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特許7317977工作機械をセットアップするための方法および製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】工作機械をセットアップするための方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/04 20140101AFI20230724BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20230724BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/046
B23K26/03
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021546778
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2020053398
(87)【国際公開番号】W WO2020165127
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】102019201723.1
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ザイラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シャーフェンベアク
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-025071(JP,A)
【文献】国際公開第2018/019550(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0147659(US,A1)
【文献】特開2016-147346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/04
B23K 26/046
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(12)をセットアップするための方法であって、
a)前記工作機械(12)の作業スペース(22)に第1の位置特定手段(26)を有する工作物支持体(16)を固定するステップ(100)と、
b)前記工作機械(12)の加工ヘッド(14)をインドアGPSの使用下で前記工作物支持体(16)の前記第1の位置特定手段(26)に対して相対的に粗位置調整するステップ(102)と、
c)前記加工ヘッド(14)を画像処理システム(34)の使用下で前記工作物支持体(16)に対して相対的に精密位置調整するステップ(104)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップb)において、まず、前記工作物支持体(16)の位置を前記リアルタイム位置決めシステム(24)を用いて特定し(102a)、前記工作物支持体(16)の求められた位置から前記加工ヘッド(14)のための粗位置調整の目標位置を特定する(102b)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工作物支持体(16)の姿勢も前記リアルタイム位置決めシステム(24)を用いて特定することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加工ヘッド(14)を、前記リアルタイム位置決めシステム(24)による前記加工ヘッド(14)の位置の監視下で前記粗位置調整の目標位置に走行させる(102d)ことを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の位置特定手段(26)を、前記加工ヘッド(14)の前記精密位置調整(104)のための前記ステップc)で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)において、前記画像処理システム(34)の、前記加工ヘッド(14)に配置されたカメラ(36)を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工作物支持体(16)からの前記加工ヘッド(14)の距離を、前記カメラ(36)によって撮影された画像のシャープネスから、特に前記カメラ(36)の焦点調整によって求めることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加工ヘッド(14)に設けられた前記カメラ(36)は、前記工作物支持体(16)を2つの異なる視点から、特に互いに直交する2つの方向から検出することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記工作物支持体(16)は、実施すべき加工に関する情報を前記工作機械の制御システム(33)に伝送する(102aa)ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
