(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】施工管理装置、表示装置および施工管理方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230724BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2021180459
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2018035664の分割
【原出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
(72)【発明者】
【氏名】上原 康史
(72)【発明者】
【氏名】市川 安曇
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098535(JP,A)
【文献】特開2014-074315(JP,A)
【文献】特開2018-003514(JP,A)
【文献】特開2017-166308(JP,A)
【文献】特開2006-200185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象の現況地形を表す三次元データである現況地形データを記憶する現況地形記憶部と、
バケットを含む作業機を有する作業機械から、前記バケットの位置を取得するバケット位置取得部と、
前記現況地形データを上方の値に更新することを許容するか否かを示す上方更新フラグ
をオンにするかオフにするかの入力を受け付け
、前記入力に基づいて前記上方更新フラグを更新するる上方更新フラグ取得部と、
前記上方更新フラグがオンの場合に、前記バケットの位置に基づいて前記現況地形データを更新する現況地形更新部と
を備える施工管理システム。
【請求項2】
前記現況地形更新部は、前記上方更新フラグがオンである場合、前記現況地形データを上方の値に更新することが許容され、前記上方更新フラグがオフである場合、前記現況地形データを上方の値に更新することが許容されない、
請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
前記現況地形更新部は、前記上方更新フラグがオフであり、かつ前記バケットの高さが前記現況地形データの高さ以下である場合、前記バケットの高さで前記現況地形データの高さを更新し、前記上方更新フラグがオフであり、かつ前記バケットの高さが前記現況地形データの高さより高い場合、前記現況地形データを更新しない、
請求項1または請求項2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
前記現況地形更新部は、前記上方更新フラグがオフ
であり、かつ前記バケットの高さが前記現況地形データの高さより低い場合、最下点の前記バケットの高さに基づいて、前記現況地形データを更新する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の施工管理システム。
【請求項5】
前記バケットの位置を記憶するバケット位置記憶部を備え、
前記バケット位置記憶部は、前記バケットの位置に関連付けて前記上方更新フラグを記憶する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工管理装置、表示装置および施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機械によって施工対象が施工された結果変形された現況地形を求めるために、バケットが通過した位置情報に基づいて現況地形データを生成する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の方法によれば、施工管理装置は、バケット刃先の位置データに基づいてバケット刃先の軌跡を特定し、バケットの刃先が通過した位置の高さが現況地形データの高さより低い場合に、現況地形データの高さをバケットの刃先が通過した高さに更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、作業機械による掘削作業における最新の現況地形を求めることを目的とするため、バケットの刃先における最下点に基づいて地形データを更新する。他方、作業機械が盛土作業を行う場合、現状の施工対象の高さよりも高い位置においてバケットが動作するため、現況地形データが更新されず、実際の現況地形との乖離が生じてしまう。
本発明の目的は、作業機械による盛土作業時に現況地形データを更新することができる施工管理装置、表示装置および施工管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、施工管理システムは、施工対象の現況地形を表す三次元データである現況地形データを記憶する現況地形記憶部と、バケットを含む作業機を有する作業機械から、前記バケットの位置を取得するバケット位置取得部と、前記現況地形データを上方の値に更新することを許容するか否かを示す上方更新フラグの入力を受け付ける上方更新フラグ取得部と、前記上方更新フラグがオンの場合に、前記バケットの位置に基づいて前記現況地形データを更新する現況地形更新部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、施工管理装置は、作業機械による盛土作業時に現況地形データを更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第1の実施形態に係る施工管理システムの構成を示す概略図である。
【
図3】第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御系の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る作業機制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】バケットの複数の輪郭点と設計面との関係を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る作業機制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態に係る施工管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図9】第1の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態に係る施工管理装置による現況地形データの更新処理の例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】第2の実施形態に係る施工管理装置による現況地形データの更新処理の例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図15】第4の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
〈座標系〉
図1は、作業機の姿勢の例を示す図である。
以下の説明においては、三次元の現場座標系(Xg、Yg、Zg)および三次元の車体座標系(Xm、Ym、Zm)を規定して、これらに基づいて位置関係を説明する。
【0009】
現場座標系は、施工現場に設けられたGNSS基準局の位置を基準点として南北に伸びるXg軸、東西に伸びるYg軸、鉛直方向に伸びるZg軸から構成される座標系である。GNSSの例としては、GPS(Global Positioning System)が挙げられる。
【0010】
車体座標系は、後述する油圧ショベル100の旋回体120に規定された代表点Oを基準として前後に伸びるXm軸、左右に伸びるYm軸、上下に伸びるZm軸から構成される座標系である。旋回体120の代表点Oを基準として前方を+Xm方向、後方を-Xm方向、左方を+Ym方向、右方を-Ym方向、上方向を+Zm方向、下方向を-Zm方向とよぶ。
【0011】
後述する油圧ショベル100の作業機制御装置126は、演算により、ある座標系における位置を、他の座標系における位置に変換することができる。例えば、作業機制御装置126は、車体座標系における位置を現場座標系における位置に変換することができ、その逆の座標系にも変換することができる。
【0012】
〈第1の実施形態〉
図2は、第1の実施形態に係る施工管理システムの構成を示す概略図である。
施工管理システム1は、油圧ショベル100と、施工管理装置200とを備える。油圧ショベル100と施工管理装置200とはネットワークNを介して接続される。油圧ショベル100は、作業機械の一例である。なお、他の実施形態に係る作業機械は、必ずしも油圧ショベル100でなくてもよい。油圧ショベル100は、バケット133の刃先を含む複数の輪郭点の現場座標系に係る位置情報を施工管理装置200に送信する。
