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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】カニューレを用いた素子留置装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20230724BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20230724BHJP
   A61D 7/00 20060101ALI20230724BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A61M37/00 590
A61B17/34
A61D7/00 H
A61D7/00 Z
A61M25/06 510
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021529026
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2019081754
(87)【国際公開番号】W WO2020104430
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】102018129618.5
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518435666
【氏名又は名称】エスエフエム・メディカル・ディバイシイズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】sfm medical devices GmbH
【住所又は居所原語表記】Bruckenstrase 5,63607 Wachtersbach,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】リヒター、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ブレムセン、オラフ
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0105719(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0297213(US,A1)
【文献】特表2003-518974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0131908(US,A1)
【文献】米国特許第05312345(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61B 17/34
A61D 7/00
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形製剤又は挿入物といった素子(14)の留置を目的とし、カニューレ(12)とプランジャ(16)から成り、前記カニューレが、遠位端に設けられた先端(18)と、前記カニューレの近位領域を収容し、1つ以上の、前記カニューレの長手軸に対して横に延在するリブ(24、26、28)を有する取付け具(20)とを備えていて、グリップ(38)を備えた前記プランジャが前記カニューレの内部で部分的に摺動可能である装置(10)であって、
前記グリップ(38)が前記プランジャ(16)に対して間隔を開けて長手方向に延在する突起状の固定要素(50、52)を有することと、各固定要素が接続要素(54、56)を介して前記プランジャと接続されていて、前記接続要素が少なくともその端部領域の一方において前記取付け具(20)との相互作用によって分離可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記接続要素(54、56)が前記固定要素(50、52)と分離可能に接続され、前記プランジャ(16)と関節式に接続されているか、又はその逆であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
素子(14)の留置を目的として前記装置(10)を複数回使用するために、前記接続要素(54、56)がストッパとして前記取付け具(20)の近位縁部(48)と共同作用することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記固定要素(50、52)が前記プランジャ(16)の方向に延在する係合部(58、60)を有することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プランジャ(16)の遠位端が前記カニューレ(12)の前記先端(18)を越えて突出し、前記プランジャが係合している状態で、前記接続要素(54、56)が前記固定要素(50、52)から分離されていて、前記プランジャ(16)との接続が維持された状態で、前記プランジャに沿って平行に方向付けられていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記係合部(58、60)が前記取付け具(20)の、リブ(24)といった係合要素の後部に嵌合することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