製造システム(10)であって、
- 加工ヘッド(14)を備える工作機械(12)と、
- 工作物支持体(16)と、
- リアルタイム位置決めシステム(24)と、
- 画像処理システム(34)と
を備え、
前記工作物支持体(16)にインドアGPSの少なくとも1つの第1の位置特定手段(26)が配置されており、
好ましくは、前記加工ヘッド(14)に前記リアルタイム位置決めシステム(24)の少なくとも1つの別の第1の位置特定手段(28)が配置されており、
前記リアルタイム位置決めシステム(24)の複数の第2の位置特定手段(30)が、定位置に、特に前記工作機械(12)に配置されており、
前記画像処理システム(34)は、前記工作物支持体(16)の光学的な特徴を検出するためのカメラ(36)を有し、
前記工作物支持体(16)は、前記工作機械(12)の作業スペース(22)に固定されている、
製造システム(10)。
【請求項11】
前記工作物支持体(16)に前記リアルタイム位置決めシステム(24)の少なくとも3つの第1の位置特定手段(26)が配置されており、好ましくは、前記加工ヘッド(14)に前記リアルタイム位置決めシステム(24)の少なくとも3つの第1の位置特定手段(28)が配置されていることを特徴とする、請求項10に記載の製造システム(10)。
【請求項12】
前記画像処理システム(34)の前記カメラ(36)は、前記工作機械(12)の前記加工ヘッド(14)に配置されていることを特徴とする、請求項10または11に記載の製造システム(10)。
【請求項13】
前記工作物支持体(16)に設けられた前記第1の位置特定手段(26)は、前記画像処理システム(34)によって認識可能な光学的なマーキングを有することを特徴とする、請求項10から12までのいずれか一項に記載の製造システム(10)。
【請求項14】
前記工作物支持体(16)に設けられた前記第1の位置特定手段のうちの1つの第1の位置特定手段(26)は、前記工作機械(12)によって実施すべき加工に関する情報を含むことを特徴とする、請求項10から13までのいずれか一項に記載の製造システム(10)。
【請求項15】
前記加工ヘッド(14)は、レーザ加工ヘッドとして形成されていることを特徴とする、請求項10から14までのいずれか一項に記載の製造システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、工作機械の作業スペースに工作物支持体を配置して、工作機械をセットアップするための方法に関する。本発明は、さらに、加工ヘッドを備える工作機械と、工作物支持体とを有する製造システムに関する。
【0002】
工作機械を用いて工作物を加工、特に三次元加工するために、工作物は、典型的には、工作物支持体を用いて機械の作業スペースにおいて固定される。このことは、工作機械の準備とも呼ばれる。工作物を正確に加工するためには、工作機械もしくは工作機械の制御装置が、作業スペースにおける工作物の正確な位置を把握する必要がある。この場合、加工を制御するためのNCプログラムが、工作物の正確な位置および向きに適合させられなければならない。このことは、セットアップ、特に3Dセットアップ、または走入と呼ばれる。このとき、典型的には、NCプログラムのゼロ点と、工作物支持体または工作物における固定点とが合致させられ、これによって、NCプログラムは、並進方向でも回転方向でも工作物に適合し、すべての誤差を内包する。セットアップのこのプロセスステップは、従来、極めて手間を要する。
【0003】
三次元部材の位置および向きは測定テスタを用いて求められることが多い。この工程は、多くの時間と熟練工とを必要とし、しかも、エラーが発生しやすい。特に人間によるエラーは、熟練工であっても排除することができない。そのような触覚的なシステムの他に、工作物の位置および工作物の姿勢を求めるために、例えば極めて高価なレーザ三角測量のような光学的な方法も使用される。また、高精度に製造された相応に高価である特殊なストッパも使用されることが多い。公知の方法には、さらに、これらの方法が、極めて限定的にしか、特に完全には自動化することができないという欠点がある。
【0004】
発明の課題
本発明の課題は、工作機械の迅速なかつ自動化されたセットアップを可能にする方法および製造システムを提供することである。
【0005】
発明の説明
この課題は、本発明によれば、請求項1記載の方法および請求項10記載の製造システムによって解決される。従属請求項および明細書には、好適な発展形態が記載してある。
【0006】
本発明に係る方法
したがって、本発明は、工作機械をセットアップするための方法であって、
a)工作機械の作業スペースに工作物支持体を配置するステップと、
b)工作機械の加工ヘッドをリアルタイム位置決めシステムの使用下で工作物支持体に対して相対的に粗位置調整するステップと、
