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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】皮膚バリア調製剤及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20230724BHJP
   G16H 50/50 20180101ALI20230724BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
G16H50/50
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020537161
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 IB2018060130
(87)【国際公開番号】W WO2019135129
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】62/613,878
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンサチ・ジャリル
(72)【発明者】
【氏名】オドス・ティエリ
(72)【発明者】
【氏名】スタマタス・ジョージオス・エヌ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-250174(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103195(WO,A1)
【文献】HANSEN, S. et al.,In-Silico Model of Skin Penetration Based on Experimentally Determined Input Parameters. Part I: Experimental Determination of Partition and diffusion Coefficients,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2008年,Vol.68, No.2,pp.352-367
【文献】SUTTERLIN, T. et al.,A 3D Self-Organizing Multicellular Epidermis Model of Barrier Formation and Hydration with Realistic Cell Morphology Based on EPISIM,Scientific Reports,2017年03月,Vol.7, artilce number:43472,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳児皮膚に対するバリアシステムの潜在的影響を評価する方法であって、
a)前記バリアシステムを成人皮膚に局所的に適用することと、
b)前記バリアシステムで処理された前記成人皮膚にマーカーを局所的に適用することと、
c)前記バリアシステムで処理された前記成人皮膚への前記マーカーの浸透を測定することと、
d)浸透パラメータを最適化することによって、成人皮膚浸透の計算モデルを使用して前記マーカーの前記浸透を可視化して、前記成人皮膚浸透のモデルのプロファイルが実験データと一致するようにすることと、
e)最適化された前記浸透パラメータを前記乳児皮膚の計算モデルに伝送することと、
f)前記乳児皮膚の前記計算モデルにおける前記マーカーの浸透を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記マーカーがカフェインである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成人皮膚浸透の前記計算モデルとしてEPISIMを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)は、前記バリアシステムを直接適用またはパッチへの適用により局所的に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程a)は、前記バリアシステムを前記パッチへの適用により局所的に適用することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程c)は、前記成人皮膚を通過する前記マーカーの濃度プロファイルに従うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記濃度プロファイルは、共焦点ラマンマイクロ分光法(CRM)又は共焦点蛍光顕微鏡を用いて測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記浸透パラメータは、肌表面濃度(C 表面 )パラメータ、角質層に対する透過係数(P SC )、及び生存表皮に対する透過係数(P VE )である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記肌表面濃度(C 表面 )パラメータが前記乳児皮膚の前記計算モデルにおいて前記成人皮膚浸透の前記計算モデルおけるよりも高くなるように、かつ、前記角質層に対する透過係数(P SC )および前記生存表皮に対する透過係数(P VE )が前記2計算モデル間で同じになるように、前記浸透パラメータは前記工程e)において伝送される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記乳児皮膚の前記計算モデルにおける前記肌表面濃度(C 表面 )パラメータは、前記成人皮膚浸透の前記計算モデルにおける前記肌表面濃度(C 表面 )パラメータの2倍である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法を用いて前記バリアシステムを選択することを含む、バリアシステムの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年1月5日に出願された米国仮特許出願第62/613,878号の出願の利益の優先権を主張し、その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
