力)を上回ると、伝達手段8が下側に移動する。調整不能状態において駆動エレメント7の弁開力が得られなくなり、伝達手段8が下側に移動することにより、伝達手段8の被挿通部83が弁体5の連通部53から脱落し、連通部53が開放される。これにより、調整不能状態においては連通部53によって一次ポート21と二次ポート22とが連通し、冷媒が通過可能となる。
【0038】
尚、上記のように伝達手段8が下側に移動する際、伝達手段8は連通部53及び貫通孔241によって案内されることが好ましいが、第2隔壁部24の板厚が薄い場合等には、伝達手段8の延在部82を案内する筒状の案内部等を別途設けてもよい。
【0039】
以上の本実施形態によれば、伝達手段8が弁体5の連通部53を閉塞していることで、通常状態において連通部53を通過可能な冷媒の流量を、調整不能状態において通過可能な流体の流量に対して低減することができ、低流量制御が容易となる。また、伝達手段8が弁体5に対して鉛直方向の下側に相対移動可能であることで、ダイヤフラム73に故障等が生じて鉛直方向上側への弁開力が得られなくなり、調整不能状態となった場合、伝達手段8が重力によって鉛直方向下側に移動し、弁体5の連通部53を開放する。従って、本実施形態によれば低流量制御を容易としつつ調整不能状態において冷媒の流量を確保することができる。
【0040】
また、伝達手段8の被挿通部83が、弁体5における貫通孔状の連通部53に挿通されることで、弁体5の移動方向であるZ方向と直交するXY平面内において、弁体5と伝達手段8との相対位置のずれを抑制することができる。
【0041】
また、弁閉力付与手段としての圧縮ばね6が設けられていることで、圧縮ばね6の弁閉力と駆動エレメント7の弁開力とのバランスによって弁ポート231の開度を調節することができ、流量制御を容易とすることができる。
【0042】
[第2実施形態]
本実施形態の流量調整弁1Bは、図5に示すような加熱装置300に設けられる。加熱装置300は、流量調整弁1Bと、加熱用の流体(以下、単に「熱媒」と呼ぶ)を所定方向に送り出す送流体手段としてのポンプ301と、熱源400から熱媒に吸熱させるための吸熱器302と、ホットプレート等の熱伝達部303と、を備え、熱媒が循環する流路を形成する。この加熱装置300は、低温状態において性能が低下したり劣化したりする可能性がある機器や部品等を加熱対象501として、温度低下を防ぐために加熱や暖機を行うものである。加熱対象501としては、例えば電気自動車やハイブリッド車等に搭載されるバッテリや、液化天然ガス(LNG)を燃料として使用するガスエンジン又はガスタービン等のガス燃焼駆動機関におけるLNG気化器等が挙げられる。加熱すべき機器や部品が複数存在する場合にはこれらを1つのユニットと捉えてもよい。また、熱源400としては、加熱対象501とともに用いられる機器(例えば自動車に搭載されるヒータや、ガス燃焼駆動機関におけるガスエンジン又はガスタービン)や、加熱対象501自身を用いればよく、これらの排熱を利用すればよい。加熱装置300において用いられる熱媒としては、蒸気や水(温水)、空気(温風)、油等が例示される。
【0043】
図5に示す例では、加熱装置300は1つの加熱対象501を加熱するものとするが、加熱装置が加熱する加熱対象の数は任意である。加熱装置が複数の加熱対象を加熱する場合、加熱対象の数と同数の流量調整弁及び熱伝達部が設けられるとともに、これらが並列に接続されていることが好ましい。
【0044】
ポンプ301によって送り出された熱媒は、流量調整弁1Bを通過し、加熱対象501に接触するように設けられた熱伝達部303内を通過することで加熱対象501と熱交換し、吸熱器302によって加熱され、再びポンプ301に戻る。熱伝達部303は、加熱対象501よりも下流側において、流量調整弁1Bの駆動エレメント7Bの下ケース72に接触するようになっている。即ち、流量調整弁1Bは、加熱対象501よりも上流側に配置され、且つ、加熱対象501によって熱が奪われた熱媒の温度によって流量が調整されるように設けられている。尚、熱伝達部303は、熱媒を通過させるとともに加熱対象501との間で充分に熱交換可能なものであればよく、熱伝達部303と加熱対象501とが直接接触してもよいし、これらの間に熱伝達部材が設けられてもよい。尚、加熱対象501によって熱媒から奪われる熱量に基づいて、ポンプ301が送り出す熱媒の流量が調節されてもよい。
