(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】マイクロRNA22の阻害剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230725BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230725BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230725BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230725BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230725BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230725BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230725BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K31/7088
A61K48/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2020573079
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 US2019022351
(87)【国際公開番号】W WO2019178411
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-08
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507316413
【氏名又は名称】ベス イスラエル デアコネス メディカル センター
(73)【特許権者】
【識別番号】520355378
【氏名又は名称】オールボー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】パンドルフィ、ピエル、パオロ
(72)【発明者】
【氏名】パネッラ、リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】カウッピネン、サカリ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ、アンドレアス
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0004320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTTcaACtgGCAgCT(配列番号8)を含む配列を有する核酸を含み、ここで大文字はLNA(ロック核酸)修飾ヌクレオチドであり、小文字は非修飾ヌクレオチドである、miR-22阻害性組成物。
【請求項2】
CTTcaACtgGCAgCT(配列番号8)を含む配列を有する核酸を含み、ここで大文字はLNA(ロック核酸)修飾ヌクレオチドであり、小文字は非修飾ヌクレオチドである、miR-22阻害剤と、
薬学的に許容可能な賦形剤又は担体
と、
を含む
、医薬組成物。
【請求項3】
CTTcaACtgGCAgCT(配列番号8)を含む配列を有する核酸を含み、ここで大文字はLNA(ロック核酸)修飾ヌクレオチドであり、小文字は非修飾ヌクレオチドである、ベクター又はプラスミド。
【請求項4】
CTTcaACtgGCAgCT(配列番号8)を含む配列を有する核酸を含み、ここで大文字はLNA(ロック核酸)修飾ヌクレオチドであり、小文字は非修飾ヌクレオチドである、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は2018年3月14日に出願された米国特許仮出願第62/642934号の利益と優先権を主張し、その内容全体を参照によりここに援用するものである。
【0002】
本開示の分野
本開示はマイクロRNAの活性又は発現を調節する薬剤に関する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容、すなわち、配列表のコンピュータ読み込み可能な形式のコピー(ファイル名:BID-005PC2_ST25.txt;作成日:2019年3月14日;ファイルサイズ:2976バイト)の全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0004】
マイクロRNA(miRNA又はmiR)は標的遺伝子の発現を調節する核酸分子である。miRNAは短い(典型的には18~24ヌクレオチド)ことが典型的であり、標的mRNAの配列が完全に相補的であるときにそれらの分解を促進すること、及び/又は標的mRNAの配列がミスマッチを含んでいるときに翻訳を阻害することによって標的mRNAの阻害因子として作用する。miRNAの機能分析からこれらの低分子ノンコーディングRNAが様々な生理的及び代謝的過程に寄与することが明らかになっており、それらの過程には様々な疾患又は障害に関連する遺伝子の制御が含まれている。したがって、miRを制御する組成物と方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、例えばマイクロRNAの発現及び/又は活性を阻害することによるmiR-22阻害のための新しい組成物と方法を提供する。ロック核酸(LNA)等をはじめとする配列特異的な化学修飾オリゴヌクレオチドはこのような阻害を成立させることができる。1つの態様では、本発明はmiR-22阻害性組成物を提供する。この組成物は、tggcagct(配列番号2)を含み、少なくとも1か所のロック核酸(LNA)修飾を備える配列を有する核酸を含む。
【0006】
複数の実施形態において、前記核酸はtggcagct(配列番号2)の7位及び8位にLNA修飾を含む。複数の実施形態において、前記核酸は約8~約12のLNA修飾を含む。複数の実施形態において、前記核酸は4以上のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸は4以下の連続的LNA修飾を含む。
【0007】
複数の実施形態において、前記核酸はtggcagct(配列番号2)、cttcaactggcagct(配列番号3)、tcttcaactggcagct(配列番号4)、ttcttcaactggcagct(配列番号5)、及びgttcttcaactggcagct(配列番号6)から選択される配列を有する核酸を含む。複数の実施形態において、前記核酸は約8~約12のLNA修飾、例えば約8~約10のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸は約8、又は約9、又は約10、又は約11、又は約12のLNA修飾を含む。
【0008】
複数の実施形態において前記核酸はtggcagct(配列番号2)及び少なくとも6のLNA修飾を含む。
【0009】
複数の実施形態において前記核酸はtggcagct(配列番号2)及び少なくとも8のLNA修飾を含む。
【0010】
複数の実施形態において前記核酸はcttcaactggcagct(配列番号3)及び少なくとも6のLNA修飾、少なくとも8のLNA修飾、又は少なくとも10のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸はcttcaactggcagct(配列番号3)及び8のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、3位、6位、7位、10位、12位、14位、及び15位に存在する。複数の実施形態において前記核酸はcttcaactggcagct(配列番号3)及び10のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、及び15位に存在する。