記プランジャ(16)の遠位端が前記カニューレ(12)の前記先端(18)を越えて突出し、前記プランジャが係合している状態で、前記接続要素(54、56)が前記プランジャから分離されていて、前記固定要素(50、52)との接続が維持された状態で、前記固定要素に沿って平行に方向付けられていることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記接続要素(54、56)が前記取付け具(20)との相互作用によって、前記プランジャ(16)からも前記固定要素(50、52)からも分離可能であることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記接続要素(54、56)が前記係合部(58、60)と接続されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記取付け具(20)の近位が外径Dの中空円筒部分として形成されていることと、前記プランジャの長手軸に対して直径方向に対向する2つの係合部(58、60)の内幅がDと等しいか、Dとほぼ等しいことを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記固定要素(50、52)が、前記プランジャ(16)の前記グリップ(38)の、端部領域が円筒形の外形形状を有する基部(51)から出ていることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記固定要素(50、52)の外面が前記基部(51)の周囲面と同一平面に移行することを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記接続要素(54、56)がフィルムヒンジを介して前記プランジャ(16)又は前記固定要素(50、52)と接続されていることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記プランジャ(16)から、その近位領域において、前記カニューレ(12)の内面との摩擦締結を可能にする少なくとも1つの突出部(40、42、44)が突出することを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
複数の突出部(40、42、44)が周囲壁の周りに均等に分配されて、前記プランジャ(16)から突出することを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記グリップ(38)を備えた前記プランジャ(16)がプラスチック射出成形品であることを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に固形製剤又は挿入物といった素子の留置を目的とし、カニューレとプランジャから成り、カニューレが、遠位端に設けられた先端と、カニューレの近位領域を収容し、主として少なくとも1つの、カニューレの長手軸に対して横に、特に垂直に延在するリブを有する取付け具とを備えていて、グリップを備えたプランジャがカニューレの内部で少なくとも部分的に摺動可能である装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間医学と獣医学においては、注入装置を用いて固形製剤、又は例えば動物の個体識別若しくは監視を可能にするための標識が対象となり得る挿入物が留置される。相応の装置は例えば国際公開第2013/167431号パンフレット又は欧州特許出願公開第2314342号明細書から知られている。その際、素子の適用者を保護するために、素子の留置後にマンドレルとも呼ばれ得るプランジャを固定する可能性、すなわちカニューレ先端がプランジャによって覆われている可能性が存在し、それによって傷害の危険が排除されている。
【0003】
独国特許出願公開第102012104058号明細書から、カニューレが摺動可能に配置されたマンドレルを備え、そこから係合フックが出ていて、マンドレルの遠位端がカニューレ先端を覆えば、該フックがカニューレホルダの凹部に係合することが看取され得る。
【0004】
独国特許出願公開第102013112324号明細書の対象は、カニューレの尖端との相互作用によって位置が固定されるマンドレルを備えたカニューレである。
【0005】
米国特許出願公開第2017/0065805号明細書から、マンドレルがチューブ先端から突出する穿刺器具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/167431号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2314342号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012104058号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013112324号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0065805号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明にはとりわけ、もはや使用が予定されていない場合にカニューレ先端による傷害が予防されているように、冒頭に記載の方式の装置を発展させるという課題がある。更なる態様に従って、素子を留置するために該装置を複数回使用する可能性が存在することになる。
