(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230725BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 603
B41J2/18
B41J2/14 607
B41J2/14 305
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2019069623
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】小出 祥平
(72)【発明者】
【氏名】平井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290292(JP,A)
【文献】特開2017-154490(JP,A)
【文献】特開2017-159561(JP,A)
【文献】特開2017-185792(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047553(WO,A1)
【文献】特開2018-130967(JP,A)
【文献】特開2016-159514(JP,A)
【文献】特表2014-510649(JP,A)
【文献】特開2019-014174(JP,A)
【文献】特開2018-158568(JP,A)
【文献】特開平11-268302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在する供給マニホールドと、
前記第1方向に延在する帰還マニホールドと、
複数の圧力室及び複数のノズルを有する複数の個別流路であって、各個別流路が、前記供給マニホールドと前記複数の圧力室の1つを連通する供給部分と、前記第1方向と直交する第2方向に延在して、前記複数の圧力室の1つと前記複数のノズルの1つとを連通するディセンダ部分と、前記ディセンダ部分から分岐して前記帰還マニホールドに連通する帰還部分とを有する個別流路と、を備え、
前記供給マニホールドは、前記複数の個別流路の前記供給部分と連結する複数の供給口を有し、
前記帰還マニホールドは、前記複数の個別流路の前記帰還部分と連結する複数の帰還口を有し、
前記供給マニホールドの前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の中央と、前記供給マニホールドの前記複数の供給口との間の前記第3方向の距離は、前記供給マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも長く、
前記帰還マニホールドの前記第3方向の中央と、前記帰還マニホールドの前記複数の帰還口との間の前記第3方向の距離は、前記帰還マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも短
く、
さらに、前記供給マニホールドの前記第1方向の一端と、前記帰還マニホールドの前記第1方向の一端とを、前記複数の圧力室及び前記複数のノズルを介さずに連通する連通流路を備え、
前記供給マニホールドは、前記連通流路と連結する連通口を有し、
前記供給マニホールドの前記第3方向の中央と、前記供給マニホールドの前記連通口との間の前記第3方向の距離は、前記供給マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも短い、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記供給マニホールドの前記第2方向の長さは、前記帰還マニホールドの前記第2方向の長さよりも短い請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記複数の個別流路の1つに連結する前記供給口の開口面積は、前記1つの個別流路に連結する前記帰還口の開口面積よりも小さい請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
第1方向に延在する供給マニホールドと、
前記第1方向に延在する帰還マニホールドと、
複数の圧力室及び複数のノズルを有する複数の個別流路であって、各個別流路が、前記供給マニホールドと前記複数の圧力室の1つを連通する供給部分と、前記第1方向と直交する第2方向に延在して、前記複数の圧力室の1つと前記複数のノズルの1つとを連通するディセンダ部分と、前記ディセンダ部分から分岐して前記帰還マニホールドに連通する帰還部分とを有する個別流路と、を備え、
前記供給マニホールドは、前記複数の個別流路の前記供給部分と連結する複数の供給口を有し、
前記帰還マニホールドは、前記複数の個別流路の前記帰還部分と連結する複数の帰還口を有し、
前記供給マニホールドの前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の中央と、前記供給マニホールドの前記複数の供給口との間の前記第3方向の距離は、前記供給マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも長く、
前記帰還マニホールドの前記第3方向の中央と、前記帰還マニホールドの前記複数の帰還口との間の前記第3方向の距離は、前記帰還マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも短く、
前記供給マニホールド及び前記帰還マニホールドの、前記第3方向の一方側には、前記供給マニホールドに液体を供給する供給ポート及び前記帰還マニホールドから前記液体を回収する回収ポートが配置されており、
前記供給マニホールド及び前記帰還マニホールドは、前記供給ポート及び前記回収ポートに向かって、前記第3方向の前記一方側に曲がる屈曲部を有し、
