(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/571 20210101AFI20230724BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230724BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230724BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20230724BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20230724BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230724BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20230724BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/229 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20230724BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20230724BHJP
【FI】
H01M50/571
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6554
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M50/204 401H
H01M50/211
H01M50/224
H01M50/229
H01M50/242
H01M50/55 301
H01M50/293
(21)【出願番号】P 2021018119
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真史
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-210619(JP,A)
【文献】特表2020-532628(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173860(WO,A1)
【文献】特開2004-087438(JP,A)
【文献】特表2019-522322(JP,A)
【文献】特開2015-022935(JP,A)
【文献】特開2010-010381(JP,A)
【文献】特開2017-010944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204 - 242
H01M 50/289 - 293
H01M 50/543 - 567
H01M 50/571
H01M 10/613
H01M 10/6554
H01M 10/653
H01M 10/647
H01M 10/6556
H01M 10/6567
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池が所定の積層方向に沿って積層された積層体と、
該積層体を収容する筐体と、
を備えた組電池であって、
前記単電池は、正極および負極を備えた電極体と、該電極体を収容する外装体とを備えており、
該外装体の外部には、該正極および該負極とそれぞれ電気的に接続された正極端子および負極端子が配置されており、
前記筐体の内部には、絶縁性を有する絶縁部材が配置されており、
ここで、前記積層方向において隣接する単電池間には、一方の単電池の前記正極端子および他方の単電池の前記負極端子の少なくとも一部分どうしが接合された正負極端子接合部が存在しており、該正負極端子接合部は、外部からの液体の侵入を防止するために前記絶縁部材により埋設されて
おり、
前記絶縁部材は、JISK7209:2000に基づいて測定される吸水率が1.0%以下である、メラミン樹脂および/またはフッ素樹脂から構成されている、組電池。
【請求項2】
前記外装体は、一対の矩形状の幅広面を備えており、
該幅広面の一の短辺側あるいは長辺側に、前記正極端子および前記負極端子が配置されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記絶縁部材は前記筐体の内壁に接している、請求項1または2に記載の組電池。
【請求項4】
前記絶縁部材
は、さらに熱伝導性を有するフィラー部
材を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項5】
前記フィラー部材はアルミナを含む、請求項4に記載の組電池。
【請求項6】
前記筐体は、アルミニウムまたはアルミニウムを主体とする合金から構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項7】