【0011】
複数の実施形態において、前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び少なくとも8のLNA修飾、少なくとも10のLNA修飾、又は少なくとも11のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び10のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、4位、8位、10位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する。複数の実施形態において前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び11のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、4位、5位、6位、8位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する。複数の実施形態において前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び11のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、4位、5位、6位、9位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する。
【0012】
複数の実施形態において前記核酸はttcttcaactggcagct(配列番号5)及び少なくとも10のLNA修飾又は少なくとも11のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸はttcttcaactggcagct(配列番号5)及び11のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、5位、6位、7位、10位、12位、13位、14位、16位、及び17位に存在する。
【0013】
複数の実施形態において前記核酸はgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び少なくとも9のLNA修飾又は少なくとも10のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸はgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び9のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、6位、10位、13位、14位、16位、17位、及び18位に存在する。
【0014】
別の態様では、本発明は上記の態様の核酸又は上記の実施形態のうちのいずれかの核酸と薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は上記の態様の核酸又は上記の実施形態のうちのいずれかの核酸を含むベクター又はプラスミドを提供する。
【0016】
本発明の一態様は上記の態様の核酸又は上記の実施形態のうちのいずれかの核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0017】
本発明の別の態様はmiR-22阻害のための方法を提供する。この方法は上記の態様の核酸又は上記の実施形態のうちのいずれかの核酸であるmiR-22阻害剤を含む組成物とmiR-22を接触させることを含む。
【0018】
本明細書に記載されるどの態様又は実施形態も本明細書において開示される他のあらゆる態様又は実施形態と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本特許ファイル又は本出願ファイルは少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許公報又は特許出願公報の複写物は請求及び必要経費の支払いに応じて米国特許庁より提供される。
【
図1】抗miR-22 LNAのデザインを示す図である。配列番号1、配列番号2、及び配列番号7~配列番号15が示されている。
【
図2】A~Cは、抗miR-22オリゴヌクレオチドのデザインスペースを示す一連の棒グラフと線グラフである。
【
図3】A及びBは、可能な抗miRデザイン(11228)のインシリコでの作成、及び最適な抗miR-22デザイン(8~18ヌクレオチド長)を選択するための特性の予測を示す図である。
図3Bの図の説明の上から下に向かって配列番号11、配列番号2、配列番号7~配列番号10、配列番号12、配列番号13、及び配列番号1が示されている。
【
図4】MCF7におけるFAM標識LNAの非補助取込みを示す図である。
【
図5】MCF7細胞における抗miR-22 LNAの効果検証を示しているウエスタンブロットの図である。
【
図6】A~Cは、MCF7における抗miR-22 LNAの非補助取込みが標的タンパク質のレベルに影響することを示す図である。
図6A及び
図6BはHSP-90対照と比較したTET2の発現を示しているウエスタンブロット像である。
図6CはTET2タンパク質の発現を示している棒グラフである。
図6Cではこの棒グラフのデータの順序は左から右に向かってSCR(黒色)、25nM(明灰色)、及び100nM(暗灰色)である。
【
図7】抗miR-22 LNAがMCF7において5-hmCレベルを上昇させることを示している一対のドットブロット像である。
【
図8】HFDを摂食しているmiR-22-/-マウス及び野生型マウスが後にベヒクル(VCH)、スクランブル対照RNA(SCR)、及びロック核酸(LNA)のトランスフェクションを受けるインビボ実験の計画と条件を示す図である。
【
図9】(Δ)ベヒクル、(◇)SCR、(□)抗miR-22について治療マウスと未治療マウスとの間で摂食量に差が無いことを示している棒グラフである。
【
図10】A及びBは、インビボでのmiR-22の薬理学的阻害によりマウスの肥満が防止されることを示している線グラフである。
図10Aは最終的体重増加率を示している。
図10BはDIOマウスにおけるmiR-22のインビボサイレンシングを示している。両方の図において、データの順序は最終時点で上から下に向かってベヒクル(緑色)、SCR(赤色)、及び抗miR-22(青色)である。
【
図11】HFDを摂食しているmiR-22-/-マウス及び野生型マウスが抗miR-22-LNA、SCR、及びVHLで治療され、2回目のHFDレジメンに割り当てられることを示している治療アプローチの挿絵である。
【
図12】既に肥満であり、且つ、HFDを与えられているマウスで体重が顕著に減少する前記治療アプローチの結果を示している線グラフである。3か月半の治療の後、肥満でHFDを与えられているマウス(40g超の平均重量)において体重の顕著な減少が観察された。マウスを殺処理し、組織を収集し、肝臓由来のRNAをRNAシーケンシングに使用した。
【
図13】miR-22の薬理学的阻害がMEFの脂肪細胞への分化の阻害に有効であることを示しているオイルレッドO染色の図である。
【
図14】A及びBは、2週間にわたって抗miR-22 LNAを含む、又は含まない脂肪細胞分化培地中で培養されたヒト初代間葉系細胞における抗miR-22処理を示しているオイルレッドO染色(
図14A)及び棒グラフ(
