(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】貫通防止保護体を備えた傘型フィルタ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
A61F2/01
(21)【出願番号】P 2020557895
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 FR2019050934
(87)【国際公開番号】W WO2019202274
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501482787
【氏名又は名称】アーエルエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ニゴン,アラン
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02997933(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0049238(US,A1)
【文献】特表2016-509909(JP,A)
【文献】特表2016-502878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大静脈フィルタ(1)であって、
大静脈壁に当該フィルタを係留するための少なくとも2つの係留分岐(11)、
各々が固定端と自由端とを含む3つの短いセンタリング分岐(12)、および
各々が固定端および自由端を有する3つの長いセンタリング分岐(13)を含み、
前記係留分岐は、固定端(111)および自由端(112)を含み、
前記係留分岐の前記固定端は互いに固定され且つ前記自由端は外側に向けられたフック(113)で終端し、
前記係留分岐の各々は、貫通防止保護体(114)を備え、
前記貫通防止保護体は、990~1210μmの等価直径を有し且つ前記フックに近接して前記係留分岐上に形成されたループであ
り、
前記3つの短いセンタリング分岐の固定端は、前記係留分岐の前記固定端に固定され、
前記3つの短いセンタリング分岐の自由端は、非外傷性であり、
前記3つの長いセンタリング分岐固定端は、前記係留分岐の前記固定端に固定されており、
前記3つの短いセンタリング分岐は前記係留分岐よりも短く、
前記3つの長いセンタリング分岐は前記係留分岐よりも長い、大静脈フィルタ(1)。
【請求項2】
少なくとも2つの係留分岐は異なる長さを有する、請求項1に記載の大静脈フィルタ。
【請求項3】
前記非外傷性自由端は内側に向けられたフック(121)を有する、請求項
1または2に記載の大静脈フィルタ。
【請求項4】
前記短いセンタリング分岐は等しい長さまたは異なる長さを有している、請求項
1~3のいずれか1項に記載の大静脈フィルタ。
【請求項5】
固定端と自由端とを有する接触分岐をさらに備え、
当該固定端は前記係留分岐の前記固定端に固定され、且つ
前記自由端は停止部を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の大静脈フィルタ。
【請求項6】
前記長いセンタリング分岐(13)のうちの1つの前記自由端は、停止部(131)を備える、請求項
1~4のいずれか1項に記載の大静脈フィルタ。
【請求項7】
前記停止部は、対応する分岐から形成されたループである、請求項
5または6に記載の大静脈フィルタ。
【請求項8】
ステンレス鋼製である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の大静脈フィルタ。
【請求項9】
前記ステンレス鋼は、INOX 316 LVMである、請求項
8に記載の大静脈フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は医療装置の技術分野に関し、より詳細には、血管用フィルタおよび特に大静脈フィルタに関する。
【0002】
〔従来技術〕
移動性深部静脈血栓症の時おりの致命的な結果を防止するために、フィルタを大静脈の内側、特にその下部に配置することができる。これは、これらの血栓が一般的に下肢の静脈壁に形成されてから、裂けて下大静脈を通って心臓に向かって上がってくるためである。血栓が肺に達すると、それらは肺動脈を塞いで肺塞栓症を引き起こし、致命的になることがある。
【0003】
大静脈フィルタは、血栓が肺に到達する前に、その前進を停止させる障害物を作り出すことによって、血栓を停止させることを可能にする。
【0004】