前記筐体における前記絶縁部材が配置されている内壁の外方に、熱交換器が備えられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項8】
前記外装体はラミネートフィルムからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池あるいはキャパシタ等の蓄電素子を単電池とし、該単電池を複数備えた組電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池を単電池とした組電池は、車両搭載用の高出力電源等に好ましく用いられている。
【0003】
かかる組電池は、典型的には、複数の単電池が所定の積層方向に積層された積層体と、該積層体を収容する筐体とを備えており、該積層方向において隣接する単電池どうしが、電極端子(正極端子および負極端子)を介して電気的に接続されることによって構築されている。例えば、下記特許文献1および2には、かかる構成の組電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-508846号公報
【文献】特開2013-164975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、単電池が備える正極端子および負極端子は、それぞれが、異種の金属から構成されていることが多い。典型的には、正極端子はアルミニウムから構成されており、負極端子は銅から構成されている。一般に、隣接する単電池どうしを電気的に接続する際には、一方の単電池の正極端子および他方の単電池の負極端子の一部分どうしを接合させるいわゆる異種金属接合が行われる。かかる接合により形成された正負極端子接合部は、外部からの液体(具体的には、外気由来の水分等。以下同様。)の付着により腐食され易いため、その接合強度が低下し易い傾向にある。これにより、導通を長期間維持することが困難になるため、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされてものであり、その主な目的は、導通が好適に維持され得る組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現するべく、本発明は、複数の単電池が所定の積層方向に積層された積層体と、該積層体を収容する筐体とを備えた組電池を提供する。
上記単電池は、正極および負極を備えた電極体と、該電極体を収容する外装体とを備えている。また、上記外装体の外部には、上記正極および上記負極とそれぞれ電気的に接続された正極端子および負極端子が配置されており、上記筐体の内部には、絶縁性を有する絶縁部材が配置されている。ここで、上記積層方向において隣接する単電池間には、一方の単電池の上記正極端子および他方の単電池の上記負極端子の少なくとも一部分どうしが接合された正負極端子接合部が存在しており、該正負極端子接合部は、外部からの液体の侵入を防止するために上記絶縁部材により埋設されている。
かかる構成の組電池では、外部からの液体の侵入を防止するために、正負極端子接合部(即ち、異種金属接合がさなれている部分)が絶縁部材によって埋設されている。これにより、正負極端子接合部分の腐食を防止することができるため、導通を好適に維持することができる。
【0008】
ここで開示される組電池の好ましい一態様では、上記外装体は、一対の矩形状の幅広面を備えており、該幅広面の一の短辺側あるいは長辺側に、上記正極端子および上記負極端子が配置されている。
かかる構成の単電池を備えた組電池では、一の辺側に正極端子および負極端子が集約して配置されていることから、正負極端子接合部分を埋設するために用いる絶縁部材の量を低減することができるため、コスト削減等の観点から好適である。
【0009】
ここで開示される組電池の好ましい一態様では、上記絶縁部材は上記筐体の内壁に接している。
絶縁部材が筐体の内壁に接している構成によると、該絶縁部材に埋設される正負極端子接合部の共振周波数が高くなるため、導通を好適に維持する効果に加えて、組電池の耐振動性を向上させることができる。
【0010】
かかる態様の組電池において、好ましくは、上記絶縁部材は熱伝導性を有し、絶縁性を有する樹脂マトリックスと、熱伝導性を有するフィラー部材とを含む。かかる構成の絶縁部材は、絶縁性に加えて熱伝導性に優れるため、電力集中が生じやすい正負極端子接合部から発生した熱を、絶縁部材、筐体を介して効率よく排熱することができる。また、上記樹脂マトリックスがシリコーン樹脂を含み、上記フィラー部材がアルミナを含むものを好ましく用いることができる。
【0011】
かかる態様の組電池において、好ましくは、上記筐体は、アルミニウムまたはアルミニウムを主体とする合金から構成されている。
アルミニウムまたはアルミニウムを主体とする合金から構成されている筐体は、放熱性に優れるため、正負極端子接合部から発生した熱をより効率よく排熱することができる。
【0012】
かかる態様の組電池において、好ましくは、上記筐体における上記絶縁部材が配置されている内壁の外方に、熱交換器が備えられている。
かかる構成によると、正負極端子接合部から発生した熱を、絶縁部材、筐体、さらに熱交換器を介してより効率よく排熱することができる。