施工管理装置200は、油圧ショベル100から取得したバケット133の複数の輪郭点の位置情報に基づいて、施工現場の現況地形データを生成する。
【0013】
《油圧ショベル》
図3は、第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
油圧ショベル100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は、旋回中心を中心として走行体110に旋回自在に支持される。
【0014】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、アームシリンダ135と、バケットシリンダ136とを備える。
【0015】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンP1を介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンP2を介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃先と掘削した土砂を収容するための収容部とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にバケットピンP3を介して取り付けられる。なお、バケット133は、例えば法面バケットのように整地を目的としたバケットでもよいし、収容部を備えないバケットでもよい。
【0016】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に取り付けられる。
【0017】
旋回体120には、オペレータが搭乗する運転室121が備えられる。運転室121は、旋回体120の前方かつ作業機130の左側(+Ym側)に備えられる。運転室121の内部には、作業機130を操作するための操作装置1211が設けられる。操作装置1211の操作量に応じて、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に作動油が供給され、作業機130が駆動する。
【0018】
《油圧ショベルの制御系》
図4は、第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御系の構成を示す概略ブロック図である。
油圧ショベル100は、ストローク検出器137、操作装置1211、位置方位演算器123、傾斜検出器124、油圧装置125、作業機制御装置126、入出力装置127を備える。
【0019】
ストローク検出器137は、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136のそれぞれのストローク長を検出する。これにより、作業機制御装置126は、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136のそれぞれのストローク長に基づいて、バケット133を含む作業機130の車体座標系における位置および姿勢角を検出することができる。
【0020】
操作装置1211は、運転室121の右側に設けられる操作レバー1212と、運転室121の左側に設けられる操作レバー1213とを備える。操作装置1211は、操作レバー1212の前後方向および左右方向の操作量、ならびに操作レバー1213の前後方向および左右方向の操作量を検出し、検出された操作量に応じた操作信号を作業機制御装置126に出力する。第1の実施形態に係る操作装置1211による操作信号の生成方式は、PPC(Pressure Proportional Control)方式である。PPC方式とは、操作レバー1212および操作レバー1213の操作によって生成されるパイロット油圧を圧力センサにより検出し、操作信号を生成する方式である。操作レバー1212と操作レバー1213によってブーム131の操作、アーム132の操作、バケット133の操作、および旋回体120の旋回操作が行われる。
【0021】
位置方位演算器123は、旋回体120の現場座標系における位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器123は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する第1受信器1231および第2受信器1232を備える。第1受信器1231および第2受信器1232は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器123は、第1受信器1231が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点O(車体座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器123は、第1受信器1231が受信した測位信号と、第2受信器1232が受信した測位信号とを用いて、旋回体120の現場座標系における方位を演算する。
【0022】
傾斜検出器124は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、Xm軸に対する回転を表すロール、Ym軸に対する回転を表すピッチ、およびZm軸に対する回転を表すヨー)を検出する。傾斜検出器124は、例えば運転室121の下面に設置される。傾斜検出器124の例としては、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)が挙げられる。
【0023】
油圧装置125は、図示しない作動油タンク、油圧ポンプ、流量制御弁、および電磁比例制御弁を備える。油圧ポンプは、図示しないエンジンの動力で駆動し、流量調整弁を介してブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に作動油を供給する。電磁比例制御弁は、作業機制御装置126から受信する制御指令に基づいて、操作装置1211から供給されるパイロット油圧を制限する。流量制御弁はロッド状のスプールを有し、スプールの位置によってブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給する作動油の流量を調整する。スプールは、電磁比例制御弁にて調整されたパイロット油圧によって駆動される。
【0024】
作業機制御装置126は、位置方位演算器123が演算した旋回体120の位置および方位、傾斜検出器124が検出した旋回体120の傾斜角、ならびにストローク検出器137が検出したストローク長に基づいて、現場座標系におけるバケット133の位置および姿勢を特定する。また、作業機制御装置126は、油圧装置125の電磁比例制御弁にブームシリンダ134の制御指令、アームシリンダ135の制御指令、およびバケットシリンダ136の制御指令を出力する。
【0025】
入出力装置127は、作業機制御装置126からの信号に基づいて画面を表示する。また入出力装置127は、利用者の操作に従って入力信号を生成し、作業機制御装置126に出力する。入出力装置127の例としては、タッチパネル、モニタ、携帯端末などが挙げられる。入出力装置127は、油圧ショベル100の運転室に設けられてもよいし、例えば運転室の外部にある油圧ショベル100を遠隔操作するための遠隔操作室に設けられてもよい。
【0026】
《作業機の姿勢》
ここで、
図1を参照しながら作業機130の位置及び姿勢について説明する。作業機制御装置126は、作業機130の位置及び姿勢を算出し、その位置及び姿勢に基づいて作業機130の制御指令を生成する。作業機制御装置126は、ブームピンP1を基準としたブーム131の姿勢角であるブーム角α、アームピンP2を基準としたアーム132の姿勢角であるアーム角β、バケットピンP3を基準としたバケット133の姿勢角であるバケット角γ、および車体座標系におけるバケット133の輪郭点の位置を算出する。バケット133の輪郭点とは、バケット133の輪郭に沿った所定位置に設定された複数の点である。本実施形態に係る輪郭点は、バケット133の刃先の点、バケット133の底面の点、バケット133の尻部の複数の点を含む。なお、他の実施形態においては、輪郭点はバケット133の輪郭に沿った点であれば上記位置に係る点でなくてもよい。また他の実施形態においては輪郭点が1点であってもよい。
【0027】
ブーム角αは、ブームピンP1から旋回体120の上方向(+Zm方向)に伸びる半直線と、ブームピンP1からアームピンP2へ伸びる半直線とがなす角によって表される。なお、旋回体120の姿勢(ピッチ角)θによって、旋回体120の上方向(+Zm方向)と鉛直上方向(+Zg方向)は必ずしも一致しない。
