(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20230724BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20230724BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/107
H01M50/474
H01M50/477
H01M50/545
H01M50/586
H01M50/595
(21)【出願番号】P 2020525713
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2019023825
(87)【国際公開番号】W WO2019244817
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018117058
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】見澤 篤
(72)【発明者】
【氏名】小林 径
(72)【発明者】
【氏名】中尾 隆希
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-92673(JP,A)
【文献】特開2011-77279(JP,A)
【文献】特開2015-8140(JP,A)
【文献】特開2016-47929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/40-50/497
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する有底筒状のケース本体と、
前記ケース本体に収容され、正極板及び負極板がセパレータを介して巻回された巻回型の電極群と、
前記電極群の最外周面に前記電極群の巻き終わり端を固定するように、前記電極群の最外周面に貼着された少なくとも1枚のテープと、を備え、
前記電極群の最外周面の巻回方向の少なくとも一部に、前記負極板の集電体が露出し、前記集電体が前記ケース本体に接触しており、
前記テープは、基材層と、前記基材層の巻内面に、巻回方向に連続して配置された接着剤層とを含み、
前記テープの巻内面から見た領域を、前記基材層から構成される第1領域と、前記基材層及び前記接着剤層から構成される第2領域に区画したとき、前記テープの前記巻回方向の少なくとも一部の範囲において前記第1領域が前記第2領域の間に介在している、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記第1領域及び前記第2領域がストライプ状に配置されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記第2領域が格子状に配置されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記テープは、前記電極群の巻回軸方向の両端部のそれぞれに貼着されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した電極群と、電極群及び電解液を収容した電池ケースとを備える非水電解質二次電池が知られている。この二次電池では、電極群の最外周面にテープを貼着して電極群を固定している(特許文献1,2参照)。また、非水電解質二次電池において、電極群の最外周面に負極板の集電体を露出させ、その集電体を電池ケースに接触させることで、電池の放熱性が向上し、外部短絡時の電池の発熱が抑制されることが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-161814号公報
【文献】特開2009-199974号公報
【文献】国際公開第2009/144919号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非水電解質二次電池の充放電サイクルに伴って電極群が膨張し、電極群には電池ケースからの圧力が作用する。このとき、電極群を構成する極板が屈曲する極板変形が発生する場合がある。そして、大きな極板変形が発生すると、内部短絡につながる場合がある。非水電解質二次電池において、内部短絡の一因となり得る極板変形を十分に抑制することは重要な課題である。
【0005】
本開示の目的は、非水電解質二次電池において、電極群の最外周面の負極板の集電体がケース本体に接触し、かつ、電極群の最外周面にテープが貼着される構成で、長期の信頼性を高くでき、かつ、内部短絡の一因となり得る極板変形を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る非水電解質二次電池は、開口部を有する有底筒状のケース本体と、ケース本体に収容され、正極板及び負極板がセパレータを介して巻回された巻回型の電極群と、電極群の最外周面に電極群の巻き終わり端を固定するように、電極群の最外周面に貼着された少なくとも1枚のテープと、を備え、電極群の最外周面の巻回方向の少なくとも一部に負極板の集電体が露出し、集電体がケース本体に接触しており、テープは、基材層と、基材層の巻内面に、巻回方向に連続して配置された接着剤層とを含み、テープの巻内面から見た領域を、基材層から構成される第1領域と、基材層及び接着剤層から構成される第2領域に区画したとき、テープの巻回方向の少なくとも一部の範囲において第1領域が第2領域の間に介在している、非水電解質二次電池である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る非水電解質二次電池によれば、電極群の最外周面の負極板の集電体がケース本体に接触し、かつ、電極群の最外周面にテープが貼着される構成で、電極群が充放電で膨張するときに、電極群がテープを介して電池ケースから受ける圧力が過度に大きくなることを防止できる。