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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20230725BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20230725BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
F16H57/04 G
F16H57/04 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019075814
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020174477
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】小山 崇宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-260898(JP,A)
【文献】特開2005-218272(JP,A)
【文献】特開2010-216405(JP,A)
【文献】特開2009-047110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00- 9/28
F16H 57/00-57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸を回転させる駆動装置であって、
モータと、
前記モータに接続される減速装置と、
前記減速装置を介して前記モータに接続され、前記車軸を差動軸回りに回転させる差動装置と、
前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有し、内部にオイルが収容されるハウジングと、
前記ハウジングの外部に位置し、前記ハウジングの内部に収容されたオイルを冷却するオイルクーラと、
少なくとも前記ハウジングの内部に設けられ、前記オイルが通される油路と、
少なくとも前記オイルクーラに接続され、冷媒が通される冷媒循環路と、
を備え、
前記オイルクーラは、前記差動軸の軸方向に長い形状であり、
前記ハウジングは、前記オイルクーラが取り付けられる取付面を有し、
前記取付面には、前記油路から前記オイルが流出するオイル流出口と、前記オイルクーラの内部からオイルが流入するオイル流入口と、前記冷媒循環路から前記冷媒が流出する冷媒流出口と、前記オイルクーラの内部から前記冷媒が流入する冷媒流入口と、が開口し、
前記オイル流出口と前記オイル流入口とは、前記取付面の中央部を挟んで対角配置され、
前記冷媒流出口と前記冷媒流入口とは、前記中央部を挟んで対角配置される、
駆動装置。
【請求項2】
前記オイルクーラは、前記モータ収容部のうち、前記差動軸の軸方向および鉛直方向の両方と直交する前後方向の一方側に位置する部分に取り付けられる、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記オイルクーラは、前記前後方向の一方側に露出する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記オイルクーラは、前記モータ収容部のうち、鉛直方向下側に位置する部分に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記オイルクーラは、鉛直方向下側に露出する、請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記モータは、前記差動軸と平行な方向に延びるモータ軸を中心として回転可能なロー
タを有し、
前記モータ収容部は、前記モータ軸を囲む筒状であり、
前記オイルクーラは、前記モータ収容部の径方向外側面に取り付けられる、請求項1か
ら5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、ケースの内部にオイルが収容される駆動装置が知られる。例えば、特許文献1には、ハイブリッド車両の駆動装置が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/046307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような駆動装置においては、ケースの内部に収容されたオイルを用いて駆動装置の冷却を行う。そのため、駆動装置には、ケースの内部に収容されたオイルを冷却するオイルクーラが設けられる。このような駆動装置においては、さらなる冷却効率の向上が求められていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、冷却効率を向上できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両の車軸を回転させる駆動装置であって、モータと、前記モータに接続される減速装置と、前記減速装置を介して前記モータに接続され、前記車軸を差動軸回りに回転させる差動装置と、前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有し、内部にオイルが収容されるハウジングと、前記ハウジングの外部に位置し、前記ハウジングの内部に収容されたオイルを冷却するオイルクーラと、少なくとも前記ハウジングの内部に設けられ、前記オイルが通される油路と、少なくとも前記オイルクーラに接続され、冷媒が通される冷媒循環路と、を備える。前記オイルクーラは、前記差動軸の軸方向に長い形状であり、前記ハウジングは、前記オイルクーラが取り付けられる取付面を有し、前記取付面には、前記油路から前記オイルが流出するオイル流出口と、前記オイルクーラの内部からオイルが流入するオイル流入口と、前記冷媒循環路から前記冷媒が流出する冷媒流出口と、前記オイルクーラの内部から前記冷媒が流入する冷媒流入口と、が開口し、前記オイル流出口と前記オイル流入口とは、前記取付面の中央部を挟んで対角配置され、前記冷媒流出口と前記冷媒流入口とは、前記中央部を挟んで対角配置される
