(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230725BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/165 207
B41J2/165 501
(21)【出願番号】P 2019086069
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-093901(JP,A)
【文献】特開2014-094449(JP,A)
【文献】特開2010-052388(JP,A)
【文献】特開2012-091526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0090534(US,A1)
【文献】特開2006-192788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから正常に液体が吐出された場合と、前記ノズルからの液体の吐出に異常のあった場合とで、異なる信号を出力する信号出力部であって、さらに前記複数のノズルのうちの一部である2以上のノズルから同時に液体が吐出されたときに、液体の吐出に異常のある異常ノズル数に応じて異なる信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルが前記異常ノズルであるか否かの判定を行うときに、
前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルを、2以上のノズルによってそれぞれ構成される複数の第1ノズルグループに分け、
前記複数の第1ノズルグループの各々について、
前記第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルの中に前記異常ノズルがないという第1条件を満たすか、全ての前記ノズルが前記異常ノズルであるという第2条件を満たすか、一部の前記ノズルのみが前記異常ノズルであるという第3条件を満たすか、を判定し、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが複数存在する場合には、
前記第3条件を満たす複数の前記第1ノズルグループを構成する前記ノズルのうち少なくとも一部のノズルを、2以上のノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記複数の第1ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる1又は複数の第2ノズルグループに分け、
前記1又は複数の第2ノズルグループの各々について、
前記第2ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記信号出力部は、
検出用導電部を有し、
前記ノズルから吐出された液体によって前記検出用導電部に生じる電気的な変化の信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記複数のノズルが一方向に配列され、
前記制御部は、
前記複数の第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルを、前記一方向に互いに隣接するように前記複数のノズルから選択して設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記信号出力部は、
前記異常ノズルの数に比例若しくは反比例して、出力する信号の出力値が異なるように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが複数存在する場合には、
前記第3条件を満たす複数の前記第1ノズルグループの各々から1つの前記ノズルを除いた残りのノズルを、2以上の前記ノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記複数の第1ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる前記1又は複数の第2ノズルグループに分けることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが1つだけ存在する場合には、
当該1つの第1ノズルグループから1つのノズルを除いた残りのノズルから個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
当該1つの前記第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動したときに、前記信号出力部から出力された信号と、当該1つの第1ノズルグループの前記残りのノズルから個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動したときに前記信号出力部から出力された信号とに基づいて、当該1つの第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルの各々が前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第2ノズルグループが1つだけ存在する場合には、
当該1つの第2ノズルグループから1つのノズルを除いた残りのノズルから個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
当該1つの前記第2ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動したときに、前記信号出力部から出力された信号と、当該1つの第2ノズルグループの前記残りのノズルから個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動したときに前記信号出力部から出力された信号とに基づいて、当該1つの第2ノズルグループを構成する前記2以上のノズルの各々が前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項4
又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第2ノズルグループが複数存在する場合には、
前記第3条件を満たす複数の前記第2ノズルグループの各々から1つの前記ノズルを除いた残りのノズルを、2以上のノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記複数の第1ノズルグループ及び前記1又は複数の第2ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる1又は複数の第3ノズルグループに分け、
前記1又は複数の第3ノズルグループの各々について、
前記第3ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定することを特徴とする請求項
