(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】デバイスによる心房不整脈のモニタリングおよびサーバによる特性評価の非侵襲的方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/361 20210101AFI20230725BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20230725BHJP
A61B 5/282 20210101ALI20230725BHJP
A61B 5/24 20210101ALI20230725BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230725BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20230725BHJP
【FI】
A61B5/361 ZDM
A61B5/332
A61B5/282
A61B5/24
A61B5/02 310A
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2021526469
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 IB2019060028
(87)【国際公開番号】W WO2020104986
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LT
(73)【特許権者】
【識別番号】517200382
【氏名又は名称】カウナス ユニバーシティ オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】516314125
【氏名又は名称】ヴィリニュス・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Vilnius University
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マロザス、ヴァイドタス
(72)【発明者】
【氏名】ペトレナス、アンドリウス
(72)【発明者】
【氏名】ソロセンコ、アンドリウス
(72)【発明者】
【氏名】ダウカンタス、サウリウス
(72)【発明者】
【氏名】シマイタイト、モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ラパリス、アンドリウス
(72)【発明者】
【氏名】バセヴィシウス、ジャスティナス
(72)【発明者】
【氏名】アイディエティス、アンドリウス
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504148(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217016(JP,U)
【文献】特開2003-275186(JP,A)
【文献】特開2003-260145(JP,A)
【文献】特開平04-371134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61B 5/02-5/03
G16H 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスによる心房不整脈のモニタリングおよび
サーバによる特性評価の非侵襲的方法であって、
a)
人の手首に備えられた携帯型の患者結合型デバイス
であって、前記デバイスがI、II、およびIII誘導を備える、
前記デバイスが用意されるステップと、
b)前記デバイス
が、フォトプレチスモグラフィ信号を連続的に記録するステップと、
c)前記デバイス
が、前記フォトプレチスモグラフィ信号中の心房不整脈の特徴を分析することにより、心房不整脈を検出するステップと、
d)心房不整脈が検出された場合、
前記デバイスが、2つの外部電極の内、第1の外部電極に
患者の指で触れ、第2の外部電極に
前記患者の胸部または腹部で触れて、短期心電図信号を記録するように
前記患者に助言するステップと、
e)前記デバイス
が、I、II、III誘導からの心電図信号を測定し、測定されたI、II、III誘導から修正aVR、aVL、aVF心電図誘導を計算するステップと、
f)
前記デバイスが、測定された(I、II、III誘導)及び計算された(aVR、aVL、aVF誘導)心電図信号データ
をサーバに送信するステップと、
g)前記サーバで
心房不整脈発作の時間分布に関する集計値を決定することにより、間欠性の不整脈発作パターンを特徴付けるステップと、を有する方法。
