(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】多層構造の核燃料被覆管の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
G21C3/06 300
G21C3/06 200
(21)【出願番号】P 2022529081
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2021000509
(87)【国際公開番号】W WO2021149969
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0009509
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514140698
【氏名又は名称】カチョン ユニバーシティ オブ インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデイション
(73)【特許権者】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】291,Daehak-ro Yuseong-gu,Daejeon 34141,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム デユン
(72)【発明者】
【氏名】リー ユーナ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0116972(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の挿通体が挿通された内部管が外部管内に配置された予備被覆管を設ける工程と、
前記予備被覆管の外側から内側へと圧力を加えて、前記予備被覆管の直径を減少させる工程と、
前記挿通体の延長方向に平行に力を与えて、前記内部管内から前記挿通体を抜き出す工程と、
を含み、
前記内部管と前記外部管が、互いに異なる金属から形成され
、
前記挿通体の硬度が、前記内部管の硬度よりも小さい、
多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項2】
前記予備被覆管の直径を減少させる工程が、
互いにペアをなす複数本のローラーからそれぞれなる複数のローリングユニットを前記予備被覆管の長手方向に配置して、前記複数本のローラーの間に前記予備被覆管を移動させる工程を含む、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項3】
前記複数のローリングユニットは、前記予備被覆管の長手方向に沿って前記複数本のローラー間の距離が段階的に減少し、
前記複数本のローラーの間に前記予備被覆管を移動させる工程においては、前記予備被覆管の内側に加えられる圧力が次第に増加される、
請求項2に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項4】
前記複数のローリングユニットが、
前記複数本のローラーが第1の方向に配設された第1のローリングユニットと、
前記複数本のローラーが前記第1の方向と交わる第2の方向に配設された第2のローリングユニットと、
を備え、
前記第1のローリングユニットと前記第2のローリングユニットが、交互に配置される、
請求項2に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項5】
前記予備被覆管の直径を減少させる工程においては、前記挿通体が前記内部管に向かって前記圧力に対する反作用力を与える、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項6】
前記予備被覆管を設ける工程は、
前記挿通体の表面を研磨したり、前記挿通体の表面に潤滑剤を塗布したりする工程と、
前記挿通体を前記内部管内に挿通させる工程と、
を含む、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項7】
前記挿通体が、弾性を有する、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項8】
前記挿通体が、高分子からなる、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項9】
前記挿通体の硬度が、60ショアA~100ショアDである、
請求項
1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項10】
前記挿通体の長さが、前記内部管及び前記外部管よりも長い、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項11】
前記挿通体の元々の直径が、前記予備被覆管の前記内部管の内径以下であり、
前記内部管の内径が、前記予備被覆管の直径を減少させる工程において前記挿通体の元々の直径以下に縮径される、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項12】
前記外部管が、前記内部管よりも軟性が大きい、
請求項1に記載の多層構造の核燃料被覆管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造の核燃料被覆管の製造方法に係り、さらに詳しくは、棒状の挿通体を用いた多層構造の核燃料被覆管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所は、核分裂により生じる熱で蒸気を生じさせ、生じさせられた蒸気の力でタービンを起動して電気エネルギーを生産するところであり、放射性物質の漏れを防ぎ、原子力発電所の安全を守るために多重の防護壁を有している。中でも、第2の防護壁である核燃料被覆管は、核燃料焼結体を包み込んで原子炉を循環する1次系統の冷却水と核分裂を引き起こす核燃料とを隔離させて、核分裂反応の最中に生成された核分裂生成物が1次系統の冷却水に移っていくことを防ぎ、核分裂により生成された熱を有効に1次系統の冷却水に伝える役割を果たす。
【0003】
このような核燃料被覆管は、高温下で水蒸気(H2O)と反応して酸化され易くなり、このような酸化を抑制もしくは防止すべく、互いに異なる材料を用いて二重構造に核燃料被覆管を作製している。
