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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】半固形状組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230725BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20230725BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20230725BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230725BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 25/26 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L29/238
A23L29/256
A23L29/269
A61K31/215
A61K31/16
A61K31/522
A61K47/36
A61P25/00
A61P25/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019051721
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2019180396
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2018074038
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 藍
(72)【発明者】
【氏名】新井 司
(72)【発明者】
【氏名】小柳 里帆
(72)【発明者】
【氏名】藤野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】畑中 大
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-037297(JP,A)
【文献】特開平03-251533(JP,A)
【文献】特開2014-205632(JP,A)
【文献】特表平09-510627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸モノメンチル及びエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートから選ばれる少なくとも1種である冷感刺激剤、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、寒天及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種である増粘多糖類及びカフェインを含有し、粘度が1.4~27Pa・sであることを特徴とする半固形状組成物。
【請求項2】
冷感刺激剤が0.00001~0.04%W/Wであることを特徴とする請求項1に記載の半固形状組成物。
【請求項3】
眠気防止用又は集中力維持用の請求項1又は2に記載の半固形状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェイン、冷感刺激剤を含有する半固形状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眠気を解消する手段として、従来、カフェイン摂取による中枢神経を興奮させる方法や、メントール等の冷感刺激物質を用いる方法が知られている。
【0003】
カフェインは、プリン環を持つプリンアルカロイドの1種で、コーヒー類に含まれることからこの名がある。コーヒー、コーラ、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ココア、チョコレート、栄養ドリンクなどに含まれ、また、一部の医薬品にも含まれる。結晶は一水和物 (C8H10N4O2・H2O) もしくは無水物(無水カフェイン、C8H10N4O2)として得られる、白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく、味は苦い。カフェインの生理作用として一般的に中枢神経を興奮させて精神機能を亢進させることが知られており、カフェイン含有飲食品を仕事中や運転中などの精神的な疲労の改善や眠気防止、集中力の維持の目的で摂取する人が多い。しかしながら、飲用してからカフェインの作用を感じるまでにはおよそ30分以上の時間が必要であり、眠気を感じたときに飲用する場合、即効性に課題があるのが現状である。
【0004】
眠気防止、集中力の維持等の目的で、メントール等の冷感刺激剤を配合したガムや飲料を用いる人も多い。しかしながら、メントール等の冷感刺激剤はその冷涼感の刺激により前述の目的を達成することから、持続時間が短いという欠点がある。加えて、特許文献1や特許文献2にもあるように、メントールは冷感刺激剤として最も広く一般的に使用されており、冷涼感を強く出すためには、メントール配合量を多くすることが最も簡便かつ有効であるが、メントールを多量に使用した場合、揮発性が高い、強いミント様の味や匂いがある、苦味が強い、などの欠点が目立ち、単独で多量に用いることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6061900
【文献】特許6148892
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決のため、通常の飲料ではすぐに飲み終わってしまうところ、少しずつ飲むことで冷感刺激を長く持続させ、1本の製品で目覚め効果を長く持続できるよう、増粘剤を添加して口中にはりつくような半固形状組成物とすることが効果的であると考えた。すなわち、口中にはりつくような半固形状組成物であれば、1本の製品を消費するのに時間がかかり、冷感刺激を持続させることが可能となるため、飲用してからカフェインの作用を感じるまでの間に、眠気防止や集中力維持に対応することができると考えた。従って、カフェインの作用を感じるまでの間、冷感刺激が絶えないような、より効果実感を高めた製品を提供することが有用と考えた。また、メントール以外の冷感刺激剤を用いることで、より服用性の高い製品を提供できると考えた。