図14B)を示す図である。500nMを自力取込み(2日毎にLNAを添加)。
図14Bでは各棒グラフの右(赤色)の棒のデータはLNA#10処理細胞のデータである。
【
図15】miR-22の薬理学的阻害がMEFの脂肪細胞への分化の阻害に有効であることを示している棒グラフである。棒グラフのデータの順序は、左から右に向かって上から下に向かう図の説明(グラフの右側)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示はマイクロRNAの発現及び/又は活性の阻害等によるmiR-22阻害のための新しい組成物と方法を提供する。
【0021】
理論に捉われるものではないが、成熟miRNAはポリメラーゼII又はポリメラーゼIIIによって生成され、且つ、pri-miRNAと呼ばれる初期転写物から発生すると考えられている。これらのpri-miRNAは数千塩基長であることがしばしばであり、それ故にプロセッシングを受けてそれよりもずっと短い成熟miRNAを生成する。これらのpri-miRNAは多シストロン性の場合があり、多数のmiRNAになる可能性があるものを組織する幾つかの配列の集合体から生じる。miRNAを生み出すプロセッシングは2段階であり得る。第1にpri-miRNAは核内でリボヌクレアーゼDroshaによるプロセッシングを受けて約70~約100ヌクレオチド長のヘアピン型前駆体(pre-miRNA)になり得る。第2にこれらのヘアピン型pre-miRNAは細胞質への移転後にさらにリボヌクレアーゼDicerによるプロセッシングを受けて二本鎖miRNAを作製し得る。その後、この成熟miRNA鎖がRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、そこでこの成熟miRNA鎖が塩基対相補性によりその標的mRNAと結合し、タンパク質発現を抑制し得る。RISCサイレンシング複合体への組み込みに関して優先的に選択されない方のこのmiRNA二重鎖の鎖はパッセンジャー鎖又はマイナーmiRNA又はスター(*)鎖として知られている。この鎖は分解される場合がある。明記されていない場合、本明細書において使用されるmiRNAはpri-miRNA及び/又はpre-miRNA及び/又は成熟miRNA及び/又はマイナー(スター)鎖及び/又は二重鎖型miRNAのことをいう場合があると理解される。
【0022】
幾つかの実施形態ではmiRNA遺伝子はタンパク質コード遺伝子のイントロン内又は非コード転写単位のイントロン若しくはエクソン内に位置し得る。イントロン性のmiRNAの発現はそのホスト転写単位の発現と一致している場合がある。なぜなら、それらのmiRNAとホスト転写単位は同方向に向いていることが典型的であり、且つ、それらが存在する前駆mRNAと同調して発現されるからである。
【0023】
幾つかの実施形態ではmiRNAは標的遺伝子転写物の3’非翻訳領域(3’UTR)内の配列に結合する場合がある。幾つかの実施形態ではmiRNAは標的遺伝子転写物の3’UTR外にある配列に結合する場合がある。幾つかの実施形態ではmiRNAは標的遺伝子転写物の3’UTR内と3’UTR外の両方に結合する場合がある。
【0024】
幾つかの実施形態では標的の認識のためにmiRNAの2番目と7番目のヌクレオチド(miRNAシード配列)と標的3’UTR上の対応する配列(シードマッチ)との間でヌクレオチド対合が生じ得る。したがって、miRNAと標的との間の結合は約5ヌクレオチドの塩基対合を含み得る。さらに、miRNAと標的との間の結合が5ヌクレオチドより多くの塩基対合を含む場合もある。幾つかの実施形態ではmiRNAとこのmiRNAによって制御される遺伝子との間の結合にはこの標的核酸の最大で2部位、最大で4部位、最大で6部位、最大で8部位、又は最大で10部位へのこのmiRNAの結合が介在する場合がある。
【0025】
miR-22
miR-22はチンパンジー、マウス、ラット、イヌ、及びウマを含む多くの脊椎動物種にわたって高度に保存されている。機能上の重要性がこのレベルの保存度から示唆される。miR-22は先ず赤血球の成熟に役割を有するものとして特定され、後に発癌に役割を有するものとして特定された。miR-22はホスファターゼ・テンシン・ホモログ(PTEN)及びtetメチルシトシンジオキシゲナーゼ(TET)を直接の標的として腫瘍発生、転移、及び代謝障害を促進する。幾つかの実施形態では本発明の核酸はPTEN及び/又はTET2の活性及び/又は発現を上昇させる。
【0026】
予測されたmiR-22ヘアピン型前駆体は完全にC17orf91非コード転写物のエクソン2内に含まれ、且つ、タンパク質コード能が無いにもかかわらずスプライシングパターンが概してヒト及びマウスで保存されている。Rodriguezら著、Identification of mammalian microRNA host genes and transcription units. Genome Res.誌、2004年10月、第14巻(第10A号): 1902~10頁を参照されたい。マウスモデルにおいてmir-22を取り囲むC17orf91のエクソン2の欠失からmiR-22が心臓肥大とSIRT1(NAD依存性デアセチラーゼsirtuin-l)、HDAC4(ヒストンデアセチラーゼ4)、PURB(プリンリッチ配列結合タンパク質B)、及びPTENを標的とするリモデリングに役割を果たし得ることが明らかになっている。Gurhaら著、Targeted deletion of microRNA-22 promotes stress-induced cardiac dilation and contractile dysfunction. Circulation誌、2012年6月5日、第125巻(第22号):2751~61頁、Huangら著、MicroRNA-22 regulates cardiac hypertrophy and remodeling in response to stress. Circ Res.誌、2013年4月26日、第112巻(第9号): 1234~43頁を参照されたい。
【0027】
miR-22の阻害剤
複数の実施形態において、miRNAの阻害剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドとして作用する核酸である。本発明の核酸はリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又はそれらの組合せを含み得る。本発明の核酸は少なくとも1つの化学的修飾を有してよい(非限定的な例は糖又は骨格の修飾、例えばロック核酸(LNA)である)。
【0028】
複数の実施形態においてmiR-22を阻害する核酸の配列は種を超えて保存されている。複数の実施形態において前記核酸の配列はヒトmiR-22の配列に対して部分的に相補的である。複数の実施形態においてこの阻害剤は細胞又は対象内で標的miR-22の発現及び/又は活性を低下させるように選択される。
【0029】
複数の実施形態において本発明の核酸はヒトmiR-22を阻害する。複数の実施形態においてヒトmiR-22はAAGCUGCCAGUUGAAGAACUGU(配列番号1)を含むか、又はこれから成る。
【0030】
複数の実施形態において本発明の核酸は約8~約20残基長(例えば、約8~18残基長、又は約8~16残基長、又は約8~14残基長、又は約8~12残基長、又は約8~10残基長、又は約10~18残基長、又は約10~16残基長、又は約10~14残基長、又は約10~12残基長)である。複数の実施形態において前記核酸は約8残基長、又は約9残基長、又は約10残基長、又は約11残基長、又は約12残基長である。
【0031】