c)加工ヘッドを画像処理システムの使用下で工作物支持体に対して相対的に精密位置調整するステップと
を含む、方法に関する。
【0007】
ステップa)において、まず、工作物支持体が、工作機械の作業スペースに配置され、そこで固定、例えば作業テーブルに緊締される。工作物支持体は、工作物支持体によって保持された工作物と一緒に作業スペースに配置することができる。代替的に、工作物支持体がまず単独で(工作物なしに)作業スペースに配置され、次いで、工作物が工作物支持体に固定されることが可能である。工作物支持体への工作物の固定は、原則的には、ステップb)およびステップc)の実施後に行うこともできる。工作物が、ステップc)の実施時に既に工作物支持体に固定されている場合には、工作物の光学的な特徴を、ステップc)における精密位置調整のために使用することもできる。この限りにおいて、工作物は、工作物支持体の一部と見なすことができる。
【0008】
ステップa)に続いて、工作機械の加工ヘッドが、工作物支持体に対して相対的に位置調整される。このことは、加工ヘッドが、工作物支持体に対する特定の相対位置、場合によっては特定の相対姿勢にもたらされることを意味している。相対位置は、例えば、加工ヘッドの特徴的な点、例えば工具または光学要素が、予め特定された距離を置いて、鉛直方向で工作物支持体の特徴的な点の上方に配置される得ることによって規定されていてよい。
【0009】
加工ヘッドの位置調整は、本発明によれば、両ステップb)およびステップc)において、先行の粗位置調整および後続の精密位置調整の枠内で行われる。
【0010】
ステップb)における粗位置調整のためには、リアルタイム位置決めシステム、好ましくはインドアGPSが使用される。このようなシステムは、典型的には、数センチメートルの精度での対象の位置の特定を可能にする。
【0011】
工作物支持体の位置を特定するために、工作物支持体には、リアルタイム位置決めシステムの少なくとも1つの第1の位置特定手段が配置される。好ましくは加工ヘッドにもリアルタイム位置決めシステムの少なくとも1つの別の第1の位置特定手段が配置されている。リアルタイム位置決めシステムの第2の位置特定手段が、工作機械に対して(もしくは工作機械の作業スペースまたは作業テーブルに対して)定位置に配置される。第1の位置特定手段と第2の位置特定手段とは、それ自体公知の形式で互いに通信し、これによって、それぞれの第1の位置特定手段の位置を求めることができる。これらの位置は、典型的には、工作機械の制御システムに伝送される。制御システムは、加工ヘッドの位置を、典型的には、リアルタイム位置決めシステムに依存せずに求めることができる。加工ヘッドは、その既知の位置と、工作物支持体の、リアルタイム位置決めシステムを用いて特定された位置とから出発して、予備位置決めする、つまり、粗位置調整することができる。
【0012】
次のステップc)において、工作物支持体に対して相対的な加工ヘッドの精密位置調整が行われる。そのためには、画像処理システムが使用される。画像処理システムは、工作物支持体の光学的な特徴を検出し、付加的に加工ヘッドの光学的な特徴をも検出する。このようにして、工作物支持体に対して相対的な加工ヘッドの位置、必要な場合には、加工ヘッドの位置調整をマイクロメートル範囲の精度で、好ましくは最高100μm、特に好ましくは最高10μmの精度で求めることができる。精密位置調整のためには、画像処理システムが、光学的な特徴、例えば工作物支持体のエッジまたは、例えば目標クロスまたは点のような光学的なマーキングを検出することができる。
【0013】
本発明に係る方法は、工作機械のセットアップの工程を(場合によっては作業スペースへの工作物の配置を除いて)完全に自動化しかつ極めて迅速に実施することを可能にする。セットアップのステップb)およびステップc)は、プログラミングされたルーチンによって実施することができるので、熟練工を不要にすることができる。さらに、本発明に係る方法は、工作物支持体をステップa)で実質的に任意に位置決めすることを可能にする。リアルタイム位置決めシステムは、工作物支持体の位置を認識し、加工ヘッドを光学式の精密位置調整のために工作物支持体の近傍に位置決めすることができる。このとき、そのために、工作機械に対する人間の関与は不要である。
【0014】
本発明に係る方法は、好ましくは、以下に記載する本発明に係る製造システムによって実施される。
【0015】
好ましくは、ステップb)において、まず、工作物支持体の位置をリアルタイム位置決めシステムを用いて特定し、工作物支持体の求められた位置から加工ヘッドのための粗位置調整の目標位置を特定することが提案されている。次いで、加工ヘッドを、工作機械の制御システムによって既知の加工ヘッドの位置から出発して目標位置に走行させることができる。
【0016】
工作物支持体の姿勢もリアルタイム位置決めシステムを用いて特定することができる。そのために、典型的には、少なくとも3つの第1の位置特定手段が工作物支持体に配置されている。工作物支持体の求められた姿勢から、加工ヘッドの目標姿勢を特定することができる。