【0004】
二重構造の核燃料被覆管は、外管と内管との間に界面がないように作製することが必要であり、従来、外側から内側へと加えられる圧力を支える力を内管に十分に与えることができないため、外管と内管とを互いに密着させるのに限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許公報第10-0963472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、棒状の挿通体を内部管内に挿通させて、内部管と外部管とを互いに密着させる多層構造の核燃料被覆管の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法は、棒状の挿通体が挿通された内部管が外部管内に配置された予備被覆管を設ける工程と、前記予備被覆管の外側から内側へと圧力を加えて、前記予備被覆管の直径を減少させる工程と、前記挿通体の延長方向に平行に力を与えて、前記内部管内から前記挿通体を抜き出す工程と、を含み、前記内部管と前記外部管は、互いに異なる金属から形成されてもよい。
【0008】
前記予備被覆管の直径を減少させる工程は、互いにペアをなす複数本のローラーからそれぞれなる複数のローリングユニットを前記予備被覆管の長手方向に配置して、前記複数本のローラーの間に前記予備被覆管を移動させる工程を含んでいてもよい。
【0009】
前記複数のローリングユニットは、前記予備被覆管の長手方向に沿って前記複数本のローラー間の距離が段階的に減少し、前記複数本のローラーの間に前記予備被覆管を移動させる工程においては、前記予備被覆管の内側に加えられる圧力が次第に増加されてもよい。
【0010】
前記複数のローリングユニットは、前記複数本のローラーが第1の方向に配設された第1のローリングユニットと、前記複数本のローラーが前記第1の方向と交わる第2の方向に配設された第2のローリングユニットと、を備え、前記第1のローリングユニットと前記第2のローリングユニットは、交互に配置されてもよい。
【0011】
前記予備被覆管の直径を減少させる工程においては、前記挿通体が前記内部管に向かって前記圧力に対する反作用力を与えてもよい。
【0012】
前記予備被覆管を設ける工程は、前記挿通体の表面を研磨したり、前記挿通体の表面に潤滑剤を塗布したりする工程と、前記挿通体を前記内部管内に挿通させる工程と、を含んでいてもよい。
【0013】
前記挿通体は、弾性を有していてもよい。
【0014】
前記挿通体は、高分子からなってもよい。
【0015】
前記挿通体の硬度は、前記内部管の硬度よりも小さくてもよい。
【0016】
前記挿通体の硬度は、60ショアA~100ショアDであってもよい。
【0017】
前記挿通体の長さは、前記内部管及び前記外部管よりも長くてもよい。
【0018】
前記挿通体の元々の直径は、前記予備被覆管の前記内部管の内径以下であり、前記内部管の内径は、前記予備被覆管の直径を減少させる工程において前記挿通体の元々の直径以下に縮径されてもよい。
【0019】
前記外部管は、前記内部管よりも軟性が大きくてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法は、棒状の挿通体を内部管内に挿通させ、予備被覆管の外側から内側へと圧力を加えて予備被覆管の直径を減少させることにより、挿通体が内側に加えられる圧力に対する反作用力を内部管に与えることができる。これを通じて、内部管と外部管とを互いに密着固定することができ、内部管と外部管との間に界面がないように単一の管として多層構造の核燃料被覆管を製造することができる。
【0021】
また、挿通体が棒状を呈するので、挿通体の延長方向に力を与えるだけで簡単に内部管内から挿通体を抜き出すことができる。挿通体が弾性を有する場合に内部管の内壁に損傷を与えないことができ、高分子からなって十分な硬度を有することにより、内側に加えられる圧力に対して内部管に十分な反作用力を与えることができる。一方、弾性の挿通体は、内部管の内面がいずれも挿通体の外部の表面に触れたときから弾性力を作用させて、挿通体が予備被覆管と同心軸をなして内部管の中心に位置するようにすることができる。なお、挿通体、内部管及び外部管が同心軸をなした状態で反作用力を与えることにより、内部管と外部管とが同心軸をなす単一の管として多層構造の核燃料被覆管を製造することができる。
【0022】
そして、ローラー間の距離が段階的に減少する複数のローリングユニットを通過させて予備被覆管の縮管(スウェージ加工)工程を行うことにより、予備被覆管の形状をそのまま保ちながら直径のみを減少させることができ、外部管及び/又は内部管に無理な力が加えられないので、外部管及び/又は内部管の損傷及び歪みを防ぐことができる。なお、複数本のローラーが垂直方向に配設された第1のローリングユニットと複数本のローラーが水平方向に配設された第2のローリングユニットとを交互に配置して複数のローリングユニットを構成すれば、予備被覆管が垂直方向又は水平方向の片側方向に押し潰されることなく、円形状を保ちながら縮管工程が行われることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法を順番に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る縮管工程を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る挿通体による反作用力を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付図面に基づいて、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明を説明するに当たって、同じ構成要素に対しては同じ参照符号を付し、図面は、本発明の実施形態を正確に説明するために大きさが部分的に誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法を示すフローチャートであり、
図2は、本発明の一実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法を順番に示す図であって、
図2(a)は、予備被覆管の分解斜視図であり、
図2(b)は、予備被覆管の組み立て状態の斜視図であり、