5又は7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
Nを2以上の自然数として、
前記制御部は、
全ての第Nノズルグループが前記第1条件又は前記第2条件を満たす、もしくは、1つの前記第Nノズルグループのみが前記第3条件を満たすまで、
前記第3条件を満たす複数
の第[N-1]ノズルグループの各々から1つの前記ノズルを除いた残りのノズルを、2以上のノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記第1~第[N-1]ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる1又は複数の第Nノズルグループに分け、
前記1又は複数の第Nノズルグループの各々について、
前記第Nノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定する、ことを繰り返し、
1つの第Nノズルグループのみが前記第3条件を満たす場合には、
当該1つの第Nノズルグループから1つのノズルを除いた残りのノズルから個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
当該1つの前記第Nノズルグループ前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動したときに、前記信号出力部から出力された信号と、当該1つの第Nノズルグループの前記残りのノズルから個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動したときに前記信号出力部から出力された信号とに基づいて、当該1つの第Nノズルグループを構成する前記2以上のノズルの各々が前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記信号出力部は、
前記複数のノズルのうちの一部である2以上のノズルから同時に液体が吐出されたときに、前記2以上のノズルのうち、全てのノズルが前記異常ノズルでない場合と、全ての前記ノズルが前記異常ノズルである場合と、一部の前記ノズルのみが前記異常ノズルである場合とで、異なる信号を出力し、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが複数存在する場合には、
前記第3条件を満たす複数の前記第1ノズルグループを構成する前記ノズルを、2つのノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記複数の第1ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる前記1又は複数の第2ノズルグループに分けることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが1つだけ存在する場合には、
当該1つの第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルの各々から個別に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、当該1つの第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルの各々が前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第2ノズルグループが1つだけ存在する場合には、
当該1つの第2ノズルグループを構成する前記2つのノズルのうち1つの前記ノズルから液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、当該1つの第2ノズルグループを構成する前記2つのノズルの各々が前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項
10に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記第3条件を満たす前記第2ノズルグループが複数存在する場合には、
前記第3条件を満たす複数の前記第2ノズルグループの各々から1つのノズルを除いた残りのノズルを、2つの前記ノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記複数の第1ノズルグループ及び複数の前記第2ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる1又は複数の第3ノズルグループに分け、
前記1又は複数の第3ノズルグループの各々について、
前記第3ノズルグループを構成する前記2つの前記ノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定することを特徴とする請求項
10又は12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
Nを3以上の自然数として、
前記制御部は、
全ての第Nノズルグループが前記第1条件又は前記第2条件を満たす、もしくは、1つの前記第Nノズルグループのみが前記第3条件を満たすまで、
前記第3条件を満たす複数
の第[N-1]ノズルグループの各々から1つのノズルを除いた残りのノズルを、2つのノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記第1~第[N-1]ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる1又は複数の第Nノズルグループに分け、
前記1又は複数の第Nノズルグループの各々について、
前記第Nノズルグループを構成する前記2つのノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定する、ことを繰り返し、
1つの第Nノズルグループのみが前記第3条件を満たす場合には、
当該1つの第Nノズルグループを構成する前記2つのノズルのうち1つのノズルから液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、当該1つの第Nノズルグループを構成する2つのノズルの各々が前記異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
Nを2以上の自然数として、
前記制御部は、
複数
の第Nノズルグループの各々を構成する前記2以上のノズルを、複数の前記第Nノズルグループの各々における、前記2以上のノズル同士の距離の平均値が最小となるように設定することを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記液体吐出ヘッドが、
前記複数のノズルが一方向に配列されることによってそれぞれ形成された複数のノズル列と、
前記複数のノズル列に対して個別に設けられ、対応するノズル列を構成する前記ノズルと連通する複数の共通流路と、を有し、
Nを2以上の自然数として、