複数の実施形態において本発明の核酸は完全な相同性を有してmiR-22の一部分に結合する。例えば、本発明の核酸は18残基長であってよく、18残基の各々がmiR-22のヌクレオチドに対して相補的である。あるいは、本発明の核酸は完全な相同性を有してmiR-22の一部分に結合する。例えば、本発明の核酸は16残基長であってよく、これらの残基のうちの15以下の残基がmiR-22のヌクレオチドに対して相補的である。
【0032】
複数の実施形態において、本発明の核酸は1か所、2か所、3か所、4か所、5か所、又は5か所より多くの位置でmiR-22の一部分と異なっている。
【0033】
複数の実施形態において、本発明の核酸はmiR-22を阻害するのに充分な親和性でmiR-22に結合する。複数の実施形態において前記核酸は高い親和性(例えばnMレベルの親和性)でmiR-22に結合する。したがって、本発明の核酸は1か所又は複数の位置でmiR-22の一部分と異なっているとしても高い親和性でmiR-22に結合する。
【0034】
本発明の核酸は、tggcagct(配列番号2)を含み、且つ、少なくとも1つのロック核酸(LNA)修飾を備える配列を有してよい。
【0035】
ロック核酸(LNA)では核酸のリボース部分が2’酸素と4’炭素を連結する特別な架橋によって修飾されており、その架橋によりこのリボースが3’エンド立体構成に固定される。本発明のLNAを備える核酸は、効率的に送達され、且つ、様々な障害の治療と予防に対して充分な生物学的利用能を有することが可能な費用効果のある薬剤を実現する。
【0036】
複数の実施形態において本発明の核酸はその3’末端に向かって少なくとも2か所のLNA修飾(例えばその3’末端に向かって約2、又は約3、又は約4、又は約5の修飾)を含む。複数の実施形態において前記核酸はtggcagct(配列番号2)及び少なくとも6のLNA修飾又は少なくとも8のLNA修飾を含む。
【0037】
例えば、前記核酸はtggcagct(配列番号2)の7位及び8位にLNA修飾を含む。複数の実施形態において本発明の核酸は4以下の連続的LNA修飾(例えば、2、又は3、又は4のみの連続的LNA修飾)を含む。複数の実施形態において本発明の核酸は3以下の連続的非修飾残基(例えば、3、又は2、又は1のみの非修飾残基)を含む。複数の実施形態において、本発明の核酸は4以上のLNA修飾を含む。複数の実施形態において前記核酸は約8~約12のLNA修飾、例えば約8、又は約9、又は約10、又は約11、又は約12のLNA修飾を含む。
【0038】
複数の実施形態において、前記核酸はtggcagct(配列番号2)、cttcaactggcagct(配列番号3)、tcttcaactggcagct(配列番号4)、ttcttcaactggcagct(配列番号5)、及びgttcttcaactggcagct(配列番号6)から選択される配列を有する核酸を含む、又はこの核酸から成る。複数の実施形態において前記核酸は、tggcagct(配列番号2)、cttcaactggcagct(配列番号3)、tcttcaactggcagct(配列番号4)、ttcttcaactggcagct(配列番号5)、及びgttcttcaactggcagct(配列番号6)から選択される配列を有し、約8~約12のLNA修飾、例えば約8、又は約9、又は約10、又は約11、又は約12のLNA修飾を備える核酸を含む。
【0039】
複数の実施形態において前記核酸はcttcaactggcagct(配列番号3)及び少なくとも6のLNA修飾、少なくとも8のLNA修飾、又は少なくとも10のLNA修飾を含むか、又はこれから成る。複数の実施形態において前記核酸はcttcaactggcagct(配列番号3)及び8のLNA修飾であって、1位、3位、6位、7位、10位、12位、14位、及び15位に存在する修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列CtTcaACtgGcAgCT(配列番号7)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。複数の実施形態において、前記核酸はcttcaactggcagct(配列番号3)及び10のLNA修飾であって、1位、2位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、及び15位に存在する前記修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列CTTcaACtgGCAgCT(配列番号8)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。
【0040】
複数の実施形態において前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び少なくとも8か所のLNA修飾、少なくとも10のLNA修飾、又は少なくとも11のLNA修飾を含むか、又はこれから成る。複数の実施形態において前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び10のLNA修飾であって、1位、2位、4位、8位、10位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列TCtTcaaCtGGCAgCT(配列番号10)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。複数の実施形態において、前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び11か所のLNA修飾であって、1位、2位、4位、5位、6位、8位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列TCtTCAaCtgGCAgCT(配列番号9)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。
【0041】
複数の実施形態において前記核酸はtcttcaactggcagct(配列番号4)及び11のLNA修飾であって、1位、2位、4位、5位、6位、9位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する前記修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列TCtTCAacTgGCAgCT(配列番号11)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。
【0042】
複数の実施形態において前記核酸はttcttcaactggcagct(配列番号5)及び少なくとも10のLNA修飾又は少なくとも11のLNA修飾を含むか、又はこれから成る。複数の実施形態において前記核酸はttcttcaactggcagct(配列番号5)及び11のLNA修飾であって、1位、2位、5位、6位、7位、10位、12位、13位、14位、16位、及び17位に存在する前記修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列TTctTCAacTgGCAgCT(配列番号12)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。
【0043】
複数の実施形態において前記核酸はgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び少なくとも9のLNA修飾又は少なくとも10のLNA修飾を含むか、又はこれから成る。複数の実施形態において前記核酸はgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び9のLNA修飾であって、1位、2位、6位、10位、13位、14位、16位、17位、及び18位に存在する修飾を含むか、又はこれから成る。例えば、前記核酸は配列GTtctTcaaCtgGCaGCT(配列番号13)を含むか、又はこれから成り、その配列において大文字はLNA修飾型であり、小文字は非修飾型である。
