IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジュシ グループ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7317953高弾性率ガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び複合材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】高弾性率ガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び複合材料
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/02 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
C03C13/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021519821
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2020102359
(87)【国際公開番号】W WO2022006948
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】202010665076.1
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517101366
【氏名又は名称】ジュシ グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン リン
(72)【発明者】
【氏名】シン ウェンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ クオロン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ チョンホア
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/062715(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/009686(WO,A1)
【文献】特表2018-518450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%
ZrO 0~0.3重量%
を含み、
重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲が2.1以上である、
高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項2】
成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%
を含み、
上記成分の合計含有量が98重量%以上である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項3】
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲が1.7以上である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項4】
重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲が0.8以上である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項5】
重量百分率の値C4=Al/Yの範囲が1~2.5である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項6】
の含有量の範囲が10.1~20重量%である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項7】
SiOの含有量の範囲が44~55.9重量%である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項8】
Alの含有量の範囲が15.8~20.4重量%である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項9】
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲が1.7以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲が0.8以上である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項10】
成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
10.1~20重量%
MgO+Y 18.1~33重量%
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%
を含み、
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲が1.7以上である、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項11】
ZnO、B、F及びSOのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が4重量%未満となる量でさらに含む、
請求項1に記載の高弾性率ガラス繊維組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の高弾性率ガラス繊維組成物で製造される、
ガラス繊維。
【請求項13】