【0017】
特に好ましくは、さらに、加工ヘッドを、リアルタイム位置決めシステムによる加工ヘッドの位置の監視下で粗位置調整の目標位置に走行させることが提案されている。そのために、加工ヘッドには、少なくとも1つの別の第1の位置特定手段が配置されている。場合によっては、加工ヘッドを、リアルタイム位置決めシステムによる加工ヘッドの姿勢の監視下で目標姿勢に回転させることができる。このようにすると、工作物支持体および加工ヘッドの位置および場合によっては姿勢が、同じ方法で、つまり、リアルタイム位置決めシステムを用いて特定される。目標位置で加工ヘッドは工作物支持体の近傍に位置決めされているので、両構成要素に対するリアルタイム位置決めシステムのシステムエラーは、ほぼ同じ種類および量で発生する。こうして、粗位置調整の精度を改善することができる。特に、工作物支持体に対して相対的な加工ヘッドの目標位置を、リアルタイム位置決めシステムを用いた絶対位置の特定の精度下にある精度で得ることを達成することができる。これにより、絶対位置をリアルタイム位置決めシステムによって、例えば数センチメートルの精度で特定することができるのに対して、互いに近傍に位置している両対象の相対位置を数ミリメートルの精度で特定することができる。加工ヘッドの位置および場合によっては姿勢の監視は、連続的に行われてもよいし、時間間隔を置いて行われてもよい。
【0018】
好ましくは、工作物支持体は、第1の位置特定手段を有し、この第1の位置特定手段を、加工ヘッドの粗位置調整のためのステップb)でも、加工ヘッドの精密位置調整のためのステップc)でも使用することが提案されている。ステップc)でも第1の位置特定手段を使用することによって、工作物支持体における画像処理システムのための付加的な光学的なマーキングを僅かしか、好ましくはまったく設ける必要がなくなる。第1の位置特定手段は、それ自体を画像処理システムによって認識することができる。好ましくは、第1の位置特定手段は光学的なマーキングを有している。こうして、精密位置調整の精度をさらに改善することができる。
【0019】
特に好適な方法変化形態は、ステップc)において、画像処理システムの、加工ヘッドに配置されたカメラを使用することを特徴としている。このようにすると、ステップc)の実施が簡単になり、精度がさらに改善される。加工ヘッドにおけるカメラの位置は、(一度で)極めて正確に特定することができる。このようにして、カメラは工作物支持体の光学的な特徴を検出するので、加工ヘッドを高い精度で工作物支持体に対して相対的に位置調整することができる。カメラは、典型的には、加工ヘッドがステップb)で粗位置調整された場合に工作物支持体を検出するように、加工ヘッドに配置されている。
【0020】
有利な発展形態では、工作物支持体からの加工ヘッドの距離を、カメラによって撮影された画像のシャープネスから、特にカメラの焦点調整によって求めることが提案されている。このことは、ステップc)の特に迅速な実施を可能にする。
【0021】
代替的にまたは付加的に、加工ヘッドに設けられたカメラは、工作物支持体を2つの異なる視点から、特に互いに直交する2つの方向から検出することが提案されていてよい。このことは、加工ヘッドのさらに正確な精密位置調整を可能にする。加工ヘッドは、典型的には、この加工ヘッドを第2の視点における工作物支持体の撮影のために旋回させ、場合によって走行させることができるように、しかも、これによって、既に得られた相対位置に対する情報を悪化させることなしに、正確に制御しかつ運動させることができる。
【0022】
好ましくは、工作物支持体は、実施すべき加工に関する情報を工作機械の制御システムに伝送する。このようにすると、工作物支持体における工作物の適正な加工が実施されることを保証することができる。制御システムは、工作物支持体における工作物の加工のための加工ヘッドを制御することができる。情報は、実施すべき加工を直接、例えばプログラムナンバーによって示すことができる。
【0023】
代替的に、情報から、工作物支持体および/または工作物支持体に収容された工作物の型式を識別することができる。次いで、制御システムは、実施すべき加工をデータベースから取り出すことができる。情報は、工作物支持体における第1の位置特定手段に記憶されていてもよいし、コード化されていてもよい。
【0024】
本発明に係る製造システム
本発明の枠内には、さらに、製造システムであって、
- 加工ヘッドを備える工作機械と、
- 工作物支持体と、
- リアルタイム位置決めシステムと、
- 画像処理システムと
を備える、製造システムが含まれる。
【0025】
本発明によれば、工作物支持体にリアルタイム位置決めシステムの少なくとも1つの第1の位置特定手段が配置されている。好ましくは、加工ヘッドにリアルタイム位置決めシステムの少なくとも1つの別の第1の位置特定手段が配置されている。
【0026】