【0045】
ポンプ301は、使用する熱媒の種類や想定される温度範囲に応じた適宜なものが用いられればよく、熱媒を液体状態で送り出してもよいし、気体状態で送り出してもよい。即ち、加熱装置300の流路において、熱媒は液体状態、気体状態又は気液混合状態となっていてもよいし、流路の位置によって状態が異なっていてもよい。吸熱器302は、例えば熱源400と直接的に接触してもよいし、熱伝達手段(固体に限定されず、流体を用いたものも含む)を介して熱源400から熱が伝達されるようになっていてもよい。
【0046】
以下に、流量調整弁1Bの詳細について説明する。図6、7に示すように、弁本体としてのハウジング2Bと、一次側導管3と、二次側導管4と、弁体5Bと、弁体5Bに弁開方向の力を付与する弁開力付与手段としての圧縮ばね6Bと、駆動エレメント7Bと、弁開力伝達手段9と、弁閉力伝達手段10と、を備える。本実施形態におけるX方向、Y方向及びZ方向は、第1実施形態と同様である。第1実施形態の流量調整弁1AではZ方向の上側が弁開側となり下側が弁閉側となっているのに対し、本実施形態の流量調整弁1Bでは、後述するようにZ方向の下側が弁開側となり上側が弁閉側となる。本実施形態においても第1実施形態と同様に、各部材間で直接接触により力が伝わってもよいし、間に設けられた部材を介して力が伝わるようになっていてもよい。
【0047】
ハウジング2Bは、第1隔壁部23の上面に凹部232が形成されている点と、第1隔壁部23の下面側が弁座部231Bとなる点と、において第1実施形態におけるハウジング2に対して相違している。凹部232は、弁ポート231全体を含むように第1隔壁部23の中央部に形成されている。即ち、第1隔壁部23の外周部に凸部233が形成されている。
【0048】
弁体5Bは、上側を頂点側とする円錐台状に形成され、第2空間A2(即ち弁ポート231に対して下側)に配置されて弁ポート231の開度を変更する。従って、弁体5Bは第1隔壁部23に対して下側から接離し、弁体5Bのうちテーパ状のニードル部52Bが、第1隔壁部23の下面のうち弁ポート231の周囲の部分である弁座部231Bに着座可能となっている。
【0049】
圧縮ばね6Bは、第1実施形態における圧縮ばね6と同様のものであるが、第1実施形態と本実施形態とで弁開側及び弁閉側が反対となっていることから、弁開力付与手段として機能する。
【0050】
駆動エレメント7Bは、第1実施形態における駆動エレメント7と同様に上ケース71と下ケース72と感圧部材としてのダイヤフラム73とを有し、封入空間A4の圧力が高くなるほど鉛直方向上側への弁閉力が大きくなるように構成されている。駆動エレメント7Bは、第3空間A3に高温の熱媒が導入され、加熱装置300において流量調整弁1Bよりも下流側において下ケース72が熱伝達部303に接触し、封入空間A4に温度が伝達されるようになっている。即ち、流量調整弁1Bを通過した熱媒の熱が加熱対象501によって奪われるほど、封入空間A4の温度が低下して圧力が低下し、上側への力(弁閉力)が小さくなるようになっている。これにより、加熱対象501の温度が低いほど、駆動エレメント7Bの弁閉力が圧縮ばね6Bの弁開力に対して小さくなり、弁ポート231の開度が上昇して通過する熱媒の流量が増加するようになっている。
【0051】
弁開力伝達手段9は、例えば金属製であって、XY平面に沿って延びる板状又はブロック状の基部91と、基部91からZ方向に沿って下側に延びる被挿通部92と、を一体に有する。基部91は、第1空間A1(即ち弁ポート231に対して上側)に配置され、例えばその外径が凹部232の内径よりも大きく形成されたり(全体が大きく形成されてもよいし部分的に大きく形成されてもよい)、凹部232とは形状が異なったりすることにより、凹部232内に収容不能となっている。基部91には、Z方向から見て被挿通部92及び凸部233のいずれにも重ならない位置に、貫通孔状の連通部911が形成されており、基部91の上側の空間と下側の空間とが連通するようになっている。基部91の上面は、圧縮ばね6Bから弁開力を受ける受力部となる。
【0052】