図2(c)は、多層構造の核燃料被覆管の斜視図である。
【0026】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法は、棒状の挿通体50が挿通された内部管110が外部管120内に配置された予備被覆管100aを設ける工程(S100)と、前記予備被覆管100aの外側から内側へと圧力Fを加えて、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)と、前記挿通体50の延長方向に平行に力を与えて、前記内部管110内から前記挿通体50を抜き出す工程(S300)と、を含んでいてもよい。
【0027】
まず、棒状の挿通体50が挿通された内部管110が外部管120内に配置された予備被覆管100aを設ける(S100)。棒(rod)状の挿通体50が挿通された内部管110が外部管120内に配置されてもよく、これを通じて、内部管110内に挿通体50が挿通された予備被覆管100aを設けることができる。ここで、挿通体50は、内部管110が外部管120内に配置(又は、挿通)された状態で内部管110内に挿通させてもよく、内部管110内に挿通体50を先に挿通させた後に挿通体50が挿通された内部管110を外部管120内に配置してもよい。一方、内部管110が外部管120内に挿通された複数本の予備被覆管100aを設け、長尺の(又は、連続する)1本の挿通体50をすべての複数本の予備被覆管100aの内部管110に挿通させて、内部管110内に挿通体50が挿通された複数本の予備被覆管100aを設けてもよい。すなわち、複数本の予備被覆管100aが1本の挿通体50に刺し通されることが可能になり、このような場合には、内部管110が外部管120内に挿通された状態で挿通体50が内部管110内に挿通される。
【0028】
次いで、前記予備被覆管100aの外側から内側へと圧力Fを加えて、前記予備被覆管100aの直径を減少させる(S200)。予備被覆管100aの半径方向の外側から内側へと予備被覆管100aの中心軸に向かって圧力Fを加えて、予備被覆管100aの直径を減少させることができ、これを通じて、内部管110と外部管120とを互いに密着固定することができる。このとき、挿通体50は、予備被覆管100aの外側から内側へと加えられる圧力Fに対して内部管110を支える力を与えることができる。
【0029】
すなわち、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)においては、予備被覆管100aの外側から内側へと加えられる圧力F及び挿通体50が内部管110を支える力により外部管120と内部管110とが互いに密着固定されることが可能になり、押し潰れのない多層構造の核燃料被覆管100を製造することができる。
【0030】
次いで、前記挿通体50の延長方向に平行に力を与えて、前記内部管110内から前記挿通体50を抜き出す(S300)。挿通体50は、棒状の単一の胴体であるため、挿通体50の延長方向に平行に挿通体50及び/又は予備被覆管100aに力を与えて挿通体50を内部管110の内部から引き抜くことにより、簡単に内部管110内から挿通体50を抜き出すことができる。このとき、挿通体50を引っ張って挿通体50を抜き出してもよく、挿通体50を押して挿通体50を抜き出してもよい。挿通体50を引っ張って挿通体50を抜き出す場合には、挿通体50の延長方向に(すなわち、延長方向に沿って又は延長方向と平行に)挿通体50に引っ張る力を与えることができ、挿通体50の延長方向(と平行な方向)に予備被覆管100aを押す力を与えることができる。逆に、挿通体50を押して挿通体50を抜き出す場合には、挿通体50の延長方向に挿通体50に押す力を与えることができ、挿通体50の延長方向に予備被覆管100aを引っ張る力を与えることができる。
【0031】
従来、外部管120内に内部管110のみを挿通させた状態で、予備被覆管100aの管(tube)状の内部が空いている状態で縮管(swaging)工程を行っていた。このような方式は、縮管工程を行うに際して、放射状に力(又は、圧力)が加えられるときに内部管110がバランスよく力(又は、エネルギー)を受けることができないが故に内部管110の押し潰れが生じ、これにより、押し潰された多層構造の核燃料被覆管100が製造されざるを得なかった。
【0032】
このような問題を解決すべく、KOHなどの塩(salt)を充填材として用いて内部管110内に前記充填材を充填し、縮管工程を行った後に水などの溶媒で前記充填材を溶かして抜き出す方法も用いられていた。このような方法は、人間が自ら一々に粒状もしくは粉(powder)状の前記充填材を内部管110内に詰め込んだ後、長尺の棒を押し込んで圧力を加えることにより密度を上げていた。これにより、内部管110の内部に詰め込まれる前記充填材(すなわち、塩)の均一な量を保証することができず、それにより、再現性を保証することが困難であった。また、実際のところ、量産を目指す縮管工程において塩を充填材として用いる方法は決して効率がよいとは言えず、工程の特性からみて、長い時間がかかるが故に時間的な面からも非効率的であるため、究極的な目的である簡単かつ迅速な縮管工程には物足りなさがあった。特に、縮管工程後に凝集された前記充填材を抜き出すのにさらに長い時間がかかってしまう。一方、前記充填材がまるで粒のように塊状に固まった(又は、大きな塊状の)個体である場合には、縮管工程において内部管110の直径が減少しながら内部管110の内面(又は、内壁)に傷つきが生じてしまうことが懸念される。内部管110が軟性(又は、弾性)を有する場合に粉状の前記充填材を用いてしまうと、密度を上げるために前記充填材に圧力を加える度に内部管110が膨らむ(又は、歪む)虞があり、位置ごとに前記充填材の密度が異なってくる虞がある。また、前記充填材は、縮管工程において外部に抜け出ないように予備被覆管100aの両端を遮蔽(又は、閉止)しなければならない。予備被覆管100aの両端を弱く閉塞してしまうと、予備被覆管100aを縮径させる圧力Fにより内部管110の内部圧力が増加されて前記充填材が予備被覆管100aの両端の遮蔽のところを突き抜いて外部に抜け出てしまう虞がある。そして、予備被覆管100aの両端を過剰に強く閉塞してしまうと、予備被覆管100aが圧縮されるのに影響を与えて予備被覆管100aの直径の減少が円滑に行われない、あるいは、内部管110と外部管120との相互間の密着が十分に行われない虞もある。