【0008】
また、本発明の更なる態様に従って、プランジャが、先端を覆う予定である位置に移動されるか、あるいは先端が覆われている位置に移動されたかを、使用者が問題なく把握できることになる。
【0009】
上記の態様の少なくとも1つを解決するために、本発明によって、プランジャのグリップに備わっている基部から、プランジャの長手方向に、またプランジャに対して間隔を開けて延在する突起状の固定要素が出ていること、各固定要素が接続要素を介してプランジャと接続されていて、接続要素が少なくともその端部領域の一方において取付け具との相互作用によって分離可能であることが、基本的に考慮される。特に、接続要素が固定要素と分離可能に、またプランジャと関節式に接続されていること、又はその逆であることが考慮されている。
【0010】
これに関するプランジャの摺動に用いられるグリップの構造によって、1つには、タング座とも呼ばれ得る固定要素が、プランジャと接続する接続要素と共に一方ではストッパとして作用することによって、複数回の使用が行われ得るが、他方ではグリップに対してカニューレの遠位領域の方向に力が作用すれば、固定要素から分離されるという可能性が存在し、その際プランジャの更なる摺動時には、固定要素が、プランジャとの接続、特に関節式の接続が引き続き存在することにより、取付け具との相互作用によってプランジャに沿って平行に方向付けられ、したがって、固定要素が適用領域において危険を及ぼす可能性はない。同時にほぼ鉤状に形成された固定要素が取付け具の係合受入部、特に第1のリブと相互作用して、この後部に嵌合することによって係合が行われ、その結果、プランジャのカニューレからの制御されない引出しが不可能になっている。したがって、カニューレ先端は持続的にプランジャによって覆われている。
【0011】
その際、特に固定要素が遠位にプランジャロッドの方向に延在する係合部を有することが考慮されていて、それによって鉤状の形状が生じる。
【0012】
特に、接続要素が該係合部と接続されていることが考慮されている。
【0013】
接続要素がプランジャと関節式に接続されていることが好ましく考慮されているが、その場合当然、固定要素と関節式の接続が行われている可能性も存在し、その場合は接続要素がプランジャから分離可能である。
【0014】
本発明は、接続要素が両端部において、すなわち一方は固定要素に対する接続領域、またもう一方はプランジャに対する接続領域において、分離可能であることも考慮する。
【0015】
接続要素を係合要素から確実かつ問題なく分離することができるように、本発明は更に、取付け具が近位に外径Dの中空円筒部分を有することと、プランジャロッドの長手軸に対して直径方向に対向する2つの係合部の内幅がDと等しいか、ほぼ等しいことを考慮する。したがって、プランジャを取付け具の方向に摺動すれば、中空円筒部分が接続要素と固定要素との間の各接続領域に直接作用することによって、問題のない分離が可能である。その対向する側はフィルムヒンジを介してプランジャ自体と接続されていて、それによって、プランジャがカニューレの中に更に移動すれば、接続要素はプランジャに密着して、中空円筒部分とプランジャとの間の間隙に入る。
【0016】
当然の推奨解決法によって、グリップが取付け具と螺合によって接続可能であり、取付け具とグリップが螺合されていないが接触している第1の位置においては、先端がプランジャに覆われていないように、また、取付け具とグリップが螺合されている第2の位置においては、プランジャの遠位端領域が先端を覆うように、プランジャの長さがカニューレの長さに合わせて調整されていることが考慮される。
【0017】
その際、本発明は特に、第2の位置において取付け具とグリップが係合されていることを特徴とする。その際該係合は、これが触覚的及び/又は聴覚的に知覚可能であるように形成しておくことができる。
【0018】
グリップと取付け具を螺合するために、グリップが取付け具内に存在する雌ねじと相互作用する雄ねじを有する可能性が存在する。
【0019】
代替として本発明は、グリップが、ルアーロック突起部といった、取付け具、特にその近位縁領域から突出する突起、又は取付け具の雄ねじと相互作用する、雌ねじを有することを考慮する。
【0020】
プランジャのグリップの基部は、主として周囲面が円筒状の形状をしている。その際特に、基部の周囲壁の直径は、端部領域においてより中央領域においての方が小さいことが考慮されていて、それによって問題のない把持が可能である。
【0021】
固定要素の外面は基部の周囲面と同一平面に移行し得る。
【0022】
グリップ自体はプラスチック射出成形品であり得る。
【0023】
本発明による理論によって、カニューレを用いて1つの固形製剤又は挿入物を留置する予定であるのか、あるいは複数の当該素子を連続的に留置する予定であるのかに応じて、カニューレの使用後つまり生物から取り除いた後、傷害の危険が回避されているようにカニューレ先端が覆われていることが保証されることになる。
【0024】
その際、カニューレの取付け具と、マンドレルとも呼ばれ得るプランジャのグリップは、停止と連結の2つの所定の位置が触覚的及び/又は聴覚的に知覚可能であるように、構造的に形成しておくことができる。
【0025】