アーム角βは、ブームピンP1からアームピンP2へ伸びる半直線と、アームピンP2からバケットピンP3へ伸びる半直線とがなす角によって表される。
バケット角γは、アームピンP2からバケットピンP3へ伸びる半直線と、バケットピンP3からバケット133の刃先へ伸びる半直線とがなす角によって表される。
ここで、旋回体120を基準としたバケット133の姿勢角であるバケット末端角ηは、ブーム角α、アーム角β、バケット角γの和と等しい。バケット末端角ηは、バケットピンP3から旋回体120の上方向(+Zm方向)に伸びる半直線と、バケットピンP3からバケット133の刃先へ伸びる半直線とがなす角に等しい。
【0028】
バケット133の輪郭点の位置は、ブーム131の寸法であるブーム長L1、アーム132の寸法であるアーム長L2、バケット133の寸法であるバケット長L3、ブーム角α、アーム角β、バケット角γ、バケット133の形状情報、旋回体120の代表点Oの現場座標系における位置、および代表点OとブームピンP1との位置関係から求められる。ブーム長L1は、ブームピンP1からアームピンP2までの距離である。アーム長L2は、アームピンP2からバケットピンP3までの距離である。バケット長L3は、バケットピンP3からバケット133の刃先までの距離である。代表点OとブームピンP1との位置関係は、例えば、車体座標系におけるブームピンP1の位置によって表される。
【0029】
《介入制御》
作業機制御装置126は、施工現場において設定された設計面にバケット133が侵入しないようにバケット133が施工対象に接近する方向の速度を制限する。以下、作業機制御装置126がバケット133の速度を制限することを介入制御ともいう。
【0030】
介入制御において作業機制御装置126は、バケット133と設計面との距離が所定距離未満になった場合に、設計面にバケット133が侵入しないように、ブームシリンダ134の制御指令を生成して油圧装置125の電磁比例制御弁に当該制御指令を出力する。これにより、バケット133の速度がバケット133と設計面との距離に応じた速度となるように、ブーム131が駆動する。つまり作業機制御装置126は、ブームシリンダ134の制御指令によってブーム131を上昇させることでバケット133の速度を制限する。介入制御により、油圧ショベル100のオペレータは、アーム操作によりバケット133を設計面に沿って単純に移動させることによりバケット133に当接する土砂を掻き均し、平らな設計面に対応した面を生成する均し作業を行うことができる。均し作業は、所定の作業状態の一例である。
なお、他の実施形態においては、介入制御においてアームシリンダ135の制御指令またはバケットシリンダ136の制御指令を出力しても良い。つまり、他の実施形態においては、介入制御においてアーム132を上昇させることでバケット133の速度を制限してもよいし、バケット133の速度を直接制限してもよい。
【0031】
《作業機制御装置》
作業機制御装置126は、プロセッサ1261、メインメモリ1262、ストレージ1263、インタフェース1264を備える。
【0032】
ストレージ1263には、作業機130を制御するためのプログラムが記憶されている。ストレージ1263の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、不揮発性メモリ等が挙げられる。ストレージ1263は、作業機制御装置126のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1264または通信回線を介して作業機制御装置126に接続される外部メディアであってもよい。
【0033】
プロセッサ1261は、ストレージ1263からプログラムを読み出してメインメモリ1262に展開し、プログラムに従って処理を実行する。またプロセッサ1261は、プログラムに従ってメインメモリ1262に記憶領域を確保する。インタフェース1264は、ストローク検出器137、操作装置1211、位置方位演算器123、傾斜検出器124、油圧装置125の電磁比例制御弁、入出力装置127、およびその他の周辺機器と接続され、信号の入出力を行う。
【0034】
プログラムは、作業機制御装置126に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1263に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。
【0035】
図5は、第1の実施形態に係る作業機制御装置の構成を示すブロック図である。
作業機制御装置126は、作業機械情報記憶部601、操作量取得部602、検出情報取得部603、バケット位置特定部604、目標施工データ記憶部605、距離特定部606、制御線決定部607、目標速度演算部608、制御指令生成部609、制御指令出力部610、バケット位置記憶部611、バケット位置送信部612、上方更新フラグ取得部613、上方更新フラグ記憶部614を備える。
【0036】
作業機械情報記憶部601は、ブーム長L1、アーム長L2、バケット長L3、バケット133の輪郭点の位置、および旋回体120の代表点Oの位置とブームピンP1との位置関係を記憶する。
【0037】
操作量取得部602は、操作装置1211から操作量(パイロット油圧または操作レバー1212および操作レバー1213の角度等)を示す操作信号を取得する。例えば、操作量取得部602は、ブーム131に係る操作量、アーム132に係る操作量、バケット133に係る操作量、および旋回に係る操作量を取得する。
【0038】
検出情報取得部603は、位置方位演算器123、傾斜検出器124、ストローク検出器137のそれぞれが検出した情報を取得する。例えば、検出情報取得部603は、旋回体120の現場座標系における位置情報、旋回体120が向く方位、旋回体120の姿勢、ブームシリンダ134のストローク長、アームシリンダ135のストローク長、およびバケットシリンダ136のストローク長を取得する。
【0039】
バケット位置特定部604は、検出情報取得部603が取得した情報に基づいて、バケット133の位置および姿勢を特定する。このときバケット位置特定部604は、バケット末端角ηを特定する。バケット位置特定部604は、以下の手順でバケット末端角ηを特定する。バケット位置特定部604は、ブームシリンダ134のストローク長から、ブーム角αを算出する。バケット位置特定部604は、アームシリンダ135のストローク長から、アーム角βを算出する。バケット位置特定部604は、バケットシリンダ136のストローク長から、バケット角γを算出する。そして、バケット位置特定部604は、ブーム角α、アーム角β、およびバケット角γを加算することで、バケット末端角ηを算出する。
【0040】
また、バケット位置特定部604は、検出情報取得部603が取得した情報と作業機械情報記憶部601が記憶する情報とに基づいて、バケット133の複数の輪郭点の現場座標系における位置を特定する。バケット位置特定部604は、以下の手順で作業機130の輪郭点の現場座標系における位置を特定する。バケット位置特定部604は、検出情報取得部603が取得したブーム角αと作業機械情報記憶部601が記憶するブーム長L1とに基づいて、車体座標系におけるアームピンP2の位置を特定する。バケット位置特定部604は、アームピンP2の位置と、検出情報取得部603が取得したアーム角βと作業機械情報記憶部601が記憶するアーム長L2とに基づいて、車体座標系におけるバケットピンP3の位置を特定する。バケット位置特定部604は、バケットピンP3の位置と、検出情報取得部603が取得したバケット角γと、作業機械情報記憶部601が記憶するバケット長L3とに基づいて、バケット133の位置および姿勢を特定する。バケット位置特定部604は、特定したバケット133の位置および姿勢と、作業機械情報記憶部601が記憶するバケット133の形状情報とに基づいて、車体座標系におけるバケット133の輪郭点の位置を特定する。そして、バケット位置特定部604は、検出情報取得部603が取得した旋回体120の現場座標系における位置情報、旋回体120が向く方位、および旋回体120の姿勢に基づいて、車体座標系におけるバケット133の輪郭点の位置を、現場座標系における位置に変換する。なお、この時求められるバケット133の輪郭点の位置は、バケット133の輪郭点のうち、例えば幅方向中央の点の位置である。
【0041】
目標施工データ記憶部605は、施工現場の設計面を表す目標施工データを記憶する。目標施工データは、現場座標系で表される三次元データであって、設計面を表す複数の三角形ポリゴンからなる立体地形データ等である。目標施工データを構成する三角形ポリゴンは、それぞれ隣接する他の三角形ポリゴンと共通の辺を有する。つまり、目標施工データは、複数の平面から構成される連続した平面を表す。目標施工データは、外部記憶媒体から読み込まれることで、またはネットワークNを介して外部サーバから受信されることで、目標施工データ記憶部605に記憶される。