本発明は、成人皮膚試験の分析による皮膚保護のレベルを評価すると同時に、特に乳児又は幼児用の皮膚バリアシステムの開発に関する。本発明により、幼児又は乳児に対する試験の必要性を回避しながら、客観的データにより皮膚バリアシステムの保護レベルを評価することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
皮膚クレンザーは界面活性剤を含有し、界面活性剤は、外部からの攻撃物質の浸透に対する皮膚バリアの完全性を損なって、皮膚刺激をもたらす可能性がある。皮膚に対するクレンザーのマイルドさの評価は、通常、過度のパッチスト又は過度の洗浄試験のプロトコルに従い、経表皮水分蒸散量(TEWL:trans epidermal water loss)の変化の臨床評価及び測定によって行われる。これらの方法は、ある程度主観的であり、結果が変動することが多い。
【0003】
スキンケア製品のマイルドさ(特に、潜在的に刺激性の界面活性剤系を含有するクレンジング製品の場合)は、典型的には、通常使用試験、誇大(反復)使用試験、又はパッチテストを使用して、成人においてin vivoで評価される。乳幼児用製品であっても、評価は最初に成人で行われ、合格すると、乳児における通常使用試験が行われることがある。刺激(典型的には皮膚紅斑(発赤))の欠如としてマイルドさを評価する。皮膚バリアに対する効果は、典型的には、経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定によって、機器により評価される。皮膚バリアに対する製品の効果はまた、フランツセルを使用してex vivoで調査され、皮膚インピーダンスを測定することもできる。
【0004】
しかしながら、前述の方法は、多くの欠陥及び懸念の問題がある。例えば、通常の使用試験は、典型的には、様々なレベルのマイルドさを区別するために大きなパネルサイズを必要とし、これは高価で時間がかかる場合がある。パッチテストでは、界面活性剤は、通常の使用条件と比べて閉塞された使用条件下で異なる反応をする場合がある。腕浸漬試験の結果は、気候に依存する場合がある。屈曲洗浄試験では、試験された皮膚部位は、身体の他の領域を表すものではない場合がある。
【0005】
更に、上記項目はそれぞれ、主観的に評価され(臨床観察)、変動が生じる可能性がある。最後に、これらの試験の大部分は、乳児皮膚と適切な相関なしに成人皮膚に適合しているか、又はこれらの研究は乳児/幼児で行われ、乳児に対する臨床研究は倫理的及び技術的な疑問を提起する。述べたように、成人で取得したデータを乳児皮膚の症例に直接伝送することの妥当性は疑問視されている。例えば、乳児皮膚は、フランツセルにおいて典型的に使用さておらず、これらのデータを乳児皮膚に伝送するには疑問がある。これらの方法は、不確実性を反映する安全性因子のマージン(典型的には10倍)を常に含んで使用される。
【0006】
成人対象の皮膚に浸透したマーカー(カフェインなど)の濃度プロファイルを客観的に評価することによって、乳児及び/又は幼児の皮膚バリアに対する界面活性剤系の影響を評価できる方法を開発することが有用であろう。本発明は、乳児/小児皮膚への影響を評価し、これらの試験及び分析の結果として界面活性剤系を開発するための計算モデルを使用して、成人皮膚に対するバイオマーカー試験の使用による影響を評価することを目的とする。
【0007】
保湿剤は、皮膚又は毛髪の最外層をより柔らかくするために特別に設計された化学薬剤の混合物である。保湿特性を有するパーソナルケア組成物が知られている。消費者は、そのような組成物が、ある範囲の要件を満たすことを期待する。意図された適用を決定するスキンケア効果/ヘアケア効果とは別に、皮膚科学的適合性、外観、感覚的印象、貯蔵における安定性、及び使いやすさなどの多様なパラメータに価値が置かれている。多くの保湿剤によってもたらされる別の利益は、外部環境及び薬剤への曝露から皮膚を保護することである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A下腹側腕の皮膚に水を適用してから10秒後にラマン共焦点マイクロ分光法を介して外因的に適用された水の吸収の観察を示す。
図1B下腹側腕の皮膚に水を適用してから10秒後にラマン共焦点マイクロ分光法を介して外因的に適用された水の吸収の観察を示す。
図2実験(成人)、モデル(成人)及び予測(乳幼児)間の比較を示す。
図3成人皮膚及び乳児皮膚に対する水及びSLSの実験、モデル及び予測の比較を示す。
図4いくつかの界面活性剤の製剤間の比較を示す。
図5in silicoでの成人表皮モデルにおけるモデル化実験データを示す。
図6界面活性剤処理後の予測カフェイン透過曲線を示す。
図7乳幼児の角質層における予測吸収量、0~10μmの深さの曲線下面積(カフェインmmol/ケラチンg)を示す。
図8成人皮膚に対する実験データを示す。
図9成人皮膚モデルの作製を示す。
図10乳児皮膚に対する予測結果を示す。
図11成人皮膚に対する実験データを示す。
図12成人皮膚モデルの作製を示す。
