(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】磁性材料で作製された真空容器を含む超伝導発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 55/02 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
H02K55/02
(21)【出願番号】P 2022500660
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 US2019040986
(87)【国際公開番号】W WO2021006881
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ケイガン,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】トレイ,デイヴィッド・アラン
(72)【発明者】
【氏名】パリス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バートンチェリ,ティチアンナ
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ミンチェン
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/068844(WO,A1)
【文献】特開2012-143051(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141421(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0197633(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1387302(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導発電機(114,200)であって、
シャフト(116)を介して回転するように構成されたアーマチュア(204,304)と、
前記アーマチュア(204,304)と同心に、かつ前記アーマチュア(204,304)から半径方向外側に配置された定常場(202,302)と、を含み、前記定常場(202,302)は、
超伝導界磁巻線(208,308)と、
前記アーマチュア(204,304)に面する内壁(322)と、対向する外壁(324)と、前記内壁(322)と前記外壁(324)とを結合する複数の側壁(328)と、を含む真空容器(306)であって、前記超伝導界磁巻線(208,308)が前記真空容器(306)内に配置されている、真空容器(306)と、
を含み、
前記内壁(322)は非磁性材料または常磁性材料のうちの一方を含み、
前記対向する外壁(324)は強磁性材料を含む、超伝導発電機(114,200)。
【請求項2】
前記強磁性材料は軟炭素鋼を含む、請求項1に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項3】
前記軟炭素鋼は、0.04%~0.30%の炭素を含む、請求項2に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項4】
前記軟炭素鋼は、μ/μ
0のオーダーが100~10,000の透磁率を有し、μ
0=自由空間の透磁率、μ=媒体の絶対透磁率、およびμ/μ
0=比透磁率である、請求項2に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項5】
前記軟炭素鋼は、SAE-AISI 1010、SAE-AISI 1020、またはASTM A36のうちの1つである、請求項2に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項6】
前記非磁性材料および前記常磁性材料は、μ/μ
0のオーダーが1.0~2.0の透磁率を有し、μ
0=自由空間の透磁率、μ=媒体の絶対透磁率、およびμ/μ
0=比透磁率である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項7】
前記非磁性材料および前記常磁性材料はステンレス鋼を含む、請求項4に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項8】
前記超伝導界磁巻線(208,308)は、前記超伝導発電機(114,200)の半径方向に配向された磁場を生成するように構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項9】
前記複数の側壁(328)は、前記強磁性材料、前記非磁性材料、または前記常磁性材料のうちの1つを含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項10】