前記複数の供給口は、前記第3方向において、前記供給マニホールドの前記第3方向の前記一方側の端部と前記第3方向の中央との間に配置されている、液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記供給マニホールドの少なくとも一部は、前記第2方向において前記帰還マニホールドと重なっている請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記各個別流路に関して、前記供給マニホールドの前記供給口は、前記第3方向において前記ディセンダ部分と前記供給マニホールドの前記第3方向の中央との間に位置している請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記各個別流路に関して、前記供給マニホールドの前記第3方向の中央は、前記第3方向において前記ディセンダ部分と前記供給マニホールドの前記供給口との間に位置している請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記各個別流路に関して、前記供給マニホールドの前記第3方向の中央は、前記第3方向において前記供給マニホールドの前記供給口と前記帰還マニホールドの前記帰還口との間に位置している請求項5~7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記各個別流路に関して、前記供給マニホールドの前記供給口と前記帰還マニホールドの前記帰還口とは、前記第1方向において互いにずれた位置に配置されている請求項5~8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記各個別流路に関して、前記供給マニホールドの前記供給口は、前記第3方向において前記供給マニホールドの前記第3方向の端部と、前記第3方向の中央との間に位置している請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記各個別流路に関して、前記帰還マニホールドの前記帰還口は、前記第3方向において前記帰還マニホールドの前記第3方向の中央と、前記ディセンダ部分との間に位置している請求項1~10のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記供給マニホールドの少なくとも一部は、前記第2方向において前記帰還マニホールドと重なっており、
さらに、前記複数の圧力室と前記第2方向において重なるように配置された圧電層を備える請求項1~11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記供給マニホールドを流れる液体の圧力は、前記帰還マニホールドを流れる液体の圧力よりも大きい請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記圧電層は、前記第2方向において、全ての前記複数の圧力室を含む全ての前記個別流路、前記供給マニホールド及び前記帰還マニホールドと重なるように配置されている請求項12又は13に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記圧電層の第1面には、前記第2方向において前記複数の圧力室と重なる複数の個別電極が形成され、前記圧電層の、前記第1面と前記第2方向において対向する第2面には、前記複数の個別電極と対向する共通電極が形成され、
前記各個別電極は、前記第2方向において、前記供給マニホールドの前記第3方向の端部を覆っている請求項12~14のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項15に記載の液体吐出ヘッドと、
前記共通電極に第1電位を供給し、複数の個別電極に前記第1電位と前記第1電位と異なる第2電位とを選択的に供給するドライバICと、
前記ドライバICを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記個別電極の1つに対応する圧力室から液滴を噴射しないときには、前記個別電極に前記第2電位を供給し、
前記個別電極の1つに対応する圧力室から液滴を噴射するときには、前記個別電極に前記第1電位を供給した後、再び前記第2電位を供給するように、
前記ドライバICを制御することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を媒体に向けて吐出する液体吐出ヘッド、及び当該液体吐出ヘッドを含む液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドとインクタンクとを有している。インクジェット記録ヘッドとインクタンクとの間は、供給チューブと循環チューブにより接続されている。供給チューブを介してインクタンクからインクジェット記録ヘッドへと送られたインクは、循環チューブを介してインクジェット記録ヘッドからインクタンクに戻される。このようにインクを循環させることによってインクの乾燥を防いでいる。インクジェット記録ヘッドの内部には、複数の圧力室にインクを供給する供給マニホールドと、圧力室に供給されたインクのうち、ノズルから吐出されなかったインクが排出される帰還マニホールドとが設けられている。共通マニホールドは供給チューブと連通し、帰還マニホールドは循環チューブと連通している。なお、特許文献1に記載のインクジェット記録装置においては、共通供給路と共通排出路とが上下方向において重なるように配置された2階建て構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のインクジェット記録装置において、インクが循環するときに、供給マニホールドに気泡が入り込むことがある。供給マニホールドを流れる気泡が圧力室に侵入すると、記録ヘッドを駆動させたときのノズルからのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。そのため、供給マニホールドに入り込んだ気泡が圧力室に侵入しにくい流路構造を採用することが望まれる。なお、一旦圧力室に気泡が入り込んでしまった場合には、すみやかに気泡を帰還マニホールドに向かって排出することが望まれるため、圧力室に侵入した気泡が帰還マニホールドに向かって排出されやすい流路構造を採用することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、液体が循環しており、且つ、供給マニホールドを流れる気泡が圧力室に侵入しにくい流路構造及び圧力室に侵入した気泡が帰還マニホールドに向かって排出されやすい流路構造を有する液体吐出ヘッドを提供すること、及び当該液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つに従えば、第1方向に延在する供給マニホールドと、
前記第1方向に延在する帰還マニホールドと、
