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特許7317922冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム
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  • 特許-冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム 図1
  • 特許-冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム 図2
  • 特許-冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム 図3
  • 特許-冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム 図4
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  • 特許-冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム 図7
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  • 特許-冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】冷却流体誘導ハウジング、および、冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステム
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20230724BHJP
   H01R 43/18 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01R13/533 A
H01R43/18
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176011
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2022074079
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】10 2020 128 791.7
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ディルク デュンケル
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208737932(CN,U)
【文献】実公昭49-009937(JP,Y1)
【文献】中国実用新案第207116763(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047091(US,A1)
【文献】特開2019-121476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/533
H02K 9/14
H02K 5/20
H05K 7/20
B60L 53/16
H01R 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ(102)および相手側コネクタ(104)を備える電気コネクタシステム(100)にわたって冷却流体(114)を誘導するための冷却流体誘導ハウジング(106)であって、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、
- 前記冷却流体誘導ハウジング(106)を前記コネクタ(102)のコネクタハウジング(110)に接触させることを可能とする少なくとも1つの支持要素(130)が配置される第1のセクションと、
- 前記コネクタ(102)を受けた後に前記冷却流体誘導ハウジング(106)の内壁が所定の距離を空けて前記コネクタハウジング(110)の外壁(140)に沿うように前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁が構成される第2のセクションと、
を備え、
前記第2のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジングの前記内壁は、前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定し、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記冷却流体(114)を前記少なくとも1つの冷却チャネルに導入することを可能とする少なくとも1つの冷却流体接続部(108)を備えるとともに、

前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記少なくとも1つの冷却チャネルの一部を画定するように、かつ前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)に沿って前記冷却流体(114)を誘導するように構成された少なくとも1つの冷却流体誘導壁(138)を備える、
冷却流体誘導ハウジング(106)。
【請求項2】
前記冷却流体接続部(108)は、接続ポート、接続フランジ、または接続ソケットとして構成されている、
請求項1に記載の冷却流体誘導ハウジング(106)。
【請求項3】
前記冷却流体(114)は空気または窒素である、
請求項1または2に記載の冷却流体誘導ハウジング(106)。
【請求項4】
前記冷却チャネルは、前記冷却流体誘導ハウジング(106)における前記冷却流体接続部(108)を始点として、冷却流体が出るための出口開口部(126)を通るように前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)に沿って外方に開口している、
求項1から3のいずれか一項に記載の冷却流体誘導ハウジング(106)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却流体誘導ハウジング(106)を有するコネクタ(102)および相手側コネクタ(104)を備える電気コネクタシステム(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの冷却チャネルは、前記少なくとも1つの冷却チャネルを前記コネクタハウジング(110)内の熱源の方向に導くことが可能なように、前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)に沿って導かれる、
請求項5に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項7】
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記冷却流体を下流に運び去るための少なくとも1つの第2の冷却流体接続部(108)を備える、
請求項5または6に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項8】
入口セクションにおける、前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁と前記コネクタハウジング(110)の前記外壁との間の、前記第2のセクションにおける前記所定の距離は、前記少なくとも1つの冷却チャネルの出口セクションのものとは異なる、