前記真空容器(306)の前記内壁(322)は、前記外壁(324)よりも薄い、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項11】
前記定常場(202,302)は、前記真空容器(306)の内側に配置され、かつ前記超伝導界磁巻線(208,308)を囲む熱シールド(316)をさらに含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項12】
前記超伝導発電機(114,200)は、風力タービン(100)の一部である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の超伝導発電機(114,200)。
【請求項13】
アーマチュア巻線(320)を有するアーマチュア(204,304)と、超伝導界磁巻線(208,308)を有する定常場(202,302)と、を含む超伝導発電機(114,200)を有する風力タービン(100)を動作させるステップ(402)を含み、前記超伝導界磁巻線(208,308)は、非磁性材料または常磁性材料のうちの一方からなる内壁(322)と、強磁性材料からなる対向する外壁(324)と、を有するように構築された真空容器(306)内に配置され、前記超伝導界磁巻線(208,308)は、前記アーマチュア巻線(320)と同心に、かつ前記アーマチュア巻線(320)から半径方向外側にさらに配置され、
それによって、前記真空容器(306)は、前記超伝導界磁巻線(208,308)の端部の近くに増加した磁束を提供し、かつ部分的な磁気シールドを提供する、
方法。
【請求項14】
前記強磁性材料は軟炭素鋼を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記風力タービン(100)を動作させるステップ(402)は、前記風力タービン(100)のロータ(104)を介して前記超伝導発電機(114,200)の前記アーマチュアに回転を与えるステップ(404)を含む、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、超伝導発電機に関し、特に、磁性材料で少なくとも部分的に構築された真空容器を含む超伝導発電機、および超伝導発電機を含む風力タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超伝導発電機などの従来の機械は、典型的には、定常場およびアーマチュアを含む。アーマチュアは、従来の強磁性コアと、従来の強磁性コアに配置されたアーマチュア巻線と、を含む。アーマチュア巻線は、一般に、従来の材料、例えば銅またはアルミニウムを用いて形成される。一方、定常場は、いかなる散逸も招くことなく非常に高い電流密度を支持する超伝導ワイヤから形成された超伝導界磁巻線を含む。従来の超伝導発電機は、動作すると、より具体的には、超伝導ワイヤが、超伝導界磁巻線の高い電流密度により、例えば7テスラ以上のオーダーの非常に高い磁場を生成する。
【0003】
典型的な高温超伝導界磁巻線は、脆い超伝導材料で形成され、超伝導性を達成し維持するために臨界温度以下の温度、例えば27ケルビンまで冷却しなければならない。超伝導界磁巻線は、BSCCO(Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+x)系導体などの高温超伝導材料で形成することができる。
【0004】
超伝導界磁巻線は、一般に、冷却力を実用的な限界内に保つために熱的に絶縁されなければならない。真空容器は、一般に、超伝導界磁巻線の断熱を作り出すのを助けるために使用される。真空は、温かいロータコアからの熱が対流によって超伝導界磁巻線に伝達されるのを防ぐ。真空はさらに、関連する冷却システムによる超伝導界磁巻線の冷却を提供する。真空は、内部に超伝導界磁巻線の完全なエンクロージャを提供し、界磁コイルならびに関連する支持構造体および冷却機器を含むアセンブリ上に関連する気密シールが維持されることを意味する。
【0005】
超伝導界磁巻線を取り囲む典型的な真空容器は、超伝導界磁巻線の磁気性能に影響を及ぼさないように、非磁性ステンレス鋼などの高価で温度に敏感でない材料で形成される。したがって、超伝導発電機の全体的なコストは高く、真空容器の外側のフリンジ磁場を低減するために磁気シールドを含める必要があるか、または真空容器の外側により高い磁気フリンジ磁場を残す。
【0006】