【0042】
距離特定部606は、バケット133の複数の輪郭点Eそれぞれと、設計面との距離を特定する。例えば、距離特定部606は、以下の方法で輪郭点Eと設計面との距離を特定する。なお、他の実施形態においては輪郭点はバケット133の所定位置の1か所にのみ設けられてもよい。この場合、距離特定部606は、その輪郭点について設計面との距離を特定する。
図6は、バケットの複数の輪郭点と設計面との関係を示す図である。第1の実施形態に係る複数の輪郭点Eは、バケット133の複数の横断線と複数の縦断面との交点である。バケット133の複数の横断線は、バケット133の刃先133Aが並ぶ刃先線と、当該刃先線と平行な線であってバケット133の底面133Bおよび尻部133C等の領域における複数の線とからなる。バケット133の複数の縦断面は、バケット133の両側面と、両側面に平行な面であって両側面の間を分割する面とからなる。
距離特定部606は、バケット133の各縦断面と設計面との交線をそれぞれ特定する。距離特定部606は、各縦断面について、当該縦断面上の輪郭点Eと特定した交線との距離をそれぞれ求める。
【0043】
制御線決定部607は、バケット133の介入制御に用いられる制御線Gを決定する。制御線決定部607は、例えば、距離特定部606が特定した最も短い距離に係る輪郭点Eを含むバケット133の縦断面と設計面との交線を制御線Gに決定する。なお、他の実施形態において制御線を決定するための縦断面は、最も短い距離に係る輪郭点Eを含むものに限られず、バケット133の中央を通る縦断面など予め定められた面や手動で選択された面であってもよい。
【0044】
目標速度演算部608は、操作量取得部602が取得した操作レバー1212および操作レバー1213の操作量に基づいて、ブームピンP1を基準としたブーム131の目標速度であるブーム目標速度、アームピンP2を基準としたアーム132の目標速度であるアーム目標速度、およびバケットピンP3を基準としたバケット133の目標速度であるバケット目標速度を決定する。なお、以下、ブーム目標速度、アーム目標速度およびバケット目標速度の垂直方向成分の和によって表される、旋回体120を基準としたバケット133の垂直方向の目標速度をバケット末端目標速度という。また、ブームピンP1を基準としたブーム131の速度をブーム速度といい、アームピンP2を基準としたアーム132の速度をアーム速度といい、バケットピンP3を基準としたバケット133の速度をバケット速度といい、ブーム速度、アーム速度およびバケット速度の垂直方向成分の和によって表される、旋回体120を基準としたバケット133の垂直方向の速度をバケット末端速度という。以下、垂直方向下向きの速度を正数で表し、垂直方向上向きの速度を負数で表す。
【0045】
制御指令生成部609は、距離特定部606が特定した距離に基づいて、バケット133が制御線Gより下方に侵入しないように作業機130を制御する介入制御を行う。制御指令生成部609は、バケット133の輪郭点Eと制御線Gとの距離とバケット133が制御線Gに接近するバケット末端速度の許容上限値との関係を示す速度テーブルを満たすよう、ブーム131の垂直方向の制限速度を決定する。速度テーブルの例としては、バケット133の輪郭点Eと制御線Gとの距離が0に近づくほどバケット末端速度の許容上限値が0に近づくテーブルが挙げられる。なお、本実施形態においては、制御指令生成部609が、ブーム131の垂直方向の制限速度を決定するが、これに限られず、例えば法線方向の制限速度を決定してもよい。
例えば、制御指令生成部609は、速度テーブルにおけるバケット末端速度の許容上限値より、ブーム目標速度、アーム目標速度、およびバケット目標速度の垂直方向成分によって求められるバケット末端目標速度が大きい場合、介入制御を行う。制御指令生成部609は、介入制御を行う場合、バケット末端速度の上限値からアーム目標速度およびバケット目標速度の垂直方向成分の和を減算することで、ブーム131の垂直方向の制限速度を算出する。制御指令生成部609は、ブーム131の垂直方向の制限速度から、ブーム速度を決定する。
他方、制御指令生成部609は、バケット末端目標速度が、速度テーブルにおけるバケット末端速度の許容上限値以下である場合、介入制御を行わない。介入制御を行わない場合、制御指令生成部609は、ブーム目標速度、アーム目標速度およびバケット目標速度に基づいて、ブーム131、アーム132およびバケット133の制御指令を生成する。
【0046】
制御指令出力部610は、制御指令生成部609が生成したブーム131の制御指令、アーム132の制御指令、およびバケット133の制御指令を油圧装置125の電磁比例制御弁に出力する。
【0047】
バケット位置記憶部611は、バケット位置特定部604が特定したバケット133の複数の輪郭点Eの現場座標系における位置、制御指令生成部609による介入制御の有無を示す介入フラグ、ならびに均し作業中に現況地形データを上方の値(現在のZgの値より大きい値)に更新することを許容するか否かを示す上方更新フラグを、時刻に関連付けて記憶する。制御指令生成部609によって介入制御がなされている場合、介入フラグがオンになる。制御指令生成部609によって介入制御がなされていない場合、介入フラグがオフになる。上方更新フラグがオンである場合、均し作業中に現況地形データを上方の値に更新することが許容される。上方更新フラグがオフである場合、均し作業中に現況地形データを上方の値に更新することが許容されない。ここで、現況地形データの高さを上方の値に更新するとは、現況地形データにおける任意の平面位置(Xg1、Yg1)における高さの値Zg1を、Zg1よりも高い値Zg1´に更新すること、すなわちその点の現況地形データXg1、Yg1、Zg1を、Xg1、Yg1、Zg1’に更新することをいう。
【0048】
バケット位置送信部612は、バケット位置記憶部611が記憶する情報を施工管理装置200に送信する。
【0049】
上方更新フラグ取得部613は、入出力装置127を介して、油圧ショベル100のオペレータから、施工管理装置200に、均し作業中に現況地形データを上方の値に更新することを許容するか否かの入力を受け付ける。上方更新フラグ取得部613は、入力された情報に基づいて、上方更新フラグ記憶部614が記憶する上方更新フラグを更新する。
【0050】
《作業機制御装置の動作》
以下、第1の実施形態に係る油圧ショベル100の制御方法について説明する。
図7は、第1の実施形態に係る作業機制御装置の動作を示すフローチャートである。作業機制御装置126は、所定の制御周期ごとに以下に示す制御を実行する。
操作量取得部602は、操作装置1211からブーム131に係る操作量、アーム132に係る操作量、バケット133に係る操作量、および旋回に係る操作量を取得する(ステップS1)。検出情報取得部603は、位置方位演算器123、傾斜検出器124、ストローク検出器137のそれぞれが検出した情報を取得する(ステップS2)。
【0051】
バケット位置特定部604は、各油圧シリンダのストローク長からブーム角α、アーム角β、およびバケット角γを算出する(ステップS3)。またバケット位置特定部604は、算出したピン基準姿勢角α、β、γと、作業機械情報記憶部601が記憶するブーム長L1、アーム長L2、バケット長L3およびバケット133の形状情報と、検出情報取得部603が取得した旋回体120の位置、方位および姿勢とに基づいて、バケット末端角ηおよび現場座標系におけるバケット133の複数の輪郭点Eの位置を算出する(ステップS4)。バケット位置特定部604は、バケット133の複数の輪郭点Eの位置を現在時刻に関連付けてバケット位置記憶部611に記憶させる。またこのとき、上方更新フラグ取得部613は、上方更新フラグ記憶部614が記憶する上方更新フラグを現在時刻に関連付けてバケット位置記憶部611に記憶させる(ステップS5)。つまり、制御指令生成部609は、上方更新フラグ記憶部614が記憶する上方更新フラグがオンを示す場合、バケット位置記憶部611にオンを示す上方更新フラグを記録し、上方更新フラグ記憶部614が記憶する上方更新フラグがオフを示す場合、バケット位置記憶部611にオフを示す上方更新フラグを記録する。
【0052】
距離特定部606は、複数の輪郭点Eのそれぞれと目標施工データ記憶部605が記憶する目標施工データが表す設計面との距離を特定する(ステップS6)。制御線決定部607は、距離特定部606が特定した距離に基づいて制御線Gを決定する(ステップS7)。
【0053】
目標速度演算部608は、ステップS1で操作量取得部602が取得した操作量に基づいて、ブーム目標速度、アーム目標速度およびバケット目標速度を算出する(ステップS8)。