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討により、増粘剤を多く配合して口中でのはりつき感を高くすると、冷感刺激の持続時間が減少することが判明し、はりつき感を保ちつつ、冷感刺激を持続させることは困難であった。
【0008】
本発明は、カフェイン、冷感刺激剤を含有し、適度なはりつき感を保ちつつ、冷感刺激の持続を損なわない半固形状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、増粘性のある好ましくは1.4~27Pa・sからなる粘度を有する半固形状組成物にカフェイン、冷感刺激剤を配合することで、適度なはりつき感を保ちつつ、冷感刺激をより持続させた眠気防止用の半固形状組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、
(1)冷感刺激剤、増粘多糖類及びカフェインを含有し、粘度が1.4~27Pa・sであることを特徴とする半固形状組成物、
(2)冷感刺激剤が、コハク酸モノメンチル及びエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートから選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の半固形状組成物、
(3)冷感刺激剤が0.00001~0.04%W/Wであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の半固形状組成物、
(4)増粘多糖類がキサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、寒天及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の半固形状組成物、
(5)眠気防止用又は集中力維持用の(1)~(4)に記載の半固形状組成物、
である。
【発明の効果】
【0011】
カフェイン、冷感刺激剤を含有する液体を増粘多糖類により特定の範囲の粘度に調整することにより、適度なはりつき感を保ちつつ、冷感刺激が持続した眠気防止用の半固形状組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の半固形状組成物は、冷感刺激剤、増粘多糖類及びカフェインを含有するものである。本発明の冷感刺激剤とは、コハク酸モノメンチル、エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートから1種または2種以上選ばれるものである。冷感刺激剤コハク酸モノメンチル及びエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートから選ばれる少なくとも1種を用いることにより、従来多く使用されるメントールとは異なり、苦味や強いミント様の味や匂いを有せず、より服用性をよくすることが可能である。
【0013】
本発明において、コハク酸モノメンチルとは、コハク酸を基礎とする冷涼感化合物の1種であり、冷涼感に優れており、通常、香料として菓子類や清涼飲料等の添加剤として使用される。例えば、東京化成工業株式会社等より市販品を購入することができる。コハク酸モノメンチルは、特許3245744にあるように、組込まれる最終使用組成物の全重量の1重量%までの低濃度で使用されるとき、メントール等の従来の冷涼感化合物とは異なり、苦味なしに、快く及び/又は長く持続する冷涼感効果を与えることが知られている。さらに、1重量%までの濃度で、コハク酸を基礎とする冷涼感化合物は、メントールのような他の冷涼感物質が生ずるような、口または喉の中での強いミント様の味や匂いを生じない。
【0014】
本発明において、エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートとは、別名WS-5とも呼ばれ、例えば、Penta Manufacturing社等より市販品を購入することができる、冷涼感に優れた化合物の一種であり、通常、香料として菓子類や清涼飲料等の添加剤として使用される。エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートは、L-メントールよりも強い冷涼刺激を有するエチルエステルの冷涼感化合物の1つであり、L-メントールより苦味などの不快味は少なく揮発性も高いことが知られている。
【0015】
本発明において冷感刺激剤の含有量(冷感刺激剤を複数含む場合はその合計量、以下同じ)は、半固形状組成物全量に対して通常0.00001~1W/W%である。本発明の効果をよく発揮できる含有量は、冷感刺激という効果の面から、半固形状組成物全量に対して0.00001~0.04W/W%であり 、より好ましくは、半固形状組成物全量に対して0.001~0.04W/W%であり、さらに好ましくは0.0025~0.02W/W%、特に好ましくは0.0025~0.01W/W%である。
【0016】
本発明に使用する増粘多糖類は、口中にはりつくような半固形状組成物を提供できることを必須とする。増粘多糖類の種類としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、寒天、カラギーナン、ペクチン、タマリンドシードガム、ファーセレラン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、グルコマンナン、でん粉、加工でん粉、デキストリン、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、カードラン、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、トラガントガム、カラヤガム、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、ハイドロキシメチルセルロース、キチン、キトサン、等を挙げることができる。好ましくはキサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、寒天、カラギーナンであり、前記好ましい増粘多糖類の1種又は2種以上の混合物を使用するのがよい。さらに、本発明の効果に影響を与えない程度において、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、寒天、カラギーナン以外の増粘多糖類を併用することが出来る。
【0017】