したがって、超伝導界磁巻線の周りに真空容器を設けるためのより費用効果の高い手段、超伝導界磁巻線の端部付近の磁場を強化し、ある程度のレベルの磁気シールドを受動的に提供するための手段を組み込んだ超伝導発電機が長い間必要とされている。必要な発電機は、発電機の全体的なコストを削減し、経済的な輸送および設置を可能にするために、信頼性が高く、妥当なサイズおよび重量を有し、費用効果の高い材料で構成されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、超伝導発電機が提示される。超伝導発電機は、シャフトを介して回転するように構成されたアーマチュアと、アーマチュアと同心に、かつアーマチュアから半径方向外側に配置された定常場と、を含む。定常場は、超伝導界磁巻線と、アーマチュアに面する内壁、対向する外壁、および内壁と外壁とを結合する複数の側壁を含む真空容器と、を含む。超伝導界磁巻線は、真空容器内に配置される。内壁は、非磁性材料または常磁性材料のうちの一方からなる。対向する外壁は、強磁性材料からなる。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、風力タービンが提示される。風力タービンは、複数のブレードを含むロータと、ロータに結合されたシャフトと、シャフトを介してロータに結合された超伝導発電機と、を含む。定常場は、超伝導界磁巻線と、アーマチュアに面する非磁性材料または常磁性材料のうちの一方からなる内壁と、強磁性材料からなる対向する外壁と、内壁と対向する外壁とを結合する複数の側壁と、を含む真空容器と、を含む。超伝導界磁巻線は、真空容器内に配置される。
【0010】
本開示のさらに別の実施形態によれば、方法が提示される。本方法は、アーマチュア巻線を有するアーマチュアと、超伝導界磁巻線を有する定常場と、を含む超伝導発電機を有する風力タービンを動作させるステップを含む。超伝導界磁巻線は、非磁性材料または常磁性材料のうちの一方からなる内壁と、強磁性材料からなる対向する外壁と、を有するように構築された真空容器内に配置される。超伝導界磁巻線は、アーマチュア巻線と同心に、かつアーマチュア巻線から半径方向外側にさらに配置される。真空容器は、超伝導界磁巻線の端部の近くに増加した磁束を提供し、かつ部分的な磁気シールドを提供する。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することによってよりよく理解されるであろう。添付の図面は、本開示に組み込まれて、本開示の一部分を構成し、本発明の実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0012】
当業者にとって、本開示の最良の態様を含む本開示の十分かつ本開示を実施可能にする開示が、添付の図面の参照を含む本開示の残りの部分において、さらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の1つまたは複数の実施形態による、例示的な風力タービンの概略図である。
【
図2】本開示の1つまたは複数の実施形態による、電気機械、例えば超伝導発電機の概略図である。
【
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態による、
図2の電気機械(例えば、超伝導発電機)の一部の斜視断面図である。
【
図4】本開示の1つまたは複数の実施形態による、
図3の電気機械(例えば、超伝導発電機)の一部の拡大斜視断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、
図1の風力タービン100を動作させるための方法の流れ
図400が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特に明記しない限り、本明細書において提供される図面は、本開示の実施形態の特徴を図示するものである。これらの特徴は、本開示の1つまたは複数の実施形態を含む多種多様なシステムで適用可能であると考えられる。したがって、図面は、本明細書に開示する実施形態の実践のために必要とされる当業者に知られている従来の特徴をすべて含むことを意味しない。対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して、対応する部分を示している。
【0015】
これらの実施形態に関する簡潔な説明を提供するために、実際の実施態様に関するすべての特徴について本明細書に説明するわけではない。エンジニアリングまたは設計プロジェクトなどの実際の実施態様の開発においては、開発者の特定の目的を達成するために、例えばシステム関連および事業関連の制約条件への対応など実施態様に特有の多くの決定がなされる場合があることを理解されたい。
