(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】計測機器用の低ドリフトシステム
(51)【国際特許分類】
G01Q 30/10 20100101AFI20230724BHJP
G01Q 60/24 20100101ALI20230724BHJP
【FI】
G01Q30/10
G01Q60/24
(21)【出願番号】P 2021529401
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 US2019063380
(87)【国際公開番号】W WO2020112858
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512038610
【氏名又は名称】ブルカー ナノ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BRUKER NANO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ノイシュル、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロイター、アントニウス
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-524692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345007(US,A1)
【文献】米国特許第04841148(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0074859(US,A1)
【文献】特開平09-122507(JP,A)
【文献】特開平06-074880(JP,A)
【文献】特開2005-241392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00 - 90/00
H01J 37/20
B01L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを測定するための計測機器の低ドリフトヒータアセンブリであって、
前記低ドリフトヒータアセンブリは、前記サンプルを支持するための構造を含み、前記構造は、
熱源を提供する加熱モジュールと、
前記熱源を冷却するための冷却モジュールと、を含み、
前記構造は、前記サンプルのドリフトを毎分0.1ナノメートル未満で保持するように動作可能な低熱質量を提供するように構成され
、
前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールは、前記サンプルの表面に垂直な方向である軸方向に整列して互いに隣接し、
前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールは、前記軸方向の整列によって前記サンプルへの熱伝達を制御するために同時に活性化する、ヒータアセンブリ。
【請求項2】
前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールは、それぞれ、フィードバック制御を行う少なくとも1つの閉ループ制御システムで制御される、請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項3】
前記熱伝達は、前記サンプルを5秒未満で、摂氏250度以上に加熱するように動作可能である、請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項4】
前記熱伝達は、前記サンプルの温度を摂氏±0.001度以内に保持するように動作可能である、請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項5】
前記加熱モジュールの平坦な表面は、熱界面材料を間に配置して、前記冷却モジュールの平坦な表面に直接隣接する、請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項6】
前記加熱モジュールは、熱絶縁構造によって囲まれた電気的に制御されるヒータ構成要素を含む、請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項7】
前記熱絶縁構造は、前記ヒータ構成要素を円周方向に取り囲むセラミックシリンダと、
前記冷却モジュールから前記ヒータ構成要素を分離するセラミックディスクと、
を含む、請求項
6に記載のヒータアセンブリ。
【請求項8】
前記セラミックシリンダ及び前記セラミックディスクは、互いに異なるセラミック材料を含む、請求項
7に記載のヒータアセンブリ。
【請求項9】
前記冷却モジュールは、複数の放熱要素を有するヒートシンクを含む、請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項10】
前記冷却モジュールは、前記ヒートシンクを囲む第1及び第2冷却ブロックをさらに含み、前記第1及び第2冷却ブロックは、熱伝導性であり、前記第1及び第2冷却ブロックのうちの少なくとも1つは、前記ヒートシンクを冷却するための液体を提供するポートを有する、請求項
9に記載のヒータアセンブリ。
【請求項11】
前記冷却モジュールに液体を封止するために、前記第1及び第2冷却ブロックの間の前記ヒートシンクを円周方向に取り囲む弾性シールをさらに含む、請求項
10に記載のヒータアセンブリ。
【請求項12】
前記サンプルが入ったサンプルディスクを磁気的に固定するように構成されたサンプルホルダアセンブリをさらに含み、
前記サンプルホルダアセンブリと前記加熱モジュールとが互いに隣接し、
前記サンプルホルダアセンブリは、前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールと前記軸方向に整列し、
前記ドリフトは、前記サンプルの表面に垂直なz方向にドリフトする、
請求項
1に記載のヒータアセンブリ。
【請求項13】
前記サンプルホルダアセンブリと前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールの総重量は、3g未満である、請求項
12に記載のヒータアセンブリ。
【請求項14】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)であって、
ベースと、