請求項5から7のいずれか一項に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項9】
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記相手側コネクタ(104)のためのコンタクト要素アクセス(116)の方向において、前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)と面一に終端する、
請求項5から8のいずれか一項に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項10】
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記相手側コネクタ(104)を受けるようにさらに構成され、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は第3のセクションを備え、前記第3のセクションでは、前記相手側コネクタ(104)の相手側コネクタハウジング(112)の外壁(150)に前記第3のセクションにおける前記内壁が所定の距離を空けて沿うように前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁が構成され、
前記第3のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁は、前記相手側コネクタハウジング(112)の前記外壁(150)を少なくとも部分的に取り囲む前記少なくとも1つの冷却チャネルを画定する、
請求項5から8のいずれか一項に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項11】
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、複数の冷却シェル(118、120)を備え、
前記冷却シェル(118、120)の各々は、それぞれの前記冷却シェル(118、120)を他の前記冷却シェル(118、120)のうちの少なくとも1つに締結することを可能とする締結要素(122)を備える、
請求項5から10のいずれか一項に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項12】
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記第2のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジングの前記内壁が、前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)と共に、各々、複数の独立した冷却チャネルを形成するように構成されている、
請求項5から11のいずれか一項に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項13】
前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)は、前記少なくとも1つの冷却チャネルを画定する少なくとも1つの流体誘導要素を備える、
請求項5から12のいずれか一項に記載の電気コネクタシステム(100)。
【請求項14】
電気コネクタシステム(100)にわたって冷却流体(114)を誘導するための冷却流体誘導ハウジング(106)を有する電気コネクタシステム(100)を設置するための方法であって、
- コネクタ(102)および相手側コネクタ(104)を備える前記電気コネクタシステム(100)を提供するステップと、
- 前記冷却流体誘導ハウジング(106)を取り付けるステップと
を含み、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、少なくとも1つの支持要素(130)が配置される第1のセクションにおいて、前記コネクタ(102)のコネクタハウジング(110)に接触させられ、
第2のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の内壁が、所定の距離を空けて前記コネクタハウジング(110)の外壁(140)に沿い、前記第2のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁は、前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定し、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記冷却流体(114)を前記少なくとも1つの冷却チャネルに導入することを可能とする少なくとも1つの冷却流体接続部(108)を備えるとともに、

前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記少なくとも1つの冷却チャネルの一部を画定するように、かつ前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)に沿って前記冷却流体(114)を誘導するように構成された少なくとも1つの冷却流体誘導壁(138)を備える、
方法。
【請求項15】
電気コネクタシステム(100)にわたって冷却流体(114)を誘導するための冷却流体誘導ハウジング(106)を有する電気コネクタシステム(100)を設置するための方法であって、
- コネクタ(102)および相手側コネクタ(104)を備える前記電気コネクタシステム(100)を提供するステップと、
- 前記冷却流体誘導ハウジング(106)を取り付けるステップと
を含み、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、少なくとも1つの支持要素(130)が配置される第1のセクションにおいて、前記コネクタ(102)のコネクタハウジング(110)に接触させられ、
第2のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の内壁が、所定の距離を空けて前記コネクタハウジング(110)の外壁(140)に沿い、前記第2のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁は、前記コネクタハウジング(110)の前記外壁(140)を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定し、
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、前記冷却流体(114)を前記少なくとも1つの冷却チャネルに導入することを可能とする少なくとも1つの冷却流体接続部(108)を備えるとともに、

前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、第3のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁が所定の距離を空けて前記相手側コネクタ(104)の相手側コネクタハウジング(112)の外壁(150)に沿うようにして取り付けられ、