【0016】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる技術的および科学的用語は、本明細書が属する技術的分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で使用される「第1の」、「第2の」などの用語は、いかなる順序、量、または重要性も意味するものではなく、むしろ1つの要素と別の要素とを区別するために用いられる。また、単数形での記述(「1つの(a、an)」)は、量の限定を意味するものではなく、むしろそこで言及される項目が少なくとも1つ存在することを意味する。本明細書における「含む(including)」、「備える(comprising)」または「有する(having)」ならびにこれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに追加の項目を含むことを意味する。「接続される」、「結合される」という用語は、物理的もしくは機械的な接続または結合に限定されず、直接的であるか間接的であるかを問わず、電気的もしくは磁気的な接続または結合を含んでもよい。本明細書で使用される「常磁性」という用語は、磁石の極によって弱く引き付けられるが、永久磁気を保持しない材料を指す。本明細書で使用される「軟炭素鋼」および「軟炭素鋼または低炭素鋼」という用語は、典型的には0.04%~0.30%程度、より具体的には0.06%~0.30%程度のわずかな割合の炭素を含む材料を指す。所望の特性を達成するために、追加の元素を添加または増加させてもよい。本明細書で使用される「定常場」という用語は、超伝導界磁巻線などの動作中に静止したままである磁場発生構成要素、および磁場発生構成要素が収容されるエンクロージャを指す。
【0017】
本明細書では、「してもよい(may)」および「であってもよい(may be)」という用語は、一組の状況内の発生可能性、指定された特性、性質もしくは機能を有することを示しており、かつ/または、修飾される動詞と関連する能力、性能もしくは可能性のうちの1つまたは複数を表すことにより別の動詞を修飾している。したがって、「してもよい」および「であってもよい」の使用は、修飾された用語が、一部の状況では、適当でなく、可能でなく、または適してないことが往々にしてあることを考慮しつつ、示された能力、機能または使用にとって明らかに適当であり、可能であり、または適していることを示している。
【0018】
以下で詳細に説明するように、超伝導発電機の様々な実施形態が提示される。超伝導発電機は、シャフトを介して回転可能に構成されたアーマチュアを含む。超伝導発電機は、アーマチュアと同心に、かつアーマチュアから半径方向外側に配置された定常場をさらに含む。定常場は、複数の超伝導界磁巻線を含む。超伝導界磁巻線の断熱を達成するために、超伝導界磁巻線は、界磁コイル外側真空容器(OVC)と呼ばれることもある真空容器に収容される。真空容器は、クライオスタットの一部を形成し、非回転超伝導界磁巻線の超伝導コイルを熱絶縁する役割を果たし、それにより、それらは、絶対0付近、例えば10ケルビン(K)まで、好ましくは4Kまで冷却され得る。超伝導発電機は、風力タービンでの使用が期待されている。
【0019】
風力タービンは、複数のブレードを有するロータを含む。風力タービンは、ロータに結合されたシャフトをさらに含む。さらに、風力タービンは、シャフトを介してロータに結合された超伝導発電機を含む。代替的な実施形態では、超伝導発電機は、推進システム、列車輸送および核融合のための磁気浮上装置などの使用が想定され、風力タービンの実施態様に限定することを意図していない。
【0020】
ここで
図1を参照すると、本明細書の一実施形態による、例示的な風力タービン100の概略図が示されている。風力タービン100は、風力エネルギーを使用して電力を生成するように構成され得る。
図1の実施形態で説明および図示した風力タービン100は、水平軸構成を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、風力タービン100は、水平軸構成に加えて、または水平軸構成の代わりに、垂直軸構成(図示せず)を含んでもよい。風力タービン100は、限定はしないが、送電網などに結合されて、そこから電力を受け取り、風力タービン100および/またはその関連構成要素の動作を駆動し、ならびに/あるいは風力タービン100によって生成された電力をそこに供給することができる。風力タービン100は、風力タービン100によって生成された電力を電気的負荷に供給するために、電気的負荷(図示せず)に結合することができる。
【0021】
風力タービン100は、「ナセル」と呼ばれることもある本体102と、本体102に結合されたロータ104と、を含むことができる。ロータ104は、回転軸線106を中心に本体102に対して回転するように構成される。
図1の実施形態では、ナセル102は、タワー108に取り付けられて示されている。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、風力タービン100は、地面および/または水面に隣接して配置することができるナセルを含んでもよい。
【0022】
