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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】コアネットワーク装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/06 20090101AFI20230724BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20230724BHJP
   H04W 36/22 20090101ALI20230724BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20230724BHJP
   H04W 24/00 20090101ALI20230724BHJP
【FI】
H04W48/06
H04W48/16 135
H04W36/22
H04W4/44
H04W24/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021175873
(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公開番号】P2023065207
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】春名 恒臣
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光洋
(72)【発明者】
【氏名】藤本 八雲
(72)【発明者】
【氏名】森川 史一
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-033073(JP,A)
【文献】特開2001-144814(JP,A)
【文献】特表2013-534090(JP,A)
【文献】国際公開第2010/053098(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/020179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、
各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と
前記データ通信の所要時間内に前記移動体が移動すると推定される推定移動範囲を特定する範囲特定部と、
前記推定移動範囲内に存在するセルを特定する範囲内セル特定部と、
輻輳している輻輳セルがあるかを探知して各基地局のセルの輻輳状況を取得する探知部と、
を備え、
前記判定部は、前記範囲内セル特定部によって特定されたセルと、前記探知部が取得した各基地局のセルの輻輳状況とを用いて、前記範囲内セル特定部によって特定されたセルにおける前記移動体の前記データ通信の可否を判定する、
コアネットワーク装置。
【請求項2】
前記判定部は、同一の前記移動体に対して前記サーバとのデータ通信の可否を複数回判定し、
前記判定部による次回の判定までの間の時間であるバックオフタイマー値を設定するタイマー設定部を更に備える、
請求項1に記載のコアネットワーク装置。
【請求項3】
サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、
各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、
を備え、
前記データ通信の所要時間内に前記移動体が移動すると推定される推定移動範囲を特定する範囲特定部
を更に備え、
前記判定部は、同一の前記移動体に対して前記サーバとのデータ通信の可否を複数回判定し、
前記判定部による次回の判定までの間の時間であるバックオフタイマー値を設定するタイマー設定部を
更に備え、
前記判定部が前記データ通信を許可し、さらに前記推定移動範囲内に存在するセルに輻輳セルがある場合、
前記タイマー設定部は、前記移動体の移動速度と、在圏セルのセル端または当該在圏セル内にある前記移動体の位置から最近接位置にある前記輻輳セルのセル端までの距離とに基づき、当該最近接位置にある輻輳セルのセル端に到達する最短所要時間を算出し、前記算出された最短所要時間を前記バックオフタイマー値として設定し、
前記通知部は、前記タイマー設定部が設定した前記バックオフタイマー値を前記サーバに通知する、
コアネットワーク装置。
【請求項4】
サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、
各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、
を備え、
前記データ通信の所要時間内に前記移動体が移動すると推定される推定移動範囲を特定する範囲特定部
を更に備え、
前記判定部は、同一の前記移動体に対して前記サーバとのデータ通信の可否を複数回判定し、
前記判定部による次回の判定までの間の時間であるバックオフタイマー値を設定するタイマー設定部を
更に備え、
前記判定部が前記データ通信を許可し、さらに前記推定移動範囲内に存在するセルに輻輳セルがない場合、
前記タイマー設定部は、前記所要時間から所定値を引いた値を前記バックオフタイマー値として設定し、
前記通知部は、前記タイマー設定部が設定した前記バックオフタイマー値を前記サーバに通知する、
コアネットワーク装置。
【請求項5】
サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、
各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、
を備え、
前記データ通信の所要時間内に前記移動体が移動すると推定される推定移動範囲を特定する範囲特定部
を更に備え、
前記判定部は、同一の前記移動体に対して前記サーバとのデータ通信の可否を複数回判定し、
前記判定部による次回の判定までの間の時間であるバックオフタイマー値を設定するタイマー設定部を
更に備え、
前記タイマー設定部は、前記判定部が前記データ通信を許可しない場合には、当該許可しない移動体の移動速度に応じて前記バックオフタイマー値を設定し、
前記通知部は、前記バックオフタイマー値を前記サーバに通知する、
コアネットワーク装置。
【請求項6】
前記判定部が前記データ通信を許可してデータ通信を開始している移動体について、前記バックオフタイマー値経過後に、前記データ通信しているデータのうちの通信が完了していない残りのデータについて、前記判定部は、当該移動体のデータ通信の可否を改めて判定する、
請求項2から5の何れか1項に記載のコアネットワーク装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記在圏セル及び前記範囲内セル特定部によって特定されたセルのうち、少なくとも1つが輻輳セルである場合に、前記データ通信を許可しない、
請求項1に記載のコアネットワーク装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記データ通信がアップロードであるかダウンロードであるかに応じた各基地局のセルの輻輳状況を用いて、前記データ通信の可否を判定する、
請求項1に記載のコアネットワーク装置。
【請求項9】
サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、
各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、
を備え、
前記判定部は、前記移動体を中心とした所定の物理的領域に輻輳している輻輳セルが存在する場合には、M台の移動体に対して前記データ通信を許可する一方、当該所定の物理的領域に輻輳セルが存在しない場合には、N台の移動体に対して前記データ通信を許可し、
MおよびNには、以下の関係;
N>M
が成り立つ、
コアネットワーク装置。
【請求項10】
サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、
各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、
を備え、
各基地局のセルの輻輳状況には、前記データ通信の許可または不許可を一時保留させたい移動体を示すキューイングリストを含み、
前記キューイングリストには、前記移動体ごとに、在圏セルの情報、当該移動体の属性の情報、データ通信を推奨する時間帯の情報、データ通信の優先度に関する情報、および、データ通信が許可されなかった回数の情報が含まれる、
コアネットワーク装置。
【請求項11】
前記判定部は、1つの前記在圏セルに複数の移動体がある場合に、前記キューイングリストに基づいて、当該複数の移動体のうち、前記データ通信の優先度の高い移動体の前記データ通信を許可し、当該優先度の低い移動体の前記データ通信を許可しない、
請求項10に記載のコアネットワーク装置。
【請求項12】
前記移動体はバッテリーを具備し、