【0044】
複数の実施形態において上記の配列を含む前記核酸は本明細書に記載される配列の5’側に追加のヌクレオチドをさらに含んでよく、且つ/又は本明細書に記載される配列の3’側に追加のヌクレオチドをさらに含んでよい。これらの追加のヌクレオチドは非修飾型でも修飾型、例えばLNA修飾型又はその他の化学的修飾型でもよい。
【0045】
幾つかの実施形態では本発明の核酸は追加の化学的修飾をさらに含んでよい。例として、化学的修飾はホスホロチオエート、2’-O-メチル、又は2’-O-メトキシエチル、2’-O-アルキル-RNA単位、2’-OMe-RNA単位、2’-アミノ-DNA単位、2’-フルオロ-DNA単位(2’位にフッ素への置換(2’F)を含むDNA類似体を含むがこれに限定されない)、LNA単位、PNA単位、HNA単位、INA単位、及び2’MOE-RNA単位のうちの1又は複数である。
【0046】
適切な核酸は、二環式糖ヌクレオシド(BSN)修飾を含むオリゴヌクレオチドとそれらのオリゴヌクレオチドの相補的miRNA標的鎖との間で形成された複合体に対して熱安定性を向上させる1又は複数の立体構造規制修飾又は二環式糖ヌクレオシド(BSN)修飾から構成され得る。例えば、1つの実施形態では前記核酸は少なくとも1つのロック核酸を含む。ロック核酸(LNA)は2’-O,4’-C-メチレンリボヌクレオシド(構造A)を含み、その中ではリボース糖部分がロックされたコンフォーメーションになっている。別の実施形態では前記核酸は少なくとも1つの2’,4’-C-架橋2’デオキシリボヌクレオシド(CDNA、構造B)を含む。例えば、参照により両方の全体が本明細書に援用される米国特許第6403566号明細書及びWangら著、(1999年) Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters誌、第9巻: 1147~1150頁を参照されたい。さらに別の実施形態では前記核酸は構造Cに示される構造を有する少なくとも1つの修飾型ヌクレオシドを含む。脂肪関連代謝合成経路の標的を制御するmiRNAを標的とする前記核酸はBSN(LNA、CDNA等)又は他の修飾型ヌクレオチド、及びリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドの組合せを含み得る。
【0047】
【0048】
あるいは、前記核酸はペプチド核酸(PNA)から構成されてよく、ペプチド核酸は糖リン酸骨格よりもむしろペプチドベースの骨格を含む。前記核酸に対する他の修飾糖又はホスホジエステル修飾も考えられている。非限定的な例として、他の化学的修飾には2’-O-アルキル修飾(例えば、2’-O-メチル修飾、2’-O-メトキシエチル修飾)、2’-フルオロ修飾、及び4’-チオ修飾、並びに1又は複数のホスホロチオエート結合、モルホリノ結合、又はホスホノカルボキシレート結合などの骨格修飾(例えば、参照により全体が本明細書に援用される米国特許第6693187号明細書及び同第7067641号明細書を参照されたい)を挙げることができる。1つの実施形態では発癌遺伝子miRNAを標的とする核酸は各塩基上に2’-O-メチル糖修飾を含み、且つ、ホスホロチオエート結合で連結されている。核酸、特に比較的に短い長さの核酸(例えば、16ヌクレオチド未満、7~8ヌクレオチドの核酸)は、限定されないが、LNA修飾、二環式ヌクレオシド修飾、ホスホノホルマート修飾、2’-O-アルキル修飾等、1又は複数の親和性増強修飾を含むことができる。幾つかの実施形態では適切な核酸は、中央に少なくとも10個のデオキシリボヌクレオチドを含み、5’末端と3’末端の両方に2’-O-メトキシエチル修飾リボヌクレオチドを含む2’-O-メトキシエチルギャップマーである。これらのギャップマーはRNA標的のリボヌクレアーゼH依存性分解機構を発動することができる。参照により全体が本明細書に援用される米国特許第6838283号明細書に記載されている修飾等、安定性を上昇させ、且つ、効力を改善する他の核酸の修飾が当技術分野において知られており、それらの修飾は本発明の方法で使用するのに適切である。例えば、限定する意図はないが、インビボ送達と安定性を促進するために前記核酸はその3’末端においてコレステロール部分などのステロイド、ビタミン、脂肪酸、炭水化物若しくはグリコシド、ペプチド、又は他の低分子リガンドに結合していてよい。
【0049】
本明細書において使用される場合、実質的に相補的は、標的ポリヌクレオチド配列(非限定的な例はmiR-22等の成熟配列、マイナー配列、前駆miRNA配列、又はpri-miRNA配列である)に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%相補的な配列のことを指す。
【0050】
幾つかの実施形態では本発明の核酸はアンタゴミルである。アンタゴミルはmiRNAに対して少なくとも部分的に相補的であり、したがってそれらのmiRNAをサイレンシングする可能性がある一本鎖で化学的修飾を受けているリボヌクレオチドである。例えば、Kriitzfeldtら著、Nature誌、(2005年) 第438巻(第7068号): 685~9頁を参照されたい。アンタゴミルは2’-O-メチル糖修飾などの1又は複数修飾型ヌクレオチドを含む場合がある。幾つかの実施形態ではアンタゴミルは修飾型ヌクレオチドだけを含む。アンタゴミルは1又は複数ホスホロチオエート結合を含んでもよく、それにより部分的又は完全なホスホロチオエート骨格が生じる。インビボ送達と安定性を促進するために前記アンタゴミルはその3’末端においてコレステロール又は他の部分に結合していてよい。阻害に適切なアンタゴミルは約15~約50ヌクレオチド長、約18~約30ヌクレオチド長、及び約20~約25ヌクレオチド長であり得る。前記アンタゴミルは成熟発癌遺伝子miRNA配列又はマイナー発癌遺伝子miRNA配列に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%相補的であり得る。幾つかの実施形態では前記アンタゴミルは成熟発癌遺伝子miRNA配列又はマイナー発癌遺伝子miRNA配列に対して実質的に相補的、すなわち標的ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%相補的であり得る。他の実施形態では前記アンタゴミルは成熟発癌遺伝子miRNA配列又はマイナー発癌遺伝子miRNA配列に対して100%相補的である。
【0051】
本発明の核酸は発癌遺伝子miRNAの前駆miRNA配列(pre-miRNA)又はプライマリーmiRNA配列(pri-miRNA)に対して実質的に相補的な配列を含んでよい。幾つかの実施形態では本発明の核酸はそのmiRNAの標的の3’非翻訳領域外に位置する配列を含む。幾つかの実施形態では本発明の核酸はそのmiRNAの標的の3’非翻訳領域内に位置する配列を含む。
【0052】
複数の実施形態において前記核酸は限定的な自己結合親和性を有するか、又は自己結合親和性を持たない。複数の実施形態において前記核酸は限定的な二重鎖構造を有するか、又は二重鎖構造を持たない。複数の実施形態において前記核酸は限定的な折り畳み構造を有するか、又は折り畳み構造を持たない。
【0053】