さらに、リアルタイム位置決めシステムの複数の第2の位置特定手段が、定位置に、特に工作機械に配置されている。第2の位置特定手段は、好ましくは、工作物支持体を取り付けるための加工テーブルに対して定位置に、例えば作業テーブルにかつ/または工作機械のハウジングに配置されている。工作機械の位置が不変であり、かつ正確に既知である場合には、第2の位置特定手段は、工作機械の周囲に、例えば製造ホールの構造要素に配置されていてもよい。
【0027】
第1の位置特定手段と第2の位置特定手段とは、工作物支持体および加工ヘッドの位置を特定するために、自体公知の形式で協働することができる。このようにして特定された位置によって、工作物支持体に対して相対的な加工ヘッドの粗位置調整を行うことができる。
【0028】
本発明によれば、画像処理システムは、工作物支持体の光学的な特徴を検出するためのカメラを有する。カメラは、加工ヘッドの光学的な特徴を検出するために設定されていてもよい。カメラによって検出された光学的な特徴は、工作物支持体に対して相対的な加工ヘッドの精密位置調整のために利用することができる。
【0029】
本発明に係る製造システムは、上述した本発明に係る方法の実施を可能にする。典型的には、製造システムは、上述した本発明に係る方法を実施するために設定されている。そのために、工作機械の制御システムは適宜にプログラミングされていてよい。
【0030】
第1の位置特定手段は、受信器もしくはタグとして形成されていてよい。第2の位置特定手段は、センサもしくはアンカまたはエミッタとして形成されていてよい。すなわち、第2の位置特定手段は、それぞれ1つのアンテナを有していてよい。代替的に、第2の位置特定手段は、受信器もしくはタグとして形成されていてよい。このような場合には、第1の位置特定手段は、典型的には、センサもしくはアンカまたはエミッタとして形成されている。すなわち、第1の位置特定手段は、それぞれ1つのアンテナを有していてよい。
【0031】
製造システムは、第1の位置特定手段を備えた複数の工作物支持体を有していてよい。特に、複数の工作物支持体が同時に工作機械の作業スペースに配置されていることが提案されていてよい。このような構成では、工作機械は、複数の工作物支持体の各々のために、本発明に係る方法を実行するようにセットアップされていてよい。
【0032】
第1の位置特定手段は、工作機械の電気システムに接続されていてよく、かつ/または電気インタフェースもしくは電子インタフェースを介してアクティベート可能であってよい。このようなアクティブな第1の位置特定手段は、更なる機能を果たすことができ、例えば情報を工作機械の制御システムに伝送することができる。
【0033】
好ましくは、工作物支持体にリアルタイム位置決めシステムの少なくとも3つの第1の位置特定手段が配置されている。加工ヘッドにも、リアルタイム位置決めシステムの少なくとも3つの第1の位置特定手段が配置されていてよい。少なくとも3つの第1の位置特定手段によって、工作物支持体もしくは加工ヘッドそれぞれの姿勢を特定することができる。本発明に係る方法のステップb)もしくはステップc)の枠内での加工ヘッドの粗位置調整および/または精密位置調整時に、加工ヘッドを工作物支持体の少なくとも3つの位置特定手段の各々に接近させることができる。工作物支持体の位置および姿勢は、加工ヘッドの、工作機械の制御システムを介して既知の(機械座標において測定された)位置によって、それぞれの第1の位置特定手段に対する位置調整の実行時に特定することができる。
【0034】
画像処理システムのカメラは、好ましくは、工作機械の加工ヘッドに配置されている。加工ヘッドに配置されたカメラは、加工ヘッドの位置調整時に工作物支持体の近傍に位置決めされている。これによって、精密位置調整をカメラの使用下で特に高い精度で行うことができる。
【0035】
特に好ましくは、工作物支持体に設けられた第1の位置特定手段は、画像処理システムのための光学的なマーキングを有する。画像処理システムは、光学的なマーキングを認識することができる。このとき、第1の位置特定手段は、リアルタイム位置決めシステムおよび画像処理システムを用いた位置特定のために使用することができる。このような第1の位置特定手段によって、工作物支持体に設けるべき更なる光学的なマーキングの数を減じることができ、特に工作物支持体における付加的な光学的なマーキングを完全に省くことができる。
【0036】
工作物支持体に設けられた第1の位置特定手段のうちの1つの第1の位置特定手段は、工作機械によって実施すべき加工に関する情報を含んでよい。製造システム、特に工作機械の制御システムは、これらの情報を得るために設定されていてよい。情報は、実施すべき加工を、例えばプログラムナンバーによって直に示すことができる。代替的に、情報は、工作物支持体および/または工作物支持体に取り付けられた工作物の型式を識別することができる。工作機械の制御システムは、この場合に実施すべき加工をデータベースから取り出すことができる。
【0037】