前記データ通信の優先度は、少なくとも前記移動体の種類とバッテリー残量に応じたスコアとに基づいて決定される、
請求項11に記載のコアネットワーク装置。
【請求項13】
前記判定部は、或る移動体の前記推定移動範囲に含まれる全てのセルに関し、当該セル内で当該或る移動体がデータ通信を行うことを予め定めておくとともに、当該全てのセルにおいてデータ通信可能な移動体の台数の閾値を設け、閾値に達したセルでは新たに在圏する移動体のデータ通信を許可しない、
請求項1に記載のコアネットワーク装置。
【請求項14】
通信負荷が所定値以下であるセルが所定の範囲に渡って集合している領域を特定する低負荷領域特定部を更に備え、
前記判定部は、前記低負荷領域特定部により特定された前記領域のセルに在圏する移動体についてデータ通信が可であると判定する、
請求項1に記載のコアネットワーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアネットワーク装置および移動体通信システム、並びにデータ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるソフトウェア規模が拡大しており、車載センサーから得られるデータの容量も増大している。また、車両とサーバとの間で、例えばモバイル通信を介して、ソフトウェアの更新のためのダウンロードや、車載センサーデータのアップロードなどが行なわれる契機も増えている。
【0003】
車両へのダウンロードを効率的に行う技術として、例えば特許文献1には、車両の使用者によりイグニッションスイッチがOFFされた時刻が予め設定された所定時間内であった場合に、サーバから車両に更新情報が提供されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-228698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、同時に多数の車両からサーバに対して情報更新の要求が集中し輻輳が起きた場合等に、更新情報を適切に提供する手段が開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るコアネットワーク装置は、サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を機械学習などの結果を用いて判定する判定部と、前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一態様の移動体通信システムの構成を示す。
図2】本発明の一態様の移動体通信システムのコアネットワーク装置の構成を示す。
図3図1の移動体通信システムのネットワーク構成について、1つの移動体と、コアネットワーク装置および外部サーバとの関係を見たブロック図である。
図4図3のブロック図を、移動体通信システムの処理フローに照らし合わせて示した図である。
図5】本発明の一態様の移動体通信システムのコアネットワーク装置の構成の変形例を示す。
図6】本発明の一態様の移動体通信システムのコアネットワーク装置に保持および管理されたキューイングリストの一例を示す。
図7図6のキューイングリストT(2)の優先順位付けの例を示す。
図8図6のキューイングリストT(2)の各移動体の優先度スコアを算出したものを示す。
図9】各デバイスタイプとバッテリー残量に応じた係数とを対応付けたリストT(4)を示す。
図10図9のリストT(4)のスコアを用い、図6のキューイングリストT(2)の各移動体の優先度スコアを算出したデータ通信優先順リストT(5)ものを示す。
図11】本発明の他の態様の移動体通信システムを示す。
図12】本発明の他の態様の移動体通信システムにおいて用いる”Possibly connected cars”と、セルIDとを対応付けしたテーブルT(7)を示す。
図13】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図14】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図15】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図16】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図17】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図18】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図19】本発明の他の態様の移動体通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図20】本発明の一実施形態のデータ通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態の移動体通信システムについて、図1から図19を用いて説明する。
【0009】
<移動体通信システム>
図1に示す移動体通信システム1は、移動体100と、外部サーバ200(サーバ)と、コアネットワーク装置300とを含んでよい。
【0010】
本実施形態では、広範囲に複数の基地局400が点在し、そのそれぞれの基地局400に付随するセル500によって広範囲の移動体100が通信可能となってよい。しかし、例えば1つのセル500に多数の移動体100が在圏して、そのセル500の基地局400と通信すると、通信負荷が高くなって輻輳状態となる。輻輳状態となれば、通信が途切れたり、通信速度が遅くなったりすることがある。通信データのデータ量が大きく通信時間を要したり、通信データのデータサイズが大きく通信負荷がかかったりする場合には、そのような輻輳状況下での通信は不適切である。
【0011】
そこで、移動体通信システム1は、そのような問題を解消するべく、コアネットワーク装置300が、各セル500の輻輳状況および移動体100の在圏セルに基づいて、移動体100と外部サーバ200とのデータ通信の可否を判定する判定部33(図2)と、当該判定部33の判定結果を、外部サーバ200に通知する通知部35(図2)とを備えてよい。コアネットワーク装置300は、各セルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づく、移動体100と外部サーバ200とのデータ通信の可否を、外部サーバ200に通知することができる。これにより、移動体通信システム1は、移動体100が自動運転車等で時間帯を問わずに走行し、大容量のデータ通信を行う場合であっても、途切れたりすることなく、安定した通信サービスを提供することができる。
【0012】
また、コアネットワーク装置300が、各セル500の輻輳状況を把握することにより、例えば、各移動体100が周囲のセルの輻輳状況を把握する場合、及び各基地局400が自身に属するセルの輻輳状況を把握する場合に比べて、コアネットワーク装置300が、より広い範囲のセルの情報に基づいて、適切な処理を行うことができる。
【0013】
また、さらに別の観点から述べれば、外部サーバ200は、本実施形態に係るコアネットワーク装置300を介して移動体100と通信することにより、従来のコアネットワーク装置300からは得られなかった、輻輳状況に基づく移動体100とのデータ通信の可否に関する情報を取得することができる。これにより、外部サーバ200は、適切なタイミングでデータ通信を行うことができる。
【0014】
なお、以下では、大容量のデータ通信を滞りなく実現するための態様を以下で説明するが、本態様は、大容量のデータ通信を行う場合に限らず、データ通信全般に対して適用することができる。また、以下では、データ通信として、BDT(Background Data Transfer)を行う構成について説明するが、本実施形態はこれに限定されず、他の方式のデータ通信を行う構成であってもよい。
【0015】
以下、移動体通信システム1の各構成について説明する。
【0016】
(移動体100)
移動体100は、基地局400を介して外部サーバ200と通信可能な端末(UE:User Equipment)であってよい。移動体100は、本例では車両に搭載された車載端末を例示して説明するが、これに限定されず、タブレットおよびスマートフォン等の車両と分離可能なデバイスであってもよい。
【0017】
移動体100は、在圏するセルの基地局400と通信でき、図1に示すように、移動によって自位置が変化して在圏セルの端に至ると、当該セルに隣接する他のセルに移行(いわゆる、ハンドオーバー)して、在圏セルの基地局400との通信を止めて(図1中の移動体100aと基地局400との間の×印)、当該他のセルの基地局400と通信を開始してよい。このように、通信に用いる基地局を、在圏セルの移行に伴って切り替えることで、移動体100は通信を継続することができる。
【0018】