図13乳児皮膚に対する予測結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、乳児皮膚に対するスキンケア製品のマイルドさ、具体的には、物質及び/又は製剤を乳児の皮膚バリアに局所適用することの効果を評価するためのプロセス、並びにこの評価に基づいて界面活性剤系を調製及び/又は使用するプロセスに関する。本明細書で使用するとき、用語「乳児皮膚」は、新生児のヒト小児の皮膚を指すが、最大生後12ヶ月の小児の皮膚も指し、これを含む。用語「幼児」は乳児を指すが、生後12~36ヶ月の小児も含む。
【0010】
本発明の目的は、成人皮膚で安全に製品を評価することによって、乳児及び/又は幼児の皮膚に対する製品の安全性、マイルドさ等を評価することができることである。このプロセスは、成人皮膚に物質を適用することと、処理された成人皮膚に対するマーカーの浸透データを収集することと、情報を成人皮膚の計算モデルに伝送することと、このモデルから浸透パラメータを抽出することと、このパラメータを乳児皮膚の計算モデルに伝送して、乳児皮膚モデルにおけるマーカーの浸透を可視化することと、乳児皮膚への局所製品の効果についての結論を導き出すこと、とを含む。最終的には、このプロセスは、その後、この評価の結果として界面活性剤系を調製すること、及び/又はこの評価及び系の最終的な調製に基づいて界面活性剤系を使用することを含む。
【0011】
Laboratoires Expanscienceへの米国特許出願公開第20150285787号は、a)皮膚細胞(A)の少なくとも1つのサンプルにおける候補生物学的マーカーの発現レベルを測定する工程であって、当該サンプルが16歳未満のドナーから得られる工程と、b)皮膚細胞の少なくとも1つの対照サンプル(B)における当該候補生物学的マーカーの発現レベルを測定する工程と、c)工程a)の発現レベルと工程b)の発現レベルとの比を計算する工程と、d)候補マーカーが小児の皮膚の生物学的マーカーであるかどうかを判定する工程と、を含む、小児の皮膚の少なくとも1つの生物学的マーカーを識別する方法を開示している。
【0012】
Laboratoires Expanscienceへの国際公開第2015150426号及び国際公開第2017103195号は、a)活性な薬剤又は製剤を再構成された皮膚モデルと接触させる工程であって、当該モデルが小児に由来する皮膚サンプルから得られる工程と、b)工程a)の後の再構成された皮膚モデルを尿と接触させる工程と、c)工程bの後の皮膚モデルにおける特定の生物学的マーカーのリストの少なくとも1つの発現レベルを測定する工程と、を含む、in vivo製剤を評価する方法を開示している。
【0013】
Procte & Gambleへの米国特許出願公開第20180185255号は、a)クレンザーの適用の前に皮膚の領域の1つ以上のセラミドのレベルを測定することと、b)クレンザーを皮膚の領域に少なくとも7日間適用することと、c)皮膚の領域に少なくとも7日間の製品適用後に1つ以上のセラミドのレベルを測定することであって、1つ以上のセラミドのレベルが、処理をしていない対照に対して少なくとも10%である場合にクレンザーはマイルドであることと、を含む、クレンザーのマイルドさを検査する方法を開示している。
【0014】
Procte & Gambleへの米国特許第10,036,741号は、摂動因子の皮膚ホメオスタシスへの影響を評価し、摂動因子を含むスキンケア組成物を製剤化する方法であって、コンピュータプロセッサに、摂動因子に関連する記憶された皮膚インスタンスのデータアーキテクチャを、病的皮膚遺伝子発現シグネチャを用いてクエリーさせることを含み、ここで、クエリーが、病的皮膚遺伝子発現シグネチャを、各記憶された皮膚インスタンスと比較することと、各インスタンスに関連性スコアを割り当てることと、を含む、方法を開示している。
【0015】
Procte & Gambleへの欧州特許出願公開第1248830(A1)号は、界面活性剤のマイルドさを評価するための前腕対照適用試験の使用を開示している。
【0016】
Saadatmand et al.,Skin hydration analysis by experiment and computer simulations and its implications for diapered skin,Skin Res.Technol.,2017:1-14は、時間依存性の相対湿度、気温、皮膚温度、及び風速などの曝露シナリオの関数として、蒸発水喪失及び角質層厚さをシミュレートする角質層可逆的水和モデルを開示している。
【0017】
Maxwell et al.,Application of a systems biology approach for skin allergy risk assessment,Proc.6th World Congress on Alternatives & Animal Use in Life Sciences,pp.381-388(2007)は、各経路の全体的な生体プロセスへの寄与を評価し、定量化するための皮膚感作誘導のin silicoモデルを開示している。
【0018】
Strube et al.,The flex wash test:a method for evaluating the mildness of personal washing products,J.Soc.Cosmet.Chem.,40:297-306(1989)は、洗浄製品の潜在的な刺激性を評価するため、1日3回、60秒、屈曲する腕を使用することを開示している。
【0019】
