(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】安定化型医療デバイス及び関連の方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20230724BHJP
A61L 101/38 20060101ALN20230724BHJP
A61L 101/44 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
A61L2/20 104
A61L101:38
A61L101:44
(21)【出願番号】P 2021570445
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 US2020034279
(87)【国際公開番号】W WO2020242967
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-12
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エル.クリーク
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ディー.トレイラー
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0122647(US,A1)
【文献】特開2008-154573(JP,A)
【文献】特表2009-545333(JP,A)
【文献】特開平08-005601(JP,A)
【文献】PAZ-ALFARO K J ET AL,Trehalose-mediated thermal stabilization of glucose oxidase from Aspergillus niger,JOURNAL OF BIOTECHNOLOGY,vol. 141, no. 3-4,NL,ELSEVIER,2009年05月20日,pages 130 - 136
【文献】VASILIS G. GAVALAS ET AL,Polyelectrolyte stabilized oxidase based biosensors:effect of diethylaminoethyl-dextran on the stabilization of glucose and lactate oxidases into porous conductive carbon,ANALYTICA CHIMICA ACTA,vol.404, no.1,NL,2000年01月01日,pages 67-73
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
G01N 27/327
C12Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化型医療デバイスであって、
少なくとも部分的に導電性でありおよび導電性ePTFEを含む基体と、
前記基体の表面の少なくとも一部にわたって配置された安定化型酵素層と、
を含み、
前記安定化型酵素層が、
トレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド、及びソルボースから成る群から選択される少なくとも1種の生物活性
の検知
に用いる成分と、
前記生物活性
の検知
に用いる成分と非共有結合で結合された少なくとも1種の安定化成分とを含み、前記生物活性
の検知
に用いる成分が、前記生物活性
の検知
に用いる成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で25U/cm
3~1,000,000U/cm
3の生物活性検出レベルを有しており、
前記生物活性
の検知
に用いる成分
は、患者の体内のグルコースオキシダーゼ
との相互作用によってセンサによって検知
し得る成分に変換され、
前記安定化型酵素層内の前記生物活性の検知に用いる成分に対する安定化成分の質量比が、10~100であり、
前記生物活性の検知に用いる成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの45%~95%以内にある、
安定化型医療デバイス。
【請求項2】
前記生物活性
の検知
に用いる成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの50%~90%以内にある、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記安定化型酵素層内の前記生物活性
の検知
に用いる成分に対する安定化成分の質量比が、10~50である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記生物活性
の検知
に用いる成分が、前記生物活性
の検知
に用いる成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で25U/cm
3~1,000,000U/cm
3の生物活性検出レベルを有している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
安定化型医療デバイスを製造する方法であって、前記方法が、
少なくとも1種の安定化成分をトレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド、及びソルボースから成る群から選択される少なくとも1種の生物活性
の検知
に用いる成分と混合することにより、安定化型混合物を形成することと、
導電性ePTFEを含む導電性基体に前記安定化型混合物を塗布することにより、前記基体の少なくとも一部に安定化型酵素層を形成することと、
前記基体にエチレンオキシド滅菌プロセスを施すことと、
を含み、前記生物活性
の検知
に用いる成分の、滅菌後の生物活性検出レベルが、滅菌前の生物活性検出レベルの40%~95%以内にあり、
前記生物活性
の検知
に用いる成分が、前記生物活性
の検知
に用いる成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で25U/cm
3~1,000,000U/cm
3の生物活性検出レベルを有しており、
前記生物活性
の検知
に用いる成分
は、患者の体内のグルコースオキシダーゼ
との相互作用によってセンサによって検知
し得る成分に変換され
前記安定化型酵素層内の前記生物活性の検知に用いる成分に対する安定化成分の質量比が、10~100であり、
前記生物活性の検知に用いる成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの45%~95%以内にある、
安定化型医療デバイスを製造する方法。
【請求項6】
前記生物活性
の検知
に用いる成分の、滅菌後の生物活性検出レベルが、滅菌前の生物活性検出レベルの
45%~90%以内にある、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記安定化成分と前記生物活性
の検知
に用いる成分とを
10~
50の質量比で混合する、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記生物活性
の検知
に用いる成分が、前記生物活性
の検知
に用いる成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で25U/cm
3~1,000,000U/cm
3の生物活性検出レベルを有している、請求項
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月28日付けで出願された米国仮出願第62/853,499号の優先権を主張する。前記仮出願はあらゆる目的のために全体的に参照することにより本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は大まかにいえば、滅菌のために必要な固定化された生物活性存在物を有する基体材料を含む安定化型医療デバイスに関し、そしてより具体的には、安定化型被分析物センサ及び安定化型生物電池及びこれらの関連の方法に関する。
【0003】
医療デバイス、例えばステント、カテーテル、及びセンサを患者の体内に挿入する前に、デバイスを滅菌することにより汚染物質が存在しないことを保証しなければならない。汚染物質、例えば細菌、ウイルス、及びその他の種々の不純物は患者を害するおそれがある。例えば、医療デバイス上に存在する不純物は、感染及び疾患、アレルギー反応、及び中毒の出現又は伝搬を招くことがある。このようなデバイスの滅菌は概ね、高い温度、圧力、及び湿分にデバイスを暴露することを必要とするとともに、滅菌はしばしばいくつかのサイクルを必要とする。
【0004】
医療デバイスを滅菌する一般的な方法は例えば気体状物質、例えばエチレンオキシド(ETO)又は蒸気過酸化水素(VHP)を含んでよい。他の滅菌方法はガンマ線滅菌、及びこれに類するものを含む。ETO及びVHP滅菌は、熱滅菌技術に必要な温度よりも低い温度で微生物を死滅させる際に効果的である。したがって、高温に耐えることができない材料を含有する医療デバイス、例えば種々の生物学的成分を利用する被分析物センサのために、ETO及びVHP滅菌を用いることができる。ETO及びVHP滅菌は、複雑なジオメトリーを有する医療デバイスのために用いることもできる。なぜならばETO及びVHPガスは、デバイスを取り囲み、デバイスに浸透することができるからである。しかしながら、ETO及びVHP滅菌の1つの不都合な点は、デバイスの操作に必要な生物学的成分に対するその損傷作用(例えば劣化、変性、不所望な化学反応、分解など)である。生物学的成分の一例としては、患者の体内の被分析物又は他の成分を検知するように構成された酵素、抗体、アプタマー、及びリガンドが挙げられる。したがって、滅菌及び/又は保管中に劣化することがなく、そして患者の体内に植え込んだあとに好適な生物活性レベルを維持する、生物活性存在物が固定化された医療デバイスのための安定化された生物学的成分を有するデバイスが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの例(「例1」)によれば、安定化型医療デバイスが、少なくとも部分的に導電性である基体と、前記基体の表面の少なくとも一部にわたって配置された安定化型酵素層とを含み、前記安定化型酵素層が、少なくとも1種の生物活性検知成分と、前記生物活性検知成分と非共有結合で結合された少なくとも1種の安定化成分とを含み、前記生物活性検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm3~約1,000,000U/cm3の生物活性検出レベルを有している。
【0006】
例1に付加される別の例(「例2」)によれば、前記生物活性検知成分が、トレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド、及びソルボースから成る群から選択される。
【0007】
例1又は2に付加される別の例(「例3」)によれば、前記生物活性検知成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの約45%~約95%以内にある。
【0008】
先行の例1~3のいずれか1つに付加される別の例(「例4」)によれば、前記生物活性検知成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの約50%~約90%以内にある。
【0009】
先行の例1~4のいずれか1つに付加される別の例(「例5」)によれば、前記安定化型酵素層内の前記生物活性検知成分に対する安定化成分の質量比が、約0.1~約10,000である。
【0010】
先行の例1~5のいずれか1つに付加される別の例(「例6」)によれば、前記安定化型酵素層内の前記生物活性検知成分に対する安定化成分の質量比が、約10~約50である。
【0011】
先行の例1~6のいずれか1つに付加される別の例(「例7」)によれば、前記生物活性検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm3~約1,000,000U/cm3の生物活性検出レベルを有している。
【0012】
先行の例1~7のいずれか1つに付加される別の例(「例8」)によれば、前記基体が導電性ePTFEを含む。
【0013】
先行の例1~8のいずれか1つに付加される別の例(「例9」)によれば、前記生物活性検知成分が、患者の体内のグルコースオキシダーゼのレベルを検知するように構成されている。
【0014】
1例(「例10」)によれば、安定化型医療デバイスを製造する方法が、少なくとも1種の安定化成分を少なくとも1種の検知成分と混合することにより、安定化型混合物を形成し、導電性基体に前記安定化型混合物を塗布することにより、前記基体の少なくとも一部に安定化型酵素層を形成し、そして前記基体にエチレンオキシド滅菌プロセスを施すことを含み、前記検知成分の、滅菌後の生物活性検出レベルが、滅菌前の生物活性検出レベルの約45%~約95%以内にある。
【0015】
例10に付加される別の例(「例11」)によれば、前記検知成分が、トレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストラン、及びソルボースから成る群から選択される。
【0016】
先行の例10~11のいずれか1つに付加される別の例(「例12」)によれば、前記検知成分の、滅菌後の生物活性検出レベルが、滅菌前の生物活性検出レベルの約40%~約90%以内にある。
【0017】
先行の例10~12のいずれか1つに付加される別の例(「例13」)によれば、前記安定化成分と前記検知成分とを約0.1~約10,000の質量比で混合する。
【0018】
先行の例10~13のいずれか1つに付加される別の例(「例14」)によれば、前記安定化成分と前記検知成分とを約10~約50の質量比で混合する。
【0019】
先行の例10~14のいずれか1つに付加される別の例(「例15」)によれば、前記検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm3~約1,000,000U/cm3の生物活性検出レベルを有している。
【0020】
先行の例10~15のいずれか1つに付加される別の例(「例16」)によれば、前記検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で25U/cm3~約1,000,000U/cm3の生物活性検出レベルを有している。
【0021】
先行の例は一例に過ぎず、本開示によって他の形で提供される発明概念のうちのいずれかの概念の範囲を制限するか又は狭くするように読まれるべきではない。数多くの例が開示されるが、さらに他の実施態様が下記詳細な説明から当業者に明らかになる。下記詳細な説明は実例を示し記述する。したがって、図面及び詳細な説明は事実上限定的なものではなく事実上事例的なものとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図面は、本開示のさらなる理解のために含まれ、そして本明細書中に組み込まれ、且つ本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記載内容と一緒に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0023】
【
図1】
図1は、1実施態様による、患者の皮膚内へ植え込まれた、プロセッサと被分析物センサとを含む安定化型医療デバイスを示す概略図である。
【0024】
【
図2】
図2は、1実施態様による、患者内へ植え込まれた、プロセッサと被分析物センサとを含む安定化型医療デバイスを示す概略図である。
【0025】
【
図3】
図3は、1実施態様による、患者と接触しているがしかし植え込まれてはいない、プロセッサと被分析物センサとを含む安定化型医療デバイスを示す概略図である。
【0026】
【
図4】
図4は、1実施態様による生物電池を示す概略図である。
【0027】
【
図5】
図5は、1実施態様による、
図1の被分析物センサの表面を示す概略図である。
【0028】
【
図6】
図6は、1実施態様による、
図5の被分析物センサの安定化成分と検知成分との間の界面をクローズアップして示す概略図である。
【0029】
【
図7】
図7は、1実施態様による、安定化型医療デバイスを製造する方法を示すフローチャートである。
【0030】
【
図8】
図8は、1実施態様による、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対する硫酸亜鉛の効果を示すグラフである。
【0031】
【
図9】
図9は、1実施態様による、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するトレハロースの効果を示すグラフである。
【0032】
【
図10】
図10は、1実施態様による、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するソルボースの効果を示すグラフである。
【0033】
【
図11】
図11は、1実施態様による、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するジエチルアミノエチル-デキストランの効果を示すグラフである。
【0034】
【
図12】
図12は、1実施態様による、メンブレン内部に位置決めされたセンサ先端部に対する、パーセント溶解酸素の時間依存性を示すグラフである。
【0035】
【
図13】
図13は、DEAEデキストランを混和することによって、そしてソルボースを混和することによってETO滅菌中に安定化されたePTFE基体のためのグルコースオキシダーゼ固定化の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は大まかに言えば、安定化型医療デバイス、例えば安定化された植え込み可能な被分析物センサ及び生物電池であって、両方とも生体適合性であり且つ長時間にわたって安定である、安定化型医療デバイスに関する。より具体的には、本開示は、滅菌プロセス、例えばETO又はVHP滅菌に耐えるように非共有結合的に安定化された生物学的成分を含む被分析物センサ及び生物電池に関する。本明細書中に開示された安定化型被分析物センサ及びセンサ材料は、滅菌プロセスを受ける前に安定化されていない被分析物センサ及びセンサ材料と比較して、改善された性能とセンサ読み取り精度とを有することができる。
【0037】
本開示は限定的に読むべきではない。例えば本出願において使用される用語は、当業者がこのような用語を帰属させる意味との関連において幅広く読まれるべきである。本明細書中に使用される「安定化型」「安定化された」(stabilized)という用語は、生物学的成分がその所望の機能又は用途のために十分な生物活性を維持しつつ滅菌されることが可能であることを意味するものとする。
【0038】
図1は、1実施態様による、患者の皮膚S内へ植え込まれた、プロセッサ120と安定化型被分析物センサ110とを含む安定化型医療デバイス100を示す概略図である。図示のように、デバイス100は、患者の皮膚Sの表面上に位置するプロセッサ120と、患者の皮膚Sを通して植え込まれ患者の間質液Fと接触する安定化型被分析物センサ110とを含む。デバイス100は、患者の間質液F中の所望の被分析物(例えばグルコースG、酸素、過酸化水素、バイオマーカー、タンパク質など)を検出するように構成されている。いくつかの事例では、安定化型被分析物センサ110は、信号をプロセッサ120へ伝送することができ、そしてプロセッサ120は次いで信号を処理して、患者又は患者の医師によって読み取られるのに適した出力(例えば被分析物濃度)にすることができる。デバイス100は本開示ではグルコースの検出に関連して記載されてはいるが(例えばグルコースセンサ)、本開示はまた他の部位に使用される、且つ/又は他のタイプの被分析物を検出するための他のタイプのセンサシステムにも適用することができる。
【0039】
図2は、1実施態様による、患者の組織T内へ完全に植え込まれた、(プロセッサ120と同様の)プロセッサ420と、(センサ110と同様の)安定化型被分析物センサ410とを含む安定化型医療デバイス400を示す概略図である。図示のように、デバイス400は、患者の皮膚Sの表面下に位置するプロセッサ420と、患者の組織T内部に植え込まれ間質液に晒される安定化型被分析物センサ410とを含む。組織Tは結合組織、皮下組織、又は器官組織であってよく、皮膚Sの最外層の下部にあることができる。デバイス400は、患者の組織T内の所望の分析物(例えばグルコースG、酸素、過酸化水素、バイオマーカー、タンパク質など)を検出するように構成されている。いくつかの事例では、安定化型被分析物センサ410は、信号をプロセッサ420へ伝送することができ、そしてプロセッサ420は次いで信号を処理して、患者又は患者の医師によって読み取られるのに適した出力(例えば被分析物濃度)にする。デバイス400は本開示ではグルコースの検出に関連して記載されてはいるが(例えばグルコースセンサ)、本開示はまた他の部位に使用される、且つ/又は他のタイプの被分析物を検出するための他のタイプのセンサシステムにも適用することができる。
【0040】
図3は、1実施態様による、患者と接触しているがしかし植え込まれてはいない、(プロセッサ120と同様の)プロセッサ520と(センサ110と同様の)安定化型被分析物センサ510とを含む安定化型医療デバイス500を示す概略図である。図示のように、デバイス500、例えばコンタクトレンズ550上に使用するためのデバイス500は、プロセッサ520と安定化型被分析物センサ510とを患者のために含む。デバイス500は、例えば患者の目と関連する水分から検出される、患者上の所望の分析物(例えばグルコース、酸素、過酸化水素、バイオマーカー、タンパク質など)を検出するように構成されている。いくつかの事例では、安定化型被分析物センサ510は、信号をプロセッサ520へ伝送することができ、そしてプロセッサ520は次いで信号を処理して、患者又は患者の医師によって読み取られるのに適した出力(例えば被分析物濃度)にする。デバイス500は本開示ではグルコースの検出に関連して記載されてはいるが(例えばグルコースセンサ)、本開示はまた他の部位に使用される、且つ/又は他のタイプの被分析物を検出するための他のタイプのセンサシステムにも適用することができる。例えば、皮膚からの汗を利用してコルチゾールを検出することができ、あるいは創傷からの液体を利用して所望の被分析物を検出することもできる。
【0041】
図4は、1実施態様による生物電池600を示す概略図である。生物電池は、有機化合物、例えば炭水化物、例えば人間の血液中のグルコースによって動力を与えられるエネルギー変換・貯蔵デバイスである。人体内の酵素がグルコースを分解するのに伴って、電子及び陽子が解放され、これによりエネルギーを生物電池へ提供する。このエネルギーは後で使用するために貯蔵されてよい。生物電池600はアノードAと、カソードCと、半透膜630によってアノードA及びカソードCから分離された電解質Eとを含む。アノードAは有機化合物、例えばグルコースGと接触している。生物学的成分、例えばグルコース消化酵素620がアノードA上に固定化され、そして酸素還元化合物又は酵素640がカソードC上に固定化されている。電子e
-がエネルギーとして放出される。カソードCが酸素で富化された環境に晒されるので、H
+イオンはO
2と結合して水H
2Oを生成する。生物電池医療デバイスの用途は人工ペースメーカー、外部聴覚デバイス、電池作動式インスリンポンプ、デジタル体温計、及び糖尿病患者によって使用される血糖値計を含んでよい。別の実施態様では、このようなデバイスのための一次電力を提供するバッテリーを生物電池によって再充電することによって、一次電池を交換するための介入なしにデバイスの有効使用期限を長くすることができる。生物電池600は患者内に植え込むことができる。あるいは、生物電池は患者の皮膚上に配置されてもよく、これにより有機電源(例えばグルコース)は生物電池によってアクセス可能になる。
【0042】
図5は、
図1の安定化型被分析物センサ110の表面を示す概略図である。図示のように、安定化型被分析物センサ110は、基体200と、基体200の表面の少なくとも一部にわたって配置された安定化型酵素層220とを含む。これらの教示内容は、
図2のセンサ410、
図3のセンサ510、
図4の生物電池600のアノードA、カソードC、及び/又は他の素子に適用されてもよい。
【0043】
基体200は少なくとも部分的に導電性である。例えば基体200は、導電性金属を被覆することにより、導電性材料と一緒に押し出すことにより、又は当業者に知られる任意の他の適宜の技術によって導電性にされている延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含んでよい。
【0044】
図5及び
図6を参照すると、安定化型酵素層220は検知成分240を含む。本明細書中に使用される「検知成分(sensing component)」という表現は、検出されるべき所望の被分析物と相互作用するか又はこれを認識し得る高感度生物学的成分を意味する。例えば、検知成分240は、検出される被分析物と反応し得る酵素を含んでよい。グルコースセンサの場合には、酵素は例えばグルコースオキシダーゼを含んでよい。グルコースオキシダーゼは、患者の間質液(
図1)F中のグルコースG(例えば被分析物)と相互作用することにより、グルコースGを、センサ120によって検出し得る生成物(例えば過酸化水素又は他の成分)に変換することができる。
【0045】
いくつかの事例では、検知成分240を含む安定化型酵素層220は基体200の表面の少なくとも一部に取り付けられる。例えば検知成分240は、基体200と接触しているときに、基体200の表面と結合してよい。
【0046】
安定化型酵素層220はまた、検知成分240と結合された安定化成分260を含む。いくつかの事例では、安定化成分260はトレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド、及び/又はソルボースのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの事例では、安定化成分260は検知成分240と非共有結合で結合されている。例えば安定化成分260と検知成分240とは、互いに共有結合されることなしに、安定化型酵素層220の形成中に互いに物理的に混合されてよい。
【0047】
図6は、被分析物センサ110(
図5)の安定化成分260と検知成分240との間の界面280をクローズアップして示す概略図である。図示のように、安定化成分260の分子360は検知成分240の分子340と、互いに共有結合されることなしに結合(例えば混和)されている。
【0048】
いくつかの事例では、安定化型酵素層220内の検知成分240に対する安定化成分260の質量比約0.1~約10,000で、又は安定化型酵素層220内の検知成分240に対する安定化成分260の質量比10~約100で、又は安定化型酵素層220内の検知成分240に対する安定化成分260の質量比約10~約50で、安定化成分260は検知成分240と非共有結合で結合されていてよい。このような比での結合は、検知成分240を安定化し、そして検知成分240の生物活性が維持されるのを保証する。
【0049】
いくつかの事例では、検知成分240の生物活性は、検知成分240の生物活性検出レベルによって特徴づけることができる。本明細書中に使用される「生物活性検出レベル(biological activity detection level)」という表現は概ね、試料中の所与の数の被分析物を検出する検知成分240の能力を意味する。いくつかの事例では、ETO滅菌後の非安定化型検知成分の生物活性検出レベルは、ETO滅菌前の非安定化型検知成分の生物活性検出レベルの約20%未満、約10%未満、又は約5%未満であるのに対して、ETO滅菌後の安定化型検知成分240の生物活性検出レベルは、ETO滅菌前の生物活性検出レベルの約45%~約95%、ETO滅菌前の生物活性検出レベルの約50%~約90%以内、又はETO滅菌前の生物活性検出レベルの約50%~約80%以内にある。
【0050】
いくつかの事例では、生物電池600の生物活性は、デバイスの一次電池を再充電する生物活性レベルによって特徴づけることができる。本明細書中に使用される「生物活性電流再充電レベル(biological activity recharging current level)」という表現は概ね、最小電流を発生させるアノード及びカソードの能力を意味する。
【0051】
いくつかの事例では、生物活性検知成分240は、安定化型被分析物センサ110のETO滅菌に続いて、基体200で約25U/cm3~約1,000,000U/cm3、又は安定化型被分析物センサ110のETO滅菌に続いて、前記基体200で約100U/cm3~約300U/cm3の生物活性検出レベルを有していてよい。
【0052】
図7は、1実施態様による、本明細書中に記載された安定化型医療デバイスを製造する方法300を示すフローチャートである。方法300は
図1~5に示された上記成分に関連して記載される。方法300は混合工程320において、安定化成分260を検知成分240と非共有結合で結合(例えば混和)することにより、安定化型ポリマー混合物を形成することを含む。次いで塗布工程340において、基体200上に混合物を塗布することにより、基体上に安定化型酵素層220を形成する。例えばいくつかの事例では、基体200を混合物中に浸漬塗布することにより、基体上に概ね薄く均一な層が形成される。浸漬塗布後、周囲条件への暴露によって、又は強制空気乾燥によって、基体200を乾燥させることができる。塗布後、滅菌工程360において、基体200及び安定化型酵素層220にETO滅菌プロセスを施す。
【0053】
実施例
言うまでもなく、ある特定の方法及び設備を以下に説明するが、当業者によって好適なものと判断された他の方法又は設備を代わりに利用してもよい。
比較例1:エチレンオキシド滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対する硫酸亜鉛の効果
【0054】
未滅菌グルコースオキシダーゼを硫酸亜鉛と混合することにより、安定化型混合物を調製した。凍結乾燥粉末の形態を成す未滅菌グルコースオキシダーゼ(Aspergillus Niger, G7141)はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。1mg/mLのグルコースオキシダーゼのワーキング溶液を脱イオン(DI)水中で調製した。未滅菌粉末の形態を成す硫酸亜鉛をSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、10.0mg/mL、及び100.0mg/mLのワーキング溶液をDI水中で調製した。
【0055】
ワーキンググルコースオキシダーゼ溶液の1mLアリコートを、調製された濃度毎に1mLのワーキング硫酸亜鉛溶液と一緒に2mLガラスバイアルに添加した。このことは質量当たりの質量ベースで、それぞれグルコースオキシダーゼに対する硫酸亜鉛の質量比0.001、0.01、0.1、1.0、10.0、及び100.0をもたらした。ワーキング硫酸亜鉛溶液を含まない、それぞれ1mLのワーキンググルコースオキシダーゼ溶液を含有する4バイアルの対照試料を調製した。
【0056】
バイアルのそれぞれをキャップし、シェーカートラップ上に置くことにより溶液の混合を保証し、凍結し、そして数日間にわたって凍結乾燥させることによりバイアル内に粉末を生成した。次いでETO滅菌を試料群に対して約1時間にわたって(例えば1時間のETOガス滞留時間で)ほぼ55℃の温度で、そして平均通気時間12時間で実施した。第2試料群にはETO滅菌を施さず、これを室温で維持した。第3試料群にはETO滅菌を施さず、これを-15℃で凍結した。
【0057】
滅菌処置に続いて、それぞれの試料群を生物活性に関して試験した。Utilized Amplex(登録商標) レッド・グルコース/グルコースオキシダーゼ・アッセイ・キット (ThermoFisher, A22189)を使用して、グルコースオキシダーゼ活性分析を実施した。希釈のために、次いで変性緩衝溶液を調製した。変性緩衝溶液は、25mMのリン酸緩衝液(pH7.4)、100μg/mLのウシ血清アルブミン、5.7g/LのKH2PO4、及び54.325g/LのNa2HPO4・7H2Oから成った。次いで530nm励起及び590nm発光で、少なくとも5分間にわたって1分毎に測定する動的モードにおいて、蛍光を測定した。
【0058】
図8は、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ(GOx)活性に対する硫酸亜鉛(ZnSO
4)の効果を示すグラフである。グルコースオキシダーゼの活性は、それぞれの試料の測定された活性を、室温における純粋グルコースオキシダーゼ対照試料の測定値で割り算し、そして100で掛け算してパーセンテージをもたらすことにより、正規化相対活性として表される。純粋グルコースオキシダーゼは製造業者の容器から得、滅菌しなかった。
【0059】
図8に示されているように、硫酸亜鉛を受容しない滅菌済みグルコースオキシダーゼ試料は、対照試料(例えば滅菌されておらず、室温で維持されるか又は凍結された試料)と比較して、正規化相対活性の低下を示した。室温対照試料の正規化相対活性は100%であった。凍結試料の正規化相対活性は107%であった。しかしながら、滅菌済み試料の正規化相対活性はそれぞれほぼ10.8%及び9.4%であった。
図8に示されているように、ETO1及びETO2はETO滅菌の二重試料を示す。したがって、ETO滅菌が、未滅菌試料と比較してグルコースオキシダーゼの生物活性のほぼ90%の低下を招くことが結論付けられた。また、グルコースオキシダーゼへの硫酸亜鉛の添加が、ETO滅菌後にグルコースオキシダーゼの生物活性をほとんど増大させないことも結論付けられた。グルコースオキシダーゼに対する硫酸亜鉛の最大質量比100において、正規化相対活性は0.2%未満であり、活性を維持できないことを実証した。滅菌されなかった試料の場合、硫酸亜鉛は活性の不活化を実証した。グルコースオキシダーゼに対する硫酸亜鉛の質量比10~100における凍結試料の場合、活性レベルは10%未満まで低下した。室温で維持された試料は5%を遥かに下回る活性を示した。これらの結果は、グルコースオキシダーゼと結合された硫酸亜鉛を用いては、ETO滅菌に続いてグルコースオキシダーゼ活性を維持又は増大することができないことを実証する。
実施例2:エチレンオキシド滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するトレハロースの効果
【0060】
未滅菌グルコースオキシダーゼをトレハロースと混合することにより、安定化型混合物を調製した。凍結乾燥粉末の形態を成す未滅菌グルコースオキシダーゼ(Aspergillus Niger, G7141)はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。1mg/mLのトレハロースのワーキング溶液を脱イオン(DI)水中で調製した。未滅菌粉末の形態を成すトレハロースをSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、10.0mg/mL、及び100.0mg/mLのワーキング溶液をDI水中で調製した。
【0061】
ワーキンググルコースオキシダーゼ溶液の1mLアリコートを、調製された濃度毎に1mLのワーキングトレハロース溶液と一緒に2mLガラスバイアルに添加した。このことは質量当たりの質量ベースで、それぞれグルコースオキシダーゼに対するトレハロースの質量比0.001、0.01、0.1、1.0、10.0、及び100.0をもたらした。ワーキングトレハロース溶液を含まない、それぞれ1mLのワーキンググルコースオキシダーゼ溶液を含有する4バイアルの対照試料を調製した。
【0062】
バイアルのそれぞれをキャップし、シェーカートラップ上に置くことにより溶液の混合を保証し、凍結し、そして数日間にわたって凍結乾燥させることによりバイアル内に粉末を生成した。次いでETO滅菌を試料群に対して約1時間にわたって(例えば1時間のETOガス滞留時間で)ほぼ55℃の温度で、そして平均通気時間12時間で実施した。第2試料群にはETO滅菌を施さず、これを室温で維持した。第3試料群にはETO滅菌を施さず、これを-15℃で凍結した。
【0063】
滅菌処置に続いて、それぞれの試料群を例1に記載されたように生物活性に関して試験した。
【0064】
図9は、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するトレハロースの効果を示すグラフである。グルコースオキシダーゼの活性は、それぞれの試料の測定された活性を、室温における純粋グルコースオキシダーゼ対照試料の測定値で割り算し、そして100で掛け算してパーセンテージをもたらすことにより、正規化相対活性として表される。純粋グルコースオキシダーゼは製造業者の容器から得、滅菌しなかった。
【0065】
図9に示されているように、トレハロースを受容しない滅菌済みグルコースオキシダーゼ試料は、対照試料(例えば滅菌されておらず、室温で維持されるか又は凍結された試料)と比較して、正規化相対活性のかなり大幅な低下を示した。室温対照試料の正規化相対活性は100%であった。凍結試料の正規化相対活性は89%であった。トレハロースを含まない滅菌済み試料の正規化相対活性はそれぞれほぼ9.8%及び7.7%であった。したがって、ETO滅菌が、未滅菌試料と比較してグルコースオキシダーゼの生物活性のほぼ90%の低下を招くことが結論付けられた。トレハロースで処理され室温で維持された未滅菌試料の正規化相対活性は82%から96%まで様々であり、そして-15℃で凍結された状態で維持された正規化相対活性は79%から111%まで様々であった。GOxに対するトレハロースの質量が0.001、0.01、及び0.1であるときの室温試料によって、正規化相対活性レベルの低減が示され、その活性は82%~86%であった。トレハロースの質量比がより高いと、この群の活性に対する影響はほとんど示されなかった。凍結試料は、GOxに対するトレハロースの質量が0.001、0.01である場合に活性の低下を示した。
【0066】
グルコースオキシダーゼに対するトレハロースの質量比が0.001及び0.01の滅菌済み試料は、トレハロースを含まない滅菌済み試料と比較して、生物活性の増大をほとんど示さなかった。グルコースオキシダーゼに対するトレハロースの質量比が0.1、1、10及び100の滅菌済み試料は、トレハロースを含まない滅菌済み試料と比較して、生物活性の増大を示した。図示のように、質量比が0.1及び1の滅菌済み試料の生物活性はそれぞれ、約18%~20%、及び約28%~31%であった。図示のように、質量比が10及び100の滅菌済み試料の生物活性はそれぞれ、約50%~68%、及び約51%~58%であった。したがって、グルコースオキシダーゼに対するトレハロースの質量比が約10~100のトレハロースが、トレハロースを有しない試料と比較して、ETO滅菌後にグルコースオキシダーゼの生物活性を増大させることが結論付けられた。さらに、これらの結果は、粉末形態を成すGOxと非共有結合で結合された適宜の生体適合性の組成物によって、EtO滅菌に続いてGOxのグルコース活性を維持できることを実証した。
実施例3:エチレンオキシド滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するソルボースの効果
【0067】
未滅菌グルコースオキシダーゼをソルボースと混合することにより、安定化型混合物を調製した。凍結乾燥粉末の形態を成す未滅菌グルコースオキシダーゼ(Aspergillus Niger, G7141)はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。1mg/mLのグルコースオキシダーゼのワーキング溶液を脱イオン(DI)水中で調製した。未滅菌粉末の形態を成すソルボースをSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、10.0mg/mL、及び100.0mg/mLのワーキング溶液をDI水中で調製した。
【0068】
ワーキンググルコースオキシダーゼ溶液の1mLアリコートを、調製された濃度毎に1mLのワーキングソルボース溶液と一緒に2mLガラスバイアルに添加した。このことは質量当たりの質量ベースで、それぞれグルコースオキシダーゼに対するソルボースの質量比0.001、0.01、0.1、1.0、10.0、及び100.0をもたらした。ワーキングソルボース溶液を含まない、それぞれ1mLのワーキンググルコースオキシダーゼ溶液を含有する4バイアルの対照試料を調製した。
【0069】