移動体100は、データ通信が必要である場合に、基地局400を介して、データ通信要求を外部サーバ200に通知してよい。このとき、データ通信要求には、通信するデータのデータサイズ、データ通信の緊急度、および移動体100の移動速度(走行速度)に関する情報が含まれてよい。データ通信要求には、これらの情報に加えて、移動体100の位置情報が含まれていることが好ましいが、この限りではない。
【0019】
移動体100がデータ通信可能であるか否かは、コアネットワーク装置300が判断してよい。具体的には、コアネットワーク装置300は、データ通信の可否を判定し、その判定結果を、外部サーバ200を介して、又は、外部サーバ200を介することなく直接移動体100に通知してよい。
【0020】
(外部サーバ200)
外部サーバ200は、例えばコアネットワーク装置300の外部等に、コアネットワーク装置300とは別に設けられ、コアネットワーク装置300を介して、移動体100と通信し、移動体100から送出されるデータを受信してよい。また、外部サーバ200は、コアネットワーク装置300との間でも通信を行い、コアネットワーク装置300に移動体100に関する情報を通知するほか、コアネットワーク装置300から、各種の信号を受信することができる。外部サーバ200は、一例として汎用的なクラウドサーバやオンプレミスサーバなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
外部サーバ200は、移動体100からのデータ通信要求を受信すると、データ通信要求に含まれる情報に加えて、受信した移動体100の識別ID(以下、移動体IDと記載)を、コアネットワーク装置300に通知してよい。
【0022】
(コアネットワーク装置300)
コアネットワーク装置300は、移動体通信システム1のコアネットワーク機能を実装する装置であってよい。コアネットワーク装置300は、一つのサーバによって構成されていてもよいし、複数のサーバによって構成されていてもよい。コアネットワーク装置300は、コア機能部310と、CPF(Control Plane Function)320とを含んでよい。コアネットワーク装置300は、CPF320以外のNF(Network Function)部(例えば、UPF(User Plane Function)部など。図示せず)をさらに含んでよい。コア機能部310は、CPF320やその他のNF部と外部サーバ200との仲介を行う機能部であってよい。また、コア機能部310は、大容量データ通信(BDT)のアプリケーションファンクション(AF)として機能するデータ通信制御部311を含んでよい。CPF320は、コアネットワーク装置300全体の制御部であってよい。
【0023】
コア機能部310の詳細を、図2を用いて説明する。図2は、コア機能部310の構成を中心としたコアネットワーク装置300の構成を示すブロック図である。
【0024】
コア機能部310は、データ通信制御部311と、在圏セル特定部312と、変換部313(範囲内セル特定部)とを含んでよい。
【0025】
在圏セル特定部312は、外部サーバ200からの移動体IDに基づいて、移動体100が在圏するセルの特定を行ってよい。これにより、移動体100が自位置を取得できない構成であっても、在圏セルを特定することができる。特定された在圏セルの情報は、データ通信制御部311に通知されてよい。
【0026】
データ通信制御部311は、移動特定部30と、判定部33と、通知部35と、タイマー設定部37とを含んでよい。
【0027】
移動特定部30は、時間特定部31と、範囲特定部32とを含んでよい。
【0028】
時間特定部31は、在圏セル特定部312から受信した在圏セルの情報と、外部サーバ200からのデータ通信要求に基づいて、データサイズと、データ通信のスループットとから、データ通信に要する時間(推定所要時間)を特定してよい。
【0029】
範囲特定部32は、特定された推定所要時間内に移動体100が移動できる推定移動範囲を算出してよい。
【0030】
変換部313は、範囲特定部32によって特定された推定移動範囲に含まれる全セル(範囲内セル)を特定してよい。具体的には、変換部313は、範囲特定部32によって特定された推定移動範囲の位置情報から、その位置に該当するセル(範囲内セル)のセルIDを特定してよい。
【0031】
CPF320に含まれる探知部321は、各基地局400(図1)からセルの輻輳状況に関する情報を取得し、各セルが輻輳セルであるか探知してよい。輻輳セルとは、輻輳状態にあるセルのことであり、複数の移動体が在圏している等の理由から輻輳しており、そのセル内でのデータ通信の開始、特に大容量データのデータ通信の開始は不適当である状態にあることを指す。探知部321は、例えば、商用または非商用のKPI測定機能部を含んで構成されてよい。探知部321は、各基地局400で使用されている無線リソースに関する指標(例えば、UL/DLそれぞれのPRB(Physical Resource Block)の割り当て数や使用率、スループット、各端末のコネクテッドユーザ数など)を測定し、各指標について一定の閾値(例えば、各指標の理論最大値の80%)を超えた場合に当該基地局400のセルが輻輳していると判断してもよい。あるいは、UPFにおいて各基地局400からのIPパケットデータのスループットが一定値以上となった場合に、当該基地局(群)400が輻輳していると判断してもよい。
【0032】
判定部33は、範囲内セルのセルIDと、探知部321から通知される各セルの輻輳状況を示す情報とを用いて、範囲内セルが輻輳状態にあるか判定し、データ通信の可否を判定してよい。図1に示す例では、移動体100bが、ハンドオーバー発生時に隣接するハンドオーバー先のセル(図中のID5)と接続しようとしたものの、当該セルが輻輳であったために、そのセルには接続しない(図中の×印)ことを示している。また、判定部33は、同一の移動体100について、外部サーバ200とのデータ通信の可否を複数回判定してよい。このとき、タイマー設定部37は、判定部33による次回の判定までの間の時間であるバックオフタイマー値を設定してよい。通知部35は、判定部33の判定結果およびタイマー設定部37が設定したバックオフタイマー値を、外部サーバ200に通知してよい。
【0033】
外部サーバ200からデータ通信許可と通知された移動体100は、外部サーバ200とのデータ通信を開始する。このとき、移動体100は、外部サーバ200とのデータ通信を、バックオフタイマー値によって定められた時間行い、当該時間が経過する直前に、再びデータ通信要求を外部サーバ200に通知する。一方、外部サーバ200からデータ通信不許可と通知された移動体100は、外部サーバ200とのデータ通信を行なわない。この場合、移動体100は、バックオフタイマー値によって定められた時間が経過した直後に再びデータ通信要求を外部サーバ200に通知する。
【0034】
以上の移動体通信システムの構成によれば、移動体の推定移動範囲内のセルの輻輳状態に基づくデータ通信の可否が外部サーバに通知される構成とすることができる。そのため、大容量のデータ通信が必要である場合に、移動中にデータ通信が途切れず大容量データ通信を安定して実現することができるタイミングを、外部サーバが知ることができる。さらに、移動体が、当該タイミングを外部サーバから通知されることにより、移動体も当該タイミングを知ることができるので、データ通信要求を外部サーバに対して過度に行ってしまうことがなくなる。
【0035】
(処理フロー)
本実施形態の移動体通信システムのデータ通信可否判定処理のフローについて、図3および図4を用いて説明する。図3は、図1の移動体通信システムのネットワーク構成について、1つの移動体と、コアネットワーク装置および外部サーバとの関係を見たブロック図である。図4は、図3のブロック図を、データ通信可否判定処理のフローに照らし合わせて示した図である。
【0036】
先ず、移動体100が、或る基地局のセルと通信を開始すると、CPF320は、移動体100を当該セルにキャンプオンさせてよい(図4のS1)。
【0037】
また、探知部321(NWDAF)は、自律的に、データ通信制御部311に、各セルの輻輳状況を示す情報を通知してよい(図4のS1#)。
【0038】
探知部321は、各セルの輻輳状況を示す情報を生成してよい。各セルの輻輳状況を示す情報は、一例として、図2に示すセルIDと輻輳状況とが対応付けられたテーブルT(1)である。図2に示すテーブルT(1)では、セルID「ID1」のセル500(図1)は、輻輳状態にあることを示し、セルID「ID2」および「ID3」のセル500は、輻輳状態にないことを示す。なお、探知部321から、判定部33に通知される、各セルの輻輳状況を示す情報は、テーブルの様式でなくともよく、セルIDと輻輳状況とを含む情報であれば形式は限定されない。
【0039】