【請求項2】
ステップd)において、フォトプレチスモグラム信号で心房不整脈を検出した後、
前記デバイスからの助言によって
前記短期心電図信号の記録を開始することができる、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野に属し、具体的には、邪魔にならない形で脳卒中後患者の不整脈発作を長期的にモニタリングし、不整脈発作の分布を特性評価する、システムおよび方法に属する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載するシステムおよび方法は、心房細動の発生および虚血性脳卒中のリスク増加と関連付けられる、心臓不整脈(更には、心房不整脈)を検出し、モニタリングし、特性評価することを意図したものである。システムは、生体信号(フォトプレチスモグラム、心電図、生体インピーダンス、温度、湿度、動き)のセンサが統合されたウェアラブルデバイスと、ウェアラブルデバイスに統合するように意図された、フォトプレチスモグラムおよび短期心電図の持続的モニタリングを包含する、心房不整脈の自己間欠性(self-intermittent)発作のためのモジュールと、サーバで、パーソナルコンピュータで、またはスマートデバイス(スマートフォン、タブレット、もしくはスマートウォッチなど)で使用される、不整脈発作の分布の特性評価を査定して疾患の進行を査定するモジュールとから成る。提示する解決策によって、邪魔にならない形で長期的に患者の心房不整脈をモニタリングすることが可能になり、したがって、医療機関および患者の自宅の両方で使用することができる。
【0003】
粘着性電極を有する標準的な外来患者用心電図記録デバイス(例えば、ホルターモニタ、心イベントモニタ)が、自発的に終わり無症状である場合が多い不整脈を認識する目的で使用されていた。近年の電子工学および医療技術の発展により、フォトプレチスモグラフィなど、接触が最小限であって患者にとってより便利な方法を使用することによって、調律異常を認識することが可能になっている。フォトプレチスモグラフィの最初の用途は、スマートフォン(Lee J.et al.Atrial fibrillation detection using an iPhone(登録商標) 4S,IEEE Transactions on Biomedical Engineering,60(1),203-206,2013)、インターネットカメラ(Couderc J.P.et al.Detection of atrial fibrillation using contactless facial video monitoring Heart Rhythm,12(1),195-201,2015)、耳センサ(Conroy T.et al.Detection of atrial fibrillation using an earlobe photoplethysmographic sensor,Physiological Measurement,38(10),1906,2017)、またはスマートブレスレット(Corino V.D.A.et al.Detection of atrial fibrillation episodes using a wristband device,Physiological Measurement,38(5),787,2017)によって信号が記録された場合の、心房細動検出のフィージビリティスタディに限定されていた。これらの方法の有効性は、標準的な心電図記録法に基づく方法を使用して得られる結果に未だに大きく遅れを取っている。これは、心電図信号と比較して、動きアーチファクトによってフォトプレチスモグラフィ信号の品質が低いこと、およびフォトプレチスモグラフィ信号の処理に関する信頼性が高い特定の方法がないことによって説明がつく。
【0004】
フォトプレチスモグラフィ波形を分析することによって、心臓活動を査定するように設計されたデバイスは、通常、長期着用が意図され、患者の四肢の1つに取り付けられる(US6,519,490B1、US2007/0255146、US7,794,406B2、US2015/0018693A1)。文献US6,519,490B1(2003年2月11日公開)は、脈拍波形を記録することができるデバイス(圧力波形を記録する血圧測定デバイスのカフなど)を使用することによって、心房細動を検出する方法を記載している。方法は、連続した心室収縮間の時系列の分析に基づいており、それによって心房細動に関連する心調律異常を同定することが可能である。これらのデバイスによって記録される脈圧波形は30未満と比較的短く、したがって不整脈検出アルゴリズムの信頼性は高くない。