前記ベースに結合されるとともに該ベースによって支持されるブリッジ構造と、
前記ブリッジ構造に結合されたz軸アクチュエータと、
前記z軸アクチュエータに結合し、原子間力プローブを含むヘッドアセンブリと、
前記ベースによって支持される低ドリフトヒータアセンブリと、を含み、
前記低ドリフトヒータアセンブリは、
走査されるサンプルが入ったサンプルディスクを磁気的に固定するように構成されたサンプルホルダアセンブリと、
熱源を提供する加熱モジュールと、
前記熱源を冷却するための冷却モジュールと、を含み、
前記サンプルホルダアセンブリと前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールとが前記サンプルの表面に垂直な方向である軸方向に整列し、及び
前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールが前記軸方向の整列によって走査される前記サンプルへの熱伝達を制御するために同時に活性化する、
走査型プローブ顕微鏡。
【請求項15】
前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールは、それぞれ、フィードバック制御を行う閉ループ制御システムで制御される、請求項
14に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項16】
前記熱伝達は、走査される前記サンプルを5秒未満で摂氏250度以上に加熱するように動作可能である、請求項
14に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項17】
前記熱伝達は、走査される前記サンプルの温度を摂氏±0.001度以内に保持するように動作可能である、請求項
14に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項18】
計測機器用の低ドリフト加熱方法であって、
前記方法は、
熱源を生成するための加熱モジュールを提供するステップと、
前記熱源を冷却するための冷却モジュールを提供するステップと、
サンプルの表面に垂直な方向である軸方向に整列して前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールを互いに隣接するステップと、
前記軸方向の整列によって走査される前記サンプルへの熱伝達を制御するために前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールを同時に活性化するステップと、を含む
方法。
【請求項19】
それぞれ、フィードバック制御を行う少なくとも1つの閉ループ制御システムにおいて、前記加熱モジュール及び前記冷却モジュールを制御するステップをさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年11月26日付で出願された米国仮特許出願第62/771,473号、及び2018年11月27日付で出願された米国仮特許出願第62/771,978号に対して35USC§1.119(e)の優先権を主張する。これらの出願の主題は、その全体が参照として本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、一般に顕微鏡検査に関し、より具体的には、走査するサンプルへの熱伝達を制御するために、軸方向に整列して互いに隣接する加熱及び冷却モジュールを同時に活性化させることによって、走査型プローブ顕微鏡(SPM)などの走査プローブベース機器のドリフトを低減することに関する。
【背景技術】
【0003】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、表面の特性に関する高解像度の情報を提供する計測機器である。SPMは、一般に画像化に使用され、一部のSPMは、個々の原子を画像化することができる。画像と共にSPMを使用して、数オングストロームから数百ミクロンに達する範囲の細部情報で、様々な表面の特性を測定することができる。多くの適用例では、SPMは、任意の他の種類の装置からは一般に得られない横方向と縦方向の両方の解像度を提供することができる。
【0004】
SPMのうちの1つの種類は、表面を横切って鋭いチップを走査する原子間力顕微鏡(AFM)である。チップは、カンチレバー(レバー)の自由端に装着される。チップが表面に移動して、チップと表面との力の相互作用により、カンチレバーが偏向する。カンチレバーの偏向を測定し、偏向及びそれにともなう力が実質的に一定に保たれるように、チップ又はサンプルの位置を使用して走査時にチップの垂直位置を調整することができる。水平走査に対するチップの垂直位置は、地形面図を提供する。AFMでは、チップとサンプルとの相互作用力は、生物学的分子を変形させないように非常に小さくすることができる。原子間力顕微鏡は、表面を走査するときに、反発力がカンチレバーを偏向させる非接触モードで動作することもできる。走査時のチップの偏向は、表面に対する地形情報を提供する。
【0005】
原子間力顕微鏡は、カンチレバーの小さな動きを検出することができる。カンチレバーの動きを検出するためのいくつかの技術が、カンチレバーからの反射光を使用する最も一般的な方法として使用されてきた。カンチレバーの動きによる光ビームの偏向を検出することができ、またはカンチレバーの動きを用いて、動きを誘導するために使用できる干渉効果を生成することができる。原子間力顕微鏡は、個々の原子を画像化するためだけでなく、剛性などのサンプルの機械的特性を測定するためにも使用できる。
【0006】
電場、磁場、光子励起、静電容量、及びイオン伝導度などの特性を測定するためのプローブ装置が開発された。どのようなプローブ機構であっても、ほとんどのSPMには共通の特性があり、通常は、非常に小さい側方領域に制限され、垂直位置に非常に敏感なプローブと表面との間の相互作用で動作する。ほとんどのSPMは、プローブを三次元で非常に正確に配置することができ、高性能フィードバックシステムを使用して表面に対するプローブの動きを制御する。
【0007】
プローブの位置決め及び走査は、一般に圧電素子を使用して行われる。これらの装置は、電圧が印加されると拡張又は収縮し、一般に1ボルトあたり数オングストロームから数百オングストロームの感度を有する。走査は、様々な方式で実現される。一部のSPMは、固定されたプローブを保持して、サンプルを走査機構に取り付け、一方、他のSPMは、プローブを走査する。圧電チューブが一般に使用され、一般に三次元走査を生成することができる。圧電チューブは、機械的に硬く、高速走査に対して良好な周波数応答を有し、及び製造と組立との費用が比較的安価である。
