(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】浴室洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A47K 4/00 20060101AFI20230725BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A47K4/00
A47K3/00 Q
(21)【出願番号】P 2019134324
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】小幡 恭士
(72)【発明者】
【氏名】中塚 悠介
(72)【発明者】
【氏名】濱田 誠
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-117163(JP,A)
【文献】特開2008-168231(JP,A)
【文献】特開平05-220098(JP,A)
【文献】特開平6-225850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ノズルに繋がった湯水流路と、
この湯水流路の途中箇所に設けられ、かつ前記湯水流路を流れる湯水に洗剤を混合させて洗剤混合湯水を生成するためのベンチュリ部と、
を備えている、浴室洗浄装置であって、
前記湯水流路に接続され、かつ前記ベンチュリ部よりも湯水流れ方向上流域を流れる湯水を、前記ベンチュリ部を迂回した経路で前記ベンチュリ部よりも湯水流れ方向下流域に流れさせることが可能なバイパス流路と、
前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過する状態と通過しない状態とに選択的に切り替えることが可能な流路切替え手段と、
を
備えており、
前記湯水流路のうち、前記ベンチュリ部よりも湯水流れ方向下流域には、噴出切替弁を介して分岐した複数の分岐流路が設けられ、かつこれら複数の分岐流路には、前記洗浄ノズルとして、複数の洗浄ノズルが設けられており、
前記複数の洗浄ノズルから前記洗剤混合湯水を噴出させる洗剤洗浄処理、および前記複数の洗浄ノズルから前記洗剤が混入されていない非洗剤混合湯水を噴出させるすすぎ処理が、所定の手順で実行されるように、前記流路切替え手段を制御可能な制御部を、さらに備えており、
前記制御部は、前記洗剤洗浄処理および前記すすぎ処理のいずれにおいても、前記洗剤混合湯水または前記非洗剤混合湯水が前記複数の洗浄ノズルから同時に噴出される動作と、前記複数の洗浄ノズルのそれぞれから非同時で個別に噴出される動作と、が行なわれるように、前記噴出切替弁を制御可能な構成とされていることを特徴とする、浴室洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室洗浄装置であって、
前記すすぎ処理の際には、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過するように構成されている、浴室洗浄装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の浴室洗浄装置であって、
前記洗剤洗浄処理の初期においては、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過しない状態で前記ベンチュリ部を通過するように構成されている、浴室洗浄装置。
【請求項4】
請求項
1ないし3のいずれかに記載の浴室洗浄装置であって、
前記洗剤洗浄処理の後期においては、前記ベンチュリ部への前記洗剤の供給が停止された状態で、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過し、前記湯水流路中に存在する洗剤混合湯水を前記複数の洗浄ノズルから噴出させるように構成されている、浴室洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室洗浄装置の具体例として、特許文献1~4に記載されたものがある。
