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特許7318022NTC薄膜サーミスタ及びNTC薄膜サーミスタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】NTC薄膜サーミスタ及びNTC薄膜サーミスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/04 20060101AFI20230724BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230724BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230724BHJP
   H01C 17/075 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01C7/04
B81C1/00
B81B3/00
H01C17/075
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021576754
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020068864
(87)【国際公開番号】W WO2021004957
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】102019118299.9
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スタンデル, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イーレ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ミード, クリストル リーザ
(72)【発明者】
【氏名】バーナート, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフィ, セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴラベリィ, マルコ
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-335731(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164570(WO,A1)
【文献】特開昭61-245502(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207676(WO,A1)
【文献】特開平11-345705(JP,A)
【文献】特開2021-155906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/04
B81C 1/00
B81B 3/00
H01C 17/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1薄膜電極(3a)と、
少なくとも1つのNTC薄膜(2)と、
少なくとも1つの第2薄膜電極(3b)と、を有するNTC薄膜サーミスタ(1)であって、
前記NTC薄膜サーミスタ(1)は、第1及び第2薄膜電極(3a、3b)を複数有し、前記第1薄膜電極(3a)と前記第2薄膜電極(3b)との間には、それぞれ1つのNTC薄膜(2)が設けられており、
前記第1薄膜電極(3a)は、前記NTC薄膜サーミスタ(1)の第1側において前記NTC薄膜(2)から突出しており、前記第2薄膜電極(3b)は、前記第1側において前記NTC薄膜(2)よりも短く、
前記第2薄膜電極(3b)は、前記NTC薄膜サーミスタ(1)の第1側に対向する第2側において前記NTC薄膜(2)から突出しており、前記第1薄膜電極(3a)は、前記第2側において前記NTC薄膜(2)よりも短く、
前記NTC薄膜(2)は、単結晶又は多結晶の機能性セラミックを有し、当該セラミックは、スピネル構造又はペロブスカイト構造を有する、NTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項2】
前記NTC薄膜(2)は、元素Mn、Ni、Zn、Fe、Co、Cu、Zr、Y、Cr、Ca又はAlのうちの少なくとも1つを有する請求項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項3】
前記薄膜電極(3a、3b)は、導電性セラミックからなる請求項1又は2に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項4】
前記薄膜電極(3a、3b)は、Cu、Pt、Cr、Ni、Ag、Pd、Au、Tiのような金属、これらの元素の混合物又は合金の一つ又は複数の層からなる請求項1又は2に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項5】
前記第1及び第2薄膜電極(3a、3b)の前記NTC薄膜(2)からの突出領域において、前記電極は、各々の下方に位置するNTC薄膜(2)から突出した第1又は第2薄膜電極(3a、3b)に密接している請求項1~のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項6】