複数の圧力室及び複数のノズルを有する複数の個別流路であって、各個別流路が、前記供給マニホールドと前記複数の圧力室の1つを連通する供給部分と、前記第1方向と直交する第2方向に延在して、前記複数の圧力室の1つと前記複数のノズルの1つとを連通するディセンダ部分と、前記ディセンダ部分から分岐して前記帰還マニホールドに連通する帰還部分とを有する個別流路と、を備え、
前記供給マニホールドは、前記複数の個別流路の前記供給部分と連結する複数の供給口を有し、
前記帰還マニホールドは、前記複数の個別流路の前記帰還部分と連結する複数の帰還口を有し、
前記供給マニホールドの前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の中央と、前記供給マニホールドの前記複数の供給口との間の前記第3方向の距離は、前記供給マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも長く、
前記帰還マニホールドの前記第3方向の中央と、前記帰還マニホールドの前記複数の帰還口との間の前記第3方向の距離は、前記帰還マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも短く、
さらに、前記供給マニホールドの前記第1方向の一端と、前記帰還マニホールドの前記第1方向の一端とを、前記複数の圧力室及び前記複数のノズルを介さずに連通する連通流路を備え、
前記供給マニホールドは、前記連通流路と連結する連通口を有し、
前記供給マニホールドの前記第3方向の中央と、前記供給マニホールドの前記連通口との間の前記第3方向の距離は、前記供給マニホールドの前記第3方向の幅の1/4よりも短いことを特徴とする液体吐出ヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
供給マニホールドの第3方向の中央部分を流れる液体の流速は、供給マニホールドの第3方向の端部付近を流れる液体の流速よりも速い。同様に、帰還マニホールドの第3方向の中央近傍を流れる液体の流速は、帰還マニホールドの第3方向の端部付近を流れる液体の流速よりも速い。仮に、供給マニホールドにおいて、単位体積当たりの気泡の数が一様であるとすると、流速の大きい領域は、流速の小さい領域に比べて、単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数は多くなる。さらに、供給マニホールドに液体を供給する供給ポートは、通常、供給マニホールドの第3方向の略中央部に配置されることが多い。その場合には、供給マニホールドの第3方向の略中央部に配置された供給ポートから気泡が流れてくることが考えられる。そのため、供給マニホールドの第3方向の端部付近よりも、帰還マニホールドの第3方向の中央近傍を流れる気泡の数(単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数)がさらに多くなる。このような理由から、供給マニホールドの第3方向の中央部分を単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数は、中央部分よりも流速の遅い供給マニホールドの第3方向の端部付近を単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数よりも多くなる。そこで、供給マニホールドの供給口を、供給マニホールドの第3方向の中央部分よりも供給マニホールドの第3方向の端部に近づけることにより、供給マニホールドを流れる気泡が供給口を通って個別流路内に侵入することを防いでいる。また、帰還マニホールドの帰還口を、帰還マニホールドの第3方向の端部よりも帰還マニホールドの第3方向の中央に近づけるように配置している。これにより、個別流路の帰還口から排出される気泡を、帰還マニホールドの第3方向の中央近傍の速い流れにのせることができ、容易に気泡を個別流路から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略を示す平面図である。
【
図2】
図2は本実施形態に係るインクジェットヘッドの平面図である。
【
図3】
図3(a)は
図2のIIIA-IIIA線断面図であり、
図3(b)は
図2のIIIB-IIIB線断面図である。
【
図4】
図4は、変更形態に係るインクジェットヘッドの
図3(a)相当図である。
【
図5】
図5は、別の変更形態に係るインクジェットヘッドの
図3(a)相当図である。
【
図6】
図6は、さらに別の変更形態に係るインクジェットヘッドの
図3(a)相当図である。
【
図8】
図8は、供給マニホールド及び帰還マニホールドが屈曲部を有する変更形態に係るインクジェットヘッドの
図2相当図である。
【
図9】
図9は、インクジェットヘッドの、ノズル、供給口、帰還口の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本開示の実施形態に係るプリンタ1は、インクジェットヘッド2、プラテン4、搬送ローラ5、6、コントローラ7を主に備えている。
【0010】
なお、以下では、
図1に示すように、用紙Pが搬送される方向を搬送方向として定義する。搬送方向に直交する方向(用紙Pの幅方向)を左右方向として定義する。搬送方向は本教示の第1方向の一例であり、左右方向は本教示の第3方向の一例である。
【0011】
インクジェットヘッド2は、いわゆるライン型のインクジェットヘッドであり、8つのヘッドユニット3を有する。
図1に示されるように、8つのヘッドユニット3は搬送方向及び左右方向において、千鳥状に配置されている。各ヘッドユニット3は、その下面に形成された複数のノズル45からインクを吐出する。インクジェットヘッド2には、ドライバIC8が設けられている。後述のように、コントローラ7がドライバIC8を制御することにより、所望のノズル45からインクが吐出される。
【0012】
プラテン4は、インクジェットヘッド2の下面と対向するように配置されている。プラテン4は、左右方向に記録用紙Pの全長にわたって延びている。プラテン4は、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ5、6は、それぞれ、キャリッジ2の搬送方向の上流側及び下流側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0013】