【0008】
図1は、例示的なAFM10の簡略化されたブロック図である。AFM10は、他の構成要素の中で、アクチュエータアセンブリ、XYZアクチュエータアセンブリ又はスキャナ12、及びコントローラ又は制御ステーション14を含む。制御ステーション14は、通常、AFMのデータ取得および制御のタスクを実行する少なくとも1つのコンピュータ及び関連する電子部品、及びソフトウェアで構成される。制御ステーション14は、単一の統合ユニットで構成されてもよく、又は電子部品及びソフトウェアの分散アレイで構成されてもよい。制御ステーションは、典型的なデスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、産業用コンピュータ、及び/又は1つ以上の組み込みプロセッサを使用してもよい。
【0009】
この場合、スキャナ12は、サンプル16の上に装着され、スキャナ12の下端の可動端にプローブ18を支持する。プローブ18は、カンチレバー20及びカンチレバー20の自由端部に装着されたプローブチップ22を有する。この場合も、場合によっては、プローブのチップ22は、圧電スキャナ12によって固定サンプル16の上に配置される、又は、場合によっては、サンプル16は、スキャナ12に取り付けられ、チップ22が固定されている。プローブ18は、プローブの共振周波数又はその近くで振動するようにプローブ18を駆動するのに使用される振動アクチュエータ又はドライブ24に結合される。一般に、電子信号は、AFM制御ステーション14の制御下にあるAC信号源26から印加され、AC信号源26を駆動して自由振動振幅(Ao)などでプローブ18を振動させる。制御ステーション14は、検出装置28からデータを取得し、フィードバックを介して制御電圧をスキャナ12に印加することによって、チップ22の高さを制御する。検出装置又は検出器28は、チップの偏向を検出する。x及びy位置は、x及びyドライバを介してスキャナに電圧を印加することによって制御される。通常、ほとんどの適用例では、ラスター走査は、x及びy走査方向に線形運動を生成することで生成される。スキャナの範囲内の選択した位置でラスターを開始することにより、走査領域をオフセットすることができる。この配置にて、プローブチップ22は、スキャナの範囲内におけるx及びyのどこにでも配置されることができる。
【0010】
動作中に、プローブ18が振動してサンプル16と接触するとき、プローブ18の振動の変化を検出することで、サンプル特性を監視することができる。特に、光のビームは、プローブ18の裏面に向けられ、次に4象限光検出器などの検出器28に向けて反射される。ビームが検出器を横切って移動すると、適切な信号が制御ステーション14に送信され、制御ステーション14は信号を処理して、プローブ18の振動変化を決定する。制御ステーション14は、例えば、チップ22とサンプルとの間に実質的に一定の力を保持するための、通常、プローブ18の振動の設定値特性を保持するための制御信号を生成する。例えば、制御ステーション14は、多くの場合、チップ22とサンプル16との間で、一般に一定の力を保証するために、振動振幅を設定点の値で保持するために使用される。他の場合、設定点の位相又は周波数が使用される。制御ステーション14によって収集されたデータは、通常、走査中に得られたデータを操作して、点選択、曲線フィッティング、距離決定の演算、及び他の機能を実行するワークステーションに提供される。一部のAFMでは、ワークステーションが制御ステーションである。他のAFMの場合、ワークステーションは、個別のオンボードコントローラ、個別のオフボードコントローラ、又はこれら3つの任意の組み合わせである。
【0011】
既存のプローブ顕微鏡では、サンプルを横切るプローブチップのドリフトが重要な影響を及ぼす。ドリフトは、画像を歪める可能性があり、同じ特徴を経時的に画像化し続けることを困難にする可能性がある。通常、x-y平面でのドリフトは、設定が安定した後に、毎分数オングストロームである。サンプルが最初に接触したときのドリフトは、はるかに大きくなる可能性があり、正確な走査が行われるまでに、数時間の安定化が必要になり得る。ドリフトは、とりわけ、圧電スキャナと、サンプル自体、及びサンプルのホルダの熱膨張によるものである。圧電材料の「クリープ」及びヒステリシスによる追加のドリフトの寄与が多くの場合に存在し、通常、熱膨張によるドリフトが最も顕著である。熱効果によるドリフトなど、一部のドリフトは長期的であり、通常、単一の画像の走査全体で一定である。走査型プローブ顕微鏡で画像化するときに存在するドリフトは、原子寸法の特徴に留まる走査型プローブ顕微鏡の能力を制限する可能性があり、これは、局所的なプロセスを監視したり、固有の構造の繰り返し画像を取得したりするのに有用である。ドリフトはまた、さらに大きいサンプルの大きさに対して歪みのない画像を取得する前の安定化の時間を過度に長くする可能性がある。
【0012】
従来の多くの設計では、走査プロセス中にプローブの位置を制御することによってドリフトを低減しようとする。ドリフトを低減する他の試みには、プローブ材料の熱係数の一致、又はドリフトなどの熱効果を受けやすいため、非常に安定した上部構造材料を使用することがある。例えば、鋼合金であるインバー(Invar)(フランス、ピュトーのImphy Alloys(登録商標))は、熱ドリフトを最小限に抑えるために、AFMの構成に一般に使用される。インバーは、走査中に加熱されるが、インバー鋼合金は膨張しないため、ドリフトしない。
【0013】
より具体的には、インバーは熱膨張係数が低いニッケル鋼合金である。その結果、一般的に科学機器の構成に使用される。インバーは、熱膨張係数が低いなどの特定の特性があり、AFMに適しているが、広く入手することができないためにコストがかかる。費用効果が高く、ドリフトの低いAFMソリューションが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、最小限の温度変化を有する走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって走査されるサンプルを迅速に加熱するために、実質的に整列して互いに隣接する絶縁加熱及び冷却モジュールを精密に制御することによって、熱膨張によるドリフトを減らしてより正確な測定を行えることを認識した。加熱及び冷却モジュールは、各モジュールの平行な表面が互いに接触して「フラットパック(flat-packed)」されることができ、加熱及び冷却モジュールと軸方向に配置されたサンプルをより効率的に加熱する。これにより、サンプルを5秒未満に(屋外)摂氏250度以上まで加熱し、サンプルの温度を摂氏±0.001度以内に持続して保持し、z方向に毎分0.1ナノメートル未満のドリフトを保持することができる。