前記第1及び第2薄膜電極(3a、3b)の前記NTC薄膜(2)からの突出領域において、前記電極は、下方に位置するNTC薄膜(2)から突出した第1又は第2薄膜電極(3a、3b)よりも短い請求項1~のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項7】
前記第1及び第2薄膜電極(3a、3b)の前記第1及び第2側における突出区画は、メタライゼーションペースト又は別の導電性媒体により補強可能である請求項1~のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項8】
前記NTC薄膜(2)は、前記第1及び第2側に垂直で互いに対向する第3及び第4側に前記薄膜電極(3a、3b)から突出している請求項1~のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項9】
前記NTC薄膜(2)は、前記薄膜電極(3a、3b)からの突出領域において、下方にあるNTC薄膜(2)よりも短い請求項1~のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項10】
前記NTC薄膜サーミスタ(1)は、キャリア材料(4)に配置されている請求項1~のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項11】
前記キャリア材料(4)には、回路もしくは微小電気機械システムが集積されているか、又は前記キャリア材料(4)は、電子デバイスの構成部分である請求項10に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項12】
前記NTC薄膜(2)は、3μmよりも薄い請求項1~11のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項13】
前記薄膜電極(3a、3b)は、10μmよりも薄い請求項1~12のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項14】
全体が、100μmよりも薄い請求項1~13のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項15】
基板又は印刷回路基板への集積に適している請求項1~14のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)。
【請求項16】
印刷回路基板と、
請求項1~15のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)とを有するレイアウトであって、
前記NTC薄膜サーミスタ(1)は、前記印刷回路基板に集積されている
レイアウト。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)を複数有するレイアウトであって、
前記NTC薄膜サーミスタ(1)は、マトリクスに配置されている
レイアウト。
【請求項18】
非導電性のキャリア材料(4)を提供するステップa)と、
少なくとも1つの第1薄膜電極(3a)を成膜するステップb)と、
少なくとも1つのNTC薄膜(2)を成膜するステップc)と、
少なくとも1つの第2薄膜電極(3b)を成膜するステップd)と、を含み、
前記ステップc)の前又は後に前記ステップb)を実施することができるNTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法であって、
前記NTC薄膜サーミスタ(1)は、第1及び第2薄膜電極(3a、3b)を複数有し、前記第1薄膜電極(3a)と前記第2薄膜電極(3b)との間には、それぞれ1つのNTC薄膜(2)が設けられており、
前記第1薄膜電極(3a)は、前記NTC薄膜サーミスタ(1)の第1側において前記NTC薄膜(2)から突出しており、前記第2薄膜電極(3b)は、前記第1側において前記NTC薄膜(2)よりも短く、
前記第2薄膜電極(3b)は、前記NTC薄膜サーミスタ(1)の第1側に対向する第2側において前記NTC薄膜(2)から突出しており、前記第1薄膜電極(3a)は、前記第2側において前記NTC薄膜(2)よりも短く、
前記NTC薄膜(2)は、単結晶又は多結晶の機能性セラミックを有し、当該セラミックは、スピネル構造又はペロブスカイト構造を有する、NTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法。
【請求項19】
前記ステップb)において、下方にNTC薄膜(2)のない第1領域にも前記第1薄膜電極(3a)を成膜し、
前記ステップd)において、下方にNTC薄膜(2)のない第2領域にも前記第2薄膜電極(3b)を成膜し、
前記第1領域及び第2領域は、互いに重ならず、なおかつ、まず第1薄膜電極(3a)を成膜し、続いてNTC薄膜(2)を成膜し、続いて第2薄膜電極(3b)を成膜し、続いてNTC薄膜(2)を再度成膜し、続いて第1薄膜電極(3a)を再度成膜する手順を含む
請求項18に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法。
【請求項20】
CSD法により前記NTC薄膜(2)を成膜する請求項18又は19に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法。
【請求項21】
PVD法又はCVD法により前記第1及び第2薄膜電極(3a、3b)、並びにNTC薄膜(2)を成膜する請求項1820のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法。