プリンタ1においては、コントローラ7が搬送ローラ5,6に設けられた不図示のモータを制御して、搬送ローラ5、6に、記録用紙Pを搬送方向に所定距離ずつ搬送させる。コントローラ7は、記録用紙Pが搬送される毎に、インクジェットヘッド2の複数のノズル45からインクを吐出させる。これにより、プリンタ1は記録用紙Pへの印刷を実行する。
【0014】
<ヘッドユニット3>
次に、インクジェットヘッド2のヘッドユニット3について説明する。
図2、3(a)に示すように、各ヘッドユニット3は、ノズル45及び圧力室40などのインク流路が形成された流路ユニット21と、圧力室40内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータ22とを備えている。
【0015】
<流路ユニット21>
図3(a),(b)に示されるように、流路ユニット21は、上下方向に積層された10枚のプレート101~110を有する。上下方向は、本開示の第2方向に対応する。
図2に示されるように、流路ユニット21には、6つの供給マニホールド46と、6つの帰還マニホールド47と、複数の個別流路30と、複数の個別流路30に形成された複数の圧力室40及び複数のノズル45を有する。各個別流路30は、それぞれ、供給部分41と、ディセンダ部分42(
図3(a)参照)と、帰還部分43とを有する。なお、図面を見やすくするために、
図2において帰還部分43は実線で図示されている。
【0016】
プレート101には、複数の圧力室40が形成されている。圧力室40は、左右方向を長手方向とする略矩形の形状を有している。また、複数の圧力室40は、左右方向に並んだ6つの圧力室列119を構成している。各圧力室列119は、搬送方向に延在している。隣り合う2つの圧力室列119において、圧力室40の搬送方向の位置がずれている。
【0017】
複数の供給部分41は、プレート102、103にまたがって形成されている。各供給部分41は圧力室40の1つと供給マニホールド46とを繋ぐ流路である。各供給部分41の一端は、圧力室40の左端に形成された開口40aを通じて圧力室40に接続されている。各供給部分41の他端は、供給口41a(本開示の供給口の一例)を通じて供給マニホールド46と接続されている。供給部分41の断面積は、ディセンダ部分42の断面積と比べて小さい。供給部分41は、圧力室40の左端部と接続され、圧力室40との接続部分から左方に延びている。
【0018】
複数のディセンダ部分42は、プレート102~109に形成された貫通孔が上下方向に重なることによって形成されている。各ディセンダ部分42は、圧力室40の1つと、ノズル45とを接続する流路であり、圧力室40の右端部から下方に延びている。ディセンダ部分42の下端には、ノズル45が配置されている。
【0019】
複数の帰還部分43は、プレート109に形成されている。各帰還部分43は、ディセンダ部分42の1つと帰還マニホールド47とを繋ぐ流路である。帰還部分43は、プレート109に形成されたディセンダ部分42との接続部分から左方に延びている。また、帰還部分43は、プレート109に形成された帰還口43a(本開示の帰還口の一例)を通じて帰還マニホールド47に接続されている。なお、帰還口43aの開口面積は、供給口41aの開口面積よりも大きい。
【0020】
複数のノズル45は、プレート110に形成されている。各ノズル45は、ディセンダ部分42の1つの下端に配置している。ノズル45と、ノズル45に接続されたディセンダ部分42と、ディセンダ部分42に接続された帰還部分43及び圧力室40と、圧力室40に接続された供給部分41とによって、個別流路30が形成されている。
【0021】
図3(a)に示されるように、供給マニホールド46は、プレート104に形成されている。
図2に示されるように、6つの供給マニホールド46は、それぞれ、搬送方向に延び、左右方向に間隔をあけて並んでいる。6つの供給マニホールド46は、6列の圧力室列119に対応しており、各供給マニホールド46は、対応する圧力室列119を構成する複数の圧力室40と、供給部分41を介して接続されている。各供給マニホールド46の搬送方向における上流側の端部には、供給ポート128が設けられている。そして、図示しないインクタンクに貯留されたインクが、供給ポート128から供給マニホールド46に供給される。これにより、供給マニホールド46においては、搬送方向の上流側から下流側に向かってインクが流れ、各供給部分41を通って各圧力室40へインクが供給される。
【0022】
図3(a)に示されるように、帰還マニホールド47は、プレート107、108に形成されている。
図2に示されるように、6つの帰還マニホールド47は、それぞれが搬送方向に延び、左右方向に間隔をあけて並んでいる。各帰還マニホールド47の搬送方向における上流側の端部には、回収ポート129が設けられている。回収ポート129には、図示しないインクタンクが接続されている。
図3(a),(b)に示されるように、帰還マニホールド47は、供給マニホールド46よりも下方に位置し、供給マニホールド46と上下方向に重なっている。また、6つの帰還マニホールド47は、6列の圧力室列119に対応しており、各帰還マニホールド47は、対応する圧力室列119を構成する複数の圧力室40と、ディセンダ部分42及び帰還部分43を通じて接続されている。帰還マニホールド47においては、各個別流路30の帰還部分43から、ノズル45から吐出されなかったインクが流れ込み、搬送方向の下流側から上流側に向かってインクが流れ、回収ポート129からインクが回収される。回収ポート129から流出したインクは、図示しないインクタンクに戻される。
【0023】
なお、
図2に示されるように、供給マニホールド46と帰還マニホールド47の搬送方向の下流端には、供給マニホールド46と帰還マニホールド47とを繋ぐ連通流路50が形成されている。
図7に示されるように、連通流路50は、ノズル45と連通していない点を除いて、個別流路30と同じ形状を有している。なお、連通流路50と供給マニホールド46との接続口である連通口50aは、左右方向において供給マニホールド46の略中央に配置されている。同様に、連通流路50と帰還マニホールド47との接続口である連通口50bは、左右方向において帰還マニホールド47の略中央に配置されている。