ロータ104は、ハブ110と、風力エネルギーを回転エネルギーに変換するためにハブ110から半径方向外側に延在する複数のブレード112(「翼形部」と呼ばれることもある)と、を含むことができる。ロータ104は、本明細書では3つのブレード112を有するものとして説明および図示されているが、ロータ104は、任意の数のブレード112を有してもよい。ロータ104は、任意の形状のブレード112を有することができ、そのような形状、タイプ、および/または構成が本明細書に記載および/または図示されているかどうかにかかわらず、任意のタイプおよび/または任意の構成のブレード112を有することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ナセル102は、超伝導発電機114およびシャフト116のうちの1つまたは複数を完全にまたは部分的に収容することができる。超伝導発電機114は、シャフト116を介してロータ104に結合され、ロータ104を介して動作するように構成されてもよい。例えば、風力エネルギーによるロータ104の回転は、シャフト116を介して超伝導発電機114の回転要素(例えば、アーマチュア)を回転させる。いくつかの実施形態では、シャフト116はまた、ギアボックス(図示せず)を含むことができる。特定の実施形態では、ギアボックスの使用は、超伝導発電機114の動作速度を増加させ、所与の電力レベルに対するトルク要求を低減することができる。ギアボックスの有無は、本明細書に記載の超伝導発電機114の実施形態にとって重要ではない。
【0024】
超伝導発電機114は、少なくとも定常場に対するアーマチュア(
図2および
図3に示す)の回転に基づいて電力を生成するように構成される。本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、超伝導発電機114は、従来の発電機と比較して増加した電力を生成するように構成することができる。超伝導発電機114は、同期発電機の形態で実施することができる。超伝導発電機114は、
図2~
図4に関連してより詳細に説明される。
【0025】
図2には、本開示の一実施形態による、電気機械、例えば超伝導発電機200の概略図が示されている。超伝導発電機200は、
図1の風力タービン100で使用される超伝導発電機114の一実施形態を表すことができる。先に主張されたように、本出願の範囲を限定することなく、超伝導発電機200は、風力タービン以外の任意の用途に使用することができる。非限定的な例として、
図2に示す超伝導発電機200は、半径方向磁場電気機械である。さらに、超伝導発電機200は
図2の電気機械として示されているが、いくつかの他の実施形態では、
図2の電気機械は超伝導モータであってもよい。符号210および212が、それぞれ超伝導発電機200の軸方向および半径方向を表している。
【0026】
図2に示すように、超伝導発電機200は、ハウジング206内に配置された定常場202およびアーマチュア204を含む。例として、いくつかの実施形態では、超伝導発電機200が風力タービン100内の超伝導発電機114として展開されると、アーマチュア204は、シャフト116を介して、またはシャフト116とギアボックスの両方を介して風力タービン100のロータ104に結合することができる。アーマチュア204は、シャフト116を介して回転するように構成されてもよい。アーマチュア204の回転により、超伝導発電機200は、少なくとも1つの超伝導界磁巻線によって確立された磁場を通過する際にアーマチュア巻線に誘起される電圧によって電力を生成することができる。
【0027】
超伝導発電機200の分解図が
図2に示されており、定常場202とアーマチュア204とを別々に示している。定常場202は、超伝導発電機200の半径方向212に配向された磁場を生成するように構成された、少なくとも1つの長手方向に延伸するレーストラック形状の超伝導界磁巻線208(
図3の符号308によっても識別される)を含む。あるいは、超伝導界磁巻線は、サドル形状であってもよく、または特定の実施態様に適した何らかの他の形状を有してもよい。アーマチュア204は、アーマチュア巻線(
図3では符号320で示す)を含むことができる。いくつかの実施形態では、アーマチュア巻線320は非超伝導巻線である。
【0028】
定常場202は、アーマチュア204と同心で半径方向外側に配置されている。定常場202は、定常場202を超伝導状態に保つのに適した温度、一般にアーマチュア204の温度よりもはるかに低い温度に維持される。通常、定常場202の超伝導特性を可能にするために、超伝導界磁巻線208,308が低温超伝導材料で構成されている場合には、定常場202は約4ケルビンの極低温範囲内に維持されるが、超伝導界磁巻線208,308が高温超伝導材料で構成されている場合には、定常場202は約30ケルビンの温度に維持される。非限定的な例として、低温超伝導材料は、ニオブとスズとの合金、またはニオブとチタンとの合金を含むことができる。非限定的な例として、高温超伝導材料は、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)を含むことができる。