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置の冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態の駆動装置を一方向に沿って視た斜視図である。
図3図3は、本実施形態の駆動装置を他の方向に沿って視た斜視図である。
図4図4は、本実施形態のハウジングの一部を前側から視た図である。
図5図5は、本実施形態の駆動装置の一部を前側から視た図である。
図6図6は、本実施形態のオイルクーラを示す斜視図である。
図7図7は、本実施形態の駆動装置の一部を示す部分断面図であって、図5におけるVII-VII部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、各図に示す実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。本実施形態において前側は、前後方向の一方側に相当する。
【0010】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0011】
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
図1から図3に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4と、差動装置5と、ハウジング6と、インバータユニット8と、オイルクーラ70と、電動オイルポンプ96と、を備える。ハウジング6は、モータ2を内部に収容するモータ収容部81と、減速装置4および差動装置5を内部に収容するギヤ収容部82と、を有する。ギヤ収容部82は、モータ収容部81の左側に位置する。
【0013】
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を備える。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、減速装置4に伝達される。
【0014】
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
【0015】
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部81とギヤ収容部82とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部82の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、減速装置4の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
【0016】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部81の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
【0017】
コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0018】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0019】
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部81のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部に保持される。
【0020】
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、後述する隔壁61cに保持される。
【0021】
減速装置4は、モータ2に接続される。より詳細には、減速装置4は、シャフト21の左側の端部に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0022】
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、中間軸J2に沿って延びる。本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1と平行である。本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1よりも下側に位置する。図示は省略するが、中間軸J2は、例えば、モータ軸J1よりも後側(-X側)に位置する。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。
【0023】
第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。第2のギヤ42の外径は、第3のギヤ43の外径よりも大きい。本実施形態において第2のギヤ42の下側の端部は、減速装置4のうちで最も下側に位置する部分である。
【0024】
モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。より詳細には、モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0025】
差動装置5は、減速装置4に接続される。これにより、差動装置5は、減速装置4を介してモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、車軸55を差動軸J3回りに回転させる。これにより、駆動装置1は、車両の車軸55を回転させる。
【0026】
本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1と平行である。すなわち、本実施形態においてモータ軸J1は、差動軸J3と平行な方向に延びる。また、前後方向は、差動軸J3の軸方向および鉛直方向の両方と直交する方向である。図2に示すように、本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1よりも後側(-X側)に位置する。差動軸J3は、モータ軸J1よりも下側に位置する。図示は省略するが、差動軸J3は、中間軸J2よりも後側に位置する。なお、図1では模式的に差動軸J3を中間軸J2よりも下側に記載しているが、差動軸J3は、例えば、鉛直方向において中間軸J2とほぼ同じ位置に位置する。差動軸J3は、例えば、中間軸J2よりも僅かに上側に位置する。
