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特許7317840ピリジル鉄錯体を含む触媒系の存在下にて、主に交互シス-1,4-ALT-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】ピリジル鉄錯体を含む触媒系の存在下にて、主に交互シス-1,4-ALT-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 136/08 20060101AFI20230724BHJP
   C08F 4/70 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
C08F136/08
C08F4/70
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020539050
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 IB2019050333
(87)【国際公開番号】W WO2019142108
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】102018000001149
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519463673
【氏名又は名称】ベルサリス エッセ.ピー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッチ ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ソンマッツィ アンナ
(72)【発明者】
【氏名】パンパローニ グイード
(72)【発明者】
【氏名】レオーネ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】マージ フランチェスコ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/020413(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0011971(US,A1)
【文献】特開平04-266908(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106632764(CN,A)
【文献】国際公開第2018/073795(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105085380(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 4/00- 4/82
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法であって、前記方法が、
(a)一般式(I)を有する少なくとも1種のピリジル鉄錯体であって、
【化10】
式中、
-Rは、直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基、任意選択的には置換シクロアルキル基、任意選択的には置換アリール基から選択され、
-Rは、直鎖または分枝鎖のC-C10アルキル基であり
-Xは、相互対称的に同一または異なるものであり、塩素、臭素、ヨウ素といったハロゲン原子から選択され、またはそれらは、直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基、式中Rが直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基である-OCOR基または-OR基から選択され、
-nは、2または3である、ピリジル鉄錯体と、
(b)共触媒であって
b1)(R-Al-O-[-Al(R)-O-]-Al-(R(II)
である一般式(II)を有するアルミノキサンであって、
式中、R、RおよびRは、相互対称的に同一または異なるものであり、水素原子もしくは塩素、臭素、ヨウ素、フッ素から選択されるハロゲン原子を表すか、または直鎖もしくは分枝鎖のC-C20アルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選択され、前記基が任意選択的には1個以上のケイ素またはゲルマニウム原子で置換され、mは、0~1000の範囲である整数である、アルミノキサンと、
(b2)Al(R)(R)(R)(III)
である一般式(III)を有するアルミニウム化合物であって、
式中、Rは水素原子であるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC-C20アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基から選択され、RおよびRは、相互対称的に同一または異なり、直鎖もしくは分枝鎖のC-C20アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基から選択される、アルミニウム化合物とから選択される少なくとも1種の共触媒と、を含む、触媒系の存在下にてイソプレンを重合することを含み、
前記共触媒中に存在する前記アルミニウムと、一般式(I)を有する前記ピリジル鉄錯体中に存在する前記鉄との分子比が、5~60の範囲である、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法。
【請求項2】
一般式(I)を有する前記ピリジル鉄錯体中、
-Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソ-プロピル基を表し、
-Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソ-プロピル基を表し、
-Xは、相互対称的に同一であり、塩素、臭素、ヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、
-nは、2または3である、請求項1に記載の主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法。
【請求項3】
一般式(I)を有する前記ピリジル鉄錯体中、
-R は、メチル基を表し、
-R は、メチル基又はイソ-プロピル基を表し、
-Xは、塩素原子を表し、
-nは、2または3である、請求項1に記載の主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法。
【請求項4】
一般式(II)を有する前記アルミノキサンが、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、n-ブチルアルミノキサン、テトラ-イソ-ブチルアルミノキサン(TIBAO)、tert-ブチルアルミノキサン、テトラ-(2,4,4-トリメチルペンチル)アルミノキサン(TIOAO)、テトラ-(2,3-ジメチルブチル)アルミノキサン(TDMBAO)、テトラ-(2,3,3-トリメチルブチル)アルミノキサン(TTMBAO)またはそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法。
【請求項5】
一般式(III)を有する前記アルミニウム化合物が、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジ-イソ-ブチル-アルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-イソ-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-イソ-プロピルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジ-イソ-ブチルアルミニウムエトキシド、ジプロピルアルミニウムエトキシド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリ-イソ-ブチルアルミニウム(TIBA)、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキサルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチル-ジ-p-トリルアルミニウム、エチルジベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウムまたはそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法。
【請求項6】
-前記製造方法は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンもしくはそれらの混合物から選択される飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンもしくはそれらの混合物から選択される飽和環式脂肪族炭化水素、1-ブテン、2-ブテンもしくはそれらの混合物から選択されるモノオレフィン、ベンゼン、トルエン、キシレンもしくはそれらの混合物から選択される芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエンもしくはそれらの混合物から選択されるハロゲン化炭化水素から選択され、少なくとも1種の不活性有機溶媒の存在下にて実行され、かつ/または
-前記製造方法において、前記イソプレンと前記不活性有機溶媒の前記混合物の総量に対し、前記不活性有機溶媒の前記イソプレンの濃度が5重量%~50重量%の範囲であり、かつ/または
-前記製造方法が、-30℃~+60℃の範囲の温度で実行されている、
請求項1~のいずれかに記載の主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法。
【請求項7】