被挿通部92は、例えば円柱状(棒状)に形成されるとともにその外径が弁ポート231の内径よりも小さい。被挿通部92は、その上端部が基部91の中央部に配置され、弁ポート231に挿通され、その下端部が弁体5Bの上面に当接することにより、弁体5Bに力を伝達する。即ち、弁ポート231に挿通される被挿通部92を介して、第1空間A1に配置された基部91と、第2空間A2に配置された弁体5Bと、の間で力が伝達されるようになっている。本実施形態では、弁ポートに挿通される部分(被挿通部92)が弁開力伝達手段の一部となっているが、弁体が弁ポートに挿通される部分を有していてもよい。
【0053】
駆動エレメント7Bの弁閉力が低下していくと、圧縮ばね6Bの弁開力によって、弁開力伝達手段9が下方に移動していき、弁閉力が所定値以下となると、基部91の外周部が第1隔壁部23の凸部233に当接し、移動が規制される。このとき、基部91が凹部232に収容されず、且つ、基部91に連通部911が形成されていることから、弁開力伝達手段9によって弁ポート231が閉塞されないようになっている。尚、連通部911は、基部91が凸部233に当接した際に弁ポート231を塞がないように形成されていればよく、その一部が凸部233に重なってもよいし、貫通孔以外の形状(例えば外周縁において開放された切り欠き状)であってもよい。
【0054】
弁開力伝達手段9は、弁体5Bに対して固定されておらず、互いに離れることができるようになっている。即ち、弁体5Bは、弁開力伝達手段9に対して鉛直方向の下側に相対移動可能となっている。
【0055】
弁閉力伝達手段10は、例えば金属製であって、第3空間A3に配置される基部10Aと、基部10AからZ方向に沿って上側に向かって延びる延在部10Bと、を一体に有する。基部10Aは、例えば板状やブロック状に形成され、その下面がダイヤフラム73に当接することにより力を受けるようになっている。延在部10Bは、例えば円柱状等の棒状に形成され、貫通孔241に挿通される。延在部10Bの上端部が弁体5Bの下面に当接するか、又は、延在部10Bが弁体5Bに対して固定されることにより、弁体5Bに弁閉力が伝達されるようになっている。
【0056】
以上のような流量調整弁1Bは、第1実施形態の流量調整弁1Aに対して弁開力及び弁閉力の方向が反対となっていることから、通常状態においては、第4空間A4の温度及び圧力が低下する(即ち加熱対象501の温度が低い)ほど弁ポート231の開度が大きくなる。即ち、流量調整弁1Bでは加熱対象501の温度に応じて通過する冷媒の流量が調整される。
【0057】
ここで、流量調整弁1Bが調整不能状態となった場合の動作について説明する。本実施形態の流量調整弁1Bにおいても、ダイヤフラム73の割れ等によって第3空間A3と封入空間A4とが連通して駆動エレメント7による弁閉力が得られにくくなり、弁体5Bが移動不能となる場合がある(図8参照)。調整不能状態においては、圧縮ばね6Bの弁開力が駆動エレメント7Bの弁閉力に対して充分に大きくなることから、弁開力伝達手段9が下側に移動していき、基部91の外周部が第1隔壁部23の凸部233に当接する。このとき、弁体5Bが弁開力伝達手段9に対して下側に相対移動可能に設けられていることから、弁体5Bは、重力によって下側に移動して弁ポート231を開放する。基部91に連通部911が形成されており、弁ポート231が開放されていることから、第1空間A1と第2空間A2とが連通し、熱媒が通過可能となる。即ち、調整不能状態においては弁ポート231及び連通部911によって一次ポート21と二次ポート22とが連通し、熱媒が通過可能となる。
【0058】
尚、上記のように弁体5Bが下側に移動する際、弁体5Bが弁閉力伝達手段10に固定されて同時に移動するとともに延在部10Bが貫通孔241によって案内されることが好ましいが、第2隔壁部24の板厚が薄い場合等には、延在部10Bを案内する筒状の案内部等を別途設けてもよい。また、弁体5Bを弁閉力伝達手段10に固定せず、弁体5Bのみを案内する案内部等を別途設けてもよい。
【0059】
以上の本実施形態によれば、駆動エレメント7Bが鉛直方向上側への弁閉力を弁体5Bに付与するように構成されていることから、ダイヤフラム73に故障等が生じて鉛直方向上側への弁閉力が得られなくなり、調整不能状態となった場合、弁体5Bが重力によって鉛直方向下側に移動する。これにより、弁ポート231が開放されて熱媒の流量を確保することができる。このとき、弁体5Bに連通部を形成する必要がなく、低流量制御が容易である。
【0060】