Keswick et al.,Comparison of exaggerated and normal use techniques for accessing the mildness of personal cleansers,J.Soc.Cosmet.Chem.,43:187-193(1992)は、前腕試験及び屈曲洗浄試験を家庭での使用と比較して、試験が自由使用にどれだけ近似するかを判断することを開示している。
【0020】
Frosch et al.,Journal of the American Academy of Dermatology,Volume 1,Issue 1,35-41(1979)は、スケーリング及び発赤の読み取りを用いて、8%溶液に平日5回間曝露させる、石鹸の刺激性を評価するチャンバー試験を開示している。
【0021】
多くのin vivo試験は、乳児皮膚での実験的使用には受け入れられていない。引用された参考文献は、原料がどのように乳児皮膚に影響を及ぼす可能性があるかを相関させる、成人皮膚の評価及び計算モデルの使用について開示も示唆もしていない。したがって、本発明は、乳児皮膚でin vivo試験を行う必要性を回避する。
【0022】
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で使用するとき、全ての百分率は、特に規定しない限り、重量による。更に、本明細書に記載する全ての範囲は、両端を含んで、2つの端点間の値の任意の組み合わせを全て含むことを意味する。
【0023】
本発明において、この方法を使用して、外部浸透に対する皮膚バリアの効果に従って、様々なクレンザー製剤を区別することができる。本発明は、外部からの攻撃物質の浸透に対する皮膚バリアへの局所用クレンザーの効果を客観的に評価し、クレンザーのマイルドさを評価するために使用することができる製剤を分析する方法を記載する。この分析の結果を利用して、乳児及び/又は若齢のヒトの皮膚に対してマイルドであると考えられる好適な製剤を提供又は調製することができる。
【0024】
本発明は、対象の皮膚、好ましくは幼い乳児の皮膚に対する局所物質のマイルドさを評価するための予測的方法に関する。また、乳児の皮膚を通過する化合物(マーカー)の浸透を評価するための予測的方法にも関する。本発明はまた、乳児皮膚を通過する化合物(マーカー)の浸透に対する局所的に適用される物質の影響を評価するための予測的方法にも関する。加えて、本発明は、局所物質(複数可)のバリア増強の効果を測定及び/又は予測する方法を提供し得る。
【0025】
一態様では、本発明は、多数のプロセス工程を含み得る。本発明は、第1段階(in vivo)及び第2段階(in silico)と共に任意選択の第3段階(知能プロセス)を含むことができ、最後に、プロセスは、前述の試験に合格すると分析された好適な界面活性剤系の調製によって終了するか、又はプロセスは、乳児及び/又は幼児皮膚への界面活性剤系の適用によって終了する。
【0026】
第I段階、in vivo
A.直接適用又はパッチ若しくは他の送達システムへの適用などによって、成人皮膚に局所物質を適用すること。
B.マーカーを成人皮膚に局所的に適用し、物質で処理された成人皮膚に対する当該マーカーの浸透データを収集する。この工程は、マーカーを適用すること、次いで、例えば共焦点ラマンマイクロ分光法(CRM)を使用して、皮膚を通過するその濃度プロファイルに従うことを含む。
【0027】
第II段階、in silico
C.情報(浸透データ)を成人皮膚の計算モデルに伝送し、このモデルから浸透パラメータを抽出すること。
この工程はまた、モデルの浸透プロファイルが実験データと一致するように浸透パラメータ(例えば、局所表面濃度及び透過係数)を最適化することにより、計算による成人皮膚の浸透モデルを使用してマーカーの浸透を視覚化するものとして説明することもできる。
D.(適切な変換後に)浸透パラメータを乳児皮膚の計算モデルに伝送し、乳児皮膚モデル内のマーカーの浸透を視覚化すること。
【0028】
(任意選択)、第III段階、知能プロセス
E.乳幼児皮膚モデルに浸透したマーカーの量に基づいて、乳児皮膚に対する局所製品のマイルドさ(影響)についての結論を導き出すこと。
【0029】
前述のプロセス工程が完了し、工程Eにおいて結論づけられると、界面活性剤系は、ユーザーによって調製、適用、又は分配され得る。
【0030】
局所物質
本発明は、評価される1つ以上の局所物質を含み、局所物質は最終的な界面活性剤系で使用されることが望ましい。局所物質は、角質層の透過性に影響を及ぼす、皮膚に適用される任意の種類の物質である。局所物質は、皮膚を通過するマーカーの透過を変化させる。マーカーの透過を測定することにより、局所物質の効果を評価することができる。典型的には、上記で概説した試験では、局所物質は、マーカーが適用される前に30分間皮膚と接触して保持されるパッチに含浸される。パッチは、適用試験のための1つ以上の局所物質を含んでもよい。
【0031】
本発明の範囲において、異なる種類の局所物質を評価することができ、例えば、局所物質は、皮膚のバリア特性を低下させ、マーカーの浸透を増加させ得る刺激性物質(複数可)であってもよい。この場合、本発明は、in vivo又はin vitroでの試験をせずに、物質(複数可)のマイルドさの分類を作成することを可能することができ、新たな皮膚製品の組成を設計する際によりマイルドな溶液を選択するのに役立つ。他の態様では、局所物質は、皮膚を保護し、そのバリア特性を増大させ、したがって皮膚を通過するマーカーの浸透を低減するのに役立つように設計されたバリア物質(複数可)を含んでもよい。上述したように、本発明は、乳児皮膚に対してin vitro又はin vivoの試験を行う必要なく、最も効率的な溶液を選択するのに役立つことができる。
【0032】
マーカー