タイヤの製造、詳細にはタイヤトレッドの製造、および履き物産業、詳細には靴底の製造、における、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られた、交互シス-1,4-alt-3,4を有する、前記ポリイソプレンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、少なくとも1種のピリジル鉄錯体と、アルミニウムの有機誘導化合物から選択される、少なくとも1種の共触媒と、を含む触媒系の存在下にてイソプレンを重合することを含む、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
共役ジエンの立体異性体(共)重合は、最も広範に使用されているゴムの中では一般的な生成物を得るため、化学産業にて非常に重要なプロセスであることが知られている。
【0004】
イソプレンの立体異性体重合は、シス-1,4、トランス-1,4、3,4,アイソタクチック、およびシンジオタクチックといった異なる構造を有する立体規則性ポリマーを提供することができることもまた知られている。
【0005】
例えば、シス-1,4構造を有するポリイソプレンは、ネオジムベースの触媒およびアルミニウム化合物[例えば、触媒系であるジエチルアルミニウムクロリド/2-エチルヘキサン酸ネオジム/トリ-イソ-ブチルアルミニウム(AlEtCl/Nd(OCOC15/AlBu)]を含む触媒系を用いて調製され得る。これは例えば、Ricci G.et al,「Die Makromoleculare Chemie,Rapid Communications」(1986),Vol.7,pag.355-359、Ricci G.et al,「Polymer Communications」(1987),Vol.28,Issue 8,pag.223-226、Porri L.et al,「ACS Symposium Series 749-Olefin Polymerization:Emerging Frontiers」(2000)、Arjunan P.,McGrath J.C.and Hanlon T.Eds.,Oxford University Press,USA,pag.15-30に記載されている。
【0006】
代替的には、シス-1,4構造を有する当該ポリイソプレンは、チタンベースの触媒およびアルミニウム化合物[例えば、触媒系であるチタンテトラクロリド/トリエチルアルミニウム(TiCl/AlEt)]を含む触媒系を用いて調製され得る。これは例えば、Porri L.et al「Comprehensive Polymer Science」(1989),Eastmond,G.C.,Ledwith A.,Russo S.,Sigwalt P.Eds.,Pergamon Press Ltd.,Oxford Vol.4,Part II,pag.53-108、Horne S.E.et al,「Industrial Engineering Chemistry」(1956),Vol.48(4),pag.784-791に記載されている。
【0007】
ガッタパーチャの構造と類似する、トランス-1,4構造を有するポリイソプレンは、Natta G.et alによる「Chemical Abstract」(1959),Vol.53,pag.3756およびイタリア国特許出願第536631号明細書にて記載されている。
【0008】
代替的には、トランス-1,4構造を有するポリイソプレンは、バナジウムベースの触媒[例えば、触媒系であるバナジウムトリアセチルアセトネート/メチルアルミノキサン(V(acac)/MAO)を、低温(すなわち、-20℃未満の温度)にて操作する]を含む触媒系を用いて調製され得る。これは例えば、Ricci G.et al,「Macromolecular Chemistry and Physics」(1994),Vol.195,Issue 4,pag.1389-1397、Ricci G.et al,「Journal.Polymer Science Part A:Polymer Chemistry」(2007),Vol.45,Issue 20,pag.4635-4646に記載されている。
【0009】
シンジオタクチック 3,4構造を有するポリイソプレンは、鉄ベースの触媒を含む触媒系[例えば、触媒系であるジエチル ビス(2,2’-ビピリジン)鉄/メチルアルミノキサン(FeEt(bipy)/MAO)、またはジエチル ビス(2,2’-ビピリジン)鉄ジクロリド/メチルアルミノキサン(Fe(bipy)Cl/MAO)]を用いて調製され得る。これは例えば、Bazzini C.et al,「Macromolecular Rapid Communications」(2002),Vol.23,pag.922-927、Ricci G.et al,「Journal of Molecular Catatalysis A:Chemical」(2003),204-205,pag.287-293、Bazzini C.et al,「Polymer」(2004),Vol.45,pag.2871-2875、Pirozzi B.et al,「Macromolecular Chemistry and Physics」(2004),Vol.205,Issue 10,pag.1343-1350、Ricci G.et al,「Coordination Chemistry Reviews」(2010),Vol.254,Issue 5-6,pag.661-676または国際公開第02/102861号明細書に記載されている。
【0010】
アイソタクチック 3,4構造を有するポリイソプレンは、スカンジウムメタロセン錯体に基づく触媒を含む触媒系を用いて調製され得る。これは例えば、Zhang L.et al,「Journal of the American Chemical Society」(2005),Vol.127(42),pag.14562-14563、Nakajima Y.et al,「Organometallics」(2009),Vol.28(24),pag.6861-6870に記載されている。
【0011】
完全交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンは、芳香族ホスフィンおよびメチルアルミノキサン(MAO)を有するコバルト錯体に基づく触媒であり、すなわち、触媒系であるCoCl(PRPh/MAO(式中、R=エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロヘキシル)を含む触媒系の存在下にて、イソプレンを重合することにより近年は得られている。これは例えば、Ricci G.et al,「Macromolecules」(2009),Vol.42(23),pag.9263-9267に記載されている。前述のポリイソプレンは、60000g×mol-1~80000g×mol-1の範囲である分子量および約-18℃と同等であるガラス転移温度(T)を有すると言われている。
【0012】
ピリジル鉄錯体を有する触媒系は、混合構造を有するポリブタジエンまたはポリイソプレンといった共役ジエンの(共)重合体を提供することが可能であることが知られている。詳細には、得られた共役ジエンの(共)重合の微細構造(すなわち、ポリブタジエン中の1,4-シス、1,4-トランスおよび1,2単位内容物ならびにポリイソプレン中の1,4-シス、1,4-トランスおよび3,4単位内容物を調整し、更にシンジオタクチック 1,2ポリブタジエンを提供する。これは例えば、出願人の名称であるイタリア国特許出願第102016000105714号明細書およびイタリア国第102016000105730号明細書中に記載されている。
【発明の概要】
【0013】
主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンは、例えば、タイヤ、詳細にはタイヤトレッド製造用および履き物産業(例えば、靴底の製造用)といった個々の領域にて有利には使用されることができる。当該ポリイソプレンを提供することができる新規プロセスの研究は、未だに大きな関心を集めている。
【0014】
したがって出願人は、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンを提供することができる、新規プロセスを発見するという課題を解決するため、これに着手した。
【0015】
出願人は現在、以下に提供されている特定の一般式(I)を有する少なくとも1種のピリジル鉄錯体と、アルミニウムの有機誘導化合物から選択される少なくとも1種の共触媒と、を含む、触媒系の存在下にてイソプレンを重合することを含む、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法を発見した。当該触媒系を使用することにより、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンを得ることが可能である。当該触媒系は更に、詳細には触媒活性が高く、使用される共触媒および鉄の量が低いことで結果的に経済的観点から重要な利点を有するため、共触媒中に含有されたアルミニウムと、以下にて報告されている特定の一般式(I)を有するピリジル鉄錯体中に含有された鉄との分子比が低い状態で操作することが可能である。更に、当該触媒系は、脂肪族炭化水素から選択される不活性有機溶媒の存在下にて使用することができ、その結果、経済的観点および環境持続可能性の観点の両方から重要な利点が得られる。
【0016】
本発明の主題はしたがって、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法であって、当該製造方法が、(a)一般式(I)を有する少なくとも1種のピリジル鉄錯体であって、
【化1】
式中、
-Rは、直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基、好ましくはC-C15アルキル基、任意選択的には置換シクロアルキル基、任意選択的には置換アリール基から選択され、
-Rは、直鎖または分枝鎖のC-C10アルキル基、好ましくはC-Cアルキル基から選択され、