【0015】
一態様では、低ドリフトヒータ/クーラは、セラミック発熱体(好ましくは、緻密化及び粒子成長を促進するために、独自の焼結プロセスに従って製造される-開放多開口性のない均一な粒子サイズ-高い機械的強度及び最適な熱伝導率)をフラットパックして水冷式熱伝達機構に達成される。ヒータベースには、発熱体の20倍の熱伝導抵抗を有する異なるセラミック材料を使用することができ、セラミックボンドラインの厚さが物理的に許す限り(約0.004インチ、すなわち約102マイクロメートル)、そのセラミック材料は発熱体のセラミックベースの真下の発熱体の近くに配置される。その後、ヒータモジュールは、プロセス冷却水の流れに浸された高表面積ヒートシンクに直接取り付けられることができる。発熱体とプロセス冷却装置の両方で比例積分微分(PID)の温度制御を活用できるため、時間の経過に伴う温度安定性が向上し、低温でのオーバーシュート(low temperature-overshoot)(摂氏1度未満)、温度設定値までの高強化(high ramp-up-to-temperature-setpoint)、及び設定値までの高速冷却(fast cooling-to-setpoint)ができる。本システムは、以前のシステムの約1/10の時間で温度安定化を行うことができる。
【0016】
一態様では、中央に配置されたK型熱電対を統合して、ナノダイナミックメカニック分析(Nano-Dynamic Mechanical Analysis)(nDMA)に使用される磁気サンプルホルダに直接結合するのに十分な平坦性及び平行性の要件を備えた、小型(12×12×2mm)の高ランプレートセラミックヒータ(high-ramp-rate ceramic heater)が使用される。AFM顕微鏡技術は、nDMA用の非常に低いドリフト(±0.001℃)のヒータ/クーラを達成するために、PID制御プロセス冷却装置(PID-controlled process chiller)、低圧高精密(毎分±10mLで調整可能)蠕動ポンプ、及び熱伝達機構と共に使用する。本システムは、低熱質量設計を利用して、ヒータ要素に物理的に可能な限り近い冷却要素を提供することができる。
【0017】
熱伝導率は異なるが、類似の熱膨張係数を有する、近接した異種セラミック材料を使用する。セラミックヒータのベース材料(種類)を調整することで、装置の最大/最小温度の範囲機能を正確に調整することができる。例えば、1つの機械部品を変更することにより、摂氏25~250度から摂氏25~150度に温度範囲を下げることで、より低い温度範囲でさらに高い温度精度を実現することができる。
【0018】
システムの本質的な低熱質量は、最小限の電力要件とAFMシステムへの最適に最小化された熱伝達によって、急速な加熱及び冷却を可能にする。放射方向の熱損失(Radial heat loss)は、ヒータモジュールに対して放射状の二重薄壁の特徴を使用して、最小限に抑えられることができる。10mmの距離にわたって摂氏200度の温度勾配を達成することができる。その結果、原子間力顕微鏡(AFM)の微細環境への熱損失を最小限に抑えることで、顕微鏡システム全体の温度安定化を高速にできる。放射方向及び軸方向の両方で、設計形状を介して可能な限り最小の熱エンベロープを保持することで、a)ヒータベース、b)ヒータ要素、c)磁気サンプルホルダ、d)サンプルディスク、及びe)サンプルの相対的に小さな質量の高温ランプアップ及びランプダウンが可能になる。現在のシステムでは、前述の構成要素は約3gであるため、「低熱質量」になる。
【0019】
この低熱質量システムは、分析機器、ハンドヘルド機器、ガスクロマトグラフィ、質量分析、マイクロエレクトロニクス、マイクロフルイディクス、集積回路、及び受動電子部品の温度制御などを含む多くの分野における適用例で「超小型化」に役立つ。
【0020】
システム固有の低熱質量特性により、複数のヒータ/クーラ装置が近接している可能性があり、それらの間で大きな温度差(>200℃)が発生する可能性がある。
システムの機能の拡張は、プロセス冷却装置、冷却流体の流速、及びプロセス冷却装置の圧力/流量の閉ループ制御を含む、3次制御を介して達成され得る。現在のシステムは、摂氏20度の固定プロセス冷却装置の温度と毎分約150mLの固定流速で高精度を達成することができる。これらのパラメータのいずれかを調整すると、ヒータの最大/最小範囲が変わる可能性がある。例えば、プロセス冷却装置の温度を下げると、達成可能な最大温度が下がる可能性があり、プロセス冷却装置の温度を上げると、達成可能な最高温度が上がる可能性がある。
【0021】
プロセス冷却装置を蠕動ポンプと組み合わせて使用することにより、正確な冷却水の流れを得ることができ、ここで、プロセス冷却装置の流体ループは、プレート熱交換器によって蠕動流体冷却ループから分離される。「高圧-高流量」及び「低圧-低流量」の冷却ループを連携して利用する利点は2つあり、プロセス冷却装置が高いヒートシンク機能(例えば、400W)を備えている場合、及び連続の流れがある場合に、大量の高圧冷却水をAFM微細環境に流すことなく、熱を1つのループから他のループに迅速に送り出すことができる。本システムは、この問題を軽減することができる。さらに、高圧及び低圧の冷却水ループを分離すると、追加の機械的減衰が可能になり、粘弾性減衰材料の伝熱プレートに適用すると、プロセス冷却装置(及びポンプとびファンの回転による固有のノイズ)をさらに分離することができ、ノイズフロアを低減できる。
【0022】
「低圧冷却ループ」で蠕動ポンプを使用すると、精密な冷却、AFMへの低ノイズ伝達、及び低ドリフトヒータヒートシンクを介した層流の確保が可能になる。層流を保持することで、乱流とそれに伴うノイズを最小化できる。
【0023】
具体的には、本発明の一態様は、以下を含むサンプルを測定するための計測機器(metrology instrument)を提供することができる。これは、サンプルを支持するための構造を含み、この構造は、サンプルのドリフトをz方向に毎分0.1ナノメートル未満で保持するように動作可能な低熱質量を提供するように構成される。