【0013】
かかる態様の組電池において、好ましくは、上記外装体はラミネートフィルムからなる。
外装体がラミネートフィルムからなる場合、正極端子および負極端子は、典型的には、樹脂材料等から構成される溶着フィルムを介して該ラミネートフィルムと溶着されている。かかる溶着部分は、正負極端子接合部から発生した熱の影響により、開封することがある。したがって、ラミネートフィルムからなる外装体は、このような技術を適用する対象として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る組電池の主な構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図1に係る組電池が備える単電池の構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1に係る組電池が備える積層体の構成を説明するための模式図である。
【
図4】
図1に係る組電池が備える絶縁部材の形成方法を説明するための説明図である(A,B)。
【
図5】変形例に係る組電池の主な構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ここで開示される組電池に関する好適な一実施形態について、適宜図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の実施形態は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。また、本明細書にて示す図面では、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0016】
本明細書において、「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス一般を指す用語であって、一次電池および二次電池を含む概念である。「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいう。
【0017】
図1は、一実施形態に係る組電池1の主な構成を説明するための模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る組電池1は大まかにいって、積層体2と、該積層体を収容する筐体3と、絶縁部材4と、熱交換器5とを備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0018】
<積層体2>
図1に示すように、本実施形態に係る積層体2は、積層方向Xに沿って単電池10が複数(ここでは8個)積層された構成を有する。先ず、積層体2を構成する単電池10について、
図2を参照しつつ説明する。なお、以下では、単電池10が備える外装体18がラミネートフィルムからなり、電極体20が積層型電極体である場合について説明するが、外装体および電極体をかかる種類に限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、例えば、外装体が六面体箱型形状を有する金属製の電池ケース等である場合においても適用することができる。また、ここで開示される技術は、例えば、電極体が正極シートおよび負極シートがセパレータを介して捲回され、扁平状に成形された捲回電極体等である場合においても適用することができる。
【0019】
図2は、組電池1が備える単電池10を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、単電池10は大まかにいって、電極体20と、該電極体を収容する外装体18とを備えている。一対のラミネートフィルムの間に電極体20を配置し、ラミネートフィルムの外周縁部を溶着して図示しない溶着部を形成することにより、該電極体を収容する外装体18が形成される。
【0020】
詳細な図示は省略するが、本実施形態に係る電極体20は、正極シート(即ち、正極)および負極シート(即ち、負極)(以下、まとめて「電極シート」ともいう)が、矩形状のセパレータを介して複数積層されて形成されている。かかる電極シートは、集電タブを有する箔状の金属部材である集電体(即ち、正極集電体、負極集電体)と、該集電体の表面(片面または両面)に形成された電極活物質層(即ち、正極活物質層、負極活物質層)とを備えている。集電タブ(即ち、正極集電タブ、負極集電タブ)は、電極活物質層を具備せずに露出している。
本実施形態に係る電極体20において、正極集電タブおよび負極集電タブは、それぞれ該電極体の一の側縁部の異なる位置から同一の方向に向けて延在している。即ち、上記側縁部には、正極集電タブが複数枚重ねられた正極端子接続部と、負極集電タブが複数枚重ねられた負極端子接続部とが、異なる位置から同一方向に向けて延在している。そして、正極端子12は正極端子接続部に接続され、負極端子14は負極端子接続部に接続されている。
【0021】