【0027】
図示は省略するが、差動装置5は、ギヤ収容部82の内部において減速装置4の後側(-X側)に位置する。図1に示すように、差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、差動軸J3回りに回転するギヤである。リングギヤ51は、第3のギヤ43と噛み合う。これにより、リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。リングギヤ51の下側の端部は、減速装置4よりも下側に位置する。本実施形態においてリングギヤ51の下側の端部は、差動装置5のうちで最も下側に位置する部分である。
【0028】
ハウジング6は、駆動装置1の外装筐体である。図1に示すように、ハウジング6は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを軸方向に区画する隔壁61cを有する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とは、隔壁開口68を介して互いに繋がる。
【0029】
ハウジング6の内部には、オイルOが収容される。より詳細には、モータ収容部81の内部およびギヤ収容部82の内部には、オイルOが収容される。ギヤ収容部82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPの油面Sは、リングギヤ51の下側の端部よりも上側に位置する。これにより、リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部82内のオイルOに浸漬される。オイル溜りPの油面Sは、差動軸J3および車軸55よりも下側に位置する。
【0030】
オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られる。モータ収容部81の内部に送られたオイルOは、モータ収容部81の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0031】
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部82に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部81の内部に残っていてもよい。
【0032】
また、本明細書において「リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬されればよく、モータが駆動している最中またはモータが停止している間の一部において、リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬されなくてもよい。例えば、オイル溜りPのオイルOが後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られた結果として、オイル溜りPの油面Sが下がり、一時的にリングギヤ51の下側の端部がオイルOに浸漬しない状態となってもよい。
【0033】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0034】
図1に示すように、ギヤ収容部82の底部82aは、モータ収容部81の底部81aよりも下側に位置する。そのため、ギヤ収容部82内からモータ収容部81内に送られたオイルOが隔壁開口68を介してギヤ収容部82内に流れやすい。図2に示すように、ギヤ収容部82は、前後方向に延びる。ギヤ収容部82の前側(+X側)の端部は、モータ収容部81の左側(+Y側)の端部に繋がる。ギヤ収容部82の後側(-X側)の端部は、モータ収容部81よりも後側に突出する。
【0035】
ギヤ収容部82は、突出部82bを有する。突出部82bは、モータ収容部81の左側(+Y側)の端部よりも後側(-X側)および下側に突出する部分である。突出部82bは、差動軸J3を中心とする円形状の孔部82cを有する。孔部82cは、突出部82bを軸方向に貫通する。図示は省略するが、孔部82cには、車軸55が通される。
【0036】
ギヤ収容部82は、電動オイルポンプ96が取り付けられるポンプ取付部88を有する。本実施形態においてポンプ取付部88は、突出部82bの右側(-Y側)の面から右側に突出する。ポンプ取付部88は、略直方体状である。ポンプ取付部88は、孔部82cよりも前側(+X側)かつ下側に位置する。ポンプ取付部88は、モータ収容部81の下側に位置する。図示は省略するが、ポンプ取付部88は、電動オイルポンプ96が挿入される穴部を有する。穴部は、ポンプ取付部88の右側の面から左側(+Y側)に窪む。
【0037】
モータ収容部81は、モータ軸J1を囲む筒状である。モータ収容部81は、例えば、軸方向に延びる略円筒状である。図3に示すように、モータ収容部81は、オイルクーラ70が取り付けられるクーラ取付部83を有する。本実施形態においてクーラ取付部83は、モータ収容部81の前側(+X側)の部分のうち下側の部分に設けられる。クーラ取付部83は、モータ軸J1よりも前側かつ下側に位置する。クーラ取付部83は、前側斜め下方に突出する。クーラ取付部83は、略直方体状である。
【0038】
図4に示すように、突出するクーラ取付部83の先端面は、オイルクーラ70が取り付けられる取付面83aである。取付面83aは、前側斜め下方を向く平坦面である。取付面83aは、例えば、一対の辺が軸方向に沿った略矩形状である。取付面83aの四隅には、それぞれ雌ネジ穴85が設けられる。取付面83aは、モータ収容部81の径方向外側面の一部を構成する。
【0039】
取付面83aには、オイル流出口92baと、オイル流入口92caと、冷媒流出口97baと、冷媒流入口97caと、が開口する。オイル流出口92ba、オイル流入口92ca、冷媒流出口97ba、および冷媒流入口97caは、円形状の開口である。
【0040】
オイル流出口92baは、後述する第2オイル流路92bの下流側の端部である。オイル流出口92baから流出するオイルOは、オイルクーラ70の内部に流入される。オイル流入口92caは、後述する第3オイル流路92cの上流側の端部である。オイル流入口92caには、オイルクーラ70の内部からオイルOが流入される。