これらの文献に記載の浴室洗浄装置においては、浴槽の底部に洗浄ノズルが取付けられ、かつこの洗浄ノズルに繋がって設けられた湯水流路の途中には、ベンチュリ部(洗剤混合部)を介して洗剤供給路が分岐接続されている。湯水流路に湯水が流れると、ベンチュリ部における負圧発生作用により、洗剤はベンチュリ部に円滑に供給され、洗剤混合湯水が生成される。この洗剤混合湯水は、洗浄ノズルから浴槽に向けて噴出し、浴槽は洗浄される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、ベンチュリ部は、その流路が小径または小幅に絞られているなどの理由から湯水流通抵抗は大きく、大きな圧力損失を生じさせる。一方、浴室洗浄装置の湯水流路への湯水供給は、水道圧を利用して行なわれているのが一般的である。したがって、水道圧が低めの地域においては、ベンチュリ部における圧力損失に起因し、洗浄ノズルから噴出する湯水の勢いが弱いものとなる。これでは、優れた洗浄能力を得ることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3171127公報
【文献】特許第3509089号公報
【文献】特開2009-60984号公報
【文献】特許第5239844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、湯水流路への湯水供給圧が低めの場合であっても、優れた洗浄能力を得ることが可能な浴室洗浄装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される浴室洗浄装置は、洗浄ノズルに繋がった湯水流路と、この湯水流路の途中箇所に設けられ、かつ前記湯水流路を流れる湯水に洗剤を混合させて洗剤混合湯水を生成するためのベンチュリ部と、を備えている、浴室洗浄装置であって、前記湯水流路に接続され、かつ前記ベンチュリ部よりも湯水流れ方向上流域を流れる湯水を、前記ベンチュリ部を迂回した経路で前記ベンチュリ部よりも湯水流れ方向下流域に流れさせることが可能なバイパス流路と、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過する状態と通過しない状態とに選択的に切り替えることが可能な流路切替え手段と、を備えており、前記湯水流路のうち、前記ベンチュリ部よりも湯水流れ方向下流域には、噴出切替弁を介して分岐した複数の分岐流路が設けられ、かつこれら複数の分岐流路には、前記洗浄ノズルとして、複数の洗浄ノズルが設けられており、前記複数の洗浄ノズルから前記洗剤混合湯水を噴出させる洗剤洗浄処理、および前記複数の洗浄ノズルから前記洗剤が混入されていない非洗剤混合湯水を噴出させるすすぎ処理が、所定の手順で実行されるように、前記流路切替え手段を制御可能な制御部を、さらに備えており、前記制御部は、前記洗剤洗浄処理および前記すすぎ処理のいずれにおいても、前記洗剤混合湯水または前記非洗剤混合湯水が前記複数の洗浄ノズルから同時に噴出される動作と、前記複数の洗浄ノズルのそれぞれから非同時で個別に噴出される動作と、が行なわれるように、前記噴出切替弁を制御可能な構成とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、湯水流路の湯水がバイパス流路を通過する状態に設定した場合には、湯水流通抵抗が大きいベンチュリ部を迂回したかたちで前記湯水を複数の洗浄ノズルまで流れさせることができる。このため、その際の湯水流れの圧力損失を小さくし、湯水流路への湯水供給圧が比較的低い場合であっても、複数の洗浄ノズルから前記湯水を強い勢いで噴出させることが可能となる。浴室洗浄処理時において、ベンチュリ部に多くの湯水を通過させて洗剤混合湯水を生成しつつ、複数の洗浄ノズルからこの洗剤混合湯水を噴出させる場合には、バイパス流路を利用した前記した態様の湯水噴出は困難であるものの、それ以外の場合には、バイパス流路を利用し、複数の洗浄ノズルから湯水を強い勢いで噴出させることが可能である。このことにより、前記従来技術よりも洗浄能力を高めることができる。また、水道圧が低めの地域においても、本発明の浴室洗浄装置を適切に用いることが可能となる。
第2に、本発明によれば、バイパス流路に湯水を通過させ、ベンチュリ部における湯水流通量が減少した際には、ベンチュリ部における負圧発生作用も減少する。ベンチュリ部に洗剤を供給する経路には、開閉弁が設けられているのが通例であって、洗剤混合湯水を生成しない場合には、この開閉弁は閉状態とされる。ここで、前記開閉弁の閉状態において、ベンチュリ部に大きな負圧が発生し、この負圧が開閉弁に作用したのでは、開閉弁のたとえば弁本体を構成するゴムに作用する負荷が大きくなり、その使用寿命が短くなる不具合がある。これに対し、本発明によれば、バイパス流路に湯水を通過させている際には、ベンチュリ部の負圧発生作用を減少させることができるため、前記した不具合を適切に解消し、または少なくすることが可能となる。
第3に、洗剤洗浄処理とすすぎ処理とが組み合わされるため、洗浄能力を高める上で、より好ましいものとなる。