前記制御部は、
少なくとも1つ
の第Nノズルグループを構成する前記2以上のノズルを、同じノズル列を構成する前記ノズルを含むように設定することを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記制御部は、
少なくとも1つの前記第Nノズルグループを構成する前記2以上のノズルを、同じノズル列を構成し、且つ、前記一方向に隣接する前記ノズルを含むように設定することを特徴とする請求項16に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記液体吐出ヘッドが、
吐出する液体の種類が異なる複数種類の前記ノズルを有し、
Nを2以上の自然数として、
前記制御部は、
少なくとも1つの前記第Nノズルグループを構成する前記2以上のノズルを、吐出する液体の種類が同じ前記ノズルを含むように設定することを特徴とする請求項1~17のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項19】
Nを2以上の自然数として、
前記制御部は、
複数
の第Nノズルグループの各々を構成する前記2以上のノズルを、前回液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドが駆動されてからの経過時間の差の平均値が最小となるように設定することを特徴とする請求項1~18のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項20】
前記制御部は、
前記異常ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるフラッシングを行わせる、ように前記液体吐出ヘッドを駆動することを特徴とする請求項1~19のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項21】
前記液体吐出ヘッドは、前記フラッシングとして、
第1フラッシングと、
前記第1フラッシングよりも前記ノズルからの液体の排出量の多い第2フラッシングのいずれかを選択的に行うことが可能であり、
前記制御部は、
前記異常ノズルから液体を排出させるように、前記液体吐出ヘッドに前記第1フラッシングを行わせ、
前記第1フラッシングの後、前記異常ノズルから液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記異常ノズルが回復したか否かを判定し、
回復していない前記異常ノズルが存在する場合には、
回復していない前記異常ノズルから液体を排出させるように、前記液体吐出ヘッドに前記第2フラッシングを行わせることを特徴とする請求項20に記載の液体吐出装置。
【請求項22】
前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージを行うパージ手段、をさらに備え、
前記制御部は、
前記フラッシングの後、前記異常ノズルから液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記異常ノズルが回復したか否かを判定し、
回復していない前記異常ノズルが存在する場合には、前記パージ手段に前記パージを行わせることを特徴とする請求項20に記載の液体吐出装置。
【請求項23】
前記制御部は、
前記液体吐出ヘッドに前記複数のノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出させる直前のタイミングと、これとは別のタイミングとに、前記複数のノズルについて前記異常ノズルであるか否かの判定を行い、
前記別のタイミングで、前記複数のノズルについて前記異常ノズルであるか否かの判定を行うときには、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが複数存在する場合に、
前記第3条件を満たす複数の前記第1ノズルグループを構成する前記ノズルのうち少なくとも一部のノズルを、前記1又は複数の第2ノズルグループに分け、
前記1又は複数の第2ノズルグループの各々について、
前記第2ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、
前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定し、
前記液体吐出ヘッドに前記複数のノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出させる直前のタイミングで、前記複数のノズルについて前記異常ノズルであるか否かの判定を行うときには、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが存在する場合に、
前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループを構成する前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるフラッシングを行わせる、ように前記液体吐出ヘッドを駆動することを特徴とする請求項1~22のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、ノズルからインクを吐出させるようにヘッドを駆動し、このときの検出用電極における電位の変化に基づいて、ノズルからインクが吐出されたか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、ヘッドの複数のノズルの各々について、インクが吐出されたか否かを判別するためには、ヘッドの複数のノズルの各々について個別に、ノズルからインクを吐出させるようにヘッドを駆動し、このときの検出用電極における電位の変化に基づいて、ノズルからインクが吐出されたか否かを判定するという動作を行う必要がある。そのため、ヘッドのノズルの数が多い場合には、ヘッドの複数のノズル全てについてインクが吐出されたか否かを判定するためにヘッドを駆動する回数が多くなり、この判定を行うのにかかる時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、液体吐出ヘッドの複数のノズルの各々について、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かの判定に必要な時間を極力短くすることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルから正常に液体が吐出された場合と、前記ノズルからの液体の吐出に異常のあった場合とで、異なる信号を出力する信号出力部であって、さらに前記複数のノズルのうちの一部である2以上のノズルから同時に液体が吐出されたときに、液体の吐出に異常のある異常ノズル数に応じて異なる信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルが前記異常ノズルであるか否かの判定を行うときに、前