プランジャがカニューレ先端を覆わない位置にある状態で、プランジャのカニューレ先端方向への更なる摺動が停止される。この停止は固定要素とプランジャとの間の接続要素によって確立しておくことができる。
【0026】
代替として、該停止は、グリップと取付け具との螺合前にこれらの相互作用によって共同で行われている。カニューレ先端が覆われることになれば、該停止が乗り越えられて、固定要素が取付け具のリブといった係合要素と相互作用することによって、又は螺合時の段部といった突出部を乗り越えることよって、特に取付け具とグリプの係合が第2の所定の位置において行われる。
【0027】
本発明の更なる詳細、利点及び特徴は、請求項、請求項から看取され得る特徴‐単独及び/又はその組合せ‐からだけでははく、以下の、図面から看取され得る好ましい実施例の説明からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】納入状態における保護カバーとプランジャを備えたカニューレの図である。
図2図1に基づくプランジャを備えているが、保護カバーは取り除かれているカニューレの図である。
図3図2に基づくが、プランジャを引き出す際の図である。
図4】プランジャが取り除かれたカニューレの図、及びプランジャの詳細図である。
図5】留置されるべき素子の挿入時のカニューレの図である。
図6】カニューレへの素子の装填を解説するための概略図、及び該断面図である。
図7】プランジャを差し込む際の素子を含むカニューレの図、及び該断面図である。
図8】素子を留置する前のプランジャを含むカニューレの図である。
図9】素子を留置する際のカニューレの図である。
図10】素子を留置した後のプランジャを含むカニューレの図である。
図11】安全機構作動前のプランジャを含むカニューレの図である。
図12】固定するために移動中のプランジャを含むカニューレの図である。
図13】カニューレすなわちその取付け具と固定されたプランジャの図である。
図14】納入状態におけるプランジャと保護カバーを備えたカニューレの更なる実施形態の図である。
図15図14に基づくプランジャを備えているが、保護カバーは取り除かれているカニューレの図である。
図16】プランジャが取り除かれたカニューレの図である。
図17】素子がカニューレに挿入されるところで、プランジャがカニューレと一直線上に置かれている位置にあるカニューレの図である。
図18】素子を留置する際のプランジャを含むカニューレの図である。
図19】プランジャがカニューレ先端を覆っているカニューレの図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
同じ要素には同じ参照符号が使用される図1から図13までより、特に、固形製剤、あるいは個体識別用又は監視用チップのような挿入物といった素子を留置するための装置10が看取され得る。このために、素子14を生物に注入するためのカニューレ12と、素子14を押し動かしてカニューレ12を通過させるプランジャ16‐マンドレルとも呼ばれる‐とを備えた装置10が使用される。
【0030】
図1には納入状態における装置10が示されている。
【0031】
図2においてカニューレ12が遠位に先端18を有し、近位領域は中空円筒状の基体22から成る取付け具20に収容されていて、該基体の周囲壁から、該実施例においてはリブが突出し、その一部に参照符号24、26、28が付されている(図3)ことが認識される。取付け具20の遠位領域には、操作が問題なくできるように翼状のグリップ30が位置する。この意味では取付け具20を備えたカニューレ12は周知の構造を有する。
【0032】
カニューレ12の外面には、カニューレ先端18の生物への貫入深さを確認するために印32、34が付けられていてもよい。
【0033】
納入状態においてカニューレ12は保護カバー36で包囲されていて、これは使用前に取り除かれる。保護カバー36は例えば破断予定位置を介して翼状のグリップ30と接続されていてもよい。
【0034】
プランジャ16は近位に、プランジャ16のカニューレ12の中への押込み、また必要に応じてカニューレからの引出しができるようにプランジャを把持するためのグリップ38を有する。後者はカニューレ12を用いて複数の素子が連続的に留置される予定である場合に行われる。
【0035】
グリップ38から間隔を開けて、プランジャ16の周囲面から複数の、主として周囲に均等に分配されている突出部40、42、44が出ている。突出部40、42、44によってカニューレ12の内部での摩擦締結によるプランジャ16の固定が可能になることから、搬送時における制御されない滑出しは起こり得ない。突出部40、42、44は、プランジャ16がカニューレ12の中に押し込まれた場合、プランジャ16、したがってカニューレ12の近位端領域に位置する(図4)。
【0036】
図1において納入状態の装置10が示されているが、その場合図2においては保護カバー36が既に取り除かれている。
【0037】
図3は、根本的に図5から明らかになるように、素子14を挿入するために、プランジャ16がカニューレ12から引き出される位置を明確にする。
【0038】
図4においては、グリップ38を備えたプランジャ16、並びに、プランジャ16をカニューレ12の中で摩擦締結によって固定することのできる、こぶ状の突出部40、42、44が、再度詳細に認識され得る。
【0039】