請求項12に記載のガラス繊維を含む、複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月10日に中国特許局に提出された、出願番号が202010665076.1であり、発明の名称が「高弾性率ガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び複合材料」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用によって本出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、高弾性率ガラス繊維組成物に関し、特に、先進的な複合材料強化基材として使用することができる高弾性率ガラス繊維組成物それからなるガラス繊維及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
高弾性率ガラス繊維は、先進的な複合材料の強化基材として、当初は主に航空、宇宙、国防・軍需工業などの特殊な分野に応用されていた。科学技術の進歩及び経済発展に伴い、高弾性率ガラス繊維は、大型風力翼、高圧容器、光ケーブル強化コア、自動車製造などの民生用工業分野に広く応用されている。風力発電分野を例に、大型風力翼の急速な発展に伴い、一般的なガラス繊維に代わる高弾性率ガラス繊維の割合はますます高くなっている。現在、より優れた弾性率特性を追求し、量産を実現することは、高弾性率ガラス繊維の重要な発展方向となっている。
【0004】
Sガラスは最初の高強度高弾性率ガラスであり、その成分がMgO-Al-SiO系を主体とし、ASTM国際機関により主にマグネシウム、アルミニウム、シリコンの酸化物からなるガラスと定義されており、典型的な形態として、例えば米国で開発されたS-2ガラスがある。S-2ガラス中、SiOとAlの含有量は90重量%であり、MgOが約10重量%であり、ガラスは溶解して清澄化しにくく、気泡が多く、ガラス成形温度は1571℃に達し、液相線温度は1470℃に達する。そして、ガラスの結晶化速度が速いため、S-2ガラス繊維の生産難度は大きすぎて、窯による量産を実現することができない。さらに一段生産を行うことが困難であり、その結果、S-2ガラス繊維の生産規模は小さく、効率は低く、価格は高く、大規模な工業的応用を実現することができない。
【0005】
Sガラスに合わせて、中国はHSシリーズの高強度ガラスを開発した。この高強度ガラスは、SiO、Al、及びMgOを主成分とするとともに、LiO、B、及びFeを高含有量で導入し、成形温度は1310℃~1330℃であり、液相線温度は1360℃~1390℃の範囲にあり、両者の温度はいずれもSガラスよりずっと低い。しかし、その成形温度は液相線温度より低く、ΔT値は負である。これはガラス繊維の高効率延伸に不利であり、伸線温度を高めなければならず、特殊な漏れ板、漏れノズルを採用して、伸線過程中にガラスの失透現象が発生するのを防止しなければならない。これにより、温度制御が困難になり、窯による量産を実現することも難しい。一方、LiOとBを高含有量で導入しているので、両者の全含有量が一般的に2重量%、さらに3重量%を超えており、ガラスの機械的特性や耐食性に一定の悪影響を与えている。また、HSシリーズガラスの弾性率はSガラスと同等である。
【0006】
日本国特許第8231240号は、SiO 62~67重量%、Al 22~27重量%、MgO 7~15重量%、CaO 0.1~1.1重量%、B 0.1~1.1重量%を含有するガラス繊維組成物を開示している。この組成物は、気泡数はSガラスに比べて著しく改善されているが、成形温度は1460℃を超えるため、成形が非常に困難である。
【0007】
上記の従来技術には、生産難度が大きすぎるという問題が普遍的に存在している。具体的には、ガラスの成形温度が高く、液相線温度が高く、結晶化速度が速く、ガラス繊維の成形範囲ΔTが小さく、溶融・清澄化の難度が高く、気泡が多いことが知られている。大部分の機構では、ガラス特性の一部を犠牲にして生産難度を下げるのが一般的であるが、その結果、上記のガラス繊維の弾性率特性を著しく向上させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決することを目的としている。本発明の目的は、ガラス繊維の弾性率を著しく向上させ、ガラスの清澄化温度を著しく低下させ、清澄化効果を改善し、ガラスのフリット性を最適化させ、ガラス繊維の冷却効果を改善し、ガラスの結晶化速度を下げることができ、高弾性率ガラス繊維の量産に適用できる高弾性率ガラス繊維組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含む、高弾性率ガラス繊維組成物を提供する。
【0010】
前記ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%
ZrO 0~2重量%を含む。
【0011】
前記ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含み、上記成分の合計含有量が98重量%以上である。
【0012】
さらに、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上に限定される。
【0013】
さらに、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上に限定される。
【0014】
さらに、重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲は1.9以上に限定される。
【0015】
さらに、重量百分率の値C4=Al/Yの範囲は1~2.5に限定される。
【0016】
さらに、Yの含有量の範囲は10.1~20重量%に限定される。
【0017】
さらに、SiOの含有量の範囲は44~55.9重量%に限定される。
【0018】
さらに、Alの含有量の範囲は15.8~20.4重量%に限定される。
【0019】
さらに、MgOの含有量の範囲は9~15重量%に限定される。
【0020】
さらに、CaOの含有量の範囲は0.5~5.9重量%に限定される。
【0021】
さらに、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上に限定される。
【0022】
さらに、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は2.0以上、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.9以上に限定される。