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルを、2以上のノズルによってそれぞれ構成される複数の第1ノズルグループに分け、前記複数の第1ノズルグループの各々について、前記第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1ノズルグループを構成する前記2以上のノズルの中に前記異常ノズルがないという第1条件を満たすか、全ての前記ノズルが前記異常ノズルであるという第2条件を満たすか、一部の前記ノズルのみが前記異常ノズルであるという第3条件を満たすか、を判定し、前記第3条件を満たす前記第1ノズルグループが複数存在する場合には、前記第3条件を満たす複数の前記第1ノズルグループを構成する前記ノズルのうち少なくとも一部のノズルを、2以上のノズルによってそれぞれ構成され、且つ、前記複数の第1ノズルグループとは前記ノズルの組み合わせが異なる1又は複数の第2ノズルグループに分け、前記1又は複数の第2ノズルグループの各々について、前記第2ノズルグループを構成する前記2以上のノズルから同時に液体を吐出させるように前記液体吐出ヘッドを駆動し、前記信号出力部から出力された信号に基づいて、前記第1条件を満たすか、前記第2条件を満たすか、前記第3条件を満たすかを判定する。
【発明の効果】
【0007】
第1条件を満たす第1ノズルグループを構成するノズルは全て異常ノズルではないことがわかる。また、第2条件を満たす第1ノズルグループを構成するノズルは全て異常ノズルであることがわかる。そして、第1条件又は第2条件を満たす第1ノズルグループについては、各ノズルから個別に液体を吐出させるように液体吐出ヘッドを駆動して異常ノズルであるか否かを判定するよりも、異常ノズルであるか否かの判定に必要な液体吐出ヘッドの駆動回数を少なくすることができる。
【0008】
また、第3条件を満たす第1ノズルグループが複数ある場合には、第3条件を満たす複数の第1ノズルグループの各々について2以上のノズルのうち1つを除いたノズルを、複数の第1ノズルグループとはノズルの組み合わせを変えて、複数の第2ノズルグループに分ける。第1条件を満たす第2ノズルグループを構成するノズルは全て異常ノズルではないことがわかる。また、第2条件を満たす第2ノズルグループを構成するノズルは全て異常ノズルであることがわかる。
【0009】
そして、第1条件又は第2条件を満たす第2ノズルグループについては、各ノズルから個別に液体を吐出させるように液体吐出ヘッドを駆動して異常ノズルであるか否かを判定するよりも、異常ノズルであるか否かの判定に必要な液体吐出ヘッドの駆動回数を少なくすることができる。
【0010】
なお、第3条件を満たす第1ノズルグループや第2ノズルグループが1つだけ存在する場合には、後述するように、これらのノズルグループを構成する少なくとも一部のノズルから液体を吐出させることで異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0011】
これらのことから、本発明では、異常ノズルであるか否かの判定に必要な液体吐出ヘッドの駆動回数を極力少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】
図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【
図4】キャップ内に配置された検出用導電部、及び、検出用導電部と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図5】(a)はノズルからインクが吐出されたときの検出用導電部から出力される信号を示す図であり、(b)は同時にインクが吐出されたノズルの数と(a)の信号の最大電圧値との関係を示す図である。
【
図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】記録用紙への記録の直前以外のタイミングで、ノズル内のインクの粘度を推定するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図7のノズル判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図8の第Nグループ分け処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】(a)は、一例における第1ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(b)は、上記一例における第2ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(c)は、上記一例における第3ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(d)は、上記一例における第3ノズルグループの1つノズルからインクを吐出したときの判定結果を説明するための図であり、(e)は、(a)~(d)の判定結果から得られる各ノズルが異常ノズルであるか否かの判定結果を説明するための図である。
【
図11】(a)は、別の一例における第1ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(b)は、上記別の一例における第2ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(c)は、上記別の一例における第3ノズルグループ及びその判定結果の一例を説明するための図であり、(d)は、上記別の一例における第3グループ分け処理で余った余りのノズルからインクを吐出したときの判定結果を説明するための図であり、(e)は、上記別の一例における第3ノズルグループの2つのノズルから個別にインクと吐出したときの判定結果を説明するための図であり、(f)は、(a)~(e)の判定結果から得られる各ノズルが異常ノズルであるか否かの判定結果を説明するための図である。
【
図12】記録指令が入力されたときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態のノズル判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】(a)は、第2実施形態の一例における第1ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(b)は、第2実施形態の上記一例における第2ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(c)は、第2実施形態の上記別の一例における第2グループ分け処理で余った余りのノズルからインクを吐出したときの判定結果を説明するための図であり、(d)は、第2実施形態の上記一例における第3ノズルグループ及びその判定結果を説明するための図であり、(e)は、第2実施形態の上記一例における第3ノズルグループの1つのノズルからインクと吐出したときの判定結果を説明するための図であり、(f)は、(a)~(e)の判定結果から得られる各ノズルが異常ノズルであるか否かの判定結果を説明するための図である。