第4に、複数の洗浄ノズルを用いることにより、洗浄対象領域に対して各洗浄ノズルを接近させた配置とし、洗剤混合湯水または非洗剤混合湯水を強い勢いで洗浄対象領域に向けて噴出させることができる。一方、複数の洗浄ノズルからは洗剤混合湯水または非洗剤混合湯水を、時間差をもって個別に噴出させることができるため、各洗浄ノズルから噴出する洗剤混合湯水または非洗剤混合湯水の勢いが弱くならないようにすることもできる。したがって、洗浄能力を高める上で、一層好ましいものとなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記すすぎ処理の際には、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過するように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、すすぎ処理時において、複数の洗浄ノズルから非洗剤混合湯水を勢いよく噴出させることが可能となり、すすぎ処理能力を高めることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記洗剤洗浄処理の初期においては、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過しない状態で前記ベンチュリ部を通過するように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、洗剤洗浄処理の初期に、バイパス流路を通過した非洗剤混合湯水が複数の洗浄ノズルから噴出しないようにし、洗剤洗浄処理を的確に行なうことができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記洗剤洗浄処理の後期においては、前記ベンチュリ部への前記洗剤の供給が停止された状態で、前記湯水流路の湯水が前記バイパス流路を通過し、前記湯水流路中に存在する洗剤混合湯水を前記複数の洗浄ノズルから噴出させるように構成されている。
【0021】
このような構成によれば、洗剤洗浄処理の後期に、湯水流路内に残存する洗剤混合湯水を、バイパス流路を通過した非洗剤混合湯水によって湯水流路から押し出すことができる。したがって、洗剤洗浄処理の終了後において、湯水流路内に洗剤混合湯水が残存しないようにすることができる。また、洗剤洗浄処理の後期においては、複数の洗浄ノズルから洗剤混合湯水を勢いよく噴出させることも可能となる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る浴室洗浄装置の一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示す浴室洗浄装置の要部の構成を示す概略説明図である。
【
図3】(a)~(e)は、
図1に示す浴室洗浄装置において実行される動作処理の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】(a)~(e)は、
図1に示す浴室洗浄装置において実行される動作処理の他の例を示すタイムチャートである。
【
図5】
浴室洗浄装置の他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1に示す浴室洗浄装置Aは、浴槽1を洗浄するための浴槽洗浄装置として構成されている。具体的には、この浴室洗浄装置Aは、浴槽1の底部に取付けられた2つの洗浄ノズル2(2A,2B)、これら洗浄ノズル2に繋がった分岐流路3a,3bを有し、かつ洗浄ノズル2に湯水供給を行なうための湯水流路3、この湯水流路3の途中に設けられたベンチュリ部4、洗剤タンク5からベンチュリ部4に液体の洗剤を供給するための洗剤供給路6、ベンチュリ部4に並列接続されたバイパス流路30、およびこの浴室洗浄装置Aの各部の動作制御を実行する制御部7を備えている。
【0026】
湯水流路3には、給湯装置(図示略)、あるいは水道管などの湯水供給源から湯水供給が可能である。この湯水流路3には、この湯水流路3の上流部に設けられ、かつベンチュリ部4や洗浄ノズル2などへの湯水供給のオン・オフ切り替えを行なうための注湯開閉弁V0、流量調整弁V1、流量センサS、および分岐流路3a,3bが接続された噴出切替
弁V3などが設けられている。注湯開閉弁V0は、たとえば電磁開閉弁である。
噴出切替弁V3は、方向切替弁であり、洗浄ノズル2A,2Bの一方への湯水供給を選択的に切替え可能である。ただし、本実施形態においては、そのような機能に加え、洗浄ノズル2A,2Bの双方に湯水供給を同時に行なわせる状態も切替え設定可能である。
【0027】