【0024】
本実施形態では、インク供給口128とインクタンクとの間の流路の途中、又は、回収ポート129とインクタンクとの間の流路の途中に、図示しないポンプが設けられている。不図示のポンプが駆動されることにより生じるインクの流れによって、インクジェットヘッド2と図示しないインクタンクとの間でインクが循環する。なお、本実施形態においては、供給マニホールド46を流れるインクにかかる圧力が、帰還マニホールド47を流れるインクにかかる圧力よりも大きくなるようにしている。
【0025】
また、流路ユニット21には、プレート105の下側の部分とプレート106の上側の部分にまたがって延び、供給マニホールド46及び帰還マニホールド47と上下方向に重なるダンパ130が形成されている。そして、プレート106の下端部によって形成される、供給マニホールド46とダンパ130とを隔てる隔壁が変形することにより、供給マニホールド46内のインクの圧力変動が抑制される。また、プレート105の上端部によって形成される、帰還マニホールド47とダンパ130とを隔てる隔壁が変形することにより、帰還マニホールド47内のインクの圧力変動が抑制される。
【0026】
<圧電アクチュエータ>
図3(a)に示されるように、圧電アクチュエータ22は、2つの圧電層141、142と、共通電極143と、複数の個別電極144とを有する。圧電層141、142は、圧電材料によって形成される。例えば、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料を用いることができる。圧電層141は、流路ユニット21の上面に配置され、圧電層142は圧電層141の上面に配置されている。なお、圧電層141は、圧電材料以外の絶縁性材料で形成されていてもよい。
【0027】
共通電極143は、圧電層141と圧電層142との間に配置され、圧電層141、142の全域にわたって連続的に延びている。共通電極143はグランド電位に保持されている。複数の個別電極144は、複数の圧力室40に対して個別に設けられている。個別電極144は、略矩形の平面形状を有し、対応する圧力室40の中央部と上下方向に重なるように配置されている。複数の個別電極144の接続端子144aは、図示しない配線部材を介してドライバIC8(
図1参照)に接続されている。そして、複数の個別電極144には、ドライバIC8により個別に、グランド電位及び駆動電位のうちいずれかの電位が選択的に付与される。また、共通電極143と複数の個別電極144とがこのように配置されるのに対応して、圧電層142の各個別電極144と共通電極143とに挟まれた部分は、それぞれ、厚み方向に分極された活性部となっている。
【0028】
ここで、圧電アクチュエータ22を駆動してノズル45からインクを吐出させる方法について説明する。本実施形態では、以下の説明のように、いわゆる引きうちによってインクが吐出される。以下の制御は、コントローラ7(
図1参照)がドライバIC8を制御して、共通電極143及び個別電極144の電位を制御することにより実行される。圧電アクチュエータ22では、ノズル45からインクを吐出させない待機状態において、共通電極143と同じグランド電位に保持され、全ての個別電極144がグランド電位と異なる駆動電位に保持されている。このとき、圧電層141、142の圧力室40と上下方向に重なる部分が全体として圧力室40側に凸となるように変形している。
【0029】
あるノズル45からインクを吐出させるときには、そのノズル45に対応する個別電極144の電位をグランド電位に切り換える。これにより、圧電層141、142の圧力室40と上下方向に重なる部分の変形が元にもどり、圧力室40の容積が大きくなる。その後、再び個別電極144の電位を駆動電位に切り替えることで再び圧電層141、142の圧力室40と上下方向に重なる部分が圧力室40側に凸になるように変形する。これにより、圧力室40内のインクの圧力が上昇し、圧力室40に連通するノズル45からインクが吐出される。ノズル45からインクが吐出された後も、個別電極144の電位は駆動電位に維持される。
【0030】
<本実施形態の作用効果>
以上に説明したようなインクジェットヘッド2では、インクタンクから供給マニホールド46に供給されるインクに気泡が混入することがある。混入したインクは、インクの流れにのって供給マニホールド46を流れるが、一部の気泡は、供給マニホールド46から供給部分41に流れ込むことがある。供給部分41に流れ込んだ気泡が、圧力室40及びディセンダ部分42に流れ込むと、ノズル45からのインクの吐出特性が変動する虞がある。
【0031】
本実施形態の供給マニホールド46を流れるインクの流速は完全に一様ではない。例えば、供給マニホールド46の左右方向の中央付近を流れるインクの流速は、供給マニホールド46の左右方向の両端付近を流れるインクの流速よりも速い。インクが壁面の近くを流れる場合には、インクと壁面との摩擦により流れの抵抗が大きくなるからである。仮に、供給マニホールド46において、単位体積当たりの気泡の数が一様であるとすると、流速の速い領域は、流速の遅い領域に比べて、単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数は多くなる。そのため、供給マニホールド46においては、流速の速い走査方向の中央付近を単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数は、流速の遅い走査方向の両端付近を単位時間当たりに通り過ぎる気泡の数よりも多くなる可能性が高い。そこで、本実施形態においては、供給マニホールド46と供給部分41との接続口である供給口41aを、供給マニホールド46の左右方向の端部の近くに配置している。具体的には、
図3(a)に示されるように、供給マニホールド46を左右方向に4等分した領域のうち、一番左の領域に供給口41aが配置されている。言い換えると、供給マニホールド46の左右方向の幅をLとしたとき、供給マニホールド46の左端部から供給口41aまでの左右方向の距離は、L/4よりも短く、供給マニホールド46の左右方向の中央から供給口41aまでの左右方向の距離は、L/4よりも長い。なお、上記の距離の定義において、供給口41aの位置は、供給口41aの中央の位置を基準とする。供給口41aの中央の位置として、例えば、供給口41aの重心の位置を採用してもよく、供給口41aの内接円の中心を採用することができる。また、供給マニホールド46の左右方向の幅は、左右方向において最も端にある部分で測ることができる。例えば、供給マニホールド46の左右方向の側面が、