本発明は、評価方法において1つ以上のマーカー又はバイオマーカーを使用する。マーカーを追跡し、濃度プロファイル(例えば、浸透データ)を作成する方法がある限り、あらゆる種類のマーカーが好適である。共焦点ラマンマイクロ分光法を使用する例では、マーカーは、ラマンスペクトルにおいて追跡可能なシグナルを有する必要がある。別の例では、蛍光マーカーは、共焦点蛍光顕微鏡法を用いて追跡することができる。マーカーの浸透速度論は、理想的には、濃度プロファイルの定常状態が妥当な時間内(例えば、最大1時間)に達するようなものでなければならない。
【0033】
マーカーは、親水性、親油性又は両性であり得、これは、評価者が検討しているバリア効果の種類を定義する。例えば、1つの好適なマーカーはカフェインである。カフェインの場合、分析は、親水性物質に対するバリアを調べる。
【0034】
本発明によるマーカーは、毒性学的及び皮膚科学的に安全であり、合理的な浸透速度論を有し、共焦点分析によって追跡可能である任意の分子を含み得る。
-安全性;毒性の理由により、過去に使用されたいくつかのマーカーは許容されない(塩化ダンシル(Paye et al.「Dansyl chloride labelling of stratum corneum:its rapid extraction from skin can predict skin irritation due to surfactants and cleansing products」Contact Dermatitis 30(2),91-96,1994で提案される)は、感作及び皮膚接触時の皮膚腐食のリスクのため、中止された)。
-浸透速度論;皮膚に浸透する分子は、例えば、十分な速さではあるが速すぎない分子である。例えば、カフェインに近い透過係数:Dias M et al.「Topical delivery of caffeine from some commercial formulations」Int J Pharm 1999182(1):41-7に報告される、kp=1.16×10-4cm/時間、を有する分子を用いることができる
-共焦点分析は非侵襲性であり、マーカー浸透の深さについてのデータを提供する。対照的に、例えば、テープ剥離は侵襲性であり、バリアを破壊する。これは、本発明では許容できない。
【0035】
浸透データ
本発明は、浸透データを分析する。浸透データは、濃度プロファイルであり、これは、通過する皮膚の深さの関数としてのマーカーの濃度を意味する。本発明は、皮膚内、より正確には表皮及び特に角質層における深さの関数としてマーカーの濃度プロファイルを測定するのに好適な任意の所望の分析方法を使用することができる。任意の所望の方法を使用することができるが、非侵襲的方法が好ましい。共焦点技術は非侵襲性であり、適度な解像度、例えば皮膚表面に対して垂直方向に3~5μmの解像度、最大200μmの深度を提供するため好ましい。そのような方法の1つは、共焦点ラマンマイクロ分光法を含むが、共焦点蛍光顕微鏡法を含む他の方法が使用されてもよい。
【0036】
成人/乳児皮膚の計算モデル
本発明は、試験した界面活性剤系の成分を評価するための計算モデルを使用する。皮膚を通過するマーカーの濃度プロファイルをもたらすことができる任意のモデルを用いることができる。ユーザーは、浸透パラメータを考慮すると、皮膚を通過するマーカーの濃度プロファイルをもたらすことができる、任意のタイプの計算による皮膚浸透モデルを選択することができる。成人皮膚及び皮膚モデルの両方の使用は、モデルが皮膚アーキテクチャの構造を考慮し、2つの間に差異が存在することを必要とする。
【0037】
例えば、皮膚層を通過する物質(例えば、マーカー)の拡散を統合するように変更された、Sutterlin et al.,「A 3D self-organizing multicellular epidermis model of barrier formation and hydration with realistic cell morphology based on EPISIM」,Scientific Reports,volume 7,article 43472,2017に公開されている生理学モデルを使用することができる。Sutterlinらは、表皮バリア、環境への水喪失、並びに組織内の水及びカルシウムの流れとの間に調節フィードバックループを包含する細胞挙動モデル(CBM:cell behavioral model)を開示している。EPISIMプラットフォームは、(i)EPISIM Modellar(グラフィカルモデリングシステム)及び(ii)EPISIM Simulator(エージェントベースのシミュレーション環境)の2つのすぐに使用できるソフトウェアツールで構成されている。各EPISIMベースモデルは、少なくとも細胞挙動及び生体力学モデル(CBM及びBM)で構成される。BMは、全ての空間的及び生物物理的な細胞特性をカバーする。CBMは、細胞決定(cellular decision)のモデルである。本発明に従って、2D又は3Dバージョンのモデルを使用することができる(角質層コンポーネントはないが、2Dモデルのバージョンは、Suetterlin et al.「Modeling multi-cellular behavior in epidermal tissue homeostasis via finite state machines in multi-agent systems」,Bioinformatics,25(16),2057-2063,2009に記載されている)。
【0038】