大静脈フィルタの一例は、傘型の大静脈フィルタである。このタイプのフィルタは一般に、各々が固定端と自由端とを含む分岐を備える。分岐の固定端は、特に丸みを帯びた端部を備えた概して円筒形の形状の基部に圧着することによって、互いに固定される。係留分岐と呼ばれる分岐は、したがって、傘のリブのように互いに離れるように移動しながら基部から延びる。このように、係留分岐は、円錐またはタマネギ型ドームの形状を有する外側エンベロープをフィルタに与える。言い換えれば、このエンベロープは、この軸と交差している直線または軸に近い点で生じ且つそこから離れるように移動しながら延びる曲線の軸の周りの回転によって形成される。
【0005】
効果的であるために、傘型のこれらの大静脈フィルタは、大静脈壁に係留されなければならない。この目的のために、自由端は、外側に向けられたフックで終端する。これらのフックは、フィルタの位置を固定するために、大静脈壁に係留される。
【0006】
残念ながら、場合によっては、係留分岐は大静脈壁を貫通し、隣接する器官に損傷を引き起こし、これは内出血を引き起こすことがあり、これは患者にとって深刻な結果をもたらすことがある。特に、遡及的レビュー、J Vase Interv Radiol 2012; 23:1557-1563における“Retrospective Review of 120 Celect Inferior Vena Cava Filter Retrievals:
Experience at a Single Institution”において、Zhou D.Y.および彼のチームは、フィルタが抜去され且つ前後方向撮影による大静脈造影図が利用可能であった115名の患者において86.1%の貫通率が、フィルタが抜去され且つトモデンシトメトリーイメージが利用可能であった38名の患者において65.8%の貫通率を観察することができ、これはフィルタが留置された部位に隣接する器官に貫通が到達していた9名を含んだ。著者らは、これらの数値はフィルタが設置され且つフィルタが抜去されなかった患者を考慮に入れていないが、使用したフィルタは、フィルタが下大静脈内に残存した期間と相関した高い貫通率を有していたと結論付けた。
【0007】
さらに、これらの傘型大静脈フィルタは、大静脈の局所軸に関して正確に位置合わせされることが重要であり、すなわち、これらの傘型大静脈フィルタのエンベロープの回転軸の方向は、大静脈の局所軸の方向とあまり異なっていてはならない。フィルタの傾きがある度合いを超えると、フィルタの有効度が低下することがある。
【0008】
例えば、Gunther Tulipフィルタの研究:“Analysis of Tilt of the Gunther Tulip Filter” J Vasc Interv Radiol 2008; 19:669-676において、Sag A.A.および彼のチームは、フィルタが抜去された175名のうち159名の患者が、平均傾斜度が7.1°±5.8であるフィルタの傾きを示したことを観察した。
【0009】
〔発明の提示〕
したがって、本発明の目的の1つは、上述の従来技術のフィルタの欠点の内の少なくとも1つを克服することである。
【0010】
この目的のために、本発明は、血管壁にフィルタを係留するための少なくとも2つの係留分岐を含み、当該係留分岐は固定端および自由端を含み、係留分岐の固定端は互いに固定され且つ自由端は外側に向けられたフックで終端し、各係留分岐は貫通防止保護体を備える、血管フィルタ、および特に大静脈フィルタを提供する。
【0011】
貫通防止保護体のおかげで、フィルタが配置される血管壁のいかなる穿孔も回避される。
【0012】
フィルタの他の任意選択的且つ非限定的な特徴を以下に提示する。
【0013】
貫通防止保護体は、フックに近接して係留分岐上に形成された、ループ、ジグザグまたは起伏であってもよい。貫通防止保護体は、990~1210μmの等価直径を有するループであってもよい。
【0014】
少なくとも2つの係留分岐は、異なる長さを有していてもよい。
【0015】
フィルタは、3つの短いセンタリング分岐をさらに備えてもよく、各分岐は固定端および自由端を備え、当該固定端は係留分岐の固定端に固定され、自由端は非外傷性である。3つの短いセンタリング分岐は、係留分岐よりも短くてもよい。非外傷性自由端は、内側に向けられたフックを有していてもよい。短いセンタリング分岐は、等しい長さまたは異なる長さであってもよい。
【0016】
フィルタは、3つの長いセンタリング分岐をさらに備えてもよく、各分岐は固定端および自由端を備え、当該固定端は係留分岐の固定端に固定される。3つの長いセンタリング分岐は、係留分岐よりも長くてもよい。
【0017】
フィルタはまた、固定端と自由端とを有する接触分岐を備えてもよい。前記固定端は係留分岐の固定端に固定され、且つ前記自由端は停止部を含む。停止部は、接触分岐から形成されたループであってもよい。