【
図15】一変形例において、記録用紙への記録の直前以外のタイミングで、ノズル内のインクの粘度を推定するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0014】
<プリンタ全体の構成>
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8などを備えている。
【0015】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図6参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動すると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0016】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1には、カートリッジホルダ14が設けられており、カートリッジホルダ14に4つのインクカートリッジ15が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ15には、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)が貯留されている。サブタンク3は、4本のチューブ13を介してカートリッジホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ15と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ15からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0017】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向(本発明の「一方向」)に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド4は、走査方向に並んだ4列のノズル列9を有する。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0018】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図6参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動すると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0019】
メンテナンスユニット8は、後述するように吸引パージを行って複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるためのものである。メンテナンスユニット8については後程詳細に説明する。
【0020】
<インクジェットヘッド>
次に、インクジェットヘッド4について詳細に説明する。
図2、
図3に示すように、インクジェットヘッド4は、流路ユニット21と圧電アクチュエータ22とを備えている。
【0021】
<流路ユニット>
流路ユニット21は、4枚のプレート31~34が上からこの順に積層されることによって形成されている。プレート31~33は、ステンレスなどの金属材料からなる。プレート34は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。
【0022】
プレート34には、複数のノズル10が形成されている。複数のノズル10は、上述したような4列のノズル列9を形成している。そして、プレート34の下面が、インクジェットヘッド4のノズル面4aとなっている。プレート31には複数の圧力室40が形成されている。圧力室40は、走査方向を長手方向とする楕円の平面形状を有している。また、複数の圧力室40は、複数のノズル10に個別のものであり、走査方向の左側の端部がノズル10と上下方向に重なっている。これにより、プレート31には、複数の圧力室40が搬送方向に配列されることによってそれぞれ形成され、走査方向に並んだ4列の圧力室列29が形成されている。
【0023】
プレート32には、各圧力室40の走査方向の右側の端部と上下方向に重なる部分に円形の貫通孔42が形成されている。また、プレート32には、各圧力室40の走査方向の左側の端部及びノズル10と上下方向に重なる部分に、円形の貫通孔43が形成されている。
【0024】
プレート33には、4つのマニホールド流路41(本発明の「共通流路」)が形成されている。4つのマニホールド流路41は、4つの圧力室列29に対応している。マニホールド流路41は、搬送方向に延び、対応する圧力室列29を構成する複数の圧力室40の走査方向の右側の部分と上下方向に重なっている。これにより、各圧力室40が、貫通孔42を介してマニホールド流路41と連通する。また、各マニホールド流路41の搬送方向の上流側の端部には供給口39が設けられている。インクジェットヘッド4は、供給口39においてサブタンク3内の流路と接続されている。これにより、マニホールド流路41には、供給口39からインクが供給される。また、プレート33には、各貫通孔43及びノズル10と上下方向に重なる部分に、円形の貫通孔44が形成されている。これにより、各ノズル10が貫通孔43,44を介して圧力室40と連通する。
【0025】
そして、流路ユニット21では、1つのノズル10と、このノズル10に対応する圧力室40と、貫通孔42~44とによって、個別流路46が形成されている。
【0026】
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ22は、振動板51と、圧電層52と、共通電極53と、複数の個別電極54とを備えている。振動板51は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、流路ユニット21の上面に配置され、複数の圧力室40を覆っている。なお、振動板51は、次に説明する圧電層52とは異なり、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0027】
圧電層52は、上記圧電材料からなり、振動板51の上面に配置され、複数の圧力室40にわたって連続的に延びている。共通電極53は、振動板51と圧電層52との間に配置され、複数の圧力室40にわたって連続的に延びている。共通電極53は、図示しない配線部材などを介して図示しない電源回路に接続され、グランド電位に保持されている。
【0028】
複数の個別電極54は、複数の圧力室40に個別のものである。個別電極54は、圧力室40よりも一回り小さい楕円の平面形状を有し、圧電層52の上面に配置され、圧力室40の中央部と上下方向に重なっている。また、個別電極54の走査方向の右側の端部は、圧力室40と上下方向に重ならない位置まで走査方向の右側に延び、その先端部が接続端子54aとなっている。接続端子54aには図示しない配線部材が接続され、個別電極54は、この配線部材を介してドライバIC59(