【請求項22】
別の方法ステップにおいて、前記NTC薄膜サーミスタ(1)に焼結プロセスを施す請求項1821のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法。
【請求項23】
別の方法ステップにおいて、第1及び第2薄膜電極(3a、3b)、並びにNTC薄膜(2)からなる積層体を前記キャリア材料(4)から分離するか、又は研削プロセス又はエッチングプロセスにより前記キャリア材料(4)を薄くする、もしくは完全に除去する請求項1822のいずれか1項に記載のNTC薄膜サーミスタ(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NTC薄膜サーミスタ及びNTC薄膜サーミスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端末機器にできるだけ多くの電子デバイスを配置し、端末機器の性能を高めるために、電子デバイス、コンポーネント及びセンサーのサイズを小さくすることが望まれる。特に、端末機器のインテリジェンス及び信頼性を向上させるために、端末機器に取り付けられるセンサーの数が増えている。
【0003】
NTCサーミスタは、負の温度係数を持つ抵抗器であり、電子機器の温度測定用センサーとして多用されている。米国特許出願公開第20090179732号の特許明細書には、NTCサーミスタ用として有利なセラミックが提示されている。一例では、多層構造を有する典型的なNTC抵抗器が示され、セラミックを厚み20~50μmの薄膜に加工し、完成した多層NTCサーミスタは、3つの空間方向すべてにおいて数ミリメートル膨張している。このようなサイズは多くの応用にとって適切ではない。サイズを大幅に小さくすれば、応用される他のデバイスのためにスペースを確保できるだけでなく、新たな用途や分野を開拓できる。
【0004】
NTCサーミスタは、例えば非常に薄く構成されることで、可撓性を有し、さらに、機械的な破壊を伴わない曲げが可能であるという特性を持つことができる。また、膨張の小さいNTCサーミスタを実現すれば、NTCサーミスタの熱質量を低減し、さらにNTCサーミスタの応答時間と感度を改善する可能性がある。
【0005】
そのため、すべての空間方向においてサイズの小さいNTCサーミスタ、特に扁平なNTCサーミスタを製造することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第20090179732号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、有利なNTC薄膜サーミスタ、及びNTC薄膜サーミスタの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明が上記の目的を達成するための解決手段は、請求項1に記載されたNTC薄膜サーミスタ及び別の独立項に記載されたNTC薄膜サーミスタの製造方法である。より多くの有利な実施手段、潜在的なレイアウト及び可能な方法ステップは、他の請求項を参照されたい。
【0009】
少なくとも1つの第1薄膜電極と、少なくとも1つのNTC薄膜と、少なくとも1つの第2薄膜電極とからなるNTC薄膜サーミスタを開示する。電極及び機能性のNTC層を薄膜として構成することにより、特に厚みの点で膨張が非常に小さいNTCサーミスタを実現することができる。ここで、薄膜は、特に、ミクロン範囲内の固体物質からなる層として理解できる。代替的又は追加的に、薄膜は、厚みが10μm未満の層として理解できる。本発明によるNTC薄膜サーミスタは、好ましくは、薄膜電極及び薄膜のみを有し、他のタイプの層を有しないものであってもよい。
【0010】
NTCサーミスタのサイズを大幅に小さくすることで、応用される他のデバイスのためにスペースを確保できるだけでなく、新たな用途や分野を開拓することができる。NTCサーミスタは、例えば非常に薄く構成されることで、可撓性を有し、さらに、機械的な破壊を伴わない曲げが可能であるという特性を持つことができる。また、膨張の小さいNTCサーミスタを実現すれば、NTCサーミスタの熱質量を低減し、さらにこのNTCサーミスタを有するセンサーの応答時間と感度を改善することができる。
【0011】
NTC薄膜は、単結晶又は多結晶の機能性セラミックを有してもよく、それらの結晶はスピネル構造又はペロブスカイト構造を有してもよい。このような材料は、特徴的な非線形温度係数を有することで正確な温度測定を実現できる。また、ペロブスカイト構造は、スピネル構造よりも電気特性の高温で受ける悪影響が小さいため、特にペロブスカイト構造を有する機能性セラミックは、高温での使用に適している。
【0012】
NTC薄膜は、元素Mn及びNiと、元素Zn、Fe、Co、Cu、Zr、Y、Cr、Ca、Alのうちの少なくとも1つとを少なくとも有してもよい。これらの元素は、スピネル構造又はペロブスカイト構造を有する機能性セラミックの形成に適している。機能性セラミックにおける各元素の割合を変更することにより、NTC薄膜のB値を調整でき、応用に関連する温度範囲で温度係数の傾きが非常に急になり、これにより正確な温度測定を実現する。
【0013】
また、薄膜電極は、導電性セラミックからなってもよい。導電性セラミックは、金属などの代替材料よりも機能性セラミックへの付着度が高い。また、導電性セラミックからなる薄膜電極は、熱膨張係数が機能性セラミックと類似しているため、温度変化時にNTC薄膜サーミスタにおける機械的歪みを回避することができる。