図5においては、素子14がカニューレ12の中に手で押し動かされる様子が詳細に示される。このために使用者は親指を用いて素子14を取付け具20の近位開口部に達するまで押し込むことができ、その結果、素子14は図6の下の図に従って、部分的に既にカニューレ12の内部に置かれた状態になる。
【0040】
素子14を押してカニューレ12を通過させ、次いでこれを留置するために、素子14の挿入後、図7に基づいて、素子14をカニューレ12の長手方向に先端18の方向へと摺動させるために、プランジャ16が取付け具20の近位開口部に差し込まれる。
【0041】
図8においては、プランジャ16が既に押されて一定範囲においてカニューレ12を通過していて、その結果素子14の遠位端が先端18を越えて突出する。
【0042】
図9においては、プランジャ16が一定範囲においてカニューレ12の中に押し込まれた状態であり、その結果、素子14を留置することができる。このために、プランジャ16‐厳密に言えばプランジャロッド‐の長さと取付け具20を備えたカニューレ12は、プランジャ16の遠位端46が、傾斜尖端から始まる先端18を越えて突出しないように、互いに調整されている。この位置において、プランジャ16のグリップ38はプランジャから出ているストッパを用いて、取付け具20の開口部側に延在する正面縁部48と共同作用する。このために、グリップ38は該実施例において、2つの、プランジャの長手軸に対して直径方向に延在し、ノーズと呼ばれ得る突起状部分50、52を有し、これらは、図の解説によって一目瞭然であるように、プランジャ16の長手軸方向に、またプランジャと間隔を開けて延在する。
【0043】
突起状部分50、52は、図から明らかに分かるように、グリップ38の円筒形状を有する基部51から出ている。基部51は滑落せず確実に把持され得るように、直径がその縁部においてより中央領域においての方が小さい。
【0044】
ラグ又はノーズとも呼ばれ得る部分50、52は、プランジャ16と接続突起54、56を介して、つまりごく一般的に接続要素を介して接続されている。その際、接続は、接続突起54、56がラグ50、52と破断予定位置を介して接続されているように行われ、一方、接続突起54、56とプランジャ16との間の接続は一種のフィルムヒンジを介して行われる。その際、接続突起54、56はプランジャ16の方向に延在する鉤状の突出部58、60から出ていて、該突出部はラグ又はノーズ50、52の端部からプランジャ16の方向に延在する。その際、鉤状の突出部58、60の内幅は、取付け具20の近位開口部領域における外径とほぼ等しい。
【0045】
本発明は当然、接続突起54、56がプランジャ16と破断予定位置を介して、また固定要素50、52とフィルムヒンジを介して接続されている場合に放棄されない。
【0046】
カニューレ12を用いて素子14が複数回留置される予定であれば、素子14の留置後に、既述の方式で新しい素子14を挿入し、次いで留置するために、プランジャ16が引き戻される。その場合、停止要素とも呼ばれ得る接続突起54、56がストッパとして作用することによって、係合要素として用いられる突起状の固定要素、つまりノーズ50、52が、以下に記載されている方法で取付け具20のリブの1つと相互作用して、この後部に嵌合することのできないことが保証されていて、それによって、そうでなければ図13から看取され得るように、プランジャ16の係合が行われる。
【0047】
そうした係合を可能にするためには、その前にはストッパとして用いられる接続突起54、56の、鉤状突出部58、60への接続領域に対して、取付け具20の開口部縁部が作用することから、該接続突起が該領域においてほぼ剪断されるように、プランジャ16のグリップ38に対して矢印64(図11)の方向に力が作用する必要がある。それにもかかわらず接続突起54、56が失われないのは、これが発明により関節式にプランジャ16と接続されたままであり、図12に従ってプランジャ16が取付け具20の中、つまりその通過開口部の中に侵入する際に、プランジャ16の方向に曲げられることによって、図13から明らかになるように、突起54、56がプランジャとの接続を維持したまま、取付け具20の開口部とプランジャ16との間の間隙に留まることによる。同時に、係合フック58、60は該実施例においてはカニューレ12の取付け具20の最下部つまり第1のリブ24の後部に嵌合する(図13)。
【0048】
使用者はこれを触覚的に知覚するだけではない。それに加えて、接続突起54、56が突起状の固定要素すなわちノーズ50、52から折り取られることによって知覚可能な音が発生し、これが、カニューレ12からの制御されない引出しが起こり得ないようにノーズ50、52を用いてプランジャ16を取付け具20と係合するために安全機能が作動することを、同様に使用者に指摘する。
【0049】
言及するべきは、本発明がリブ24、26、28によって限定されないということである。装置10をもはや使用する予定がなければ、プランジャ16の係合を保証するために、取付け具20から出ているか、又はこれと一体化されている、1つ以上の他の要素を備えていてもよい。
【0050】
図14から図17までより、装置10と同様に素子114が留置されるよう意図されている装置100の更なる実施形態が看取でき、該装置を用いて同時に、構造的に容易な措置で装置100の使用時における傷害の危険が排除されていることが保証されている。その際、複数の固形製剤又は挿入物の留置のための使用が予定されていれば、装置100を用いて複数の素子114を連続的に体内に留置する可能性が提供されているよう意図されている。