図6参照)に接続されている。そして、ドライバIC59により、複数の個別電極54に個別に、グランド電位及び所定の駆動電位(例えば20V程度)のいずれかが選択的に付与される。
【0029】
また、共通電極53及び複数の個別電極54がこのように配置されているのに対応して、圧電層52の共通電極53と各個別電極54とに挟まれた部分が、それぞれ、厚み方向に分極されている。そして、以上のような構造の圧電アクチュエータ22では、振動板51、圧電層52及び共通電極53の、各圧力室40と上下方向に重なる部分と、個別電極54とによって形成される部分が、それぞれ、圧力室40内のインクに圧力を付与する駆動素子50となっている。
【0030】
ここで、圧電アクチュエータ22の各駆動素子50において、個別電極54の電位がグランド電位から駆動電位に切り換えられると、個別電極54と共通電極53との間の電位差により、圧電層52のこれらの電極に挟まれた部分に、分極方向と平行な厚み方向の電界が生じる。この電界により、圧電層52の上記部分が水平方向に収縮し、振動板51及び圧電層52の圧力室40と上下方向に重なる部分が全体として圧力室40側に凸となるように変形する。また、個別電極54の電位が駆動電位からグランド電位に切り換えられると、個別電極54と共通電極53とが同電位になり、振動板51及び圧電層52の圧力室40と上下方向に重なる部分が上記変形の前の状態に戻る。そして、個別電極54の電位をグランド電位と駆動電位との間で切り換えたときの、振動板51及び圧電層52の圧力室40と上下方向に重なる部分の変形により、圧力室40内の容積が変化して圧力室40内のインクに圧力が付与され、圧力室40に連通するノズル10からインクが吐出される。
【0031】
<メンテナンスユニット>
次に、メンテナンスユニット8について説明する。
図1に示すように、メンテナンスユニット8は、キャップ61と、吸引ポンプ62と、廃液タンク63とを備えている。キャップ61は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ61と対向する。
【0032】
また、キャップ61は、キャップ昇降機構88(
図6参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させて複数のノズル10とキャップ61とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ61を上昇させると、キャップ61の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ61に覆われる。なお、キャップ61はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ61は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0033】
吸引ポンプ62はチューブポンプなどであり、キャップ61及び廃液タンク63と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ61によって覆われた状態で吸引ポンプ62を駆動すると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。インクジェットヘッド4から排出されたインクは廃液タンク63に貯留される。なお、本実施形態では、吸引パージを行うメンテナンスユニット8が、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0034】
なお、ここでは、便宜上、キャップ61が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ61が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。
【0035】
また、
図4に示すように、キャップ61内には、矩形の平面形状を有する検出用導電部66が配置されている。検出用導電部66は、抵抗69を介して高電圧電源回路67に接続されている。そして、検出用導電部66には、高電圧電源回路67により所定の正の電位(例えば300V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4の流路ユニット21は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用導電部66との間に所定の電位差が生じる。検出用導電部66には、判定回路68が接続されている。判定回路68は、検出用導電部66から出力された信号の最大電圧値Vmに応じた信号を出力する。
【0036】
より詳細に説明すると、例えば、ノズル10からインクが吐出されていない状態で、検出用導電部66の電圧値がV0となっている。インクジェットヘッド4と、検出用導電部66との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。したがって、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用導電部66に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用導電部66に近づき、
図5(a)に示すように、検出用導電部66にインクが着弾するまで、検出用導電部66の電圧値が上昇し、電圧値V0よりも高い最大電圧値Vmに達する。そして、帯電したインクが検出用導電部66に着弾した後、検出用導電部66の電圧値が徐々に電圧値V0まで低下する。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用導電部66の電圧値が変化する。一方、ノズル10からインクが吐出されないときには、
図5(a)にて破線で示すように、電圧値がV0からほとんど変化せず、駆動期間Tdにおける最大電圧値VmがV0となる。
【0037】
また、
図5(b)に示すように、同時にインクが吐出されたノズル10の数が多くなるほど、最大電圧値Vmが高くなる。判定回路68は、同時にインクが吐出されたノズル10の個数に対して個別に設定された複数の閾値の各々と、最大電圧値Vmとの大小関係を比較し、これらの大小関係に応じた電圧値(出力値)の信号を出力する。
【0038】
これらのことから、判定回路68は、ノズル10からインクが吐出され、最大電圧値VmがV0よりも高くなるときと、ノズル10からインクが吐出されず、最大電圧値VmがV0となるときとで、異なる信号を出力する。また、判定回路68は、2以上のノズル10からインクが吐出されるときに、実際にインクが吐出された異常ノズルの数に比例した電圧値の信号を出力する。このとき、インクが吐出されない異常ノズルの数は、同時にインクを吐出させるノズル10の数から実際にインクが吐出されたノズル10の数を差し引いたものであり、インクが吐出されたノズル10の数と1対1に対応している。したがって、判定回路68から出力される信号は、異常ノズルの数に比例して電圧値の異なる信号ともいえる。なお、第1実施形態では、検出用導電部66と高電圧電源回路67と抵抗69と判定回路68とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。