-Xは、相互対称的に同一または異なるものであり、例えば塩素、臭素、ヨウ素といったハロゲン原子を表すか、またはそれらは、直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基、好ましくはC-C15アルキル基、式中Rが直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基、好ましくはC-C15アルキル基から選択される-OCOR基または-OR基から選択され、
-nは2または3である、ピリジル鉄錯体と、
(b)アルミニウムの有機誘導化合物から選択された少なくとも1種の共触媒であって、好ましくは、
(b)(R-Al-O-[-Al(R)-O-]-Al-(R(II)である
一般式(II)を有するアルミノキサンであって、
式中、R、RおよびRは、相互対称的に同一または異なるものであり、水素原子もしくは例えば塩素、臭素、ヨウ素、フッ素といったハロゲン原子を表すか、または直鎖もしくは分枝鎖のC-C20アルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選択され、当該基が任意選択的には1個以上のケイ素またはゲルマニウム原子で置換され、mは、0~1000の範囲である整数である、アルミノキサンと、
(b)Al(R)(R)(R)(III)である
一般式(III)を有するアルミニウム化合物であって、
式中、Rは水素原子であるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC-C20アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基から選択され、RおよびRは、相互対称的に同一または異なり、直鎖もしくは分枝鎖のC-C20アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基から選択される、アルミニウム化合物と、を含む、触媒系の存在下にてイソプレンを重合することを含む、触媒系の存在下にてイソプレンを重合することを含み、
共触媒中に存在するアルミニウムと、一般式(I)を有する鉄ピリジル錯体中に存在する鉄との分子比が、5~60、好ましくは8~55の範囲である、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例9にて得られ、当該ポリイソプレンの微細構造を測定することができる、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンのH-NMRスペクトルを示す。
図2】実施例9にて得られ、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの13C-NMRスペクトル(オレフィン領域)を示す。
図3】3,4構造を有するイソプレン単位が単一の型の環境に遭遇し、交互シス-1,4-alt-3,4構造中にのみ正確に挿入されていることを指している。
図4】実施例7にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図5】実施例7にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
図6】実施例8にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図7】実施例8にて得られたポリイソプレンのH-NMR(下部)および13C-NMR(上部)スペクトルを示す。
図8】実施例9にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図9】実施例9にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
図10】実施例10にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図11】実施例10にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
図12】実施例11にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図13】実施例11にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
図14】実施例12にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図15】実施例12にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
図16】実施例13にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図17】実施例13にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
図18】実施例14にて得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
図19】実施例14にて得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、数値範囲の定義は、別段の指定がない限り常に極値を含む。
【0019】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「含む(comprising)」はまた、「から本質的に成る(which essentially consists of)」または「から成る(which consists of)」という用語を含む。
【0020】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「主な交互構造を有するポリイソプレン」は、当該ポリイソプレン中、交互シス-1,4/3,4連鎖を用いて間隔を空けて配置されているシス-1,4単位(すなわち3単位)の短連鎖が存在することを示している。当該ポリイソプレンは、以下のように表され得る。
【化2】
【0021】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「C-C10アルキル基」および「C-C20アルキル基」は、1~10個の炭素原子および1~20個の炭素原子を有し、それぞれ、直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味する。C-C10およびC-C20アルキル基の特定の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、n-ノニル、n-デシル、2-ブチルオクチル、5-メチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-エチルヘプチル、2-エチルヘキシルである。
【0022】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「シクロアルキル基」は、3~30個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。当該シクロアルキル基はまた、任意選択的には相互対称的に同一または異なるものであり、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、C-C12アルキル基、C-C12アルコキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基から選択される1つ以上の基で置換されることができる。シクロアルキル基の特定の例は、シクロプロピル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ヘキサメチルシクロヘキシル、ペンタメチリルシクロペンチル、2-シクロオクチルエチル、メチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、フルオロシクロヘキシル、フェニルシクロヘキシルである。
【0023】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、6~30個の炭素原子を有する、用語「アリール基」は、炭素環式芳香族基を意味する。当該アリール基はまた、任意選択的には相互対称的に同一または異なるものであり、例えばフッ素、塩素、臭素といったハロゲン原子、ヒドロキシル基、C-C12アルキル基、C-C12アルコキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基から選択される、1つ以上の基で置換され得る。アリール基の特定の例は、フェニル、2-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-tert-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-イソ-プロピルフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、フェニルオキシフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ニトロフェニル、ジメチルアミノフェニル、ナフチル、フェニルナフチル、フェナントレン、アントラセンである。
【0024】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「アルキルアリール基」は、相互対称的に同一または異なるものであり、C-C12アルキル基から選択される、1つ以上の基で置換されるアリール基を意味する。アルキルアリール基の特定の例は、2-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,6-ジ-イソ-プロピルフェニルである。
【0025】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「アリールアルキル基」は、アリール基で置換されたアルキル基を意味する。アリールアルキル基の特定の例は、ベンジル、フェニルエチル、6-ナフチルヘキシルである。