miRNA阻害剤又はアゴニストをコードする発現ベクターを細胞へ送達することによって、本発明のいずれの核酸も標的細胞へ送達可能である。ベクターは目的の核酸を細胞の内側に送達するために使用可能な組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性化合物又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野において知られている。したがって、ベクターという用語には自律複製プラスミド又はウイルスが含まれる。ウイルスベクターの例にはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられるがこれらに限定されない。発現コンストラクトを生細胞中で複製することができ、又は合成により作製することができる。この用途目的について、発現コンストラクト、発現ベクター、及びベクターという用語は一般的で例示的な意味で本発明の用途を示すために互換的に使用され、これらの用語によって本発明を限定することを意図していない。
【0054】
1つの実施形態では、本発明の核酸を発現するための発現ベクターは本発明の核酸をコードするポリヌクレオチドに機能的に結合したプロモーターを含む。本明細書において使用される「機能的に結合した」又は「転写制御下」という言葉はRNAポリメラーゼによる転写の開始とポリヌクレオチドの発現を制御するためにこのポリヌクレオチドに関して正しい位置と方向でこのプロモーターが存在していることを意味する。
【0055】
本明細書において使用される場合、プロモーターは遺伝子の特異的な転写を開始するために必要な細胞の合成機械、又は導入された合成機械によって認識されるDNA配列のことをいう。適切なプロモーターにはRNAポリメレースIプロモーター、ポリメラーゼIIプロモーター、ポリメラーゼIIIプロモーター、及びウイルスプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス・ロングターミナルリピート)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
ある特定の実施形態では本発明の核酸をコードするポリヌクレオチドに機能的に結合した前記プロモーターは誘導プロモーターであってよい。誘導プロモーターは当技術分野において知られており、誘導プロモーターにはテトラサイクリンプロモーター、メタロチオネインIIAプロモーター、熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答配列、アデノウイルス後期プロモーター、及び誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
細胞に発現コンストラクト及び核酸を送達する方法は当技術分野において知られており、非限定的な例としてリン酸カルシウム共沈殿、電気穿孔法、マイクロインジェクション、DEAEデキストラン、リポフェクション、ポリアミントランスフェクションイオン性試薬を使用するトランスフェクション、細胞超音波処理、高速マイクロプロジェクタイルを使用する遺伝子ボンバードメント、及び受容体介在性トランスフェクションを挙げることができる。
【0058】
本発明の態様は本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0059】
本発明の別の態様はmiR-22阻害のための方法を提供する。この方法は本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸であるmiR-22阻害性組成物と、miR-22とを接触させることを含む。この方法はインビトロ法でもインビボ法でもよい。
【0060】
別の態様では本発明は本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸と薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0061】
臨床用途を企図している場合、意図した用途に適切な形態で医薬組成物を調製してよい。このためには発熱性物質並びにヒト又は動物に有害な可能性のある他の不純物を基本的に含まない組成物の調製が必要になることが一般的である。
【0062】
1つの実施形態では医薬組成物は有効用量の本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸を含む。有効用量は有益又は望ましい臨床成果に影響を及ぼすのに充分な量である。有効用量は約1mg/kg~約100mg/kg、約2.5mg/kg~約50mg/kg、又は約5mg/kg~約25mg/kgであり得る。有効用量と考えられる量の正確な決定はそれぞれの患者に固有の因子に基づく場合があり、それらの因子には患者の体格、年齢、代謝障害の種類、及び阻害剤又はアゴニスト(非限定的な例にはアンタゴミル、発現コンストラクト、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド二重鎖等が挙げられる)の性質が挙げられる。したがって、本開示及び当技術分野の知識から当業者は投与量を容易に確認できる。例えば、内容全体を参照により援用するPhysicians’ Desk Reference、第66版、PDR Network、2012年版(2011年12月27日)を参照して用量を決定してもよい。
【0063】
巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、並びに水中油型乳液、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系などのコロイド分散系を本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸の送達ベヒクルとして使用してよい。脂肪組織(例えば、脂肪細胞)への本開示の核酸の送達に適切な市販の脂肪乳液としてINTRALIPIDO、LIPOSYN(登録商標)、LIPOSYN(登録商標)II、LIPOSYN(登録商標)III、Nutrilipid、及び他の類似の脂質乳液が挙げられる。インビボで送達ベヒクルとして使用される一つのコロイド系はリポソーム(すなわち、人工膜小胞)である。このような系の調製と使用は当技術分野においてよく知られている。例示的な製剤が参照により全体が本明細書に援用される米国特許第5981505号明細書、米国特許第6217900号明細書、米国特許第6383512号明細書、米国特許第5783565号明細書、米国特許第7202227号明細書、米国特許第6379965号明細書、米国特許第6127170号明細書、米国特許第5837533号明細書、米国特許第6747014号明細書、及び国際公開第03/093449号パンフレットにも開示されている。
【0064】
一般的に、送達ベヒクルを安定にし、標的細胞に取り込ませるために適切な塩と緩衝液を使用することが望まれる。本発明の水性組成物は薬学的に許容可能な担体又は水性媒体に溶解又は分散された本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸を含む送達ベヒクル(例えば、リポソーム又は他の複合体又は発現ベクター)の有効量を含む。「薬学的に許容可能な」又は「薬理学的に許容可能な」という言葉は動物又はヒトに投与されたときに有害反応、アレルギー反応、又は他の不都合な反応を引き起こさない分子実体及び組成物を指す。本明細書において使用される場合、薬学的に許容可能な担体にはヒトへの投与に適切な医薬品などの医薬品の製剤に使用することを許されている溶媒、緩衝液、溶液、分散媒体、被覆材、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的活性物質に適したこのような媒体と薬剤の使用は当技術分野においてよく知られている。どの従来の媒体又は薬剤でも本発明の有効成分と不適合である場合を除いて治療用組成物におけるその使用が考えられている。補助有効成分が前記組成物のベクター又はポリヌクレオチドを不活化しない限り前記組成物にそれらの補助有効成分を組み入れてもよい。
