(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】健康な人の免疫細胞培養液を用いたNK細胞の含有量を増進させる方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230724BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
C12N5/0783
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2021574934
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2020007660
(87)【国際公開番号】W WO2020256355
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0071257
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516352954
【氏名又は名称】ラ ジョンチャン
【氏名又は名称原語表記】RA, Jeong Chan
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ラ ジョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ サンギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ソンイク
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/099093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0783
C07K 16/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患
者由来末梢血液単核球(PBMC)を、
CD3抗体0.025~0.05%及び、正常人由来末梢血液単核球(PBMC)を1~3継代で培養し、細胞を除去した培養液5~30%を
含む培地で培養する
工程を含む、NK細胞含有量を増進させる方法
であって、
ここで、前記正常人由来末梢血液単核球(PBMC)を1~3継代で培養し細胞を除去した培養液は、(i)正常人由来末梢血液単核球(PBMC)を抗CD3抗体、抗CD16抗体及び抗CD56抗体を含む培地で培養した培養液及び(ii)正常人由来末梢血液単核球(PBMC)を抗CD3抗体及び抗CD56抗体を含む培地で培養した培養液を混合した培養液であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記正常人は、満16~40歳の疾病のない状態の人であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞の細胞含有量を増進するための培養方法に関し、より詳細には、免疫細胞を正常人の免疫細胞培養液を含有する培地で培養する段階を含むNK細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体では毎日数多くの癌細胞が生成されており、生成された癌細胞は体内の免疫システムにより死滅する。このような免疫システムにおいて最大の役割を担う細胞が、他ならぬ自然殺害細胞(Natural Killer cell、以下、‘NK細胞’という。)である。
【0003】
NK細胞は人体において自然免疫の重要因子であって、主に、腫瘍細胞及びウイルスに感染された細胞を除去する重要な役割を有する。健康な人の体内に存在するNK細胞の比率は約5~20%と知られている。しかし、癌患者のNK細胞比率は健康な人に比べて低く、しかもNK細胞の効率が低下していると知られている(J.Chen,J et al.,Int.J.Clin.Exp.Pathol.7:8304,2014)。癌患者では、このようなNK細胞数及び機能の低下によって正常の免疫システムが活性化されず、癌へと悪化する。
【0004】
体内に存在する大部分のNK細胞は、正常状態では非活性化状態(inactivated state)として存在するが、実際にNK細胞を治療用途に用いるためには、活性化されたNK細胞が必要であることから、正常血液から或いはNK細胞が非活性化された患者の血液からNK細胞を活性化させる研究が活発に行われている。
【0005】
体外でNK細胞を活性化させる場合、NK細胞は高い細胞毒性(cytotoxicity)を示すことが確認され、これは、NK細胞を用いた免疫細胞治療の可能性を裏付けている。体外で活性化されたNK細胞を種々の癌種類、特に、白血病のような血液癌(blood cancer)患者を対象に同種骨髄移植後に投与し、その治療効果を確認した報告がある(Blood Cells Molecules & Disease,33: p261-266,2004)。
【0006】
一方、上記のようなNK細胞の治療剤としての可能性にもかかわらず、体内に存在するNK細胞の数は多くないため、NK細胞を治療用途に使用できる程度に十分の効能を維持しながら大量で生産する技術が必須である。しかし、NK細胞は、試験管内で(in-vitro)大量増殖及び培養がし難い。このため、実際に有用なレベルにNK細胞を増幅、培養する技術に関心が集まっており、多くの研究が進行されているが、まだ臨床に適用可能なレベルには至らずにいる。
【0007】