【0026】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「アルコキシ基」は、直鎖または分枝鎖のC-C20アルキル基が結合する酸素原子を含む基を意味する。C-C20アルコキシ基の特定の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、t-ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(I)を有する当該ピリジル鉄錯体中、
-Rはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、好ましくはメチル基を表し、
-Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、好ましくはメチル基またはイソ-プロピル基を表し、
-Xは、相互対称的に同一であり、例えば塩素、臭素、ヨウ素であって、好ましくは塩素原子といったハロゲン原子を表し、
-nは2または3である。
【0028】
一般式(I)を有するピリジル鉄錯体は、本発明によれば、例えば、単離および精製された固体形態、適切な溶媒による溶媒和形態または適切な有機または無機固体上で支持されたものであり、好ましくは顆粒状または粉末状の物理的形態を有する、任意の物理的形態であると考慮され得る。
【0029】
一般式(I)を有するピリジル鉄錯体は、先行技術にて既知である配位子から出発して調製されている。
【0030】
本発明の目的のため有用である配位子の特定の例は、次の式(L1)および(L2)を有するものである。
【化3】
【0031】
式(L1)および(L2)を有する当該配位子は、先行技術にて既知であるプロセスによって調製され得る。例えば、式(L1)および(L2)を有する当該配位子は、例えば、Wu J.et al,「Journal of American Chemical Society」(2009),Vol.131(36),pg.12915-12917、Laine V.T.et al,「European Journal of Inorganic Chemistry」(1999),Vol.6,pg.959-964、Bianchini C.et al,「New Journal of Chemistry」(2002),Vol.26(4),pg.387-397、Lai Yi-C.et al,「Tetrahedron」(2005),Vol.61(40),pg.9484-9489に記載の対応するイミンを形成することによる、適切なアニリンと2-アセチルピリジンとの縮合反応を含むプロセスによって調製され得る。
【0032】
一般式(I)を有するピリジル鉄錯体は、先行技術にて既知である手順に従って調製され得る。一般式(I)を有する当該ピリジル鉄錯体は、一般式Fe(X)またはFe(X)を有する鉄化合物どうしを反応させることにより調製され得る。式中、Xは例えば、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは塩素といったハロゲン原子であり、これはそのままであるか、またはエーテル[例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン]で、もしくは、好ましくは、例えば、塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン)、エーテル溶媒[例えば、テトラヒドロフラン(THF)]、アルコール溶媒(例えば、ブタノール)、炭化水素溶媒(例えば、トルエン、ヘキサン)またはそれらの混合物から選択され得る少なくとも1種の溶媒の存在下にて、周囲温度~+110℃の範囲の温度にて操作している、1~2の範囲の配位子(L)/鉄(Fe)の分子比で、例えば上に報告されている式(L1)もしくは(L2)を有する配位子といった適切なピリジン配位子(L)で錯化されたものである。こうして得られた一般式(I)を有するピリジル鉄錯体は、例えば、適切な溶媒(例えばヘプタン)で得られた固体生成物を洗浄し、それに続いて乾燥(例えば真空下)するといった先行技術にて既知である方法を用いて後に再生されることができる。一般式(I)を有する当該ピリジル鉄錯体の製造方法に関し、より詳細な内容が以下にて報告されている実施例中にて見いだされ得る。
【0033】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、表現「周囲温度」は、+20℃~+25℃の範囲である温度を意味する。
【0034】
既知のように、アルミノキサンは、変数であるO/Al比でAl-O-Al結合を含有する化合物である。例えば、制御条件にて、水で、または、例えば、硫酸アルミニウム・6水和物、硫酸銅・5水和物または硫酸鉄・5水和物を反応させた場合でといったように規定量の利用可能な水を含有する他の化合物を用いてアルミニウムアルキルを反応させるか、またはアルミニウムアルキルハロゲン化物を反応させることにより、先行技術にて既知であるプロセスに従って得ることが可能である。
【0035】
当該アルミノキサンおよび詳細にはメチルアルミノキサン(MAO)は、例えば、トリメチルアルミニウムを、ヘキサン中の硫酸アルミニウム・6水和物の懸濁液へと添加することにより、既知である有機金属化学プロセスを用いて得ることができる化合物である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(II)を有する当該アルミノキサンは、例えばメチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、n-ブチルアルミノキサン、テトラ-イソ-ブチルアルミノキサン(TIBAO)、tert-ブチルアルミノキサン、テトラ-(2,4,4-トリメチルペンチル)アルミノキサン(TIOAO)、テトラ-(2,3-ジメチルブチル)アルミノキサン(TDMBAO)、テトラ-(2,3,3-トリメチルブチル)アルミノキサン(TTMBAO)またはそれらの混合物から選択され得る。メチルアルミノキサン(MAO)が特に好ましい。
【0037】
一般式(II)を有するアルミノキサンに関連した更なる詳細は、例えば国際公開第2011/061151号明細書にて明らかにされ得る。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(III)を有する当該アルミニウム化合物は、例えば、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジ-イソ-ブチル-アルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-イソ-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-イソ-プロピルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジ-イソ-ブチルアルミニウムエトキシド、ジプロピルアルミニウムエトキシド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリ-イソ-ブチルアルミニウム(TIBA)、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリチクロヘキシルアルミニウム(triciclohexylaluminum)、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチル-ジ-p-トリルアルミニウム、エチルジベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウムまたはそれらの混合物から選択され得る。トリ-イソ-ブチルアルミニウム(TIBA)が好ましい。
【0039】
一般的には、前述の触媒系の形成は、好ましくは不活性液状媒体中にて実行され、より好ましくは炭化水素溶媒中にて実行される。一般式(I)を有するピリジル鉄錯体および共触媒の選択、ならびに使用される特別な方法は、分子構造および所望の結果に従い、種々の性質の配位子を有する他の遷移金属錯体に関して、当業者が利用しやすい関連する文献にて同様に報告されているものに従って変化してもよい。例えば、Ricci G.et al,「Advances in Organometallic Chemistry Research」(2007),Yamamoto K.Ed.,Nova Science Publisher,Inc.,USA,pg.1-36、Ricci G.et al,「Coordination Chemistry Reviews」(2010),Vol.254,pg.661-676、Ricci G.et al,「Ferrocenes:Compounds,Properties and Applications」(2011),Elisabeth S.Phillips Ed.,Nova Science Publisher,Inc.,USA,pg.273-313、Ricci G.et al,「Chromium:Environmental,Medical and Material Studies」(2011),Margaret P.Salden Ed.,Nova Science Publisher,Inc.,USA,pg.121-1406、Ricci G.et al,「Cobalt:Characteristics,Compounds,and Applications」(2011),Lucas J.Vidmar Ed.,Nova Science Publisher,Inc.,USA,pg.39-81、Ricci G.et al,「Phosphorus:Properties,Health effects and Environment」(2012),Ming Yue Chen and Da-Xia Yang Eds.,Nova Science Publisher,Inc.,USA,pg.53-94である。
【0040】
本発明の目的のために、共触媒は一般式(I)を有するピリジル鉄錯体と接触する。共触媒中に含有されたアルミニウムと、一般式(I)を有するピリジル鉄錯体中に含有された鉄との分子比は、上で報告された値の間であるような比率で配置されていてよい。すなわち、共触媒中に含有されたアルミニウムと、一般式(I)を有するピリジル鉄錯体中に含有された鉄との分子比は、5~60であり、好ましくは8~55の範囲である。一般式(I)を有するピリジル鉄錯体および共触媒が互いに接触するよう配置されている連鎖は、特に不可欠なものではない。