【0033】
しかしながら、本発明においては、棒状の挿通体50を引っ張ったり押したりするだけでよいので、抜き出し易いだけではなく、塩を充填材として用いる場合よりも速やかに内部管110内から抜き出すことができ、多層構造の核燃料被覆管100の生産速度が向上する。
【0034】
ここで、内部管110と外部管120は、互いに異なる金属(又は、金属合金)から形成されてもよい。例えば、内部管110は、ジルコニウム合金(例えば、Zircaloy-4)からなってもよく、一方向(又は、長手方向)に両端部が貫通して内部に核燃料焼結体が収容可能な収容空間(又は、中空部)を有する中空円筒(tube)状であってもよい。内部管110は、外部管120内に挿通されて配置されてもよく、多層構造の核燃料被覆管100の最も内部に配置されてもよい。
【0035】
外部管120は、ジルコニウム合金の内部管110とは異なる金属(例えば、アルミニウムを含む金属)から形成されてもよく、耐腐食特性に優れた金属(例えば、アルミニウム、Cr-Al、FeCrAlなどのアルミニウム合金など)から形成されて冷却機能の喪失による高温及び高圧の雰囲気下で内部管110が高温の水蒸気と反応して水素を生じさせることを防ぐことができる。また、内部管110の収容空間に詰められている核燃料焼結体を高温酸化から保護して原子力運転安定性を高めることができる。このとき、外部管120は、内部管110が挿通されて収容できるように一方向に両端部が貫通して内部に収容空間(又は、中空部)を有する中空円筒状であってもよい。
【0036】
原子力発電所において起こる水素爆発事故は、ジルコニウムの酸化特性との関連性が非常に深く、内部管110を外側から包み込むようにジルコニウムを含まない異なる金属から外部管120を形成すれば、外部管120は、冷却水の不在に対する酸化抵抗性を向上させることができる。これにより、事故の状況下で内部管110まで酸化腐食されてしまうことを防ぐことができる。
【0037】
したがって、内部管110と外部管120の長所のみを取って製造された多層構造の核燃料被覆管100は、機械的強度を向上させるとともに、高温酸化に対する事故のリスクを有効に減らすことができる。なお、原子炉事故から内部管110及び/又は内部管110内に収められた核燃料を保護することができて、原子力の安定的な運転を可能にすることができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る縮管工程を説明するための図であって、
図3(a)は、複数のローリングユニットを備える縮管装置を示す図であり、
図3(b)は、位置に応じた予備被覆管の直径の変化を示す図である。
【0039】
図3を参照すると、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)は、互いにペアをなす複数本のローラー(roller)211a,211b,212aからそれぞれなる複数のローリング(rolling)ユニット210を前記予備被覆管100aの長手方向に配置して、前記複数本のローラー211a,211b,212aの間に前記予備被覆管100aを移動させる工程(S210)を含んでいてもよい。
【0040】
予備被覆管100aの直径を減少させるために互いにペアをなす複数本のローラー211a,211b,212aからそれぞれなる複数のローリングユニット210を予備被覆管100aの長手方向に配置して、前記複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間に予備被覆管100aを移動させてもよい(S210)。縮管装置200は、外部からローラー211a,211b,212aで予備被覆管100aを圧縮することにより、圧縮及び引抜を行うことで、予備被覆管100aの直径を減少させ、長さを増加させることができ、外部管120と内部管110との間の(離隔)距離を減少させて互いに密着固定することができる。すなわち、縮管装置200は、複数本のローラー211a,211b,212aを用いて、予備被覆管100aの長さを増加させることができ、しかも、直径を減少させることができ、外部から圧力Fを加えて予備被覆管100aの外部管120と内部管110とを互いに密着させることができる。このとき、縮管装置200は、予備被覆管100aの長手方向に配置される複数のローリングユニット210を備えていてもよい。複数のローリングユニット210は、互いにペア(又は、対)をなす複数本のローラー211a,211b,212aからそれぞれなっていてもよく、前記ペアをなす複数本のローラー211a,211b,212aが外側から予備被覆管100aの中心軸に向かって対称的に(又は、バランスよく)予備被覆管100aを加圧してもよい。ここで、前記ペアをなす複数本のローラーは、互いに対向する一対のローラーであってもよく、複数本のローラーが予備被覆管100aの中心軸を中心として一定の角度ずつ離れて配置されたローラー群であってもよい。
【0041】
これらの複数のローリングユニット210を前記予備被覆管100aの長手方向に配置し、それぞれの前記複数本のローラー211a,211b,212aの間を通過するように予備被覆管100aを移動させると、前記複数本のローラー211a,211b,212aが予備被覆管100aを圧縮する力により予備被覆管100aが圧縮されかつ引き抜かれ、予備被覆管100aの長さが長くなったり、直径が減少したりすることができ、外部管120と内部管110とが互いに密着されることができる。
【0042】
そして、複数のローリングユニット210は、前記予備被覆管100aの長手方向に沿って前記複数本のローラー211a,211b,212a間の距離が段階的に減少してもよく、前記複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間に前記予備被覆管100aを移動させる工程(S210)においては、予備被覆管100aの内側に加えられる圧力Fが次第に増加されてもよい。複数のローリングユニット210は、前記予備被覆管100aの長手方向(すなわち、一方向)を基準として互いに離れて配置されてもよい。複数のローリングユニット210のそれぞれは、予備被覆管100aを間に挟んで予備被覆管100aの外側面に触れるようにペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aを備えて前記ペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間に予備被覆管100aが進んで移動することにより、予備被覆管100aの半径方向の外側から内側へと押し出す圧力Fを加えてもよい。一方、前記複数本のローラー211a,211b,212a間の距離が段階的に減少しながら、ローラーの直径(又は、大きさ)もまた予備被覆管100aの直径の減少に伴い縮まってもよく、