【0014】
代替的に、薄膜電極は、Cu、Pt、Cr、Ni、Ag、Pd、Au、Tiのような金属又は混合物、金属間化合物、及びこれらの元素の合金の一つ又は複数の層で構成されていてもよい。金属で構成される薄膜電極は導電性が高いため、NTC薄膜サーミスタは電気的接続抵抗がさらに小さくなる。
【0015】
一実施形態では、第1及び第2薄膜電極は、NTC薄膜の一方の表面に配置されてもよい。これにより、NTC薄膜が第1電極と第2電極との間に配置されている実施形態と比較すると、NTC薄膜サーミスタをより薄く構成することができる。また、電極が一方の表面に配置されている実施形態では、測定電流は、NTC薄膜に垂直ではなく、当該膜に沿って流れる。機能性のNTC薄膜の表面の膨張は、NTC薄膜の厚みの数倍である可能性があるので、このように実施するNTC薄膜サーミスタは、より高い測定精度を示すことができる。
【0016】
また、第1及び第2薄膜電極は、一方の表面にインターディジタル櫛形構造として配置されてもよい。一般的な櫛形構造では、電極の相互距離が同じであるため、所定の測定電圧で、電極間に同じ電界が作用する。したがって、NTC薄膜サーミスタが備える電極がインターディジタル櫛形構造を有する場合に、印加された測定電圧に対して、NTC薄膜サーミスタの測定電流は、有利な線形を有する。
【0017】
別の実施形態では、NTC薄膜サーミスタは、第1及び第2薄膜電極を複数有し、第1薄膜電極と第2薄膜電極との間には、それぞれ1つのNTC薄膜が設けられてもよい。このような実施形態では、測定電流は、NTC薄膜の表面と垂直になる。したがって、第1及び第2電極がNTC薄膜の一方の表面に位置するNTC薄膜サーミスタと比較すると、NTC薄膜サーミスタ全体の横方向の膨張を大幅に減らすことができる。複数のNTC薄膜を互いに積層することでNTC薄膜サーミスタの測定精度をさらに向上させることができる。
【0018】
また、第1及び第2薄膜電極のNTC薄膜からの突出領域において、これらの電極は、下方に位置する同様にNTC薄膜から突出した第1又は第2薄膜電極に密接してもよい。上方に位置する薄膜電極の形状は、下方に位置する薄膜電極の形状と合わせてもよい。成膜された薄膜電極により、NTC薄膜電極からの突出領域における表面特性又は表面トポグラフィーは、凹凸や傾斜を有することができる。薄膜電極を、下方に位置する薄膜電極と形状を合わせて密接させることにより、この凹凸や傾斜を実現し、隣接する薄膜電極の間の電気的接触面を大きくするとともに密着性を高める。このように、薄膜電極の各々の電気的接触を確保する。多層デバイスでは、特に電極層が多層デバイスのエッジでデバイスと同一平面上にある場合に、内部の電極層を電気的に接触させる際に困難が生じる傾向がある。このような多層デバイスは、電極層の多層デバイスのエッジに露出した横断面のみが、他の電気的接触のための接触面として用いることができる。電極層の横断面(特に薄膜電極の場合)が非常に小さい場合があるため、デバイスの抵抗が予想外に高くなったり、個々の電極層が完全に電気的に絶縁されたままになったりする可能性がある。薄膜電極をNTC薄膜から突出させ、形状を合わせて互いに密接させることにより、個々の薄膜電極への電気的接触に寄与する。
【0019】
また、第1及び第2薄膜電極のNTC薄膜からの突出領域において、これらの電極は、下方に位置するNTC薄膜から突出した第1又は第2薄膜電極よりも短くてもよい。このような構造案に基づいて、薄膜電極によって階段形状が形成され、デバイスは厚み方向に徐々に細くなる。ここで、各薄膜電極は、階段の1段を構成する。各薄膜電極は、いずれも階段の段のように接触表面を形成するので、各々は、いずれも直接電気的に接触することができる。このように、NTCセンサーの内部に設けられている内電極が電気的に絶縁されたまま動作しなくなるリスクを低減する。薄膜電極を下方に位置する薄膜電極に対してさらに短くすることにより、個々の薄膜電極及びNTCセンサー全体の接触表面を大きくすることができる。このように、下方に位置する薄膜抵抗は、電気的接触のための接触表面として使用できる表面がより大きくなる。NTC薄膜センサーの接触表面を大きくすることによりデバイスの接触抵抗を低減する。温度の上昇とともに抵抗が低下するというNTC抵抗器の特徴に基づいて、低接触抵抗は、高温の範囲での正確な測定に特に寄与する。
【0020】
また、第1薄膜電極は、NTC薄膜サーミスタの第1側においてNTC薄膜から突出し、第2NTC薄膜電極は、当該第1側においてNTC薄膜よりも短く、第2薄膜電極は、NTC薄膜サーミスタの当該第1側に対向する第2側においてNTC薄膜から突出し、第1薄膜電極は、当該第2側においてNTC薄膜よりも短くしてもよい。このような構造案に基づいて、NTC薄膜サーミスタの第1側及び第2側に階段形状が形成され、デバイスは厚み方向に徐々に細くなる。一方の電極を両側のうちの一方側においてNTC薄膜よりも長くすることにより、これらの個々の薄膜電極は、この側において重なってともに接触されることができる。他方の電極がこの側においてNTC薄膜よりも短いので、電極間にNTC薄膜が常に位置し、これによって、第1電極と第2電極との間の短絡を防ぐ。
【0021】
第1及び第2薄膜電極の第1及び第2側における突出区画は、メタライゼーションペースト又は別の導電性媒体により補強可能である。薄膜電極は、その突出区画において複数の層が重なっても、これらの区画において非常に薄くて脆い。例えば、電極を補強するとともに電極への接触を簡単化するためにメタライゼーションペーストを重なり区画に成膜してもよい。