【0054】
制御指令生成部609は、距離特定部606が特定した距離のうち最も短いものが所定距離未満であるか否かを判定する(ステップS9)。制御線Gとバケット133の輪郭点Eとの距離が所定距離以上である場合(ステップS9:YES)、制御指令生成部609は、介入制御を行わない。介入制御を行わない場合、制御指令生成部609は、ブーム目標速度、アーム目標速度およびバケット目標速度に基づいて、ブーム131、アーム132およびバケット133の制御指令を生成する(ステップS10)。このとき、制御指令生成部609は、現在時刻に関連付けて介入制御を行わないことを示す介入フラグをバケット位置記憶部611に記憶させる(ステップS11)。つまり、制御指令生成部609は、介入フラグをオフにする。
【0055】
他方、制御線Gとバケット133の輪郭点Eとの距離が所定距離未満である場合(ステップS9:YES)、制御指令生成部609は、介入制御を行う。介入制御を行う場合、制御指令生成部609は、距離特定部606が特定した距離と作業機械情報記憶部601に記憶されている上述の速度テーブルとに基づいてバケット末端速度の許容上限値を特定する(ステップS12)。次に、制御指令生成部609は、ステップS8で算出したブーム目標速度、アーム目標速度、およびバケット目標速度の垂直方向成分に基づいて、バケット末端目標速度を算出する(ステップS13)。次に、制御指令生成部609は、ステップS13で算出したバケット末端目標速度が、ステップS12で特定したバケット末端速度の許容上限値未満であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0056】
バケット末端目標速度がバケット末端速度の許容上限値未満である場合(ステップS14:YES)、制御指令生成部609は、ブーム目標速度、アーム目標速度およびバケット目標速度に基づいて、ブーム131、アーム132およびバケット133の制御指令を生成する(ステップS10)。他方、バケット末端目標速度がバケット末端速度の許容上限値以上である場合(ステップS14:NO)、制御指令生成部609は、バケット末端目標速度とバケット末端速度との差分に基づいてブーム131、アーム132およびバケット133の制御指令を生成する(ステップS15)。このとき、制御指令生成部609は、現在時刻に関連付けて介入制御を行うことを示す介入フラグをバケット位置記憶部611に記憶させる(ステップS16)。つまり、制御指令生成部609は、介入フラグをオンにする。
【0057】
制御指令生成部609がブーム131、アーム132およびバケット133の制御指令を生成すると、制御指令出力部610は、当該制御指令を油圧装置125の電磁比例制御弁に出力する(ステップS17)。これにより、油圧装置125は、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136を駆動させる。
【0058】
上記の処理を繰り返し行うことで、作業機制御装置126のバケット位置記憶部611には、複数の輪郭点Eの現場座標系における位置、介入フラグ、および上方更新フラグが、それぞれ時系列として記憶される。バケット位置送信部612は、所定のタイミングに、バケット位置記憶部611が記憶する情報を、ネットワークNを介して施工管理装置200に送信する。
【0059】
《施工管理装置の構成》
図8は、第1の実施形態に係る施工管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
施工管理装置200は、プロセッサ2100、メインメモリ2200、ストレージ2300、インタフェース2400を備えるコンピュータである。ストレージ2300は、プログラムを記憶する。プロセッサ2100は、プログラムをストレージ2300から読み出してメインメモリ2200に展開し、プログラムに従った処理を実行する。施工管理装置200は、インタフェース2400を介してネットワークNに接続される。また施工管理装置200は、インタフェース2400を介して図示しない入出力装置に接続される。
【0060】
ストレージ2300の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、不揮発性メモリ等が挙げられる。ストレージ2300は、施工管理装置200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース2400を介して施工管理装置200に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ2300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0061】
ストレージ2300は、目標施工データ記憶部2301および現況地形記憶部2302としての記憶領域を有する。
目標施工データ記憶部2301は、目標施工データ記憶部605と同様に、施工現場の設計面を表す目標施工データを記憶する。目標施工データは例えば現場座標系に関するデータである。
現況地形記憶部2302は、施工現場の地形を表す三次元データである現況地形データを記憶する。現況地形データは、例えば、現場座標系における水平面(Xg-Yg平面)を区切る各グリッド上における高さ(Zg)を表す点の集合によって、施工現場の現況地形を表す点群データであってよい。なお、現況地形データは、所定の条件に基づいて最新のデータに更新されるものであってもよい。
【0062】
プロセッサ2100は、プログラムを実行することで、バケット位置取得部2101、時系列選択部2102、作業状態特定部2103、距離特定部2104、最短距離ライン決定部2105、現況地形更新部2106として機能する。
【0063】
バケット位置取得部2101は、作業機制御装置126から、バケット133の複数の輪郭点Eの現場座標系における位置、介入フラグ、及び上方更新フラグの時系列を取得する。
【0064】
時系列選択部2102は、バケット位置取得部2101が取得した輪郭点Eの位置、介入フラグおよび上方更新フラグの時系列から早い順に1つずつ処理対象とする時刻を選択する。
【0065】
作業状態特定部2103は、バケット位置取得部2101が取得した時系列のうち、時系列選択部2102に選択された時刻に係る介入フラグに基づいて、作業機130の作業状態が均し作業状態であるか否かを判定する。つまり、作業状態特定部2103は、介入フラグが、介入制御がなされたことを示す場合、作業状態が均し作業状態であると判定する。
【0066】
距離特定部2104は、作業機制御装置126の距離特定部606と同様に、バケット133の複数の輪郭点Eそれぞれと、設計面との距離を特定する。つまり、距離特定部2104は、バケット133の各縦断面と設計面との交線をそれぞれ特定し、各縦断面について、当該縦断面上の輪郭点Eと特定した交線との距離をそれぞれ求める。
【0067】
最短距離ライン決定部2105は、距離特定部2104が特定した各輪郭点と設計面との距離のうち、最も短い距離に係る輪郭点Eを通るバケット幅方向ラインを、現況地形データの更新に用いられる最短距離ラインLmに決定する。輪郭点Eを通るバケット幅方向ラインとは、輪郭点Eを通り、バケット133の幅方向に伸び、バケット133の幅と同じ長さを有する線分である。
【0068】
現況地形更新部2106は、作業状態特定部2103によって作業状態が均し作業状態でないと特定された場合、現況地形記憶部2302が記憶する現況地形データのうち、バケット133の位置に対応する平面位置に係る現況地形データの高さの値を、最短距離ラインLmの輪郭点Eの高さと現況地形データの高さのうち、高さが低いもので更新する。つまり、現況地形更新部2106は、作業状態が均し作業状態でない場合であって、バケット133の最下点の高さが現況地形データの高さ以下である場合、バケット133の最下点高さで現況地形データの高さを更新する。現況地形データとバケット133のうち最も下方の点によって現況地形データを更新する手法を、最下点更新という。他方、現況地形更新部2106は、作業状態が均し作業状態でない場合であって、バケット133の最下点高さが現況地形データの高さより高い場合、現況地形データを更新しない。
現況地形更新部2106は、作業状態特定部2103によって作業状態が均し作業状態であると特定された場合、現況地形記憶部2302が記憶する現況地形データを、最短距離ラインLmと現況地形データとの位置関係によらず、最短距離ラインLmの高さで更新する。つまり、現況地形更新部2106は、作業状態が均し作業状態である場合、現況地形データの高さより最短距離ラインLmの高さが高い場合、現況地形データを上方の値に更新する。最短距離ラインLmの位置によって現況地形データを上方の値に更新する手法を、上方更新という。また現況地形データの高さによらず、最短距離ラインLmの位置によって現況地形データを更新する手法を常時更新ともいう。