図3(a)に示すように、第1の水平ローラー212aが第1の垂直ローラー211aよりも直径が小さくてもよく、第2の垂直ローラー211bが第1の水平ローラー212aよりも直径が小さくてもよい。
【0043】
例えば、前記ペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aのそれぞれは、予備被覆管100aを基準として予備被覆管100aの外側面にそれぞれ対向して触れるように備えられてもよい。予備被覆管100aが前記ペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間に進んで移動しないが故に前記ペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間に予備被覆管100aが配設されない場合には、予備被覆管100aの外側の直径(又は、外径)以下の距離にて離れてもよく、最初に予備被覆管100aが進入する前記ペアをなす複数本のローラー211aは、予備被覆管100aの外側の直径に等しいか、あるいは、予備被覆管100aの外側の直径よりもやや小さな離隔距離を有していてもよい。これにより、予備被覆管100aが前記ペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間を通り過ぎるときに前記ペアをなす複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aが予備被覆管100aの外側面に触れて加えられる圧力Fにより予備被覆管100aの直径が減少することができ、外部管120と内部管110とが密着されて触れ合うようにすることができる。
【0044】
ここで、
図3(a)に示すように、複数のローリングユニット210は、前記予備被覆管100aの長手方向に沿って前記複数本のローラー211a,211b,212a間の距離が段階的に減少してもよい。前記複数本のローラー211a,211b,212a間の距離が段階的に減少する複数のローリングユニット210のそれぞれを通り過ぎた(又は、通過した)予備被覆管100aの個所をA、B、Cに分類し、予備被覆管100aの各個所A、B、Cの直径及び厚さについて調べてみると、
図3(b)に示すように、予備被覆管100aが経た複数のローリングユニット210の数が増加されるにつれて、予備被覆管100aの直径及び/又は内部管110の収容空間の直径(又は、内径)がD
1からD
3へと次第に減少するということが分かる。これは、複数のローリングユニット210のそれぞれの前記複数本のローラー211a,211b,212a間の離隔距離が段階的に減少することにより、予備被覆管100aに加えられる圧力Fが次第に増加され、このように次第に増加される圧力Fにより歪まれて予備被覆管100aの直径及び/又は内部管110の収容空間の直径が減少するからであると捉えられる。すなわち、前記複数本のローラー211aもしくは211bもしくは212aの間に前記予備被覆管100aを移動させる工程(S210)においては、前記複数本のローラー211a,211b,212a間の距離が段階的に減少する複数のローリングユニット210を通過することにより、予備被覆管100aの内側に加えられる圧力Fが次第に増加されることができる。
【0045】
このため、本発明においては、前記ペアをなすローラー211a,211b,212a間の距離が段階的に減少する複数のローリングユニット210を通過させて予備被覆管100aの縮管工程を行うことにより、予備被覆管100aの形状をそのまま保ちながら直径のみを減少させることができる。なお、外部管120及び/又は内部管110に無理な力が加えられないことができ、外部管120及び/又は内部管110の損傷(又は、欠陥)及び歪みを防ぐことができる。
【0046】
ここで、
図3(a)においては、ローリングユニット210を3つ備え、それぞれのローリングユニット211,212は、2本ずつのローラー211aもしくは211bもしくは212aから構成されると示されているが、ローラー211aもしくは211bもしくは212aの本数及びローリングユニット210の数はこれに何ら限定されず、様々な数に変更可能である。また、
図3(b)には、予備被覆管100aの直径が大幅に減少すると示されているが、これは、直径の変化を説明するために相違点が感じられるように示したものに過ぎず、実際に脆い(又は、軟性の)管の材質から予備被覆管100aを形成した場合、予備被覆管100aの直径は、
図3(b)のように変化することもできるが、予備被覆管100aの直径は、外部管120及び内部管110の伸び率に応じて減少することもできる。
【0047】
一方、縮管工程により外部管120と内部管110との密着力を増加させて互いに密着固定する方法について
図3(a)を参照してより具体的に説明すると、予備被覆管100aは、前記複数本のローラー211a,211b,212aの間を移動することにより、ローラー211aもしくは211bもしくは212aが予備被覆管100aに加える圧力Fにより予備被覆管100aの内側に圧力Fが加えられる。このとき、予備被覆管100aの内部管110内に挿通された挿通体50は、内部管110の収容空間に詰められているため、内側に加えられる圧力Fから内部管110を支えることができる。すなわち、挿通体50は、外部から加えられる圧力Fに対して内部管110を外側に支える力を有しているので、内部管110が一定の位置にあり、外部管120は、外部の圧力Fにより内部管110よりも大きく縮められて内部管110側に押し出されることにより、外部管120と内部管110は、互いに密着固定されることができる。
【0048】