図3(a)に図示されているような平面形状ではなく、左右方向の外側に膨らむような曲面形状である場合には、供給マニホールド46の左右方向の幅は、左右方向の端部において最も外側に位置する部分(左右方向の外側に最も膨らんだ部分)で測ることができる。なお、本実施形態においては、Lは、1~2mmである。
【0032】
本実施形態においては、供給マニホールド46と供給部分41との接続口である供給口41aを、供給マニホールド46の左右方向の中央から遠ざけて、供給マニホールド46の左右方向の端部の近くに配置しているので、供給マニホールド46を流れる気泡が、供給口41aに流れ込む可能性を低減させることができる。
【0033】
同様に、帰還マニホールド47を流れるインクの流速も完全に一様ではない。帰還マニホールド47の左右方向の中央付近を流れるインクの流速は、帰還マニホールド47の左右方向の両端付近を流れるインクの流速よりも速い。ここで、供給口41aを通って供給部分41に流れ込んだ気泡は、帰還部分43を通じて帰還マニホールド47にすみやかに排出することが望ましい。そこで、本実施形態においては、帰還マニホールド47と帰還部分43との接続口である帰還口43aを、帰還マニホールド47の左右方向の中央の近くに配置している。具体的には、
図3(a)に示されるように、帰還マニホールド47を左右方向に4等分した領域のうち、右から2番目の領域に帰還口43aが配置されている。言い換えると、帰還マニホールド47の左右方向の幅をLとしたとき、帰還マニホールド47の右端部から帰還口43aまでの左右方向の距離は、L/4よりも長く、帰還マニホールド47の左右方向の中央から帰還口43aまでの左右方向の距離は、L/4よりも短い。上述の説明と同様に、上記の距離の定義において、帰還口43aの位置は、帰還口43aの中央の位置(例えば、重心の位置及び内接円の中心位置など)を基準とする。また、帰還マニホールド47の左右方向の幅は、左右方向において最も端にある部分で測るものとする。
【0034】
本実施形態においては、帰還マニホールド47と帰還部分43との接続口である帰還口43aを、帰還マニホールド47の左右方向の端部から遠ざけて、帰還マニホールド47の左右方向の中央の近くに配置している。これにより、帰還口41aから排出される気泡を、帰還マニホールド47の左右方向の中央付近を流れる速い流れにのせることができ、帰還口41aから確実に排出することができる。
【0035】
上述のように、供給マニホールド46と帰還マニホールド47の搬送方向の下流端に配置された連通流路50においては、連通口50aが供給マニホールド46の左右方向における略中央に配置され、連通口50bは、左右方向において帰還マニホールド47の略中央に配置されている。連通口50aが供給マニホールド46の左右方向における略中央に配置されているので、供給マニホールド46の左右方向中央付近の速い流れにのって流れてきた気泡を、確実に連通口50aに導くことができる。そして、連通口50bは、左右方向において帰還マニホールド47の略中央に配置されているので、連通口50aから連通流路50に流れ込んだ気泡を、帰還マニホールド47の左右方向中央付近の速い流れにのせて、確実に連通口50bから排出することができる。これにより、供給マニホールド46を流れる気泡を、帰還マニホールド47に排出して、不図示のタンクに戻すことができる。
【0036】
本実施形態においては、供給部分41の供給口41aの開口面積の大きさは、帰還部分43の帰還口43aの開口面積の大きさよりも小さい。これにより、供給口41aからは気泡が侵入しづらく、帰還口43aからは気泡が排出されやすくなっている。
【0037】
また、供給マニホールド46は、帰還マニホールド47と比べて、上下方向(積層方向)の高さが低い。そのため、供給マニホールド46と帰還マニホールド47との上下方向の高さをそろえるように形成した場合に比べて、供給マニホールド46の
図3(a)に示される断面形状の、上下方向の長さに対する左右方向の長さの比率(以下、単にアスペクト比と呼ぶ)を大きくすることができる。これにより、供給マニホールド46と帰還マニホールド47との上下方向の高さをそろえるように形成した場合に比べて、供給マニホールド46の左右方向の中央部分を流れるインクの流速と左右方向の端部付近を流れるインクの流速との差を大きくすることができる。これにより、供給マニホールド46を流れる気泡を左右方向の中央付近の速い流れに集中させることができる。そのため、供給マニホールド46を流れる気泡が、供給マニホールド46の左右方向の端部の近くに配置された供給口41aに流れ込む可能性を低減させることができる。
【0038】
本実施形態において、供給マニホールド46の左右方向の中央は、左右方向において供給口41aとディセンダ部分42との間に位置している。言い換えると、供給口41aとディセンダ部分42とは、左右方向において、供給マニホールド46の左右方向の中央に対して互いに反対側に配置されている。それに伴って、圧力室40と供給マニホールド46とを繋ぐ供給部分41は、左右方向に直線状に延在している。供給部分41を流れるインクの流れも直線状になるため、供給口41aに気泡が流れ込んだとしても、速やかに供給部分41を通過させることができる。
【0039】
上記実施形態においては、供給マニホールド46の左右方向の中央は、左右方向において供給口41aと帰還口43aとの間に位置している。言い換えると、供給口41aと帰還口43aとは、供給マニホールド46の左右方向の中央に対して、互いに反対側に配置されている。そのため、供給口41aと帰還口43aとは、左右方向においてずれた位置にあり、上下方向において重なっていない。供給口41aに向かうインクの流れによって発生する圧力波と、帰還口43aから排出されるインクの流れによって発生する圧力波は、いずれも、放射状に伝搬して、ダンパ130に到達する。このとき、供給口41aに向かうインクの流れによって発生する圧力波は、ダンパ130の、上下方向において供給口41aと重なる位置に最初に到達する。また、帰還口43aから排出されるインクの流れによって発生する圧力波は、ダンパ130の、上下方向において帰還口43aと重なる位置に最初に到達する。本実施形態においては、供給口41aと帰還口43aとは、左右方向においてずれた位置にあり、上下方向において重なっていない。そのため、ダンパ130の、供給口41aに向かうインクの流れによって発生する圧力波が最初に到達する部分と、帰還口43aから排出されるインクの流れによって発生する圧力波が最初に到達する部分とが、左右方向においてずれた位置になるので、互いに干渉しない。