【0024】
本発明のまた別の態様は、以下を含む低ドリフトヒータアセンブリを提供することができる。これは、熱源を提供する加熱モジュールと、熱源を冷却するための冷却モジュールとを含み、ここで、加熱及び冷却モジュールは、軸方向に整列して互いに隣接し、加熱及び冷却モジュールが同時に活性化し、軸方向の整列によって走査されるサンプルへの熱伝達を制御する。
【0025】
本発明のまた別の態様は、以下を含むAFMを提供することができる。ベースと、ベースに結合して支持されるブリッジ構造と、ブリッジ構造に結合されたz軸アクチュエータと、z軸アクチュエータに結合し、原子力プローブを含むヘッドアセンブリと、ベースによって支持される低ドリフトヒータアセンブリと、を含み、低ドリフトヒータアセンブリは、走査されるサンプルが入ったサンプルディスクを磁気的に固定するように構成されたサンプルホルダアセンブリと、熱源を提供する加熱モジュールと、熱源を冷却するための冷却モジュールとを含み、ここで、サンプルホルダアセンブリと加熱及び冷却モジュールとが軸方向に整列し、及び加熱及び冷却モジュールが軸方向の整列によって走査されるサンプルへの熱伝達を制御するために同時に活性化する。
【0026】
本発明のまた別の態様は、以下を含む低ドリフト加熱方法を提供することができる。これは、熱源を生成するための加熱モジュールを提供するステップと、熱源を冷却するための冷却モジュールを提供し、加熱及び冷却モジュールを軸方向に互いに隣接するステップと、軸方向の整列によって走査されるサンプルへの熱伝達を制御するために加熱及び冷却モジュールを同時に活性化するステップと、を含む。
【0027】
本発明のこれら及び他の目的、利点及び態様は、以下の説明から明白になるであろう。本明細書に記載の特定の目的及び利点は、特許請求の範囲に含まれるいくつかの実施形態にのみ適用することができ、従って、本発明の範囲を定義しない。説明において、本発明の一部を形成し、本発明の好ましい実施形態が示された添付の図面を参照する。このような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を示すものではなく、従って、本発明の範囲を解釈するために、本発明の特許請求の範囲を参照する。
【0028】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、添付の図面に示され、同様の参照符号は、全体を通して同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】「従来技術」と適宜に表示された原子間力顕微鏡(AFM)の簡略化されたブロック図である。
【
図2】本発明の一態様による低ドリフトヒータアセンブリを有する例示的な走査AFMである。
【
図3】
図2の低ドリフトヒータアセンブリの詳細図である。
【
図4】本発明の一態様による低ドリフトヒータアセンブリの等角図である。
【
図5】
図4の低ドリフトヒータアセンブリの加熱モジュールの分解等角図である。
【
図6】
図5の加熱モジュールの組み立てられた等角図である。
【
図7】
図6のA-Aラインに沿って見た、
図5の加熱モジュールの断面等角図である。
【
図8】冷却モジュールが取り外され、加熱モジュールの底面が露出した状態を示した、
図4の低ドリフトヒータアセンブリの底面の等角図である。
【
図9】
図4の低ドリフトヒータアセンブリの冷却モジュールの分解等角図である。
【
図10】
図9の冷却モジュールの組み立てられた等角図である。
【
図11】
図10のB-Bラインに沿って見た、
図9の冷却モジュールの断面等角図である。
【
図12】発明の一態様による低ドリフトヒータアセンブリの動作を示す図である。
【
図13】発明の一態様による低ドリフトヒータアセンブリの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図2及び
図3を参照すると、本発明の一態様によるAFM30が示されている。AFM30は、花崗岩又は同様の材料で作られたブロック32を含むことができ、チャックベース34、チャック36、低ドリフトヒータアセンブリ38、及びブリッジ40を支持する。zステージ42は、ヘッド41を支持するためにブリッジ40に装着され得る。当技術分野で知られているように、ヘッド41は、
図1に関して説明したプローブ18などのプローブ及びプローブホルダ(例えば、走査チップ設計)を含むことができる。より具体的には、ヘッド41は、制御電子部品を支持するハウジング44を支持することができ、この場合、アクセサリブラケットによって支持される低ドリフトヒータアセンブリ38に対して配置されたサンプルに対して直角に延びる圧電チューブアクチュエータ46を支持することができる。走査プローブ又はチップ設計が使用される場合、圧電チューブアクチュエータ46は、低ドリフトヒータアセンブリ38によって保持されるサンプル表面と相互作用するために使用されるプローブ(
図1に示す18)を支持することができる。
【0031】
ブリッジ40の裏面によって支持されるモータは、ヘッド41を上下して、サンプルに対するプローブチップの位置をコース制御するように動作することができ、低ドリフトヒータアセンブリ38のサンプルホルダアセンブリ48によって支持されるサンプルディスク(図示せず)に置くことができる。
図3に最もよく示されるように、ヘッド41は、zステージ42に装着されることができ、zステージ42は、プローブ18及びチップ22がブリッジ40に対して水平(x軸で)に中心に置かれるように、ブリッジ40によって支持され得る。この対称性は、特にx軸に沿ったチップ22のドリフトを低減するのに役立つ。この場合、チャック36は、例えば、サンプルのロード及びアンロードのために、ヘッド41に対する低ドリフトヒータアセンブリ38の動きに対応するように形成されている。AFM30は、ブルカー(Bruker)から入手可能なDimension Icon(登録商標)AFMシステムの一部であり得る。
【0032】
図4をさらに参照すると、低ドリフトヒータアセンブリ38は、熱源(
図5~
図8参照)を提供する加熱モジュール52、熱源(
図9~