【0041】
冷媒流出口97baは、後述する第1冷媒流路97bの下流側の端部である。冷媒流出口97baから流出する冷媒Wは、オイルクーラ70の内部に流入される。冷媒流入口97caは、後述する第2冷媒流路97cの上流側の端部である。冷媒流入口97caには、オイルクーラ70の内部から冷媒Wが流入される。
【0042】
オイル流出口92baとオイル流入口92caと冷媒流出口97baと冷媒流入口97caとは、取付面83aの中央部を囲んで配置される。オイル流出口92baとオイル流入口92caと冷媒流出口97baと冷媒流入口97caとは、例えば、それぞれを頂点とする矩形状に配置される。オイル流出口92baとオイル流入口92caとは、取付面83aの中央部を挟んで対角配置される。冷媒流出口97baと冷媒流入口97caとは、取付面83aの中央部を挟んで対角配置される。
【0043】
オイル流出口92baと冷媒流出口97baとは、軸方向に間隔を空けて配置される。オイル流出口92baは、冷媒流出口97baの左側(+Y側)に位置する。オイル流入口92caと冷媒流入口97caとは、軸方向に間隔を空けて配置される。オイル流入口92caは、冷媒流入口97caの右側(-Y側)に位置する。
【0044】
クーラ取付部83は、取付面83aの中央部から後側(-X側)斜め上方に窪む凹部84を有する。凹部84は、取付面83aと直交する方向に沿って視て、4つのアーム部84a,84b,84c,84dを有する十字形状である。アーム部84aは、冷媒流出口97baとオイル流入口92caとの間に位置する。アーム部84bは、オイル流入口92caと冷媒流入口97caとの間に位置する。アーム部84cは、冷媒流入口97caとオイル流出口92baとの間に位置する。アーム部84dは、オイル流出口92baと冷媒流出口97baとの間に位置する。このような凹部84を設けることで、クーラ取付部83における厚さを均一に近づけやすい。そのため、ハウジング6をダイカストで作る際に、クーラ取付部83に鋳巣が生じることを抑制できる。
【0045】
クーラ取付部83の上側の面には、前側(+X側)斜め上方に突出する筒部86が設けられる。筒部86は、前側斜め上方に開口する。筒部86の開口は、冷媒流出口97cbである。冷媒流出口97cbは、後述する第2冷媒流路97cの下流側の端部である。冷媒流出口97cbには、配管コネクタ87が取り付けられる。図示は省略するが、配管コネクタ87には、第2冷媒流路97cと図示しないラジエータとを繋ぐ配管が接続される。
【0046】
図2および図3に示すように、インバータユニット8は、モータ収容部81の後側に固定される。インバータユニット8は、ポンプ取付部88およびクーラ取付部83よりも上側に位置する。インバータユニット8は、電動オイルポンプ96およびオイルクーラ70よりも上側に位置する。インバータユニット8は、差動軸J3の上側に位置する。図示は省略するが、インバータユニット8は、孔部82cに通される車軸55の上側に位置する。
【0047】
図1に示すように、駆動装置1には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とに跨って設けられる。
【0048】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0049】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部82内に設けられる。
【0050】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0051】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、シャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0052】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0053】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0054】
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、第2の油路92は、オイルOをステータ30の上側からステータ30に供給する。第2の油路92には、電動オイルポンプ96と、オイルクーラ70と、第2のリザーバ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1オイル流路92aと、第2オイル流路92bと、第3オイル流路92cと、を有する。
【0055】
第1オイル流路92a、第2オイル流路92bおよび第3オイル流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1オイル流路92aは、オイル溜りPと電動オイルポンプ96とを繋ぐ。第2オイル流路92bは、電動オイルポンプ96とオイルクーラ70とを繋ぐ。図4に示すように、第2オイル流路92bは、クーラ取付部83の取付面83aに開口するオイル流出口92baを有する。
【0056】
図1に示すように、第3オイル流路92cは、オイルクーラ70から上側に延びる。第3オイル流路92cは、モータ収容部81の壁部に設けられる。図4に示すように、第3オイル流路92cは、クーラ取付部83の取付面83aに開口するオイル流入口92caを有する。図示は省略するが、第3オイル流路92cは、ステータ30の上側においてモータ収容部81の内部に開口する供給口を有する。当該供給口は、モータ収容部81の内部にオイルOを供給する。
【0057】
電動オイルポンプ96は、ハウジング6の内部に収容されたオイルOをモータ2に送る。本実施形態において電動オイルポンプ96は、第1オイル流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2オイル流路92b、オイルクーラ70、第3オイル流路92c、および第2のリザーバ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。