前記第3のセクションにおける前記冷却流体誘導ハウジング(106)の前記内壁は、前記相手側コネクタハウジング(112)の前記外壁(150)を少なくとも部分的に取り囲む前記少なくとも1つの冷却チャネルを画定する
法。
【請求項16】
前記冷却流体誘導ハウジング(106)は、複数の冷却シェル(118、120)を備え、
前記冷却シェル(118、120)の各々は、それぞれの前記冷却シェル(118、120)を他の前記冷却シェル(118、120)のうちの少なくとも1つに締結することを可能とする締結要素(122)を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却流体誘導ハウジング(106)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタシステムにわたって冷却流体を誘導するための冷却流体誘導ハウジングに関する。また本発明は、コネクタおよび相手側コネクタならびに冷却流体誘導ハウジングを備える電気コネクタシステムに関する。本発明はさらに、好ましくは車両分野のための、電気コネクタシステムにわたって冷却流体を誘導するための冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステムを設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分野(電子工学、電気工学、電気学、電力工学等)において、大きい帯域幅の電流、電圧、周波数、および/またはデータレートを有する電流、電圧、信号、および/またはデータを伝送するように機能する多数の電気コネクタ装置またはデバイス、ソケット、ピンおよび/またはハイブリッドコネクタ等(以下、(電気)コネクタと(嵌合コネクタとも)称する)が知られている。低い、中程度の、または高い電圧および/または電流の範囲において、特に車両分野において、そのようなコネクタは、機械的に負荷のかかる環境、暖かい、場合によっては高温の環境、汚染された環境、湿気のある環境、および/または化学浸食性環境において、電力、信号、および/またはデータの高速な伝送を、恒久的に、反復的に、および/または比較的長期間にわたって不使用であった後に、保証しなければならない。幅広い用途に起因して、多数の特別に設計されたコネクタが知られている。
【0003】
そのようなコネクタ、および、場合によっては(例えばコネクタ装置またはコネクタデバイスの場合)それに付随するハウジング、または(例えばコネクタデバイスの場合)上位のハウジングは、(電力)電気的、電子光学的、もしくは電子部品または対応する集合体等(電気エンティティ)の、以下で(電気的)事前組み立て済みケーブルと称される、電線、ケーブル、ケーブルハーネス等に、または、電気デバイスまたは装置、例えばハウジング、リードフレーム、プリント回路基板等に取り付けられる場合がある。
【0004】
コネクタ(ハウジングを有する/有しない)がそれぞれケーブル、電線、またはケーブルハーネスに配される場合、これはフローティング(プラグ)コネクタまたはプラグ、ソケット、または継ぎ手と称され、電気的、電気光学的、または電子部品、集合体等に配される場合、これはコネクタデバイス、例えば(内蔵/実装)コネクタ、(内蔵/実装)プラグ、または(内蔵/実装)ソケットと称される。さらに、そのようなデバイスにおけるコネクタはしばしば、(コネクタ)レセプタクル、ヘッダソケット、ピンヘッダ、またはヘッダと称される。電気エネルギー技術(好ましくは三相高圧送電による、配電網における高電流の生成、変換、格納、移送、および転送)に関して、ここでは、その比較的複雑な構成に起因して、これをケーブル器具と称す。
【0005】
そのようなコネクタは、完璧な送電を保証しなければならず、互いに対応し合い部分的に相補的なコネクタ(コネクタおよび相手側コネクタ)は通常、コネクタを相手側コネクタにまたは逆方向に恒久的かつ通常は解放可能にロックおよび/または締結するためのロックデバイスおよび/または締結デバイスを備える。さらに、例えば実際のコンタクト装置(主に物質的に1つの部分として、または一体に形成される端子、例えばコンタクト要素等)、またはコンタクトデバイス(主に複数の部分、2つの部分として、単一の部分として、物質的に単一体としてまたは一体に形成される端子、例えば単一部分または複数部分の(圧着)コンタクトデバイス)を有するまたは備える、コネクタのための電気接続デバイスが、そこにしっかりと受けられる必要がある。(事前)組み立て済み電気ケーブルの場合、そのような接続デバイスは、コネクタ(上記参照)として、すなわちハウジングなしで、例えばフローティング方式で設けられ得る。
【0006】
電気コネクタおよびその端子を改良するため、特にそれらをより効率的に設計し、より安価に構成および/または製造するための取り組みが、絶えず行われている。車両のドライブトレインのハイブリッド化および電化を向上するとともに、補助ユニットの電化を向上することは、とりわけ、対処されない場合には悪影響を及ぼし得る熱的負荷を必然的に伴う。これはとりわけ、車両における電気プラグ接続部に関連する。電力工学の分野におけるケーブル器具について知られているように、冷却の必要性がますます高まっている。
【0007】
米国特許出願公開第8,926,360号は、能動冷却デバイスを有する電気接続部を開示している。当該電気接続部は、メス端子およびオス端子から構成された少なくとも1つの電気接続部を備える。少なくとも1つのメス端子は、任意選択的に耐熱電気絶縁体によって取り囲まれ、比較的良好に熱を伝導するヒートシンクと共に電気デバイスの壁に収まるように構成されている。さらに、メス端子は、メス端子で生成される熱をメス端子から放散することができるように、開口部を備える。メス端子とオス端子との間で生成される熱は、ファンにより電気接続部の周囲空気を介してヒートシンクおよびメス端子の開口部から運び去られ得る。
【0008】
さらに、米国特許第9,287,646号は、電気コネクタがケーブルなどの電線アセンブリに接続される電気接続部を開示している。ここで、電気コネクタまたは電線アセンブリのいずれかが、実質的に電線アセンブリに沿ってかつ電気コネクタを通って流れる熱輸送媒体によって能動冷却される。
【0009】
しかしながら、既知の電気コネクタシステムは、冷却剤が、電気コネクタシステムのコンタクト要素に堆積し得る不純物を例えば塵粒子または水分として後に残しながら、コネクタハウジングの内部を流れるという短所を有する。この汚染は、コンタクト要素に腐食および他の損傷をもたらす場合があり、それにより、電気コネクタシステムの耐用寿命が低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、製造されるコネクタシステムが安全かつ高信頼でありながらも安価に製造可能でありかつ占有する設置スペースが小さくなるように、既知の解決策の短所を克服する電気コネクタシステムのための冷却を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって満足される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
本発明は、冷却流体が流通可能であり、電気コネクタシステムに取り付け可能な独立した冷却流体誘導ハウジングを提供することにより、追加のスペース要求を最小限にして能動冷却を実現する着想に基づく。冷却流体誘導ハウジングは、接触点(以下ホットスポットとも称する)の近傍においてコネクタハウジングの外壁に沿った外面上で有利に冷却流体を伝導し、電気接続部によって電気コネクタシステムで生成されコネクタハウジングに伝わる熱を吸収し、それをコネクタハウジングの外壁に沿ってそれぞれのヒートシンクに移送する。結果として、特に効率的な熱管理およびそれによる効率的なエネルギー移動を実現することができる。