【0041】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、用語「分子」および「分子比」は、どちらも分子から成る化合物ならびに原子およびイオンに関して使用されており、後者は、それらが化学的理論に基づきより正確であったとしても、用語グラム原子または原子比というものを除外している。
【0042】
本発明の目的のため、特定の実質的な要件を満たすよう触媒系を適応させるため、任意選択的には他の添加物または成分を上述の触媒系に加えてよい。これにより、得られた触媒系は、本発明の範囲内に含まれると考えられ得る。調製時および/または前述の触媒系の形成時に添加され得る添加物および/または成分は、例えば、脂肪族および/または芳香族炭化水素、脂肪族および/または芳香族エーテル、例えば、非重合性オレフィンから選択される弱配位性添加物(例えばルイス塩基)、立体障害型エーテルまたは電子的に不十分なエーテル、例えば、シリコンハロゲン化物、ハロゲン化炭化水素、好ましくは塩素化炭化水素といったハロゲン化剤、またはそれらの混合物といった不活性溶媒である。
【0043】
当該触媒系は、既に上に報告されているように、先行技術にて既知である方法に従って調製され得る。
【0044】
例えば、当該触媒系は、別個に調製(予備形成)し、その後重合環境に導入することができる。この目的のため、当該触媒系は個別に調製(実施)され、その後重合環境へと導入され得る。本目的のため、当該触媒系は、一般式(I)を有する少なくとも1種のピリジル鉄錯体を、任意選択的には、他の添加物または上で挙げられたものから選択されている成分、例えばトルエン、ヘプタンといった溶媒の存在下にて、+20℃~+60℃の範囲の温度にて、10秒~10時間といった範囲、好ましくは30秒~5時間の範囲である時間、少なくとも1種の共触媒と反応するような状態とすることにより調製され得る。
【0045】
代替的には、当該触媒系はその場で調製され得る。すなわち、重合環境にて直接調製され得る。この目的のため、当該触媒系は、一般式(I)を有するピリジル鉄錯体、共触媒およびイソプレンを個別に導入し、重合を実行する条件にて操作することにより調製され得る。
【0046】
当該触媒系の調製に関する更なる詳細は、以下にて報告されている実施例にて明らかにされ得る。
【0047】
本発明の目的のため、前述の触媒系はまた、不活性な固体上に支持され得る。好ましくは、シリコンおよび/または例えば、シリカ、アルミナまたはアルミノケイ酸塩(silico-aluminates)といった酸化アルミニウムから成る。当該触媒系を支持するため、一般的には、適切な不活性液状媒体中で、支持体、任意選択的には200℃超の温度に加熱することにより活性化される支持体と、当該触媒系の1つ以上の成分とを接触することを含む、既知の支持技術が使用され得る。本発明の目的のため、一般式(I)を有するピリジル鉄錯体または共触媒は更に、支持表面のみに存在することができるので、両方の成分が支持される必要はない。後者の場合には、活性触媒系が重合により形成されるものである場合、表面上に存在していない成分は、支持要素と接触した状態で後に配置される。
【0048】
本発明の範囲には、一般式(I)を有するピリジル鉄錯体、その上に置かれた触媒系が含まれる。これらは、後者を官能化し、固体と一般式(I)を有するピリジル鉄錯体との間に共有結合を形成することで固体上に支持されている。
【0049】
本発明の製造方法で使用され得る、一般式(I)を有するピリジル鉄錯体および共触媒の量は、実行されるような重合プロセスに従って変化する。ただし、上に言及されているように、当該量は例えば、5~60の範囲、好ましくは8~55の範囲である、共触媒中に含有されたアルミニウムと、一般式(I)を有する鉄ピリジル錯体中に含有された鉄との分子比を得る必要がある。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該製造方法は、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはそれらの混合物といった飽和脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサンまたはそれらの混合物といった飽和環式脂肪族炭化水素、例えば1-ブテン、2-ブテンまたはそれらの混合物といったモノオレフィン、例えばベンゼン、トルエン、キシレンまたはそれらの混合物といった芳香族炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエンまたはそれらの混合物といったハロゲン化炭化水素から例えば選択される、少なくとも1種の不活性有機溶媒の存在下にて実行される。ヘキサン、ヘプタン、トルエンが好ましい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該製造方法における、当該不活性有機溶媒中のイソプレンの濃度は、イソプレンの混合物および不活性有機溶媒の総量に対し、5重量%~50重量%の範囲、好ましくは10重量%~20重量%の範囲であってよい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該製造方法は、-30℃~+60℃の範囲、好ましくは-20℃~+30℃の範囲の温度で実施することができる。
【0053】
圧力に関しては、重合されることになる混合物の成分の圧力で操作することが好ましい。
【0054】
当該製造方法は、連続およびバッチ内の両方で実行され得る。好ましくは連続して実行され得る。
【0055】
本発明による製造方法により、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンを得ることができる。これは次の特性を有している。
-25℃未満、好ましくは-28℃~-35℃の範囲のガラス転移温度(T)、
-100000g×mol-1~400000g×mol-1の範囲、好ましくは110000g×mol-1~380000g×mol-1の範囲の重量平均分子量(M)。
【0056】
本発明の製造方法により得られた、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンは、例えばタイヤの製造のため、詳細にはタイヤトレッドのためといった異なる領域、および履き物産業(例えば、靴底の製造)にて有利には使用され得る。
【0057】
したがって、本発明の更なる主題は、タイヤの製造のため、詳細にはタイヤトレッドのため、および履き物産業、詳細には靴底の製造における、上記製造方法に従い得られた、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの使用である。
【0058】
本発明をよりよく理解し、それを実施するといった目的のために、以下にそのいくつかの例示的かつ非限定的な実施例を示す。
【実施例
【0059】
試薬と材料
以下のリストは、次の本発明の実施例にて使用される試薬および材料、必須ではない任意のその前処理およびその製造業者を報告したものである。すなわち、
--塩化鉄(III)(FeCl)(Aldrich):純度99.9%、そのまま使用、
--塩化鉄(II)(FeCl)(Aldrich):純度97%、そのまま使用、
-2-エチルヘキサン酸ネオジム[Nd(OCOC15](Strem Chemicals):そのまま使用、
-メチルアルミノキサン(MAO)(トルエン溶液10重量%)(Crompton):そのまま使用、
-トリ-イソ-ブチルアルミニウム(TIBA)(Akzo Nobel):そのまま使用、
--ジエチルアルミニウムクロリド(AlEtCl)(Akzo Nobel):そのまま使用、
-37%水溶液中の塩酸(Aldrich):そのまま使用、
-o-トルイジン(Aldrich):減圧下で蒸留し、不活性雰囲気中で保管、
-2-イソ-プロピルアニリン(Aldrich):そのまま使用、
-2-アセチルピリジン(Aldrich):そのまま使用、
-酢酸エチル(Aldrich):そのまま使用、
-ヘプタン(Aldrich):99%以上純粋、不活性雰囲気中でナトリウム(Na)で蒸留、
-メタノール(Carlo Erba,RPE):そのまま使用、
-トルエン(Aldrich):99.5%以上純粋、不活性雰囲気中でナトリウム(Na)で蒸留、
-イソプレン(Aldrich):99%以上純粋、2時間水素化カルシウムで還流し、次いで「トラップ・ツー・トラップ」で蒸留し、+4℃の窒素雰囲気下で保管、
-ギ酸(HCOOH)(Aldrich):純度95%以上、そのまま使用、
-p-トルエンスルホン酸・1水和物(Aldrich):98.5%以上純粋、そのまま使用、
-フッ化水素酸(HF)(40%水溶液)(Aldrich):そのまま使用、
-硫酸(HSO)(96%水溶液)(Aldrich):そのまま使用、または蒸留水を用いて希釈(1/5)、
-硝酸(HNO)(70%水溶液)(Aldrich):そのまま使用、
-炭酸ナトリウム(NaCO)(Aldrich):そのまま使用、
-硝酸銀(AgNO)(Aldrich):そのまま使用、
-重水素化テトラクロロエチレン(CCl):そのまま使用、
-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)(Acros):そのまま使用される。
【0060】
以下にて報告されている分析および特性方法を使用した。
【0061】
元素分析
a)Feの測定