これにより、電極群が膨張するときに外側の電池ケースから圧力を受けても、電極群の一部に応力が集中することを抑制できるので、電極群において内部短絡の一因となり得る極板変形を抑制できる。また、電極群の巻回方向に連続的に第2領域が配置されているため、巻回方向に断続的に第2領域を配置する場合に比べて接着層に電解質が入り込むことを抑制できる。このため、テープの接着機能を長期間保持しやすくなることで、長期の信頼性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の一例の非水電解質二次電池の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の一例の非水電解質二次電池を構成する電極群の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の一例において、電極群を巻外側から見た図である。
【
図4A】
図4Aは、電極群の最外周の負極集電体及びテープにおける
図3のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の一例において、電極群の巻外側部分の巻回軸方向に垂直な断面図である。
【
図6】
図6は、比較例1の非水電解質二次電池において、
図2に対応する図である。
【
図7】
図7は、比較例2の非水電解質二次電池において、
図2に対応する図である。
【
図8】
図8は、電極群における極板変形を確認するための実験結果を評価するために用いた2つの極板変形レベルA、Bを示している、電極群の巻回軸方向に垂直な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の別例の非水電解質二次電池において、電極群を巻外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、非水電解質二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下において「略」なる用語は、例えば、完全に同じである場合に加えて、実質的に同じとみなせる場合を含む意味で用いられる。さらに、以下において複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0010】
図1は、実施形態の非水電解質二次電池10の断面図である。
図2は、非水電解質二次電池10を構成する電極群14の斜視図である。
図3は、電極群14を巻外側(外周面側)から見た図である。
図4Aは、電極群14の最外周の負極集電体及びテープにおける
図3のA-A断面図である。
図4Bは、
図4Aに示すテープを巻内面から見た図である。
図5は、電極群14の巻外側部分(外周面側部分)の巻回軸方向に垂直な断面図である。
図1から
図5に例示するように、非水電解質二次電池10は、巻回型の電極群14と、電極群14の最外周面に貼着された第1テープ40及び第2テープ41(
図2~
図5)と、非水電解質(図示せず)と、ケース本体15及び封口体16とを備える。巻回型の電極群14は、正極板11と、負極板12と、セパレータ13とを有し、正極板11と負極板12がセパレータ13を介して渦巻状に巻回されている。以下では、電極群14の巻回軸方向一方側を「上」、巻回軸方向他方側を「下」という場合がある。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0011】
正極板11は、帯状の正極集電体と、正極集電体に接合された正極リード19(
図1、
図2)とを有する。正極リード19は、正極集電体と正極端子を電気的に接続するための導電部材であって、電極群14のうち、正極集電体の上端から巻回軸方向αの一方側(上方)に延出している。正極リード19は、例えば電極群14の径方向βの略中央部に設けられている。正極リード19は、帯状の導電部材である。正極リードの構成材料は特に限定されない。正極リード19はアルミニウムを主成分とする金属によって構成されることが好ましい。さらに、正極板11は、正極集電体の巻内面(径方向内側面)及び巻外面(径方向外側面)のそれぞれに正極活物質層が形成される。
【0012】
負極板12は、帯状の負極集電体35(
図4A、