文献US2007/0255146(2007年11月1日公開)は、患者の指に取り付けられたフォトプレチスモグラフィセンサを使用することによって、フォトプレチスモグラフィ波形における心房細動を検出するシステムおよび方法を記載している。指フォトプレチスモグラフィセンサは不快感をもたらすので、かかる方法は、心房細動の自発的に終わる発作を検出することを目的とした長期患者モニタリングには適さない。文献US7,794,406B2(2010年1月14日公開)は、脈拍および血液酸素飽和度、呼吸数、ならびに心調律異常(心室期外収縮など)を査定するように設計された、フォトプレチスモグラフィに基づくブレスレット型デバイスを記載している。このブレスレット型システムは、データを外部センサから収集するように設計され、センサをブレスレットに統合することは予見されていなかった。文献US2015/0018693A1(2015年1月15日公開)は、心房細動をより高い信頼性で検出するように設計された、ブレスレット型のフォトプレチスモグラフィセンサの構成を記載している。フォトプレチスモグラフィ信号は、選択された身体部分(例えば、指、手首、太もも、ふくらはぎ)から、いくつかの個々のセンサによって記録される。システムは、警告メッセージが、SMS、電子メールによって、または音声信号を使用して患者に通知することによって送信されると、不整脈警告の可能性を予見する。上述した全ての方法およびシステムは、心電図記録によって診断を特定する可能性を予見するものではない。
【0005】
上述の制限を克服するため、フォトプレチスモグラムおよび心電図記録を提供するデバイスが提案された(US2015/0164349A1、US2016/0331247A1、US2017/0202459A1、US2015/0366518A1)。文献US2015/0164349A1(2015年6月18日公開)は、心臓調律、心臓調律変動を査定し、不整脈(例えば、心房細動)を検出するように設計された、システムおよび方法を記載している。このシステムはまた、心臓状態を点数で格付けし、ならびにユーザの目標値および推奨値を提供する。このシステムの使用中、ブレスレットに統合されたセンサは脈拍を継続的に記録し、心臓調律の不整が検出されると、システムユーザに外部デバイスを使用して心電図を記録するように通知する目的で、警告が起動される。例えば、生体電位電極が統合されたスマートフォンのケース、外来患者用または臨床用心電図記録計など、異なるデバイスを外部心電図記録デバイスとして使用することができる。システムは、外部デバイスを使用せずにブレスレットによって診断を特定するために信号を登録する選択肢は提供しない。この制限は、1つの電極が手と継続的に接触し、別の電極が反対の手の指に触れていなければならない、心電図電極をブレスレットに統合した選択肢を提供する、文献US2016/0331247A1(2016年11月17日公開)に記載されている拡張システムで克服されている。このシステムでは、フォトプレチスモグラフィで調整された不整脈検出アルゴリズムは、正常範囲からの心拍変動の分析に基づいており、したがって、心拍の急激な増加を引き起こし得る、異なる生理学的要因(例えば、情緒的ストレス)によって引き起こされる偽警告に対して感受性がある。更に、システムによる心電図信号の登録は1つの導出のみに制限され、それによって不整脈診断の信頼性が低減される。
【0006】
文献US2015/0366518A1(2015年12月24日公開)は、顕著な健康を脅かす状況(例えば、切迫心筋梗塞)を検出し、個人に警告するように設計された、方法およびシステムを記載している。システムは、フォトプレチスモグラム、加速度計、および必要な場合、短期心電図信号を記録する。フォトプレチスモグラムセンサが統合されたブレスレットおよび眼鏡の両方を含む、異なるデバイスの修正例が記載されてきている。システムは、「パニック」処方および遠隔支援呼出し(救急、警察、消防など)の起動を可能にする。生体信号記録の独自の解決策が、ヘッドフォンに統合されたセンサによるフォトプレチスモグラムの登録、および耳と手との間の心電図登録を提供する、文献US2017/0202459A1(2017年7月20日公開)において提案されている。心電図およびフォトプレチスモグラムを同期して登録することによって、脈拍波形伝播の時間を査定し、持続的な血圧のサロゲート値を提示する選択肢が提供される。上述した全ての方法およびシステムは、他のタイプの心房不整脈を検出するようには設計されておらず、心房不整脈発作を特性評価する可能性は提供しない。
【0007】