【0018】
長いセンタリング分岐のうちの1つの自由端が停止部を備えてもよい。停止部は、長いセンタリング分岐から形成されたループであってもよい。
【0019】
フィルタは、全体的にステンレス鋼製、特にINOX 316 LVM製であってもよい。
【0020】
本発明はまた、フィルタを血管壁に係留するための少なくとも2つの係留分岐を備え、当該係留分岐は固定端と自由端とを備え、当該係留分岐の固定端は互いに固定され且つ外側に向けられたフックで終端しており、当該係留分岐よりも短い3つのセンタリング分岐を備え、各々は固定端と自由端とを備え、固定端は係留分岐の固定端に固定され、自由端は非外傷性である、血管フィルタ、および特に大静脈フィルタを提供する。
【0021】
これらのセンタリング分岐は、係留分岐よりも短いので、その理想的な位置に関するフィルタの傾斜は限定され得る。
【0022】
〔図面〕
他の目的、特徴および利点は、非限定的に与えられた図面を参照して、一例として、以下の例示的な説明を読むことから明らかになるであろう:
図1は、本発明によるフィルタの一例の4分の3の説明図である;
図2~
図5は、
図1のフィルタの貫通防止保護体の例の拡大図である;
図6は、
図1のフィルタをカテーテル内に挿入するためのアダプタの図である。
【0023】
〔説明〕
本発明による傘型の血管フィルタ、特に大静脈フィルタを、
図1~
図5を参照して以下に説明する。
【0024】
傘型フィルタ1は複数の分岐11、12、13を含むフィルタを意味し、各分岐は固定端と自由端とを有する。分岐の固定端は、形状が概して球、紡錘、円形基部を備えた円筒、ノーズコーン等である部材15の手段によって互いに固定されており、エッジは優先的に丸められている。固定は通常、レーザー溶接を伴うかまたはレーザー溶接を伴わない圧着によって行われる。分岐11、12、13は、固定点から始まって、互いに徐々にさらに離れていく。分岐11、12、13の各々は通常、円形断面を有する。分岐11、12、13は互いに独立して延在しており、直線、凸状線、凹状線、凹状の固定端に近い第1の部分と凸状の自由端に近い第2の部分とを備えた変曲点を有する線、凸状の自由端に近い第1の部分と凹状の自由端に近い第2の部分とを有する変曲点を有する線等を形成してもよい。線の凹所は、分岐によって形成されたオープンスペース、すなわち傘の内側に位置する観点から考慮される。フィルタは通常、長手方向軸を備える。長手方向軸は、分岐の延在軸の平均であり、分岐の延在軸は、その端部同士をつなぐ軸である。したがって、好ましくは、分岐によって形成された線上の2つの点が考慮される場合、固定端に近い点は自由端に近い点よりも長手方向軸から遠く離れていない。好ましくは、任意の分岐は、フィルタの長手方向軸と有利に交差する平面内に適合する線に追随することができる。分岐の形状についての上記の説明は、フックおよび貫通防止保護体、特に以下に説明する保護体を考慮に入れていない。
【0025】
本発明のフィルタ1は、血管壁にフィルタ1を係留するための少なくとも2個の係留分岐11(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個の係留分岐)を含み、係留分岐11は、固定端111および自由端112を含む。本発明のフィルタ1は、好ましくは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または少なくとも10個の係留分岐11を含む。
【0026】
係留分岐の固定端111は、部材15の手段によって互いに固定され、そして自由端112はフィルタ1を血管壁に係留することができるように、フィルタの外側に向けられたフック113で終端する。有利には、フック113は、400~1100μm、好ましくは750~950μmの等価直径を有する。本開示において、フックの「等価直径」という用語は、フックが、その端部から最初の極小曲率半径までにおいて内接可能な最小円の直径を意味しており、後者はゼロであり得る。
【0027】
係留分岐11の各々はさらに、貫通防止保護体114を含む。貫通防止保護体114は、フック113に近接して係留分岐自体によって形成されたループを含んでいてもよい(
図1および
図2参照)。本明細書において、用語「ループ」は、フックに近接してそれ自体で閉じる曲線を描く分岐によって採用された形態を示すものとして理解されるべきである。曲線がそれ自体で閉じる点において、分岐の2つの部分は接触していても接触していなくてもよく、好ましくは、それらは接触している。
【0028】
ループは、有利には、990~1210μm、好ましくは1100μm~1150μmの等価直径を有する。本開示において、ループの「等価直径」という用語は、最大の内側面積を有する平面上へのループの投影を内接させることができる最小の円の直径を示す。好ましくは、最大の内側面積を有する平面上へのループの投影の形状は、円である。