【0022】
また、NTC薄膜は、第1及び第2側に垂直で互いに対向する第3及び第4側において薄膜電極から突出してもよい。非導電性のNTC薄膜の突出により、第1及び第2薄膜電極がエッジ領域においてもそれぞれにパッケージされることを確保する。このように、第1及び第2電極は、相互距離が小さくても短絡しないことを確保できる。
【0023】
NTC薄膜は、薄膜電極からの突出領域において、下方に位置するNTC薄膜よりも短くてもよい。これにより、NTC薄膜の突出側にNTC薄膜サーミスタの傾斜エッジが形成される。NTC薄膜サーミスタの切頭角錐状の構造案により、低重心を提供し、デバイスがより安定して支持される。
【0024】
NTC薄膜サーミスタは、追加のキャリア材料に配置されてもよい。当該キャリア材料は、NTC薄膜サーミスタの機械的安定性を向上させることができる。特に、デバイスの輸送や積載の点から、損害を避けるために、高機械的安定性は、重要な要素となっている。したがって、デバイスは、キャリア材料に配置してもよい。
【0025】
キャリア材料は、第1電極として構成されてもよい。このため、キャリア材料として厚い導電性のセラミック層又は安定した金属層を使用できる。このように、キャリア材料を別に提供する必要はない。
【0026】
当該キャリア材料には、回路又は微小電気機械システムが集積されてもよく、又はキャリア材料は、電子デバイスの構成部分であってもよい。このように、NTC薄膜サーミスタは、集積により電気コンポーネントと接続又は接触することができる。シリコンなどの半導体からなる電気コンポーネントのほか、セラミックからなる電気コンポーネントは、その熱膨張係数がNTC薄膜サーミスタと類似しているため、NTC薄膜サーミスタの集積に非常に適している。
【0027】
また、NTC薄膜サーミスタに保護層が成膜されてもよく、又は、デバイス全体が保護層に埋め込まれてもよく、これにより、機械的、化学的及び他の環境要因からデバイスを保護する。当該保護層の材料として、ガラス、シリコーン又は他のポリマーが好適である。
【0028】
一つの有利な実施案では、NTC薄膜は、3μmよりも薄くてもよい。このように、複数のNTC薄膜を含む場合でも、薄いNTC薄膜サーミスタの構造案を実現できる。NTC薄膜は、電極間の短絡を避けるために十分な厚みを有する必要があることも指摘すべきである。したがって、典型的な電圧範囲及び材料として、0.01μmを超える厚みを採用することを提案する。
【0029】
別の実施形態では、薄膜電極は、10μmよりも薄くてもよい。薄膜電極が厚くなりすぎると、薄いNTC薄膜サーミスタの構造案を実現できない可能性がある。
【0030】
NTC薄膜サーミスタ全体は、100μmよりも薄くてもよい。これにより、単一の非常に薄い薄膜の利点をデバイス全体に移すことを確保し、NTC薄膜サーミスタ全体は、非常に薄く維持される。
【0031】
NTC薄膜サーミスタは、基板又は印刷回路基板への集積に適したものであり得る。基板及び印刷回路基板は、通常、厚みが数100μmしかないことが多い。本発明によるNTC薄膜サーミスタは、比較的薄くすることが可能であるため、SMDデバイスとして基板又は印刷回路基板に取り付けることができるだけでなく、集積することもできる。
【0032】
有利なレイアウトは、印刷回路基板と、印刷回路基板に集積されているNTC薄膜サーミスタとを有してもよい。したがって、NTC薄膜サーミスタの印刷回路基板への集積により、印刷回路基板における(他のデバイスに使用可能な)スペースを節約できるだけでなく、印刷回路基板の機能を拡張できる。
【0033】
別の有利なレイアウトでは、複数のNTC薄膜サーミスタは、一つのマトリクスに配置されてもよい。特に、必要な表面の点から、NTC薄膜サーミスタの膨張が小さいため、NTC薄膜サーミスタは、空間分解温度測定を実行する必要のあるセンサーへの応用に非常に適している。このため、複数のNTC薄膜サーミスタをマトリクスに並べて配置する。
【0034】
本願の別の側面は、NTC薄膜サーミスタの製造方法に関する。当該薄膜サーミスタは、特に、前述の薄膜サーミスタであってもよい。
【0035】
前記方法は、
非導電性のキャリア材料を提供するステップa)と、
少なくとも1つの第1薄膜電極を成膜するステップb)と、
少なくとも1つのNTC薄膜を成膜するステップc)と、
少なくとも1つの第2薄膜電極を成膜するステップd)と、を含む。
【0036】
非導電性のキャリア材料を他の層を形成するための平坦な基面とする必要がある場合がある。少なくとも1つのNTC薄膜及び少なくとも1つの第1及び第2薄膜電極の製造が完了しないと、NTC薄膜サーミスタが動作できない。
【0037】
キャリア材料に回路又は微小電気機械システムが集積されてもよく、又はキャリア材料は、電子デバイスの構成部分であってもよい。このように、電気コンポーネントにNTC薄膜サーミスタを追加することができる。集積式の構造により、電気コンポーネントがNTC薄膜サーミスタと直接接続又は電気的に接触できる。セラミックからなる電気コンポーネントは、その熱膨張係数がNTC薄膜サーミスタと類似しており、NTC薄膜サーミスタを良好に付着させることができるため、キャリア材料として特に好適である。シリコンのような半導体からなる電気コンポーネント、回路及び微小電気機械システムは、同様にキャリア材料として使用できる。
【0038】