不整脈発作分布のプロファイルを考慮に入れ、不整脈発作がモニタリング期間全体にわたって均等に分布しているか、または特定の期間に集約されているかを示す、不整脈密度パラメータによって、心房細動発作の時間分布を査定することが提案された(Charitos E.I.et al.A comprehensive evaluation of rhythm monitoring strategies for the detection of atrial fibrillation recurrence:insights from 647 continuously monitored patients and implications for monitoring after therapeutic interventions,Circulation,126(7),806-814,2012)。モニタリング期間全体の中で記録された単一の不整脈発作が、その持続時間にかかわらず最大密度値を得るので、提案された心房細動密度パラメータはいくつかの制限を有する。
【0008】
自発的に終わる心房細動発作は、数秒間から数日間続く場合があり、したがって、かかる方法は不整脈発作プロファイルの特性評価の結果をゆがめる。更に、提案された方法は、心房細動不整脈の特性評価にしか適用できず、不整脈発生がより複雑な段階へと進行するのを査定可能にするであろう、いくつかの不整脈タイプを組み合わせる機会を何ら提供しない。
【0009】
本明細書で開示する解決策と比較して、最新技術の解決策では以下の制限が報告された。
提案されたシステムは、フォトプレチスモグラムで個々のタイプの心房不整脈を検出した後、デバイスユーザにリアルタイムで警告し、自動手段で行われた初期診断を医師が確認または却下するのに使用されるであろう、短期心電図信号を記録する可能性を何ら有さない。
提示されたシステムの記載は、リアルタイムで異なるタイプの心房不整脈を検出するのを可能にする、フォトプレチスモグラム信号に基づいたいかなる方法も特定していない。
提案された特許の記載は、心房不整脈の時間分布を特性評価するのに使用される、いかなる方法も特定していない。本明細書で提案される技術的解決策は、上記に列挙した制限を有さない。
【発明の概要】
【0010】
本明細書に開示する実施形態は、心房不整脈を検出および長期モニタリングし、ならびに心房不整脈の時間分布を特性評価するシステムおよび方法である。システムは、健康な個人および心房不整脈のリスクが増加している個人の予防検査向けに設計される。モニタリングは、例えば、外来患者環境での治療中、患者に心房不整脈モニタリングサービスを提供することができる、リハビリおよび介護病院で、一日または長期治療病院で、個人ヘルスケア機関で、また、重病後の患者(例えば、脳卒中、心筋梗塞、透析治療患者)に対して、心房細動および卒中のリスクが増加している患者で、抗不整脈薬剤投与量の個別化された選択を担うクリニックに対して、術後の予後指示および治療的介入(心臓アブレーションなど)の薬効評価を実施するクリニックで、医薬製剤の長期研究を実施する製薬企業に対して、異なる手法で実施することができる。
【0011】
実施形態は、心房不整脈をリアルタイム検出するモジュールが統合された携帯型の患者結合型デバイスと、心房不整脈発作の時間分布を特性評価するように設計されたサーバソフトウェアモジュールと、要約結果を分析するように設計された、医師が使用するスマートデバイス(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、スマートウォッチなど)、またはパーソナルコンピュータとから成る。患者の自宅からのデータは、クラウド技術を適用し、患者のスマートデバイスを利用して転送される。確認されていない心房不整脈、特に心房細動が、長期モニタリング中に自動手段によって検出された場合、上記不整脈発作の心電図を送信することによって、電子メールで医師に通知される。医師が心房細動の診断を確認した場合、心臓専門医の助言を求めることの推奨が患者のスマートデバイスに送信される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
システム実装例の実施形態を、添付図面を参照して以下に記載する。
【0013】
【
図1】システムの主要構成要素間の相互関係の図解を示す図である。
【
図2】患者結合型デバイスの主要構成要素を示す図である。
【
図3】粘着性電極を利用せずに6誘導心電図を記録するように設計された、デバイス使用の選択肢の1つを示す図である。
【
図4】患者結合型デバイスに統合されるように設計された、フォトプレチスモグラム信号に基づいた心房不整脈検出用モジュールの単純化したブロック図である。
【