図2によく表れているように、ベンチュリ部4は、両端部が湯水流路3に繋がった流路40を部分的に絞った絞り部41と、この絞り部41に交差して繋がった連通路42とを備えており、絞り部41を湯水が高速で流れることにより連通路42に負圧が生じる。連通路42は、洗剤供給路6の一部を構成している。このため、前記負圧の作用により洗剤供給路6からベンチュリ部4に洗剤が円滑に流入し、この洗剤と湯水とが混合した洗剤混合湯水が生成される。
洗剤供給路6には、ベンチュリ部4への洗剤供給のオン・オフを切り替えるための洗剤開閉弁Vaが設けられている。この洗剤開閉弁Vaは、注湯開閉弁V0と同様な電磁開閉弁であり、弁開口部80およびその周囲に形成された弁座81に対向する弁体82が弁室83内に配され、かつソレノイド84の駆動により弁体82が往復動自在とされた構成である。弁体82は、弁閉時に弁座81に対面接触するゴム製シール部82aを有している。本実施形態によれば、後述するように、ベンチュリ部4において発生する負圧がゴム製シール部82に悪影響を及ぼすことを軽減する作用も得られる。
【0028】
バイパス流路30は、湯水流路3のうち、ベンチュリ部4よりも湯水流れ方向上流域を流れる湯水を、ベンチュリ部4を迂回したかたちでベンチュリ部4よりも湯水流れ方向下流域に流れさせるための流路であり、ベンチュリ部4と並列となるように湯水流路3に接続されている。このバイパス流路30は、湯水流路3の一般部分と同様な流路径であり、ベンチュリ部4よりも湯水流通抵抗が小さい流路である。
バイパス流路30には、たとえば電磁開閉弁を用いたバイパス弁V2が設けられている。このバイパス弁V2は、本発明でいう流路切替え手段の一例に相当し、このバイパス弁V2の開閉により、湯水がバイパス流路30を流れる状態と流れない状態とに切替え可能である。なお、本実施形態の構成においては、バイパス弁V2が開状態とされ、バイパス流路30に湯水が流通する場合、ベンチュリ部4にも少量の湯水は流れ得る。
【0029】
制御部7は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、不図示のスイッチ操作部などを備えている。この制御部7は、所定のスイッチ操作がなされ、あるいは予め設定された所定の時期が到来すると、後述するように、洗剤洗浄処理、およびすすぎ処理を所定の手順で実行させる。洗剤洗浄処理は、洗浄ノズル2から洗剤混合湯水を噴出させることによりなされる。すすぎ処理は、洗剤洗浄処理の前になされる予備すすぎ処理と、洗剤洗浄処理の後になされる本すすぎ処理とがあり、いずれの場合においても、洗浄ノズル2から非洗剤混合湯水を噴出させることによりなされる。
【0030】
次に、前記した浴室洗浄装置Aにおける動作処理の一例について、
図3のタイムチャートを参照しつつ説明するとともに、その作用について説明する。
【0031】
浴槽洗浄は、
図3(a)に示すように、予備すすぎ処理、洗剤洗浄処理、および本すすぎ処理の順序で行なわれる。これらの各処理時における注湯開閉弁V0、洗剤開閉弁Va、バイパス弁V2、および噴出切替弁V3のそれぞれの開閉動作は、
図3(b)~(e)に示すとおりである。なお、同図(e)の「2A」は、洗浄ノズル2Aへの湯水供給状態を示し、「2B」は、洗浄ノズル2Bへの湯水供給状態を示す。この点は、後述する
図4(e)も同様である。
【0032】
図3に示したタイムチャートの浴槽洗浄においては、予備すすぎ処理時、および本すすぎ処理時において、バイパス弁V2が開状態とされており、バイパス流路30を通過して
洗浄ノズル2(2Aおよび/または2B)に湯水が供給されている。多くの湯水がベンチュリ部4を通過して洗浄ノズル2に供給される場合には、ベンチュリ部4における圧力損失が大きくなり、洗浄ノズル2から噴出する湯水の勢いが弱くなる虞がある。これに対し、本実施形態によれば、そのような虞をなくし、洗浄ノズル2からは湯水(非洗剤混合湯水)を強い勢いで噴出させることができる。したがって、すすぎ処理能力、ひいては浴槽洗浄能力を優れたものとすることができる。湯水流路3への湯水供給圧が低めの地域であっても、この浴室洗浄装置Aを適切に使用することが可能となる。
【0033】
洗浄ノズル2としては、2つの洗浄ノズル2A,2Bが設けられているため、これら洗浄ノズル2A,2Bのそれぞれを浴槽1の内壁面に接近した配置とすることが可能である。したがって、洗浄ノズル2A,2Bのそれぞれから噴出した湯水を、浴槽1の内壁面に強く当てる上で、より好ましいものとなる。一方、
図3(e)に示すように、噴出切替弁V3は、2つの洗浄ノズル2A,2Bのそれぞれから湯水を単独で噴出させる状態と、2つの洗浄ノズル2A,2Bの双方から湯水を同時に噴出させる状態とを切替え設定するように制御されている。2つの洗浄ノズル2A,2Bのそれぞれから湯水を単独で噴出させれば、湯水の噴出の勢いが弱くならないようにすることが可能である。また、2つの洗浄ノズル2A,2Bの双方から湯水を同時に噴出させた際には、それら2つの洗浄ノズル2A,2Bのそれぞれから湯水を単独で噴出させる場合とは異なる態様で湯水が噴出することとなるため、浴槽1の内壁面に対する湯水の噴射の仕方が一様にならないようにし、このことによっても洗浄能力を高める効果が期待できる。