【0051】
図14においては納入状態の、また図15においてはカニューレ112を包囲する保護カバー136が取り除かれた後の装置100が示されている。
【0052】
図1から図13までの実施例の場合と同様に、カニューレ112は遠位に先端118を、また近位に、該実施例においてはカニューレ112の長手軸に対して垂直に延在するリブを備えた取付け具120を有し、該リブの一部には参照符号124、126、128が付されている。当然、リブ124、126、128は取付け具120の必須の特徴ではない。
【0053】
該実施例においては、カニューレ112を用いて固形製剤又は挿入物といった素子114を留置するために、該素子はカニューレ112を通って遠位領域を通過し、これを越えて押し出される必要がある。このためにマンドレルとも呼ばれ得るプランジャ116が使用され、プランジャ116の近位に、これを把持し、カニューレ112に挿入してその長手軸方向に摺動することができるように、グリップ138を有する。
【0054】
発明により、取付け具120は近位に雌ねじ130を備えた中空円筒部分122を有する。雌ねじ130に適合した雄ねじ140がグリップ138の遠位領域に形成されていることによって、グリップ138は取付け具120と螺合され得る。これは、固形製剤114の留置後、カニューレ112の更なる使用がもはや行われず、図19から看取できるように、その先端118がプランジャ116の遠位端領域によって覆われることになる場合に行われることになる。その際プランジャ116の長さは、取付け具120を備えたカニューレ112の長さに合わせて調整されていて、それによって、グリップ138が取付け具120の中にねじ込まれ、主としてこれと端位置において係合されていれば、図19から明らかになるように、プランジャ116の遠位端領域は先端118を越えて突出する。
【0055】
発明による装置100は使用者にプランジャ116とカニューレ112との間において2つの所定の位置を提供する。第1の位置はグリップ138、すなわちその遠位縁領域139が雌ねじ130のねじ開始部に当接する、つまりグリップ138と取付け具120との間の回転移動が行われていない位置である。図18から看取できるこの位置において、プランジャ116はカニューレ112内部で一定範囲において摺動された状態であり、その結果固形製剤114が留置され得る。
【0056】
第2の位置は、グリップ138と取付け具120が互いに螺合されている場合に存在し、その際グリップ138が取付け具120の中に完全にねじ込まれていれば、その前には突出部といったロック要素を乗り越えることによって係合が行われていることから、ねじの逆回転はもはや不可能であり、その結果、カニューレ先端118がプランジャ116によって覆われた状態で維持され、したがって使用者の傷害の危険が排除されている。
【0057】
図から明らかになるように、近位の中空円筒部分122はカニューレ112の長手軸方向に延在する短冊孔123を有し、これを介して固形製剤114が挿入され得る。
【0058】
該実施例によって雄ねじ140を備えたグリップ138と雌ねじ130を備えた取付け具120が示されるが、その場合当然、グリップ138が遠位に延在する中空円筒部分に雌ねじを備え、これが螺合を可能にするために取付け具120の雄ねじ又は突起と共同作用する構造も選択され得る。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 特に固形製剤又は挿入物といった素子(14)の留置を目的とし、カニューレ(12)とプランジャ(16)から成り、前記カニューレが、遠位端に設けられた先端(18)と、前記カニューレの近位領域を収容し、主として1つ以上の、前記カニューレの長手軸に対して横に、特に垂直に延在するリブ(24、26、28)を有する取付け具(20)とを備えていて、グリップ(38)を備えた前記プランジャが前記カニューレの内部で部分的に摺動可能である装置(10)であって、
前記グリップ(38)が前記プランジャ(16)の長手方向に、また前記プランジャに対して間隔を開けて延在する突起状の固定要素(50、52)を有することと、各固定要素が接続要素(54、56)を介して前記プランジャと接続されていて、前記接続要素が少なくともその端部領域の一方において前記取付け具(20)との相互作用によって分離可能であることを特徴とする、装置。
[2] 前記接続要素(54、56)が前記固定要素(50、52)と分離可能に、また前記プランジャ(16)と関節式に接続されているか、又はその逆であることを特徴とする、[1]に記載の装置。
[3] 特に素子(14)の留置を目的として前記装置(10)を複数回使用するために、前記接続要素(54、56)がストッパとして前記取付け具(20)の近位縁部(48)と共同作用することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の装置。