複数のローリングユニット210は、前記複数本のローラー211a,211bが第1の方向(例えば、垂直方向)に配設された第1のローリングユニット211と、前記複数本のローラー212aが前記第1の方向と交わる第2の方向(例えば、水平方向)に配設された第2のローリングユニット212と、を備えていてもよく、第1のローリングユニット211と第2のローリングユニット212は、交互に配置されてもよい。すなわち、複数のローリングユニット210は、前記複数本のローラー211a,211bが前記第1の方向に配設された第1のローリングユニット211と、前記複数本のローラー212aが前記第2の方向に配設された第2のローリングユニット212と、が交互に配置されて構成されてもよい。
【0049】
第1のローリングユニット211は、前記複数本のローラー211a,211bが前記第1の方向に配設されてもよく、相互の間に進入された予備被覆管100aを中心として対称となるように予備被覆管100aの外側に前記複数本のローラー211a,211bが配置されてもよい。例えば、第1のローリングユニット211は、相互の間に進入された予備被覆管100aを中心として前記第1の方向の両側(又は、両サイド)に一対のローラー211aもしくは211bが互いに対向して配置されてもよく、前記第1の方向に互いに対向する前記一対のローラー211aもしくは211bが予備被覆管100aを前記第1の方向の両側から予備被覆管100aの内側へと加圧してもよい。
【0050】
第2のローリングユニット212は、前記複数本のローラー212aが前記第1の方向と交わる前記第2の方向に配設されてもよく、相互の間に進入された予備被覆管100aを中心として対称となるように予備被覆管100aの外側に前記複数本のローラー212aが配置されてもよい。例えば、第2のローリングユニット212は、相互の間に進入された予備被覆管100aを中心として前記第2の方向の両側(又は、両サイド)に一対のローラー212aが互いに対向して配置されてもよく、前記第2の方向に互いに対向する前記一対のローラー212aが予備被覆管100aを前記第2の方向の両側から予備被覆管100aの内側へと加圧してもよい。
【0051】
このとき、第1のローリングユニット211と第2のローリングユニット212は、交互に配置されてもよい。
【0052】
第1のローリングユニット211もしくは第2のローリングユニット212のみが連続して配置される場合には、予備被覆管100aが一方向(例えば、垂直方向又は水平方向)にのみ加圧されてしまう結果、全体的に均一に圧縮できなくなり(又は、縮められなくなり)、予備被覆管100aがその形状(又は、断面形状)を保つことができず、(垂直又は水平の)片側方向に押し潰されてしまう虞がある。しかしながら、前記複数本のローラー211a,211bが前記第1の方向に配設された第1のローリングユニット211と、前記複数本のローラー212aが前記第2の方向に配設された第2のローリングユニット212と、を交互に配置すれば、予備被覆管100aが前記第1の方向だけではなく、前記第2の方向にも加圧され、その結果、全体的に(又は、両方向に)均一に圧縮されることが可能になる。これにより、予備被覆管100aが(垂直又は水平の)片側方向に押し潰されることなく、円形状を保ちながら縮管工程が行われることが可能になる。
【0053】
ここで、第1のローリングユニット211と第2のローリングユニット212のうち、前記複数本のローラー211a,211bが垂直方向に配設されたローリングユニット211もしくは212が最初に配置されてもよく、前記垂直方向に配設されたローリングユニット211もしくは212に最初に予備被覆管100aが進入されることが好ましい。挿通体50を内部管110内に手軽に挿通できるように挿通体50の元々の直径(又は、本来の直径)が内部管110の内径よりも小さな場合には、挿通体50が重力により下部(又は、下)に偏って支持されざるを得ず、挿通体50を内部管110の内部の中心に位置させ難い虞がある。ここで、前記元々の直径とは、本来の直径もしくは元々の直径であって、圧力又は引っ張り力などの外力が作用しなかったときの直径であってもよい。このような場合に、第1のローリングユニット211と第2のローリングユニット212のうち、前記複数本のローラー212aが水平方向に配設されたローリングユニット212もしくは211が先に予備被覆管100aを加圧してしまうと、内部管110の水平方向の幅が減って挿通体50が下部に偏った状態で固定される虞があり、挿通体50が内部管110の内部の中心に位置できず、その結果、予備被覆管100aが片側方向に押し潰されてしまう虞がある。
【0054】
しかしながら、前記垂直方向に配設されたローリングユニット211もしくは212が先に予備被覆管100aを加圧すると、前記垂直方向に配設されたローリングユニット211もしくは212の加圧を通じて挿通体50の垂直位置が内部管110の内部の中心と一致(又は、位置合わせ)されることができて、挿通体50が内部管110の内部の中心に位置することができ、予備被覆管100aが片側方向に押し潰されることなく、円形状を保つことができる。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態に係る挿通体による反作用力を説明するための概念図であって、
図4(a)は、予備被覆管の側断面図であり、
図4(b)は、予備被覆管の正断面図である。
【0056】
図4を参照すると、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)においては、挿通体50が内部管110に向かって前記圧力Fに対する反作用力-Fを与えてもよい。挿通体50が内側に加えられる圧力Fに対する反作用力-Fを内部管110に与えてもよい。これを通じて、内部管110と外部管120とを互いに密着固定することができ、内部管110と外部管120との間に界面がないように単一の管として多層構造の核燃料被覆管100を製造することができる。
【0057】
すなわち、挿通体50が内部管110の収容空間に詰め込まれるので、縮管工程において内側に加えられる圧力Fにより予備被覆管100aの直径が減少する(又は、縮められる)ときに挿通体50が内部管110を支え、前記圧力Fに対する反作用力-Fを半径方向に(又は、外側に)内部管110に与えることができる。前記圧力Fにより外部管120が内部管110に向かって加圧され、前記反作用力-Fにより内部管110が外部管120に向かって加圧されて、外部管120と内部管110とが互いに密着されることができる。そして、内部管110と外部管120との間に界面がないようにする十分な前記圧力Fと前記反作用力-Fにより内部管110と外部管120とが単一の管として互いに密着固定されることが可能になる。なお、挿通体50による前記反作用力-Fにより内部管110の直径はほとんど変化しないつつも、外部管120が相対的に大きく縮められて内部管110と外部管120とが互いに密着されることが可能になる。