NK細胞の培養には、既存にT細胞の増殖/活性に使用していたIL-2だけでなく、IL-15(J.Immunol.,167(6):p3129-3138,2001;Blood,106(1):p158-166,2005、大韓民国公開特許公報第2009-0121694号)、LPS(J.Immunol.,165(1):p139-147,2000)、CD3を刺激するOKT-3抗体(Experimental Hematol.,29(1):p104-113,2001)を利用する研究が行われてきたが、このような研究は、以前から用いられてきたIL-2使用に対する変形及び発展形態で新しい増殖物質を見出すことであるだけで、画期的な増殖方法を提示できずにいる。一般に、IL-2或いはその他のサイトカイン及び化合物(chemical)を用いたNK細胞培養によっては初期NK細胞に比べて3~10倍程度しか細胞数を増加せしめないと知られている。
【0008】
癌患者のNK細胞を健康な人のNK細胞と同じ性能に戻す研究、及び健康なドナーの免疫細胞を使用(他家)しようとする研究が進行中であるが(J.Chen,J et al.,Int.J.Clin.Exp.Pathol.7:8304,2014;E.G.Iliopoulou et al.,Cancer Immunol.Immunother.doi:10.1007/s00262-010-0904-3,2010;S.R.Yoon et al.,Bone Marrow Transplant.,doi:10.1038/bmt.2009.304,2010)、このような免疫細胞治療剤の製造時に、多い種類のインターロイキンの添加及びPBMC段階でのNK細胞選択的な分類などが必要であり、面倒である。
【0009】
そこで、本発明者らは、より経済的に且つ効率的にNK細胞培養時にNK細胞数を増加させる方法を開発しようと鋭意努力した結果、健康な人の免疫細胞培養液を患者由来免疫細胞培養時に添加する場合、NK細胞含有量が増加することを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、NK細胞の細胞含有量を増進するための方法を提供することにある。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、癌患者又は正常人由来末梢血液単核球(PBMC)を、正常人の免疫細胞培養液及びCD3抗体を含有する培地で培養する段階を含む、NK細胞含有量を増進させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】健康な人の免疫細胞培養液で培養された癌患者の免疫細胞実験群と対照群(健康な人の免疫細胞培養液を添加しないで培養した免疫細胞)のリンパ球細胞数を相対比較した結果を示すグラフである。
【0013】
【
図2】
図2、表1は健康な人の免疫細胞培養液で培養された癌患者の免疫細胞実験群と対照群(健康な人の免疫細胞培養液を添加しないで培養した免疫細胞)のFACS結果を示す図である。
【0014】
【
図3】健康な人の免疫細胞培養液で培養された癌患者の免疫細胞を癌細胞と共培養した実験群と対照群(健康な人の免疫細胞培養液を添加しないで培養した免疫細胞と癌細胞を共培養)の細胞毒性を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特に断りのない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0016】
本発明では、癌患者のNK細胞を、健康な人のNK細胞と同じ性能に戻すために、免疫細胞においてNK細胞の含有量を増進できる方法を開発しようとし、若い健康人由来免疫細胞を培養した培養液を癌患者由来の免疫細胞を培養することに使用する場合、リンパ球細胞の細胞数が増加し、免疫細胞においてNK細胞の細胞分率が高まることを確認した。
【0017】
したがって、本発明は、癌患者又は正常人由来末梢血液単核球(PBMC)を、正常人の免疫細胞培養液及びCD3抗体を含有する培地で培養する段階を含む、NK細胞含有量を増進させる方法に関する。
【0018】
本発明において、‘正常人’は、満16~40歳の診断された疾病のない健康な人を意味する。
【0019】
本発明において、‘免疫細胞’は、リンパ球系免疫細胞を意味し、好ましくは、末梢血液単核球(PBMC)に含まれている免疫細胞を意味する。
【0020】
本発明において、前記‘免疫細胞’は、末梢血液単核球(PBMC)をP1~P3継代培養した免疫細胞を使用することができ、好ましくは、NK細胞の増殖を刺激するために、NK細胞増殖刺激物質で刺激された免疫細胞を使用することができる。
【0021】
前記‘NK細胞増殖刺激物質’としてはCD3抗体、CD16抗体、CD56抗体、IL-2、IL-15、LPS、OKT-3抗体などを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明において、正常人の免疫細胞培養液は、正常人由来末梢血液単核球(PBMC)をP1~P3培養して生成された培養液であることを特徴とし、前記末梢血液単核球(PBMC)の培養は、CD3、CD16及びCD56からなる群から選ばれるサイトカインの抗体を追加して培養することを特徴とする。
【0023】
本発明において、前記免疫細胞培養液は、細胞の除去された(cell-free)培養液であることを特徴とする。
【0024】
本発明において、前記免疫細胞は、癌患者又は正常人由来免疫細胞であることを特徴とし得る。
【0025】
本発明において、前記免疫細胞は、癌患者又は正常人由来末梢血液単核球(PBMC)をCD3抗体存在下に培養することを特徴とし得る。
【0026】
本発明において、前記正常人の免疫細胞培養液は、培地に1~50%濃度で添加されることを特徴とし、好ましくは、5~30%濃度で添加されてよく、より好ましくは、10~20%濃度で添加されてよい。
【0027】