【0013】
コネクタおよび相手側コネクタを備える電気コネクタシステムにわたって冷却流体を誘導するための冷却流体誘導ハウジングは、特に、冷却流体誘導ハウジングをコネクタのコネクタハウジングに接触させることを可能とする少なくとも1つの支持要素が配置される第1のセクションと、コネクタを受けた後に冷却流体誘導ハウジングの内壁が所定の距離を空けてコネクタハウジングの外壁に沿うように冷却流体誘導ハウジングの内壁が構成される第2のセクションとを備える。
【0014】
本発明によれば、第2のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁は、コネクタハウジングの外壁を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定し、冷却流体誘導ハウジングは、冷却流体を少なくとも1つの冷却チャネルに導入することを可能とする少なくとも1つの冷却流体接続部を備える。
【0015】
このようにして、冷却流体誘導ハウジングを、支持要素(support elements)を用いて電気コネクタに固定的に取り付けることができる。さらに、結果として得られる冷却チャネルは、コネクタハウジングの外側の周りに冷却流体が誘導されることを可能とする。これにより、冷却流体にコネクタハウジングの内部を通過させる必要がなくなる。これは、電線またはコンタクト要素に汚染を、したがって損傷をもたらす場合がある。
【0016】
流体移送のための冷却チャネルの支配断面(ruling section)または有効容積を画定する、冷却流体誘導ハウジングとコネクタハウジングの外壁との間の距離は、ここで、冷却効率を増大させるために、冷却流体誘導ハウジングの内壁がコネクタハウジングの外壁に密に寄り添うように選択され得る。
【0017】
好適な冷却流体は空気であるが、例えば窒素などの異なる気体であってもよい。ここで窒素は、例えば、車両に搭載される圧力変動吸着プロセス(PSA:pressure swing adsorption process)によって周囲空気から分離され得る。気体という用語は、勿論、気体混合物(空気を参照)という用語も含むものとする。代替的に、冷却流体は、車両の冷却回路に既に存在するような冷却剤であってもよい。冷却流体は、例えば、空調ユニットによって予め冷却された冷却流体であってもよく、または、ファンまたはコンプレッサおよび場合によってはラジエータから発生する予め冷却されていない冷却流体であってもよい。
【0018】
冷却流体誘導ハウジングは、好ましくは、接続ポート、接続フランジ、または接続ソケットとして構成され得る。冷却流体誘導ハウジングは、単一の、厳密に2つの、または複数の冷却流体接続部を有し得る。これにより、複数の箇所において冷却流体が冷却チャネルに供給され得る。しかしながら、代替的に、異なる冷却流体接続部の各々が、冷却チャネルのうちの1つまたは複数に冷却流体を供給してもよい。これにより、互いに独立したいくつかの冷却チャネルが冷却流体誘導ハウジングによって画定され得る。
【0019】
接触点の近傍において可能な限り選択的にコネクタハウジングの外壁に沿って冷却流体を誘導するために、冷却流体誘導ハウジングは、好ましくは、少なくとも1つの冷却チャネルの一部を画定するように構成される少なくとも1つの冷却流体誘導壁を備える。ホットスポットとして機能するのは、冷却流体が誘導される接触点のみではなく、コネクタハウジングに沿ったさらなるホットスポットが、例えばシミュレーションによって事前に画定され得る。このとき冷却流体誘導壁は、少なくとも1つの冷却チャネルがこれらのさらなるホットスポットに可能な限り効率的に導かれるように、少なくとも1つの冷却チャネルを画定し得る。
【0020】
有利な実施形態によれば、冷却チャネルは、冷却流体誘導ハウジングにおける冷却流体接続部を始点として、冷却流体が出るためのチャネル開口部を通るようにコネクタハウジングの外壁に沿って外方に開口し、冷却チャネルは、チャネル開口部から離れた位置で、冷却流体誘導ハウジングの内壁に沿った少なくとも1つの別の箇所において気体を透過可能(permeable)であるように構成されている。
【0021】
加熱された冷却流体は、気体を透過可能なこの箇所を通して、特に簡単に冷却チャネルから運び去られ得る。気体を透過可能な冷却チャネルの箇所は、例えばさらなる冷却流体接続部によって形成されてもよく、これを介して、加熱された冷却流体が冷却回路のそれぞれのヒートシンクに運ばれる。
【0022】
本発明はさらに、本発明に係る冷却流体誘導ハウジングを有する、コネクタおよび相手側コネクタを備える電気コネクタシステムに関する。
【0023】
(相手側)コネクタは、特に低電圧(相手側)コネクタとして、好ましくは車両の電気システムのための車両(相手側)コネクタとして構成されている。5kV未満の電圧が低電圧とみなされる。したがって、本発明に係る電気コネクタシステムは、場合によっては短期的な500Aまでの電流と共に、1kV~5kVの電圧までの低電圧用に構成され得る。
【0024】
これは特に、コネクタが、表面電荷の除去、電界分布、電磁遮蔽等のための外部遮蔽物(導電層、保護カバー等)をそのコネクタハウジングにおいて有しないことを意味する。これは、コネクタハウジングが、特に外側において非導電性であることを意味する。コネクタハウジングの内側には、特別に構成されたファラデーケージ(Faraday cage)がないことが好ましいが、シールド同軸ケーブルまたはツイストペアケーブルのアプリケーションを除く。それらのケーブルは、その特有の構造に起因してそのようなものを呈するが、ケーブル器具の場合と同様にそれを別個に備えない。
【0025】
さらに、本発明に係る電気コネクタシステムは、特に、電界制御部材、接地デバイス、容量分圧器、容量試験箇所(capacitive test point)、シーリングプラグ、例えば地下、特に埋設された箇所での使用のための保護、UV保護、および/または焼き付き保護(seizure protection)を備えない。さらに、本発明に係るコネクタのコンタクト要素は、ねじ山を有しないことが好ましい。車両は、陸上車両(路上走行車両、オフロード車両、および/または鉄道車両)、船艇(ディスプレーサーおよび/またはグライダー)、および/または航空機(プロペラ駆動航空機、ジェット航空機、ヘリコプター、および/または飛行船)として理解され得る。
【0026】
好適な実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルは、少なくとも1つの冷却チャネルをコネクタハウジング内の熱源の方向に導くことが可能なように、コネクタハウジングの外壁に沿って導かれる。熱源は、電気コネクタシステムにおける接触点であってもよく、または、電流が電気コネクタシステムを通って流れたときに生じるシミュレーション結果によって決定される任意の他のホットスポットであってもよい。
【0027】
冷却流体誘導ハウジングは、有利には、冷却流体を下流に運び去るための少なくとも1つの第2の冷却流体接続部を備える。このようにすることで、加熱された冷却流体を、冷却回路の対応するヒートシンクに特に容易に運ぶことができる。再び冷却された冷却流体は、その後、冷却流体誘導ハウジングの内部に再度供給され得る。