本実施形態に係る組電池1が備える単電池10は、燃料電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池・ニッケル水素二次電池・ナトリウムイオン二次電池等の二次電池であってもよい。単電池10が二次電池の場合、該単電池は、例えば非水電解液二次電池であってもよいし、全固体電池であってもよい。非水電解液二次電池の場合、電極シートの間に絶縁性のセパレータが挿入された電極体20が用いられると共に、外装体18の内部に非水電解液が収容される。一方、全固体電池の場合、電極シートの間に固体電解質層(セパレータに相当する)が挿入された電極体20が用いられる。なお、電池を構成する部材(具体的には、電極シート、セパレータ、電極端子、固体電解質層、非水電解液等)としては、この種の二次電池に使用され得るものを特に制限なく使用することができる。また、単電池10は、従来公知の電池の製造方法に基づいて製造することができる。
【0022】
図1および
図3に示すように、積層体2では、単電池10における正極端子12および負極端子14の配置位置が、積層方向Xに沿って交互に反転するように配置されている。そして、積層方向Xにおいて隣接する単電池10の間には、一方の単電池10の正極端子12および他方の単電池10の負極端子14の一部分どうしが、それぞれ折り曲げた状態で接合された正負極端子接合部16が存在する。正極端子12および負極端子14の接合方法としては、電極端子の接合に用いられる従来公知の方法を特に制限なく使用することができ、例えばレーザー溶接や抵抗溶接等が挙げられる。また、詳細な図示は省略するが、積層方向Xの最上側に存在する単電池10における正極端子12aの一部および該積層方向の最下流側に存在する単電池10における負極端子14aの一部は、筐体3の外部に引き出され、外部接続されている。
【0023】
<筐体3>
図1に示すように、本実施形態に係る筐体3は、積層体2を収容する六面体箱型形状の容器である。筐体3は、少なくとも積層体2を収容することができる程度の大きさを有している。筐体3を構築する方法としては、例えば、積層体2を挿入するための開口部を備えた箱型の容器に該積層体を挿入した後、該開口部に蓋体を重ね合わせて封止する方法等が挙げられる。かかる封止は、例えばレーザー溶接や樹脂による樹脂-金属接着等により実施することができる。
筐体3を構成する材料としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えばアルミニウム、アルミニウムを主体とする合金、鉄-アルミニウム(Fe-Al)合金、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等が挙げられる。このなかでも、軽量でかつ放熱性に優れるという観点から、アルミニウムやアルミニウムを主体とする合金が好ましく用いられ得る。ここで、上記アルミニウムは、不可避的な不純物としての種々の金属元素や非金属元素等を含むものであり得る。そして、この場合、アルミニウムの純度(即ち、アルミニウムにおけるアルミニウム成分の含有量)は、好ましくは95%以上、97%以上、99%以上(例えば、99.5%や99.8%程度)であり得る。また、上記「アルミニウムを主体とする合金」とは、合金を構成する成分のうち、重量基準で最も多く含まれている成分がアルミニウムであることを意味する。かかる合金は、好ましくはアルミニウムを90重量%以上、95重量%以上、あるいは99重量%以上含むものであり得る。また、アルミニウム以外の成分としては、例えば銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、その他種々の金属成分等が挙げられる。
【0024】
<絶縁部材4>
本実施形態に係る絶縁部材4は、筐体3の一の内壁の全面に接した状態で配置されている。
図1に示すように、本実施形態に係る絶縁部材4は、六面体ブロック形状であり、正負極端子接合部16(本実施形態では、さらに正極端子12aおよび負極端子14a)を埋設することができる最低限程度の厚みを有している。絶縁部材4により電極端子の腐食を防止することができるため、導通を好適に維持することができる。また、かかる効果に加えて、正負極端子接合部16(本実施形態では、さらに正極端子12aおよび負極端子14a)が、絶縁部材4を介して筐体3と物理的に接していることにより、それぞれの共振周波数が高くなるため、組電池1の耐振動性を向上させることができる。そして、さらに、本実施形態に係る絶縁部材4は、熱伝導性を有している。これにより、正負極端子接合部16(本実施形態では、さらに正極端子12aおよび負極端子14a)から発生した熱を、絶縁部材4、筐体3を介して効率よく排熱することができる。以下、絶縁部材4を構成する材料について説明する。
【0025】
先ず、ここで開示される組電池が備える絶縁部材としては、少なくとも絶縁性を有し、かつ、外部からの液体の侵入を防止することができるものが採用される。ここで、上記「絶縁性を有する」とは、電気を通しにくい性質を有することを意味し、例えばJISK6911:2006に基づいて測定される体積抵抗率が、典型的には1.0×1010Ω・cm以上、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上であることを示し得るが、これに限られるものではない。