本発明の目的のため使用される、重量にてピリジル鉄錯体中の鉄(Fe)の量を測定する目的で、ドライボックス中で窒素流下にて操作しながら、サンプルの約30mg~50mgである、正確に量ったアリコートを、1mlの40%フッ化水素酸(HF)混合物、0.25mlの96%硫酸(HSO)および1mlの70%硝酸(HNO)と共に、30mlの白金るつぼ中に入れた。次いで、白色の硫黄蒸気が生じる(約+200℃)まで、該るつぼを温度を上げながらホットプレート上で加熱した。それにより得られた混合物を周囲温度まで冷却し、1mlの70%の硝酸(HNO)を添加し、その後蒸気が生じるまで再度置いた。該手順を更に2回繰り返した後、透明でほぼ無色の溶液を得た。次いで、1mlの硝酸(HNO)および約15mlの水を添加して冷却し、次いで約30分間、+80℃まで加熱した。こうして調製されたサンプルを、計量して約50gとするまでMilliQ純水で希釈し、これを正確に計量して、既知濃度の溶液と比較するThermo Optek IRIS Advantage Duo ICP-OES(プラズマ発光分析)分析装置を用いて機器分析測定を実施するのに使用する溶液を得た。この目的のため、認証溶液を重量で希釈することでキャリブレーション溶液を測定し、分析試料ごとに0ppm~10ppmの範囲で検量線を処理した。
【0062】
次いで、吸光光度測定の実施前に、参照濃度に近い濃度を得るため、上記のように調製されたサンプル溶液を重量で再度希釈した。全サンプルを2倍量で調製した。個々の繰り返し試験のデータが平均値に比べて2%大きい相対偏差を有さない場合でも、結果は許容されると見なされた。
【0063】
b)塩素の測定
当該目的のため、本発明の目的のために使用されているピリジル鉄錯体のサンプルを、窒素流下にてドライボックス中で、100mlのガラス製ビーカー中に約30mg~50mg正確に計量した。2gの炭酸ナトリウム(NaCO)と、ドライボックス外にて50mlのMilliQ水を添加した。これを磁気撹拌させながら、約30分間ホットプレート上にて沸騰させた。これを置いて冷却させ、次いで1/5に希釈した硫酸(HSO)を酸性反応を示すまで添加し、次いで、電位差滴定装置を用いて0.1Nの硝酸銀(AgNO)により滴定した。
【0064】
c)炭素、水素および窒素の測定
炭素、水素、窒素の測定は、本発明の目的のために使用されているピリジル鉄錯体において、および本発明の目的のために使用されている配位子において、Carlo Erba自動分析器モジュール1106を用いて実施された。
【0065】
13C-NMRおよびH-NMRスペクトル
13C-NMRおよびH-NMRスペクトルは、+103℃の重水素化テトラクロロエチレン(CCl)および内部標準としてヘキサメチルジシラザン(HDMS)を使用した、核磁気共鳴分光装置モジュール(Bruker Avance 400)を用いて記録された。この目的のため、ポリマー溶液は、ポリマー溶液の総量に対し、10重量%と等しい濃度で用いられた。
【0066】
得られたポリイソプレンの微細構造[すなわち、シス-1,4(%)および3,4(%)単位含有量]は、上で言及されているRicci G.et al,「Macromolecules」(2009),Vol.42(23),pag.9263-9267による文献中で報告された指示に基づく前述のスペクトルの分析を用いて測定された。
【0067】
上記の目的のため、
図1は、例として、以下にて報告されている実施例9にて得られ、当該ポリイソプレンの微細構造を測定することができる、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンのH-NMRスペクトルを示す。詳細には、シス-1,4および3,4構造を有するイソプレン単位のオレフィンプロトンに関連するオレフィン領域のみの微細構造である。すなわち、3,4構造を有する単位の比率を、次の等式から得ることができる。
[数1]
% 3,4=[B/(2A+B)]×100
式中、Bは、3,4構造を有する2つのオレフィンプロトンに関連したピーク面積を表し、Aは、シス-1,4構造を有する単位のオレフィンプロトンのみに関連したピーク面積を表す。
図2は、例として、以下にて報告されている実施例9にて得られ、主に交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの13C-NMRスペクトル(オレフィン領域)を示す。こうしたスペクトルから、シス-1,4および3,4構造を有するイソプレン単位がポリマー鎖に沿って分布されるような方法を測定することが可能である。実際、3,4構造を有するイソプレン単位の2つのオレフィンの各炭素について単一のシグナルが観察されている。これはこうした3,4構造を有するイソプレン単位が単一の型の環境に遭遇し、交互シス-1,4-alt-3,4構造中にのみ正確に挿入されていることを指している(図3)。一方で、シス-1,4構造を有するイソプレン単位の2つのオレフィンの各炭素について4つのシグナルが観察されている。これは、こうしたシス-1,4構造を有するイソプレン単位が、4つの異なる環境に遭遇していることを指している(図3)。
【0068】
I.R.スペクトル
I.R.(FT-IR)スペクトルを、Thermo Nicolet Nexus 670分光光度計およびBruker IFS 48分光光度計を用いて記録した。
【0069】
得られたポリイソプレンのI.R.(FT-IR)スペクトルを、臭化カリウム(KBr)錠剤を使用したポリマーフィルムの分析を行うことで測定した。当該フィルムは、分析されるポリマーを、高温の1,2-ジクロロベンゼン中で溶液を堆積することにより得られる。分析されたポリマー溶液の濃度は、ポリマー溶液の総量に対し10重量%であった。
【0070】
分子量の測定
得られたポリイソプレン分子量(MW)の測定は、GPC(「ゲル浸透クロマトグラフィー」)を用いて実施された。これは、2つの検出系統である屈折率(RI)および次の条件の下にて操作する粘度計を使用するWaters CorporationによるWaters(登録商標)Alliance(登録商標)GPC/V 2000 Systemを用いた。
-2つの、PLゲル混合-Bカラム、
-溶媒/溶離液:o-ジクロロベンゼン(Aldrich)、
-流量:0.8ml/分、
-温度:+145℃、
-分子質量計算:ユニバーサルキャリブレーション法。
【0071】
重量平均分子量(M)およびM/M(M=数平均分子量)比に対応している多分散指数(PDI)が報告されている。
【0072】
示差走査熱量測定(DSC)
得られたポリマーのガラス転移温度(T)を測定する目的のため、示差走査熱量測定分析は、Perkin Elmer Pyris示差走査熱量測定計を用いて実施された。上記の目的のため、不活性窒素雰囲気中で、+1℃/分~+20℃/分の範囲の走査速度で5mgのポリマーを分析した。
【0073】
実施例1
式(L1)を有する配位子の合成
【化4】
【0074】
250mlのフラスコ中に、2-アセチルピリジン(9.1g、75mmol)および数滴のギ酸を、メタノール(100ml)中o-トルイジン(8g、75mmol)溶液に添加した。得られた混合物を、周囲温度にて48時間撹拌し続けた。それに続いて、溶媒を真空中で蒸発させることで除去し、得られた残留物を、シリカゲルクロマトグラフィーのカラム上で溶出[溶離液:比率が99/1(v/v)であるヘプタン/酢酸エチルの混合物]することで精製し、式(L1)を有する配位子に相当する、6.5gの淡黄色の油(収率=40%)を得た。
分子量(MW):210.28。
【0075】
元素分析[検出(C1414用に計算)]:C:80.00%(79.97%)、H:6.77%(6.71%)、N:13.41%(13.32%)。
H-NMR(CDCl,δ ppm)8.70(m,1H,HPy),8.41(m,1H HPy),7.80(td,1H,HPy),7.39(dt,1H,HPy),7.27-7,18(m,2H,Ph),7.02(m,1H,Ph),6.69(d,1H,Ph),2.30(s,3H,N=C-CH),2.10(s,3H,Ph-CH)。
【0076】
実施例2
式(L2)を有する配位子の合成
【化5】
【0077】
250mlのフラスコ中に、2-アセチルピリジン(3.78g、31.1mmol)およびp-トルエンスルホン酸・1水和物(0.15g、0.81mmol)を、トルエン(20ml)中2-イソ-プロピルアニリン(4.20g、31.1mmol)溶液を添加した。得られた混合物を、還流下にて2時間加熱した。それに続いて、溶媒を真空中で蒸発させることで除去し、得られた残留物を、真空蒸留によって精製し、式(L2)を有する配位子に相当する5.89gのオレンジ色の油(収率=79%)を得た。
分子量(MW):238.33。
【0078】
元素分析[検出(C1618)]:C:80.17%(80.63%)、H:7.80%(7.61%)、N;11.91%(11.75%)。
H-NMR(CDCl,δ ppm)8.71(d,1H),8.37(d,1H),7.81(t,1H),7.38(m,2H),7.22(t,1H),7.15(t,1H),6.67(d,1H),3.05(sept,1H),2.39(s,3H),1.23(d,6H)。
【0079】
実施例3
FeCl(L1)[サンプル MG213]の合成
【化6】
【0080】
100mlのフラスコ中に、実施例1に記載されている通りに得た、トルエン(20ml)中、式(L1)を有する配位子の溶液(293mg、1.39mmol)に、塩化鉄(III)(FeCl)(225mg、1.39mmol、分子比 L1/Fe=1)を添加した。得られた混合物を、周囲温度で3時間撹拌し続けた。次いで上澄みを減圧下で蒸発させることで除去し、得られた残留物をヘプタンで洗浄した(2×15ml)。その後周囲温度にて真空下で乾燥させ、FeCl(L1)錯体に相当する、396mgの茶色の固体生成物を得た。これは、導入された塩化鉄(III)(FeCl)に対し、76%の変換率に等しい。
分子量(MW):372.48。
【0081】
元素分析[検出(C1414ClFeN用に計算)]:C:45.00%(45.14%)、H:3.69%(3.79%)、N:7.69%(7.52%)、Cl:28.96%(28.55%)、Fe:15.09%(14.99%)。
【0082】
実施例4
FeCl(L2)[サンプル MG208]の合成
【化7】
【0083】
100mlのフラスコ中に、実施例2に記載されている通りに得た、トルエン(20ml)中、式(L2)を有する配位子の溶液(514mg、2.16mmol)に、塩化鉄(III)(FeCl)(350mg、2.16mmol、分子比 L2/Fe=1)を添加した。得られた混合物を、周囲温度で3時間撹拌し続けた。次いで上澄みを減圧下で蒸発させることで除去し、得られた残留物をヘプタンで洗浄した(2×15ml)。その後周囲温度にて真空下で乾燥させ、FeCl(L2)錯体に相当する、821mgの赤色の固体生成物を得た。これは、導入された塩化鉄(III)(FeCl)に対し、95%の変換率に等しい。