【0023】
さらに、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上、重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲は2.1以上に限定される。
【0024】
さらに、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上、重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲は2.1以上に限定される。
【0025】
さらに、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上、重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲は1.9以上、重量百分率の値C4=Al/Yの範囲は1~2.1に限定される。
【0026】
前記ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
10.1~20重量%
MgO+Y 18.1~33重量%
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含み、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上である。
【0027】
前記ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.8~20.4重量%
MgO 8~16重量%
Al+MgO 26.5重量%以上
CaO 0.1~6.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含み、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上である。
【0028】
さらに、CeOの含有量の範囲は0~2重量%に限定される。
【0029】
ZrO、ZnO、B、F及びSOのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が4重量%未満となる量でさらに含む。
【0030】
含有量の範囲が0~0.9重量%のZrOをさらに含んでもよい。
【0031】
前記ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含み、
上記成分の合計含有量は99.5重量%以上である。
【0032】
前記ガラス繊維組成物は、Bを含まなくてもよい。
【0033】
前記ガラス繊維組成物は、MnOを含まなくてもよい。
【0034】
前記ガラス繊維組成物的ガラスの清澄化温度は1460℃以下であってもよい。
【0035】
本発明の別の態様によれば、上記ガラス繊維組成物で製造されるガラス繊維を提供する。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、上記ガラス繊維を含む複合材料を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物では、Yを高含有量で導入し、SiO、Al、Y、CaO、MgOの含有量及び割合を合理的に設定し、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ金属酸化物の含有量及び割合を制御し、Al+MgO及びMgO+Yの含有量の範囲を制御した。ガラス構造におけるイットリウムイオンの特有の充填や蓄積の作用、及びアルカリ土類金属の混合効果を利用して、マグネシウムイオンとカルシウムイオン、イットリウムイオンとマグネシウムイオン、イットリウムイオンとカルシウムイオン、イットリウムイオンとアルミニウムイオンとの間の相乗効果を高め、さらにMgO/CaO、Y/MgO、Y/CaOとAl/Yの比率を制御することにより、ガラスの堆積構造をより緊密にし、結晶化過程におけるイオンの再構成配列をより困難にした。これにより、ガラス弾性率を著しく向上させ、ガラスの結晶化速度を下げるとともに、ガラスの清澄化温度を著しく低下させ、清澄化効果を改善し、また、ガラスのフリット性を最適化させ、ガラス繊維の冷却効果を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
具体的には、本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有する。
【0039】
以下、本発明のガラス繊維組成物の各成分の作用及び含有量について説明する。
【0040】
SiOはガラス骨格を形成する主要な酸化物である。Sガラスに比べて、ガラス弾性率を向上させるために、本発明は、酸化イットリウムを高含有量にすることにより、酸化ケイ素の含有量を著しく減らす。本発明のガラス繊維組成物では、SiOの含有量は43~58重量%の範囲に限定されている。好ましくは、SiOの含有量は44~57重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、SiOの含有量は44~55.9重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、SiOの含有量は45~54.9重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、SiOの含有量は45~54重量%の範囲に限定されてもよい。
【0041】
Alもガラス骨格を形成する酸化物であり、SiOと結合するとガラスの機械的特性に実質的に作用する。その含有量が低すぎると、十分に高い機械的特性を得ることができず、その含有量が高すぎると、ガラスの結晶化リスクを著しく増加させやすい。本発明のガラス繊維組成物では、Alの含有量は15.5~23重量%の範囲に限定されている。好ましくは、Alの含有量は15.8~21重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Alの含有量は15.8~20.4重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Alの含有量は16.5~19.8重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、Alの含有量は17~19.6重量%の範囲に限定されてもよい。