図11参照)を冷却するための冷却モジュール54及びサンプルホルダアセンブリ48を保持するブラケット50を含むことができる。本発明者らは、加熱モジュール52を絶縁し、加熱及び冷却モジュール52及び54をそれぞれ精密に制御して、最小限の温度変化でサンプルを迅速に加熱するために、実質的に整列して互いに隣接させることによって熱膨張によるドリフトを低減し、サンプルのより正確な測定を行えることを認識した。加熱及び冷却モジュール52及び54は、前述のモジュールと軸55に沿って軸方向に整列して配置されたサンプルをより効率的に加熱するために、各モジュールの平行な表面が互いに接触する状態でフラットパックされることができる。これにより、サンプルを5秒未満に摂氏250度以上まで加熱することができる。これにより、サンプルの温度を摂氏±0.001度以内に継続して保持することもできる。
【0033】
ブラケット50は、前述の構造及び対応するファスナの幾何学的形状に基づいて、加熱及び冷却モジュール52及び54、並びにサンプルホルダアセンブリ48をそれぞれ保持することができる。ブラケット50は、好ましくは、摂氏50度未満の温度にブラケット50を保持することのできるインバーなどの熱膨張の少ない断熱材料を含み、サンプルを摂氏250度程の温度に加熱しても触ることで冷却される。そのため、ブラケット50は、絶縁体として機能し、サンプル及び/又は冷却剤モジュールへの伝導を除く全ての形態の熱伝達を最小限に抑える。また、
図8に最もよく見られるように、ブラケット50は、軸方向の熱流を増強し、加熱モジュール52を取り囲む2つの同心の薄い壁を含む放射状の流れを最小化する構造的形状及び特徴を有する。また、窒素を用いた液体冷却(水蒸気のない液体冷却)は、伝導による放射状の熱伝達をより減少させるためにブラケット50を介して流れるように構成されることができる。このような液体の流れは、入口及び出口の液体冷却ブラケットクイックコネクト98及び99にそれぞれ接続された、ホース、チューブ、又は他のラインによって提供することができる(
図4参照)。
【0034】
加熱及び冷却モジュール52及び54、並びにサンプルホルダアセンブリ48は、軸55に沿って効率的かつ標的化された熱伝達システムを提供するために、熱質量の低い構造を集合的に含むように構成される。例えば、前述の構造(サンプルホルダ48を取り囲む絶縁材料含む)の合計重量は、3g未満、例えば2.7gであり得る。従って、前述の構造は、ブラケット50などの絶縁材料によって分離された熱伝導性材料を含む範囲で、低い「熱質量」に寄与する(熱質量には含まれない)。一態様では、加熱及び冷却モジュール52及び54、並びにサンプルホルダアセンブリ48の重量を3g未満で保持することによって、低熱質量を保つことができる。低熱質量は、温度制御が必要な部品全体の比熱容量が低いことを意味する。低熱質量は、試験で可能な最も低い質量を同時に加熱及び冷却する。これにより、設定点に到達してから2分後に±0.001C未満の温度変化が可能になる。
【0035】
図5~
図7を参照すると、低ドリフトヒータアセンブリ38に統合された加熱モジュール52の様々な図が本発明の一態様に従って提供されている。
図5の分解図に最もよく見られるように、加熱モジュール52は、熱源を提供する断熱構造によって囲まれた電気的に制御されたヒータ構成要素56を含むことができる。断熱構造は、ヒータ構成要素56を円周方向に取り囲むセラミックシリンダ57と、冷却モジュール54からヒータ構成要素56を分離するセラミックディスク58とを含むことができる。一態様では、セラミックシリンダ57及びセラミックディスク58は、互いに異なる熱伝導特性を有するが、類似の熱膨張係数を有する近接した異なるセラミック材料を含むことができる。セラミックヒータのベース材料(種類)を調整することで、装置の最大/最小温度範囲の機能を精密に調整することができる。このような機械部品の1つを変更することで、例えば、温度範囲を摂氏25~250度から摂氏25~150度まで下げることで、さらに低い温度範囲内でさらに高い温度の精度を実現することができる。
【0036】
電気制御されるヒータ構成要素56は、コントローラの指示の下で適用される+12V DC及び-12V DCの適用などの電気加熱制御のためのニッケルクロムワイヤ60を含む正方形セラミックヒータ要素であり得る。ヒータ構成要素56は、好ましくは、12×12×2mmのように小さく高いランプレートを有する。また、
図7に最もよく見られるように、
図6の線A-Aに沿った加熱モジュール52の断面等角図は、ヒータ構成要素56が点線で示された中央に配置されたK型熱電対59を含むことができる。熱電対59は、高熱伝導率窒化アルミニウムセラミック(AIN)の間に挟むことができる。熱電対59は、温度フィードバックを受信するために、例えば、ワイヤ62を介してコントローラによって監視されることができる。ヒータ構成要素56は、好ましくは上面のサンプルホルダアセンブリ48及び下面のセラミックディスク58への直接結合を可能にするために実質的な平坦性および平行性を有する。
【0037】
AlNマトリックスは、2つの部分で構成される。発熱体は、AlN部品の1つに置かれる。次に、部品が共に焼結され、1つの均質なアセンブリになる。AlNの高い熱伝導率と最適化された回路レイアウトが結合し、ヒータ表面全体で優れた温度均一性を生み出す。窒化アルミニウム(AIN)発熱体を使用する利点は、次のとおりである。高度なセラミックは、非常に純度の高い合成無機化合物である。セラミック化合物には、アルミナ(Al2O3)、窒化シリコン(Si3N4)及びAlNが含まれる。AlNは、大気又は真空用途向けの均質なアセンブリを可能にするため、セラミックヒータプラットフォームに最適である。この材料はまた、高温、高速サイクリング、及び長いヒータ寿命に必要な耐久性のあるヒータ構造及び熱伝達を提供する。AlN構造を使用することで得られる追加の機能及び利点は、次のとおりである。アルミニウムと同様の熱伝導率を示す高い熱伝導率で、急速な熱放出を実現し、ヒータを高いワット密度で構成できるようにし、毎秒150℃(270°F)の速度の熱的傾斜を提供することができる。また、ヒータ要素は、クリーンで汚染のない材料である。注意深く制御された微細構造を使用して、高温焼結によって、非常に硬く(1100Kg/mm2)密度の高い(理論的密度が99%以上)、実質的に多開口性のないヒータが生成される。AlNは、「クリーン」なヒータを必要とする応用分野に最適である。ヒータは、耐湿性も提供する。特に、AlNは、従来のヒータ構造で使用される吸湿性誘電体材料とは異なり、湿気の影響を受けない。これにより、ヒータ要素自体に直接隣接する液体冷却を可能にする。ヒータはまた、高い絶縁耐力と高い絶縁抵抗を備えている。AlNは、非常に低い漏洩電流(<10μA@500VAC)を特徴とする電気絶縁体であり、多くの計測適用例において非常に好ましい特性である。