【0058】
前記予備被覆管を設ける工程(S100)は、前記挿通体50の表面を研磨したり、前記挿通体50の表面に潤滑剤を塗布したりする工程(S110)と、前記挿通体50を前記内部管110内に挿通させる工程(S120)と、を含んでいてもよい。
【0059】
前記挿通体50の表面を研磨したり、前記挿通体50の表面に潤滑剤を塗布したりしてもよい(S110)。挿通体50が内部管110内に円滑に挿通され、内部管110内から円滑に抜け出る(又は、抜き出される)ことが可能なように挿通体50の表面を滑らかに研磨してもよく、挿通体50の表面に潤滑剤などを塗布しても(又は、塗り付けても)よい。ここで、本発明に係る多層構造の核燃料被覆管の製造方法は、常温(約0~25℃)において行われてもよく、前記潤滑剤は、高価な高温潤滑剤や耐熱潤滑剤ではなくてもよく、入手し易い食用油や潤滑防錆剤(例えば、WD-40)などを用いてもよい。
【0060】
また、挿通体50の表面を滑らかに研磨したり、挿通体50の表面に潤滑剤などを塗り付けたりする場合には、内部管110の内面が挿通体50の粗い表面により引っ掻かれてしまうことを防ぐことができ、内部管110の内面と挿通体50の表面との摩擦を減らして内部管110の損傷及び/又は変形を抑制もしくは防止することができる。
【0061】
すなわち、挿通体50の表面が粗くなると、挿通体50の粗い表面により内部管110の内面が引っ掻かれてしまう虞があり、内部管110の内面と挿通体50の表面との摩擦により内部管110が引きちぎれたり破損されたりする虞があり、内部管110に欠陥が生じる虞がある。しかしながら、本発明においては、挿通体50の表面を滑らかに研磨したり、挿通体50の表面に潤滑剤などを塗り付けたりしてこのような問題を解決することができる。
【0062】
そして、前記挿通体50を前記内部管110内に挿通させてもよい(S120)。挿通体50の表面を滑らかに研磨したり、挿通体50の表面に潤滑剤などを塗り付けたりして挿通体50が内部管110内に円滑に挿通できるようにした後、挿通体50を前記内部管110内に挿通させてもよい。このような場合、滑らかな挿通体50の表面及び/又は潤滑剤により内部管110内に挿通された挿通体50が内部管110内からも円滑に抜け出ることが可能になる。ここで、挿通体50を内部管110内に先に挿通させた後、挿通体50が挿通された内部管110を外部管120内に挿通(又は、配置)させてもよく、外部管120内に配置(又は、挿通)された内部管110内に挿通体50を挿通させてもよい。
【0063】
挿通体50は、弾性を有していてもよい。挿通体50が弾性を有すると、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)において内部管110の内径が減少して挿通体50の元々の直径よりも小さくなる場合であっても、挿通体50の延長方向に力を与えること(すなわち、前記挿通体を引っ張ること)だけで簡単に内部管110内から挿通体50を抜き出すことができる。また、弾性を有する挿通体50は、内部管110の直径が減少するときに緩衝力を作用させて内部管110に無理な力が加えられることを抑制もしくは防止することができ、弾性力により前記反作用力-Fを有効に内部管110に与えることができる。
【0064】
一方、挿通体50が弾性を有する場合には、挿通体50を挿通させかつ抜き出しながら、内部管110の内壁に損傷を与えないこともできる。また、内部管110の内面がいずれも挿通体50の外部の表面に触れたときに前記弾性力が作用するので、挿通体50の元々の直径が内部管110の内径よりも小さな場合に内部管110の内径と挿通体50の元々の直径との差分に見合う分だけ内部管110の内径が減少するまでは前記反作用力-Fがほとんど作用しなくなることにより、内部管110の内径が減少して内部管110の内面が挿通体50の外部の表面に触れることに伴い、挿通体50が予備被覆管100aと同心軸(すなわち、前記挿通体の(平)断面と前記内部管の円周(又は、内周)とが同心円)をなして内部管110の中心に位置することができる。このとき、外部管120と内部管110も同心軸をなすことができ、挿通体50、内部管110及び外部管120が同心軸(又は、同心円)をなした状態で前記反作用力-Fが作用する(又は、与えられる)ことにより、内部管110と外部管120とが均一に互いに密着固定されることができ、内部管110と外部管120とが同心軸をなす(単一の管として)多層構造の核燃料被覆管100を製造することができる。
【0065】
そして、挿通体50は、高分子(又は、重合体(ポリマー))からなってもよい。挿通体50が圧縮され過ぎず(又は、圧着され過ぎず)、前記反作用力-Fを有効に内部管110に与えるためには、挿通体50が十分な硬度(hardness)を有していなければならない。挿通体50が高分子からなる場合には、挿通体50が弾性(又は、軟性)を有しながらも、粒子(又は、分子)の密度が高くて十分な硬度を有することができる。これにより、内側に加えられる圧力Fに対して内部管110に十分な前記反作用力-Fを与えることができる。例えば、挿通体50は、ポリアセタール(polyacetal)又はポリオキシメチレン(PolyOxyMethylene;POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PolyEtherEtherKetone;PEEK)、ポリアミド(Polyamide)、ナイロン(例えば、Nylon 6/6)、エチレンビニールアセテート(Ethylene Vinyl Acetate;EVA)、グルーガン(glue gun)用熱可塑性プラスチック、ゴム(rubber)などからなってもよい。
【0066】