【0058】
第2のリザーバ10は、第2の油路92の一部を構成する。図1に示すように、第2のリザーバ10は、モータ収容部81の内部に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30の上側に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30によって下側から支持され、モータ2に設けられる。第2のリザーバ10は、例えば、樹脂材料から構成される。
【0059】
本実施形態において第2のリザーバ10は、上側に開口する樋状である。第2のリザーバ10は、オイルOを貯留する。本実施形態において第2のリザーバ10は、第3オイル流路92cを介してモータ収容部81内に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ10は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口を有する。これにより、第2のリザーバ10に貯留されたオイルOをステータ30に供給できる。
【0060】
第2のリザーバ10からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0061】
図2に示すように、電動オイルポンプ96は、ポンプ取付部88に取り付けられる。より詳細には、電動オイルポンプ96は、一部がポンプ取付部88に設けられた穴部に収容されてポンプ取付部88に取り付けられる。ポンプ取付部88の穴部には、電動オイルポンプ96のうち左側(+Y側)の部分が収容される。電動オイルポンプ96は、モータ収容部81の下側に位置する。
【0062】
電動オイルポンプ96は、図示しないモータ部と、モータ部によって回転させられる図示しないポンプ部と、モータ部およびポンプ部を収容するケース96aと、コネクタ部96dと、を有する。図示は省略するが、本実施形態において電動オイルポンプ96におけるモータ部の回転軸は、軸方向に延びる。
【0063】
ケース96aは、ハウジング6の外部に位置するヒートシンク96eを有する。すなわち、電動オイルポンプ96は、ヒートシンク96eを有する。ヒートシンク96eは、ケース96aのうち右側(-Y側)の端部に設けられたカバーである。ヒートシンク96eは、ケース96aの内部に収容された図示しないインバータ等の熱を外部に放出する。ヒートシンク96eは、収容部96bと、複数の放熱フィン96cと、を有する。
【0064】
収容部96bの内部には、例えば、図示しないコンデンサが収容される。複数の放熱フィン96cは、前後方向に延びる。複数の放熱フィン96cは、板面が鉛直方向を向く板状である。本実施形態において複数の放熱フィン96cは、収容部96bから前側(+X側)に延びる複数の放熱フィン96cと、収容部96bから後側(-X側)に延びる複数の放熱フィン96cと、を含む。収容部96bから前側に延びる複数の放熱フィン96cは、鉛直方向に間隔を空けて配置される。収容部96bから後側に延びる複数の放熱フィン96cは、鉛直方向に間隔を空けて配置される。
【0065】
図5に示すように、ヒートシンク96eの少なくとも一部は、前側(+X側)に露出する。本実施形態においては、収容部96bの一部と、複数の放熱フィン96cのうち収容部96bから前側に延びる複数の放熱フィン96cと、が前側に露出する。
【0066】
なお、本明細書において「ある対象が、ある側に露出する」とは、駆動装置をある側から視たときに、ある対象が視認可能であればよい。すなわち、「ヒートシンク96eの少なくとも一部が前側に露出する」とは、駆動装置1を前側から視たときに、ヒートシンク96eの少なくとも一部を視認可能であればよい。
【0067】
図2に示すように、コネクタ部96dは、ケース96aの前側の側面から右側(-Y側)に突出する。コネクタ部96dは、ハウジング6の外部に位置する。コネクタ部96dは、モータ収容部81の下側に位置する。コネクタ部96dは、ヒートシンク96eの前側(+X側)に位置する。コネクタ部96dの右側の端部は、ヒートシンク96eよりも右側に位置する。コネクタ部96dは、右側に開口する。コネクタ部96dには、図示しない電源が電気的に接続される。電動オイルポンプ96は、図示しない電源からの電力がコネクタ部96dを介して供給されることで駆動する。
【0068】
オイルクーラ70は、ハウジング6の内部に収容されたオイルOを冷却する。オイルクーラ70は、ハウジング6の外部に位置する。図3に示すように、オイルクーラ70は、軸方向に長い形状である。本実施形態においてオイルクーラ70は、軸方向に長い略直方体状である。
【0069】
なお、本明細書において「オイルクーラが軸方向に長い形状である」とは、オイルクーラの軸方向の寸法が、軸方向と直交する方向におけるオイルクーラの寸法よりも大きいことを含む。本実施形態においてオイルクーラ70の軸方向の寸法は、前後方向および鉛直方向におけるオイルクーラ70の寸法よりも大きい。
【0070】
オイルクーラ70は、ハウジング6に取り付けられる。本実施形態においてオイルクーラ70は、モータ収容部81に取り付けられる。より詳細には、オイルクーラ70は、モータ収容部81におけるクーラ取付部83に取り付けられる。上述したように、クーラ取付部83は、モータ収容部81の前側(+X側)の部分のうち下側の部分に設けられる。すなわち、本実施形態においてオイルクーラ70は、モータ収容部81のうち、前側に位置する部分に取り付けられる。また、本実施形態においてオイルクーラ70は、モータ収容部81のうち、下側に位置する部分に取り付けられる。
【0071】
なお、本明細書において「モータ収容部のうち前側に位置する部分」とは、モータ収容部のうちモータ軸よりも前側に位置する部分を含む。また、本明細書において「モータ収容部のうち下側に位置する部分」とは、モータ収容部のうちモータ軸よりも下側に位置する部分を含む。
【0072】
オイルクーラ70は、クーラ取付部83の取付面83aに取り付けられる。上述したように、取付面83aは、モータ収容部81の径方向外側面の一部を構成する。すなわち、本実施形態においてオイルクーラ70は、モータ収容部81の径方向外側面に取り付けられる。
【0073】