前記方法では、第1及び第2薄膜電極は、NTC薄膜の一方の表面に配置されてもよい。このような方法により、NTC薄膜が第1電極と第2電極との間に配置されている構造と比較すると、NTC薄膜サーミスタをより薄く構成することができる。2つの薄膜電極が一つの表面に位置するレイアウトでは、測定電流は、当該層を垂直に通過するのではなく、NTC薄膜に沿って流れるようになる。NTC薄膜サーミスタの、NTC薄膜の厚みの数倍であり得る横方向の膨張に基づいて、このようなNTC薄膜サーミスタは、より高い測定精度を示すことができる。
【0039】
前記方法の別の実施形態では、第1薄膜電極と第2薄膜電極との間にそれぞれ1つのNTC薄膜を設ける。方法のこの実施形態により構成されるNTC薄膜サーミスタでは、測定電流は、NTC薄膜をその表面に垂直に通過するように流れる。したがって、このような薄膜サーミスタは、その横方向の膨張が測定精度にあまり影響を及ぼさない点で、第1及び第2電極がNTC薄膜の一方の表面に位置するNTC薄膜サーミスタと異なる。したがって、この方法によるNTC薄膜サーミスタの膨張は、はるかに小さくなり得る。また、NTC薄膜を互いに積層することでNTC薄膜サーミスタの測定精度を改善することができる。
【0040】
前記方法は、ステップb)において、下方にNTC薄膜のない第1領域にも第1薄膜電極を成膜し、ステップd)において、下方にNTC薄膜のない第2領域にも第2薄膜電極を成膜するように実施してもよく、第1領域と第2領域は、互いに重ならない。前記方法は、第1薄膜電極層を成膜し、続いてNTC薄膜を成膜し、続いて第2薄膜電極を成膜し、続いてNTC薄膜を再度成膜し、続いて第1薄膜電極を再度成膜する手順を含む。
【0041】
このように、薄膜電極のNTC薄膜から突出した2つの領域において、薄膜電極は、下方の第1又は第2薄膜電極と形状を合わせるように位置する。このような方法に基づいて製造されたNTC薄膜サーミスタは、NTC薄膜サーミスタの内部に設けられている薄膜電極との電気的接触の信頼性がより高くなり、これによって、デバイス全体をより強固にするという利点がある。
【0042】
また、ステップb)及びd)において、この2つの領域に下方の第1又は第2薄膜電極よりも短い薄膜電極を成膜してもよい。これによって、第1又は第2領域にそれぞれ階段形状を形成し、各階段の段は、薄膜電極からなる。薄膜電極が下方の薄膜電極よりも短くなる程度によっては、薄膜電極の接触面を大きくし、さらに、接触抵抗を低減することができる。このようなNTC薄膜サーミスタは、NTCの抵抗が温度の上昇とともに低下するため、高温での正確な温度測定に特に好適である。
【0043】
上述の方法の各々では、CSD法(Chemical Solution Deposition)によりNTC薄膜を成膜してもよい。このため、幾何形状及び使用する材料に応じて、CSD法であるスピンコート、ディップコート又はインクジェット印刷を使用してもよい。インクジェット印刷は、NTC薄膜に対してモジュール調整を行うことができ、調整性が高いという利点がある。
【0044】
代替的に、前記方法では、PVD法又はCVD法により第1及び第2薄膜電極だけでなくNTC薄膜を成膜してもよい。このように、すべての層を薄膜として構成することを確保できる。
【0045】
前記方法ステップのほか、別の方法ステップでは、NTC薄膜サーミスタに焼結プロセスを施してもよい。焼結プロセスにより、一般的に機能性セラミックとして存在するNTC薄膜に機械的負荷能力及び変形防止特性を付与する。また、一般に、堆積方法によりペロブスカイト構造又はスピネル構造を生成するには冷却操作が必要である。
【0046】
前記方法の後に、NTC薄膜サーミスタをキャリア材料から分離してもよいし、研削プロセスまたはエッチングプロセスによりキャリア材料を薄くし、或いは完全に除去してもよい。したがって、NTC薄膜サーミスタの各々について、NTC薄膜サーミスタの薄さと一定の機械安定性のどちらを優先するかを考慮できる。優先度によっては、キャリア材料の厚みを所望の程度に低減してもよいし、又はNTC薄膜サーミスタをキャリア材料から直接分離してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、模式的な図面を参照し、本発明を詳細に説明する。
【0048】
図1図1は、本発明の第1実施例の模式的な横断面図である。
図2図2は、キャリア材料を第1電極として用いる第2実施例の模式的な横断面図である。
図3図3は、第3実施例の模式的な横断面図である。
図4図4は、第3実施例の模式的な平面図である。
図5図5は、第4実施例の模式的な横断面図である。
図6図6は、第4実施例の斜視図である。
図7図7は、コンタクトパッドを追加した第4実施例の斜視図である。
【0049】
同一の要素、類似する又は明らかに同一の要素は、図面に同一の参照符号で示されている。図面及び図面におけるサイズ比は、縮尺どおりに描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、NTC薄膜サーミスタ1の横断面図である。キャリア材料4には、第1薄膜電極3aが設けられており、この第1薄膜電極には、NTC薄膜2が設けられており、このNTC薄膜には、第2薄膜電極3bが設けられている。
【0051】
本実施例では、キャリア材料4は、電気絶縁性でかつ平坦である。500℃よりも高い温度に達する可能性がある、薄膜の製造に使用可能な熱処理工程では、キャリア材料4は、一定の熱安定性を備える必要がある。キャリア材料4に適した絶縁性及び熱安定性のある材料は、多結晶又は単結晶セラミック、パッシベーションされた半導体、ポリマー又はガラスである。多結晶又は単結晶セラミックは、例えばYSZ、AlN、ZnO、アルミナ又はサファイアであってもよく、パッシベーションされた半導体は、例えばSiOxでパッシベーションされた単結晶シリコンであり、ポリマーは、例えばポリイミドである。