【0029】
ここで
図3および
図4を参照すると、本開示の一実施形態による、
図2の超伝導発電機200の一部の斜視断面
図300が示され(
図3)、
図3の一部の拡大図が示されている(
図4)。超伝導発電機200は、定常場302(
図2の定常場202と同様)およびアーマチュア304(
図2のアーマチュア204と同様)を含む。定常場302は、アーマチュア304と同心かつ半径方向外側に配置され、真空容器306および少なくとも1つの超伝導界磁巻線308を含む。真空容器306は、外側真空容器(OVC)を形成し、
図4に関してより詳細に説明される。
【0030】
いくつかの実施形態では、超伝導発電機200はまた、1つまたは複数のタンク310、1つまたは複数の導管312、冷却装置314、任意選択の熱シールド316、トルクチューブなどの1つまたは複数のトルク伝達構造体318、またはそれらの組合せを含むことができる。また、アーマチュア304は、アーマチュア巻線320を有する。いくつかの実施形態では、アーマチュア巻線320は非超伝導巻線である。
図3に示す実施形態では、トルク伝達構造体318としてトルクチューブが使用される。本開示の範囲を限定することなく、トルクチューブの代わりに、またはそれに加えて、他のタイプのトルク伝達構造体またはトルク伝達機構を使用することもできる。以下の説明では、「トルク伝達構造体」および「トルクチューブ」という用語は互換的に使用される。
【0031】
図3および
図4の斜視断面
図300に示すように、真空容器306(クライオスタットと呼ばれることもある)は、超伝導界磁巻線308、タンク310、1つまたは複数の導管312、冷却装置314、任意選択の熱シールド316、ならびに1つまたは複数のトルクチューブ318を完全にまたは部分的に収容する環状円筒形容器である。符号322および324はそれぞれ、真空容器306の内壁および外壁を表す。いくつかの実施形態では、内壁322はアーマチュア304に面する。より具体的には、定常場302およびアーマチュア304は、真空容器306の内壁322がアーマチュア304の外面330の半径方向反対側に配置されるように配置される。図示するように、外壁324の一部は、1つまたは複数のタンク310、1つまたは複数の導管312、および冷却装置314が収容されるコールドボックス326を画定する。半径方向に延在する複数の側壁328は、真空容器306の内壁322を真空容器306の外壁324に結合する。
【0032】
図4に網掛けで示すように、この特定の実施形態では、真空容器306は、少なくとも部分的に強磁性材料で構築される。図示するように、内壁322は、非磁性材料または低透磁率、典型的には7未満のμ/μ
0、より具体的には1.0~2.0のオーダーのμ/μ
0を有する常磁性材料、例えばμ/μ
0=1.005であるステンレス鋼からなり、ここで、μ
0は自由空間の透磁率を表し、μは媒体の絶対透磁率を表し、μ/μ
0は相対透磁率を表す。外壁324および側壁328は、強磁性材料で形成され、μ/μ
0のオーダーが約100~10,000の透磁率を有する。真空容器306の壁324および側壁328の形成に使用するのに適した強磁性材料としては、コバルト、ニッケルおよび鋼、特に0.04%~0.30%、より具体的には0.06%~0.30%の炭素を含む鋼が挙げられる。適切な鋼材の例には、SAE-AISI 1010、SAE-AISI 1020、およびASTM A36が含まれるが、これらに限定されない。さらに別の実施形態では、内壁322と組み合わせて、外壁324のみが強磁性材料で形成される。この実施形態では、側壁328は、内壁322と同様に、ステンレス鋼などの非磁性または常磁性材料のうちの一方から形成されてもよい。
【0033】
軟炭素鋼または低炭素鋼の真空容器306の完全なまたは少なくとも部分的な構築は、より費用効果の高い真空容器306を提供するだけでなく、超伝導界磁巻線208の端部309付近の磁場の増強をさらに提供し、ある程度の受動的磁気シールドを提供し、組み合わせて真空容器306の全体的なコストを大幅に削減する。
【0034】
外部の周囲圧力および内部の真空により、真空容器306は差圧負荷を受ける。したがって、いくつかの実施形態では、真空容器306の内壁322は、真空容器306の外壁324よりも薄い。半径方向外向きの力が真空容器306の内壁322に加えられ、これにより内壁322に張力をかけることができる。真空容器306の外壁324にかかる力は、半径方向内側の方向に向けられ、それによって外壁324を圧縮する。外壁324が十分に厚くない場合、圧縮力は座屈を引き起こす可能性がある。内壁322と外壁324との間の半径方向力の方向の違いにより、外壁324は内壁322よりも厚くなるように設計されてもよい。一実施形態では、内壁322は約6~12mmの厚さを有し、側壁328は約12~20mmの厚さを有し、外壁324は約20~25mmの厚さを有する。一実施形態では、コールドボックス326を形成する外壁324の一部は、約10mmの厚さを有する。