図6および図7に示すように、オイルクーラ70の内部には、オイルOが流れる内部オイル流路74と、冷媒Wが流れる内部冷媒流路73と、が設けられる。内部オイル流路74は、第2の油路92の一部であり、第2オイル流路92bと第3オイル流路92cとを繋ぐ流路である。
【0074】
内部冷媒流路73は、図示しないラジエータで冷却された冷媒Wが循環する冷媒循環路97の一部である。図1に示すように、冷媒循環路97は、ラジエータからの冷媒Wがインバータユニット8およびオイルクーラ70をこの順で通って、再びラジエータに戻る循環路である。冷媒Wは、例えば、水である。冷媒循環路97を通る冷媒Wによって、インバータユニット8が冷却される。また、冷媒循環路97を通る冷媒Wによって、オイルクーラ70の内部オイル流路74内を通るオイルOが冷却される。このようにオイルクーラ70は、冷媒Wとの熱交換によって、第2の油路92内を通るオイルOを冷却する。
【0075】
図4に示すように、冷媒循環路97は、駆動装置1に備えられる配管97aと、ハウジング6に設けられる第1冷媒流路97bおよび第2冷媒流路97cと、を有する。配管97aは、ハウジング6の外部に位置する。図3に示すように、本実施形態において配管97aは、インバータユニット8からクーラ取付部83まで延びる。配管97aには、インバータユニット8の内部を通った後の冷媒Wが流れる。配管97aは、モータ収容部81の右側(-Y側)を通る。モータ収容部81の右側において配管97aは、前側(+X側)に向かうに従って下側に位置する方向に斜めに延びる。
【0076】
図5に示すように、配管97aは、前後方向に沿って視て、電動オイルポンプ96におけるコネクタ部96dの少なくとも一部と重なる。本実施形態では、配管97aのうちクーラ取付部83に繋がる部分が、前後方向に沿って視て、コネクタ部96dの一部と重なる。配管97aのうちクーラ取付部83に繋がる部分は、コネクタ部96dのうち右側(-Y側)の部分の前側(+X側)に位置する。
【0077】
図4に示すように、第1冷媒流路97bおよび第2冷媒流路97cは、クーラ取付部83の内部に設けられる。第1冷媒流路97bは、配管97aと内部冷媒流路73とを繋ぐ流路である。図示は省略するが、第1冷媒流路97bは、配管97aが接続される冷媒流入口を有する。第1冷媒流路97bは、クーラ取付部83の取付面83aに設けられた冷媒流出口97baを有する。第2冷媒流路97cは、内部冷媒流路73に繋がる流路である。第2冷媒流路97cは、クーラ取付部83の取付面83aに設けられた冷媒流入口97caと、筒部86の端面に設けられた冷媒流出口97cbと、を有する。第1冷媒流路97bと第2冷媒流路97cとは、内部冷媒流路73によって繋がれる。
【0078】
図6に示すように、オイルクーラ70は、オイルクーラ本体71と、基部72と、を有する。オイルクーラ本体71は、軸方向に長い略直方体状である。オイルクーラ本体71は、基部72から前側(+X側)斜め下方に突出する。基部72は、取付面83aに固定される部分である。基部72は、基部本体72aと、基部本体72aの外縁部から突出する4つの固定部72bと、を有する。4つの固定部72bのそれぞれには、貫通孔72cが設けられる。各貫通孔72cに通されたネジが取付面83aに設けられた雌ネジ穴85のそれぞれに締め込まれることで、オイルクーラ70は、クーラ取付部83に固定される。
【0079】
基部72のうち取付面83aと接触する被取付面72dには、内部冷媒流路73の冷媒流入口73aおよび冷媒流出口73bと、内部オイル流路74のオイル流入口74aおよびオイル流出口74bと、が開口する。冷媒流入口73a、冷媒流出口73b、オイル流入口74a、およびオイル流出口74bは、円形状の開口である。
【0080】
冷媒流入口73aと冷媒流出口73bとオイル流入口74aとオイル流出口74bとは、例えば、それぞれを頂点とする矩形状に配置される。冷媒流入口73aと冷媒流出口73bとは、対角配置される。オイル流入口74aとオイル流出口74bとは、対角配置される。
【0081】
図7に示すように、冷媒流出口73bは、クーラ取付部83に設けられた冷媒流入口97caに繋がる。また、図示は省略するが、冷媒流入口73aは、クーラ取付部83に設けられた冷媒流出口97baに繋がる。これにより、内部冷媒流路73を介して第1冷媒流路97bと第2冷媒流路97cとが繋がる。
【0082】
オイル流入口74aは、クーラ取付部83に設けられたオイル流出口92baに繋がる。また、図示は省略するが、オイル流出口74bは、オイル流入口92caに繋がる。これにより、内部オイル流路74を介して第2オイル流路92bと第3オイル流路92cとが繋がる。
【0083】
図6に示すように、被取付面72dのうち冷媒流入口73aの周縁部には、シール凹部73cが設けられる。冷媒流入口73aは、シール凹部73cの底面に設けられる。シール凹部73cの内縁は、冷媒流入口73aと同心に配置される円形状である。被取付面72dのうち冷媒流出口73bの周縁部には、シール凹部73dが設けられる。冷媒流出口73bは、シール凹部73dの底面に設けられる。シール凹部73dの内縁は、冷媒流出口73bと同心に配置される円形状である。
【0084】
被取付面72dのうちオイル流入口74aの周縁部には、シール凹部74cが設けられる。オイル流入口74aは、シール凹部74cの底面に設けられる。シール凹部74cの内縁は、オイル流入口74aと同心に配置される円形状である。被取付面72dのうちオイル流出口74bの周縁部には、シール凹部74dが設けられる。オイル流出口74bは、シール凹部74dの底面に設けられる。シール凹部74dの内縁は、オイル流出口74bと同心に配置される円形状である。シール凹部73c,73dの内径は、例えば、シール凹部74c,74dの内径よりも大きい。
【0085】
図7に示すように、シール凹部73dには、環状のOリング75aが嵌め込まれる。Oリング75aは、被取付面72dと直交する方向に視て、冷媒流入口97caおよび冷媒流出口73bを囲む。Oリング75aは、取付面83aによってシール凹部73dの底面に押し付けられて圧縮弾性変形した状態である。これにより、Oリング75aは、冷媒流入口97caおよび冷媒流出口73bを囲む一周において、取付面83aと被取付面72dとの間を封止する。したがって、内部冷媒流路73と第2冷媒流路97cとの間を流れる冷媒Wが取付面83aと被取付面72dとの隙間から漏れることを抑制できる。