【0042】
十分に高い機械性能を得るとともに成形温度を低下させるために、さらに、SiO+Alの合計含有量は65~78重量%に限定されてもよく、好ましくは、SiO+Alの合計含有量は65~76重量%に限定されてもよい。好ましくは、SiO+Alの合計含有量は66~74.5重量%に限定されてもよい。より好ましくは、SiO+Alの合計含有量は66~73重量%に限定されてもよい。
【0043】
本発明では、MgO及びCaOは主にガラス粘度及びガラス結晶化を調整する役割を果たす。本発明のガラス繊維組成物では、MgOの含有量は8~18重量%の範囲に限定されている。好ましくは、いMgOの含有量は8~16重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、MgOの含有量は9~15重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、MgOの含有量は9.4~13.5重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、MgOの含有量は9.4~12重量%の範囲に限定されてもよい。本発明のガラス繊維組成物では、CaOの含有量は0.1~7.5重量%の範囲に限定されている。好ましくは、CaOの含有量は0.1~6.5重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、CaOの含有量は0.5~5.9重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、CaOの含有量は0.5~4.9重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、CaOの含有量は1~4.5重量%の範囲に限定されてもよい。
【0044】
本発明のガラス繊維組成物では、Al+MgOの含有量は25重量%以上の範囲に限定されている。好ましくは、Al+MgOの含有量は26重量%以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Al+MgOの含有量は26~35重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、Al+MgOの含有量は26.5~32重量%の範囲に限定されてもよい。
【0045】
は重要な希土類酸化物であり、Y3+はネットワーク外のイオンとして、その配位数が高く、電界強度が高く、電荷が高く、蓄積能力が強く、ガラス構造の安定性を高め、ガラスの弾性率と強度を高めることができる。本発明のガラス繊維組成物では、Yの含有量は7.1~22重量%の範囲に限定されている。好ましくは、Yの含有量は8.1~22重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Yの含有量は10.1~20重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Yの含有量は11.4~20重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Yの含有量は12.3~20重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Yの含有量は13.1~20重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、Yの含有量は14.6~20重量%の範囲に限定されてもよい。
【0046】
本発明のガラス繊維組成物では、Y+MgOの含有量は16.5重量%以上の範囲に限定されている。好ましくは、Y+MgOの含有量は17.5重量%以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Y+MgOの含有量は17.5~34重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、Y+MgOの含有量が18.1~33重量%の範囲に限定されてもよい。
【0047】
3+のイオン半径(0.09nm)とCa2+(0.1nm)のイオン半径は同等であるため、両方の充填置換性が良く、Al3+(0.0535nm)やMg2+(0.072nm)のイオン半径よりも著しく大きい。また、Y3+イオンとMg2+、Ca2+イオンとの間に存在する電界強度の違い、及びCa2+イオンとMg2+イオンとの間に存在する混合アルカリ土類効果を考慮すると、本発明では、Yを高含有量で導入し、これらの間の比を合理的に制御することにより、他のガラスイオンの移動配列を効果的に抑制することができる。さらに、ガラスの結晶化傾向を著しく低下させるという目的を達成することができ、しかも、ガラスのフリット性を効果的に調節し、ガラスの冷却効果を改善することもできる。さらに、MgO/CaO、Y/MgO、Y/CaO及びAl/Yの割合を合理的に制御すると、より優れた構造堆積効果を得ることができるだけでなく、ガラスの結晶化後に含まれる結晶相を有効に制御することができ、結晶間の競争を強化することができる。主な結晶相はコージェライト(MgAlSi)カルシウム長石(CaAlSi)、透輝石(CaMgSi)及びその混合結晶を含み、それによって、ガラスの結晶化傾向を有効に抑制する。
【0048】
さらに、C1=MgO/CaOの重量百分率の値は1.7以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C1=MgO/CaOの重量百分率の値は2.0以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C1=MgO/CaOの重量百分率の値は2.3以上の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、C1=MgO/CaOの重量百分率の値は2.5以上の範囲に限定されてもよい。