【0028】
さらなる有利な実施形態によれば、冷却流体誘導ハウジングの内壁とコネクタハウジングの外壁との間の、第2のセクションにおける所定の距離は、入口セクションにおける、少なくとも1つの冷却チャネルの出口セクションのものとは異なる。
【0029】
このようにして、冷却チャネルの入口セクション(例えば冷却流体接続部または冷却チャネルの隣接する下流セクション)における流体移送のための冷却チャネルの支配断面または有効容積は、冷却チャネルの出口セクション(例えば冷却流体接続部、または気体を透過可能な冷却流体誘導ハウジングの開口部、または冷却チャネルの隣接する上流セクション)のものとは異なり得る。ここで、冷却チャネルの入口セクションにおける支配断面または有効容積を、例えば冷却チャネルの出口セクションにおけるその下流に配される相当するセクションにおけるものよりも小さくすることが好適である。
【0030】
冷却流体誘導ハウジングは、相手側コネクタのためのコンタクト要素アクセスの方向において、有利には、コネクタハウジングの外壁と面一に終端し得る。冷却流体誘導ハウジングの終端およびコネクタハウジングの外壁は、封止されるように構成され得る。このようにすることで、冷却流体誘導ハウジングにおける冷却チャネルは、相手側コネクタのための端子アクセスから離れるように導かれる。これは、コネクタハウジングにおけるホットスポットによって加熱された冷却流体が相手側コネクタの方向に漏れ、それにより相手側コネクタを加熱することを防止する。
【0031】
さらなる有利な実施形態によれば、冷却流体誘導ハウジングは、相手側コネクタを受けるように構成されてもよく、冷却流体誘導ハウジングは第3のセクションを備える。第3のセクションでは、相手側コネクタの相手側コネクタハウジングの外壁に第3のセクションにおける内壁が所定の距離を空けて沿うように冷却流体誘導ハウジングの内壁が構成され、第3のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁は、相手側コネクタハウジングの外壁を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定する。
【0032】
このようにすることで、コネクタハウジングに加えて相手側コネクタハウジングも冷却することができる。これにより、冷却効率をさらに増大させることができる。このとき、冷却チャネルは、コネクタハウジングの外壁とともに、相手側コネクタハウジングの外壁を少なくとも部分的に取り囲む。
【0033】
電気コネクタまたは電気プラグ接続部への冷却流体誘導ハウジングの最も簡単な可能な取り付けを確実にするために、冷却流体誘導ハウジングは、複数の冷却シェルを備え得る。冷却シェルの各々は、それぞれの冷却シェルを他の冷却シェルのうちの少なくとも1つに締結することを可能とする締結要素を備える。
【0034】
しかしながら、代替的に、冷却流体誘導ハウジングは勿論、一体にまたは物質的に一体に形成されてもよい。少なくとも1つの冷却流体接続部は、冷却流体誘導ハウジングの一体の構成要素であってもよい。このとき、単一の原料片(例えば素材(blank))から、または単一の原料塊(例えばプラスチック溶融液)から冷却流体誘導ハウジングを製造することが可能である。
【0035】
冷却流体誘導ハウジングは、有利には、第2のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁およびコネクタハウジングの外壁が各々、複数の独立した冷却チャネルを形成するように構成され得る。この構成は、コネクタハウジングがモジュラー構造を有し、複数のコネクタモジュールを備える場合に特に有利である。複数のコネクタモジュールの各々において、電気端子が形成され得るまたは形成される。この場合、挿入されるコネクタモジュールに付随する冷却チャネルのみに冷却流体が供給され、他の冷却チャネルは例えばブラインドプラグまたはブラインドフランジによって閉じられる場合がある。よって、冷却の効率をさらに増大させることができ、同時に、規格化された冷却流体誘導ハウジングを製造することが可能である。
【0036】
電気コネクタシステムにおいて冷却流体を効率的に熱源に誘導するために、コネクタおよび/または相手側コネクタの外壁は、少なくとも1つの冷却チャネルを画定する少なくとも1つの流体誘導要素を備え得る。流体誘導要素は、同様にコネクタハウジングの外壁に沿って冷却流体を誘導するように構成される、冷却流体誘導ハウジングの追加の冷却流体誘導壁に相補的なものであり得る。
【0037】
本発明はさらに、電気コネクタシステムにわたって冷却流体を誘導するための冷却流体誘導ハウジングを有する電気コネクタシステムを設置するための方法に関する。
本方法は、
コネクタおよび相手側コネクタを備える電気コネクタシステムを提供するステップと、
冷却流体誘導ハウジングを取り付けるステップと、を含み、
冷却流体誘導ハウジングは、少なくとも1つの支持要素が配置される第1のセクションにおいて、コネクタのコネクタハウジングに接触させられ、
第2のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁が、所定の距離を空けてコネクタハウジングの外壁に沿い、第2のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁は、コネクタハウジングの外壁を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定し、
冷却流体誘導ハウジングは、冷却流体を少なくとも1つの冷却チャネルに導入することを可能とする少なくとも1つの外部冷却流体接続部を備える。
【0038】
本発明に係る能動冷却(active cooling)は、有利には、相手側コネクタまで延びていてもよい。このとき、本方法は加えて、第3のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁が所定の距離を空けて相手側コネクタの相手側コネクタハウジングの外壁に沿うように冷却流体誘導ハウジングが取り付けられることを含み、第3のセクションにおける冷却流体誘導ハウジングの内壁は、相手側コネクタハウジングの外壁を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの冷却チャネルを画定する。
【0039】
本発明のよりよい理解のために、以下の図に示す実施形態を参照してより詳細に説明する。同じ部分には、同じ参照符号および同じ構成要素名を付す。さらに、図示および説明されている様々な実施形態からのいくつかの特徴または特徴の組み合わせは、それら自体において、独立である、発明的である、または本発明に係る解決策を表し得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】第1の例に係る電気コネクタシステムの模式的斜視図を示す。
図2】第1の例に係る電気コネクタシステムのさらなる模式的斜視図を示す。
図3】第1の例に係る電気コネクタシステムのさらなる模式的斜視図を示す。
図4】第1の例に係る電気コネクタシステムの模式的分解組立図を示す。
図5】冷却流体誘導ハウジングの冷却シェルの模式的斜視図を示す。
図6】第1の例に係る電気コネクタシステムの模式的断面図を示す。
図7】第2の例に係る電気コネクタシステムの模式的分解組立図を示す。
図8】第2の例に係る電気コネクタシステムのさらなる模式的分解組立図を示す。