【0040】
本実施形態において、供給口41aは、供給マニホールド46の左右方向の端部と上下方向において重なる位置ではなく、左右方向の端部から左右方向の中央に少しずれた位置に位置している。言い換えると、供給口41aは、供給マニホールド46の左右方向の端部と、供給マニホールド46の左右方向の中央との間に位置している。供給口41a、供給マニホールド46等の流路は、プレート101~110にそれぞれエッチングを行なった後、プレート101~110を積層することにより形成される。その際、製造誤差により、プレート同士の位置が、目標位置からずれることがある。しかしながら、上述のように、供給口41aは、供給マニホールド46の左右方向の端部から左右方向の中央に少しずれた位置に位置しているので、プレート101~110の位置合わせがずれたとしても、供給口41aが供給マニホールド46の左右方向の端部と干渉する虞がない。これにより、供給部分41の流路抵抗にばらつきが発生することを防ぐことができる。
【0041】
上記実施形態において、帰還口43aは、左右方向において、帰還マニホールド47の左右方向の中央とディセンダ部分42との間に位置している。言い換えると、左右方向において、帰還口43aとディセンダ部分42とは、帰還マニホールド47の左右方向の中央に対して同じ側に位置している。これにより、左右方向において、帰還口43aとディセンダ部分42とが、帰還マニホールド47の左右方向の中央に対して互いに反対側に位置している場合に比べて、帰還部分43の長さを短くすることができる。これにより、帰還口43aとディセンダ部分42とが、帰還マニホールド47の左右方向の中央に対して互いに反対側に位置している場合に比べて、帰還部分43の流路抵抗を下げることができる。そのため、個別流路30に流れ込んだ気泡を、帰還部分43を通じて効率よく排出することができる。
【0042】
本実施形態においては、インクジェットヘッド2と図示しないインクタンクとの間で、供給マニホールド46と帰還マニホールド47とを通って、インクが循環するように流れている。そのため、供給マニホールド46内を流れるインクには、正圧がかけられている。供給マニホールド46内を流れるインクに正圧がかかっていると、流路ユニット21を構成する複数のプレートに対してプレート間の接着を引き剥がそうとする力(以下、単に剥離力という)がかかってしまい、場合によっては流路ユニット21が破損する虞がある。
【0043】
本実施形態においては、供給マニホールド46と帰還マニホールド47とが、上下方向に重なる二階建ての構造を採用している。これにより、インクジェットヘッド2をコンパクトにすることができる。また、供給マニホールド46の下側に帰還マニホールド47が位置しているので、帰還マニホールド47を形成するプレート106~109により、供給マニホールド46の下側における流路ユニット21の剛性を向上させることができる。これにより、帰還マニホールド47が供給マニホールド46の下側に配置されていない場合と比べて、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる、供給マニホールド46の下側に向かう剥離力を押さえ込むことができる。特に、本実施形態においては、帰還マニホールド47の深さ(上下方向の長さ)は、供給マニホールド46の深さより深く、帰還マニホールド47を構成するプレートの枚数が、供給マニホールド46を構成するプレートの枚数よりも多い。そのため、帰還マニホールド47を構成するプレートの枚数が、供給マニホールド46を構成するプレートの枚数よりも少ない場合と比べて、供給マニホールド46の下側における流路ユニット21の剛性を大きく向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態においては、圧電層141、142が、圧力室40の1つを覆うように細分化されておらず、全ての圧力室40を覆うように、流路ユニット21の流路が形成されている領域全体にわたって広がっている(
図2参照)。これにより、供給マニホールド46の上側における流路ユニット21の剛性を向上させることができ、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる、供給マニホールド46の上側に向かう剥離力を押さえ込むことができる。
【0045】
上記実施形態においては、上述のように、供給マニホールド46を流れるインクにかかる圧力が、帰還マニホールド47を流れるインクにかかる圧力よりも大きくなるようにしている。これにより、供給マニホールド46を流れるインクの流速を速くすることができるので、供給部分41に流れ込む気泡を減らすことができる。しかしながら、供給マニホールド46を流れるインクにかかる圧力が大きくなると、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる剥離力も大きくなる。これに対して、上記実施形態においては、上述のように圧電層141、142が全ての圧力室40を覆うように広がっているので、供給マニホールド46の上側における流路ユニット21の剛性を向上させることができる。そのため、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる、供給マニホールド46の上側に向かう剥離力が大きくなっても、これを押さえ込むことができる。
【0046】