図5)と、負極集電体35の巻内面(径方向内側面)及び巻外面(径方向外側面)のそれぞれに形成された負極活物質層とを有する。負極板12では、電極群14の最外周面において、負極集電体35が、負極端子となる後述のケース本体15の筒部の内側面に接触して、ケース本体15に電気的に接続される。このために、電極群14の最外周面の周方向についての全部には、負極集電体35が露出し、負極集電体35がケース本体15に接触している。
【0013】
なお、ケース本体15の筒部の内側面に電極群14の最外周面に露出している負極集電体を接触させた状態で、負極集電体に負極リード(図示せず)を接続することもできる。この場合、その負極リードにおいて、負極集電体より下側に延出させた部分をケース本体15の底板と電気的に接続させる。負極リードは、帯状の導電部材である。負極リードの構成材料は特に限定されない。負極リードはニッケル又は銅を主成分とする金属によって、またはニッケル及び銅の両方を含む金属によって構成されることが好ましい。上記のように負極集電体35をケース本体15の筒部に接触させる構成によれば、負極集電体をケース本体の筒部に接触させず、負極リードをケース本体15の底板に電気的に接続する構成の場合より、良好な集電性を確保しやすい。
【0014】
電極群14は、上述の通り、正極板11と負極板12がセパレータ13を介して渦巻状に巻回されてなる巻回構造を有する。正極板11、負極板12、及びセパレータ13は、いずれも帯状に形成され、巻芯部の周囲に渦巻状に巻回されることで電極群14の径方向βに交互に積層された状態となる。巻芯部には空間28が形成されており、空間28の長手方向に沿った中心軸が巻回軸である巻芯軸29である。電極群14において、各極板の長手方向が巻回方向γ(
図2、
図5)となり、各極板の幅方向が巻回軸方向α(
図1、
図2)となる。
【0015】
図2、
図3、
図5に示すように、第1テープ40及び第2テープ41は、電極群14の最外周面に電極群14の巻き終わり端Eを固定するように電極群14の最外周面に貼着される巻き止めテープである。第1テープ40は、電極群14の巻回軸方向αの第1端部(
図2、
図3の上端部)に貼着される。第2テープ41は、電極群14の巻回軸方向αの第2端部(
図2、
図3の下端部)に貼着される。各テープ40,41は、電極群14の巻き終わり端E(
図3)を巻回方向γに跨ぐように、電極群14の最外周面に貼着される。本実施形態では、負極集電体35の巻き終わり端が電極群14の巻き終わり端Eとなっている。しかし、電極群14の最外周面の負極集電体35のケース本体15との接触を阻害しない範囲で、負極板12の巻き終わり端の巻内側から巻回方向γに引き出したセパレータ13の巻き終わり端を電極群14の巻き終わり端Eとすることもできる。
【0016】
各テープ40,41は、巻回軸方向αに沿って、基材層から構成される第1領域42と、基材層及び接着剤層から構成される第2領域43とが、交互に並ぶようにストライプ状に配置されている。
図2のテープ40,41では、無地部により第1領域42を示し、砂地部により第2領域43を示している。テープ40,41の巻回方向γ(
図2)の全ての範囲で、第1領域42が第2領域43の間に介在している。第2領域43が巻回方向γに連続的に形成され、かつ、第2領域43の間に第1領域42が介在することにより、長期の信頼性を高くでき、かつ、電極群14において内部短絡の一因となり得る極板変形を抑制できる。第1テープ40及び第2テープ41は、後で詳しく説明する。
【0017】
図1に示す例では、ケース本体15と封口体16によって、電極群14及び非水電解質を収容する金属製の電池ケースが構成されている。電極群14の上下には、絶縁板17,18がそれぞれ設けられる。正極リード19は上側の絶縁板17の貫通孔を通って封口体16側に延び、封口体16の底板であるフィルタ22の下面に溶接される。非水電解質二次電池10では、フィルタ22と電気的に接続された封口体16の天板であるキャップ26が正極端子となる。
【0018】
ケース本体15は、開口部を有する有底筒状、例えば有底円筒形状の金属製容器である。ケース本体15と封口体16の間にはガスケット27が設けられ、電池ケース内の密閉性が確保されている。ケース本体15は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体16を支持する張り出し部21を有する。張り出し部21は、ケース本体15の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体16を支持する。封口体16は、ケース本体15の開口部を封口する。
【0019】
封口体16は、電極群14側から順に積層された、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25、及びキャップ26を有する。封口体16を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材24を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体23と上弁体25とは各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば下弁体23が破断し、上弁体25がキャップ26側に膨れて下弁体23から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26の開口部26aからガスが排出される。