【0029】
2つの異なる分岐のループは、異なる直径であってもよい。あるいは、それらは同じ直径を有していてもよい。好ましくは、全ての分岐のループは、±10%の公差で同じ直径を有する。さらに好ましくは、全ての分岐のループは円である。
【0030】
2つの異なる分岐のループは、異なる形状を有していてもよい。あるいは、それらは同じ形状を有していてもよい。
【0031】
ループの数は例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つに増加させてもよい。1つよりも多いループが存在する場合、ループは、互いに隣接するか、または他のループと完全にもしくは部分的に重なるかのいずれかで配置されてもよい。この場合、上記の可能性とは別に、同じ分岐の全てのループは、異なる直径を有していてもよい。あるいは、それらは同じ直径を有していてもよい。好ましくは、全ての分岐のループは、±10%の公差で同じ直径を有する。さらに好ましくは、全ての分岐のループは円である。さらに、それらは異なる形態を有していてもよい。あるいは、それらは同じ形態を有していてもよい。
【0032】
貫通防止保護体の他の形状、例えば以下の形状も可能である:
- ジグザグ(鋸歯)形状、特に1周期、2周期、3周期またはそれより多い周期を有し、および/または頂点の角度は30°~90°、例えば40°、45°、50°、60°、70°、80°であり、および/または頂点間の幅は有利に990~1210μm、好ましくは1100μm~1150μmである(
図3および
図4)、並びに
- 波形(起伏)、特に1周期、2周期、3周期またはそれより多い周期を有し、および/または頂点間の幅は有利に990~1210μm、好ましくは1100μm~1150μmであり、および/または1~5mmの周期長である(
図5参照)。
【0033】
これらの形状は、フックに近接してループのように配置される。貫通防止保護体の大きさは、患者にとって安全且つ外傷が少ない除去とするために、フィルタの内皮化を回避することをとりわけ可能にする。
【0034】
少なくとも2つの係留分岐11は、異なる長さを有していてもよい。これにより、フィルタが以下に説明するように展開されるときに、そのフックが互いに引っ掛かることを回避することが可能になる。好ましくは、係留分岐は互いに異なる長さを有する。
【0035】
各係留分岐11が描く線は、上述した形状のうちの1つを有していてもよい。好ましくは、係留分岐11が描く線は凸状である。
【0036】
フィルタはまた、少なくとも3個の短いセンタリング分岐12(例えば、3個、4個、5個、6個の短いセンタリング分岐)を含んでもよい。それぞれの短いセンタリング分岐12が描く線は、上述した形状のうちの1つを有していてもよい。好ましくは、短いセンタリング分岐12が描く線は凸状である。短いセンタリング分岐12は、好ましくは係留分岐11よりも短い。好ましくは、35%~55%、さらに好ましくは40%~50%、さらに好ましくは約45%、最も短い係留分岐よりも短い。短いセンタリング分岐12は、異なる長さであっても等しい長さであってもよい。好ましくは、それらは等しい長さである。
【0037】
それぞれの短いセンタリング分岐12は固定端および自由端を有し、固定端は、特にピース15によって係留分岐の固定端に固定され、そして自由端は非外傷性である。
【0038】
自由端の非外傷性は、特に短いセンタリング分岐12の線が凸状であるときに、内側に向けられた短いフック121によって付与することができる。したがって、フックおいて分岐によって形成される曲線は、フィルタが所定の位置にあるときに血管壁に向けられ、それを傷つけることを回避する。有利には、フック121は、1500~1850μm、好ましくは1650~1750μmの等価直径を有する。
【0039】
変形例として、自由端の非外傷性の特徴は、短いセンタリング分岐12の線によって付与されてもよく、その結果、方向点の変化と、フィルタの長手方向軸と実質的に同一直線上にある自由端から始まる部分とを有する。
【0040】
フィルタはまた、少なくとも3つの長いセンタリング分岐13、好ましくは少なくとも4つ、少なくとも5つを含んでもよい。修飾語句「長い」は、短いセンタリング分岐12の修飾語句「短い」と比較されるべきである。好ましくは、3つの長いセンタリング分岐13は、係留分岐よりも長い(
図1において、長いセンタリング分岐の1つは、遠近法のために、より短く見える)。好ましくは、20%~35%、さらに好ましくは25%~30%、さらに好ましくは約27%、最も長い係留分岐11よりも長い。長いセンタリング分岐13は、異なる長さまたは等しい長さを有していてもよい。好ましくは、それらは、特にそれらがフィルタの内側に向けられたフックで終端するとき、等しい長さを有する。