【0049】
さらに、C2=Y/MgOの重量百分率の値は0.8以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C2=Y/MgOの重量百分率の値は0.9以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C2=Y/MgOの重量百分率の値は1.0以上の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、C2=Y/MgOの重量百分率の値は1.1以上の範囲に限定されてもよい。
【0050】
さらに、C3=Y/CaOの含有量は1.9以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C3=Y/CaOの含有量は2.1以上の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C3=Y/CaOの含有量は2.3以上の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、C3=Y/CaOの含有量は2.9以上の範囲に限定されてもよい。
【0051】
さらに、C4=Al/Yの含有量は1~2.5の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C4=Al/Yの含有量は1~2.1の範囲に限定されてもよい。好ましくは、C4=Al/Yの含有量は1~2の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、C4=Al/Yの含有量は1.2~2の範囲に限定されてもよい。
【0052】
さらに、CaO+MgOの含有量は9~20重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、CaO+MgOの含有量は9.5~18重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、CaO+MgOの含有量は9.5~17重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、CaO+MgOの含有量は10~16重量%の範囲に限定されてもよい。
【0053】
NaO及びKOはともにガラス粘度を低下させることができる、良好なフラックス剤である。NaO及びKOに比べて、LiOはガラス粘度を著しく向上させ、ガラスの溶融特性を改善することができ、ガラスの機械的特性の向上に有利である。しかし、原料コストが高く、アルカリ金属イオンが多すぎるとガラス構造の安定性を損ない、ガラスの耐食性に明らかな悪影響を与えるため、好ましくは導入量が多すぎてはならない。本発明のガラス繊維組成物では、NaOの含有量は0.01~2重量%の範囲に限定されている。好ましくは、NaOの含有量は0.01~1.5重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、NaOの含有量は0.05~0.9重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、NaOの含有量は0.05~0.45重量%の範囲に限定されてもよい。
【0054】
本発明のガラス繊維組成物では、KOの含有量は0~1.5重量%の範囲に限定されている。好ましくは、KOの含有量は0~1重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、KOの含有量は0~0.5重量%の範囲に限定されてもよい。
【0055】
本発明のガラス繊維組成物では、LiOの含有量は0~0.9重量%の範囲に限定されている。好ましくは、LiOの含有量は0~0.6重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、LiOの含有量は0~0.3重量%の範囲に限定されてもよい。別の実施形態では、本発明のガラス繊維組成物はLiOを含まなくてもよい。
【0056】
さらに、NaO+KO+LiOの含有量は0.01~1.4重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、NaO+KO+LiOの含有量は0.05~0.9重量%の範囲に限定されてもよい。さらに、NaO+KOの含有量は0.01~1.2重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、NaO+KOの含有量は0.05~0.7重量%の範囲に限定されてもよい。
【0057】
TiOは、高温時のガラス粘度を低下させることができ、そしてチタンイオン及びイットリウムイオンとが一定の相乗作用を有し、ガラスの蓄積効果を高め、ガラスの機械的特性を改善することができる。本発明のガラス繊維組成物では、TiOの含有量が0.01~5重量%の範囲に限定されている。好ましくは、TiOの含有量は0.01~3重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、TiOの含有量は0.05~1.5重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、TiOの含有量は0.05~0.9重量%の範囲に限定されてもよい。
【0058】
Feはガラスの溶融に有利でありながら、ガラスの結晶化特性を改善することができる。ただし、鉄イオンの着色作用のため、含有量が多すぎてはならない。本発明のガラス繊維組成物では、Feの含有量は0.01~1.5重量%の範囲に限定されている。好ましくは、Feの含有量は0.01~1重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、Feの含有量は0.05~0.8重量%の範囲に限定されてもよい。
【0059】