1つの方法では、プロセスは、ユーザーがシミュレーションを表皮ホメオスタシスに対応する定常状態に到達させることから始まる。次いで、マーカーの局所適用に対応する所与の時点で、評価者は、マーカーの肌表面濃度(C表面)に対応するユーザー定義の変数を導入する。このパラメータの値は、実験的に得られた濃度プロファイルから定義され、深さ0(皮膚表面)におけるマーカー濃度に相当する。細胞変数は、細胞中のマーカーの濃度(C細胞)を定義するモデルに導入される。マーカーが各細胞からそれにすぐ隣接する細胞へと拡散することが可能であるため、各時点において、このパラメータは、フィックの法則(Fick's law of diffusion)に基づいて修正される。フィックの法則を適用するために、透過係数パラメータ(P)がモデルに導入される。この透過係数パラメータは本質的に、拡散係数、分配係数による拡散抵抗、及び物質が1つの細胞から次の細胞に進むために横切らなければならない経路の距離による拡散抵抗を説明する。透過係数は、生存表皮(PVE)と比較して角質層(PSC)に関して異なる。物質が表皮の最も低い部分に到達すると、浸透「シンク」としてモデル化される真皮区画に拡散することができる。
【0039】
これらの修正は、成人皮膚及び乳児皮膚の両方のモデルに適用される。
【0040】
乳児皮膚モデルは、成人モデルのパラメータを修正して、乳幼児皮膚のより高いターンオーバー速度(増殖と落屑)を反映して作製される。
【0041】
浸透パラメータ
浸透パラメータは、浸透速度論、つまり物質が表面を横切って皮膚の奥深くまで浸透することがどれほど容易かを特徴付けている。浸透パラメータは、例えば、分配係数、拡散係数、及び/又は透過係数であってもよい。
【0042】
マイルドさ指数
定常状態では、成人皮膚モデルにおけるマーカーの濃度プロファイルは、実験濃度プロファイルと比較される。プロファイルが一致しない場合、浸透パラメータ(C表面、PSC、及びPVE)が調整され、シミュレーションが繰り返される。2つのプロファイルが一致すると、パラメータは、乳児皮膚モデル内のマーカー浸透に対応するパラメータを計算するために使用される。乳幼児皮膚の親水性は高いため、C表面パラメータは高くなる(通常、成人皮膚の2倍)のに対し、他の浸透パラメータは2つのモデル間で同じままである。
【0043】
例えば、経表皮水分蒸散量(TEWL)、皮膚静電容量、吸収-脱離、及びラマン共焦点分光法などのツールを使用して、乳児の角質層の水分貯蔵及び水分輸送の特性が成人のものとは異なることを示す、Nikolovski et al.,Barrier function and water-holding and transport properties of infant stratum corneum are different from adult and continue to develop through the first year of life,Journal of Investigative Dermatology(2008),Vol.128,を参照されたい。詳しくは、参照文献は、下腹側腕の皮膚に水を適用してから10秒後にラマン共焦点顕微鏡を介して外因的に適用された水の吸収を観察することを開示している。文献内の図5a(図1Aに再現される)は、生後12ヶ月未満の乳児の角質層に著しい量の水分吸収が見られたことを示している。文献内の図5b(図1Bに再現される)は、対照的に、水の適用後に成人皮膚において著しい吸水が見られなかったことを示す。高度に親水性であるカフェイン浸透は、水の浸透と同様に挙動することが予想される。
【0044】
次いで、乳児皮膚モデルにおいて、マーカー浸透を定常状態に到達させる(各工程が30分間の生理時間に相当する約1000工程)。定常状態において、マーカーの平均濃度プロファイルを計算する(深さの関数としての平均濃度)。曲線下面積(AUC、積分)を、定義された深さ(20μmなど)までの濃度プロファイルに対して計算する。
【0045】
マイルドさ指数スケールは、異なる製品処理に対応するAUC値から定義することができる。これは、局所物質のマイルドさを分類するために使用される任意の尺度である。
【0046】
このマイルドさ指数値により、評価者は、試験した局所物質のマイルドさを2つの基準物質、水(マイルド)及びラウリル硫酸ナトリウム(SLS)0.1%(刺激性)に対して比較することができる。2つの基準点として、水及びSLS0.1%を用いて、他の局所物質のマイルドさを測定するためのスケールを構築することが可能である。
【0047】
このマイルドさ指標は任意選択であり、マイルドさ指標を省略し、それらの予測的浸透曲線(すなわち、計算されたAUC値)の積分に基づいて、様々な局所物質の相対的なマイルドさを互いに直接比較することができることに留意されたい。
【実施例
【0048】
1-実験(成人)、モデル(成人)及び予測(乳幼児)間の比較図2参照。
目標:
●2つの極端な局所溶液、すなわち1つの刺激性(0.1% SLSを含有する)局所溶液、及び1つのマイルドな(水)局所溶液の乳児皮膚に対する予測効果を示す。
●成人モデルが実験データと適合することを示す。
●局所物質が成人及び乳児皮膚に対して同じ効果を有さないことを示し、乳児皮膚はマーカーに対してより透過性であることを示す。
【0049】
人皮膚及び乳児皮膚に対する水及びSLSの実験、モデル及び予測の比較。図3参照。
【0050】
上記の図3は、成人皮膚(線+及び〇)に対するin vivo実験、又はin silico予測モデル(線Δ、×、◇及び□)により得られた、ケラチン1グラム当たりmmolで表されるカフェイン(マーカー)の浸透の深さ(μm単位)を示す。
【0051】
カフェイン浸透に対する2つの局所溶液の効果を、図3の、水及び0.1% SLSに表す。成人のモデル計算データは、それぞれ、水及びSLSについて、線Δ及び◇によって表される。乳児の予測データは、それぞれ、水及びSLSについて、線×及び□によって表される。
【0052】