図9】第2の例に係る電気コネクタシステムの模式的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、特にまず図1および図2の模式的斜視図を参照して、本発明をより詳細に説明する。全ての図面におけるサイズの比、特に層の厚さの比は、必ずしも縮尺通りに示されていないことに留意されたい。さらに、理解に必要でないまたは理解の妨げとなる部分は示されていない。コネクタおよび相手側コネクタ、端子および相手側端子等のような呼称は、同義に、すなわち場合によっては互いに交換可能なものとして解釈されるべきである。
【0042】
図1は、互いに差し込まれる、本発明の第1の有利な実施形態に係る電気コネクタシステム100の2つの(電気)コネクタ102および104の模式的斜視図を示す。ここで電気コネクタ102は、好ましくはフローティング(floating)式のソケットコネクタ102として構成され、一方で、以下では相手側コネクタ104と称するコネクタ104は、ここではコネクタレセプタクル104、ヘッダソケット104、ピンヘッダ104、またはヘッダ104として構成されている。ここでコネクタ102は、組み立て済み電気ケーブルまたは電気エンティティの一部であり得る。
【0043】
電気コネクタ102は、少なくとも1つの電気コンタクト要素(不図示)が形成されるまたは形成され得るコネクタハウジング110を備える。同様に、相手側電気コネクタ104は、少なくとも1つの電気コンタクト要素(不図示)が形成されるまたは形成され得る相手側コネクタハウジング112を備える。コネクタハウジング110および相手側コネクタハウジング112は各々、プラスチック材料などの絶縁材料から製造される。
【0044】
コネクタハウジング110を相手側コネクタハウジング112に差し込むことにより、少なくとも1つのコンタクト要素は、接触点において少なくとも1つの相手側コンタクト要素と導電接触することができ、それにより、電流が電気コネクタシステム100を通して流れること可能となる。
【0045】
図2は、冷却流体誘導ハウジング106によって取り囲まれるコネクタ102の模式的斜視図を示す。相手側電気コネクタ104は、この図2では示していない。これによりコンタクト要素受けチャンバ116が視認可能となり、これを介してコネクタ102が相手側コネクタ104のコンタクト要素を受けることができる。
【0046】
電流が電気コネクタシステム100を通過するときに生成される熱を放散することによって電気コネクタシステム100を冷却するために、コネクタハウジング110は、図1および図2の例に示すように、大部分が冷却流体誘導ハウジング106によって取り囲まれる。冷却流体誘導ハウジング106は、コネクタハウジング110の内部で生成される熱を運び去るために、少なくとも部分的にコネクタハウジング110の外側の周りに、冷却流体114、好ましくは空気を誘導するように構成される。この目的で、冷却流体誘導ハウジングは、冷却チャネルが冷却流体誘導ハウジングの内壁によって画定され、よって冷却セクションにおいて冷却チャネルに導入される冷却流体114をコネクタハウジング110の外壁の周りに流れさせる、冷却セクション(第2のセクション)を備える。ここで冷却セクションは、必ずしも連続的でなく、各々が例えば独立した冷却チャネルを画定する複数のサブセクションからなっていてもよい。
【0047】
図1および図2にさらに示すように、冷却流体誘導ハウジングは、締結要素122によって互いに接続され得る上側シェル118および下側シェル120を備え得る。これにより、電気コネクタシステム100への冷却流体誘導ハウジング106の簡単な組み付けを確実にすることができる。しかしながら、冷却流体誘導ハウジングの二部分設計は、本発明に必須なものではない。冷却流体誘導ハウジングは代替的に、単一の部分として(または一体に)形成されてもよく、または複数の個々のシェルから組み立てられてもよい。
【0048】
ここで締結要素122は、例として、上側シェル118および下側シェル120をリベットまたはネジを用いて互いに締結することを可能とする孔状の凹部124が設けられ得る突起部として示されている。代替的に、締結要素122は、上側シェル118および下側シェル120を互いに強固に接続することを可能とするラッチングデバイスを有してもよい。さらに、上側シェル118および下側シェル120は、互いに接着によって接合されてもよい。
【0049】
冷却流体誘導ハウジング106を電気コネクタシステム100に安定的に取り付けることを可能とするために、冷却流体誘導ハウジングは、コネクタハウジング110、相手側コネクタハウジング112またはその両方に接触させられ、冷却流体誘導ハウジング106を支持する支持要素(後に示す)を有する。
【0050】
冷却流体114を冷却流体誘導ハウジング106に導入するために、冷却流体誘導ハウジング106は、好ましくは接続ポート108として構成された冷却流体接続部(cooling fluid connection)108を備える。これにより、ホース状の冷却流体供給線を、それぞれの接続ポート108に単に押し込むまたは差し込むことができ、場合によってはさらにそこに固定することができる(不図示)。勿論、例えば接続フランジ、接続ソケット等のように、接続ポート108に代えて異なる流体ショット[fluid shot、原文のママ]を選択することが可能である。全ての実施形態において、気体シールが用いられてもよい。
【0051】
導入される冷却流体は、冷却流体接続部108の領域における入口開口部を始点として、冷却流体が出口開口部126において冷却流体誘導ハウジング106の内部から再び出ることができるまで、コネクタハウジング110の外壁に沿って流れ得る。ここで示しているように、出口開口部は、例えば、例えば電気ユニットなどの電気ケーブルまたは電気デバイスの接続部の領域における開口部によって形成され得る。勿論、出口開口部126は、冷却流体誘導ハウジング106の他の領域に設けられてもよい。特に、上側シェル118と下側シェル120との間の移行部は、流体を透過可能であるように構成され得る。これにより、これらの移行部は、冷却流体誘導ハウジング106の内部の加熱された冷却流体のための追加の通気オプションを供する。
【0052】
しかしながら、上側シェル118と下側シェル120との間の移行部は、代替的に、これらの移行部において冷却流体が漏れることを防止するシールを備えてもよい。
【0053】
さらに、冷却流体誘導ハウジング106は、加熱された冷却流体を下流に運び去ることを可能とするために、代替的な出口開口部として機能し得る少なくとも1つの追加の冷却流体接続部を備え得る。
【0054】
以下で説明するように、冷却流体接続部108の領域における入口開口部と出口開口部126とは、コネクタハウジング110の外壁の少なくとも一部を取り囲む冷却チャネルによって接続される。冷却チャネルは、一方側がコネクタハウジング110の外壁の少なくとも一部によって画定され、他方側が少なくとも冷却流体誘導ハウジング106の内壁によって画定され、これらが共に冷却チャネルを形成する。したがって、流体移送のための冷却チャネルの支配断面または有効容積は、主にコネクタハウジング110の外壁と冷却流体誘導ハウジング106の内壁との間の距離によって決定され得る。
【0055】