【0035】
さらに、いくつかの実施形態では、定常場302はまた、超伝導界磁巻線308を冷却して極低温に維持するための適切な構成を含むことができる。例として、超伝導界磁巻線308を冷却するためのそのような構成は、タンク310、導管312、および冷却装置314のうちの1つまたは複数を含むことができる。タンク310は、冷却装置314と流体連通して配置され、冷却流体を貯蔵する。定常場302は単一のタンク310を含むものとして示されているが、冷却流体を保持するための2つ以上のそのようなタンクの使用も本明細書の範囲内で想定される。冷却流体の非限定的な例は、任意の種類の気体または凝縮した冷却流体、例えばヘリウムを含んでもよい。
【0036】
さらに、冷却装置314は、真空容器306の内側または外側に配置され、超伝導界磁巻線308を極低温よりも低い温度に維持するように冷却流体を冷却するように構成されてもよい。極低温では、超伝導界磁巻線308の材料は超伝導である。超伝導界磁巻線308の動作のための適切な温度範囲は、超伝導界磁巻線308に選択された超伝導材料に依存する。特に、冷却装置314は、冷却流体を冷却して、超伝導界磁巻線308を極低温、例えばニオブとチタンとの合金などの低温超伝導材料に適し得る約4ケルビンに維持するように構成することができる。別の非限定的な例では、冷却装置314は、ニオブとスズとの合金などの低温超伝導材料に適し得る約4ケルビン~約10ケルビンの範囲内に超伝導界磁巻線308の温度を維持するように冷却流体を冷却するように構成されてもよい。さらに別の非限定的な例では、冷却装置314は、冷却流体を冷却するように構成されてもよく、超伝導界磁巻線308の温度を、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの高温超伝導材料に適し得る約20ケルビン~約26ケルビンの範囲に維持することができる。さらに、非限定的な例では、約5.19ケルビンの温度を有するため、液体ヘリウムを低温超伝導体の冷却流体として使用することができる。別の非限定的な例では、高温超伝導材料の場合、水素またはネオンを冷却流体として使用することができる。
【0037】
導管312は、真空容器306の内部に配置され、タンク310に流体結合されてもよい。導管312は、真空容器306の内部に環状に配置されてもよい。導管312は、定常場302内の冷却流体の流れを促進するように構成される。特に、冷却流体は、密度勾配および相変化によって駆動されて、導管312を通って定常場302の内部で環状に受動的に循環する。循環されている間、冷却流体は、定常場302および超伝導界磁巻線308の低温構造の上または中に堆積した熱(放射もしくは伝導熱伝達、または発電機の動作によって生じる渦電流加熱など)を除去し、それによって超伝導界磁巻線308を極低温に維持する。
【0038】
さらに、いくつかの実施形態では、任意選択の熱シールド316は、真空容器306の内部に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、任意の熱シールド316は、熱シールド316が超伝導界磁巻線308を囲み、超伝導界磁巻線308の温度を極低温に維持するのにさらに役立つように、真空容器306の内部に配置されてもよい。
【0039】
さらに、いくつかの実施形態では、定常場302は、真空容器306の内部に配置された1つまたは複数のトルクチューブ318を含むことができる。いくつかの実施形態では、トルクチューブ318は、真空容器306の内部に環状に配置されてもよい。例として、熱シールド316が含まれる実施形態では、トルクチューブ318は、熱シールド316の1つまたは複数の壁に隣接して配置されてもよい。特に、いくつかのトルクチューブ318は熱シールド316の内側に配置されてもよいが、いくつかの他のトルクチューブ318は熱シールドの外側に配置されてもよい。熱シールド316が含まれない実施形態では、トルクチューブ318は、真空容器306の側壁328および外壁324のうちの1つまたは複数に隣接して配置されてもよい。
【0040】
トルクチューブ318は、アーマチュア304によって生成された磁場と超伝導界磁巻線308によって生成された磁場との間の相互作用に起因する反力トルクを支持するように構成される。
【0041】
ここで
図5を参照すると、本開示の一実施形態による、
図1の風力タービン100を動作させるための方法の流れ
図400が示されている。
図5は、
図1~