【0052】
キャリア材料4は、非常に薄く、1μm以上100μm以下の厚みを有することが好ましいが、かなり厚くなってもよい。ここ及び以下では、厚みは、積層方向、即ち、層の表面に垂直な方向における延伸を指す。第1薄膜電極3a、NTC薄膜2及び第2薄膜電極3bは、積層方向に重なっている。製造後にNTC薄膜サーミスタ1をキャリア材料4から分離してもよく、又はキャリア材料4を薄くしてもよい。このため、既知のエッチングプロセス又は研削プロセスを使用してもよい。
【0053】
また、キャリア材料4は、機能的特性を有し、例えば集積回路(IC)又は微小電気機械システム(MEMS)を含んでもよい。このように、NTC薄膜サーミスタ1を圧力センサー又は圧電センサーのような少なくとも1つの別の電気部品と接続し、さらに異なる機能を1つの電気部品に統合することができる。
【0054】
図1に示す実施例では、第1及び第2薄膜電極3a、3bは、アクティブなNTC薄膜2の上下に配置されている。薄膜電極3a、3bは、10μm未満の厚みを有するという非常に薄い実施案を採用することが好ましい。使用する材料によっては、薄膜電極3a、3bの形成には、PVD法、CVD法、CSD法又は電気めっき法のような薄膜向けの化学的及び物理的堆積プロセスが適している。電極は、一つ又は複数の層、また、同じ又は異なる材料で構成されてもよい。異なる電極及び電極層は、同じ材料で構成されてもよいが、これに限られない。電極に適した導電性の材料は、金属、合金、金属間化合物又は導電性セラミックである。金属は、例えばCu、Ni、Ag、Au、Pt、Mo又はWoであってもよい。合金は、例えばCr/Ni/Ag又はCr/Auであってもよい。金属間化合物は、ケイ化チタン、ケイ化ニッケル又はケイ化モリブデンであってもよい。導電性セラミックは、例えばLNO又はITOであってもよい。
【0055】
NTC薄膜2は、3μmよりも薄く、好ましくは、1μmよりも薄く、一つ又は複数の塗布工程及び熱処理工程により成膜される。NTC薄膜2に適した塗布法は、CSD法であり、例えば、スピンコート、ディップコート、スプレーコーティング又はインクジェット印刷により成膜する。同様に、PVD法によりNTC薄膜2を堆積してもよい。NTC薄膜2は、スピネル構造又はペロブスカイト構造を有する単相又は多相の機能性セラミックからなる。スピネル構造を有するNTC薄膜2に適した元素は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu及びZrである。例えば、NTC薄膜2として用いられるスピネル構造を有する機能性セラミックについて、適切な混合比は、80at%Mn及び20at%Niであってもよい。ペロブスカイト構造は、元素Y、Cr、Ca、Al及び/又はMnにより実現可能である。
【0056】
図2は、本発明の第2実施例を示し、図1における例と類似する。この例では、キャリア材料4においても、3つの層が重なって成膜されている。しかし、第1実施例と異なり、この例では、キャリア材料4が同時に第1電極又は底部電極でもある。第1電極としても用いられるキャリア材料4には、NTC薄膜2、第2薄膜電極3b及び保護層5が重なって成膜されている。
【0057】
本実施例では、キャリア材料4は、底部電極として使用するために十分な導電性を有する。適切な材料は、金属、合金又は高濃度ドープ半導体である。同様に、導電材料が塗布された絶縁体を使用してもよい。キャリア材料4は、特に導電性セラミックの形態で存在してもよい。このように、NTC薄膜サーミスタ1を、自体が導電性セラミックを有する別の電気部品と特に簡単に接続できる。これによって、異なる部品の2つ以上の機能を組み合わせて1つのデバイスに集積することができる。
【0058】
保護層5は、機械的、化学的及び他の環境要因からNTC薄膜サーミスタ1を保護する電気受動層である。NTC薄膜サーミスタ1の片側に保護層5を塗布する場合に、他の薄膜と同様の薄膜方法を使用してもよいが、特に、PVD法を使用してもよい。代替的に、NTC薄膜センサー2を薄膜に接着又は溶接してもよい。保護層5に適した材料は、ガラス、シリコーン又は他のポリマーである。保護層5は、必ずしも図2に示すようにNTC薄膜サーミスタ1の片側に成膜される必要はなく、NTC薄膜サーミスタ1を取り囲んでもよい。NTC薄膜サーミスタがキャリア材料4から剥離される場合又は非常に薄く構成された場合、NTC薄膜サーミスタ1全体が保護層5で取り囲まれていることが特に有利である。
【0059】
図3は、本発明の別の実施例を示し、図2における例と類似する。キャリア材料4には、3つの層が重なって積層されている。しかし、前の例と異なり、この例では、キャリア材料4は、導電性を有しないため、電極として機能しない。NTC薄膜2はキャリア材料4に成膜されている。第1及び第2薄膜電極3a、3bの両者は、NTC薄膜2に直接成膜されており、図3では、薄膜電極3a、3bが一体となって1つに見える。この例では、同様に、保護層5により環境要因から薄膜電極3a、3b及びNTC薄膜2を保護する。
【0060】