冷却流体によって吸収される熱を可能な限り効率的に環境に放散するために、冷却流体誘導ハウジング106は、例えばアルミニウムなどの導電性材料から製造され得る。代替的に、冷却流体誘導ハウジング106によって生じる重量を可能な限り低く保持するために、冷却流体誘導ハウジング106は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)などのプラスチック材料から製造されてもよい。
【0056】
図3は、相手側コネクタ104が無く、かつ冷却流体誘導ハウジング106の上側シェル118が無い状態の、第1の例に係る電気コネクタシステムの模式的斜視図を示す。結果として、特に支持要素130が、図3において視認可能であり、コネクタハウジング110に接触するようになっており、それにより冷却流体誘導ハウジング106をコネクタハウジング110上で安定化させる。支持要素130は、支持セクションとして機能する冷却流体誘導ハウジング106の第1のセクションに配置される。図3で分かるように、この支持セクションは、必ずしも連続的でなく、複数のより小さい支持セクションを備えてもよい。支持要素130は、有利には、締結要素122の近傍に取り付けられ得る。これにより、締結要素122と支持要素130との間の力伝達経路を短く保つことができる。
【0057】
さらに、冷却流体誘導ハウジング106の外縁部128は、冷却流体誘導ハウジングの取り付けの安定性を高めるために、コネクタハウジング110に接触するようにすることができる。特に、冷却流体誘導ハウジング106の外縁部128は、コネクタハウジング110がこの領域において突出することを防止することができるように、コネクタハウジング110と面一に終端し得る。コンタクト要素受けチャンバ116の方向における外縁部128とコネクタハウジング110との間での可能な限り密な終端により、加熱された冷却流体が冷却流体誘導ハウジングから相手側コネクタ104の方向に漏れ、相手側コネクタ104を加熱する可能性を防止することができる。
【0058】
図示の実施形態で分かるように、コネクタハウジング110は、モジュラー構造を有し得る。これは、コネクタハウジング110が、共に差し込むことが可能な複数のコネクタモジュール132を備え得ることを意味し、共に差し込むことが可能なコネクタモジュール132の各々において、少なくとも1つのコンタクト要素が形成されるまたは形成され得る。そしてコネクタモジュール132の各々は、例えば、保持要素133に押し込まれ、クランプなどの接続要素134を用いて互いに接続され得る。
【0059】
この場合、冷却流体誘導ハウジング106は、コネクタモジュール132の各々について独立した冷却チャネルを備え得る。独立した冷却チャネルの各々について、付随する冷却流体接続部108が設けられ得る。これにより、コネクタモジュール132の各々を、それぞれの独立した冷却チャネルを通して流れる冷却流体によって必要に応じて冷却することができる。加えて、保持要素133および接続要素134を収容するキャビティが冷却流体誘導ハウジング106に設けられ得る。
【0060】
図4は、相手側コネクタ104が無い状態の第1の例に係る電気コネクタシステム100の模式的分解組立図を示す。この図から明らかであるように、コネクタハウジング110は、アセンブリを装着するために上側シェル118と下側シェル120との間に挿入され得る。冷却流体誘導ハウジング106の外縁部128および支持要素130は、コネクタハウジング110に接触させられる。上側シェル118および下側シェル120は次いで、締結要素122を用いて閉じるようにして互いに締結され得る。このとき、冷却流体誘導ハウジング106は、電気コネクタシステム100を閉じる前または閉じた後のいずれかで、コネクタ102に取り付けられ得る。
【0061】
これも図4に示すように、上側シェル118および下側シェル120は各々、冷却流体誘導ハウジング内に共通の冷却チャネルまたは2つの独立した冷却チャネルのいずれかを提供し得る冷却流体接続部108を備える。代替的に、2つの冷却流体接続部108の一方が上流側の冷却流体入口として機能し得、冷却流体接続部108の他方が下流側の冷却流体出口として機能する。
【0062】
図5は、冷却流体誘導ハウジング106の下側シェル120の模式的斜視図を示す。図5において矢印114によって模式的に示すように、冷却チャネルは、冷却流体誘導ハウジング106の下側シェル120の内壁に沿って冷却流体接続部108の領域の入口開口部136を始点として冷却流体誘導ハウジング106の内部に開口している。ここで冷却チャネルは、下側シェル120の内壁およびコネクタハウジング110の外壁によって画定され、これにより、冷却流体114は、出口開口部126まで冷却チャネルを通ってコネクタハウジング110の外壁に沿って流れる。下側シェル120の内壁は、有利には、コネクタハウジング110の外壁の形状に沿うような形状とされる。
【0063】
加えて冷却流体誘導ハウジング106内で流体の流れを誘導する冷却流体誘導壁138が、冷却流体誘導ハウジング106の下側シェル120に取り付けられ得る。ここで冷却流体誘導壁138は、冷却流体誘導ハウジング106と一体に形成され得る。冷却流体誘導壁138は第1に、コネクタハウジング110内に生じる熱源またはホットスポットの方向において可能な限り効率的に冷却流体114を誘導するように機能する。第2に、冷却流体誘導壁138は、複数の個々の冷却チャネルを互いに分離する隔壁として機能してもよい。個々の冷却チャネルは、対称な形状とされてもよいが、異なる構成を有していてもよく、例えば、冷却流体誘導ハウジング106の内壁とコネクタハウジング110の外壁との間の距離は、異なる冷却チャネル間において変動し得る。
【0064】
上側シェル118の構成は、下側シェル120の構成に類似するように実現され得る。
【0065】
図6は、冷却流体誘導ハウジングによって取り囲まれるコネクタ102の模式的断面図を示す。図6において矢印によって模式的に示すように、冷却流体114は、冷却流体接続部108(不図示)を通って、冷却流体誘導ハウジング106の内壁によって画定される冷却チャネルに流れ込み得る。ここで冷却流体は、コネクタハウジング110の外壁140に沿って流れる。これにより、コネクタハウジング内の1つまたは複数の熱源は、熱が運び去られることによって冷却され得る。熱は、熱源からコネクタ102の内部を出て、まずコネクタハウジング110を通りコネクタハウジング110の外壁140に移送され、その周りで冷却流体114が外側を流れる。ここで冷却流体は、コネクタハウジング110の外壁140を冷却し、したがってコネクタ102内の熱源も間接的に冷却し、それにより、コネクタハウジング110を通して移送される熱を吸収する。
【0066】
加熱された冷却流体は次いで、出口開口部126を通って冷却チャネルを出て、冷却流体誘導ハウジングから運び去られ得る。ここでは、流れの支配的な方向が、出口開口部126の方向における軸方向に示されているが、冷却流体114は勿論、径方向において外壁の周りに流れてもよい。したがって、冷却流体誘導ハウジング106の内壁ならびに任意選択的にコネクタハウジング110の外壁との両方に取り付けられ得る空気誘導壁が、コネクタハウジング110の周りで軸方向と径方向との両方に延びていてもよい。
【0067】