図4に関連して説明される。
図5の方法は、ステップ402において、アーマチュア巻線320を有するアーマチュア204,304と、超伝導界磁巻線208,308を有する定常場202,302と、を含む超伝導発電機114,200を有する風力タービン100を動作させるステップを含む。前述のように、超伝導界磁巻線208,308は、非磁性材料または常磁性材料の一方で構成された内壁322と、低炭素鋼または軟炭素鋼で形成された外壁324と、を有するように構築された真空容器306内に配置される。超伝導界磁巻線208,308は、アーマチュア204,304と同心に、かつ半径方向外側に配置されている。
【0042】
特に、軟炭素鋼または低炭素鋼から少なくとも部分的に構築された真空容器306を含むことは、より費用効果の高い真空容器を提供し、したがって超伝導発電機の全体的なコストを削減する。真空容器306は、前述のように、超伝導界磁巻線端部309の近くに増加された磁束をさらに提供し、部分的な磁気シールドを提供する。
【0043】
風力タービン100を動作させるステップ402は、ステップ404によって示されるように、風力タービン100のロータ104を介して超伝導発電機114,200のアーマチュア204,304に回転を与えることを含む。風力タービン100のロータ104は、風力エネルギーによるロータ104の回転が超伝導発電機114,200のアーマチュア204,304の回転をもたらすように、超伝導発電機114,200のアーマチュア204,304に機械的に結合される。
【0044】
さらに、風力タービン100を動作させるステップ402は、ステップ406によって示されるように、冷却装置314を介して超伝導界磁巻線208,308を極低温に冷却するステップを含む。液体ヘリウム、水素、ネオン、またはそれらの組合せなどの冷却流体は、冷却され、超伝導界磁巻線308の材料が超伝導になるように超伝導界磁巻線208,308を極低温に維持するために、1つまたは複数の導管312を通って冷却装置314を介して定常場202,302の内部を循環することができる。
【0045】
本明細書に記載の実施形態によれば、超伝導発電機114,200などの改良された超伝導発電機、および改良された超伝導発電機を含む風力タービン100などの風力タービンが提供される。超伝導発電機114,200および風力タービン100の改善は、少なくとも部分的に、本開示の実施形態に従って本明細書に開示するような軟炭素鋼または低炭素鋼で少なくとも部分的に構築された真空容器306を含むことによって達成することができる。本明細書に記載の真空容器306を含むことは、超伝導界磁巻線の周りにより費用効果の高い真空、界磁巻線の端部付近の磁場を増強し、ある程度のレベルの磁気シールドを受動的に提供する手段を提供する。真空容器306を費用効果の高い材料で形成することにより、超伝導発電機の全体的なコストが低減される。
【0046】
さらに、真空容器306がその外壁324と比較してより薄い内壁322で構築されているため、超伝導発電機114,200の内外に作用する構造的負荷/力を補償することができる。
【0047】
本明細書は、例を用いて、好ましい実施形態を含む本発明を開示し、また、当業者が、任意の装置またはシステムを製作し使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、本発明を実施することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言との差がない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言との実質的な差がない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。当業者であれば、上述の種々の実施形態からの態様ならびに各々のそのような態様についての他の公知の同等物を混ぜ合わせて適合させることで、本出願の原理に従ったさらなる実施形態および技術を構築することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 風力タービン
102 本体、ナセル
104 ロータ
106 回転軸線
108 タワー
110 ハブ
112 ブレード
114 超伝導発電機
116 シャフト
200 超伝導発電機
202 定常場
204 アーマチュア
206 ハウジング
208 超伝導界磁巻線
210 軸方向
212 半径方向
300 斜視断面図
302 定常場
304 アーマチュア
306 真空容器
308 超伝導界磁巻線
309 超伝導界磁巻線端部
310 タンク
312 導管
314 冷却装置
316 熱シールド
318 トルク伝達構造体、トルクチューブ
320 アーマチュア巻線
322 内壁
324 外壁
326 コールドボックス
328 側壁
330 外面
400 流れ図