分子量(MW):400.53。
【0084】
元素分析[検出(C1618ClFeN用に計算)]:C:48.09%(47.97%)、H:4.71%(4.53%)、N:6.65%(6.99%)、Cl:25.96%(26.55%)、Fe:14.08%(13.94%)。
【0085】
実施例5
FeCl(L1)[サンプル MG215]の合成
【化8】
【0086】
100mlのフラスコ中に、実施例1に記載されている通りに得た、トルエン(20ml)中、式(L1)を有する配位子の溶液(527mg、2.51mmol)に、塩化鉄(II)(FeCl)(319mg、2.51mmol、分子比 L1/Fe=1)を添加した。得られた混合物を、+100℃で3時間撹拌し続けた。次いで上澄みを減圧下で蒸発させることで除去し、得られた残留物をヘプタンで洗浄した(2×15ml)。その後周囲温度にて真空下で乾燥させ、FeCl(L1)錯体に相当する、521mgの淡青色の固体生成物を得た。これは、導入された塩化鉄(II)(FeCl)に対し、62%の変換率に等しい。
分子量(MW):337.03。
【0087】
元素分析[検出(C1414ClFeN用に計算)]:C:49.10%(49.89%)、H:4.38%(4.19%)、N:8.21%(8.31%)、Cl:21.42%(21.04%)、Fe:16.82%(16.57%)。
【0088】
実施例6
FeCl(L2)[サンプル MG212]の合成
【化9】
【0089】
100mlのフラスコ中に、実施例2に記載されている通りに得た、トルエン(20ml)中、式(L2)を有する配位子の溶液(540mg、2.27mmol)に、塩化鉄(II)(FeCl)(288mg、2.27mmol、分子比 L2/Fe=1)を添加した。得られた混合物を、+100℃で3時間撹拌し続けた。次いで上澄みを減圧下で蒸発させることで除去し、得られた残留物をヘプタンで洗浄した(2×15ml)。その後周囲温度にて真空下で乾燥させ、FeCl(L2)錯体に相当する、665mgの淡青色の固体生成物を得た。これは、導入された塩化鉄(II)(FeCl)に対し、80%の変換率に等しい。
分子量(MW):365.08。
【0090】
元素分析[検出(C1618ClFeN用に計算)]:C:52.12%(52.64%)、H:4.65%(4.96%)、N:7.26%(7.67%)、Cl:19.02%(19.42%)、Fe:15.04%(15.30%)。
【0091】
実施例7(ZG189)
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、14mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+20℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.315ml、5×10-4mol、約0.029gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L1)錯体[サンプル MG215](濃度が2mg/mlである1.7mlのトルエン溶液、1×10-5、約3.37mgに等しい)を実施例5に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて5分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、主に交互シス-1,4/3,4構造を有し、100%と同等の変換率である1.36gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0092】
図4は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0093】
図5は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0094】
実施例8(ZG188)
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、13.82mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+20℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.315ml、5×10-4mol、約0.029gに等しい)を添加し、それに続いて、続いてFeCl(L2)錯体[サンプル MG212](濃度が2mg/mlである1.87mlのトルエン溶液、1×10-5、約3.74mgに等しい)を実施例6に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて10分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、主に交互シス-1,4/3,4構造を有し、100%と同等の変換率である1.36gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0095】
図6は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0096】
図7は、得られたポリイソプレンのH-NMR(下部)および13C-NMR(上部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0097】
実施例9(IP294)
約3.4gに等しい5mlのイソプレンを、100mlの試験管に入れた。それに続いて、31.3mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を-10℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.13ml、2×10-4mol、約0.012gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L2)錯体[サンプル MG212](濃度が2mg/mlである3.6mlのトルエン溶液、2×10-5、約7.3mgに等しい)を実施例6に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて240分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、交互シス-1,4/3,4構造を有し、73.2%と同等の変換率である2.49gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0098】
図8は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0099】
図9は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0100】
実施例10(IP295)
約3.4gに等しい5mlのイソプレンを、100mlの試験管に入れた。それに続いて、31.3mlのヘプタンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+25℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.13ml、2×10-4mol、約0.012gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L2)錯体[サンプル MG212](濃度が2mg/mlである3.6mlのトルエン溶液、2×10-5、約7.3mgに等しい)を実施例6に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて360分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、交互シス-1,4/3,4構造を有し、100%と同等の変換率である3.4gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0101】
図10は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0102】
図11は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0103】
実施例11(IP205/A)
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、13.82mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+20℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.315ml、5×10-4mol、0.029gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L1)錯体[サンプル MG213](濃度が2mg/mlである1.87mlのトルエン溶液、1×10-5、約3.74mgに等しい)を実施例3に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて5分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、交互シス-1,4/3,4構造を有し、100%と同等の変換率である1.36gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0104】
図12は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0105】
図13は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0106】
実施例12(IP206/A)