【0038】
サンプルホルダアセンブリ48は、接着剤などによって加熱モジュール52に結合し得る。サンプルホルダアセンブリ48は、磁石66を保持するための4つなどの複数の開口を有するサンプルホルダ64又は「パック」を含み得る。磁石66は、接着剤によって開口に結合されてもよい。サンプルホルダアセンブリ48は、直径が約1.27cm(0.5インチ)であり、重さが、磁石66がない場合は約0.685g、磁石66がある場合は約0.78gであるステンレス鋼ディスクであり得る。従って、サンプルホルダアセンブリ48は、試験中に走査されるサンプルを含むサンプルディスク(図示せず)を磁気的に保持するように構成し得る。
【0039】
セラミックシリンダ57は、ヒータ構成要素56を円周方向に取り囲むためのリング又は他の形状であり得る。セラミックシリンダ57は、ワイヤ60,62に対する入口/出口を提供するための電気アクセス開口部68を含むことができる。
【0040】
セラミックディスク58は、ヒータ構成要素56及びセラミックシリンダ57を受け入れるための実質的に平坦な表面を含むことができる。セラミックディスク58は、ヒータ構成要素56をそれに接合するときに接着剤の流れを緩和する複数の開口を含むことができる。
【0041】
その結果、放射方向の熱損失は、加熱モジュール52に放射状の二重薄壁の特徴を使用して最小化される。10mmの距離にわたって摂氏200度の温度勾配を達成することができる。これはまた、AFM30の微小環境に対する熱損失を最小限に抑え、顕微鏡システム全体の温度安定化を高速化することもできる。
【0042】
一態様では、ヒータ構成要素56は、絶縁性が20倍(20倍の「R」値)より高いセラミック材料にカプセル化されたアルミナ窒化物ヒータ要素であり得、その結果、軸55に沿って最適化された軸方向熱伝達を提供するシステムをもたらす。言い換えると、熱は、アセンブリの直接の中心を半径方向よりも20倍さらに容易に(軸方向に)通過することができる。底部のセラミックディスク58は、ヒータ構成要素56の20倍の断熱を提供するため、熱伝達も最適化され、冷却することよりもサンプルを加熱するために、20倍さらに容易に流れることができる(熱伝達は、サンプルに向かって上向き)。
【0043】
図9~
図11を参照すると、本発明の一態様に従って、低ドリフトヒータアセンブリ38に統合された冷却モジュール54の様々な図が提供されている。
図9の分解図に最もよく見られるように、冷却モジュール54は、ファスナ73によって保持された、熱伝導性の第1及び第2冷却ブロック72及び74によってそれぞれ囲まれたヒートシンク70を含むことができる。ヒートシンク70は、好ましくは水などの液体冷却溶液中で熱を除去するために、ピン又はフィンなどの複数の放熱要素76を含むことができる。
【0044】
一態様では、第1冷却ブロック72などの冷却ブロックの1つは、それぞれ液体入口及び出口ポート80及び82を含むことができ、冷却中空部83(
図11参照)内のヒートシンク70及び放熱要素76の液体冷却のための貫通経路を提供する。このような液体の流れは、入口及び出口の液体冷却ブロッククイックコネクト84,86(
図4参照)にそれぞれ接続されたホース、チューブ、又は他のラインによって提供され得る。さらに、このような液体を冷却中空部83に保持するために、弾性シール88は、冷却モジュール54(
図9参照)内の液体を封止するために、それぞれ第1及び第2冷却ブロック72及び74の間でヒートシンク70を円周方向に取り囲むことができる。弾性シール88は、それぞれ第1及び第2冷却ブロック72及び74のそれぞれの対応するチャネル89に配置されることができ、ファスナ73の適用時に圧縮して中空部83の液体シールを形成することができる。
【0045】
組み立てられると、加熱モジュール52の実質的に平坦な下面90は、冷却モジュール54の実質的に平坦な上面87と平行であり、それらと接触して、加熱及び冷却モジュール52及び54が軸55に沿って軸方向に整列して隣接する。軸方向に整列した熱伝達を備えたこのフラットパック配置により、最小限の温度変化で、走査するサンプルの迅速な加熱が可能になり、加熱及び冷却モジュールと隣接する可能性があるが、そのような軸方向の整列がない配置よりも優れている。さらに、加熱及び冷却モジュール52及び54の間にそれぞれ配置され、加熱モジュール52の下面90及び冷却モジュール54の上面87に接触する熱界面材料は、熱伝達をさらに高め、システム温度範囲を調整することができる。
【0046】
ここで
図12を参照すると、動作中に、軸55に沿って軸方向に整列して互いに隣接する加熱及び冷却モジュール52及び54は、それぞれ軸方向の整列によって走査されるサンプルを含むサンプルディスク91を磁気的に固定するサンプルホルダアセンブリ48への熱伝達を制御するように同時に活性化し得る。セラミックシリンダ57及びセラミックディスク58によって提供される絶縁により、冷却モジュール54から加熱モジュール52及びサンプルホルダアセンブリ48を介してサンプルディスク91及びサンプルに、熱伝達を垂直又は上向きに効果的に向けることができる。さらに、加熱及び冷却モジュール52及び54は、それぞれ軸55によって定義される軸方向の整列によって、温度、従って熱伝達を正確で効果的に制御するために、閉ループ制御システムによって精密に制御され得る。加熱と冷却を同時に行うことで、非常に小さな熱質量の温度を非常に正確に制御し得る。これに対する説明は、一定の冷却により一定の加熱を許容することになり得る。つまり、電源入力(ワット単位の加熱)を中程度から高い温度に保持できることを意味する。ゼロ以外のゼロに近いアンペアを制御することは、少量を制御することが難しいことがあり、持続的に冷却する場合、設定点を保持するには、比較的に制御しやすいヒータに持続的に電力を供給する必要がある。
【0047】
一態様では、加熱モジュール52は、比例積分微分(PID)制御加熱ループ92などによって、閉ループ制御システムで制御され得る。加熱ループ92は、コントローラ94(制御ステーション14の一部であり得る)から加熱設定点93を受信することができる。加熱設定点93は、加熱モジュール52が達成するための所望の温度又はプロセス値を定義することができる。次に、加熱ループ92は、閉ループ制御システムにおいて、温度フィードバックを提供するワイヤ62によって提供されるフィードバックラインを介して受信されるフィードバックを調整しながら、電気加熱制御のためにワイヤ60によって提供される制御ラインを介してヒータ構成要素56を制御することができる。また、加熱ループ92は、加熱及び冷却モジュール52及び54の間の制御をそれぞれ調整するために、コントローラ94にフィードバック110を提供することができる。