探知部321は、自律的に、各セルの輻輳状況を示す情報をデータ通信制御部311に通知してよい。一例において、探知部321は、定期的に(例えば、KPI測定結果の更新のタイミング(遅くとも15分程度)で)、各セルの輻輳状況を示す情報をデータ通信制御部311に通知してよい。探知部321からデータ通信制御部311に通知されるタイミングと、データ通信制御部311の判定部33による判定タイミングとは、非同期であってよい。
【0040】
次に、移動体100からのデータ通信要求が、外部サーバ200に伝達され(図4のS2)、それがトリガとなり、外部サーバ200から、移動体ID、データサイズ等を含むデータ通信要求が、在圏セル特定部312およびデータ通信制御部311に通知されてよい(図4のS2#)。在圏セル特定部312は、データ通信要求に含まれる移動体IDに基づいて、移動体100が在圏するセルを特定し、データ通信制御部311に通知してもよい。
【0041】
次に、データ通信制御部311の時間特定部31は、在圏セル特定部312から通知された在圏セルの情報と、外部サーバ200からのデータ通信要求に基づいて、データサイズと、データ通信のスループットとから推定所要時間を特定してよい。
【0042】
一例において、データ通信のスループットとして、統計的な固定値を設定してよい。また、他の例として、データ通信のスループットとして、在圏セルにおける過去所定期間(例えば、過去1~20日間)の同じ時間帯の統計値(例えば、平均値など)を用いてもよい。なお、ダウンロードの場合とアップロードの場合とで、異なるパラメータ(例えばアップリンクスループット、ダウンリンクスループット)を使用してもよい。また、推定所用時間は、コアネットワーク装置300内の図示しない学習部において、過去のデータ通信の際のデータサイズ、スループット、実際に通信に要した時間等を教師データとして、機械学習を行い、その結果に基づき特定してもよい。
【0043】
そして、範囲特定部32が、特定された推定所要時間内に移動体100が走行できる推定移動範囲を算出してよい(図4のS3)。範囲特定部32は、時間特定部31によって特定された推定所要時間と移動体100の走行速度の情報を用いて半径R(例えば、単位はメートル(m))を決めて、半径Rの範囲を当該移動体100の推定移動範囲とする。ここで、走行速度が異なれば、半径Rは異なる値となる。なお、移動体100が例えば駐停車中や渋滞中で止まっている場合には、半径Rの値を絞っても良い。例えば、範囲特定部32は、移動体100が在圏するセルが、前回のデータ通信可否判定処理と同じである場合には、移動体100が止まっているとみなして、半径Rの値を絞ってもよい。
【0044】
また、データサイズを分割できる場合は、一回ごとのデータサイズを小さくすることができるため、アップロード(またはダウンロード)時間が短くなるため、半径Rを絞ることができる。範囲特定部32は、外部サーバ200からのデータ通信要求に基づいて、データサイズを分割してもよいし、判定部33が、前回のデータ通信可否判定処理においてデータ通信不可と判定した場合に、データサイズを分割してもよい。
【0045】
また、データ通信制御部311が、データ通信可能なデータサイズを算出し、当該データサイズを外部サーバ200あるいは移動体100に通知してもよい。データ通信制御部311が、データ通信可能な許容時間長(あるいは、通信可能な開始時刻および終了時刻)を算出し、当該時間長(あるいは開始時刻および終了時刻)を外部サーバ200あるいは移動体100に通知してもよい。
【0046】
あるいは、移動体100から位置情報を取得できる場合には、範囲特定部32は、その位置(地点)から半径Rの範囲に推定移動範囲を設定してもよい。一方、移動体100から位置情報を取得できない場合には、移動体が在圏セル内の何処にいるか判らないため、在圏セルのセル半径+Rの範囲に推定移動範囲を設定してもよい。
【0047】
次に、変換部313が推定移動範囲をセルIDに変換してよい(図4のS4)。
【0048】
次に、判定部33は、変換部313が変換したセルIDと、探知部321から通知された各セルの輻輳状況を示す情報とを用いて、データ通信の可否を判定してよい(図4のS5)。
【0049】
一例として、判定部33は、まず、各セルの輻輳状況を示す情報に基づいて、在圏セルが輻輳しているか否かを判定して、在圏セルが輻輳している場合には、データ通信不可と判定してよい。この場合、範囲特定部32による推定移動範囲の算出の結果に関係なくデータ通信不可と判定できるため、図4のS3及びS4を省略してデータ通信不可との判定ができる構成としてもよい。タイマー設定部37は、判定部33がデータ通信を許可しない場合には、当該許可しない移動体100の移動速度に応じてバックオフタイマー値を設定する。例えば、タイマー設定部37は、所定の距離を、移動体100の移動速度で除算した値をバックオフタイマー値に設定してもよい。所定の距離としては、特に限定されないが、100m~10kmとすることができる。バックオフタイマー値とは、データ通信可否判定処理を再度行うまでの時間を示す値である。
【0050】
なお、タイマー設定部37は、移動体100の移動速度とは異なる基準に基づいてバックオフタイマー値を設定してもよい。例えば、タイマー設定部37は、バックオフタイマー値を、移動体100が加入しているサービスに応じた時間帯(例えば翌日の深夜帯)までの時間としてもよい。
【0051】
一方、在圏セルが輻輳していない場合には、判定部33は、データ通信可と判定してよい。タイマー設定部37は、判定部33がデータ通信を許可した場合には、下記の(i)あるいは(ii)に基づいてバックオフタイマー値を設定してよい。
【0052】
(i)タイマー設定部37は、推定移動範囲内に存在するセルに輻輳セルがあれば、(a)在圏セルのセル端または当該在圏セル内にある前記移動体の位置から、最近接位置にある前記輻輳セルのセル端までの距離と、(b)移動速度とに基づいて、当該最近接位置にある輻輳しているセルのセル端に到達する最短所要時間を算出し、算出した前記最短所要時間をバックオフタイマー値としてよい。これにより、移動体100が輻輳セルに入る可能性が低い間は、データ通信可否の再判定処理を行わずに、データ通信を実現することができる。
【0053】
(ii)タイマー設定部37は、推定移動範囲内に存在するセルに前記輻輳セルがなければ、データ通信に要する時間(推定所要時間)から所定値を引いた値をバックオフタイマー値としてよい。これにより、タイマー設定部37は、走行速度が上がって推定移動範囲外に移動体100が抜け出る可能性を考慮して、再判定処理の実施タイミングを指定することができる。なお、バックオフタイマー値は、固定値にしてもよいし、移動体100の移動速度に応じて設定してもよい。
【0054】
判定部33による判定の結果、データ通信が許可されると、データ通信制御部311は、CPF320に、BDT用PDUセッションの構築の指示信号を通知し(図4のS6)、BDT用PDUセッションを構築してよい。また、データ通信制御部311は、判定の結果を、外部サーバ200に通知し(図4のS7)、外部サーバ200は、通知された判定の結果を移動体100に通知してよい。このとき、データ通信が許可されていれば、移動体100と、外部サーバ200との間において、構築されたBDT用PDUセッションを用いてデータ通信(BDT通信)が行なわれてよい。また、判定部33は、通信の許可時間を管理し、外部サーバへ通信許可ならびに通信許可時間を通知してもよい。この場合、判定部33は、許可時間を過ぎたら、CPF320に対して当該PDUセッションの終了の指示を出すとともに、外部サーバ200に対して通信終了の旨を通知して良い。
【0055】
判定部33による判定の結果、データ通信が不許可となった場合にも、判定の結果が、外部サーバ200に通知された後に(図4のS7)、外部サーバ200から移動体100に通知されてよい。この場合には、タイマー設定部37が設定したバックオフタイマー値も、外部サーバ200から移動体100に通知されてよい。
【0056】
外部サーバ200からデータ通信許可と通知された移動体100は、コアネットワーク装置300側からのPDUセッションの確立を待ち、確立できた後に、外部サーバ200とのデータ通信を開始してよい。このとき、移動体100は、外部サーバ200とのデータ通信を、バックオフタイマー値によって定められた時間行い、当該時間が経過する直前に、再びデータ通信要求を外部サーバ200に通知してよい。なお、データ通信許可の場合は、移動体100が通る推定移動範囲のセルIDが、変換部313のデータベースに記録されてよい。また、データ通信が完了した際には、移動体100から外部サーバ200を介してコアネットワーク装置300のデータ通信制御部311にデータ通信完了通知が通知され、これに応じて、データ通信制御部311から外部サーバ200を介して移動体100に通知を受信した旨の確認通知が通知されてよい。
【0057】
一方、外部サーバ200からデータ通信不許可と通知された移動体100は、外部サーバ200とのデータ通信を行なわない。この場合、移動体100は、バックオフタイマー値によって定められた時間が経過した直後に再びデータ通信要求を外部サーバ200に通知する。バックオフタイマー値が設定されることによって、データ通信が許可されない状態が不都合に継続することがなく、適切なタイミングでデータ送信をリトライすることができる。