【0041】
長いセンタリング分岐13の各々は、固定端と自由端とを有し、固定端は、特に部材15を介して、係留分岐11の固定端に固定されている。
【0042】
各々の長いセンタリング分岐13が描く線は、上述した形状のうちの1つを有していてもよい。好ましくは、長いセンタリング分岐13が描く線は屈曲点を有し、固定端と屈曲点との間の凸部と屈曲点と自由端との間の凹部とを備えている。
【0043】
有利には、長いセンタリング分岐13の少なくとも1つの自由端は、停止部131を含む。停止部131は、フィルタ1が血管内に配置されたときに、フィルタ1を特に大腿部に押し込むことを可能にする。あるいはフィルタ1はまた、固定端と自由端とを有する接触分岐を備え、固定端は特に部材15を介して係留分岐11の固定端に固定され、且つ自由端は停止部を備える。両方の場合において、停止部131は、例えば、対応する分岐によって形成されるループであってもよい。好ましくは、停止部を形成するループは、1700μm~2200μmの等価直径を有する。
【0044】
長いセンタリング分岐13と短いセンタリング分岐12との組み合わせは、フィルタ1が配置される血管の局所軸に対するその軸の傾きを制限または防止しながら、血管壁に対してフィルタを中央に置くことを可能にする。
【0045】
フィルタの全ての分岐11、12、13は、有利には0.250~0.350mm、好ましくは0.29~0.31mm、さらに好ましくは0.295~0.305mmの等価直径を有する断面を有する。本開示において、分岐の断面の「等価直径」という用語は、分岐の断面を内接させることができる最小円の直径を示す。好ましくは、フィルタの各分岐は、その全長にわたって同じ等価直径を有する断面を有する。さらに好ましくは、フィルタの全ての分岐は、同じ等価直径を有する断面を有する。有利には、分岐の断面は円盤状である。
【0046】
好ましくは、フィルタ1全体は、ステンレス鋼製、好ましくはINOX 316 LVM製である。
【0047】
好ましくは、フィルタ1は、4.5~6.5cm、さらに好ましくは5~6cm、例えば約5.5cmの長手方向の長さを有する。フィルタの分岐のスパン、すなわち、フィルタの長手方向軸上に中心が位置合わせされ、そしてフィルタの長手方向軸に垂直な平面上で且つそれと同一直線上への分岐のすべての投影を包含する最小円の直径は、好ましくは4~6cm、さらに好ましくは4.5~5.5cm、例えば約5cmである。
【0048】
上記の説明は、その外部の別の要素によって制約されない場合のフィルタに対応する。
【0049】
それが血管内に挿入されるとき、フィルタの分岐11、12、13は、まず、例えばアダプタ2の手段によって折り畳まれる。このようなアダプタ2の例(
図6)は、その頂点で切り取られ、円筒部側に大きな開口部23と円錐台側に小さな開口部24とを有する中空の円錐部22によって延ばされた中空の円形基部を有する円筒部21を含む。円筒部21の内面は、円錐部22の内面と連続している。円筒部21の内径は、フィルタ1が制約されすぎないまたはまったく拘束されないために十分に大きい。円錐の頂点における角度は、好ましくは50°~60°、さらに好ましくは53°~58°、例えば56°である。円錐は、最小開口部における内径が2mm~3mm、好ましくは2.4~2.6mmであるように切り取られている。円錐と切取り部のレベルとの組合せは、フィルタの自由端が円錐の頂点に向けられるようにフィルタがアダプタの内側に配置されるとき、およびフィルタがより小さい開口部24を通ってアダプタ2の内側に押し込められるときに、フィルタの分岐が折り畳まれることを可能にする。その結果、フィルタをカテーテルの内側に押し込むことができる。この目的のために、アダプタ2はまた、アダプタ2をカテーテルに接続するための円錐の切取り部にコネクタ25を備える。コネクタ25は、その直径がアダプタ2の最小開口部24の直径と少なくとも等しい開口部251を備える。コネクタの開口部251は、カテーテル、特に7Fカテーテルの開口内に現れるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本発明によるフィルタの一例の4分の3の説明図である。
【
図2】
図1のフィルタの貫通防止保護体の例の拡大図である。
【
図3】
図1のフィルタの貫通防止保護体の例の拡大図である。
【
図4】
図1のフィルタの貫通防止保護体の例の拡大図である。
【
図5】
図1のフィルタの貫通防止保護体の例の拡大図である。
【
図6】
図6は、
図1のフィルタをカテーテル内に挿入するためのアダプタの図である。