また、弁開力付与手段として圧縮ばね6Bが設けられていることで、圧縮ばね6Bの弁開力と駆動エレメント7Bの弁閉力とのバランスによって弁ポート231の開度を調節することができ、流量制御を容易とすることができる。さらに、弁開力伝達手段9の基部91に連通部911が形成されていることで、調整不能状態において基部91によって弁ポート231が閉塞されてしまうことを抑制し、熱媒の流量を確保することができる。
【0061】
さらに、弁ポート231が形成された第1隔壁部23に凹部232が形成され、基部91が凹部232に収容不能となっていることで、調整不能状態において熱媒が弁ポート231を通過するための空間を確保しやすくすることができる。
【0062】
なお、本発明は、前記第1実施形態又は前記第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記第1実施形態では、伝達手段8の被挿通部83が弁体5における貫通孔状の連通部53に挿通され、且つ、延在部82の上面821によって連通部53全体が閉塞可能であるものとしたが、このような構成に限定されない。即ち、伝達手段は、連通部の少なくとも一部を閉塞するものであればよく、連通部の全体を覆ってもよいし、一部のみを覆ってもよい。また、伝達手段は、連通部に挿通されずに連通部を閉塞してもよい。また、弁体に形成される連通部は、貫通孔状でなくてもよい。即ち、連通部が弁体の外周面にまで到達し、鉛直方向から見て切り欠き状となっていてもよい。
【0063】
また、前記第1実施形態では、弁閉力付与手段としての圧縮ばね6が設けられているものとしたが、弁閉力付与手段は圧縮ばねに限定されず、適宜な形態のものが設けられればよい。また、弁体の質量が大きい場合や、第1空間A1の圧力が第2空間A2の圧力よりも充分に高くなりやすい場合、駆動エレメントの弁開力が小さい場合等、弁閉力を追加的に付与しなくても弁体の動作を制御しやすい場合には、弁閉力付与手段を設けなくてもよい。
【0064】
また、前記第2実施形態では、弁ポート231が形成された第1隔壁部23に凹部232が形成され、且つ、基部91が凹部232に収容不能であるものとしたが、このような構成に限定されない。例えばZ方向から見て弁ポートに重なるような連通部が基部に形成されていれば、基部が凹部に収容されたり、そもそも凹部が形成されない構成であったりしても、第1空間と第2空間とを連通させることができる。
【0065】
また、前記第2実施形態では、弁開力付与手段としての圧縮ばね6Bが設けられているものとしたが、弁開力付与手段は圧縮ばねに限定されず、適宜な形態のものが設けられていればよい。また、弁体の質量が大きい場合や、第1空間A1の圧力が第2空間A2の圧力よりも充分に高くなりやすい場合、駆動エレメントの弁閉力が小さい場合等、弁開力を追加的に付与しなくても弁体の動作を制御しやすい場合には、弁開力付与手段を設けなくてもよい。さらに、弁開力付与手段を設けない場合、弁開力伝達手段を省略してもよい。
【0066】
また、前記第1実施形態及び前記第2実施形態では、駆動エレメント7、7Bが冷却対象201又は加熱対象501と熱交換することで封入空間A4の温度が変化し、封入空間A4の圧力が変化して弁開力又は弁閉力を付与する構成となっているが、駆動エレメントは、冷却対象又は加熱対象の温度変化に応じて弁開力又は弁閉力が変化するものであればよく、その構成は限定されない。例えば、駆動エレメントの一部を冷却対象又は加熱対象に直接接触させてもよいし、封入空間と連通した空間を有するとともに冷却対象又は加熱対象近傍に配置された感温筒を併用してもよい。
【0067】
また、前記第1実施形態及び前記第2実施形態では、感圧部材としてダイヤフラムを用いるものとしたが、感圧部材は、封入空間を区画し封入空間の圧力の増加に伴って弁体に弁開方向又は弁閉方向の力を付与できるものであればよく、例えばベローズ等を用いることもできる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1A,1B…流量調整弁、2,2B…ハウジング(弁本体)、21…一次ポート、22…二次ポート、231…弁ポート、5,5B…弁体、53…連通部、6…圧縮ばね(弁閉力付与手段)、6B…圧縮ばね(弁開力付与手段)、7,7B…駆動エレメント、73…ダイヤフラム(感圧部材)、8…伝達手段、83…被挿通部、9…弁開力伝達手段、91…基部、92…被挿通部、911…連通部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8