【0039】
また、ここでは、高電圧電源回路67により、検出用導電部66に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路67により、検出用導電部66に負の電位(例えば-300V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用導電部66に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用導電部66に近づき、検出用導電部66にインクが着弾するまで、検出用導電部66の電圧値が低下する。
【0040】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置80によって制御される。
図6に示すように、制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなり、キャリッジモータ86、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、高電圧電源回路67、吸引ポンプ62などの動作を制御する。また、制御装置80は、ドライバIC59を制御することによって、インクジェットヘッド4を制御する。また、制御装置80には、判定回路68から上述の信号が入力される。
【0041】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0042】
<異常ノズルの判定等の処理>
次に、プリンタ1において、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かの判定などを行うときの、処理の流れについて説明する。プリンタ1では、記録用紙Pへの記録を行っていないタイミング(例えば、定期的なタイミング)、及び、記録用紙Pへの記録の直前のタイミングで、異常ノズルであるか否かの判定などを行う。
【0043】
記録用紙Pへの記録を行っていないタイミングでは、
図7のフローに沿って処理を行うことにより、異常ノズルであるか否かの判定などを行う。より詳細に説明すると、制御装置80は、まず、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、異常ノズルであるか否かを判定するためのノズル判定処理を実行する(S101)。ノズル判定処理については、後程、詳細に説明する。
【0044】
続いて、制御装置80は、S101のノズル判定処理の結果に基づいて、インクジェットヘッド4を駆動して、異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせる(S102)。続いて、制御装置80は、インクジェットヘッド4を駆動して、異常ノズルの各々から個別に検出用導電部66に向けてインクを吐出させ、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、異常ノズルが回復した否かを判定する(S103)。
【0045】
そして、全ての異常ノズルが回復している場合には(S104:YES)、そのまま処理を終了する。回復していない異常ノズルが存在している場合には(S104:NO)、制御装置80は、キャリッジモータ86、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ62などを制御して、吸引パージを行わせてから(S105)、処理を終了する。
【0046】
<ノズル判定処理>
次に、S101のノズル判定処理について詳細に説明する。ノズル判定処理では、制御装置80は、
図8に示すように、まず、自然数の変数Nを1にリセットし(S201)、第1グループ分け処理を実行し(S202)、S203に進む。S202の第1グループ分け処理では、制御装置80が、インクジェットヘッド4の複数のノズル10を、2以上のノズル10によってそれぞれ構成される複数の第1ノズルグループに分ける。このとき、各第1ノズルグループを構成する2以上のノズル10が、同じノズル列9を構成し、且つ、搬送方向に隣接して並ぶノズル10となるように、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中から、各第1ノズルグループを構成する2以上のノズル10を選択して設定する。
【0047】
S203では、制御装置80は、複数の第Nノズルグループの各々について、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10全てから同時にインクを吐出させるように、インクジェットヘッド4を駆動する。ここで、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10全てから同時にインクを吐出させるように、インクジェットヘッド4を駆動するというのは、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10に対応する駆動素子50を同じタイミングで駆動することである。
【0048】
そして、制御装置80は、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、複数の第Nノズルグループの各々について、第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する(S204)。第1条件とは、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10の中に異常ノズルがないという条件である。第2条件とは、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10の全てが異常ノズルであるという条件である。第3条件とは、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10のうち一部のノズル10だけが異常ノズルであるという条件である。
【0049】
続いて、制御装置80は、第1条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10が異常ノズルでないと判定し、第2条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10が異常ノズルであると判定する(S205)。
【0050】