上記実施形態においては、個別電極144が、供給マニホールド46の右側の端部の上側を覆っている。これにより、供給マニホールド46の端部の上側における流路ユニット21の剛性を向上させることができ、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる、供給マニホールド46の上側に向かう剥離力を押さえ込むことができる。また、本実施形態においては、上述のように引きうちを採用しているので、インクを吐出しないときにも、個別電極144の電位は常時駆動電位に設定される。そのため、インクを吐出しないときにも圧電層141、142の圧力室40と上下方向に重なる部分に電圧が印加されて、圧電層141、142の圧力室40と上下方向に重なる部分が全体として圧力室40側に凸となるように変形している。圧電層141,142は、電圧が印加されている間、変形状態を維持しようとするため、圧電層141,142の剛性は電圧を印加していない場合と比べて高くなる。これにより、供給マニホールド46の上側における流路ユニット21の剛性を向上させることができ、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる、供給マニホールド46の上側に向かう剥離力を押さえ込むことができる。
【0047】
<変更形態>
上記実施形態においては、供給口41aとディセンダ部分42とは、左右方向において、供給マニホールド46の左右方向の中央に対して互いに反対側に配置されていた。しかしながら、本開示はそのような態様には限られない。例えば
図4に示されるように、供給口41aとディセンダ部分42とが、左右方向において、供給マニホールド46の左右方向の中央に対して同じ側に配置されていてもよい。具体的には、
図4に示されるように、供給マニホールド46を左右方向に4等分した領域のうち、一番右の領域に供給口41bを配置することができる。
図4に示されるように、供給口41bと圧力室40とを繋ぐ供給部分41の下方には供給マニホールド46が位置し、上方には圧力室40が位置している。
図2に示される第1実施形態の供給部分41の上方には、圧力室40は配置されておらず、プレート102,103が配置されていた。これに対して、供給部分41が上下方向において、供給マニホールド46と圧力室40によって挟まれているので、第1実施形態のように供給路41の上方にプレートが重ねられている場合と比べて、供給部分41内のインクの熱が奪われにくくなる。これは、特に、温度調整されたインクが供給マニホールド46に供給される場合に有効である。
【0048】
また、
図5、6に示されるように、帰還口43bとディセンダ部分42とが、左右方向において、帰還マニホールド47の左右方向の中央に対して互いに反対側に配置されていてもよい。具体的には、
図5、6に示されるように、帰還マニホールド47を左右方向に4等分した領域のうち、左から2番目の領域に帰還口43bを配置することができる。この場合においても、帰還口43bは、左右方向において帰還マニホールド47の略中央に配置されているので、気泡を帰還マニホールド47の左右方向中央付近の速い流れにのせて、確実に帰還口43bから排出することができる。なお、
図5に示されるように、供給マニホールド46を左右方向に4等分した領域のうち、一番左の領域に供給口41aを配置してもよく、
図6に示されるように、供給マニホールド46を左右方向に4等分した領域のうち、一番右の領域に供給口41bを配置してもよい。いずれの場合であっても、供給口41a,41bを供給マニホールド46の左右方向の端部の近くに配置しているので、供給マニホールド46を流れる気泡が、供給口41a,41bに流れ込む可能性を低減させることができる。
【0049】
また、供給マニホールド46及び帰還マニホールド47が、左右方向において屈曲する屈曲部を有していてもよい。例えば、
図8に示されるように、供給マニホールド46及び帰還マニホールド47が、それぞれ、搬送方向の上流側において、左側に屈曲する屈曲部46C、47Cを有していてもよい。屈曲部46Cにおいて、屈曲部46Cの内側(
図8の左側)を流れるインクの流速は、屈曲部46Cの外側(
図8の右側)を流れるインクの流速よりも遅くなる。なお、
図8において、インクの流速を黒色の矢印の大きさで表している。そのため、単位時間当たりに流れる気泡の数は、流速の速い屈曲部46Cの外側(
図8の右側)の方が、流速の遅い屈曲部46Cの内側(
図8の左側)より多くなると考えられる。このことを考慮して、
図8においては、供給口41aを供給マニホールド46の左右方向の左端部に近い位置に配置している。これにより、供給マニホールド46を流れる気泡が、供給口41aに流れ込む可能性を低減させることができる。
【0050】
なお、上記実施形態において、供給口41a、帰還口43a、ディセンダ部分42、ノズル45の搬送方向の位置が同じになるように、左右方向に一列に並んでいた。しかしながら本開示はそのような態様には限られない。例えば、
図9に示されるように、供給口41a、帰還口43a、ディセンダ部分42、ノズル45の搬送方向の位置がずれていてもよい。
【0051】
以上説明した実施形態及び変更形態は、あくまでの例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、圧力室40の数、配置、形状、ピッチ等は任意に設定することができ、それに合わせて、個別電極144の数、配置、形状、ピッチ等を調整することができる。また、上記実施形態及び変更形態において、供給マニホールド46と帰還マニホールド47とは、上下方向に重なるように配置されていたが、本実施形態においてはそのような態様には限られない。供給マニホールド46と帰還マニホールド47とは、左右に並んで配置されていてもよい。また、圧電層141,142は、全ての圧力室40を覆うように流路ユニット21の上側に配置されていた。しかしながら、例えば、圧電層141,142が、複数のブロックに分割されて、それぞれの圧電層のブロックが複数の圧力室40を覆っていてもよい。この場合であっても、圧電層141,142が1つの圧力室40を覆うように、個別のブロックに分割されてる場合と比べて、供給マニホールド46内を流れるインクの圧力によって生じる、供給マニホールド46の上側に向かう剥離力を押さえ込むことができる。また、インクジェットヘッド2はいわゆるライン式のインクジェットヘッドであったが、本教示はこれに限られず、いわゆるシリアル式のインクジェットヘッドにも適用しうる。また、本教示はインクを吐出するインクジェットヘッドには限られない。画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本教示は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本教示を適用することは可能である。