また、上記絶縁部材の絶縁部材の吸水率(即ち、水分等を吸収する度合い)は、例えばJISK7209:2000に基づいて測定される吸水率が、典型的には5.0%以下、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下であり得るが、これに限られるものではない。
【0026】
ここで開示される組電池が備える絶縁部材を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PU)、アクリル樹脂(PMMA)、メラミン樹脂(MF)、種々のフッ素樹脂等を挙げることができる。
【0027】
そして、本実施形態に係る絶縁部材4は、上述したような性質に加えて、さらに熱伝導性を有する部材である。絶縁部材4の熱伝導率は、例えばJISA1412-1:2016に基づいて測定される熱伝導率が、典型的には0.5W/m・K以上、好ましくは1.5W/m・K以上、より好ましくは3.0W/m・K以上であり得るが、これに限られるものではない。
絶縁部材4を構成する材料としては、例えば上記列挙した樹脂のなかでも熱伝導性に優れているシリコーン樹脂等を挙げることができる。また、熱伝導性が良好である等の観点から、例えば絶縁性を有する樹脂マトリックスと、熱伝導性を有するフィラー部材を含むものも好ましく用いることができる。上記樹脂マトリックスとしては、例えば上記段落において列挙した樹脂等が挙げられ、これらを単独あるいは適宜2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記フィラー部材としては、例えばアルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、べリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO2)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、ベーマイト(AlOOH)等のセラミックス材料が挙げられ、これらを単独あるいは適宜2種以上を組み合わせて用いることができる。このなかでも、熱伝導性に優れるという観点から、樹脂マトリックスとしてシリコーン樹脂を含み、フィラー部材としてアルミナを含むものを、好ましく用いることができる。上記樹脂マトリックスおよび上記フィラー部材の配合量に関しては、該樹脂マトリックスおよび該フィラー部材の種類に応じて適宜調整されることが好ましい。
【0028】
なお、絶縁部材4を構成する材料や該絶縁部材の厚み(ここでは、絶縁部材4が接している内壁から正負極端子接合部16までの距離を示す)等は、予備試験を行うことによって適宜決定することができる。また、特に限定解釈されることを意図したものではないが、例えば、組電池1が容量200×3.7Wh程度の単電池10を8個備えている場合、絶縁部材4として、体積抵抗率が1.0×1012Ω・cm程度、吸水率が1.0%程度、熱伝導率が1.0W/m・K程度、該絶縁部材の厚みが8.0mm程度のものを用いることができる。
【0029】
筐体3の内壁に絶縁部材4を配置する方法としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限り特に制限されないが、例えば後述するように、容器3aに設けられた充填孔30から絶縁部材4の原料を充填し、硬化(固化)させることにより絶縁部材4を形成する方法等が挙げられる。
【0030】
<熱交換器5>
図1に示すように、本実施形態に係る熱交換器5は、筐体3における絶縁部材4が配置されている外方に備えられている。かかる熱交換器の種類としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限り特に制限されないが、例えば、多管式熱交換器(シェル&チューブ式熱交換器;太い円柱状の筒(シェル)の中に細い円管(チューブ)が多数配置されており、チューブの内側と外側において温度が異なる流体を流すことにより熱交換を行う)、プレート式熱交換器(凹凸にプレスされた金属板(プレート)を重ね合わせ、温度が異なる流体を交互に流すことにより熱交換を行う)、フィンチューブ型熱交換器(円管(チューブ)内に液媒体を流し、チューブの外側とフィンにガスを当てて熱交換を行う)、その他種々の熱交換器を採用することができる。このように熱交換器5を配置することにより、正負極端子接合部16(本実施形態では、さらに正極端子12aおよび負極端子14a)から発生した熱をより効果的に排熱することができるため好ましい。
【0031】
<組電池1の構築方法>
続いて、本実施形態に係る組電池1の構築方法について説明するが、組電池1の構築方法を、以下の方法に限定することを意図したものではない。以下の説明では、樹脂マトリックスとしてのシリコーン樹脂と、フィラー部材としてのアルミナとを含む絶縁部材4を用いる場合について説明する。また、下記構築方法における各ステップは、適宜入れ替えて実施することができる。