図6を用いて示すように、流体移送(fluid transport)のための冷却チャネルの支配断面または有効容積は、主にコネクタハウジング110の外壁140と冷却流体誘導ハウジング106の内壁との間の距離によって決定され得る。したがって、ホットスポットの領域において流量を増大させ、それにより冷却流体を冷却する効率を増大させるために、冷却流体114が熱源(「ホットスポット(hot spot)」)の周辺においてコネクタハウジング110の周りを流れる領域において、コネクタハウジング110の外壁140と冷却流体誘導ハウジング106の内壁との間の距離を小さくすることが有利である。上記で述べたように、そのような熱源は、例えば、電流がコネクタおよび相手側コネクタのコンタクト要素を通って流れるときに接触点の領域において生じる場合がある。
【0068】
ここまで、冷却流体誘導ハウジング106が少なくとも部分的にコネクタ102を取り囲む1つの実施形態のみを示したが、冷却流体誘導ハウジング106は勿論、冷却のための冷却流体が相手側コネクタハウジング112の周りの外側において冷却流体誘導ハウジング106を通って流れ得るように、少なくとも部分的に相手側コネクタ104を取り囲んでいてもよい。さらに、コネクタ102および相手側コネクタ104は各々、独立した冷却流体誘導ハウジングを備え得る。コネクタ102および104の両方が互いに差し込まれると、ここで2つの独立した冷却流体ダクトハウジングは各々、冷却チャネルを共有する共通の上位の冷却流体誘導ハウジングを形成し得る。
これにより、コネクタ102および104が共に冷却され得る。代替的に、2つの独立した冷却流体誘導ハウジング106において形成される冷却チャネルは、2つのコネクタ102および104の両方が互いに差し込まれた後にも互いから分離したままであってもよく、これにより、コネクタ102および104の各々が別々に冷却される。
【0069】
図7および図8は各々、第2の有利な実施形態に係る電気コネクタシステム200の模式的分解組立図を示す。図7は、相手側コネクタ104が無い状態の電気コネクタシステム200を示し、図8は、相手側コネクタ104がある状態の電気コネクタシステム200を示す。図9は、第2の実施形態に係る電気コネクタシステム200を通る対応する模式的断面図を示す。
【0070】
勿論、第1の実施形態について説明した全ての態様および利点は、第2の実施形態にも適用する。第2の実施形態は、冷却流体誘導ハウジング206が、冷却流体誘導ハウジングが相手側コネクタ104を受けることが可能な受けセクション242(第3のセクション)を備える点においてのみ、第1の実施形態とは異なる。
【0071】
相手側コネクタ104を受けた後、例として図7および図8では上側シェル218および下側シェル220によって形成される冷却流体誘導ハウジング206は、相手側コネクタハウジング112の外壁を少なくとも部分的に取り囲む冷却チャネルを画定する。この冷却チャネルは、コネクタハウジング110の外壁を取り囲む冷却チャネルと流体連通し得る。しかしながら、実施形態において、両方の冷却チャネルが別々に形成されてもよい。
【0072】
次いで、冷却流体接続部208が、例えば受けセクション(receiving section)242の領域において、冷却流体誘導ハウジング206に取り付けられ得る。これにより、冷却流体114は、冷却流体誘導ハウジングに入った後にまず相手側コネクタハウジング112の外壁の周りに流れる。冷却流体114は次いで、1つまたは複数の出口開口部226において再び冷却流体誘導ハウジング206を出て、吸収された熱を運び去ることができるまで、冷却チャネルを通してコネクタハウジング110の外壁に沿った外側を誘導される。出口開口部226が、例えば電気ユニットなどの電気ケーブルまたは電気デバイスの接続部の領域における開口部によってやはり形成され得る。これにより、熱をコネクタ102と相手側コネクタ104との間の接触点から効率的に運び去ることができる。
【0073】
勿論、冷却流体接続部208および出口開口部226は、冷却チャネルが上流側でコネクタハウジング110を取り囲み、下流側で相手側コネクタハウジング112を取り囲むように取り付けられてもよい。
【0074】
図8において模式的に示すように、コネクタ102および相手側コネクタ104を備える電気コネクタシステム200はまず、アセンブリを装着するために閉じられ得る。その後、冷却流体誘導ハウジング206は、支持要素230によってコネクタハウジング110または相手側コネクタハウジング112(またはその両方)に接触させられ得る。これにより、冷却流体誘導ハウジングは、電気コネクタシステム200に安定的に取り付けられ得る。上側シェル218および下側シェル220は次いで、締結要素222を用いて閉じるようにして互いに締結され得る。
【0075】
代替的に、冷却流体誘導ハウジング206は、一体に形成され、電気コネクタシステム200が閉じられる前に既にコネクタ102(または相手側コネクタ104)に装着されていてもよい。これにより、相手側コネクタ104(またはコネクタ102)は、電気コネクタシステム200が閉じられたときに冷却流体誘導ハウジング206に受けられる。
【0076】
図9の例において、相手側コネクタ104は、コネクタ102のソケット状の基体146に入り込む導電性のピン状コンタクトユニット144を備える。ここで示している差し込まれた状態においては、電流がコンタクトセクション148を介して流れることができる。コンタクトセクション148で生成された熱は、図9において矢印によって示すように相手側コネクタハウジング112の外壁150およびコネクタハウジング110の外壁140の周りに流れる冷却流体114によって運び去られ得る。ここで、冷却流体が流れる冷却チャネルは、冷却流体誘導ハウジング206の内壁によって画定され、それにより、相手側コネクタハウジング112の外壁150およびコネクタハウジング110の外壁140に沿って誘導される。出口開口部226に加えて、さらなる通気開口部が、例えば相手側コネクタ104における電気ケーブルまたは電気デバイスのための接続部の領域において、冷却流体誘導ハウジング206に設けられ得る。
【0077】
さらに、冷却チャネルの全ての断面直径または断面寸法は、冷却チャネルのそれぞれのセクション(分岐、スロットルポイント(throttling point)等)が所望の通りに冷却流体114を流すことが可能なように選択されるべきである。特に、冷却流体誘導ハウジング206の内壁とコネクタハウジング110または相手側コネクタハウジング112の外壁との間の距離は、電気コネクタシステム200にわたって流れる冷却流体についての、許容可能な流体圧および流体温度を超えることなくそれぞれのセクションにおいて実現可能な流量、実現可能な流れ抵抗および実現可能な冷却容積が優先するように選択されるべきである。
【符号の説明】
【0078】
100、200 電気コネクタシステム
102 コネクタ
104 相手側コネクタ
106、206 冷却流体誘導ハウジング
108、208 冷却流体接続部
110 コネクタハウジング
112 相手側コネクタハウジング
114 冷却流体
116 コンタクト要素受けチャンバ
118、218 上側シェル
120、220 下側シェル
122 締結要素
124 凹部
126 出口開口部
128 外縁部
130 支持要素
132 コネクタモジュール
133 保持要素
134 接続要素
136 入口開口部
138 冷却流体誘導壁
140 コネクタハウジングの外壁
144 ピン状コンタクトユニット
146 ソケット状基体
148 コンタクトセクション
150 相手側コネクタハウジングの外壁
242 受けセクション(第3のセクション)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9