図4は、図3における実施例のように2つの電極がNTC薄膜2に配置されているNTC薄膜サーミスタ1の平面図である。第1及び第2薄膜電極3a、3bは、インターディジタル櫛形構造として配置されている。電極3a、3bの相互距離が同じであるため、測定電圧が印加される場合、薄膜電極3a、3bの間に同じ電界が作用する。したがって、NTC薄膜サーミスタ1が備える薄膜電極3a、3bがインターディジタル櫛形構造を有する場合、印加された測定電圧に対して、NTC薄膜サーミスタの測定電流は、有利な線形を有する。電極の構造は、NTC薄膜2への薄膜電極3a、3bの成膜中に直接シャドーマスクにより実現されてもよく、又はその後にフォトリソグラフィーにより実現されてもよい。NTC薄膜サーミスタ1の所望の抵抗及び構造により、薄膜電極3a、3bの別のレイアウトの応答特性は、より高くなる可能性がある。
【0061】
第1及び第2薄膜電極3a、3bをNTC薄膜2の一方の表面に配置することにより、厚みが50μm未満の極薄型のNTC薄膜サーミスタ1を実現することができる。また、測定電流が表面に沿って比較的遠く流れ、NTC薄膜2の垂直欠陥が測定電流にほとんど影響を与えないため、NTC薄膜2の品質に対する要求をより低くしてもよい。
【0062】
図5は、別の実施例の横断面図である。この例では、NTC薄膜サーミスタ1は、多層デバイスである。第1及び第2薄膜電極3a、3bは、非導電性のキャリア材料4に交互に成膜されており、これらの薄膜電極の間の各々に常に1つのNTC薄膜2が位置する。第1側及び第2側のエッジ領域において、薄膜電極3a、3bは、NTC薄膜2から突出するタイプと、NTC薄膜2よりも短いタイプがある。このようにして、同じタイプの薄膜電極3a、3bを簡単に接続するとともに、相手の薄膜電極との短絡を防止することができる。対応する薄膜電極3a、3bを互いの形状と合わせて密接させることで、隣接する薄膜電極の間の接触表面を大きくすることにより、電気的接触を改善し、薄膜電極のうちのいずれかが電気的に接触していないリスクを低減する。
【0063】
多層NTC薄膜サーミスタ1の内電極は、導電性セラミックからなることが好ましい。これは、導電性セラミックがセラミックの機能性のNTC薄膜2に良好に付着し、NTC薄膜サーミスタ1のアクティブ素子全体が完全にセラミックから構成されているからである。この場合、多層構造の最下方及び最上方の電極は、金属又は別の導電材料からなることが依然として好ましい。
【0064】
層構造及び突出に基づいてNTC薄膜サーミスタ1の第1側及び第2側に階段形状が形成されており、デバイスは厚み方向に徐々に細くなる。薄膜電極3a、3bのNTC薄膜2からの突出領域において、これらの薄膜電極は、下方に位置する薄膜電極3a、3bよりも短くてもよい。これにより、薄膜電極3a、3bの接触表面を大きくし、NTC薄膜サーミスタ1の接触抵抗を低減することができる。低接触抵抗を有するNTC薄膜サーミスタ1は、NTCの抵抗が温度の上昇とともに低下するため、高温の範囲での精確な温度測定に特に適用される。
【0065】
3つの層のタイプすべてが重なる中心の領域は、NTC薄膜サーミスタ1のアクティブ測定領域である。1つのタイプの薄膜電極のみとNTC薄膜2とが重なる領域は、測定に関係なく、できるだけ減少させるべきである。薄膜電極3a、3bが重なるエッジにおいて、電極を接触させることができる。
【0066】
図6は、NTC薄膜サーミスタ1の斜視図であり、このNTC薄膜サーミスタ1は、同様に、図5におけるNTC薄膜サーミスタ1のような多層構造を有し、キャリア材料4に配置されている。この実施例では、NTC薄膜2は、第1及び第2側に垂直で互いに対向する第3及び第4側において薄膜電極3a、3bから突出している。突出したNTC材料は、図6における第3及び第4側に位置する下向きの斜面を構成する。NTC薄膜2の突出により、第1及び第2薄膜電極3a、3bがエッジ領域においてもそれぞれにパッケージされることを確保する。このように、第1及び第2薄膜電極3a、3bは、相互距離が小さくても互いに短絡しないことを確保できる。複数の層が重なっても薄膜電極3a、3bはエッジにおいて非常に薄いため、金属ペースト、コンタクトパッド、シルクスクリーン印刷、薄膜方法又は電気めっきプロセスにより電極を補強することを提案する。図7には、コンタクトパッドを追加した図6に示すNTC薄膜サーミスタ1が示されている。
【0067】
薄膜電極3a、3bがNTC薄膜2の一方の表面に配置されている実施例と異なり、これらの実施例では、上記の層構造により、測定電流はNTC層を垂直に通過するように流れる。欠陥が測定電流に大きな影響を与えるため、NTC薄膜2の品質に対する要求が厳しくなる一方で、測定精度は、NTC薄膜2の表面のサイズとは無関係になる。したがって、層構造により実現される、基面の辺の長さが80~120μmであり、厚みが100μm未満のNTC薄膜サーミスタ1は、非常に薄いだけでなく、表面が小さい。
【0068】
このような表面の小さいセンサーは、例えば空間分解測定に適用できる。上記実施例の一つによるNTC薄膜サーミスタ1をマトリクスに複数配置すると、このレイアウトにより空間分解温度測定を行うことができる。また、このようなサイズの小さい電気デバイスは、他の電気デバイスとの接続又は他のデバイスへの集積に適している。特に、本発明によるNTC薄膜サーミスタ1を、一般的に厚みが数100μmしかない印刷回路基板に集積してもよく、印刷回路基板に取り付ける必要がない。
【符号の説明】
【0069】
1 NTC薄膜サーミスタ
2 NTC薄膜
3a 第1薄膜電極
3b 第2薄膜電極
4 キャリア材料
5 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7