【0020】
以下、
図2~
図5を参照しながら、電極群14と第1テープ40及び第2テープ41について詳しく説明する。電極群14では、負極板12の巻回方向γに対応する長手方向の長さは、正極板11(
図5)の長手方向の長さより大きい。これにより、電極群14において、少なくとも正極板11の正極活物質層が形成された部分が、セパレータ13を介して負極板12の負極活物質層が形成された部分に対向配置される。
図5に示すように、負極板12は、中間厚みの線で示す片面活物質領域12aと、中間厚みより太い線で示す両面活物質領域12bと、中間厚みより細い線で示す無地領域12cとを含んでいる。両面活物質領域12bでは、負極集電体35の巻外側及び巻内側の両面に負極活物質層が形成されている。片面活物質領域12aでは、負極集電体35の巻芯側である巻内側面のみに負極活物質層が形成されている。無地領域12cでは、負極集電体35の巻外側及び巻内側の面のいずれにも負極活物質層が形成されていない。
図5では、破線により2枚のセパレータ13を示している。
【0021】
正極板11は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とを有する。本実施形態では、正極集電体の両面に正極活物質層が形成されている。正極集電体には、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極集電体の厚みは、例えば10μm~30μmである。
【0022】
正極活物質層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極板11は、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極集電体の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0023】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO2(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0024】
上記導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
正極板11には、正極集電体を構成する金属の表面が露出した無地部(図示せず)が設けられる。無地部は正極リード19が接続される部分であって、正極集電体の表面が正極活物質層に覆われていない部分である。正極リード19は、例えば、超音波溶接によって無地部に接合される。
【0026】
負極板12は、負極集電体35と、負極集電体35上に形成された負極活物質層とを有する。本実施形態では、負極集電体35の両面に負極活物質層が形成されている。さらに、
図5に示すように、負極集電体35の両面に負極活物質層が形成された両面活物質領域12bの巻き終わり側に、負極集電体35の巻内側面のみに負極活物質層が形成された片面活物質領域12aが続いている。負極板12の無地領域12cと片面活物質領域12aとを合わせた部分は、1周分以上の長さを有する。これにより、負極集電体35の巻外側面が負極活物質層により覆われていない部分は、負極板12の巻き終わり端部で1周分以上の長さを有する。負極集電体35には、例えば銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極集電体35の厚みは、例えば5μm~30μmである。
【0027】
負極活物質層は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極板12は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極集電体35の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0028】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、又はこれらを含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質層に含まれる結着剤には、例えば正極板11の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
セパレータ13(
図1、
図5)には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ13の厚みは、例えば10μm~50μmである。セパレータ13は、電池の高容量化・高出力化に伴い薄膜化の傾向にある。セパレータ13は、例えば130℃~180℃程度の融点を有する。
【0030】
そして、
図2~
図3、
図5に示すように、負極板12の負極集電体35が露出している電極群14の最外周面に、負極板12の巻き終わり端である電極群14の巻き終わり端Eを固定するように、電極群14の最外周面の巻回軸方向αの両端部に第1テープ40及び第2テープ41が貼着されている。