好ましくは、加工ヘッドは、レーザ加工ヘッドとして形成されている。レーザ加工ヘッドは、いわゆるけがきによる切削加工のための加工ヘッドのように構成されていなくてよい。したがって、レーザ加工ヘッドでは、リアルタイム位置決めシステムおよび画像処理システムの使用下でのセットアップのための可能性の利点を特に好適に得ることができる。レーザ加工ヘッドは、切断、溶接、レーザ金属蒸着のような加工形態のうちの1つまたは複数の加工形態のために形成されていてよい。
【0038】
本発明の更なる特徴および利点は、図面の説明および図面から明らかである。上述した特徴および以下にさらに詳しく説明する特徴は、本発明によれば、それぞれ個々に単独で使用されてもよいし、複数を任意に組み合わせて使用されてもよい。図説する実施形態は、最終的な列挙として解釈すべきではなく、むしろ、本発明を説明するための例示的な特徴を有しているに過ぎない。
【0039】
発明および図面の詳細な説明
本発明を図面に示し、実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】製造システムを極めて概略的に示す平面図である。
図2図1に示した製造システムを極めて概略的に示す側面図である。
図3】工作機械をセットアップするための方法を示すフローチャートである。
【0041】
図1には、製造システム10が平面図で概略的に示してある。
【0042】
図2には、製造システム10が側面図で示してある。
【0043】
製造システム10は、加工ヘッド14を備えた工作機械12を有している。加工ヘッド14は、ここでは、例えば溶接、切断および/またはレーザ金属蒸着のようなレーザ加工のためのレーザ加工ヘッドとして形成されている。工作機械12は、図1および図2に極めて抽象的に示してある。すなわち、図には、加工ヘッドの可動性が概略的に示してある(双方向矢印参照)。なお、このことは、工作機械12の具体的な構造上の構成への制限に結び付けられるものではない。
【0044】
製造システム10は、さらに、工作物支持体16を有している。工作物支持体には、工作物18が保持されている。工作物支持体16は、工作機械12の作業スペース22において作業テーブル20上に配置されている。
【0045】
製造システム10は、さらに、リアルタイム位置決めシステム24を有している。このリアルタイム位置決めシステム24は、工作物支持体16に配置された第1の位置特定手段26を有している。リアルタイム位置決めシステム24は、さらに、加工ヘッド14に配置された別の第1の位置特定手段28を有している。さらに、リアルタイム位置決めシステム24は、第2の位置特定手段30を有しており、この第2の位置特定手段30は、定位置に、ここでは、工作機械12のハウジング32に配置されている。第1の位置特定手段26,28と第2の位置特定手段30とが協働することによって、工作物支持体16もしくは加工ヘッド14の位置を求めることができる。そのために、第1の位置特定手段26,28および第2の位置特定手段30は、工作機械12の制御システム33と通信することができる。
【0046】
製造システム10は、さらに、画像処理システム34を有している。画像処理システム34は、ここでは、加工ヘッド14に配置されたカメラ36を有している。カメラ36の光学システムは、作業テーブル20に向けられていてよい。画像処理システム34は、カメラ36の他に、工作機械12の制御システム33におけるソフトウェアモジュールを有していてよい。
【0047】
製造システム10の工作機械12をセットアップするための方法を、補足的に図3を参照しながら説明する。図3には、このような方法のフローチャートが示してある。セットアップの際には、加工ヘッド14が、工作物支持体16における工作物18の後続の加工のために位置調整される。セットアップ後、工作物18の加工を行うことができる。加工ヘッド14は、セットアップの終了後の終端位置から出発して、予め規定された軌道を走行する。
【0048】
第1のステップ100において、工作物18を備えた工作物支持体16は、工作機械12の作業スペース22に配置される。そのために、工作物支持体16は、それ自体公知の形式で作業テーブル20上に固定される。しかしながら、このとき、工作物支持体16の規定された位置を正確に維持することは不要である。工作物支持体16をほぼ適正な位置にまたは単に作業スペース22の何処かに配置するだけで十分である。それというのも、工作物支持体16の位置および位置調整は、更なる方法経過において自動的に特定され、これによって、工作機械を自動的にそれに合わせて調整することができるからである。
【0049】