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、13.72mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+20℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.315ml、5×10-4mol、約0.029gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L2)錯体[サンプル MG208](濃度が2mg/mlである2mlのトルエン溶液、1×10-5、約4mgに等しい)を実施例4に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて5分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、交互シス-1,4/3,4構造を有し、100%と同等の変換率である1.36gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0107】
図14は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0108】
図15は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0109】
実施例13(IP271)
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、13.9mlのヘプタンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+20℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.063ml、1×10-4mol、約0.058gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L2)錯体[サンプル MG208](濃度が2mg/mlである2mlのトルエン溶液、1×10-5、約4mgに等しい)を実施例4に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて20分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、交互シス-1,4/3,4構造を有し、40%と同等の変換率である0.544gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0110】
図16は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0111】
図17は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0112】
実施例14(IP269)
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、13.4mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+20℃とした。次いで、トリ-イソ-ブチルアルミニウム(TIBA)(0.07ml、3×10-4mol、約0.0595gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(L2)錯体[サンプル MG208](濃度が2mg/mlである1.87mlのトルエン溶液、1×10-5、約3.74mgに等しい)を実施例4に記載されている通りに得た。全てを周囲温度にて2880分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、交互シス-1,4/3,4構造を有し、35.4%と同等の変換率である0.481gのポリイソプレンを得た。プロセスおよび得られたポリイソプレンの更なる特性は、表1に報告されている。
【0113】
図18は、得られたポリイソプレンのFT-IRスペクトルを示す。
【0114】
図19は、得られたポリイソプレンのH-NMR(上部)および13C-NMR(下部)スペクトルを示す。表1Aは、13C-NMRスペクトルに存在する、異なるピークの特性を示す。
【0115】
実施例15
触媒系AlEtCl/Nd(OCOC15/Al(Bu)の合成
触媒系AlEtCl/Nd(OCOC15/Al(Bu)を、上に言及されている通り、Ricci G.et al,「Polymer Communications」(1987),Vol.28,Issue 8,pag.223-226に記載されている通りに調製した。
【0116】
上記の目的のため、2-エチルヘキサン酸ネオジム[Nd(OCOC15](2.38×10-4mol、0.136グラム)およびヘプタン(9.6ml)を25mlの試験管中に入れた。それにより得られた溶液を、周囲温度にて1分間、磁気撹拌し続けた。それに続いて、ヘプタン中ジエチルアルミニウムクロリド(AlEtCl)[7.5×10-3mol、0.09グラム、0.47mlのヘプタン溶液、1/5(v/v)]を1滴ずつ添加した。白色/淡青色の懸濁液が形成され、15分間、勢いよく撹拌させた状態を維持した。それに続いて、トリ-イソ-ブチルアルミニウム(TIBA)(7.1×10-3mol、1.42グラム、1.8ml)を添加した。全てを周囲温度にて24時間、撹拌し続け、0.02Mに等しいネオジムの濃度を有する、触媒系AlEtCl/Nd(OCOC15/Al(Bu)の溶液を得た。
【0117】
実施例16(比較)
主にシス-1,4構造を有するポリイソプレンの合成
約1.36gに等しい2mlのイソプレンを、25mlの試験管に入れた。それに続いて、15.5mlのヘプタンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+0℃とした。次いで、触媒系AlEtCl/Nd(OCOC15/Al(Bu)(0.02Mに等しいネオジム濃度を有する、0.25mlのヘプタン溶液、5×10-6mol)を添加し、実施例15に記載されているものと同様に得た。全てを+0℃で60分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、主にシス-1,4構造(≧97%)を有し、75.7%と同等の変換率である、1.03gのポリイソプレンを得た。
【0118】
図1Aは、得られたポリイソプレンの13C-NMRスペクトルを報告している。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0119】
実施例17(比較)
主にシンジオタクチック3,4構造を有するポリイソプレンの合成
主にシンジオタクチック3,4構造を有するポリイソプレンは、上に言及されているRicci G.et al,「Journal of Molecular Catatalysis A:Chemical」(2003),204-205,pag.287-293に記載されている通りに操作することにより得られた。
【0120】
上記の目的のため、約1.36gに等しい2mlのイソプレンおよびトルエン(10.9ml)を、25mlの試験管に入れた。それにより得られた溶液の温度を、-30℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(3.8ml、6×10-3mol、約0.348gに等しい)を添加し、それに続いて、FeCl(bipy)錯体(2mg/mlの濃度である、1.3mlのトルエン溶液、6×10-6mol、約2.6mgに等しい)。全てを-30℃で80分間、磁気撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する2mlのメタノールを添加することで重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する40mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、主にシンジオタクチック3,4構造(≧80%)を有し、90.5%と同等の変換率である、1.233gのポリイソプレンを得た。
【0121】
図1Aは、得られたポリイソプレンの13C-NMRスペクトルを報告している。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0122】
実施例18(比較)
完全交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンの合成
完全交互シス-1,4-alt-3,4構造を有するポリイソプレンは、上に言及されているように、Ricci G.et al,「Macromolecules」(2009),Vol.42(23),pag.9263-9267に記載されているように操作することにより得られた。
【0123】
上記の目的のため、約3.4gに等しい5mlのイソプレンを50mlの試験管に入れた。それに続いて、6.6mlのトルエンを添加し、それにより得られた溶液の温度を+22℃とした。次いで、トルエン中メチルアルミノキサン(MAO)溶液(0.63ml、1×10-3mol、約0.058gに等しい)を添加し、それに続いて、CoCl(PPrPh錯体(1mg/mlの濃度である、5.9mlのトルエン溶液、1×10-5、約5.9mgに等しい)を添加した。全てを周囲温度にて140分間、撹拌し続けた。次いで、数滴の塩酸を含有する5mlのメタノールを添加することにより重合を停止させた。次いで、得られたポリマーを、4%のIrganox(登録商標)1076抗酸化剤(Ciba)を含有する60mlのメタノール溶液を添加することにより凝固させ、完全交互シス-1,4-alt-3,4構造を有し、66.5%と同等の変換率である、2.26グラムのポリイソプレンを得た。
【0124】
図1Aは、得られたポリイソプレンの13C-NMRスペクトルを報告している。表1Aは、13C-NMRスペクトルのオレフィン領域に存在する、異なるピークの特性を示す。
【0125】
【表1】
【表1A】
図1
図1A
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19