図5】サーバまたはスマートデバイス(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、スマートウォッチなど)用に設計された、心房不整脈の発作の時間集計を特性評価するためのモジュールを示す図である。
【0014】
提示される図面は例証目的のものであり、それらの縮尺、比率、および他の特徴は必ずしも実際の技術的解決策に対応しない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載するシステムの適用は、心房細動に進行する心房不整脈のリスクが増加している、由来不明の卒中患者をモニタリングすることに限定されない。心房不整脈、特に心房細動は、異なる重篤な健康状態(心不全など)と関連付けられ、特に高齢者(65歳超)において多く報告されている健康問題であり、したがって、システムの適用範囲は卒中後の患者のモニタリングよりも広い。
システムは、少なくとも、
患者用に設計された機器である、
患者結合型デバイス(1)、
患者のスマートデバイス(2)、
医師用に設計された機器である、
医師のスマートデバイス(3)、
という部分から成る。
【0016】
システムは、上述のデバイスの中でも、心房不整脈の発作の時間集計を特性評価する統合されたモジュールを有するサーバ(4)と、インターネット網のインフラストラクチャと、上記デバイス間の接続を確保してデータ交換を行う技術的手段とから成る。
【0017】
患者結合型の携帯型デバイス(1)(
図2)は、継続的に記録されたフォトプレチスモグラム信号から心房不整脈をリアルタイムで検出し、かかるデバイスに特徴的な他の機能、例えば瞬間脈拍の記録、ステップ計数、回復心拍の査定などを実施することができるデバイスである。患者結合型デバイス(1)は、通常は手に取り付けられるが、他の身体部分(例えば、前腕、脚、頭部、耳など)に取り付けることができる。スマートブレスレット、スマートウォッチ、スマートヘッドフォン、スマートヘッドバンド、および上記機能を有する他のスマートデバイスを、代わりに使用することができる。フォトプレチスモグラム信号において心房不整脈を検出するためのソフトウェアモジュールは、患者結合型デバイス(1)に、または別個の制御用スマートデバイス(2)にインストールされる(
図4)。携帯型デバイス(1)は、コンピュータまたは類似の機能を実施するデバイスのUSBポートを通してデバイスを充電する期間中、サーバにデータを転送する。患者結合型デバイスは、次の機能を実施する。
リアルタイムでフォトプレチスモグラム信号を分析し、心房不整脈によって引き起こされる脈拍シーケンスの変化を検出する。
心房不整脈の自動検出後、システムユーザに対して、携帯型デバイスに統合された電極に触れ、短期心電図信号を記録するように助言する。
システムユーザが統合された電極に指定されたシーケンスで触れると、6誘導以下の心電図信号(改良されたI、II、III、aVR、aVL、aVF)が記録される。
心房発作が検出された場合、データはサーバに送信され、更に分析される。
【0018】
携帯型デバイスの内部電極は、デバイスが取り付けられる手首の皮膚と継続的に接触している。外部電極は、内部電極から隔離され、心電図信号を登録するため、他方の手の指、または胸部、腹部、もしくは脚など、他の身体部分と接触していなくてはならない(
図3)。記録された心電図信号は、携帯型デバイスにインストールされ、短くてノイズを含む心電図信号で心房不整脈を検出するように特別に設計された、デジタル信号処理のアルゴリズムによって処理される。調律異常が検出されると、心電図信号はサーバに送信されて、記憶され、可視化され、医師の情報となる。
【0019】
心房不整脈を検出し、不整脈の進行を長期モニタリングするアルゴリズムは、フォトプレチスモグラムにおける動きアーチファクトに対して、また一般的に報告される無害な調律異常に対して耐性がある(
図4)。この目的のため、フォトプレチスモグラフィ信号品質査定ブロック、心室期外収縮ろ過ブロック、および二段脈発作抑制ブロック、ならびに洞性不整脈抑制ブロックが実装された。心房不整脈検出の信頼性を改善する列挙した解決策は、心臓収縮記録機能を有する他の携帯型デバイスで使用することができる。心房不整脈は、心房細動など、特定の不整脈タイプに特徴的な目立った特徴が、不整調律、心房粗動(急に始まって終わる毎分150回以下の規則的な心拍によるもの)、短期の異所性心房頻拍(急に始まって終わる毎分150~220回の規則的な心拍によるもの)によって検出されることを考慮して検出される。
【0020】