【0086】
Oリング75aの内側には、壁部が設けられていない。そのため、内側の壁部によってOリング75aの内径が制限されることがなく、冷媒流入口97caの内径および冷媒流出口73bの内径に対して、Oリング75aの内径を選択する自由度を向上できる。圧縮弾性変形した状態のOリング75aの外縁は、シール凹部73dの内周面に接触する。圧縮弾性変形した状態のOリング75aの内縁は、被取付面72dと直交する方向に視て、冷媒流入口97caの内縁および冷媒流出口73bの内縁よりも外側に位置する。圧縮弾性変形したOリング75aの圧縮率は、Oリング75aの内側に壁部が設けられる場合に比べて高い。図示は省略するが、シール凹部73cには、シール凹部73dと同様に環状のOリング75aが嵌め込まれる。
【0087】
シール凹部74cには、環状のOリング75bが嵌め込まれる。Oリング75bは、被取付面72dと直交する方向に視て、オイル流出口92baおよびオイル流入口74aを囲む。Oリング75bは、取付面83aによってシール凹部74cの底面に押し付けられて圧縮弾性変形した状態である。これにより、Oリング75bは、オイル流出口92baおよびオイル流入口74aを囲む一周において、取付面83aと被取付面72dとの間を封止する。したがって、内部オイル流路74と第2オイル流路92bとの間を流れる冷媒Wが取付面83aと被取付面72dとの隙間から漏れることを抑制できる。
【0088】
Oリング75bの内側には、壁部が設けられていない。そのため、内側の壁部によってOリング75bの内径が制限されることがなく、オイル流出口92baの内径およびオイル流入口74aの内径に対して、Oリング75bの内径を選択する自由度を向上できる。圧縮弾性変形した状態のOリング75bの外縁は、シール凹部74cの内周面に接触する。圧縮弾性変形した状態のOリング75bの内縁は、被取付面72dと直交する方向に視て、オイル流出口92baの内縁およびオイル流入口74aの内縁よりも外側に位置する。圧縮弾性変形したOリング75bの圧縮率は、Oリング75bの内側に壁部が設けられる場合に比べて高い。図示は省略するが、シール凹部74dには、シール凹部74cと同様に環状のOリング75bが嵌め込まれる。Oリング75bの内径は、Oリング75aの内径よりも小さい。Oリング75bの外径は、Oリング75aの外径よりも小さい。
【0089】
図5に示すように、オイルクーラ70は、前後方向に沿って視て、電動オイルポンプ96におけるコネクタ部96dの少なくとも一部と重なる。そのため、オイルクーラ70によって、コネクタ部96dの少なくとも一部を前後方向に覆うことができる。これにより、オイルクーラ70によって、コネクタ部96dを保護できる。したがって、コネクタ部96dを保護する部材を別途設けることなく、駆動装置1が衝撃を受けた際、および飛び石等があった際等に、コネクタ部96dが損傷することを抑制できる。そのため、駆動装置1の部品点数が増加することを抑制しつつ、電動オイルポンプ96の駆動に不具合が生じることを抑制できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、配管97aは、前後方向に沿って視て、コネクタ部96dの少なくとも一部と重なる。そのため、オイルクーラ70と配管97aとによって、コネクタ部96dを前後方向に保護することができる。したがって、コネクタ部96dが損傷することをより抑制できる。
【0091】
本実施形態においてオイルクーラ70の一部は、コネクタ部96dの前側(+X側)に位置する。そのため、駆動装置1に対して前側から衝撃を受けた際に、オイルクーラ70によって衝撃を受けやすく、コネクタ部96dが損傷することを抑制できる。本実施形態では、オイルクーラ70の右側(-Y側)の端部が、コネクタ部96dの左側(+Y側)の部分を前側から覆う。ここで、本実施形態では、配管97aの一部がコネクタ部96dのうち右側の部分の前側に位置する。そのため、本実施形態では、オイルクーラ70と配管97aとによって、コネクタ部96dのほぼ全体を前側から覆うことができる。したがって、コネクタ部96dが損傷することをより抑制できる。
【0092】
本実施形態においてオイルクーラ70の全体は、前後方向に沿って視て、電動オイルポンプ96におけるヒートシンク96eの少なくとも一部に対してずれた位置に位置する。そのため、ヒートシンク96eの少なくとも一部は、オイルクーラ70によって前後方向に覆われない。これにより、車両が走行した際に駆動装置1の周囲に生じる前後方向に沿った空気の流れが、オイルクーラ70に遮られず、ヒートシンク96eの一部に吹き付けられやすい。したがって、ヒートシンク96eからの放熱を促すことができ、電動オイルポンプ96の放熱性を向上できる。このように、本実施形態によれば、オイルクーラ70によってコネクタ部96dを前後方向に覆って保護しつつ、ヒートシンク96eについては少なくとも一部をオイルクーラ70によって覆わないことで、コネクタ部96dの損傷の抑制と、電動オイルポンプ96の放熱性の向上と、を両立できる。したがって、電動オイルポンプ96に不具合が生じることをより抑制できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、ヒートシンク96eの少なくとも一部は、前側(+X側)に露出する。そのため、車両が前進する際に、前側から後側(-X側)に流れる空気が、ヒートシンク96eに吹き付けられやすく、ヒートシンク96eからの放熱をより促すことができる。これにより、電動オイルポンプ96の放熱性をより向上できる。
【0094】
また、本実施形態によれば、ヒートシンク96eは、前後方向に延びる複数の放熱フィン96cを有する。そのため、車両が走行する際に前後方向に沿って流れる空気が、放熱フィン96c沿って流れやすい。これにより、放熱フィン96cから空気に好適に放熱できる。したがって、電動オイルポンプ96の放熱性をより向上できる。
【0095】
本実施形態においてオイルクーラ70の右側(-Y側)の端部は、ヒートシンク96eの右側の端部よりも左側(+Y側)に位置する。すなわち、オイルクーラ70は、ヒートシンク96eに対して、左側にずれて配置される。オイルクーラ70の右側の端部は、クーラ取付部83よりも右側に突出する。