【0048】
さらに、一態様では、冷却モジュール54は、PID制御冷却ループ95などによって、閉ループ制御システムで制御されてもよい。冷却ループ95は、コントローラ94から冷却設定点96を受信することができる。冷却設定点96は、冷却モジュール54に関して達成するためのプロセス冷却装置100及びポンプ102の所望の温度又はプロセス値を定義することができる。冷却ループ95は、閉ループ制御システムにおいて、フィードバックライン106を介したプロセス冷却装置100からのフィードバックを調整しながら、制御ライン104を介してプロセス冷却装置100を制御することができる。また、冷却ループ95は、加熱及び冷却モジュール52及び54の間の制御をそれぞれ調整するために、コントローラ94にフィードバック112を提供することができる。
【0049】
ポンプ102は、好ましくは蠕動ポンプ(毎分±10mLに調整可能)であり、それぞれ入口及び出口の液体冷却クイックコネクト84及び86に接続された流体出力及び入力ライン110及び112を介して、個別の流体冷却ループで流体を精密に制御する。一態様では、プロセス冷却装置100の流体冷却ループは、伝熱プレート103を有するプレート熱交換器によってポンプ102流体冷却ループから分離し得る。これにより、高圧高流量冷却ループ(プロセス冷却装置100の流体ループ)を低圧低流量冷却ループ(ポンプ102の流体冷却ループ)と連携して利用することができる。そのような構成では、プロセス冷却装置100が400ワットなどの高いヒートシンク能力、及び連続的な流れを有する場合、熱を一方のループから他方のループに迅速にポンプ輸送することができ、所望しない大量の高圧クーラントがAFM30の微細環境に流入する危険はごくわずかである。さらに、高圧及び低圧冷却剤ループを分離することにより、追加的な機械的減衰(例えば、粘弾性減衰材料適用)を伝熱プレート103に適用して、プロセス冷却装置(及び、ポンプ及び/又はファンに起因する全ての固有のノイズ)をさらに分離することができ、これにより、ノイズフロアを低減することができる。低圧冷却ループにおいて、好ましくは、蠕動ポンプであるポンプ102を使用することにより、正確な冷却が可能になり、AFM30への非常に低いノイズの伝達が可能になり、及び低ドリフトヒータアセンブリ38を介した層流が確保される。層流の流れを保持することは、例えば、測定ノイズを誘発し得る乱流を最小限に抑えるために、システムにとって重要な場合がある。しかし、別の態様では、プロセス冷却装置100及びポンプ102を使用して、上記のように冷却モジュール54の冷却を制御することができるが、毎分約150mLの固定流量を有するポンプ102などの閉ループ制御システムはない。
【0050】
図13を参照すると、フローチャート120は、本発明の一態様による低ドリフトヒータアセンブリの動作を示すフローチャート120である。ステップ122で、加熱モジュール52は、閉ループ制御加熱システムで制御されることができる。次に、ステップ124で、冷却モジュール54は、閉ループ制御冷却システムで制御されることができる。次に、ステップ126で、加熱及び冷却モジュール52及び54は、加熱及び冷却設定点をそれぞれ保持するように、コントローラ94によって調整されることができ、連続的な電力がヒータ構成要素56に供給される。最後に、ステップ128で、構造の低熱質量に対する持続的な電力で走査されるサンプルのドリフトは、z方向に毎分0.1ナノメートル未満で保持され得る。
【0051】
結果として、集合的に低熱質量を有する加熱及び冷却モジュール52及び54を同時に作動させて、加熱及び冷却設定点93及び96をそれぞれ達成することにより、軸55に沿った熱伝達を精密に制御することができる。システムの本質的な低熱質量は、最小限の電力要件でAFM30への熱伝達を最適な形に最小化し、迅速な加熱及び冷却を可能にする。これにより、走査するサンプルのドリフトを低く抑えて、正確な測定を行うことができる。さらに、システム固有の低熱質量の特性により、複数のヒータ/クーラモジュールは、互いに近接して配置されることができ、それらの間に大きな温度差(>200℃)が生じる可能性がある。
【0052】
本明細書における特定の用語は、参照の目的で使用されており、従って、限定することを意図するものではない。例えば、「上側」、「下側」、「上」、「下」などの用語は、参照される図面の方向を指す。「前」、「後」、「後側」、「底」、「側面」、「左側」、及び「右側」などの用語は、論議中の構成要素を説明するテキスト及び関連図を参照することによって、明確にされている一貫性のある任意の参照フレーム内の構成要素の部分の方向を説明する。このような用語には、特に上記の単語、その派生語、及び同様の意味の単語が含まれてもよい。同様に、構造を指す用語「第1」、「第2」、及び他のそのような数値用語は、文脈によって明確に示されない限り、順序又は順序を意味するものではない。
【0053】
本開示の要素又は特徴、及び例示的な実施形態を導入する場合、記事「1つ(a)」、「1つ(an)」、「前記(the)」及び「前記(said)」は、そのような要素又は特徴のうちの1つ又は複数が存在する意味を意図する。用語の「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図し、具体的に言及されたもの以外の追加の要素又は特徴が存在し得ることを意味する。また、本明細書に記載の方法ステップ、プロセス、及び動作は、性能の順序として具体的に特定されない限り、説明又は図示された特定の順序でそれらの性能を必ずしも要求すると解釈されるべきではないことを理解されたい。また、追加又は代替のステップが使用され得ることを理解されたい。
【0054】
本発明は、本明細書に含まれる実施形態及び図に限定されず、請求項は、以下の特許請求の範囲内にあるものとして、実施形態の一部及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含み、それらの実施形態の修正された形態を含むものと理解されるべきである。特許及び非特許の刊行物を含む本明細書に記載の全ての刊行物は、その全体が参照として本明細書に含まれる。