【0065】
前記医薬品は例えば無菌注射溶液又は分散液の即座調製用の無菌水溶液又は分散液と無菌粉剤を形成する。一般的にこれらの製剤は無菌であり、且つ、注射しやすい程度の流動性である。製剤は製造条件及び貯蔵条件下で安定である必要があり、且つ、細菌及び真菌などの微生物の汚染混入活動を抑えて保存される必要がある。適切な溶媒又は分散媒体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有してよい。例えばレシチンなどの被覆材の使用、分散体の場合は必要とされる粒子径の維持、及び界面活性剤の使用によって適切な流動性が維持され得る。微生物の活動は様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により抑止され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。前記注射可能組成物の中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することにより前記組成物の吸収が延長され得る。
【0066】
適切な量の本明細書に記載される本発明のいずれかの核酸を所望により他のあらゆる成分(例えば上で列挙した成分)と共に溶媒中に組み入れ、その後でフィルター滅菌することにより無菌注射溶液を調製してよい。一般的に分散体は、基本分散媒体及び他の所望の成分、例えば上で列挙した成分を含む無菌ベヒクルに前記様々な滅菌済み有効成分を組み入れることにより調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉剤の場合では、好ましい調製方法には前記有効成分とあらゆる所望の追加成分の粉末を前もって滅菌濾過したその溶液から生じさせる真空乾燥法及び凍結乾燥法が挙げられる。
【0067】
製剤時に溶液をその剤形に適合する方法、及び、治療に有効な量で投与してよい。
【実施例】
【0068】
本明細書において開示される発明をより効率的に理解できるようにするために実施例を以下に提示する。これらの実施例は例示を目的としているだけであり、本発明を少しでも限定するものとして解釈されてはならないことを理解されたい。
【0069】
実施例1:抗miR-22ロック核酸(LNA)コンストラクトの設計
全ての抗miR-22 LNAがヒトとマウスの両方で有用である。宿主遺伝子はヒトとマウスとの間で49%の相補性を示し、抗HG-miR-22 LNAは主にヒトで作用する。
【0070】
シード配列をカバーし、8ヌクレオチド長と20ヌクレオチド長の間のヌクレオチドを含み、許容された長さに特異的なLNAの断片を有し、且つ、miR-22に対してできるだけ高い結合親和性を持つようにコンストラクトを設計した(
図1及び
図2A~C参照)。
【0071】
前記コンストラクトの末端の少なくとも2のLNA修飾が設計要素に含まれた。連続して4以上のLNA修飾がさらなる設計要素に含まれた。連続して3以上の非修飾型残基がさらに設計要素として含まれた。
【0072】
miR-22を阻害するのに充分な親和性でmiR-22に結合するように前記コンストラクトを設計した。また、限定的な自己結合親和性を有するか、又は自己結合親和性を持たない(例えば二重鎖構造又は折り畳み構造を持たないか、限定的に有する)ように前記コンストラクトを設計した。
図3A~Bを参照されたい。
【0073】
以下の配列では大文字はLNA修飾であり、小文字は非修飾である。miR-22(配列番号1)と抗miR-22オリゴヌクレオチド(配列番号2及び配列番号7~配列番号13)の方向は5’から3’である。
図1は抗miR-22オリゴヌクレオチドがmiR-22にハイブリダイズしたときの方向3’から5’の方向で抗miR-22オリゴヌクレオチドを示している。5’から3’方向の配列番号14及び配列番号15のオリゴヌクレオチドはスクランブル配列であり、miR-22(配列番号1)にハイブリダイズしない。
【0074】
hsa-miR-22 AAGCUGCCAGUUGAAGAACUGU (配列番号1)
CRM0008 TGGCAGCT (配列番号2)
CRM0009 CtTcaACtgGcAgCT (配列番号7)
CRM0010 CTTcaACtgGCAgCT (配列番号8)
CRM0011 TCtTCAaCtgGCAgCT (配列番号9)
CRM0012 TCtTcaaCtGGCAgCT (配列番号10)
CRM0013 TCtTCAacTgGCAgCT (配列番号11)
CRM0014 TTctTCAacTgGCAgCT (配列番号12)
CRM0015 GTtctTcaaCtgGCaGCT (配列番号13)
CRM0016 CGaATAgTtaGTAgCG (配列番号14)
CRM0017 FAM標識CGaATAgTtaGTAgCG (配列番号15)
【0075】
実施例2:miR-22の阻害
miR-22を阻害する実施例1のコンストラクトの能力を評価した。
接着細胞株のLNAの補助取込み(Lipo200形質移入)のプロトコルを最適化することにより、前記配列をアッセイで検証し、FAM標識LNAを使用し、接着細胞株において、補助取込み及び非補助取込みで、最も効力のある抗miR-22を特定(処理前及び処理後のmiR-22レベル、並びにTET2の活性及びタンパク質レベルを分析)することにより生物学的効果を検証した。インビボ治療での使用のために最も効力のある抗miRをマウスモデルにおいて使用することを目的とした。実証された結果については
図3A~B、
図4、
図5、
図6、及び
図7を参照されたい。
【0076】
実施例1のコンストラクトのmiR-22を阻害する能力のさらなる検証を肥満モデルにおいてインビボで評価した。
【0077】
予防のインビボ実験計画では、
図8を参照されたく、HFDを摂食している2か月齢のmiR-22-/-及び野生型にベヒクル(VCH)、スクランブル対照RNA(SCR)、及び実施例1のロック核酸(LNA)を形質移入し、20mg/kgの(初回)負荷用量と毎週10mg/kgの維持用量の腹腔内(IP)注射、非補助取込みで治療した。摂食量については治療マウスと未治療マウスとの間で差が無かった。
図9を参照されたい。インビボmiR-22の薬理学的阻害によりマウスが肥満になることが抑制された。
図10A~Bを参照されたい。
【0078】
図11は治療アプローチの図示であり、HFDを摂食しているmiR-22-/-及び野生型マウスが抗miR-22-LNA、SCR、及びVHLで治療4され、2回目のHFDレジメンに割り当てられることを示している。
図12に示されるように、体重減少によって明らかな通り、実施例1のコンストラクトはmiR-22を阻害した。
【0079】
miR-22阻害のさらなる証拠はMEFの脂肪細胞への分化の阻害を示しているオイルレッドO染色実験に見られた。
図13は実施例1のコンストラクトによるmiR-22の薬理学的阻害がMEFの脂肪細胞への分化の阻害に有効であることを示している。
図14は2週間にわたって抗miR-22 LNAを含む、又は含まない脂肪細胞分化培地中で培養されたヒト初代間葉細胞における抗miR-22処理を示しているオイルレッドO染色(
図14A)と棒グラフ(
図14B)である。500nM、非補助取り込み(2日毎にLNAを添加)。
図14Bでは各棒グラフの右(赤色)の棒のデータはLNA#10処理細胞のデータである。