SrOはガラス粘度を低下させることができ、そしてカルシウムイオン、マグネシウムイオン、及びアルカリ土類金属イオンとは相乗効果を示し、ガラスの結晶化傾向をさらに低下させることができる。本発明のガラス繊維組成物では、SrOの含有量は0~4重量%の範囲に限定されている。好ましくは、SrOの含有量は0~2重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、SrOの含有量は0~1重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、SrOの含有量は0~0.5重量%の範囲に限定されてもよい。別の実施形態では、本発明のガラス繊維組成物はSrOを含まなくてもよい。
【0060】
Laはガラス粘度を低下させ、ガラスの機械的特性を向上させることができ、そしてイットリウムイオンとは一定の相乗効果を示し、ガラスの結晶化傾向をさらに低下させることができる。CeOはガラスの結晶化傾向及び清澄化効果を改善することができる。本発明のガラス繊維組成物では、La+CeOの含有量は0~5重量%の範囲に限定されている。好ましくは、La+CeOの含有量は0~3重量%の範囲に限定されてもよい。より好ましくは、La+CeOの含有量は0~1.5重量%の範囲に限定されてもよい。
【0061】
さらに、Laの含有量は0~3重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、Laの含有量は0~1.5重量%の範囲に限定されてもよい。別の実施形態では、本発明のガラス繊維組成物はLaを含まなくてもよい。さらに、CeOの含有量は0~2重量%の範囲に限定されてもよい。好ましくは、CeOの含有量は0~0.6重量%の範囲に限定されてもよい。別の実施形態では、本発明のガラス繊維組成物はCeOを含まなくてもよい。
【0062】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は、合計含有量は4重量%以下である他の成分を少量で含んでもよい。
【0063】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は、ZrO、ZnO、B、F及びSOのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が4重量%未満となる量でさらに含んでもよい。さらに、ZrO、ZnO、B、F及びSOのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が2重量%未満となる量でさらに含んでもよい。
【0064】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は、Sm、Sc、Nd、Eu及びGdのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が4重量%未満となる量でさらに含んでもよい。
【0065】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は含有量の範囲がHo、Er、Tm、Tb及びLuのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が2重量%未満となる量でさらに含んでもよい。
【0066】
さらに、本発明のガラス繊維組成物はNb及びTaのうちの1種又は複数種を、その合計した含有量が2重量%未満となる量でさらに含んでもよい。
【0067】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は、含有量の範囲が0~2.4重量%のZrOをさらに含んでもよい。さらに、含有量の範囲が0~0.9重量%のZrOをさらに含んでもよい。さらに、含有量の範囲が0~0.3重量%のZrOをさらに含んでもよい。別の実施形態では、本発明のガラス繊維組成物はZrOを含まなくてもよい。
【0068】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は、含有量の範囲が0~2重量%のBをさらに含んでもよい。別の実施形態では、本発明のガラス繊維組成物はBを含まなくてもよい。
【0069】
さらに、本発明のガラス繊維組成物は、含有量の範囲が0~1重量%のFをさらに含んでもよい。さらに、含有量の範囲が0~0.5重量%のFをさらに含んでもよい。さらに、本発明のガラス繊維組成物は含有量の範囲が0~0.5重量%のSOをさらに含んでもよい。
【0070】
さらに、他の成分の重量百分率の合計含有量は2重量%以下であってもよい。さらに、他の成分の重量百分率の合計含有量は1重量%以下であってもよい。さらに、他の成分の重量百分率の合計含有量は0.5重量%以下であってもよい。
【0071】
さらに、前記ガラス繊維組成物のガラスの清澄化温度は1485℃以下であってもよい。さらに、前記ガラス繊維組成物のガラスの清澄化温度は1460℃以下であってもよい。さらに、前記ガラス繊維組成物のガラスの清澄化温度は1445℃以下であってもよい。
【0072】
さらに、前記ガラス繊維の弾性率は95GPa以上であってもよい。さらに、前記ガラス繊維の弾性率は97~115GPaであってもよい。
【0073】
本発明のガラス繊維組成物では、各成分の含有量を上記範囲にすることによる有益な効果は、実施例を通じて具体的な実験データを示すことにより説明される。
【0074】
以下、本発明に係るガラス繊維組成物に含まれる各成分の好適な値の範囲の例である。
【0075】
好適例1
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.8~20.4重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有し、
上記成分の合計含有量は98重量%以上であり、重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上である。
【0076】
好適例2
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.8~20.4重量%
MgO 8~16重量%
Al+MgO 26.5重量%以上
CaO 0.1~6.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有し、