現況地形更新部2106は、上方更新フラグおよび介入フラグがオンであるという上方更新許可条件を満たした場合には上方更新を行い、上方更新許可条件を満たさなかった場合には最下点更新を行う。
【0069】
なお、上述した通り、油圧ショベル100のオペレータは、予め、均し作業中に現況地形データを上方の値に更新することを許容するか否かを示す上方更新フラグを設定することができる。上方更新フラグは、バケット位置取得部2101によって時系列として取得される。
【0070】
《施工管理装置の動作》
以下、第1の実施形態に係る施工管理装置200の動作方法について説明する。
図9は、第1の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
施工管理装置200のバケット位置取得部2101は、油圧ショベル100の作業機制御装置126から、バケット133の複数の輪郭点Eの現場座標系における位置、介入フラグ、および上方更新フラグの時系列を取得する(ステップS51)。
【0071】
時系列選択部2102は、輪郭点Eの位置、介入フラグおよび上方更新フラグの時系列における最も早い時刻であって、まだ選択されていないものを1つ選択する(ステップS52)。
距離特定部2104は、選択された時刻に係る複数の輪郭点Eの位置のそれぞれと設計面との距離を特定する(ステップS53)。次に、最短距離ライン決定部2105は、設計面との距離が最も短い輪郭点Eを通る最短距離ラインLmを特定する(ステップS54)。
【0072】
現況地形更新部2106は、選択された時刻に係る上方更新フラグがオンであるか否かを判定する(ステップS55)。上方更新フラグがオフである場合(ステップS55:NO)、現況地形更新部2106は、最短距離ラインLm上の複数の輪郭点Eについて、当該輪郭点Eと平面位置を同じくする点の現況地形データの高さと、輪郭点Eの高さとを比較し、輪郭点Eの高さが現況地形データの高さ未満であるか否かを判定する(ステップS56)。ここで「平面位置」とは、上方からの平面視における平面位置である。
【0073】
輪郭点Eの高さが現況地形データの高さ未満である場合(ステップS56:YES)、現況地形更新部2106は、輪郭点Eと平面位置を同じくする点の現況地形データの高さを、輪郭点Eの高さに更新する(ステップS57)。すなわち現況地形更新部2106は、最下点のバケット133の高さに基づいて現況地形データを更新する。他方、輪郭点Eの高さが現況地形データの高さ以上である場合(ステップS56:NO)、現況地形データの高さを更新しない。
【0074】
他方、上方更新フラグがオンである場合(ステップS55:YES)、作業状態特定部2103は、選択された時刻に係る介入フラグに基づいて、作業機130の作業状態が均し作業状態であるか否かを判定する(ステップS58)。作業機130の作業状態が均し作業状態でない場合(ステップS58:NO)、現況地形更新部2106は、ステップS56、ステップS57により、輪郭点Eの高さが現況地形データの高さ未満である場合に目標施工データの高さを更新する。
他方、作業機130の作業状態が均し作業状態である場合(ステップS58:YES)、現況地形更新部2106は、ステップS57へ処理を進め、輪郭点Eの高さが現況地形データの高さ未満であるか否かに関わらず、現況地形データの高さを輪郭点Eの高さに更新する。すなわち現況地形更新部2106は、常時最新のバケット133の位置に基づいて現況地形データを更新する。
【0075】
次に、時系列選択部2102は、ステップS51で取得した時系列に、選択されていない時刻があるか否かを判定する(ステップS59)。選択されていない時刻がある場合(ステップS59:YES)、時系列選択部2102は、処理をステップS52に戻し、次の時刻を選択する。
他方、選択されていない時刻がない場合(ステップS59:NO)、施工管理装置200は、現況地形データの更新処理を終了する。
【0076】
《作用・効果》
図10は、盛土作業の例を示す図である。
例えば、高速道路の敷設工事において施工現場が平地である場合、土手を形成するために盛土作業を行う必要がある。ダンプトラック300は、土手の形成のために必要となる土砂を運搬し、施工現場に排土する。これにより施工現場には土砂の山Mが形成される。油圧ショベル100は、バケット133によって土砂の山Mを切り崩し、均し作業によって土手を形成する。この場合、施工開始後の現況地形は、施工前より高くなる。
【0077】
図11は、第1の実施形態に係る施工管理装置による現況地形データの更新処理の例を示す図である。
均し作業中に現況地形データの高さを上方の値に更新することが許容されており、かつ作業状態が均し作業状態である場合、
図10に示すように、現況地形データは、設計面に最も近い輪郭点Eの高さに更新される。つまり、第1の実施形態によれば、施工管理装置200は、作業状態が均し作業状態である場合に、バケット133の輪郭点Eが通過した高さに基づいて、バケット133の位置に対応する平面位置における現況地形データの高さを上方の値に更新する。これにより、施工管理装置200は、油圧ショベル100による盛土作業時に実際の現場における現況地形を反映するように現況地形データを更新することができる。このとき、現況地形データのうちバケット133が通過していない領域については、高さが上方に更新されない。この場合、入出力装置127は、
図11に示す現況地形を表す図を表示してもよい。つまり、入出力装置127は、作業機130の作業状態が所定の作業状態である場合に、バケット133の高さに基づいて現況地形の高さを表す線を、上方の位置に更新して表示する図示しない表示部を有する表示装置として機能する。
図11は、入出力装置127の表示部に表示される画面の例である。表示部には、油圧ショベル100を側面視した視点において、少なくともバケット133を側面視した画像と、設計面を示す線と、現況地形を示す線とが表示される。
【0078】
また、第1の実施形態に係る油圧ショベル100は、設計面とバケット133との距離が所定距離未満である場合に、設計面とバケット133との距離に基づいて作業機130を減速させる介入制御機能を有する。そして、施工管理装置200は、作業機130が介入制御されているときに、作業状態が均し作業であると判定する。これにより、施工管理装置200は、オペレータ等の入力によらず、自動で作業状態を判定することができる。
【0079】
また、第1の実施形態に係る施工管理装置200は、バケット133の複数の輪郭点Eのうち最も設計面に近い点に基づいて現況地形データの高さを更新する。これにより、施工管理装置200は、バケット133の刃先で均し作業がなされる場合も、バケット133の底面で均し作業がなされる場合も、適切に現況地形データの高さを更新することができる。
【0080】
また、第1の実施形態に係る施工管理装置200は、油圧ショベル100から、バケット133の位置を取得し、バケット133の位置に基づいて、現況地形データの高さを最下点にて更新する最下点更新、または前記現況地形データの高さを上方に更新する上方更新を行う。施工管理装置200は、上方更新フラグおよび介入フラグがオンであるという上方更新許可条件を満たした場合には上方更新を行い、上方更新許可条件を満たさなかった場合には最下点更新を行う。これにより、施工管理装置200は、作業機械による盛土作業時に現況地形データを上方の値に更新することができる。
【0081】
〈第2の実施形態〉
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態に係る施工管理装置200は、介入制御がなされているときに、均し作業がなされていると判定し、現況地形データの上方の値への更新を許容する。このとき、油圧ショベル100のオペレータが均し作業の終了時にバケット133を上方へ移動させると、当該移動に伴って現況地形データも上方の値への更新されてしまう可能性がある。第2の実施形態に係る施工管理装置200は、均し作業の終了時にバケット133を上方へ移動させても現況地形データを更新しない。
【0082】
《施工管理装置の構成》
第2の実施形態に係る施工管理装置200は、第1の実施形態と同様の構成を備え、時系列選択部2102および現況地形更新部2106の動作が第1の実施形態と異なる。
【0083】
時系列選択部2102は、選択した時刻に係る作業が均し作業である場合、ステップS51で取得した時系列からその時刻以降の均し作業に係る時間帯を特定する。つまり、時系列選択部2102は、上記時系列から一連の均し作業の開始から終了までの時間帯を特定する。