本発明に用いるキサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、寒天、カラギーナンは市販されているものでよく、例えば、キサンタンガムはサンエースNXG-C(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、ローカストビーンガムはソアローカストA120F(三菱ケミカルフーズ社製)、タラガムはタラガムMT120(三菱ケミカルフーズ社製)、グアーガムはグアーガムPA(伊那食品工業社製)、寒天はウルトラ寒天イーナ(伊那食品工業社製)、カラギーナンはSATIGUM BDC20(ユニテックフーズ社製)などを挙げることが出来る。
【0018】
本発明は、前記増粘多糖類を使用することにより、適度な粘度を有する半固形状組成物、すなわち口中への適度なはりつき感が得られる半固形状組成物を提供出来る。適度な粘度とは、例えば回転粘度計(TV25形粘度計(東機産業))にてLロータM3を用い、12rpmで5分間測定したときに、1.4~27Pa・sである粘度のことを言い、好ましくは、1.4~20Pa・s、より好ましくは1.4~17Pa・s、さらに好ましくは2.0~14Pa・sである。本発明における半固形状組成物とは、前記適度な粘度を有する経口組成物であり、半固形状組成物には、ゲル状、ゾル状の組成物を含む。
【0019】
本発明の半固形状組成物のpHは、特に限定されず、例えば、2.5~7.0である。増粘多糖類の安定性の観点からは高pHであることが好ましく、また、保存性の観点からは低pHが好ましいため、より好ましくはpH3.5~4.6である。本発明におけるpHの調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸およびそれらの塩類、塩酸等の無機酸、水酸化ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の半固形状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分として、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類またはその塩類、生薬類、生薬抽出物類、ローヤルゼリー等を適宜に配合することができる。
【0021】
更に、本発明の半固形状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、抗酸化剤、着色料、香料、矯味剤、界面活性剤、安定剤、保存料、甘味料、酸味料等の添加物を適宜配合することができる。
【0022】
本発明の半固形状組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、前述の冷感刺激剤、増粘多糖類、カフェインを添加し、更に所望により前述した他の成分を添加して攪拌し、組成物原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整や加熱溶解、殺菌処理を行い、容器に充填する工程により製造することができる。
【実施例
【0023】
以下に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0024】
経口組成物の調製1:
下記表4~9に記載の処方および次の方法に従い経口組成物を調製した。水にカフェイン、クエン酸、安息香酸ナトリウム、コハク酸モノメンチルまたはエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート(表中ではWS-5と表記)、および増粘多糖類を添加、攪拌した後、90℃20分以上の殺菌をかけパウチ容器に充填し、半固形状組成物を得た(実施例1~15)。コハク酸モノメンチルまたはエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートは水に溶解しづらいため、予め2W/V%となるよう95%エタノールに溶解したものを使用した。また、増粘剤を添加しない飲料を対照とした(比較例1~13)。
【0025】
これらの経口組成物について、50mLスクリュー管に充填しなおしたものを、回転粘度計(TV25形粘度計(東機産業))にてLロータM3を用い、12rpmで5分間にて粘度を測定した。
【0026】
これらの経口組成物について、25~40歳の3人をパネルとして、はりつき感、冷涼感の持続を評価した。サンプル30gを口に含み、30秒間口中で保持したのち吐き出した。
はりつき感については、吐き出し直後の口中のはりつき感を表1の通り6段階絶対評価し、パネルの平均値を算出し、さらに、表2の判定基準に従い評価結果を表した。はりつき感とは、口中に含んだ組成物が口腔内で滞留し、口腔粘膜に接したまま剥がれないような感覚である。
冷涼感については、吐き出し後から、冷涼感が完全に消失するまでの時間を記録し、対照サンプルとの持続時間の差の平均値を求めた。さらに、表3に従って評価結果を表した。
事前にパネル間で同じ評価手順でできるよう確認し、はりつき感と冷涼感の持続についても基準のすり合わせを行った。冷涼感については、消失時間の記録漏れを防ぐため、1分ごとに冷涼感を記録したのち、完全に消失するまでの時間を記録した。また、評価は複数日に渡って行われたため、対照サンプルは同じ処方でも複数回評価を行った。
結果を表4~9に示した。なお、はりつき感(評点)、冷涼感の持続時間(秒)の結果は、パネル3名の平均値を、それぞれ表2、表3に従って示した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
【表9】

【0036】
表4~7から明らかなように、粘度1.4~27Pa・sの範囲となるようなサンプルにおいて、適度なはりつき感とエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートまたはコハク酸モノメンチルの冷涼感の持続を両立することが出来た。粘度が低いと適度なはりつき感が得られず、粘度が高すぎると冷涼感の持続が大きく減少することが示された。また、表8、表9から明らかなように、増粘多糖類を複数混合して使用した場合にも、同じ効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、カフェイン、冷感刺激剤を含有し、適度なはりつき感を保ちつつ、冷感刺激が持続した半固形状組成物の提供を通じて、健全な食品業界の発達に寄与することが期待される。