【0058】
以上の処理フローにより、移動体の推定移動範囲内に輻輳状態のセルが存在するか否かの情報に基づいた、信頼性の高いデータ通信(BDT通信)を実現できる。
【0059】
〔変形例1〕
判定部33は、データ通信がアップロードであるかダウンロードであるかに応じた各基地局のセルの輻輳状況を用いて、データ通信の可否を判定してもよい。この場合、移動体100からのデータ通信要求が、アップロードの要求であるのか、ダウンロードの要求であるのかを、判定部33が識別すればよい。本例の場合は、判定部33は、予め、アップロードにおいて輻輳状態であるセルを示すリストと、ダウンロードにおいて輻輳状態であるセルを示すリストとが格納されていてよい。そして、判定部33は、識別の結果に応じたリストを用いて、輻輳セルの有無に基づき判定してよい。
【0060】
本例によれば、アップロードとダウンロードとが個別にデータ通信可否を判定される態様となっている。すなわち、アップロードが輻輳状態であってもダウンロードが空いていれば、ダウンロードのデータ通信要求に対して許可することができる。
【0061】
〔変形例2〕
移動体100から、外部サーバ200に対してデータ通信要求が通知される際、通信するデータのデータサイズ、データ通信の緊急度、および移動体100の移動速度(走行速度)に関する情報は、通知されなくてもよい。これらの情報が移動体100から通知されない場合には、外部サーバ200が予め決めた所定値を用いて、これらの情報に相当する値を、コアネットワーク装置300に通知してもよい。本例によれば、通信するデータのデータサイズ、データ通信の緊急度、および移動体100の移動速度(走行速度)に関する情報が移動体100から提供されなかった場合でも、輻輳状況に基づいたデータ通信の可否を上述の実施形態と同等に実現することができる。
【0062】
〔変形例3〕
上述の実施形態では、移動体100の在圏セルIDを在圏セル特定部312が特定しているが、移動体100において在圏セルIDが特定できる態様として、在圏セル特定部312を省略してもよい。
【0063】
すなわち、本例では、図5に示すように、移動体100が、基地局400を介して、外部サーバ200に在圏セルの情報を通知する構成であってもよい。
【0064】
このように、移動体100に、在圏セルIDを特定する在圏セル特定部を搭載してもよい。さらに、ハンドオーバー時も、移動体100がハンドオーバー先の在圏セルIDの情報を取得することができる場合、ハンドオーバー先が輻輳セルであれば、通信を止めることができる。
【0065】
〔変形例4〕
範囲特定部32による推定移動範囲の特定は、移動体から得られる情報があればあるほど必要最小限の範囲に絞ることできる。そして、範囲を絞ることができれば,輻輳を確認するセル数が減り、輻輳セルに当たる可能性も減り、より長時間データ通信を行うことができる。例えば、車の進行方向が分かれば半径Rの範囲を、移動体100を中心とした360度の範囲から例えば180度の範囲(半円状)に絞ることができる。別例では、移動体(車両)が高速道路を走行中と分かれば、高速道路上のセルだけに限定することも可能であり、この場合、当該車両の過去のセルIDをトラッキングして、車の走行方向を判断できる。更に別例としては、車の移動経路情報が分かれば、経路上のセルだけに限定できる。この場合の一具体例としては、自動運転車であれば、Operational Design Domainによる運航設計領域の情報を元に、セルを限定できる。
【0066】
更に別の態様として、半径Rを所定の固定値にしてもよい。これにより、移動体100から、車両速度等の情報を取得しなくとも、ある程度の精度で、推定移動範囲を決定することができる。
【0067】
〔変形例5〕
探知部321は、判定部33が変換部313からセルIDを得る度に判定部33から問い合わせを受け、問い合わせを受けた都度に、当該セルIDのセルの輻輳状況を判定部33に通知する態様であってもよい。この態様であっても、探知部321は、判定部33に、各セルの輻輳状況を示す情報を提供することができる。
【0068】
〔変形例6〕
探知部321は、上述の態様に代えて、過去の統計情報から時間・曜日での該当セルIDの各KPIの未来予測を準備しておき、データ通信制御部311から推定移動範囲内の全セルIDおよびタイムスタンプ入力に対して、各セルの輻輳状況を返す態様としてもよい。この態様であっても、探知部321は、判定部33に、各セルの輻輳状況を示す情報を提供することができる。
【0069】
〔変形例7〕
判定部33は、上述の態様に代えて、探知部321が生成するセルの輻輳状況を示す情報を用いて当該セルに、輻輳セルが一つでも含まれている場合は、データ通信を許可しない一方、輻輳セルが全く含まれていない場合に、データ通信を許可するようにしてもよい。この場合、先述のバックオフタイマー値も算出しない態様であってもよい。本例によれば、輻輳セルの有無に基づき、データ通信の可否を早期に判定することができる。
【0070】
なお、本例においては、バックオフタイマー値を固定値(例えばa分)としておき、判定部33によってデータ通信を許可された場合には、そのバックオフタイマー値の期間ほどデータ通信を可能にすることができる。一方、判定部33によってデータ通信不許可と判定された場合、そのバックオフタイマー値経過後に、再度、データ通信要求を外部サーバ200に通知するようにすればよい。
【0071】
〔変形例8〕
上述の実施形態において判定部33がデータ通信を許可して、移動体100がデータ通信を開始した後、移動体100が、範囲特定部32が特定した推定移動範囲外のセルに接続した場合には、データ通信しているデータのうちの伝送が完了していない残りのデータに基づいて、バックオフタイマー値経過後に、上述したデータ通信可否判定処理を実施し、判定部33が、データ通信の可否を改めて判定してよい。
【0072】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
上述の実施形態1は、判定部33がデータ通信を許可するか否かの判定基準が、推定移動範囲内における輻輳セルの有無である。しかしながら本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、輻輳セルの有無に加えて、推定移動範囲内のセルにおいてデータ通信(特に、大容量データ通信)を行っている移動体の台数に基づいた判定であってもよい。
【0074】
本実施形態では、判定部33が、移動体を中心とした所定の物理的領域に輻輳している輻輳セルが存在する場合には、M台の移動体に対してデータ通信を許可する一方、当該所定の物理的領域に輻輳セルが存在しない場合には、N台の移動体に対して前記データ通信を許可し、
MおよびNには、以下の関係;
N>M
が成り立つよう構成してよい。
【0075】
ここでの所定の物理的領域範囲とは、例えば移動体を中心とする半径Rkmの範囲と規定することができる。一例として、Rkmは、100m~10kmとしてもよい。
【0076】
MとNとの関係については、一例としてMを1とし、Nを100とすることができる。このほか、移動体が車両である場合には、1kmの物理的領域に対して、N<10000台、M<1000台とすることができる。これらはあくまで例であって、N、Mは適宜設定すればよく、移動体を中心とした所定の物理的領域に輻輳している輻輳セルが存在する場合よりも、当該物理的領域に輻輳している輻輳セルが存在しない場合の方が、データ通信が許可される移動体の数が多くなっていればよい。
【0077】
現在データ通信を許可している移動体の台数については、各輻輳セルと、所定の地理的領域に紐づいて、管理サーバが管理することができる。台数は、例えば或る移動体に対してデータ通信(大容量データ通信)を許可した場合にカウントアップすればよい。反対に、許可したデータ通信の期間が切れた場合、あるいはデータ通信を許可した移動体からデータ通信完了の旨のメッセージを管理サーバが受信した場合には、台数をカウントダウンすればよい。
【0078】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0079】
本実施形態では、データ通信要求に対してデータ通信の不許可と判定された移動体、およびデータ通信を一時保留させたい移動体について、コアネットワーク装置側で、キューイング(Queuing)リストとして保持・管理し、所定のタイミングにおいて、コアネットワーク装置から外部サーバに対して、リスト内の移動体からのデータの吸い上げ要求を行ってもよい。具体的には、キューイングリストは、データ通信制御部311において保持および管理される。図6に、キューイングリストの一例を示す。
【0080】