図4A、
図4Bに第1テープ40の場合で示すように、各テープ40,41は、基材層44と、基材層44の巻内面(
図4Aの左面)における巻回軸方向αの複数位置に配置された接着剤層45とを含む。
図4A、
図4Bでは、接着剤層45を砂地部で示している。各テープ40,41は、例えばPPテープ等の絶縁材料製である。PPテープは、多孔質性または非多孔性のポリプロピレン(PP)製の基材層の一方の面(内面)に接着剤層が形成されたものである。各テープ40,41の基材層44は、強度、電解液に対する耐性、加工性、コスト等の観点から適宜選択すればよく、ポリプロピレンに限定せず、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等も用いることができる。また、基材層44は積層構造とすることもでき、例えば、有機材料中に金属酸化物などの無機粒子が分散した耐熱層を基材層の一部に用いることができる。各テープ40,41の接着剤層45は、室温で接着性を有する樹脂で構成され、例えばアクリル系樹脂、ゴム系樹脂で構成される。
【0031】
図2、
図4A、
図4Bに示すように、各テープ40,41は、巻内面から見た領域を、基材層44から構成される第1領域42と、基材層44及び接着剤層45から構成される第2領域43に区画することができる。本実施形態では、第1領域42と第2領域43が巻回軸方向αに沿って交互に並ぶようにストライプ状に配置されている。
図4Aでは、第1及び第2領域42,43の境界を破線で分かり易く示している。
【0032】
各テープ40,41は、巻回方向γの中間部が電極群14の巻き終わり端Eに跨って、電極群14の巻き終わり端部と、最外周面の巻き戻り方向に位置する部分とに貼着されている。
【0033】
なお、テープは、後述の
図9で示す別例のように、電極群14の最外周面の巻回軸方向αの中間部の1つの位置にのみ貼着されてもよい。または、テープは、電極群14の最外周面の巻回軸方向αに離れた3つ以上の位置に貼着されてもよい。
【0034】
上記の非水電解質二次電池10によれば、電極群14の最外周面の負極集電体35がケース本体15に接触し、かつ、電極群14の最外周面にテープ40,41が貼着される構成で、電極群14が充放電で膨張するときに、電極群14がテープを介して電池ケースから受ける圧力が過度に大きくなることを防止できる。このとき、電極群14の膨張時には、
図4Aに矢印Pで示すように、第2領域43の接着剤層45が、隣り合う接着剤層45の間の空間47に押し出されるように変形するので、電極群のテープ40,41を含む部分の厚みが減少する。これにより、電極群14が膨張するときに外側の電池ケースから圧力を受けても、電極群14の一部に応力が集中することを抑制できるので、電極群14において内部短絡の一因となり得る極板変形を抑制できる。
【0035】
また、負極集電体35、基材層44、及び接着剤層45に囲まれた空間47に非水電解質が入り込むことが抑制される。このため、接着剤層45が空間47に押し出されるように変形する場合でも、テープの接着剤層の溶解を抑制できるので、テープの接着機能を長期間保持しやすくなることで、長期の信頼性を高くできる。
【0036】
また、電極群14の巻回軸方向αの第1端側部分(
図2、
図3の上端側部分)の最外周面に第1テープ40が貼着され、電極群14の巻回軸方向αの第2端側部分(
図2、
図3の下端側部分)の最外周面に第2テープ41が貼着されている。このとき、電極群14は、巻回軸方向の中央部が両端部より充放電時に膨張しやすい。このため、電極群14の巻回軸方向αの両端側に分かれて第1テープ40と第2テープ41とが配置されることで、電極群14の固定機能を確保しつつ、電極群14の膨張量を大きくして、電極群14と電池ケースとを電気的に接続しやすくなる。
【0037】
<実験例>
本開示の発明者は、下記の表1に示す条件で、実施例1及び比較例1,2の3種類の二次電池を作製し、所定の条件で充放電を行って、極板変形及びテープの接着の程度を確認した。
【0038】
【実施例】
【0039】
[実施例1]
[正極板の作製]
正極活物質として、LiNi0.88Co0.09Al0.03O2で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を用いた。その後、100質量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03O2(正極活物質)と、1.0質量部のアセチレンブラックと、0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(結着剤)とを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の溶剤中で混合して、正極合材スラリーを調製した。次に、ペースト状の当該正極合材スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔からなる長尺な正極集電体の両面に均一に塗布し乾燥機中で100~150℃の温度で乾燥させてNMPを除去した後、ロールプレス機を用いて圧延して長尺状の正極板を得た。さらに、圧延加工後の正極板を、200℃に熱したロールに5秒間接触させることで熱処理を行い、所定の電極サイズ(厚み0.144mm、幅62.6mm、長さ861mm)に裁断して、正極板11を作製した。なお、LiNi0.88Co0.09Al0.03O2の結晶構造は、層状岩塩構造(六方晶、空間群R3-m)である。また、正極板11の長さ方向中央部に活物質が形成されていない無地部を形成し、その無地部にアルミニウムの正極リードを固定した。