[4] 前記固定要素(50、52)が前記プランジャ(16)の方向に延在する係合部(58、60)を有することを特徴とする、[1]から[3]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[5] 前記プランジャ(16)の遠位端が前記カニューレ(12)の前記先端(18)を越えて突出し、前記プランジャが係合している状態で、前記接続要素(54、56)が前記固定要素(50、52)から分離されていて、前記プランジャ(16)との接続が維持された状態で、前記プランジャに沿って平行に方向付けられていることを特徴とする、[1]から[4]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[6] 前記係合部(58、60)が前記取付け具(20)の、リブ(24)といった係合要素の後部に嵌合することを特徴とする、[1]から[5]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[7] 前記プランジャ(16)の遠位端が前記カニューレ(12)の前記先端(18)を越えて突出し、前記プランジャが係合している状態で、前記接続要素(54、56)が前記プランジャから分離されていて、主として前記固定要素(50、52)との接続が維持された状態で、これに沿って平行に方向付けられていることを特徴とする、少なくとも[1]に記載の装置。
[8] 前記接続要素(54、56)が前記取付け具(20)との相互作用によって、前記プランジャ(16)からも前記固定要素(50、52)からも分離可能であることを特徴とする、少なくとも[1]に記載の装置。
[9] 前記接続要素(54、56)が前記係合部(58、60)と接続されていることを特徴とする、[1]から[8]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[10] 前記取付け具(20)の遠位が外径Dの中空円筒部分として形成されていることと、前記プランジャの長手軸に対して直径方向に対向する2つの係合部(58、60)の内幅がDと等しいか、Dとほぼ等しいことを特徴とする、[1]から[9]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[11] 前記固定要素(50、52)が、前記プランジャ(16)の前記グリップ(38)の、端部領域が円筒形の外形形状を有する基部(51)から出ていることを特徴とする、[1]から[10]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[12] 前記固定要素(50、52)の外面が前記基部(51)の周囲面へと一直線上に移行することを特徴とする、[1]から[11]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[13] 前記接続要素(54、56)がフィルムヒンジを介して前記プランジャ(16)又は前記固定要素(50、52)と接続されていることを特徴とする、[1]から[12]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[14] 特に固形製剤又は挿入物といった素子(114)の留置を目的とし、カニューレ(112)とプランジャ(116)から成り、前記カニューレが、遠位端に設けられた先端(118)と、前記カニューレの近位領域を収容し、必要に応じて1つ以上の、前記カニューレの長手軸に対して横に、特に垂直に延在するリブ(124、126、128)を有する取付け具(120)とを備えていて、グリップ(138)を備えた前記プランジャが前記カニューレの内部で部分的に摺動可能である装置(100)であって、
前記グリップ(138)が前記取付け具(120)と螺合によって接続可能であり、前記取付け具と前記グリップが螺合されてはいないが接触している第1の位置においては、前記先端(118)が前記プランジャに覆われていないように、また、前記取付け具と前記グリップが螺合されている第2の位置においては、前記プランジャの遠位端領域が前記先端を覆うように、前記プランジャ(116)の長さが前記カニューレ(112)の長さに合わせて調整されていることを特徴とする、装置。
[15] 前記取付け具(120)と前記グリップ(138)が前記第2の位置において係合されていることを特徴とする、少なくとも[14]に記載の装置。
[16] 前記グリップ(138)が前記取付け具(120)内に存在する雌ねじ(130)と相互作用する雄ねじ(140)を有することを特徴とする、少なくとも[14]に記載の装置。
[17] 前記グリップ(138)が、ルアーロック突起部といった、前記取付け具(120)、特にその近位縁領域から突出する突起、又は前記取付け具の雄ねじと相互作用する、雌ねじを有することを特徴とする、少なくとも[14]に記載の装置。
[18] 前記プランジャ(16)から、主としてその近位領域において、前記カニューレ(12)の内面との摩擦締結を可能にする少なくとも1つの突出部(40、42、44)が突出することを特徴とする、[1]から[17]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[19] 複数の突出部(40、42、44)が周囲壁の周りに均等に分配されて、前記プランジャ(16)から突出することを特徴とする、[1]から[18]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
[20] 前記グリップ(38)を備えた前記プランジャ(16)がプラスチック射出成形品であることを特徴とする、[1]から[19]の少なくともいずれか一項に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19