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は2.0以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.9以上である。
【0077】
好適例3
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.8~21重量%
MgO 9.4~13.5重量%
Al+MgO 26.5重量%以上
CaO 0.1~6.5重量%
10.1~20重量%
MgO+Y 19.5~33重量%
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有する。
【0078】
好適例4
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%
ZrO 0~0.3重量%を含有し、
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上である。
【0079】
好適例5
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有し、
上記成分の合計含有量は98重量%以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上であり、重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲は2.1以上である。
【0080】
好適例6
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有し、
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲が0.8以上であり、重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲が2.9以上である。
【0081】
好適例7
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 44~55.9重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有し、
重量百分率の値C3=Y/CaOの範囲は2.9以上である。
【0082】
好適例8
本発明に係る高弾性率ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 43~58重量%
Al 15.5~23重量%
MgO 8~18重量%
Al+MgO 25重量%以上
CaO 0.1~7.5重量%
7.1~22重量%
MgO+Y 16.5重量%以上
TiO 0.01~5重量%
Fe 0.01~1.5重量%
Na 0.01~2重量%
0~1.5重量%
Li 0~0.9重量%
SrO 0~4重量%
La+CeO 0~5重量%を含有し、
重量百分率の値C1=MgO/CaOの範囲は1.7以上であり、重量百分率の値C2=Y/MgOの範囲は0.8以上であり、重量百分率の値C4=Al/Yの範囲は1~2である。
【実施例
【0083】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明するが、もちろん、説明する実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに得る他のすべての実施例は、本発明の特許範囲に属する。なお、本出願の実施例及び実施例の特徴は、矛盾しない限り、互いに任意に組み合わせることができる。
【0084】
本発明の基本的な構想としては、ガラス繊維組成物の各成分の含有量は、SiO 43~58重量%、Al 15.5~23重量%、MgO 8~18重量%、Al+MgO25重量%以上、CaO 0.1~7.5重量%、Y 7.1~22重量%、MgO+Y16.5重量%以上、TiO 0.01~5重量%、Fe 0.01~1.5重量%、NaO 0.01~2重量%、KO 0~1.5重量%、LiO 0~0.9重量%、SrO 0~4重量%、La+CeO 0~5重量%である。当該組成物は、ガラス繊維の弾性率を著しく向上させ、ガラスの清澄化温度を著しく低下させ、清澄化効果を改善し、ガラスのフリット性を最適化させ、ガラス繊維の冷却効果を改善し、ガラスの結晶化速度を下げることができ、高弾性率ガラス繊維の量産に適用できる。
【0085】
本発明のガラス繊維組成物中のSiO、Al、MgO、CaO、Y、TiO、Fe、NaO、KO、LiO、SrO、La、CeO、ZrOなどの具体的な含有量の値を実施例として、B1-特許WO2016165506A2における改良Rガラス、B2-従来のRガラス及びB3~Sガラスの特性パラメータと比較する。比較するときに以下の8つの特性パラメータが選択される。
【0086】
(1)成形温度
ガラス融液の粘度が10ポイズのときの温度に対応しており、ガラス繊維の典型的な伸線温度を特徴付けることができる。
【0087】
(2)液相線温度
ガラス融液が冷却されたときに結晶核が形成され始める温度に対応しており、すなわちガラス結晶化の上限温度に相当する。
【0088】
(3)清澄化温度
ガラス融液の粘度が10ポイズのときの温度に対応しており、溶融ガラスの清澄化と気泡排出の相対的な難度を特徴付けることができる。一般的に、清澄化温度が低いと、同じ温度での溶融ガラスの清澄化、気泡排出効率が高くなる。
【0089】
(4)ΔT値
成形温度と液相線温度との差であり、伸線成形の温度範囲を示す。
【0090】
(5)ΔL値
清澄化温度と成形温度の差であり、溶融ガラスのフリット性の長さを反映しており、ガラス繊維の伸線過程における溶融ガラスの冷却の難易度を特徴付けることができる。一般的に、ΔL値が小さいと、同じ伸線条件で溶融ガラスが冷却されやすくなり、ガラス繊維の効率的な伸線を実現するのに有利である。
【0091】
(6)弾性率
弾性変形に対するガラスの抵抗力を特徴付け、ガラス板の弾性率をASTM E1876規格で試験することにより、ガラス繊維の弾性率を特徴付けることができる。
【0092】
(7)結晶化面積率