【0040】
[負極板の作製]
負極活物質として、黒鉛粉末を95質量部と、ケイ素酸化物を5質量部とを混合したものを用いた。そして、負極活物質を100質量部と、バインダとしてのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を1質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量部とを混合した。そして、この混合したものを水に分散させて、負極合材スラリーを調製した。この負極合材スラリーを、厚み8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥機により乾燥させた後、厚みが0.160mmとなるように、圧縮ローラで圧縮して負極活物質層の厚みを調整した。そして、長尺状の負極板を所定の電極サイズ(幅64.2mm、長さ959mm)に切断して、負極板12を作製した。また、負極板12の無地部に、ニッケル-銅-ニッケル製の負極リードを取り付けた。
【0041】
[電極群の作製]
作製された正極板11及び負極板12を、ポリエチレン製のセパレータ13を介して渦巻状に巻回することにより、巻回型の電極群14を作製した。
【0042】
[電極群の固定]
厚み20μmのポリプロピレン製の基材層上に、
図1~
図5の構成と同様に、ストライプ模様(接着剤層45が巻回軸方向に複数配置されたストライプ)で厚み10μmの接着剤層45を被覆し、幅9mmで、長さ60.0mmであるテープ40,41を切り出した。そして、負極板12の巻き終わり端を含む電極群14の巻回軸方向両端部にテープ40,41を貼着して、電極群14を固定した。このとき、電極群14の最外周に負極集電体35が露出されるようにした。
【0043】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルメチルカーボネート(DMC)とを、体積比でEC:DMC=1:3となるように混合した混合溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を5質量部添加し、さらにLiPF6を1.5モル/L溶解して非水電解質としての非水電解液を調製した。
【0044】
[二次電池の作製]
上記の電極群14の上下に絶縁板17,18をそれぞれ配置し、負極リードをケース本体15の底部に溶接し、正極リードを封口体16に溶接し、電極群14を、有底円筒形状のケース本体15に収容した。その後、ケース本体15の内部に非水電解液を減圧方式により注入した。その後、ガスケット27及び封口体16により、ケース本体15の開口端部を封口して、円筒型の非水電解質二次電池を作製した。このとき、電池の容量は、4600mAhであった。
【0045】
[比較例1]
図6は、比較例1の非水電解質二次電池において、
図2に対応する図である。比較例1は、
図6に示すように、第1テープ40a及び第2テープ41aとして、基材層の巻内側の全面に接着層が配置されたものを用いた。比較例1において、それ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0046】
[比較例2]
図7は、比較例2の非水電解質二次電池において、
図2に対応する図である。比較例2は、
図7に示すように、第1テープ40b及び第2テープ41bとして、基材層の巻内側の面に接着剤層が、巻回軸方向αに連続に配置されたものが用いられる。基材層から構成される第1領域50と、基材層及び粘着剤層から構成される第2領域51が巻回方向γに沿って交互に並ぶようにストライプ状に配置される。
図7では、テープ
40b,41bの無地部により第1領域50を示し、砂地部により第2領域51を示している。比較例2において、それ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0047】
[試験方法]
[極板変形確認方法]
上記実施例1及び比較例1,2の非水電解質二次電池を用いて、25℃の環境において、1380mA(0.3時間率)の電流で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電(CC)を行い、その後、4.2Vの電池電圧で電流値(終止電流)が92mAになるまで定電圧充電(CV)した。さらに、20分間休止した後、4600mA(1時間率)の放電電流で定電流放電した後、20分間休止し、これを充放電サイクルとした。このような充放電サイクルを500サイクル繰り返した後の電池で、1380mA(0.3時間率)の定電流充電で電池電圧が4.2Vに達した後、4.2Vの電池電圧で終止電流を92mAとした定電圧充電を行った。その後、X線CT装置を用いて、上記の電池について、電極群の中央部の断面観察を実施した。断面観察は、電極群の最外周面にテープの幅方向内端(電極群の巻回軸方向中央側端)が位置する巻回軸方向位置で行った。この位置では、電極群の膨張時における応力が高くなりやすい。上記の表1の極板変形レベルの欄に、電極群の中央部の変形の程度をA,Bで分けて示している。