【0096】
本実施形態によれば、オイルクーラ70は、差動軸J3の軸方向に長い形状である。そのため、車両が走行する前後方向に対して直交する方向にオイルクーラ70を長くできる。これにより、車両が走行した際に、駆動装置1の周囲に生じる前後方向に沿った空気の流れを、オイルクーラ70に吹き付けやすくできる。したがって、車両が走行することによって生じる空気の流れによって、オイルクーラ70を外部から冷却することができる。そのため、オイルクーラ70内を流れるオイルOおよび冷媒Wを空気によって好適に冷却することができる。これにより、オイルクーラ70によるオイルOの冷却効率を向上できる。
【0097】
また、オイルクーラ70を差動軸J3の軸方向に長い形状とすることで、オイルクーラ70の体積を大きくしやすい。そのため、オイルクーラ70における熱交換量を大きくしやすい。これにより、オイルクーラ70によるオイルOの冷却効率をより向上できる。以上により、本実施形態によれば、駆動装置1の冷却効率を向上できる。また、オイルクーラ70を差動軸J3の軸方向に長い形状とすることで、上述したようにオイルクーラ70によってコネクタ部96dを覆いやすい。そのため、コネクタ部96dをオイルクーラ70によって保護しやすく、コネクタ部96dが損傷することをより抑制できる。
【0098】
また、本実施形態によれば、オイルクーラ70は、モータ収容部81のうち、前側(+X側)に位置する部分に取り付けられる。そのため、車両が前進する際に、前側から後側(-X側)に流れる空気が、オイルクーラ70に吹き付けられやすく、オイルクーラ70をより冷却しやすい。これにより、オイルクーラ70によるオイルOの冷却効率をより向上でき、駆動装置1の冷却効率をより向上できる。
【0099】
また、本実施形態によれば、オイルクーラ70は、前側(+X側)に露出する。そのため、車両が前進することによって前側から後側(-X側)に流れる空気がよりオイルクーラ70に吹き付けられやすい。これにより、オイルクーラ70をより冷却することができ、駆動装置1の冷却効率をより向上できる。
【0100】
また、本実施形態によれば、オイルクーラ70は、モータ収容部81のうち、下側に位置する部分に設けられる。そのため、車両が走行する際等に、車両の下側から吹き込む風がオイルクーラ70に吹き付けられやすい。これにより、オイルクーラ70をより冷却しやすい。したがって、オイルクーラ70によるオイルOの冷却効率をより向上でき、駆動装置1の冷却効率をより向上できる。
【0101】
また、本実施形態によれば、オイルクーラ70は、下側に露出する。そのため、車両の下側から吹き込む風がよりオイルクーラ70に吹き付けられやすい。これにより、オイルクーラ70をより冷却することができ、駆動装置1の冷却効率をより向上できる。
【0102】
また、本実施形態においてモータ収容部81は、モータ軸J1を囲む筒状である。そのため、例えばオイルクーラがモータ軸J1と直交する方向に長い場合において、オイルクーラをモータ収容部81の径方向外側面に取り付けると、オイルクーラがモータ収容部81に対して大きく出っ張りやすい。これにより、駆動装置全体が大型化する虞がある。
【0103】
これに対して、本実施形態によれば、オイルクーラ70は、モータ軸J1が延びる方向と同じ軸方向に長い形状であり、モータ収容部81の径方向外側面に取り付けられる。そのため、オイルクーラ70を一方向に長い形状としても、オイルクーラ70がモータ収容部81から大きく出っ張ることを抑制できる。これにより、駆動装置1の冷却効率を向上させつつ、駆動装置1が大型化することを抑制できる。また、オイルクーラ70を軸方向に長くすることでオイルクーラ70の体積を大きくできるため、軸方向と直交する方向においてオイルクーラ70が大型化することを抑制しつつ、オイルクーラ70によるオイルOの冷却効率を向上できる。
【0104】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。オイルクーラの形状は、差動軸の軸方向に長い形状であれば、特に限定されない。オイルクーラの形状は、例えば、円柱状であってもよいし、多角柱状であってもよい。オイルクーラが設けられる位置は、ハウジングの外部であれば、特に限定されない。オイルクーラは、モータ収容部のうち上側に位置する部分に取り付けられてもよいし、モータ収容部のうち後側に位置する部分に取り付けられてもよい。オイルクーラは、ギヤ収容部に取り付けられてもよい。オイルクーラは、ハウジングの軸方向の側面に取り付けられてもよい。
【0105】
オイルクーラの構造は、オイルを冷却できるならば、特に限定されない。オイルクーラは、前後方向に沿って視て、電動オイルポンプのコネクタ部の全体と重なってもよいし、コネクタ部の全体と重ならなくてもよい。オイルクーラは、前側に露出しなくてもよいし、下側に露出しなくてもよい。オイルクーラは、上側に露出してもよいし、後側に露出してもよい。オイルクーラは、電動オイルポンプのヒートシンクの全体を覆ってもよい。
【0106】
電動オイルポンプにおいて複数の放熱フィンが延びる方向は、特に限定されず、前後方向以外の方向に延びてもよい。複数の放熱フィンの形状は、特に限定されず、棒状等であってもよい。ヒートシンクは、放熱フィンを有しなくてもよい。ヒートシンクは、設けられなくてもよい。電動オイルポンプは、設けられなくてもよい。駆動装置には、オイルクーラに向けて空気を流すダクトが設けられてもよい。この場合、オイルクーラをより好適に冷却でき、駆動装置の冷却効率をより好適に向上できる。
【0107】
本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
1…駆動装置、2…モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…ハウジング、20…ロータ、55…車軸、70…オイルクーラ、81…モータ収容部、82…ギヤ収容部、J1…モータ軸、J3…差動軸、O…オイル
図1
図2
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図5
図6
図7