本発明において、免疫細胞培養のとき、P2培養時に前記正常人の免疫細胞培養液を添加することを特徴とし得る。
【0028】
本発明の一態様では、NK細胞の標的となる慢性骨髄性白血病細胞株であるK562細胞と健康な人の免疫細胞培養液を10%添加して培養した免疫細胞とを、それぞれ、1:3、1:5及び1:10の割合に混ぜて共培養し、癌細胞に対する免疫細胞の細胞毒性(Cytotoxicity)を確認し、その結果、K562細胞と免疫細胞との比率1:3、1:5及び1:10のそれぞれに対して、K562に対する健康な人の免疫細胞培養液を添加した実験群の細胞毒性(Cytotoxicity)が、対照群の細胞毒性(Cytotoxicity)に比べて高いという事実を確認した(
図3)。
【0029】
本発明に係る方法によって製造されたNK細胞及びこれを含む組成物は、腫瘍及び感染性疾患の治療に使用することができる。本発明に係る方法で製造されたNK細胞は、固形癌(solid cancer)及び血液癌を含むあらゆる種類の腫瘍に適用可能である。固形癌とは、血液癌とは違い、臓器(organ)で塊状に形成された癌を意味し、大部分の臓器で発生する癌がそれに当たる。本発明に係るNK細胞を用いて治療可能な腫瘍は、特に制限はなく、胃癌、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、子宮頸癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌、リンパ腫などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明で用いられる感染性疾患は、ウイルス又は病原菌の感染によって発生する疾患であり、呼吸器及び血液、皮膚接触などにより伝染して感染され得るいかなる疾患も含む概念である。このような感染性疾患の非制限的な例としては、B型及びC型肝炎、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV)感染、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)感染、ウイルス性呼吸器疾患、インフルエンザー、コロナウイルス感染などがあるが、これに制限されるものではない。
【0031】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものとして解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0032】
実施例1:若くて健康な人の免疫細胞を培養した培養液の製造
1-1:PBMC(末梢血液単核球)分離
25歳の診断された疾病のない健康な人の血液50mlを、DPBSを用いて1(血液):1(PBS)に希釈し、希釈した血液20mlを、15mlのフィコール(Ficoll)(GE Healthcare)が含まれているチューブに添加した後、400gで45分間遠心分離し、バフィーコート(Buffy coat)層に分布している細胞を回収し、回収した細胞を40mlのPBSと混合した後、400g、5分間遠心分離を行い、上澄液を除去後に、分離したPBMC細胞数を確認した。
【0033】
1-2:免疫細胞培養液の製造
P0培養:1-1で分離したPBMCを均等に分け、2個のT75フラスコでKBM501培地(Kohijin bio,cat.No.1625015)を用いて培養したが、培養時に、2個のフラスコともに0.025%のCD3抗体(BD Pharmingen,Cat.No566685)とCD56抗体(BD Pharmingen,Cat.No559043)を添加し、いずれか一方のフラスコ(CD16+フラスコ)には0.15%のCD16抗体(BD Pharmingen,Cat.No555404)を添加し、培養1日目及び3日目にCD16抗体をさらに添加した。
【0034】
培養は、CO2インキュベーター(CO2濃度5.0%)、37℃条件で培養し、以降の培養はいずれも同じ条件で行った。培養2日目に各フラスコに培地10% FBSを添加し、培養5日目に継代培養を行った。
【0035】
P1培養:P0培養で回収した細胞を各T175フラスコに追加した。このとき、培養液は捨てないでそのままT175フラスコに入れた(フラスコ1:CD16添加用、フラスコ2:CD16不添加用)。この時、各フラスコに0.05%のCD3抗体をさらに添加し、KBM501培地(Kohijin bio,cat.No.1625015)を用いて培養した。P1培養1日目に各フラスコにCD56抗体(BD Pharmingen,Cat.No559043)を添加し、CD16+フラスコに0.2%のCD16抗体をさらに添加した。培養2日目に各フラスコに培地及び1%のFBSを追加した。培養3日目に各フラスコに0.12%のCD56さらに添加し、CD16+フラスコに0.2%のCD16抗体をさらに添加した。培養4日目に各フラスコに培地及び1%のFBSをさらに添加し、培養8日目に両フラスコの培養液を回収して合わせた後、NK細胞培養に使用した。
【0036】
実施例2:癌患者のNK細胞培養
2-1:PBMC(末梢血液単核球)分離
満39歳の脳腫瘍診断患者の血液50mlをDPBSを用いて1(血液):1(PBS)に希釈し、希釈した血液20mlを、15mlのフィコールが含まれているチューブに添加した後、400g、5分間遠心分離し、バフィーコート層に分布している細胞を回収し、回収した細胞を40mlのPBSと混合した後、400g、5分間遠心分離を行い、上澄液を除去後に、分離したPBMC細胞数を確認した。
【0037】
2-2:NK細胞培養