現況地形更新部2106は、時系列選択部2102が特定した時間帯の各時刻に係る複数の輪郭点Eの位置に基づいて、平面位置ごとの最下点の高さを特定し、現況地形を更新する。すなわち、現況地形更新部2106は、上記時間帯の間で輪郭点Eが所定の平面位置に存在した時刻が複数回あった場合に、各時刻における輪郭点Eの高さの中で最下点となる輪郭点Eの高さを最下点高さと判断して、当該平面位置における現況地形の高さを更新する。
【0084】
《施工管理装置の動作》
以下、第2の実施形態に係る施工管理装置200の動作方法について説明する。
図12は、第2の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
第2の実施形態に係る施工管理装置200は、第1の実施形態と同様に、ステップS51からステップS55の処理を実行する。第2の実施形態に係る施工管理装置200は、ステップS55において、均し作業中に現況地形データを上方の値に更新することが許容されていない場合(ステップS55:NO)、および作業機130の作業状態が均し作業状態でない場合(ステップS58:NO)、第1の実施形態と同様に、ステップS56からステップS59の処理を実行する。
【0085】
他方、作業機130の作業状態が均し作業状態である場合(ステップS58:YES)、時系列選択部2102は、ステップS52で選択した時刻以降の均し作業状態に係る時間帯を特定する(ステップS151)。次に、現況地形更新部2106は、特定した時間帯の各時刻に係る複数の輪郭点Eの位置に基づいて、平面位置ごとの最下点の高さを特定する(ステップS152)。
そして、現況地形更新部2106は、各最下点と同じ平面位置の現況地形データの高さを、各最下点の高さに更新する(ステップS57)。
【0086】
《作用・効果》
図13は、第2の実施形態に係る施工管理装置による現況地形データの更新処理の例を示す図である。
均し作業中に現況地形データを上方の値に更新することが許容されており、かつ作業状態が均し作業状態である場合、
図13に示すように、均し作業状態に係る時間帯における輪郭点Eの最下点の高さに更新される。例えば、
図13に示すように、均し作業の終了後、バケット133が上方に移動すると、バケット133の平面位置の高さは、実際に均し作業がなされていたときのバケット133の高さより高くなる。したがって、第2の実施形態において均し作業の終了後のバケット133の移動は、現況地形データの更新に用いられない。つまり、第2の実施形態に係る施工管理装置200によれば、均し作業の終了時にバケット133を上方へ移動させた場合に現況地形データが誤って更新されることを防ぐことができる。
【0087】
〈第3の実施形態〉
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る施工管理装置200は、第2の実施形態と異なる方法で、均し作業の終了時にバケット133を上方へ移動させても現況地形データが誤って更新されることを防ぐ。
【0088】
《施工管理装置の構成》
第3の実施形態に係る施工管理装置200は、第1の実施形態と同様の構成を備え、バケット位置取得部2101、作業状態特定部2103、および現況地形更新部2106の動作が第1の実施形態と異なる。
【0089】
バケット位置取得部2101は、油圧ショベル100の作業機制御装置126から、作業機130の操作量の時系列をさらに取得する。つまり、第3の実施形態に係る作業機制御装置126の操作量取得部602は、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作量を時刻に関連付けてバケット位置記憶部611に記憶させ、バケット位置送信部612は、複数の輪郭点Eの位置、介入フラグ、および上方更新フラグに加え、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作量を送信する。つまりバケット位置取得部2101は、作業機130を操作するための操作レバーの操作信号を取得する操作信号取得部の一例である。
作業状態特定部2103は、バケット位置取得部2101が取得したブーム131、アーム132およびバケット133の操作量に基づき、バケット133が上方に移動するか否かを判定する。
【0090】
《施工管理装置の動作》
以下、第3の実施形態に係る施工管理装置200の動作方法について説明する。
図14は、第3の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
第3の実施形態に係る施工管理装置200のバケット位置取得部2101は、ステップS51において、油圧ショベル100の作業機制御装置126から、バケット133の複数の輪郭点Eの現場座標系における位置、介入フラグ、上方更新フラグ、および作業機130の操作量の時系列を取得する(ステップS251)。
次に、施工管理装置200は、第1の実施形態と同様に、ステップS52からステップS55の処理を実行する。第3の実施形態に係る施工管理装置200は、ステップS55において、上方更新フラグがオフである場合(ステップS55:NO)、および作業機130の作業状態が均し作業状態でない場合(ステップS58:NO)、第1の実施形態と同様に、ステップS56からステップS57の処理を実行する。
【0091】
他方、作業機130の作業状態が均し作業状態である場合(ステップS58:YES)、作業状態特定部2103ブーム動作判定部は、選択された時刻に係るブーム131、アーム132およびバケット133の操作量に基づき、バケット133が上方に移動するか否かを判定する(ステップS252)。バケット133が上方に移動すると判定された場合(ステップS252:YES)、現況地形更新部2106は、現況地形データの高さを上方の値に更新しない。つまり、バケット133が上方に移動すると判定された場合、現況地形更新部2106は、現況地形データの高さを上方の値に更新することを禁止する。オペレータによってバケット133を上方に移動する操作がなされているということは、オペレータが均し作業を終了することを意図しているためである。
【0092】
そして、バケット133が上方に移動すると判定された場合(ステップS253:YES)、現況地形更新部2106は、ステップS57に処理を進め、最短距離ラインLmに基づいて現況地形データの高さを更新する(ステップS57)。
【0093】
《作用・効果》
このように、第3の実施形態に係る施工管理装置200は、作業状態が均し作業状態である場合において、バケット133を上げる操作がなされていない場合に、現況地形データの高さを更新する。これにより、第2の実施形態と同様に、均し作業の終了時にバケット133を上方へ移動させた場合に現況地形データが誤って更新されることを防ぐことができる。
なお、他の実施形態においては、現況地形更新部2106は、バケット133の位置が設計面に対し、例えば上下方向の所定範囲内の領域に位置し、かつ作業機130が操作された場合に、バケット133の位置に基づいて現況地形データの高さを上方の値に更新してもよい。設計面の所定範囲内には、設計面に対して法線方向の所定範囲内の領域も含まれる。また作業機130の操作には、設計面にバケット133が近づく操作、および遠ざかる操作を含まれる。
【0094】
〈第4の実施形態〉
第1の実施形態に係る施工管理装置200は、作業機130の作業状態が均し作業状態である場合に、現況地形データを上方の値に更新する。これに対し、第4の実施形態に係る施工管理装置200は、作業機130の作業状態が転圧作業状態である場合に、現況地形データを上方の値に更新する。転圧作業とは、バケット133の底面で土砂を叩くことで地盤を締め固める作業をいう。転圧作業状態は、所定の作業状態の一例である。
【0095】
《施工管理装置の構成》
第4の実施形態に係る施工管理装置200は、第1の実施形態と同様の構成を備え、作業状態特定部2103の動作が第1の実施形態と異なる。
【0096】
作業状態特定部2103は、目標施工データおよびバケット133の複数の輪郭点Eの位置に基づいてバケット133の底面と設計面とがなす角である底面角度を特定する。
作業状態特定部2103は、底面角度が所定角度未満である場合に、作業状態が転圧作業状態であると判定する。例えば、掘削作業時にはバケット133の刃先を設計面に向けながら作業機130が施工対象に下ろされるため、底面角度は大きくなる。一方、転圧作業時にはバケット133の底面を設計面に向けながら作業機130が施工対象に下ろされるため、底面角度は小さくなる。
【0097】
《施工管理装置の動作》
以下、第4の実施形態に係る施工管理装置200の動作方法について説明する。
図15は、第4の実施形態に係る施工管理装置の動作を示すフローチャートである。