図6のキューイングリストT(2)は、移動体ごとに、在圏セルの情報、当該移動体の属性の情報、データ通信を推奨する時間帯の情報、データ通信の優先度に関する情報、および、データ通信が許可されなかった回数の情報(リトライ回数)が含まれてよい。
【0081】
データ通信制御部311は、判定部33においてデータ通信が不許可であると判定された場合に、その判定対象の移動体の情報を、キューイングリストT(2)へ追加してよい。
【0082】
図2に示すデータ通信制御部311が、キューイングリストT(2)に挙がっている移動体100からデータ通信要求があった場合には、移動特定部30による推定所要時間および推定移動範囲の特定、変換部313によるセルIDの特定、探知部321による探知、および判定部33による判定は行なわず、データ通信要求の受付完了通知としてデータ通信不許可の通知を移動体100に対して行ってよい。
【0083】
そして、キューイングリストT(2)の”データ通信優先順”に従い、データ通信制御部311からデータ通信許可の通知を行ってもよい。この例において、実施タイミングは、コアネットワーク装置300のネットワーク負荷とキューイング台数によって設定することができ、リストアップされる台数が多い場合には、ネットワーク負荷軽減のために、データ通信制御部311での処理間隔を延ばす。例えば、キューイングテーブルに移動体が100台リストアップされていたら、1秒に一回とし、1000台リストアップされていたら10秒などと定める。なお、データ通信不許可を受領した移動体は、外部サーバ200へのデータ通信要求の通知から再度行う。その際、バックオフタイマー値は使用しない。
【0084】
一具体例として、キューイングリストT(2)の優先順位付けの例を、図7に示す。図7に示すスコア表1000ように、各要素のスコアをあらかじめ決めておいてよい。このスコアを用い、図6のキューイングリストT(2)の各移動体の優先度スコアを算出したものを図8に示す。図8に示すテーブルT(3)のように、優先度スコアが高いものほど高優先である。
【0085】
なお、データ通信がアップロードであるかダウンロードであるかによって、異なるキューイングリストを使用してもよい。
【0086】
以上のキューイングリストT(2)を用いた態様は、判定部33によるデータ通信の許可不許可の判定の際に、実施形態1の判定部33によって得られる判定結果を受けて、データ通信が可である場合に、先述の実施タイミングにおいてデータ通信優先順が高い移動体に対して、データ通信を許可する通知を送信してよい。
【0087】
本実施形態の移動体通信システムによれば、データ通信優先度に従って、データ通信(特に大容量データ通信)を安定して実現させることができる。
【0088】
〔変形例1〕
データ通信制御部311は、加入者情報”深夜帯”フラグ有の移動体が日中にデータ通信要求を行った場合にもその移動体の情報を、キューイングリストT(2)へ追加してもよい。なお、加入者情報”深夜帯”フラグは、移動体ごとに管理するものであり、深夜帯を優先し通信させるユーザに対して付与することができる。この”深夜帯”の付与は、移動体(例えばモバイルデバイス)の料金プランに反映することができ、”深夜帯”が付与される移動体は、”深夜帯”を付与されない移動体の料金プランよりも安く設定することができる。
【0089】
〔変形例2〕
ウェアラブル端末(移動体)のように少容量バッテリーで動作しているものは、データ通信によるバッテリー消費の影響が相対的に大きい。そこで、図6のキューイングリストT(2)にあるように、移動体の種類と共にバッテリー残量もリストアップしてもよい。
【0090】
本変形例では、図7に示すスコアリストに加えて、図9に示す移動体の種類とバッテリー残量に応じたスコア(±0、+1、+2、中断)とを対応付けたリストT(4)を含めておいてよい。なお、スコアの「中断」はデータ通信を行うのに十分な残量がないため、データ通信を中断するものである。そして、図9のリストT(4)のスコアを用い、図6のキューイングリストT(2)の各移動体の優先度スコアを算出したデータ通信優先順リストT(5)を図10に示す。図10に示すように、優先度スコアが高いものほど高優先である。
【0091】
本実施形態および変形例の態様によれば、移動体の属性に応じた優先制御が可能である。すなわち、データ通信不許可となった移動体が”high priority”車両だった場合、”middle priority”車両よりも時間的に早くリトライ権を与えることができる。
【0092】
また、時間帯による混雑状況を把握し、優先度の低い車両には、ネットワークが空いている時間帯(閑散期)に通信を行わせるようにしてもよい。一例として、日中および夜間のあらゆる時間帯の混雑状況を探知部321が蓄積し、それを教師データとして機械学習を行い、ネットワークが空いている時間帯を推定してもよい。このような時間帯は、例えば、深夜や早朝となる場合がある。そして、車両属性として”閑散フラグ”が付与されている車両が、閑散期以外の時期にデータ通信要求を受信した場合には、データ通信制御部311は、判定部33による判定を行わずキューイングさせてよい。
【0093】
また、データ通信が不許可であると判定された回数と、不許可となったセルIDを記憶することにより、以降のリトライ制御を変えて、リトライ制御を高度化することも可能である。リトライ制御を変える例としては、同じ輻輳セルで何度も不許可になっている場合には半径Rを狭めたり(駐停車していると判定)、時間帯を変えたり等がある。
【0094】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0095】
本実施形態では、図11に示す移動体通信システム1において、複数の移動体100a,100b,100cからデータ通信要求があることを想定したものである。コアネットワーク装置300のデータ通信制御部311は、各移動体100a,100b,100cの推定移動範囲に含まれる全セルのセルIDを記録する(記録テーブルを図11のテーブルT(6)に示す)。
【0096】
また、本実施形態では、推定移動範囲内の全セルに関し、”Possibly connected cars”に1を加算してよい。”Possibly connected cars”は一定閾値M台以上のセルが存在する場合、それ以上の台数は受け付けないものとすることができる。つまり、それ以降の移動体が当該セルを推定移動範囲に含んでいる場合には、判定部33によってデータ通信不可と判定されてよい。図12は、”Possibly connected cars”と、セルIDとを対応付けしたテーブルT(7)を示す。図12のテーブルT(7)に示すように、セルID「1」のセルは、”Possibly connected cars”が1であり、すなわちセルID「1」のセルに接続できる移動体の台数の閾値が1であることを示す。そこで、図11のテーブルT(6)に基づけば、セルID「1」のセルを推定移動範囲内に含む移動体は、移動体ID「1」の一台であり、閾値を満たしたセルID「1」のセルは輻輳セルと見なし、以降にデータ通信要求をした他の移動体がセルID「1」のセルを推定移動範囲に含む場合には、当該他の移動体のデータ通信を許可しないものとすることができる。
【0097】
なお、データ通信が完了した際には、その移動体の推定移動範囲に含まれていたセルについて、”Possibly connected cars”から1を減算してよい。
【0098】
このように本実施形態によれば、判定部33は、或る移動体の前記推定移動範囲に含まれる全てのセルに関し、当該セル内で当該或る移動体がデータ通信を行うことを予め定めておくとともに、当該全てのセルにおいてデータ通信可能な移動体の台数の閾値を設け、閾値に達したセルでは新たに在圏する移動体のデータ通信を許可しない構成としている。これにより、複数台の移動体にも適切に対応し、安定したデータ通信が可能な移動体通信システムを提供することができる。
【0099】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0100】
先述の実施形態では、移動体からのデータ通信要求がトリガとなってデータ通信の可否が判定される構成である。これに対し、本実施形態では、当該トリガを必要とせず、コアネットワーク装置が主導となってデータ通信の可否を判定し、それを移動体に通知する態様である。
【0101】
図13は、本実施形態の移動体通信システム1Aの概略構成を示すブロック図である。図13に示すコアネットワーク装置300Aのデータ通信制御部311Aには、データ通信の不許可と判定された移動体、およびデータ通信を一時保留させたい移動体と、それらの移動体の優先度とが対応付けられたキューイングリストT(8)が、保持および管理されていてよい。
【0102】