【0034】
図3(a)に示すように、洗剤洗浄処理においては、洗浄ノズル2からの洗剤混合湯水の噴出動作が、所定のインターバルを経て複数回にわたって繰り返されている(初期P1、中期P3、後期P2)。前記インターバル中に、洗剤混合湯水による汚れの分解・剥離などが進行する。前記した洗剤洗浄処理の初期P1においては、バイパス弁V2が閉状態とされてバイパス流路30に湯水が通過しない状態で、注湯開閉弁V0および洗剤開閉弁Vaがともに開状態とされている。このような構成によれば、洗剤洗浄処理の初期P1に、バイパス流路30を通過した非洗剤混合湯水が洗浄ノズル2から噴出することを防止し、洗剤洗浄処理を適切に行なうことが可能である。
【0035】
一方、洗剤洗浄処理の後期P2においては、洗剤開閉弁Vaが閉状態、かつバイパス弁V2が開状態とされており、ベンチュリ部4への洗剤供給が停止された状態で、バイパス流路30に湯水が流れるようになっている。このような構成によれば、湯水流路3のうち、ベンチュリ部4より下流側の湯水流路3に残存している洗剤混合湯水が、バイパス流路30を通過した湯水(非洗剤混合湯水)によって洗浄ノズル2から押し出される。したがって、洗剤洗浄処理の終了時点において、湯水流路3内に洗剤混合湯水が残存しないようにすることが可能である。勿論、洗剤洗浄処理の後期P2においては、洗浄ノズル2から洗剤混合湯水を勢いよく噴出させることもできる。
【0036】
すすぎ処理時、および洗剤洗浄処理の後期P2の期間中は、
図3の(c),(d)に示すように、洗剤開閉弁Vaが閉状態とされ、かつバイパス弁V2が開状態とされている。ここで、バイパス弁V2が開状態とされ、バイパス流路30に湯水が流通する際には、ベンチュリ部4において大きな負圧は発生しないこととなる。洗剤開閉弁Vaは、閉状態にある際に、ベンチュリ部4からの負圧を受けると、弁体82のゴム製シール部82aに大きな負荷が作用し、その使用寿命が短くなる。これに対し、本実施形態によれば、そのようなことも適切に回避することが可能である。
【0037】
本実施形態の浴室洗浄装置Aにおいては、
図3に示した動作処理に加え、または代えて、
図4に示した動作処理を実行するように構成することもできる。
図4に示す動作処理は、
図3の符号P3で示す範囲の動作が省略されており、これ以外
は、
図3に示した動作処理と同様であり、その説明は重複するため省略する。
【0038】
図5は、
浴室洗浄装置の他の実施形態を示している(前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している)。
図5に示す実施形態においては、湯水流路3とバイパス流路30との接続箇所に、三方弁としてのバイパス切替弁V2’が設けられている。このバイパス切替弁V2’による流路切替えにより、湯水をベンチュリ部4およびバイパス流路30の一方に選択的に流れさせることが可能であり、前記実施形態と同様な作用を得ることが可能である。
本実施形態から理解されるように、本発明でいう流路切替え手段としては、バイパス流路に設けられた開閉弁に代えて、三方弁などを用いた構成とすることも可能である。
【0039】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室洗浄装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0040】
上述の実施形態においては、洗浄ノズルが2つ設けられているが、これに限定されず、3以上の数とすることも可能である。
本発明に係る浴室洗浄装置の洗浄対象は、浴槽に限定されず、これ以外として、たとえば浴室の床面、側壁面、天井、浴槽蓋などとすることが可能である。複数の洗浄ノズルのうち、一部の洗浄ノズルを浴槽洗浄用とし、かつ他の一部を浴槽以外の部分の洗浄用とすることもできる。
1回の浴室洗浄工程における洗剤洗浄処理やすすぎ処理の実行回数やその実行タイミングなども限定されない。洗剤の具体的な種類、成分なども限定されない。
【符号の説明】
【0041】
A 浴室洗浄装置
V0 注湯開閉弁
Va 洗剤開閉弁
V2 バイパス弁(流路切替え手段)
V2’ バイパス切替弁(流路切替え手段)
V3 噴出切替弁
1 浴槽
2 洗浄ノズル
3 湯水流路
30 バイパス流路
4 ベンチュリ部
6 洗剤供給路