また、挿通体50の硬度は、内部管110の硬度よりも小さくてもよい。挿通体50の硬度が内部管110の硬度よりも大きな場合には、内側に加えられる圧力Fにより内部管110の直径が減少しようとするが、挿通体50の直径は変わらないため、内部管110が内径は縮径できず、内部管110に無理が生じてしまう。これにより、内部管110にひび割れ(crack)が生じるなど内部管110が損傷を被ってしまう虞がある。一方、挿通体50の硬度が内部管110の硬度と同じである場合には、内側に加えられる圧力Fにより挿通体50の表面と内部管110の内面とが互いに密着されて挿通体50を抜き出し難くなる虞もあり、挿通体50が抜け出る工程において折れたり途切れたりする虞もある。
【0067】
ここで、挿通体50の硬度は、60ショアA~100ショアDであってもよい。挿通体50の硬度が60ショアAよりも小さくなると、脆過ぎて(又は、柔らか過ぎて)内側に加えられる圧力Fにより直径が縮径され、長さが長くなるだけであり、加えられる圧力Fに対する反作用力-Fをほとんど与えることができなくなる。なお、脆過ぎて内部管110内から挿通体50を抜き出すために挿通体50を引っ張る工程において挿通体50が途切れてしまうことも懸念される。
【0068】
これに対し、挿通体50の硬度が100ショアDよりも大きくなると、硬過ぎて内部管110の直径が減少して内部管110の内面が挿通体50の表面に密着される場合に挿通体50を抜き出し難くなる虞があり、脆性(brittleness)が増加されて挿通体50が割れて一部が内部管110内に残存する虞もある。なお、挿通体50の弾性が弱くなって弾性力による反作用力-Fを与えることができなくなる虞もある。
【0069】
そして、挿通体50の長さは、内部管110及び外部管120よりも長くてもよい。すなわち、挿通体50の長さが予備被覆管100aの長さよりも長くてもよい。挿通体50の長さは、内部管110及び外部管120よりも長い場合には、挿通体50のうち、予備被覆管100aを貫通して抜け出た(又は、晒された)個所を引っ張って簡単に挿通体50を抜き出してもよい。また、前記抜け出た(又は、突き出た)個所を支持して挿通体50の直径が内部管110の内径よりも小さな場合に挿通体50を内部管110の内部の中心に位置させてもよく、挿通体50が内部管110の内部の中心に位置させられた状態で縮管工程を行ってもよい。一方、挿通体50の長さを長くして1本の挿通体50に複数本の予備被覆管100aを刺し通して連続して縮管工程を行ってもよく、縮管工程が完了した複数本の予備被覆管100aの間の挿通体50を切り取ってそれぞれの内部管110の内部からそれぞれ別々に切り取られた挿通体50を抜き出してもよい。
【0070】
さらに、挿通体50の元々の直径は、予備被覆管100aの内部管110の内径以下であってもよく、内部管110の内径は、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)において前記挿通体50の元々の直径以下に縮径されてもよい。挿通体50の元々の直径は、挿通体50が内部管110内に円滑に挿通できるように予備被覆管100aの内部管110の内径以下であってもよい。そして、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)において縮管工程を行うことで内部管110の内径を前記挿通体50の元々の直径以下に縮径させることにより、挿通体50による前記反作用力-Fを内部管110に円滑に伝えることができ、内部管110と外部管120とを互いに密着固定することができる。
【0071】
一方、外部管120は、内部管110よりも軟性が大きくてもよい。外部管120は、縮管工程の最中に内部管110の外部の表面にすっかり密着できるように外部管120は内部管110よりも軟性が大きくてもよく、これにより、外部管120は、縮管工程の最中に内部管110との間隔を最小化させることができて互いに密着固定されることが可能になる。すなわち、外部管120の軟性を内部管110のそれよりも大きくして予備被覆管100aに圧力が加えられる最中に外部管120が内部管110の外部の表面にすっかり密着されるようにすることができる。内部管110よりも軟性が大きな外部管120は内部管110よりも十分な軟性を有するので、内部管110との間隔を最小化させることができ、これにより、内部管110と互いに密着固定されることが可能になる。したがって、外部管120は、前記予備被覆管100aの直径を減少させる工程(S200)において内部管110よりも大きく縮められて内部管110と互いに密着固定されることが可能になる。
【0072】
このように、本発明においては、棒状の挿通体を内部管内に挿通させ、予備被覆管の外側から内側へと圧力を加えて予備被覆管の直径を減少させることにより、挿通体が内側に加えられる圧力に対する反作用力を内部管に与えることができる。これを通じて、内部管と外部管とを互いに密着固定することができ、内部管と外部管との間に界面がないように単一の管として多層構造の核燃料被覆管を製造することができる。また、挿通体が棒状であるため、挿通体の延長方向に力を与えることだけで簡単に内部管内から挿通体を抜き出すことができる。挿通体が弾性を有する場合に内部管の内壁に損傷を与えないことができ、高分子からなって十分な硬度を有することにより、内側に加えられる圧力に対して内部管に十分な反作用力を与えることができる。そして、ローラー間の距離が段階的に減少する複数のローリングユニットを通過させて予備被覆管の縮管工程を行うことにより、予備被覆管の形状をそのまま保ちながら直径のみを減少させることができ、外部管及び/又は内部管に無理な力が加えられないので、外部管及び/又は内部管の損傷及び歪みを防ぐこともできる。さらに、複数本のローラーが垂直方向に配設された第1のローリングユニットと複数本のローラーが水平方向に配設された第2のローリングユニットとを交互に配置して複数のローリングユニットを構成すれば、予備被覆管が垂直方向又は水平方向の片側方向に押し潰されることなく、円形状を保ちながら縮管工程が行われることが可能になる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について図示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲において請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、これより様々な変形が行え、かつ、均等な他の実施形態が採用可能であるということが理解できる筈である。よって、本発明の技術的な保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるべきである。