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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】回転子および回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20230724BHJP
【FI】
H02K1/276
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022559306
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2022000822
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀範
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 将
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-156199(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038958(WO,A1)
【文献】特開2012-227993(JP,A)
【文献】国際公開第2021/214825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心を有する回転子鉄心と、
前記回転子鉄心に設けられ、前記回転中心の周りに複数の磁極を形成する複数の永久磁石と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記回転子鉄心の外周面に近い位置で前記回転子鉄心の周方向に互いに離れて配置される一端部をそれぞれ有し、かつ前記回転子鉄心の外周面から前記回転子鉄心の径方向に離れた位置で互いに接近して配置される他端部をそれぞれ有し、前記各永久磁石を収容する第1及び第2磁石収容領域と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1および第2磁石収容領域のそれぞれ一端部に接するとともに、前記回転子鉄心の外周面を通してその回転子鉄心の外に開放された第1及び第2外周側磁気空隙と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1および第2磁石収容領域のそれぞれ他端部に接する第1及び第2内周側磁気空隙と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1および第2内周側磁気空隙の相互間において前記回転子鉄心の径方向における外周側と内周側に分かれて位置する外周側センタ磁気空隙及び内周側センタ磁気空隙と、
前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記第1内周側磁気空隙と前記外周側センタ磁気空隙との間および前記第2内周側磁気空隙と前記外周側センタ磁気空隙との間にそれぞれ位置して互いの間隔が前記回転子鉄心の外周側から内周側に向けて狭まるように配置され、前記回転子鉄心における前記第1及び第2磁石収容領域,前記第1及び第2外周側磁気空隙,前記第1及び第2内周側磁気空隙,前記外周側センタ磁気空隙より外周側の領域に繋がる第1及び第2外周側ブリッジ部と、
前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記第1内周側磁気空隙と前記内周側センタ磁気空隙との間および前記第2内周側磁気空隙と前記内周側センタ磁気空隙との間にそれぞれ位置して互いの間隔が前記回転子鉄心の外周側から内周側に向けて狭まるように配置され、前記第1及び第2外周側ブリッジ部にそれぞれ連結されるとともに、前記回転子鉄心における前記第1及び第2磁石収容領域,前記第1及び第2外周側磁気空隙,前記第1及び第2内周側磁気空隙,前記内周側センタ磁気空隙より内周側の領域に繋がる第1及び第2内周側ブリッジ部と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記外周側センタ磁気空隙と前記内周側センタ磁気空隙との間に位置し、前記第1外周側ブリッジ部および前記第1内周側ブリッジ部の連結部と前記第2外周側ブリッジ部および前記第2内周側ブリッジ部の連結部との間に掛け渡されたセンタブリッジ部と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1外周側ブリッジ部および前記第1内周側ブリッジ部の連結部から前記第1内周側磁気空隙内に突出して前記第1磁石収容領域に対向する永久磁石保持用の第1突出部と、
前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第2外周側ブリッジ部および前記第2内周側ブリッジ部の連結部から前記第2内周側磁気空隙内に突出して前記第2磁石収容領域に対向する永久磁石保持用の第2突出部と、
を備え、
前記第1外周側ブリッジ部は、前記外周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含み、
前記第1内周側ブリッジ部は、前記内周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含み、
前記第2外周側ブリッジ部は、前記外周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含み、
前記第2内周側ブリッジ部は、前記内周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含み、
前記センタブリッジ部は、前記内周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、前記第1外周側ブリッジ部,前記第1内周側ブリッジ部,前記第2外周側ブリッジ部,前記第2内周側ブリッジ部のそれぞれ前記直線状部位を含む仮想直線と直交する方向に延びる直線状部位を含み、
前記第1外周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点が、前記第1内周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点より、前記第1磁石収容領域から遠い位置に存し、
前記第2外周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点が、前記第2内周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点より、前記第2磁石収容領域から遠い位置に存している、
回転子。
【請求項2】
前記回転子鉄心の周方向における前記第1内周側ブリッジ部の幅寸法の最小値が、前記回転子鉄心の周方向における前記第1外周側ブリッジ部の幅寸法の最小値と同じまたはそれより大きく、
前記回転子鉄心の周方向における前記第2内周側ブリッジ部の幅寸法の最小値が、前記回転子鉄心の周方向における前記第2外周側ブリッジ部の幅寸法の最小値と同じまたはそれより大きい、
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転子と、
前記回転子を回転自在に支持する固定子と、
を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、永久磁石を有する回転電機の回転子およびその回転子を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、永久磁石の目覚しい研究開発により、高磁気エネルギー積の永久磁石が開発され、その永久磁石を用いた永久磁石型の回転電機が電車や自動車の電動機あるいは発電機として適用されつつある。この回転電機は、円筒形状の固定子、およびこの固定子の内側に回転自在に支持された円柱形状の回転子を備える。回転子は、回転子鉄心およびこの回転子鉄心に埋設される複数の永久磁石を備える。これら永久磁石により、回転子鉄心の円柱方向に複数の磁極が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-14322号公報
【文献】特開2014-60835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような永久磁石型の回転電機では、遠心力に対して回転子鉄心の十分な強度を保つことが重要な課題となっている。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、回転子鉄心における十分な強度を維持することができ、しかも永久磁石の不可逆減磁を回避できる回転子および回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転子は、回転中心を有する回転子鉄心と;この回転子鉄心に設けられ、前記回転中心の周りに複数の磁極を形成する複数の永久磁石と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記回転子鉄心の外周面に近い位置で前記回転子鉄心の周方向に互いに離れて配置される一端部をそれぞれ有し、かつ前記回転子鉄心の外周面から前記回転子鉄心の径方向に離れた位置で互いに接近して配置される他端部をそれぞれ有し、前記各永久磁石を収容する第1及び第2磁石収容領域と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1および第2磁石収容領域のそれぞれ一端部に接するとともに、前記回転子鉄心の外周面を通してその回転子鉄心の外に開放された第1及び第2外周側磁気空隙と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1および第2磁石収容領域のそれぞれ他端部に接する第1及び第2内周側磁気空隙と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1および第2内周側磁気空隙の相互間において前記回転子鉄心の径方向における外周側と内周側に分かれて位置する外周側センタ磁気空隙及び内周側センタ磁気空隙と;前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記第1内周側磁気空隙と前記外周側センタ磁気空隙との間および前記第2内周側磁気空隙と前記外周側センタ磁気空隙との間にそれぞれ位置して互いの間隔が前記回転子鉄心の外周側から内周側に向けて狭まるように配置され、前記回転子鉄心における前記第1及び第2磁石収容領域,前記第1及び第2外周側磁気空隙,前記第1及び第2内周側磁気空隙,前記外周側センタ磁気空隙より外周側の領域に繋がる第1及び第2外周側ブリッジ部と;前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記第1内周側磁気空隙と前記内周側センタ磁気空隙との間および前記第2内周側磁気空隙と前記内周側センタ磁気空隙との間にそれぞれ位置して互いの間隔が前記回転子鉄心の外周側から内周側に向けて狭まるように配置され、前記第1及び第2外周側ブリッジ部にそれぞれ連結されるとともに、前記回転子鉄心における前記第1及び第2磁石収容領域,前記第1及び第2外周側磁気空隙,前記第1及び第2内周側磁気空隙,前記内周側センタ磁気空隙より内周側の領域に繋がる第1及び第2内周側ブリッジ部と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記外周側センタ磁気空隙と前記内周側センタ磁気空隙との間に位置し、前記第1外周側ブリッジ部および前記第1内周側ブリッジ部の連結部と前記第2外周側ブリッジ部および前記第2内周側ブリッジ部の連結部との間に掛け渡されたセンタブリッジ部と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第1外周側ブリッジ部および前記第1内周側ブリッジ部の連結部から前記第1内周側磁気空隙内に突出して前記第1磁石収容領域に対向する永久磁石保持用の第1突出部と;前記回転子鉄心の前記各磁極に設けられ、前記第2外周側ブリッジ部および前記第2内周側ブリッジ部の連結部から前記第2内周側磁気空隙内に突出して前記第2磁石収容領域に対向する永久磁石保持用の第2突出部と;を備える。前記第1外周側ブリッジ部は、前記外周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含む。前記第1内周側ブリッジ部は、前記内周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含む。前記第2外周側ブリッジ部は、前記外周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含む。前記第2内周側ブリッジ部は、前記内周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、直線状に延びる直線状部位を含む。前記センタブリッジ部は、前記内周側センタ磁気空隙との境界となる部分が、前記第1外周側ブリッジ部,前記第1内周側ブリッジ部,前記第2外周側ブリッジ部,前記第2内周側ブリッジ部のそれぞれ前記直線状部位を含む仮想直線と直交する方向に延びる直線状部位を含む。前記第1外周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点が、前記第1内周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点より、前記第1磁石収容領域から遠い位置に存している。前記第2外周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点が、前記第2内周側ブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線と前記センタブリッジ部の前記直線状部位を含む仮想直線との交点より、前記第2磁石収容領域から遠い位置に存している。
【0007】
実施形態の回転電機は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転子と、この回転子を回転自在に支持する固定子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る永久磁石型の回転電機の横断面図。
図2図2は、一実施形態における回転子鉄心の一部を示す横断面図。
図3図3は、図2の一部を拡大して示す図。
図4図4は、図3におけるブリッジ部の幅寸法が異なる例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、この発明の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0010】
図1は一実施形態に係る永久磁石型の回転電機の横断面図、図2は一実施形態における回転子鉄心の1磁極部分を拡大して示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、回転電機1は、例えばインナーロータ型の回転電機として構成され、図示しない固定枠に支持された環状あるいは円筒形状の固定子10、およびこの固定子10の内側に中心軸線(回転中心)Cを有して回転自在にかつ固定子10と同軸的に支持された回転子20を含む。回転電機1は、例えばハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)において、駆動モータあるいは発電機に好適に適用される。
【0012】
固定子10は、円筒形状の固定子鉄心11およびこの固定子鉄心11に巻き付けられた電機子巻線(コイル)12を備える。固定子鉄心11は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板(鉄心片)を多数枚、同芯状に積層して構成されている。固定子鉄心11の内周部には、複数のスロット13が形成されている。
【0013】
各スロット13は、固定子鉄心11の円周方向に等間隔を置いて並んでいる。各スロット13は、固定子鉄心11の内周面に開口し、この内周面から放射方向に延出している。各スロット13は、固定子鉄心11の軸方向の全長に亘って延在している。これらスロット13の形成に伴い、固定子鉄心11の内周部に、回転子20に面する複数(例えば48個)の固定子ティース14が形成されている。電機子巻線12は、各スロット13に挿通され、かつ各固定子ティース14に巻き付けられている。電機子巻線12に電流が流れることにより、固定子10(固定子ティース14)に所定の鎖交磁束が形成される。
【0014】
回転子20は、両端が図示しない軸受により回転自在に支持された円柱形状の回転軸(シャフト)21、この回転軸21の軸方向ほぼ中央部に固定された円筒形状の回転子鉄心22、この回転子鉄心22に埋め込まれた複数の永久磁石M1および複数の永久磁石M2を有している。回転子20は、固定子10の内側に、その固定子10の内周面と僅かな隙間(エアギャップ)を置いて同軸的に配置されている。回転子20の外周面は、僅かな隙間をおいて、固定子10の内周面に対向している。回転子鉄心22は、中心軸線Cと同軸的に形成された内孔23を有している。回転軸21は、内孔23に挿通および嵌合され、回転子鉄心22と同軸的に延在している。
【0015】
回転子鉄心24は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板(鉄心片)を多数枚、同芯状に積層した積層体として構成されている。回転子鉄心22は、鉄心片の積層方向に延びる上記中心軸線C、および固定子10の内周面に僅かな隙間(エアギャップ)を置いて対向する外周面22xを有している。
【0016】
回転子鉄心22は、複数の磁極、例えば8つの磁極を有している。回転子鉄心22において、中心軸線Cおよび円周方向に隣合う磁極間の境界を通って回転子鉄心22の径方向に延びる軸をq軸、およびこれらq軸に対して円周方向に電気的に90°離間した軸、つまり中心軸線Cから各磁極の円周方向における中央を通って径方向に延びる線をそれぞれd軸と称する。固定子10によって形成される鎖交磁束の流れ易い方向がq軸となる。これらd軸およびq軸は、回転子鉄心22の円周方向に交互にかつ所定の位相で設けられている。回転子鉄心22の1磁極分とは、円周方向に隣合う2本のq軸間の領域(1/8周の周角度領域)をいう。1つの磁極における円周方向の中央がd軸となる。
【0017】
図1および図2に示すように、回転子鉄心22の各磁極に、永久磁石M1を収容する磁石収容領域(第1磁石収容領域)31、および永久磁石M2を収容する磁石収容領域(第2磁石収容領域)41が、d軸を間に挟む対照的な位置に配置されている。
【0018】
磁石収容領域31,41は、回転子鉄心22の外周面22xに近い位置で回転子鉄心22の円周方向に互いに所定距離L1離れて配置される一端部31a,41aを有し、かつ回転子鉄心22の外周面22xから回転子鉄心22の径方向に所定距離L1離れた位置で互いに接近して配置される他端部31b,41bを有し、内周側端から外周側端に向かうに従ってd軸からの距離が徐々に広がるようにほぼV字状に配置されている。d軸に対する磁石収容領域31,41の傾斜の角度θは、90度より小さい。
【0019】
磁石収容領域31は、永久磁石M1の断面形状に対応する矩形形状を有し、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。磁石収容領域31は、一端部31aと他端部31bとの間に、回転子鉄心22の外周側に位置する周縁31cおよび回転子鉄心22の内周側に位置する周縁31dを有している。この磁石収容領域31に永久磁石M1が収容される。この収容に伴い、永久磁石M1の長手方向両端部の非磁極面M1a,M1bが磁石収容領域31の一端部31aと他端部31bにそれぞれ対応し、永久磁石M1の長手方向に沿う磁極面M1c,M1dが磁石収容領域31の周縁31c,31dにそれぞれ当接する。永久磁石M1は、例えば接着剤等により回転子鉄心22に固定される。
【0020】
磁石収容領域41は、永久磁石M2の断面形状に対応する矩形形状を有し、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。磁石収容領域41は、一端部41aと他端部41bとの間に、回転子鉄心22の外周側に位置する周縁41cおよび回転子鉄心22の内周側に位置する周縁41dを有している。この磁石収容領域41に永久磁石M2が収容される。この収容に伴い、永久磁石M2の長手方向両端部の非磁極面M2a,M2bが磁石収容領域41の一端部41aと他端部41bにそれぞれ対応し、永久磁石M2の長手方向に沿う磁極面M2c,M2dが磁石収容領域41の周縁41c,41dにそれぞれ当接する。永久磁石M2は、例えば接着剤等により回転子鉄心22に固定される。
【0021】
永久磁石M1,M2は、横断面が矩形状の細長い平板状に形成され、回転子鉄心22の軸方向長さとほぼ等しい長さを有している。永久磁石M1,M2は、軸方向に複数に分割された磁石を組み合わせて構成されてもよく、この場合、複数の磁石の合計の長さが回転子鉄心22の軸方向長さとほぼ等しくなるように形成される。
【0022】
回転子鉄心22の各磁極に、磁石収容領域31の一端部31aに連通状態で接する外周側磁気空隙(第1外周側磁気空隙)32、および磁石収容領域41の一端部41aに連通状態で接する外周側磁気空隙(第2外周側磁気空隙)42が配置されている。
【0023】
外周側磁気空隙32は、非磁性体たとえば空気を含む磁気的な空隙であり、回転子鉄心22の外周面22xに形成された切込み孔34を通して回転子鉄心22の外に開放されている。外周側磁気空隙42は、非磁性体たとえば空気を含む磁気的な空隙であり、回転子鉄心22の外周面22xに形成された切込み孔44を通して回転子鉄心22の外に開放されている。これら外周側磁気空隙32,42は、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。
【0024】
回転子鉄心22の各磁極に、磁石収容領域31の他端部31bに連通状態で接する内周側磁気空隙(第1内周側磁気空隙)33、磁石収容領域41の他端部41bに連通状態で接する内周側磁気空隙(第2内周側磁気空隙)43が配置されている。
【0025】
内周側磁気空隙33は、非磁性体たとえば空気を含む磁気的な空隙であり、磁石収容領域31の周縁31cからd軸に向け延びる周縁33a、この周縁33aから内周側に屈曲してd軸との間隔が徐々に狭まるようにd軸に対し傾斜しながら内孔23に向け延びて後述の突出部63に連なる周縁33b、その突出部63からd軸との間隔が徐々に狭まるようにd軸に対し傾斜しながら内孔23に向け延びる周縁33c、この周縁33cから磁石収容領域31側に戻るように屈曲しながら内孔23に対向する周縁33d、この周縁33dから磁石収容領域31に向け延びる周縁33e、この周縁33eから磁石収容領域31の周縁31dに連なる周縁33fを有し、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。
【0026】
内周側磁気空隙43は、非磁性体たとえば空気を含む磁気的な空隙であり、磁石収容領域41の周縁41cからd軸に向け延びる周縁43a、この周縁43aから内周側に屈曲してd軸との間隔が徐々に狭まるようにd軸に対し傾斜しながら内孔23に向け延びて後述の突出部73に連なる周縁43b、その突出部73からd軸との間隔が徐々に狭まるようにd軸に対し傾斜しながら内孔23に向け延びる周縁43c、この周縁43cから磁石収容領域41側に戻るように屈曲しながら内孔23に対向する周縁43d、この周縁43dから磁石収容領域41に向け延びる周縁43e、この周縁43eから磁石収容領域41の周縁41dに連なる周縁43fを有し、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。
【0027】
図2および図3では、内周側磁気空隙33,43の周縁部の形状が、後述の外周側ブリッジ部61,71と隣接する部分において、互いに少し異なる非対称の例を示している。この内周側磁気空隙33,43の周縁部の形状については、このような非対称に限らず、互いに同じでもよい。
【0028】
回転子鉄心22の各磁極において、磁石収容領域31の一端部31a側の周縁31dと外周側磁気空隙32との間に、永久磁石M1を保持するための磁石保持突起35が配置されている。回転子鉄心22の各磁極において、磁石収容領域41の一端部41a側の周縁41dと外周側磁気空隙42との間に、永久磁石M2を保持するための磁石保持突起45が配置されている。
【0029】
外周側磁気空隙32および内周側磁気空隙33は、磁石収容領域31内の永久磁石M1の両端部における磁束(磁石磁束という)の短絡を防ぐフラックスバリアとして機能するとともに、回転子鉄心22の軽量化にも寄与する。外周側磁気空隙42および内周側磁気空隙43は、磁石収容領域41内の永久磁石M2の両端部における磁束(磁石磁束)の短絡を防ぐフラックスバリアとして機能するとともに、回転子鉄心22の軽量化にも寄与する。
【0030】
切込み孔34,44を通して回転子鉄心22の外に開放されている外周側磁気空隙32,42は、回転子鉄心22内での磁石磁束の短絡を抑制する。これにより、回転電機1の性能が向上し、ひいては回転電機1の小型化および軽量化が図れる。
【0031】
回転子鉄心22の各磁極において、内周側磁気空隙33,43の相互間に、外周側センタ磁気空隙51および内周側センタ磁気空隙52が回転子鉄心22の径方向における外周側と内周側に分かれて配置されている。
【0032】
外周側センタ磁気空隙51は、非磁性体たとえば空気を含む磁気的な空隙であり、外周面22xに対向しかつd軸と直交する周縁51a、内周側磁気空隙33の周縁33bに対向しかつd軸との間隔が外周側から内周側にかけて狭まる状態にd軸に対し傾斜した周縁51b、内周側センタ磁気空隙52に対向しかつd軸と直交する周縁51c、内周側磁気空隙43の周縁43bに対向しかつd軸との間隔が外周側から内周側にかけて狭まる状態にd軸に対し傾斜した周縁51dから成る台形形状を有し、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。
【0033】
内周側センタ磁気空隙52は、非磁性体たとえば空気を含む磁気的な空隙であり、内周側センタ磁気空隙51の周縁51cに対向しかつd軸と直交する周縁52a、内周側磁気空隙33の周縁33cに対向しかつd軸との間隔が外周側から内周側にかけて狭まる状態にd軸に対し傾斜した周縁52b、内孔23に対向しかつd軸と直交する周縁52c、内周側磁気空隙43の周縁43cに対向しかつd軸との間隔が外周側から内周側にかけて狭まる状態にd軸に対し傾斜した周縁52dから成る台形形状を有し、回転子鉄心22を軸方向に貫通して形成されている。
【0034】
回転子鉄心22の各磁極において、内周側磁気空隙33の周縁33bと外周側センタ磁気空隙51の周縁51bとの間に柱状の外周側ブリッジ部(第1外周側ブリッジ部)61が形成され、内周側磁気空隙43の周縁43bと外周側センタ磁気空隙51の周縁51dとの間に柱状の外周側ブリッジ部(第2外周側ブリッジ部)71が形成されている。これら外周側ブリッジ部61,71は、外周側センタ磁気空隙51の台形形状に沿うように、互いの間隔が回転子鉄心22の外周側から内周側に向けて狭まるようにd軸に対し傾斜して配置され、回転子鉄心22における磁石収容領域31,41、外周側磁気空隙32,42、内周側磁気空隙33,43、外周側センタ磁気空隙51より外周側の扇形の領域22aに繋がっている。領域22aのことを外周側鉄心部22aという。
【0035】
磁石収容領域31,41、外周側磁気空隙32,42、内周側磁気空隙33,43、外周側センタ磁気空隙51により、1層分のフラックスバリアが形成される。
【0036】
回転子鉄心22の各磁極において、内周側磁気空隙33の周縁33cと内周側センタ磁気空隙52の周縁52bとの間に柱状の内周側ブリッジ部(第1内周側ブリッジ部)62が形成され、内周側磁気空隙43の周縁43cと内周側センタ磁気空隙52の周縁52dとの間に柱状の内周側ブリッジ部(第2内周側ブリッジ部)72が形成されている。これら内周側ブリッジ部62,72は、内周側センタ磁気空隙52の台形形状に沿うように、互いの間隔が回転子鉄心22の外周側から内周側に向けて狭まるようにd軸に対し傾斜して配置され、外周側ブリッジ部61,71にそれぞれ連結されるとともに、回転子鉄心22における磁石収容領域31,41、外周側磁気空隙32,42、内周側磁気空隙33,43、内周側センタ磁気空隙52より内周側の領域22bに繋がっている。内周側の領域22bのことを内周側鉄心部22bという。
【0037】
切込み孔34,44や磁石収容領域31,41によって内周側鉄心部22bから離れた状態の扇形の外周側鉄心部22aを外周側ブリッジ部61,71とそれに連結した内周側ブリッジ部62,72によって内周側鉄心部22bに繋いでいるので、大きな遠心力が外周側鉄心部22aに加わっても、外周側鉄心部22aを内周側鉄心部22b側から安定して支持することができる。
【0038】
回転子鉄心22の各磁極において、外周側センタ磁気空隙51の周縁51cと内周側センタ磁気空隙52の周縁52aとの間に、柱状のセンタブリッジ部80が形成されている。このセンタブリッジ部80は、外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62の連結部60と外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72の連結部70との間に掛け渡されて、その連結部60,70を結合している。
【0039】
外周側ブリッジ部61,71を互いの間隔が外周側から内周側に向かって徐々に狭くなるように台形状に配置し、かつ内周側ブリッジ部62,72を互いの間隔が外周側から内周側に向かって徐々に狭くなるように台形状に配置し、さらに外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62の連結部60と外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72の連結部70とをセンタブリッジ部80で結合していることにより、外周側ブリッジ部61,71および内周側ブリッジ部62,72に強い曲げ応力が加わっても、それによる各ブリッジ部の変形を十分な強度をもって抑えることができる。
【0040】
外周側ブリッジ部61は、外周側センタ磁気空隙51との境界部分(外周側センタ磁気空隙51の周縁51b)に、当該外周側ブリッジ部61のd軸に対する傾斜と同じ傾きをもって直線状に延びる直線状部位61xを含む。内周側ブリッジ部62は、内周側センタ磁気空隙52との境界部分(内周側センタ磁気空隙52の周縁52b)に、当該内周側ブリッジ部62のd軸に対する傾斜と同じ傾きをもって直線状に延びる直線状部位62xを含む。
【0041】
外周側ブリッジ部71は、外周側センタ磁気空隙51との境界部分(外周側センタ磁気空隙51の周縁51d)に、当該外周側ブリッジ部71のd軸に対する傾斜と同じ傾きをもって直線状に延びる直線状部位71xを含む。内周側ブリッジ部72は、内周側センタ磁気空隙52との境界部分(内周側センタ磁気空隙52の周縁52d)に、当該内周側ブリッジ部72のd軸に対する傾斜と同じ傾きをもって直線状に延びる直線状部位72xを含む。
【0042】
センタブリッジ部80は、内周側センタ磁気空隙52との境界部分(内周側センタ磁気空隙52の周縁52a)80xに、外周側ブリッジ部61,内周側ブリッジ部62,外周側ブリッジ部71,内周側ブリッジ部72のそれぞれ直線状部位61x,62x,71x,72xを含む仮想直線A1,B1,A2,B2と直交する方向に延びる直線状部位80xを含む。
【0043】
外周側ブリッジ部61の直線状部位61xを含む仮想直線A1とセンタブリッジ部80の直線状部位80xを含む仮想直線Dとの交点A1xが、内周側ブリッジ部62の直線状部位62xを含む仮想直線B1とセンタブリッジ部80の直線状部位80xを含む仮想直線Dとの交点B1xより、磁石収容領域31から遠い位置に存している。外周側ブリッジ部71の直線状部位71xを含む仮想直線A2とセンタブリッジ部80の直線状部位80xを含む仮想直線Dとの交点A2xが、内周側ブリッジ部72の直線状部位72xを含む仮想直線B2とセンタブリッジ部80の直線状部位80xを含む仮想直線Dとの交点B2xより、磁石収容領域41から遠い位置に存している。
【0044】
つまり、回転子鉄心22の円周方向において、外周側ブリッジ部61が内周側ブリッジ部62よりもd軸側に寄った状態となり、その結果、磁石収容領域31の他端部31bと外周側ブリッジ部61との間の距離G1が拡がる。磁石収容領域31の他端部31bと外周側ブリッジ部61との間の距離G1が拡がるので、永久磁石M1を磁石収容領域31に装填する作業に際し、外周側ブリッジ部61の存在に邪魔されることなく、永久磁石M1を磁石収容領域31に容易に装填することができる。これにより、回転子20を製造する際の作業性が向上する。
【0045】
回転子鉄心22の円周方向において、外周側ブリッジ部71が内周側ブリッジ部72よりもd軸側に寄った状態となり、その結果、磁石収容領域41の他端部41bと外周側ブリッジ部71との間の距離G2が拡がる。距離G2が拡がるので、永久磁石M2を磁石収容領域41に装填する作業に際し、外周側ブリッジ部71の存在に邪魔されることなく、永久磁石M2を磁石収容領域41に容易に装填することができる。この点でも、回転子20を製造する際の作業性が向上する。
【0046】
外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62の連結部60と外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72の連結部70とをセンタブリッジ部80で連結しているので、連結部60,70に強い曲げ応力が加わっても、それによる各ブリッジ部の変形を十分な強度をもって抑えることができる。
【0047】
回転子鉄心22の円周方向における外周側ブリッジ部61の幅寸法E1は、外周側ブリッジ部61において内周側磁気空隙33との境界となる部分(内周側磁気空隙33の周縁33b)および外周側センタ磁気空隙51との境界となる部分(外周側センタ磁気空隙51の周縁51b)の相互間の幅寸法として規定される。回転子鉄心22の円周方向における内周側ブリッジ部62の幅寸法F1は、内周側ブリッジ部62において内周側磁気空隙33との境界となる部分(内周側磁気空隙33の周縁33c)および内周側センタ磁気空隙52との境界となる部分(内周側センタ磁気空隙52の周縁52b)の相互間の幅寸法として規定される。
【0048】
回転子鉄心22の円周方向における外周側ブリッジ部71の幅寸法E2は、外周側ブリッジ部71において内周側磁気空隙43との境界となる部分(内周側磁気空隙43の周縁43b)および外周側センタ磁気空隙51との境界となる部分(外周側センタ磁気空隙51の周縁51d)との境界となる部分の相互間の幅寸法として規定される。回転子鉄心22の円周方向における内周側ブリッジ部72の幅寸法F2は、内周側ブリッジ部72において内周側磁気空隙43との境界となる部分(内周側磁気空隙43の周縁43c)および内周側センタ磁気空隙52との境界となる部分(内周側センタ磁気空隙52の周縁52d)の相互間の幅寸法として規定される。
【0049】
各ブリッジ部の幅寸法E1,F1,E2,F2については、磁石磁束の漏れが少なくなるよう、できるだけ細く設定される。そして、各ブリッジ部の幅寸法E1,F1,E2,F2をできるだけ細く設定しても、各ブリッジ部に加わる強い曲げ応力に対して各ブリッジ部の十分な強度を保てるよう、外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62のうち曲げ応力が大きく加わる側の内周側ブリッジ部62の幅寸法F1の最小値が外周側ブリッジ部61の幅寸法E1の最小値と同じまたはそれより大きく設定され、外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72のうち曲げ応力が大きく加わる側の内周側ブリッジ部72の幅寸法F2の最小値が外周側ブリッジ部71の幅寸法E2の最小値と同じまたはそれより大きく設定される。
【0050】
回転子鉄心22の径方向におけるセンタブリッジ部80の幅寸法は、内周側ブリッジ部62,72の幅寸法F1,F2とほぼ同じ値に設定される。
【0051】
図2および図3の例では、内周側ブリッジ部62の幅寸法F1の最小値が外周側ブリッジ部61の幅寸法E1の最小値とほぼ同じに設定され、内周側ブリッジ部72の幅寸法F2の最小値が外周側ブリッジ部71の幅寸法E2の最小値とほぼ同じに設定された状態を示している。図4に示すように、内周側ブリッジ部62の幅寸法F1の最小値が外周側ブリッジ部61の幅寸法E1の最小値より大きく設定され、内周側ブリッジ部72の幅寸法F2の最小値が外周側ブリッジ部71の幅寸法E2の最小値より大きく設定される構成でもよい。
【0052】
[永久磁石保持用の突出部63,73について]
回転子鉄心22の各磁極に、外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62の連結部60から内周側磁気空隙33の周縁33b,33c内に突出する永久磁石保持用の突出部(第1突出部)63が設けられ、外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72の連結部70から内周側磁気空隙43の周縁43b,43c内に突出する永久磁石保持用の突出部(第2突出部)73が設けられている。
【0053】
突出部63は、磁石収容領域31内の永久磁石M1の動きを規制するためのもので、d軸に対する磁石収容領域31の傾斜とほぼ同じ角度でd軸に対し傾斜しながら磁石収容領域31の他端部31bに向けて柱状に延び、先端63aが磁石収容領域31内の永久磁石M1の非磁極面M1bに対向している。突出部73は、磁石収容領域41内の永久磁石M2の動きを規制するためのもので、d軸に対する磁石収容領域41の傾斜とほぼ同じ角度でd軸に対し傾斜しながら磁石収容領域41の他端部41bに向けて柱状に延び、先端73aが磁石収容領域41内の永久磁石M2の非磁極面M2bに対向している。この吐出部73により、磁石収容領域41内の永久磁石M2の動きが規制される。
【0054】
図2および図3では、突出部63,64の突出方向の長さや突出方向と直交する方向の幅など、突出部63,64の形状については、互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0055】
回転電機1の高負荷運転等により回転子鉄心22および各永久磁石M1、M2が高温になった場合、弱め界磁制御等による反磁界が固定子10から回転子鉄心22に加わることがある。
【0056】
この場合、永久磁石M1を通った反磁界の磁束が永久磁石保持用の突出部63の先端63aに向かうことも考えられるが、突出部63を支持している外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62はその外周側端部および内周側端部において磁石磁束が飽和して目詰まりの状態つまり高磁気抵抗の状態となるので、永久磁石M1を通った反磁界の磁束が外周側ブリッジ部61および内周側ブリッジ部62を通って突出部63に流入する事態を回避することができる。ひいては、反磁界の磁束が突出部63を通って永久磁石M1を掠め通る不具合は発生せず、よって永久磁石M1における不可逆減磁を回避することができる。すなわち、永久磁石M1における耐減磁性能が向上する。
【0057】
同様に、永久磁石M2を通った反磁界の磁束が永久磁石保持用の突出部73の先端73aに向かうことも考えられるが、突出部73を支持している外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72はその外周側端部および内周側端部が磁石磁束の飽和によって目詰まりの状態つまり高磁気抵抗の状態となるので、永久磁石M2を通った反磁界の磁束が外周側ブリッジ部71および内周側ブリッジ部72を通って突出部73に流入する事態も回避することができる。ひいては、反磁界の磁束が突出部73を通って永久磁石M2を掠め通る不具合は発生せず、よって永久磁石M2における不可逆減磁を回避することができる。すなわち、永久磁石M2における耐減磁性能が向上する。
【0058】
不可逆減磁の対策として、保磁力の高い永久磁石M1,M2を採用したり、永久磁石M1,M2の厚み(磁極面Ma,Mbの相互間の厚み)を大きくするといった処置があるが、これらの処置はコストの上昇や回転電機1の大型化を招いてしまう。本実施形態ではそのような処置を講じることなく不可逆減磁を回避できるので、コストの上昇や回転電機1の大型化といった不具合は生じない。
【0059】
[空隙孔91,92について]
回転子鉄心22は、磁極ごとに、外周面に近い位置にかつd軸上の位置に、空隙孔(空洞)91を有している。回転子鉄心22は、内孔23に近い位置にかつq軸上の位置に、2つの磁極に跨る空隙孔(空洞)92を有している。
【0060】
各空隙孔91は、3つの周縁91a,91b,91cからなるほぼ二等辺三角形の断面形状を有し、回転子鉄心24の軸方向の全長に亘って形成されている。各空隙孔26を形成する3つの周縁91a,91b,91cのうち、二等辺三角形の底辺に相当する周縁91aがd軸と直交する状態で外周面22xに近接し、残りの2つの周縁91b,91cが外周面から徐々に離れながらd軸に向かうようにd軸に対し傾斜している。
【0061】
各空隙孔92は、7つの周縁92a~91gからなる多角形の断面形状を有し、回転子鉄心22の軸方向の全長に亘って形成されている。各空隙孔92を形成する周縁92a~91gのうち、最も大きい周縁92aがq軸と直交する状態で内孔23と対向し、この周縁92aの両側から外周側に向け立ち上がる2つの周縁92b,92gがd軸を挟んで対向し、この周縁92b,92gに続く2つの周縁92c,92fがそれぞれq軸に向かって延び、この周縁92c,92fに続く残りの2つの周縁92d,92eが外周面22xに徐々に近づきながらq軸に向かうようにd軸に対し傾斜している。各空隙孔92は、各空隙孔91より大きい。これら空隙孔91,92は、冷媒(冷却油)の通路となり、回転子鉄心22の軽量化にも寄与する。
【0062】
なお、この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
例えば、回転子の磁極数、寸法、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。回転子の各磁極における永久磁石の設置数は、2つに限らず、必要に応じて、増加可能である。ブリッジを構成する第1センタブリッジは、2本に限らず、3本以上としてもよい。
【要約】
回転子は、回転子鉄心の磁極ごとに、第1及び第2磁石収容領域、第1及び第2外周側磁気空隙、第1及び第2内周側磁気空隙、外周側センタ磁気空隙及び内周側センタ磁気空隙、第1及び第2外周側ブリッジ部、第1及び第2内周側ブリッジ部、センタブリッジ部、永久磁石保持用の第1突出部及び第2突出部、を備える。前記第1及び第2外周側ブリッジ部は、互いの間隔が前記回転子鉄心の外周側から内周側に向けて狭まるように配置されている。第1及び第2内周側ブリッジ部は、互いの間隔が前記回転子鉄心の外周側から内周側に向けて狭まるように配置され、かつ前記第1及び第2外周側ブリッジ部にそれぞれ連結されている。
図1
図2
図3
図4