in vivo実験データを成人皮膚で収集した後、成人皮膚モデルに伝送して、成人皮膚におけるカフェインの浸透深さをシミュレートする。本発明のモデルによって提案される乳児皮膚におけるカフェイン浸透の予測は、カフェイン適用の前に皮膚を水パッチで処理した場合の斜めクロス線(×)と、カフェイン適用の前に0.1% SLSパッチで皮膚を処理した場合の四角の線(□)で表される。
【0053】
0~20μmの表皮深さによる曲線下面積は、局所物質のマイルドさレベルの指標を与える。低いほど、皮膚に対してマイルドになる。曲線下面積は、異なる処理を比較することができる重要なパラメータである。
【0054】
2-いくつかの界面活性剤の製剤間の比較。図4参照。
目標:
●乳児皮膚に対するそれらのマイルドさに基づいて、予測される界面活性剤製剤の分類を作成する。
【0055】
工程2.1:実験データ、in vivoでの成人皮膚におけるカフェイン浸
【0056】
試験した製剤図4に示す。
【0057】
実験プロトコルは、論文Stamatas et al.,Development of a non-invasive optical method for assessment of skin barrier to external penetration,Biomedical Optics and 3D Imaging OSA(2012)の材料及び方法に開示されている。Stamatasらは、角質層バリア機能に対する(1)ラウリル硫酸ナトリウム及び(2)バリアクリームの影響を実証するため、成人皮膚を通過するカフェイン浸透を追跡する、カフェインの特徴的なラマンスペクトルの使用を開示している。
【0058】
工程2.2:in silicoでの成人表皮モデルにおけるモデル化実験データ図5参照。
【0059】
工程2.1で収集した実験的カフェイン浸透データを成人皮膚の計算モデルに伝送する。皮膚浸透のシミュレーションは、各局所物質に対して行われ、物質当たり単一のシミュレーションが十分となるであろう。カフェイン浸透パラメータ(局所表面濃度及び透過係数)を抽出する。
【0060】
工程2.3:界面活性剤処理後の予測カフェイン透過曲線図6参照。
【0061】
工程2.2で成人皮膚モデルから得られたカフェイン浸透パラメータを、乳児皮膚の計算モデルに伝送する。乳児皮膚浸透のシミュレーションを、各局所物質に対して行う。予測カフェイン浸透の結果を抽出し、上記のグラフ4に表す。
【0062】
工程2.4:乳幼児の角質層における予測吸収量、0~10μmの深さの曲線下面積(カフェインmmol/ケラチンg)図7参照。
【0063】
工程2.3で図6に示された各局所剤の予測曲線を積分して、各局所剤について、乳児角質層に吸収されたカフェインの予測量を得る。これらの値は、図7に表される。
【0064】
言い換えれば、この予測グラフは、どの程度のカフェインがSCの最初の10μm(mmではない)以内に浸透するかを示す。より多くのカフェインがあると、局所物質はより攻撃的なものになる。
【0065】
結果
驚いたことに、このグラフから、局所薬剤は、常に、成人皮膚で得られた実験値によって反映される乳児皮膚に関するマイルドさ指数値を持たないと予測できる。
●製剤3は、製剤5よりもマイルドである。
●製剤4は、製剤2よりもマイルドである。
【0066】
この実験の結果のとおり、同様に製剤5及び2が好ましいことから、製剤3及び/又は4の処方を含む組成物を調製し、乳児皮膚及び/又は若い皮膚に適用することができる。
【0067】
次の実施形態では、本発明は、成人皮膚試験の分析によるバリア効果のレベルを評価すると同時に、特に乳児又は幼児用のバリアシステムの開発に関する。
【0068】
本発明は、幼児又は乳児に対する試験の必要性を回避しながら、客観的データを用いてバリアシステムの保護レベルを評価することを可能にする。
【0069】
方法
上記の工程I及びIIは、同じままである。マーカーの乳児皮膚浸透に対する予測データを生成する。
【0070】
工程IIIは、工程Iで適用された局所物質が乳児又は乳幼児皮膚に対して有し得るバリア効果を予測するため、データが皮膚を通過するマーカーの低浸透及び拡散の使用に関する点で異なる。
【0071】
リーブオン製品(例えばクリーム/保湿剤)は、この方法論を用いて評価することができる。
【0072】
実験
実施例3
材料及び方法
研究前及び研究中に少なくとも24時間、前腕に他のいかなるスキンケア処理も行わないことに同意した、正常な皮膚の健康な被検者で成人皮膚のデータを収集した。
【0073】
使用する器具:
in vivo共焦点ラマンマイクロ分光計(Skin Composition Analyzer Model 3510,River Diagnostics,Rotterdam,The Netherlands)
カフェインパッチ:脱イオン水10mL中カフェイン180mg、1.8%
【0074】
実施例4バリアクリームシミュレーション
実験データを、20~35歳の5名の女性の被検者で収集した。
【0075】
試験した局所物質:
バリアクリーム:Dsitin(登録商標)クリーム(おむつかぶれクリーム)
US INICIリスト:酸化亜鉛10%、不活性成分(アロエ・バルバデンシス葉汁)、シクロメチコン、ジメチコン、香料、メチルパラベン、微結晶ワックス、鉱油、プロピルパラベン、精製水、ホウ酸ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、ビタミンE、白色ワセリン、白ろう。
【0076】
プロトコル
1-温度及び湿度が管理された室内で5分間の順化
2-前腕への局所物質の適用
3-温度及び加湿が管理された室内で30分間の順化
4-前腕(同じ場所)での30分間のカフェインパッチの適用