次のステップ102において、工作物支持体16に対して相対的な工作機械12の加工ヘッド14の粗位置調整が行われる。そのために、部分ステップ102aにおいて、まず、作業スペース22における工作物支持体16の位置および姿勢が、リアルタイム位置決めシステム24を用いて特定される。このデータから、部分ステップ102bにおいて、加工ヘッド14のための目標位置が求められる。目標位置は、例えば工作物支持体16の特徴的な点の上方の規定された距離によって特定されていてよい。次いで、部分ステップ102cにおいて、リアルタイム位置決めシステム24を用いて加工ヘッド14の位置が求められる。加工ヘッド14の位置は、リアルタイム位置決めシステム24を用いて求められ、制御システム33における機械座標に存在する位置情報を用いるのではないので、粗位置調整の精度を改善することができる。それというのも、リアルタイム位置決めシステム24のシステムエラーは、工作物支持体16でも加工ヘッド14でも、ほぼ同じように(値および方向)発生するからである。次いで、部分ステップ102dにおいて、加工ヘッド14が目標位置に走行させられる。加工ヘッド14の位置は、遅くとも目標位置への到達時に、好ましくは走行中に連続的に、リアルタイム位置決めシステム24によって新たに特定される。その後、加工ヘッド14の位置は、リアルタイム位置決めシステム24が目標位置との十分に正確な合致を確認するまでに補正することができる。つまり、目標位置への加工ヘッド14の運動は、リアルタイム位置決めシステム24による監視下で行われる。目標位置は、粗位置調整時に、典型的には数センチメートルの精度で得ることができる。
【0050】
ステップ102の枠内で工作物支持体16および加工ヘッド14の位置ならびに場合によっては姿勢を特定するために、第1の位置特定手段26;28と第2の位置特定手段30とが協働する。さらに、第1および/または第2の位置特定手段26,28,30は、工作機械12の制御システム33と通信する。ここでは、工作物支持体16における第1の位置特定手段のうちの1つの第1の位置特定手段26が、工作物18において実施すべき加工に関する情報を含んでいる。この情報は、加工ヘッド14のための目標位置に関する情報をも含んでいてよい。例えば部分ステップ102aにおける工作物支持体16の位置を求める枠内にて、第1の位置特定手段26からの情報をサブステップ102aaで制御システム33に伝送することができる。
【0051】
粗位置調整102に続いて、ステップ104において、加工ヘッド14の精密位置調整が行われる。精密位置調整のためには、カメラ36を備えた画像処理システム34が使用される。粗位置調整後、加工ヘッド14に設けられたカメラ36は、工作物支持体16の近傍に位置している。したがって、カメラ36は、工作物支持体16の光学的な特徴、例えばエッジ、または別個に取り付けられた光学的なマーキングを検出することができる。ここでは、工作物支持体16における第1の位置特定手段26は、例えば点、光学的なコードまたはレジスタクロスの形態のそれぞれ1つの光学的なマーキングを有している。これらの光学的な特徴は、カメラ36によって検出され、カメラ36の画像部分における光学的な特徴の位置が求められる。カメラ画像における光学的なマーキングと加工ヘッド14の実際座標とのそれぞれの位置によって、作業スペースにおける第1の位置特定手段26の実際位置を求めることができる。
【0052】
カメラ36の画像平面に対して垂直に、つまり、カメラ36の「視線方向」で、工作物支持体からの距離を、カメラ36によって撮影された画像のシャープネスから求めることができ、相応に補正することができる。好ましくは、カメラ36は、工作物支持体16の、例えば第1の位置特定手段のうちの1つの第1の位置特定手段26の光学的な特徴に焦点調整され、これによって、焦点位置から距離を推測することができる。代替的にまたは付加的に、工作物支持体を別の視点から検出するために、カメラ36を回転させることができる。画像処理システム34を用いた精密位置調整時に、加工ヘッド14は、典型的には、100μm、好ましくは10μm、特に好ましくは7μmの精度で、工作物18の後続の加工のための出発点にもたらすことができる。
【0053】
上述した本発明に係る方法では、場合によっては製造システム10に対する人間の関与が、作業スペース22への工作物支持体16の配置100のために必要である。粗位置調整のステップ102および精密位置調整のステップ104は、完全に自動化することができる。このことは、工作機械12のセットアップの精度および速度を高める。
【符号の説明】
【0054】
10 製造システム
12 工作機械
14 加工ヘッド
16 工作物支持体
18 工作物
20 作業テーブル
22 作業スペース
24 リアルタイム位置決めシステム
26 第1の位置特定手段
28 別の第1の位置特定手段
30 第2の位置特定手段
32 ハウジング
33 制御システム
34 画像処理システム
36 カメラ
100 作業スペース22への工作物支持体16の配置
102 加工ヘッド14の粗位置調整
102a 工作物支持体16の位置の特定
102b 加工ヘッド14のための目標位置の特定
102c 加工ヘッド14の位置の特定
102d 目標位置への加工ヘッド14の走行
102aa 情報の伝送
104 加工ヘッド14の精密位置調整
図1
図2
図3