P0培養:2-1で分離したPBMCを均等に分け、2個のT75フラスコでKBM501培地(Kohijin bio,cat.No.1625015)を用いて培養したが、培養時に、2個のフラスコともに0.025%のCD3抗体(BD Pharmingen,Cat.No566685)及び0.075%のCD56抗体(BD Pharmingen,Cat.No559043)を添加し、いずれか一方のフラスコ(CD16+フラスコ)には0.15%のCD16抗体(BD Pharmingen,Cat.No555404)を添加し、培養1日目及び3日目に0.015%のCD16抗体をさらに添加した。
【0038】
培養は、CO2インキュベーター(CO2濃度5.0%)、37℃条件で培養し、以降の培養はいずれも同じ条件で行った。培養2日目に各フラスコに培地10%のFBSを添加し、培養5日目に継代培養を行った。
【0039】
P1培養:P0培養で回収した細胞を各T175フラスコに追加した。この時、培養液は捨てないでそのままT175フラスコに入れた(フラスコ1:CD16添加用、フラスコ2:CD16不添加用)。この時、各フラスコにKBM501培地及び0.05%のCD3抗体をさらに添加して培養した。P1培養1日目に各フラスコに0.012%のCD56抗体(BD Pharmingen,Cat.No559043)を添加し、CD16+フラスコに0.2%のCD16抗体をさらに添加した。培養2日目に各フラスコに培地及び1%のFBSを追加した。培養3日目に各フラスコに0.12%のCD56抗体をさらに添加し、CD16+フラスコにCD16抗体をさらに添加した。培養4日目に各フラスコに培地及び1%のFBSをさらに添加し、培養5日目に継代培養を行った。
【0040】
P2培養:P1培養で回収した細胞及び培養液をそのまま一つのKBM502B(KOHJIN BIO,Cat.No1602502B)に入れた。ここに10%のFBS及び実施例1で得た健康な人の免疫細胞培養液をそれぞれ10%、15%及び20%の濃度で追加し、7日間培養後に細胞を回収した。
【0041】
実施例3:合計免疫細胞数及びNK細胞分率の測定
実験群は、実施例2の方法で培養した免疫細胞であり、対照群としては、健康な人の免疫細胞培養液を添加しないで培養した免疫細胞を使用した。
【0042】
癌患者由来免疫細胞数を、顕微鏡及びヘモサイトメーター(Hemocytometer)を用いて測定し、NK細胞分率をFACSアッセイ(BD FACSVerse,BD Bioscience)により確認した(FITC-CD3/PE-CD16、56)。
【0043】
その結果、
図1及び表1に示すように、健康な人の免疫細胞培養液を10%、15%及び20%の濃度でそれぞれ添加して培養した実験群ではいずれも、細胞数が対照群に比べて高いことを確認した。
【0044】
【0045】
なお、
図2及び表2に示すように、健康な人の免疫細胞培養液を10%、15%及び20%の濃度でそれぞれ添加して培養した実験群ではいずれも、NK細胞分率が対照群に比べて高いことを確認した。
【0046】
【0047】
実施例4:癌細胞に対する細胞毒性(Cytotoxicity)測定
実験群は、実施例2の方法で培養した健康な人の免疫細胞培養液を添加して得られた免疫細胞であり、対照群としては、健康な人の免疫細胞培養液を添加しないで培養した免疫細胞を使用した。
【0048】
細胞毒性は、NK細胞の標的となる慢性骨髄性白血病細胞株であるK562細胞(Public Health England,89121407)と、健康な人の免疫細胞培養液を10%添加して培養した免疫細胞とを、それぞれ1:3、1:5及び1:10の割合に混ぜ、4時間、10%のFBSの添加されたIMDM(Gibco,12440053)を用いて共培養を行い、癌細胞に対する細胞毒性(Cytotoxicity)を確認した。
【0049】
7-AAD/CFSE細胞媒介性細胞毒性アッセイキット(Cell-Mediated Cytotoxicity Assay Kit)(Cayman,600120)の構成品の一つであるCFSE液を用いて癌細胞だけを染色後に、それぞれの比率によって細胞を混ぜた後、V底96ウェルプレート(V-bottom 96-well plate)(Nunc,249935)を用いて共培養を行った。4時間共培養後に、キット構成品である7-AAD液を用いて死んだ細胞を表示した。結果分析は、FACS機器(BD FACSVerse,BD Bioscience)を用いて、CFSE染色された癌細胞のうち、7-AADの染色された死んだ細胞を確認し、その分率を確認した。
【0050】
キットを用いた細胞毒性分析は、キットのメーカーが推薦するプロトコルを基本的に遵守した。
【0051】
その結果、
図3及び表3に示すように、K562細胞と免疫細胞との比率1:3、1:5及び1:10のそれぞれに対して、K562に対して、健康な人の免疫細胞培養液を添加して培養した免疫細胞(実験群)の細胞毒性(Cytotoxicity)が、健康な人の免疫細胞培養液を添加しないで培養した免疫細胞(対照群)の細胞毒性(Cytotoxicity)よりも高いという事実を確認した。
【0052】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、癌患者だけでなく、遺伝的に癌に脆弱な人又は老人のNK細胞を含む免疫細胞の増殖率を高めることができ、NK細胞分率及び細胞殺害能も高めることができる。
【0054】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施の態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点が明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。