データ通信制御部311Aは、保持するキューイングリストT(8)に基づいて、優先度が高い移動体に対して、外部サーバ200を介してデータ通信許可通知を送信してよい(図13の(i))。図13のキューイングリストT(8)では、優先度「1」の移動体ID「200」の移動体100に対して、当該移動体100からのデータ通信要求の有無に関わらず、データ通信許可通知を通知してよい(図13の(ii))。データ通信許可通知を受信した移動体100は、データ通信要求を、外部サーバ200を介してコアネットワーク装置300Aのデータ通信制御部311Aに通知してよい(図13の(iii))。データ通信制御部311は、この通知を受け取ったことに応じて、外部サーバ200と移動体100との間でのデータ通信を開始させてよい。
【0103】
本実施形態の態様は、例えば、コアネットワーク装置の負荷が比較的小さい時間帯等を利用して、コアネットワーク装置300主導で、以前にデータ通信要求があったもののデータ通信が実現されていない移動体のデータ通信を可能にする。これにより、データ通信すべきデータの取りこぼしを無くして、信頼性の高い移動体通信システムを構築することができる。
【0104】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0105】
本実施形態は、上述の実施形態5に類似した態様であり、コアネットワーク装置主導でおこなわれる。具体的には、本実施形態では、特定のセルに在圏している移動体に対して、データ通信の要否を問い合わせてよい。
【0106】
図14は、本実施形態の移動体通信システム1Bの概略構成を示すブロック図である。図14に示すデータ通信制御部311Bには、通信負荷が低負荷であるか否かがセルIDと対応付けられたテーブルT(9)が、保持および管理されていてよい。更にデータ通信制御部311Bには、低負荷であるセルに在圏している移動体が、低負荷のセルのセルIDと対応付けられたテーブルT(10)が、保持および管理されていてよい。
【0107】
テーブルT(9)は、コアネットワーク装置300の図1のCPF320(低負荷領域特定部)によって作成されてよい。具体的には、探知部321が常時各セル内の負荷を監視しているため、CPF320は、探知部321から各セルの現状の負荷を取得し、それを所定の閾値と比較することによって、低負荷であるセルのセルIDを特定してよい。CPF320(低負荷領域特定部)は、広範囲においてセルの負荷状態が低い領域を特定し、その領域に該当するセルのセルIDを特定する。広範囲とは、一例として、在圏セルの周囲100m~100kmとすることができるが、これに限らない。CPF320は、特定したセルIDをリストアップしてテーブルT3を作成する。
【0108】
テーブルT(10)は、データ通信制御部311Bによって作成される。具体的には、データ通信制御部311Bの判定部33Bが、テーブルT3を取得し、低負荷のセルIDを特定し、そのセルIDのセル内に在圏している移動体100を特定する。
データ通信制御部311Bは、テーブルT(10)を用いて、低負荷であるセルに在圏する移動体を特定してよい。図14の例では、移動体ID「100」の移動体がセルID「1」のセルに在圏し、移動体ID「200」の移動体がセルID「2」のセルに在圏し、移動体ID「300」の移動体がセルID「3」のセルに在圏することを特定してよい。
【0109】
次にデータ通信制御部311Bは、外部サーバ200を介して、移動体ID「100」「200」および「300」の移動体のそれぞれに、データ通信が必要であるかを問い合わせる信号を送信してよい(図14の(i)(ii))。
【0110】
移動体ID「100」「200」および「300」の各移動体では、当該信号を受けて、データ通信が必要であれば、データ通信要求を、外部サーバ200を介してコアネットワーク装置300のデータ通信制御部311に通知してよい(図14の(iii))。データ通信制御部311は、この通知に応じて、外部サーバ200と移動体100との間でのデータ通信を開始させてよい。
【0111】
本実施形態の態様は、コアネットワーク装置の負荷が比較的小さい時間帯等を有効活用して、コアネットワーク装置300主導で、移動体に対してデータ通信の要否を確認することができる。これにより、サーバ負荷を分散させることができ、サーバ負荷が過多となることでデータ通信に支障が生じることを回避し、安定した通信を実現する移動体通信システムを構築することができる。
【0112】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0113】
上述の実施形態1では、図2に示したように、セルの輻輳状況がセルIDと対応付けられたテーブルT(1)(各セルの輻輳状況を示す情報)を、コアネットワーク装置300が保有および管理してよい。これに対し、本実施形態では、当該リストを、コアネットワーク装置300および移動体100Cの両方で保有する態様の一例を示す。
【0114】
本実施形態の移動体通信システム1Cの概要を図15に示す。図15に示す移動体通信システム1Cでは、データ通信制御部311Cにおいて、移動体100Cからのデータ通信要求の通知を受けて、上述の実施形態1と同様に、推定所要時間および推定移動範囲を特定し、探知部321から取得したテーブルT(1)に基づいてデータ通信を許可するか不許可とするのかを判定してよい。
【0115】
次に、判定結果を、外部サーバ200を介して移動体100Cに通知するステップにおいて、本実施形態では、データ通信制御部311Cが、当該判定結果と、データ通信用のPDUセッション番号と、探知部321から取得したテーブルT(1)とを、移動体100Cに通知してよい。
【0116】
通知を取得した移動体100Cは、判定結果が不許可を示すものであれば、実施形態1の場合と同様にバックオフタイマー値の期間は待機してよい。
【0117】
一方、取得した判定結果が許可を示すものであれば、移動体100Cは、取得したデータ通信用のPDUセッション番号に基づいて、当該番号に対応するデータ通信用のPDUセッションを用いて、データ通信を開始してよい。
【0118】
本実施形態では、移動体100CがテーブルT(1)を取得しているため、在圏しているセルが輻輳セルであるかを、移動体100Cにおいて確認することができる。そのため、図16に示すように、移動体100Cが隣接セルにハンドオーバーする時に、移動体100Cが自律で隣接セルが輻輳セルであるか否かを確認部101において確認(判定)することができる。
【0119】
具体的には、移動体100Cは、図16中の(a)に示すように、コアネットワーク装置300のCPF320からハンドオーバーコマンドの通知を受けると、テーブルT(1)に基づいてハンドオーバーした在圏セルが輻輳セルであるか否かを確認部101が判定してよい。そして、輻輳セルでなければ、ハンドオーバーした在圏セルでデータ通信を継続してよい。一方、ハンドオーバーした在圏セルが輻輳セルであれば、移動体100Cからコアネットワーク装置300にPDUセッション解除の通知を行ってよい(図16中の(b))。これにより、データ通信が中断される。中断後、更に別のセルがハンドオーバーした際に、当該セルが輻輳セルでないと確認部101が判定すれば、コアネットワーク装置300にPDUセッションの再開を要求し、中断していたデータ通信を当該セルにおいて再開することができる。
【0120】
また本実施形態のように移動体100CがテーブルT(1)を保有していれば、実施形態1においてデータ通信を開始した後に移動体100Cが推定移動範囲外のセルに接続した際、当該セルが輻輳セルであるかを移動体100C側(確認部101)において確認することができる。なお、このとき、接続したセルがテーブルT(1)に無い場合は、データ通信を中断し、通信完了していない残りのデータについて、実施形態1で説明した移動体からのデータ通信要求の処理を実行してよい。
【0121】
なお、移動体100Cは、定期的あるいは特定の条件下において、データ通信制御部311CからテーブルT(1)の通知を受ける構成とすることが好ましい。これにより、タイムリーな輻輳状況が反映されたテーブルT(1)を移動体100C側が保有することができる。
【0122】
〔変形例〕
上述の実施形態4にあるデータ通信する台数を制限する態様においても、本実施形態のように移動体が保有しているリストに基づいて移動体が通信可否を判定することができる。
【0123】
本例の移動体通信システム1Dを、図17に示す。なお、図17は、実施形態4の図11の移動体通信システムと相違する部分を強調して示している。本例の移動体通信システムにおいても、本実施形態のようにコアネットワーク装置300の判定部33による判定結果と、データ通信用のPDUセッション番号と、探知部321から取得したテーブルT(1)とが、移動体100に通知されてよい。
【0124】
通知を取得した移動体100は、判定結果が不許可を示すものであれば、バックオフタイマー値の期間待機してよい。
【0125】
一方、取得した判定結果が許可を示すものであれば、移動体100は、取得したデータ通信用のPDUセッション番号に基づいて、当該番号に対応するデータ通信用のPDUセッションを用いて、データ通信を開始する。データ通信が完了した際には、移動体100Cが保有するテーブルT(1)に基づいて、通信で用いていたセルについて、”Possibly connected cars”から1を減算する。