【0048】
図8は、巻回方向に垂直な電極群の断面図であり、電極群における極板変形の観察結果を評価するために用いた2つの極板変形レベルA、Bを示している。レベルAは、2つのレベルのうち、変形の程度が低く、電極群の最内周部分のみに変形が生じている。なお、
図8において、最も外側の円は電池ケースを示しており、その内側の濃い実線の曲線は正極板11を示している。また、薄い実線の曲線は、負極板12の活物質層を含む部分を示しており、薄い破線の曲線は、負極板12の負極集電体35のみがある無地領域を示している。
【0049】
レベルBは、2つのレベルのうち、変形の程度が高く、電極群の最内周を含む少なくとも2周部分に変形が生じている。
【0050】
[テープ接着確認方法]
さらに、上記のサイクル試験後の実施例1及び比較例1,2の非水電解質二次電池を分解した後、それぞれの二次電池で電極群の最外周のテープの接着状態を目視で確認し、接着レベルをA、Bの2つで分けた。接着レベルAは、テープの接着が保持されていることを表し、接着レベルBは、テープが容易に剥がれてしまうことを表す。
【0051】
[試験結果]
表1に示すように、実施例1では、電極群14の極板変形が最も巻内の1巻部分のみに生じており、極板変形レベルはAであった。また、比較例2でも実施例1と同様に極板変形レベルはAであった。一方、比較例1では極板変形レベルがBとなっていることから、基材層44の巻内面に、接着剤層45が配置された第2領域43,51とともに基材層44から構成される第1領域42,50が配置されることで、電極群14が膨張するときの圧力が緩和され、極板変形を抑制できることが分かった。また、この実験結果は第2領域に介在する第1領域を巻回方向に連続して配置することが必ずしも必要ではないことを示唆している。
【0052】
また、表1に示すように、実施例1ではテープの接着機能が長期間保持されていることがわかる。一方、比較例2では、テープの接着レベルがBと実施例1に比べてテープの接着機能が失われていた。比較例2では、実施例1とは異なり、第1領域50に隣接する第2領域51がテープの巻回方向に連続して配置されていないため、負極集電体と第1領域50の間に形成される空間に電解液が入り込みやすい。その結果、接着剤層が当該空間に押し出されるように変形する場合に接着剤層の溶解が進行する可能性がある。つまり、実施例1のように第1領域42に隣接する第2領域43がテープ40,41の巻回方向γに連続して配置されることにより、テープ40,41の接着機能を長期間保持することが可能になる。
【0053】
図9は、実施形態の別例の非水電解質二次電池において、電極群14を巻外側から見た図である。本例の構成では、電極群14の最外周面の巻回軸方向αの中間部に、1本のテープ52のみが貼着されている。テープ52の構成は、
図1~
図5の構成における第1テープ40及び第2テープ41のそれぞれと同様である。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図5の構成と同様である。
【0054】
なお、テープの接着機能を長期間保持するためには第2領域がテープの巻回方向に連続して配置されていることが好ましいが、極板変形を抑制するためには第2領域の間に介在する第1領域は必ずしもテープの巻回方向に連続して配置されている必要はない。例えば、図示は省略するが、基材層の巻内面に基材層と接着剤層を含む第2領域が格子状に配置される構成としてもよい。
【0055】
また、上記の各実施形態において、テープは、巻回軸方向の少なくとも一部の範囲において、基材層から構成される第1領域が、基材層及び接着剤層から構成される第2領域で挟まれている構成であればよい。例えば、テープは、巻回軸方向の中央部の第1領域と、第1領域の両側に配置された2つの第2領域とだけを含む構成としてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態及び実施例による効果は、正極板材料、負極板材料、セパレータ材料のいずれにもよらず、巻き終わり端にテープを貼り付けた巻回型の電極群を持つ構成であれば、同様に効果を期待できると考えられる。
【符号の説明】
【0057】
10 非水電解質二次電池、11 正極板、12 負極板、12a 片面活物質領域、12b 両面活物質領域、12c 無地領域、13 セパレータ、14 電極群、15 ケース本体、16 封口体、17,18 絶縁板、19 正極リード、21 張り出し部、22 フィルタ、23 下弁体、24 絶縁部材、25 上弁体、26 キャップ、27 ガスケット、28 空間、29 巻芯軸、35 負極集電体、40,40a,40b 第1テープ、41,41a,41b 第2テープ、42 第1領域、43 第2領域、44 基材層、45 接着剤層、47 空間、50 第1領域、51 第2領域、52 テープ。