5-ラマン指紋領域における測定
【0077】
結果
1-成人皮膚に対する実験データ図8参照。
Desitin処理した皮(四角)からのデータを、参照(円)未処理皮膚からのデータ(すなわち、プロトコルの工程2で適用された局所物質なし)と比較する。
【0078】
浸透データを実験結果から抽出し、成人皮膚の計算モデルに伝送する。
【0079】
2-成人皮膚モデルの作製図9参照。
次の工程は、成人皮膚の計算モデルに対して皮膚透過パラメータを定義して、上に提示された実験データを正確にシミュレートすることができるようすることである。
【0080】
これらのパラメータは、カフェイン浸透プロファイルの勾配から計算される。
【0081】
成人モデルからの結果を以下に示す。
【0082】
バリアクリームで処理した皮膚(四角)を、参照未処理皮膚(円)と比較する。
【0083】
浸透パラメータを、成人の計算モデルから抽出する。
【0084】
3-乳児皮膚に対する予測結果図10参照。
最後の工程は、適切な変換を用いてカフェイン浸透パラメータを乳児皮膚の計算モデルに伝送し、乳児皮膚の推定カフェイン浸透をシミュレートすることを含む。
【0085】
バリアクリームで処理した皮膚(四角)及び参照未処理皮膚(円)へのカフェイン浸透の予測結果を以下に示す。
【0086】
最後に、バリアクリームで処理した皮膚のAUCによる未処理皮膚の曲線下面積(AUC:area under the curve)に関する以下に示す比から、バリアクリームの予測される%保護を計算することができる。
%保護=100×(AUC(未処理)-AUC(製品))/AUC(未処理)=89.18%
【0087】
実施例5保湿剤シミュレーション
実験データを、18~40歳の6名の女性ボランティアで収集した。
【0088】
試験した局所物質:
-保湿剤A:グリセリン(12%)、ワセリン(4%)、ジステアリルジモニウムクロリド、水を含むエマルジョン
-保湿剤B:ワセリン(40%)、グリセリン(12%)、ジステアリルジモニウムクロライド、水を含む構造化エマルジョン
【0089】
プロトコル
1-温度/湿度が管理された室内で5分間の順化
2-前腕への局所物質の30分間の適用
3-前腕(同じ場所)での30分間のカフェインパッチの適用
4-指紋領域における測定
【0090】
結果
1-成人皮膚に対する実験データ
保湿剤Aで処理した皮(四角)からのデータを、保湿剤Bで処理した皮膚(三角)及び参照未処理皮膚(〇)からのデータ(すなわち、プロトコルの工程2で適用された局所物質なし)と比較する。
【0091】
浸透データを実験結果から抽出し、成人皮膚の計算モデルに伝送する。
【0092】
2-成人皮膚モデルの作製図12参照。
次の工程は、成人皮膚の計算モデルに対して皮膚透過パラメータを定義して、上に提示された実験データを正確にシミュレートすることができるようすることである。
【0093】
これらのパラメータは、カフェイン浸透プロファイルの勾配から計算される。
【0094】
成人モデルからの結果を以下に示す。
【0095】
保湿剤Aで処理した皮膚(四角)を、保湿剤Bで処理した皮膚(三角)及び参照未処理の皮膚(円)と比較する。
【0096】
浸透パラメータを、成人の計算モデルから抽出する。
【0097】
3-乳児皮膚に対する予測結果
最後の工程は、適切な変換を用いてカフェイン浸透パラメータを乳児皮膚の計算モデルに伝送し、乳児皮膚の推定カフェイン浸透をシミュレートすることを含む。
【0098】
保湿剤Aで処理した皮膚(四角)、保湿剤Bで処理した皮膚(三角)及び参照未処理皮膚(円)のカフェイン浸透の予測結果を図13に示す。
【0099】
最後に、保湿剤で処理した皮膚のAUCによる未処理皮膚の曲線下面積(AUC)に関する以下に示す比から、本発明者らは、保湿剤の予測される保護%を計算することができる。
【0100】
保湿剤Aの場合
保護%:該当なし
保湿剤Aの曲線下面積は、未処理参照の曲線下面積よりも優れている。シミュレーションは、乳児皮膚に対する保護効果を予測しない。
【0101】
保湿剤Bの場合
保護%=100×(AUC(未処理)-AUC(製品))/AUC(未処理)=17.72%。
【0102】
本開示の様々な態様が例により解説及び記載されてきたが、本明細書において特許請求の範囲に記載の発明はこれに限定されるものではなく、本明細書に提示される特許請求の範囲及び/又は任意の派生する特許出願に従って様々に具体化され得ることが理解されるであろう。
【0103】
〔実施の態様〕
(1) 乳児皮膚に対するバリアシステムの潜在的影響を評価する方法であって、
a)前記バリアシステムを成人皮膚に局所的に適用することと、
b)前記バリアシステムで処理された成人皮膚にマーカーを局所的に適用することと、
c)前記バリアシステムで処理された成人皮膚への前記マーカーの浸透を測定することと、
d)浸透パラメータを最適化することによって、成人皮膚浸透の計算モデルを使用して前記マーカーの浸透を可視化して、前記成人皮膚浸透のモデルのプロファイルが実験データと一致するようにすることと、
e)最適化された前記浸透パラメータを乳児皮膚の計算モデルに伝送することと、
f)前記乳児皮膚の計算モデルにおける前記マーカーの浸透を決定することと、を含む、方法。
(2) 前記マーカーがカフェインである、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記成人皮膚浸透の計算モデルとしてEPISIMを用いる、実施態様1に記載の方法。
(4) 実施態様1に記載の方法により選択される、バリアシステム。
(5) 前記成人皮膚浸透の計算モデルが、薬剤ベースのモデルである、実施態様1に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13