【0126】
〔実施形態8〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0127】
上述の実施形態1では、セルの輻輳状況がセルIDと対応付けられたリストを、コアネットワーク装置300(図2)が保有および管理している。これに対し、本実施形態では、当該リストを移動体100Dが保有する態様の一例を示す。
【0128】
本実施形態の移動体通信システムの概要を図18に示す。本実施形態では、実施形態1における判定部33の機能を、移動体100Dが担っている。すなわち、移動体100Dが、実施形態1における判定部33と同様の機能を有する判定部133を有してよい。
【0129】
データ通信制御部311Dにおいて、移動体100からのデータ通信要求の通知を受けて、上述の実施形態1と同様に、推定所要時間および推定移動範囲を特定してよい。また、データ通信制御部311Dは、探知部321から提供されたテーブルT(1)から、推定移動範囲に含まれるセルに限定したテーブルT(1)を生成してよく、生成したテーブルT(1)を、外部サーバ200を介して、移動体100Dに通知してよい。テーブルT(1)を取得した移動体100Dでは、判定部133が、在圏セルが輻輳セルであるかをテーブルT(1)を用いて判定し、輻輳セルではない場合には、データ通信を開始してよい。
【0130】
本実施形態では、移動体100DがテーブルT(1)を取得しているため、在圏しているセルが輻輳セルであるかを、移動体100において確認することができる。そのため、図19に示すように、移動体100が隣接セルにハンドオーバーする時に、移動体100が自律で隣接セルが輻輳セルであるか否かを判定することができる。
【0131】
具体的には、移動体100は、図19中の(a)に示すように、コアネットワーク装置300のCPF320からハンドオーバーコマンドの通知を受けると、判定部133において、ハンドオーバーした在圏セルが、テーブルT(1)に含まれているか確認する。これにより、テーブルT(1)に含まれていれば、ハンドオーバーした在圏セルが輻輳セルであるか否かを自律で判定することができる。そして、輻輳セルでなければ、ハンドオーバーした在圏セルでデータ通信を継続してよい。一方、ハンドオーバーした在圏セルが輻輳セルであれば、移動体100からコアネットワーク装置300にPDUセッション解除の通知を行ってよい(図19中の(b))。これにより、データ通信が中断される。中断後、更に別のセルがハンドオーバーした際に、当該セルが輻輳セルでないと判定すれば、コアネットワーク装置300にPDUセッションの再開を要求し、中断していたデータ通信を当該セルにおいて再開してよい。
【0132】
なお、探知部321から通知部35にセルの輻輳情報が更新されるタイミングで、輻輳情報の更新データを移動体100に送信してもよい。
【0133】
〔実施形態9〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0134】
上述の実施形態3では、キューイングリストT(2)(図6)を用いたデータ通信の可否判定を行っている。これに関連し、本実施形態では、電気自動車等のバッテリーから動力を得て走行する車両(移動体)とのデータ通信に関する。このような車両は、バッテリーが無くなれば走行できなくなる。そのため、バッテリーを消費するデータ通信においても、バッテリーの残量を考慮する必要がある。そこで、当該車両のバッテリー残量を考慮したデータ通信の制御を行う態様の一例を示す。
【0135】
具体的には、本実施形態の移動体通信システムは、車両(移動体)のバッテリー残量が所定の閾値を下回るかを監視し、下回った場合には、その車両を、コアネットワーク装置側でキューイングリストにリストアップして、データ通信を許可しないようにすることを原則とする。
【0136】
一方で、データ通信の緊急度を考慮し、緊急度が高いデータを伝送する必要が生じた場合には、キューイングリストT(2)(図6)に含まれるデータ通信優先度を引き上げる。これにより、データ通信を行い易い条件を整えることができ、バッテリーが無くなる前に、緊急データを車両から吸い上げることが可能となる。
【0137】
緊急度が低いデータについては、バッテリー残量が一定量まで回復するまで、すなわちバッテリー残量低下状態が解消するまで、キューイングを継続して、データ通信を保留する。これにより、緊急度が低いデータのデータ通信を実行することによる更なるバッテリー消費を回避することができる。
【0138】
〔実施形態10〕
本発明には、移動体と、当該移動体とデータ通信を行うサーバとを備えたデータ通信システムも含まれる。以下、本発明の一実施形態に係るデータ通信システムを、図20に基づいて説明する。
【0139】
図20は、本実施形態に係るデータ通信システムの概略構成を示すブロック図である。図20に示すように、データ通信システム600は、移動体100と、当該移動体100と、基地局400およびコアネットワーク装置300を介したデータ通信を行うサーバ200´とを備え、サーバ200´が、コアネットワーク装置300から、複数の基地局400のセルの輻輳状況および移動体100の在圏セルに基づく前記データ通信の可否を受信する通信部210(受信部)を備えている。
【0140】
なお、図20のサーバ200´は、上述の実施形態で説明する外部サーバ200と同等の機能を有し、例えば図2に示す外部サーバ200においてコアネットワーク装置300から通知される判定部33の判定結果を、図20の通信部210が受信する構成となっている。
【0141】
通信部210は、上述の実施形態において移動体100から通知されるデータ通信要求を受信する構成であるとともに、移動体100へのデータ通信可否の判定結果の通知を行う構成である。
【0142】
更にサーバ200´は、通信部210を制御する主制御部220を備える。
【0143】
移動体100も、上述の実施形態で説明する移動体100と同等であり、データ通信要求をサーバ200´の通信部210に送信する通信部140を備える。通信部140は、外部サーバ200の通信部210から通知されるデータ通信可否の判定結果を受信する。
【0144】
更に移動体100は、通信部140を制御する主制御部150を備える。
【0145】
本実施形態のデータ通信システム600によれば、移動体の推定移動範囲内のセルの輻輳状態に基づくデータ通信の可否の判定結果に基づいて、サーバと移動体との間でのデータ通信を行うことができる。そのため、大容量のデータ通信が必要である場合に、移動中にデータ通信が途切れず大容量データ通信を安定して実現するデータ通信システムを実現することができる。さらに、移動体が、当該タイミングを外部サーバから通知されることにより、移動体も当該タイミングを知ることができるので、データ通信要求をサーバに対して過度に行ってしまうことがなくなる。
【0146】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0147】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るコアネットワーク装置は、サーバおよび複数の基地局と接続しているコアネットワーク装置であって、各基地局のセルの輻輳状況および移動体の在圏セルに基づいて、前記移動体と前記サーバとのデータ通信の可否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を、前記サーバに通知する通知部と、を備える。
【0148】
また、本発明の一態様に係る移動体通信システムは、上述の構成を具備するコアネットワーク装置と、前記サーバと、前記移動体と、を備える。
【0149】
また、本発明の一態様に係るデータ通信システムは、移動体と、前記移動体と、基地局およびコアネットワーク装置を介したデータ通信を行うサーバと、を備えたデータ通信システムであって、前記サーバは、前記コアネットワーク装置から、複数の基地局のセルの輻輳状況および前記移動体の在圏セルに基づく前記データ通信の可否を受信する受信部を備えている。
【符号の説明】
【0150】
1、1A、1B、1C、1D 移動体通信システム
30 移動特定部
31 時間特定部
32 範囲特定部
33、33B、133 判定部
35 通知部
37 タイマー設定部
100、100a、100b、100c、100C、100D 移動体
101 確認部
200 外部サーバ(サーバ)
200´ サーバ
210 通信部(受信部)
300、300A コアネットワーク装置
310 コア機能部
311、311A、311B、311C、311D データ通信制御部
312 在圏セル特定部
313 変換部(範囲内セル特定部)
320 CPF
321 探知部
400 基地局
500 セル
600 データ通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20