図15はmiR-22の薬理学的阻害がMEFの脂肪細胞への分化の阻害に有効であることを示している棒グラフである。棒グラフのデータの順序は左から右に向かって、上から下に向かう図の説明(グラフの右側)に対応する。LNAの数は上の実施例1に対応している。
したがって、実施例1の核酸コンストラクトはmiR-22の阻害に有効である。
【0080】
他の実施形態
発明を実施するための形態と併せて本開示を説明してきたが、これまでの説明は本開示を例示することを意図するものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきであり、本開示の範囲は添付されている特許請求の範囲によって規定される。他の態様、利点、及び変更点は以下の特許請求の範囲内に含まれる。
【0081】
参照による援用
本明細書において参照された全ての特許及び刊行物の全体を参照により本明細書に援用する。
本明細書において考察された刊行物は単に開示を目的として本願書の提出日の前に提示されている。本明細書中の何物も本発明が先行発明のためにこのような公開に先行するとは言えないと認めたと解釈されてはならない。
【0082】
本明細書において使用される場合、全ての見出しは単に構成のためのものであり、本開示を多少なりとも限定することを意図したものではない。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1>
tggcagct(配列番号2)を含む配列を有し、少なくとも1のロック核酸(LNA)修飾を含む核酸を含む、miR-22阻害性組成物。
<2>
前記核酸がtggcagct(配列番号2)の7位及び8位にLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<3>
前記核酸が、tggcagct(配列番号2)、cttcaactggcagct(配列番号3)、tcttcaactggcagct(配列番号4)、ttcttcaactggcagct(配列番号5)、及びgttcttcaactggcagct(配列番号6)から選択される配列を有する核酸を含む、<1>に記載の組成物。
<4>
前記核酸が約8~約12のLNA修飾を含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の組成物。
<5>
前記核酸が約8~約10のLNA修飾を含む、<4>に記載の組成物。
<6>
前記核酸が約8、又は約9、又は約10、又は約11、又は約12のLNA修飾を含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の組成物。
<7>
前記核酸が約10のLNA修飾を含む、<6>に記載の組成物。
<8>
前記核酸がtggcagct(配列番号2)及び少なくとも6のLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<9>
前記核酸がtggcagct(配列番号2)及び少なくとも8のLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<10>
前記核酸がcttcaactggcagct(配列番号3)及び少なくとも6のLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<11>
前記核酸がcttcaactggcagct(配列番号3)及び少なくとも8のLNA修飾を含む、<8>に記載の組成物。
<12>
前記核酸がcttcaactggcagct(配列番号3)及び少なくとも10のLNA修飾を含む、<8>に記載の組成物。
<13>
前記核酸がcttcaactggcagct(配列番号3)及び8のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、3位、6位、7位、10位、12位、14位、及び15位に存在する、<11>に記載の組成物。
<14>
前記核酸がcttcaactggcagct(配列番号3)及び10のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、14位、及び15位に存在する、<12>に記載の組成物。
<15>
前記核酸がtcttcaactggcagct(配列番号4)及び少なくとも8のLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<16>
前記核酸がtcttcaactggcagct(配列番号4)及び少なくとも10のLNA修飾を含む、<15>に記載の組成物。
<17>
前記核酸がtcttcaactggcagct(配列番号4)及び少なくとも11のLNA修飾を含む、<16>に記載の組成物。
<18>
前記核酸がtcttcaactggcagct(配列番号4)及び10のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、4位、8位、10位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する、<16>に記載の組成物。
<19>
前記核酸がtcttcaactggcagct(配列番号4)及び11のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、4位、5位、6位、8位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する、<17>に記載の組成物。
<20>
前記核酸がtcttcaactggcagct(配列番号4)及び11か所のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、4位、5位、6位、9位、11位、12位、13位、15位、及び16位に存在する、<17>に記載の組成物。
<21>
前記核酸がttcttcaactggcagct(配列番号5)及び少なくとも10のLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<22>
前記核酸がttcttcaactggcagct(配列番号5)及び少なくとも11のLNA修飾を含む、<21>に記載の組成物。
<23>
前記核酸がttcttcaactggcagct(配列番号5)及び11のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、5位、6位、7位、10位、12位、13位、14位、16位、及び17位に存在する、<22>に記載の組成物。
<24>
前記核酸がgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び少なくとも9のLNA修飾を含む、<1>に記載の組成物。
<25>
前記核酸がgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び少なくとも10のLNA修飾を含む、<24>に記載の組成物。
<26>
前記核酸がgttcttcaactggcagct(配列番号6)及び9のLNA修飾を含み、前記修飾が1位、2位、6位、10位、13位、14位、16位、17位、及び18位に存在する、<24>に記載の組成物。
<27>
<1>~<26>のいずれか一項に記載の核酸と、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む医薬組成物。
<28>
<1>~<26>のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター又はプラスミド。
<29>
<1>~<26>のいずれか一項に記載の核酸を含む宿主細胞。
<30>
miR-22と、<1>~<26>のいずれか一項に記載のmiR-22阻害性組成物とを接触させることを含むmiR-22を阻害する方法。
【配列表】