測定方法は以下のとおりである。ガラス板を磁器ボートの溝の大きさに合わせて適切に切断し、切断したガラス棒試料を磁器ボートに入れ、前処理した後、勾配炉に入れて結晶化し、5時間保温した後、ガラス試料を入れた磁器ボートを勾配炉から取り出し、空冷して常温にする。次に、1050~1150℃の温度領域で、光学顕微鏡により各ガラス試料表面の結晶化数及び大きさを微視的に観察し、Sガラスを基準として相対結晶化面積率を算出した。結晶化面積率が大きいほど、ガラスの結晶化傾向が大きく、結晶化速度が速いことを示している。
【0093】
(8)気泡含有率
気泡含有率の測定方法は以下のとおりである。専用の金型を用いて各実施例の配合材料を押して同じ形状の試料にして、高温顕微鏡の試料プラットフォームに置いて、手順に従って設定温度1500℃まで昇温して、保温せずにガラス試料を常温まで炉冷し、そして、各ガラス試料の気泡数を光学顕微鏡により微視的に観察し、Sガラスを基準として相対気泡含有率を算出する。気泡含有率が大きいほど、ガラスの清澄化が困難であり、溶融ガラスの品質を確保するのに不利であることを示している。ここで、気泡数は顕微鏡の結像範囲を基準とする。
【0094】
上記した8つのパラメータ及びその測定方法は当業者にとって従来の知識であるので、上記したパラメータを用いることにより、本発明のガラス繊維組成物の特性を十分に説明することができる。
【0095】
実験の具体的な工程は次のとおりである。各成分を適切な原料から入手し、各成分が最終的に期待される重量%になるように各原料を所定の割合で混合する。混合した配合物を溶融して清澄化した後、溶融ガラスを漏れ板上の漏れノズルを通して引き出してガラス繊維を形成し、ガラス繊維を伸線機の回転ヘッドに引き回して原糸ケーキや糸塊を形成する。もちろん、これらのガラス繊維は、期待される要件を満たすために、従来の方法で高度に加工してもよい。
【0096】
以下、本発明のガラス繊維組成物の実施例、Sガラス、従来のRガラス、及び改良Rガラスの特性パラメータの比較を下記表に列記する。ここで、ガラス繊維組成物の含有量は重量%で示される。なお、実施例の成分の総含有量は100重量%よりもわずかに低く、残量は微量の不純物又は分析できない少量の成分であると理解することができる。
【0097】
【表1A】
【0098】
【表1B】
【0099】
【表1C】
【0100】
【表1D】
【0101】
【表1E】
【0102】
上記表中の具体的な数値から分かるように、Sガラスに比べて、本発明のガラス繊維組成物は以下の利点を有する。(1)はるかに高い弾性率を有する。(2)より低い清澄化温度と気泡含有率を有し、本発明のガラスはより清澄化しやすく、気泡排出効果がより優れている。(3)成形温度、液相線温度及び結晶化面積率がはるかに低い。
【0103】
従来のRガラスに比べて、本発明のガラス繊維組成物は以下の利点を有する。(1)はるかに高い弾性率を有する。(2)より小さい清澄化温度と気泡含有率を有し、本発明のガラスはより清澄化しやすく、気泡排出効果がより優れている。(3)はるかに小さいΔL値を有し、ガラス繊維は更に冷却しやすくて、繊維の伸線効率を高めるのに有利である。(4)成形温度、液相線温度、及び結晶化面積率がはるかに低い。
【0104】
改良Rガラスに比べて、本発明のガラス繊維組成物は以下の利点を有する。(1)はるかに高い弾性率を有する。(2)清澄化温度と気泡含有率が小さく、本発明のガラスはより清澄化しやすく、気泡排出効果がより優れている。(3)はるかに小さいΔL値を有し、ガラス繊維は更に冷却しやすくて、繊維の伸線効率を高めるのに有利である。(4)低い結晶化面積率を有し、これは、本発明のガラスの結晶化速度が小さく、ガラスの結晶化リスクを低減するのに有利であることを示している。
【0105】
このことから、本発明のガラス繊維組成物は、ガラス弾性率、ガラス清澄化、ガラス繊維冷却及び結晶化速度において画期的な進展を得ており、同等の条件下でガラスの弾性率が著しく上昇し、清澄化温度が著しく低下し、気泡数が少なく、ガラス繊維の冷却効果が良く、技術案は全体として優れていることが分かった。
【0106】
本発明に係るガラス繊維組成物から、上記の優れた特性を有するガラス繊維を製造することができる。
【0107】
本発明に係るガラス繊維組成物は、1種又は複数種の有機及び/又は無機材料と組み合わせて、優れた特性を有する複合材料、例えばガラス繊維強化基材を得ることができる。
【0108】
最後に、なお、本明細書では、用語「含有」、「含む」、又は他の任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、したがって、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素だけでなく、明示的にリストされていない他の要素も含むか、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素も含む。これ以上の制限がない場合、「...を1つ含む」で限定された要素は、前記要素を含むプロセス、方法、物品又は装置に他の同じ要素が存在することを排除しない。
【0109】
上記の実施例は、本発明の技術案を説明するためにのみ使用され、それを限定するものではない。前述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとって明らかなように、前述の各実施例に記載された技術案を補正し、又はその中の一部の技術的特徴を均等に置き換えることができ、これらの修正又は置換は、対応する技術案の本質を本発明の各実施例の技術案の趣旨及び範囲から逸脱させるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の高弾性率ガラス繊維組成物は、ガラス繊維の弾性率を著しく向上させるだけでなく、ガラスの清澄化温度を著しく低下させ、清澄化効果を改善し、ガラスのフリット性を最適化させ、ガラス繊維の冷却効果を改善し、ガラスの結晶化速度を下げることができ、高弾性率ガラス繊維の量産に適用できる。従来のガラス繊維組成物に比べて、本発明のガラス繊維組成物は、ガラス弾性率、ガラス清澄化、ガラス繊維の冷却及び結晶化速度について画期的な進展を得ており、同等の条件下でガラスの弾性率が著しく上昇し、清澄化温度が著しく低下し、気泡の数が少なく、ガラス繊維の冷却効果が良く、技術案は全体として優れている。したがって、本発明は、産業上の実用性に優れている。