第4の実施形態に係る施工管理装置200は、第1の実施形態と同様に、ステップS51からステップS55の処理を実行する。第4の実施形態に係る施工管理装置200は、ステップS55において、上方更新フラグがオフである場合(ステップS55:NO)、第1の実施形態と同様に、ステップS56からステップS57の処理を実行する。
【0098】
他方、上方更新フラグがオンである場合(ステップS55:YES)、作業状態特定部2103は、ステップS52で選択した複数の輪郭点Eの位置に基づいてバケット133の底面と設計面とがなす角である底面角度を特定する(ステップS351)。次に、作業状態特定部2103は、特定した底面角度に基づいて作業状態が転圧作業状態であるか否かを判定する(ステップS352)。
【0099】
作業状態が転圧作業状態でないと判定された場合(ステップS352:NO)、すなわち底面角度が所定角度以上である場合、施工管理装置200は、第1の実施形態と同様に、ステップS56からステップS57の処理を実行する。他方、作業状態が転圧作業状態であると判定された場合(ステップS352:YES)、すなわち底面角度が所定角度未満である場合、施工管理装置200は、ステップS57へ処理を進め、輪郭点Eの高さが現況地形データの高さ未満であるか否かに関わらず、現況地形データの高さを輪郭点Eの高さに更新する。
【0100】
《作用・効果》
このように、第4の実施形態によれば、施工管理装置200は、作業状態が転圧作業状態である場合に、バケット133の高さに基づいてバケット133の平面位置に係る現況地形データの高さを上方の値に更新する。これにより、施工管理装置200は、盛土作業時における油圧ショベル100による転圧操作時に現況地形データを更新することができる。なお、当該実施形態では、底面角度に基づいて転圧作業であるかを判定したが、その他の手法により点暑さ行であるかを判定し、現況地形データの更新方法を変更してもよい。
【0101】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
上述した実施形態においては、所定の作業状態の例として、均し作業状態および転圧作業状態を挙げたが、他の実施形態においては、掘削作業、介入制御状態などを所定の作業状態としてもよい。
【0102】
上述した実施形態に係る施工管理装置200は、バケット133の輪郭点Eのうち設計面との距離が最も近い輪郭点Eが通る最短距離ラインLmを用いて、現況地形データを更新するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る施工管理装置200は、バケット133の輪郭点のうち現況地形との距離が最も近い輪郭点Eが通る最短距離ラインLmを用いて、現況地形データを更新してもよい。また例えば、他の実施形態に係る施工管理装置200は、バケット133の刃先や底面など予め定められたバケット133のラインを用いて、現況地形データを更新してもよい。また、他の実施形態においては、バケット133が設計面よりも下方に位置する場合、施工管理装置200は、バケット133の輪郭点Eのうち設計面との距離が最も近い輪郭点Eが通る最短距離ラインLm、すなわち最も上方に位置するラインを用いずに、最も下方に位置する輪郭点が通るラインを用いて現況地形データを更新してもよい。
【0103】
また、上述した実施形態に係る施工管理装置200は、介入制御がなされているときに均し作業中であると判定したが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る施工管理装置200は、現況地形データを更新するラインを刃先ラインと固定した上で、介入作業がなされ、かつバケット133の輪郭点Eのうち刃先に係る輪郭点Eが設計面に最も近い場合に、刃先ラインにおける輪郭点Eにおいて上方更新してもよい。そして、他の実施形態に係る施工管理装置200は、介入作業がなされていても、かつバケット133の刃先以外に係る輪郭点Eが設計面に最も近い場合には、輪郭点Eの高さが現況地形データの高さより低い場合に限って現況地形データの高さを更新してもよい。これは、施工においてバケット133の刃先を用いた均し作業が行われ、その後にバケット133の底面で仕上げ作業が行われることが多いためである。
【0104】
また、他の実施形態においては、施工管理装置200は、レバー操作(ブーム、アーム、バケット操作の組み合わせ)に基づいて均し作業か否かを判定してもよいし、動画データの解析により均し作業か否かを判定してもよい。また、均し作業の判定は、レバー操作の信号値や画像データを用いて機械学習などのAI(Artificial Intelligence)処理によってなされてもよい。
【0105】
また、他の実施形態においては、施工管理装置200は、ブームシリンダ134、アームシリンダ135またはバケットシリンダ136に所定値以上の圧力がかかった際に、掘削作業状態および転圧作業状態などの所定の作業状態であると判定し、現況地形データを上方に更新してもよい。これは、掘削時や転圧時などの所定の作業においては、作業機130に圧力がかかるため、これにより作業状態を判定することができるためである。また、他の実施形態においては、施工管理装置200は、バケット133が設計面に対して上下方向の所定範囲内の領域に入った場合に、盛土作業状態などの所定の作業状態であると判定し、現況地形を上方に更新してもよい。バケット133が設計面の近辺を移動しているということは、盛土作業をしている可能性が高いためである。掘削作業状態、転圧作業状態、盛土作業状態のそれぞれは、所定の作業状態の一例である。
【0106】
施工管理装置200は、上方更新フラグがオンの場合に、現況地形を上方に更新するだけでなく、バケット133の最下点が現況地形より下方に位置する場合、最下点と同様の手法で下方に更新しても良い。すなわち、施工管理装置200は、常時バケット位置に基づいて現況地形を更新してもよい。
【0107】
上述の実施形態では、施工管理装置200は、バケット133の最短距離ラインLmを求めて最短距離ラインLm上の輪郭点Eのみを現況地形の更新に用いるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る施工管理装置200は、各輪郭点Eそれぞれを通る複数のバケット133のラインを用いて現況地形を更新してもよい。つまり、ラインによって平面位置が異なるため、施工管理装置200は、ラインごとに現況地形を更新すべきか否かの判定をしてもよい。また、所定の平面位置において複数のラインにおける輪郭点Eの位置に関するデータが存在する場合、その中で最下点の高さを用いて当該平面位置における現況地形データの高さを更新しても良い。
【0108】
また、他の実施形態に係る施工管理装置200は、上方更新フラグおよび均し作業の判定結果を用いずに、他の条件に基づいて上方に現況地形を更新してもよい。例えば、他の実施形態に係る施工管理装置200は、介入フラグを用いた介入制御が作動している場合にのみ上方更新するようにしてもよい。すなわち他の実施形態に係る施工管理装置200は、作業状態が介入制御状態である場合に、現況地形データを上方に更新してもよい。その場合、介入制御状態は、所定の作業状態の一例である。
【0109】
また、上述の実施形態では、作業機制御装置126は、バケット位置情報に付加して介入フラグと上方更新フラグを施工管理装置200に送信するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機制御装置126は、介入制御時に上方更新フラグをオンにすることで、バケット位置情報と上方更新フラグのみを、施工管理装置200に送信してもよい。この場合、施工管理装置200は、
図9のステップS58の処理を省略することができる。
【0110】
また、上述の実施形態では、車載装置である作業機制御装置126とサーバである施工管理装置200とが分担して上記の処理を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、作業機制御装置126と施工管理装置200との何れか一方がすべての処理を行ってもよいし、作業機制御装置126と施工管理装置200とが上述の実施形態と異なる分担にて同様の処理を実行してもよい。例えば、上記実施形態では、施工管理装置200が現況地形を更新するが、他の実施形態では、作業機制御装置126が現況地形データを記憶し、作業機制御装置126が現況地形データを上方に更新するものであってもよい。つまり、施工管理装置200は、作業機械が備える装置であってよい。
【符号の説明】
【0111】
1 施工管理システム、100 油圧ショベル、120 旋回体、110 走行体、130 作業機、200 施工管理装置、2101 バケット位置取得部、2102 時系列選択部、2103 作業状態特定部、2104 距離特定部、2105 最短距離ライン決定部、2106 現況地形更新部、2301 目標施工データ記憶部、2302 現況地形記憶部、2303 上方更新フラグ記憶部