患者のスマートデバイスの機能は、インターネット網、およびシステムサーバ(4)とのデータ交換を確保するインストールされたソフトウェアとの接続を維持するのに必要な技術的手段を備えた、異なるスマートデバイスによって(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、スマートウォッチなどによって)実施することができる。患者のスマートデバイス(2)は、インターネット接続(httpsおよび/または他の技術を使用)によって、サーバ(4)で処理される情報を医師のスマートデバイス(3)で受信した後、医師によってなされた医師の決定に関する情報を受信する。
【0021】
医師のスマートデバイス(3)の機能は、インターネット網、およびシステムサーバ(4)とのデータ交換を確保するインストールされたソフトウェアとの接続を維持するのに必要な技術的手段を備えた、異なるスマートデバイスによって(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、スマートウォッチなどによって)実施することができる。医師のスマートデバイス(3)は、インターネット接続(httpsおよび/または他の技術)を使用して、心房不整脈発作の時間分布を分析し、デバイス間のデータ交換、データの可視化、ならびに報告の展開を確保する、システムソフトウェアがインストールされたサーバに接続する。このシステムを使用することにより、医師は、長期モニタリング中における心房不整脈の症状、それらの分布、進行、ならびに患者の挙動(例えば、身体活動、体の位置など)および生理学的状態(睡眠、ストレスなど)との関連に関する詳細な情報を受信する。
【0022】
サーバ(4)のソフトウェアモジュールは、長時間着用される携帯型デバイスによって検出される心房不整脈発作プロファイルの分布を分析し、発作分布の集計、不整脈の強度、相対合計持続時間など、パラメータを特性評価する定量的不整脈プロファイルを提示する(
図5)。心房不整脈発作の分布プロファイルは、1日、1週間、1か月、または1年以内で定量的に評価することができる。
心房不整脈の持続時間は、モニタリング期間全体と比較した、ヒトが不整脈状態にある時間の比例部分を示す。
心房不整脈発作の強度は、指定された時間単位(例えば、1日、1週間、1か月)の間の不整脈発作の平均回数を示す。
心房不整脈の集計は、心房不整脈発作の時間分布のプロファイルを特性評価する。集計パラメータは、心房不整脈の発作が特定の時間間隔で集計されるか、またはモニタリングの時間間隔全体に均等に分布するかを考慮する。このように、集計パラメータは、異なる不整脈タイプ(例えば、心房期外収縮、短期の異所性頻拍、心房粗動、および心房細動)の間の相互分布および相互関連を考慮に入れる。0付近の集計値は、不整脈の時間密度が低いことを示し、これは、モニタリング期間全体で不整脈発作が均等に分布するときの、心房不整脈プロファイルに特徴的である。1付近の集計値は、不整脈の時間密度が高いことを示し、これは、モニタリング期間全体で単一の短い心房不整脈発作が記録されたときの、心房不整脈プロファイルに特徴的である。提案される心房細動密度(Charitos E.I.et al.A comprehensive evaluation of rhythm monitoring strategies for the detection of atrial fibrillation recurrence:insights from 647 continuously monitored patients and implications for monitoring after therapeutic interventions,Circulation,126(7),806-814,2012)とは異なり、集計値は発作の持続時間に依存し、即ち、発作の持続時間が長いと集計パラメータの値は減少する。
【0023】
サーバのソフトウェアモジュールは、報告を展開し、メッセージを医師のスマートデバイスに送信する。ユーザデータの保護を確保する技術的手段もサーバにインストールされる。
【0024】
本発明を例証し記載する目的で、発明の実装に関する最も好適な選択肢についての記載を提示している。これは、正確な実装の形態またはバージョンを定義するように設計された、包括的または限定的な記載ではない。上記に提示した記載は、限定ではなく例証として見なされるべきである。実装のバージョンは、異なる修正を含む本発明の原理および最良の実践的適用を専門家が理解するのを助けるために、選択され記載されたものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義されることが予期され、それらにおいて、全ての言及される用語は、別段の指定がなければ広範な意味を有する。
【0025】
専門家によって記載される実施形態は、以下の特許請求の範囲に規定されるような、本発明の範囲から逸脱しない、任意の提案される変更を含んでもよい。