バイアルのそれぞれをキャップし、シェーカートラップ上に置くことにより溶液の混合を保証し、凍結し、そして数日間にわたって凍結乾燥させることによりバイアル内に粉末を生成した。次いでETO滅菌を試料群に対して約1時間にわたって(例えば1時間のETOガス滞留時間で)ほぼ55℃の温度で、そして平均通気時間12時間で実施した。第2試料群にはETO滅菌を施さず、これを室温で維持した。第3試料群にはETO滅菌を施さず、これを-15℃で凍結した。
【0070】
滅菌処置に続いて、それぞれの試料群を例1に記載されたように生物活性に関して試験した。
【0071】
図10は、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するソルボースの効果を示すグラフである。グルコースオキシダーゼの活性は、それぞれの試料の測定された活性を、室温における純粋グルコースオキシダーゼ対照試料の測定値で割り算し、そして100で掛け算してパーセンテージをもたらすことにより、正規化相対活性として表される。純粋グルコースオキシダーゼは製造業者の容器から得、滅菌しなかった。
【0072】
図10に示されているように、ソルボースを受容しない滅菌済みグルコースオキシダーゼ試料は、対照試料(例えば滅菌されておらず、室温で維持されるか又は凍結された試料)と比較して、正規化相対活性のかなり大幅な低下を示した。室温対照試料の正規化相対活性は100%であった。凍結試料の正規化相対活性は101%であった。ソルボースを含まない滅菌済み試料の正規化相対活性はそれぞれほぼ9.4%及び7.9%であった。したがって、ETO滅菌が、未滅菌試料と比較してグルコースオキシダーゼの生物活性のほぼ90%の低下を招くことが結論付けられた。
【0073】
ソルボースで処理され、-15℃で凍結された状態で維持された未滅菌試料の正規化相対活性は、質量比0.01、0.1、1及び10で増強効果を示し、正規化相対活性値はすべて120%を上回った。この効果は質量比100で、活性値が112%と若干減少した。室温試料は、質量比1及び10で活性値がそれぞれ135%及び115%と、増強効果を示した。
【0074】
グルコースオキシダーゼに対するソルボースの質量比が0.0001及び0.01の滅菌済み試料は、ソルボースを含まない滅菌済み試料と比較して、生物活性の増大をほとんど示さなかった。グルコースオキシダーゼに対するソルボースの質量比が0.1、1、10及び100の滅菌済み試料は、ソルボースを含まない滅菌済み試料と比較して、生物活性の増大を示した。図示のように、質量比が0.1及び1の滅菌済み試料の生物活性はそれぞれ、約20%~31%、及び約14%~15%であった。図示のように、質量比が10及び100の滅菌済み試料の生物活性はそれぞれ、約68%~77%、及び約67%~87%であった。したがって、グルコースオキシダーゼに対するソルボースの質量比が約10~100のソルボースが、ソルボースを有しない試料と比較して、ETO滅菌後にグルコースオキシダーゼの生物活性を増大させることが結論付けられた。さらに、これらの結果は、粉末形態を成すGOxと非共有結合で結合された適宜の生体適合性の組成物によって、EtO滅菌に続いてGOxのグルコース活性を維持できることを実証した。
実施例4:エチレンオキシド滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するジエチルアミノエチル-デキストランの効果
【0075】
未滅菌グルコースオキシダーゼをジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン)と混合することにより、安定化型混合物を調製した。凍結乾燥粉末の形態を成す未滅菌グルコースオキシダーゼ(Aspergillus Niger, G7141)はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。1mg/mLのグルコースオキシダーゼのワーキング溶液を脱イオン(DI)水中で調製した。未滅菌粉末の形態を成すDEAE-デキストランをSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から得た。0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、10.0mg/mL、及び100.0mg/mLのワーキング溶液をDI水中で調製した。
【0076】
ワーキンググルコースオキシダーゼ溶液の1mLアリコートを、調製された濃度毎に1mLのワーキングDEAE-デキストラン溶液と一緒に2mLガラスバイアルに添加した。このことは質量当たりの質量ベースで、それぞれグルコースオキシダーゼに対するDEAE-デキストランの質量比0.001、0.01、0.1、1.0、10.0、及び100.0をもたらした。DEAE-デキストラン溶液を含まない、それぞれ1mLのワーキンググルコースオキシダーゼ溶液を含有する4バイアルの対照試料を調製した。
【0077】
バイアルのそれぞれをキャップし、シェーカートラップ上に置くことにより溶液の混合を保証し、凍結し、そして数日間にわたって凍結乾燥させることによりバイアル内に粉末を生成した。次いでETO滅菌を試料群に対して約1時間にわたって(例えば1時間のETOガス滞留時間で)ほぼ55℃の温度で、そして平均通気時間12時間で実施した。第2試料群にはETO滅菌を施さず、これを室温で維持した。第3試料群にはETO滅菌を施さず、これを-15℃で凍結した。
【0078】
滅菌処置に続いて、それぞれの試料群を例1に記載されたように生物活性に関して試験した。
【0079】
図11は、ETO滅菌前後のグルコースオキシダーゼ活性に対するDEAE-デキストランの効果を示すグラフである。グルコースオキシダーゼの活性は、それぞれの試料の測定された活性を、室温における純粋グルコースオキシダーゼ対照試料の測定値で割り算し、そして100で掛け算してパーセンテージをもたらすことにより、正規化相対活性として表される。純粋グルコースオキシダーゼは製造業者の容器から得、滅菌しなかった。
【0080】
図11に示されているように、DEAE-デキストランを受容しない滅菌済みグルコースオキシダーゼ試料は、対照試料(例えば滅菌されておらず、室温で維持されるか又は凍結された試料)と比較して、正規化相対活性のかなり大幅な低下を示した。室温対照試料の正規化相対活性は100%であった。凍結試料の正規化相対活性は98%であった。DEAE-デキストランを含まない滅菌済み試料の正規化相対活性はそれぞれほぼ10%及び9%であった。したがって、ETO滅菌が、未滅菌試料と比較してグルコースオキシダーゼの生物活性のほぼ90%の低下を招くことが結論付けられた。
【0081】
DEAE-デキストランで処理され、-15℃で凍結された状態で維持された未滅菌試料の正規化相対活性は、質量比0.01、0.1、1及び10で増強効果を示し、正規化相対活性値はすべて117%を上回った。この効果は質量比100で、活性値が108%と若干減少した。室温試料は、質量比0.1、1、10及び100で活性値がそれぞれ111、123、113、及び110%と、増強効果を示した。
【0082】
グルコースオキシダーゼに対するDEAE-デキストランの質量比が0.001及び0.01の滅菌済み試料は、DEAE-デキストランを含まない滅菌済み試料と比較して、生物活性の増大をほとんど示さなかった。すべての値は11%を下回った。すべての値が11%を下回る、DEAE-デキストランを含まない滅菌済み試料と比較して、滅菌を施されたGOxに対するDEAE-デキストランの質量比が0.1のものには、すべての値が15%を上回り、活性の保持の増大が観察された。グルコースオキシダーゼに対するDEAE-デキストランの質量比が10及び100である滅菌済み試料は、DEAE-デキストランを含まない滅菌済み試料と比較して、生物活性の増大を示した。図示のように、質量比が10及び100の滅菌済み試料の生物活性はそれぞれ、約45%~95%、及び約48%~80%であった。したがって、グルコースオキシダーゼに対するDEAE-デキストランの質量比が約10~100のDEAE-デキストランが、DEAE-デキストランを有しない試料と比較して、ETO滅菌後にグルコースオキシダーゼの生物活性を増大させることが結論付けられた。さらに、これらの結果は、粉末形態を成すGOxと非共有結合で結合された適宜の生体適合性の組成物によって、EtO滅菌に続いてGOxのグルコース活性を維持できることを実証した。
実施例5:安定化型ePTFE基体対非安定化型ePTFE基体の時間依存安定性
【0083】
4000mgのD-(+)-グルコース (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を40mlのダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)中に溶解することにより、1000mg/dLのグルコース貯蔵溶液を調製した。10mLの貯蔵溶液を希釈して最終溶液体積100mLを生成することによって、100mg/dLのワーキンググルコース溶液を製造した。
【0084】
固定化されたグルコースオキシダーゼを有しないePTFEメンブレン [GORE(登録商標) 精密濾過媒体(GMM-406), W.L. Gore & Associates, Inc., Flagstaff, AZ]を対照として、純粋イソプロピルアルコール中に浸漬することにより、透明なメンブレンを得た。メンブレンをDI水中で湿潤し約5分間にわたって置いた。ePTFEメンブレンを次いでOakton WD-35643-12溶解酸素計の先端上に置いた。次いで、先端をワーキンググルコース溶液中に入れ、静止させておいた。パーセント酸素計は3分間にわたって30秒ごとに記録し、次いで4分後、6分後、及び8分後に再び記録した。
【0085】
図12は、
図12のプロット900に示されているように、グルコース溶液内に浸漬された固定化グルコースオキシダーゼを有しないePTFEメンブレン内部に固定された酸素プローブに関するパーセント溶解酸素の時間依存安定性を示している。図示のように、経時的に、パーセント溶解酸素は約59%から68%まで様々であり、溶解酸素レベルに対するePTFEの影響がないことを示している。したがってグルコース酸化は発生しなかった。このことは、グルコースオキシダーゼ活性が低い(又はない)ことを示す。
【0086】
この実施例において上で調製したグルコース貯蔵溶液を使用して、安定化型グルコースオキシダーゼを有するePTFEメンブレン[GORE(登録商標) 精密濾過媒体(GMM-406), W.L. Gore & Associates, Inc., Flagstaff, AZ]を調製した。メンブレンを10センチメートル(10cm)直径のプラスチック刺繍枠上に取り付け、先ず100%イソプロピルアルコール(IPA)中に約5分間(5min)にわたって浸漬し、次いで1対1の比(1:1)でIPAで希釈されたLUPASOL(登録商標) (LUPASOL(登録商標) 無水ポリエチレンイミン、BASF Aktiengesellschaft,ドイツ国)のPEI溶液中に約15分間にわたって浸漬した。LUPASOL(登録商標) 無水PEIを約4パーセント(4%)の濃度まで希釈し、そしてIPAの添加前にpH9.6に調節した。約15分間(15min)にわたってePTFE材料をPEI溶液中に浸漬するのに続いて、材料を溶液から取り出し、そしてpH9.6で脱イオン(DI)水中で15分間(15min)にわたって濯いだ。ePTFE材料上に残ったPEIをグルタルアルデヒド(Amresco Inc., Solon, OH)の0.05%水溶液でpH9.6で15分間(15min)にわたって架橋した。メンブレンをPEIの0.5水溶液中にpH9.6で15分間(15min)にわたって入れ、そしてDI水中でpH9.6で15分間(15min)にわたって再び濯ぐことによって、追加のPEIを添加した。グルタルアルデヒドとPEI層との反応の結果として形成されたイミンを、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)溶液(5gが1LのDI水中に溶解される、pH9.6)で15分間(15min)にわたって還元し、そしてDI水中で30分間(30min)にわたって濯いだ。
【0087】
メンブレンを0.05%水性グルタルアルデヒド溶液中にpH9.6で15分間(15min)にわたって浸漬し、これに続いてPEIの0.5%水溶液中にpH9.6で15分間(15min)にわたって浸漬することによって、第2PEI層を加えた。次いでメンブレンをDI水中でpH9.6で15分間(15min)にわたって濯いだ。結果として生じたイミンをNaCNBH3の溶液(5gを1LのDI水に溶解する、pH9.6)中で15分間(15min)にわたってメンブレンを浸漬し続いてDI水中で30分間(30min)にわたって濯ぐことによって還元した。
【0088】
上記工程を繰り返すことにより第3PEI層をメンブレンに被着させた。結果として生じた構造は多孔質疎水性フルオロポリマー系ePTFE材料を含んだ。このフルオロポリマー系材料の露出された間質表面の実質的にすべてには親水性架橋型ポリマー系被膜が設けられている。
【0089】
この構造に追加のPEI層を配置するための準備をする際には、ポリマー系被膜に中間化学層を取り付けた。硫酸デキストラン(Amersham Pharmacia Biotech,英国)及び塩化ナトリウムの溶液(0.15gの硫酸デキストラン及び100gのNAClを1LのDI水中に溶解する、pH3)中に構造を60℃で90分間(90min)にわたって培養し、そしてDI水中で15分間(15min)にわたって濯ぐことによって、中間イオン電荷層を形成した。
【0090】
構造をPEIの0.3%水溶液(pH9)中に約45分間(45min)にわたって入れ、続いて塩化ナトリウム溶液(50gのNaClを1LのDI水中に溶解した)中で20分間(20min)にわたって濯ぐことによって、中間層にPEIの「キャッピング層」を取り付けた。最終DI水濯ぎを20分間(20min)にわたって実施した。
【0091】
G.T. Hermanson, Bioconjugate Techniques, 第3版, 2013に記載されたものに基づくグルコースオキシダーゼ共役プロトコルを、アミン粒子のタンパク質、例えばグルコースオキシダーゼとのグルタルアルデヒド架橋のために実施した。上記メンブレンの3つの試料をそれぞれ活性化緩衝液(0.1mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0)中で3回濯ぎ、次いで試料を室温で、カップリング緩衝液(25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0)中の0.5%グルタルアルデヒド中で1時間にわたって混合した。試料を取り出して新しい容器内に入れ、そしてカップリング緩衝液で3回濯いだ。グルコースオキシダーゼを試料に0.01mg/mLで添加し、そして室温で4時間にわたって混合した。次いでエタノールアミンを各試料毎に濃度0.2Mで添加することにより、試料を室温で30秒間にわたって混合させながら、未反応グルタルアルデヒドを急冷した。最後に、試料をカップリング緩衝液中で3回濯ぎ、2M塩化ナトリウム中で一晩洗浄し、2%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中で15分間にわたって超音波処理し、次いで安定化分子を添加する前に、新しい容器内でカップリング緩衝液中に残した。
【0092】
ePTFEメンブレンを次いでOakton WD-35643-12溶解酸素濃度計の先端上に置いた。次いで、先端をワーキンググルコース溶液中に入れ、静止させておいた。パーセント溶解酸素濃度計は5分間にわたって30秒ごとに記録し、次いで7分後に再び記録した。
【0093】
図12は、
図12のプロット910に示されているように、グルコースオキシダーゼを有するePTFEメンブレン内部に固定された酸素プローブに関するパーセント溶解酸素の時間依存安定性を示している。図示のように、パーセント溶解酸素レベルが約62%から9%に低下しているのに伴い、約4分後にパーセント溶解酸素の低下が観察された。したがって、グルコース酸化が発生した。このことは、反応が発生するのに伴って反応物(例えばグルコース及び酸素)が容易に消費されることに基づいて、グルコースオキシダーゼ活性が高いことを示している。
実施例6:PEI被覆された、グルコースオキシダーゼと共役されたePTFE
【0094】
ePTFEメンブレン[GORE(登録商標) 精密濾過媒体(GMM-406), W.L. Gore & Associates, Inc., Flagstaff, AZ]の被膜付き構造に、PEIのベース被膜を被着し、そしてこれを実施例5に基づいて調製されたグルコースオキシダーゼで安定化させた。
実施例7:DEAE-デキストラン又はソルボースで処理された構造
【0095】
実施例6に基づく被膜付き構造を下記化合物の溶液に晒すことにより、表面に結合されたグルコースオキシダーゼの活性に対するこれらの構造の安定化効果を評価した。濃度0.05g/ml、0.005g/ml、0.0005g/ml、0.00005g/ml、0.000005g/ml、及び0.0000005g/mlのDI水中のDEAE-デキストラン(10,000分子量、デンマーク国PK Chemicals)、及び濃度0.05g/ml、0.005g/ml、0.0005g/ml、0.00005g/ml、0.000005g/ml、及び0.0000005g/mlのDI水中のソルボース(180.16分子量、Sigma Aldrich, St. Louis, MO)。これらの溶液のそれぞれは本明細書中では「処理溶液」と呼ばれる。EtO滅菌に続くグルコースオキシダーゼの活性に対するこれらの種々の濃度の効果をUI/mlで表した。
【0096】
特定の酵素含有構造を特定の処理溶液に晒すために、構造の区分を切断して6mmのディスクにした。個々のディスクをビーカー内に入れ、そして処理溶液中の構造を完全にカバーするのに十分な50マイクロリットル(50μl)の処理溶液を各ディスクに添加した。各構造を1時間にわたって周囲条件に晒し、周囲の蒸発が溶液のほとんどを除去するようにしておいた。次いで試料を滅菌処置に晒す前に凍結乾燥させた。
実施例8:PEIで被覆されたePTFE基体上に固定化されたGOxと非共有結合で結合されたグルコースオキシダーゼに対するDEAE-デキストラン及びソルボースの質量比の効果
【0097】
EtO滅菌の準備に際して、実施例7の各構造をタワーDUALPEEL(R) セルフシールパウチ(Allegiance Healthcare Corp., McGaw Park, Ill.)内に入れ密封した。1時間(1hr)、EtOガス滞留時間3時間(3hr)、設定点温度セ氏45度(45℃)、通気時間12時間(12hr)のコンディショニング条件下で、エチレンオキシド滅菌を実施した。
【0098】
全体的には3つの試料に関してデータをそれぞれ(n=3)収集した。試料の欠陥に起因して2つの試料はそれぞれ(n=2)、
図13のグラフに示されているように、10000 DEAE-デキストランのデータ及び1 ソルボースのデータを生成した。
図13に示されているように、プロット1000は、DEAE-デキストランを混和することによって、具体的にはDEAE-デキストラン中に基体を浸漬することによって、ePTFE基体上に固定化されたグルコースオキシダーゼを、ETO滅菌のために安定化させ得ることを実証する。
図13に示されているように、プロット1010は、ソルボースを混和することによって、具体的にはソルボース中に基体を浸漬することによって、ePTFE基体上に固定化されたグルコースオキシダーゼをETO滅菌のために安定化させ得ることを実証する。
【0099】
それぞれの試験において6mmのメンブレンディスクに関するアッセイで検出されたmU/mlを変換することにより、基体体積の関数としての各試料の酵素活性を推定した。アッセイは試料毎に50μlの溶液を利用した。これは、基体材料の単位質量当たりの「真の」酵素活性を表す。ディスク毎の試料体積は次のように、すなわち、厚さがほぼ34μm、及び有効空隙が0.87の6mmディスクと推定された。この結果、ディスク毎のePTFEの試料体積は0.000125cm
3(3mm* 3mm* 3.1415* .034mm /(1-.87)
となった。試料の酵素活性を下記表1に示す。
【表1】
【0100】
本出願の発明を全般的に、そして具体的な実施態様に関連して上記のように説明してきた。当業者には明らかなように、開示の範囲を逸脱することなしに、種々の改変及び変更を実施態様において加えることができる。したがって、本発明の改変形及び変更形が添付の請求項及びこれらの同等物の範囲に含まれるのであれば、実施態様はこれらの改変形及び変更形に範囲が及ぶものとする。
(態様)
(態様1)
安定化型医療デバイスであって、
少なくとも部分的に導電性である基体と、
前記基体の表面の少なくとも一部にわたって配置された安定化型酵素層と、
を含み、
前記安定化型酵素層が、
少なくとも1種の生物活性検知成分と、
前記生物活性検知成分と非共有結合で結合された少なくとも1種の安定化成分とを含み、前記生物活性検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm
3
~約1,000,000U/cm
3
の生物活性検出レベルを有している、
安定化型医療デバイス。
(態様2)
前記生物活性検知成分が、トレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド、及びソルボースから成る群から選択される、態様1に記載の医療デバイス。
(態様3)
前記生物活性検知成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの約45%~約95%以内にある、態様1に記載の医療デバイス。
(態様4)
前記生物活性検知成分の、エチレンオキシド滅菌後の生物活性検出レベルが、エチレンオキシド滅菌前の生物活性検出レベルの約50%~約90%以内にある、態様1に記載の医療デバイス。
(態様5)
前記安定化型酵素層内の前記生物活性検知成分に対する安定化成分の質量比が、約0.1~約10,000である、態様1に記載の医療デバイス。
(態様6)
前記安定化型酵素層内の前記生物活性検知成分に対する安定化成分の質量比が、約10~約50である、態様1に記載の医療デバイス。
(態様7)
前記生物活性検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm
3
~約1,000,000U/cm
3
の生物活性検出レベルを有している、態様1に記載の医療デバイス。
(態様8)
前記基体が導電性ePTFEを含む、態様1に記載の医療デバイス。
(態様9)
前記生物活性検知成分が、患者の体内のグルコースオキシダーゼのレベルを検知するように構成されている、態様1に記載の医療デバイス。
(態様10)
安定化型医療デバイスを製造する方法であって、前記方法が、
少なくとも1種の安定化成分を少なくとも1種の検知成分と混合することにより、安定化型混合物を形成することと、
導電性基体に前記安定化型混合物を塗布することにより、前記基体の少なくとも一部に安定化型酵素層を形成することと、
前記基体にエチレンオキシド滅菌プロセスを施すことと、
を含み、前記検知成分の、滅菌後の生物活性検出レベルが、滅菌前の生物活性検出レベルの約45%~約95%以内にある、
安定化型医療デバイスを製造する方法。
(態様11)
前記検知成分が、トレハロース、ジエチルアミノエチル-デキストラン、及びソルボースから成る群から選択される、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記検知成分の、滅菌後の生物活性検出レベルが、滅菌前の生物活性検出レベルの約40%~約90%以内にある、態様10に記載の方法。
(態様13)
前記安定化成分と前記検知成分とを約0.1~約10,000の質量比で混合する、態様10に記載の方法。
(態様14)
前記安定化成分と前記検知成分とを約10~約50の質量比で混合する、態様10に記載の方法。
(態様15)
前記検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm
3
~約1,000,000U/cm
3
の生物活性検出レベルを有している、態様10に記載の方法。
(態様16)
前記検知成分が、前記生物活性検知成分のエチレンオキシド滅菌に続いて、前記基体で約25U/cm
3
~約1,000,000U/cm
3
の生物活性検出レベルを有している、態様10に記載の方法。