先ず、
図3に示すように、単電池10を複数(ここでは8個)用意し、積層方向Xに沿って積層する。続いて、積層方向Xに沿って隣接する単電池10間において、一方の単電池10の正極端子12と、他方の単電池10の負極端子14とを、折り曲げた状態でレーザー溶接により接合することで、正負極端子接合部16(ここでは7箇所)を形成する。積層方向Xにおける最下流側の単電池10の正極端子12aおよび該積層方向における最上流側の単電池10の負極端子14aは、外部接続用としてかかる接合を実施することなく残している。
続いて、積層体2を収容する開口部を備えた箱型の容器3aを用意する。そして、上記のとおり作製した積層体2を、容器3a内に挿入する。このとき、正極端子12aおよび負極端子14aはそれぞれ外部接続用として、容器3aから引き出しておく。容器の開口部に該開口部を封止する蓋体を重ね合わせ、レーザー溶接により当該開口部の周囲を溶接して封止する。
次に、
図4の(A),(B)に示すように、容器3aの充填孔30に、シリコーン-アルミナ溶液(主剤に相当する)を予め定められた量だけ充填する。そして、硬化剤を所定量添加し、混合・撹拌を行うことで硬化させた後、充填孔30をリベットにより封止する。なお、上記主剤および硬化剤の配合量、混合・撹拌方法や所要時間に関する情報は、例えば該主剤および硬化剤の販売元等から得ることができる。また、かかる封止は、樹脂を用いた樹脂-金属接着や封栓溶接等によっても行うことができる。最後に、熱交換器5を筐体3における絶縁部材4を配置した外方に設置することにより、組電池1を構築することができる。
【0032】
<変形例>
以上、ここで開示される組電池(組電池の構築方法)の具体例を、組電池1を参照しつつ詳細に説明したが、ここで開示される組電池をかかる具体例に限定するものではない。ここで開示される組電池は、上述した具体例をその目的を変更しない限りにおいて種々変更したものが包含される。以下、組電池1の変形例の一例(i)~(vi)について説明する。
【0033】
(i)上記実施形態では、絶縁部材4が筐体3の一の内壁の全面に接した状態で配置されているが、これに限定されない。絶縁部材4は、例えば筐体3の一の内壁における必要最低限の部分にのみ設けられていてもよい。また、上記実施形態では、正負極端子接合部16に加えて、正極端子12aおよび負極端子14aを埋設するように絶縁部材4を配置しているが、これに限定されない。例えば、正負極端子接合部16に加えて、正極端子12aあるいは負極端子14aの一方のみを埋設するように絶縁部材4が配置されていてもよい。なお、当然のことながら、ここで開示される技術の効果は、少なくとも正負極端子接合部16を埋設するように絶縁部材4が配置されている態様において発揮され得るため、該正負極端子接合部のみを埋設するように該絶縁部材が配置されていてもよい(下記(ii)についても同様である)。
【0034】
(ii)上記実施形態では、絶縁部材4が積層方向Xに沿って連続的に配置されているが、これに限定されない。絶縁部材4は、例えば
図5に示すように配置されていてもよい。また、この場合、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、個々の絶縁部材4の大きさ・形状を異ならせてもよい。
【0035】
(iii)上記実施形態では、六面体ブロック形状の絶縁部材4を使用しているが、これに限定されない。例えば、円柱等の種々の形状であってもよい。
【0036】
(iv)上記実施形態では、絶縁部材4は、正負極端子接合部16(正極端子12aおよび負極端子14a)が最低限埋設される程度に設けられているが、これに限定されない。例えば、絶縁部材4は、単電池10において正極端子12および負極端子14が配置されている根本の部分(あるいは、該根本の付近)まで設けられていてもよい。
【0037】
(v)上記実施形態では、組電池1が熱交換器5を備えている場合について説明しているが、当然のことながら熱交換器5を備えていない場合についても、ここで開示される技術の効果を得ることができる。
【0038】
(vi)上記実施形態では、外装体18の一の短辺側に正極端子12および負極端子14が配置されている単電池10を用いているが、これに限定されない。例えば、外装体18の一の短辺側または長辺側に正極端子12が配置され、該一の短辺側または長辺側に対向する辺側に負極端子14が配置されている単電池を用いることもできる。かかる場合、筐体3の内壁の両側に絶縁部材4を設ければよい。
【0039】
ここで開示される組電池1は、各種用途に利用可能である。好適な用途の一例としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。なかでも、特に電気自動車(EV)において好ましく利用され得る。
【符号の説明】
【0040】
1 組電池
2 積層体
3 筐体
3a 容器
4 絶縁部材
5 熱交換器
10 単電池
12,12a 正極端子
14,14a 負極端子
16 正負極端子接合部
18 外装体
20 電極体
30 充填孔
X 積層方向