続いて、制御装置80は、異常ノズルであるか否かが未判定で、且つ、S202の第1グループ分け処理、あるいは、後述のS215の第Nグループ分け処理で、どのノズルグループにも分けられなかった余りのノズルが存在するか否かを判定する(S206)。例えば、第Nノズルグループに分けられる対象となるノズル10の数が、各第Nノズルグループを構成するノズル10の数で割り切れないときに、上記余りのノズル10が存在することになる。そして、上記余りのノズル10が存在する場合には(S206:YES)、上記余りのノズル10の各々からインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、上記余りのノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定し(S207)、S208に進む。上記余りのノズル10が存在しない場合には(S206:NO)、そのままS208に進む。
【0051】
S208では、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たすか否かを判定する。そして、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たす場合には(S208:YES)、
図7のフローに戻る。
【0052】
第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけ存在する場合には(S208:NO、S209:YES)、第3条件を満たす1つの第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10のうち1つのノズル10を除いた残りのノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する(S210)。そして、このときに判定回路68から出力される信号と、当該1つの第NノズルグループについてS203で2以上のノズル10から同時にインクが吐出されたときに判定回路68から出力される信号とに基づいて、上記1つの第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定し(S211)、
図7のフローに戻る。
【0053】
S211では、具体的には、上記残りのノズル10の各々について、判定回路68から出力された信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定する。また、これらの結果と、上記1つの第Nノズルグループについて、S203でインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力された信号の値から得られる異常ノズルの数とに基づいて、第Nノズルグループから除いた上記1つのノズル10が異常ノズルであるか否かを判定する。
【0054】
そして、変数Nが1の場合には(S212:YES)、
図7のフローに戻る。変数Nが2以上の場合には(S212:NO)、制御装置80は、S211での判定結果と、第3条件を満たす第1~第[N-1]ノズルグループの各々についてS203で2以上のノズル10から同時にインクが吐出されたときに判定回路68から出力された信号から得られる異常ノズルの数とに基づいて、第3条件を満たす第1~第[N-1]ノズルグループの各ノズル10が異常ノズルであるか否かを順に判定する(S213)。
【0055】
一方、第3条件を満たす第Nノズルグループが複数存在する場合には(S208:NO、S209:NO)、制御装置80は、変数Nを1増加させ(S214)、第Nグループ分け処理を実行する(S215)。
【0056】
S215の第Nグループ分け処理では、制御装置80は、第3条件を満たす複数の第[N-1]ノズルグループの各々から1つのノズル10を除いた残りのノズル10を、2以上のノズル10によってそれぞれ構成され、且つ、第1~第[N-1]ノズルグループとはノズル10の組み合わせが異なる1又は複数の第Nノズルグループに分ける。このとき、制御装置80は、
図9のフローに沿って各第Nノズルグループにおけるノズル10の組み合わせを設定する。
【0057】
より詳細に説明すると、制御装置80は、まず、ノズル10が属するノズル列9(吐出するインクの色、連通するマニホールド流路41)に基づいて、各第Nノズルグループを構成するノズル10の候補を設定する(S301)。具体的には、同じノズル列9を構成する2以上のノズル10によって構成される第Nノズルグループの数が最も多くなるように、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせの候補を設定する。
【0058】
続いて、制御装置80は、S301で設定された上記候補が1つだけである場合には(S302:NO)、その1つの候補に基づいて、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを設定し(S303)、
図8のフローに戻る。
【0059】
S301で設定された上記候補が複数存在する場合には(S302:YES)、各第Nノズルグループにおけるノズル10間の距離に基づいて、上記複数の候補に対する絞り込みを行う(S304)。具体的には、S301で設定された複数の候補の中から、第Nノズルグループの各々におけるノズル10間の距離の平均値が最小となる候補を絞り込む。
【0060】
S304の絞り込み後の上記候補が1つだけである場合には(S305:NO)、その1つの候補に基づいて、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを設定し(S303)、
図8のフローに戻る。
【0061】
S304の絞り込み後も上記候補が複数存在する場合には(S305:YES)、第Nノズルグループにおける搬送方向に隣接するノズル10の数に基づいて、上記複数の候補に対する絞り込みを行う(S306)。具体的には、S304での絞り込み後の複数の候補の中から、搬送方向に隣接するノズル10によって構成される第Nノズルグループの数が最大となる候補を絞り込む。
【0062】
S306の絞り込み後の上記候補が1つだけである場合には(S307:NO)、その1つの候補に基づいて、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを設定し(S303)、
図8のフローに戻る。
【0063】
S306の絞り込み後の上記候補が複数存在する場合には(S307:YES)、前回の吐出からの経過時間に基づいて、上記複数の候補に対する絞り込みを行う(S308)。具体的には、S306での絞り込み後の複数の候補の中から、第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10間での、前回インクを吐出させた時点からの経過時間の差の平均値が最小となる候補を絞り込む。
【0064】
S308の絞り込み後の上記候補が1つだけである場合には(S309:NO)、その1つの候補に基づいて、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを設定し(S303)、
図8のフローに戻る。
【0065】
S308の絞り込み後の上記候補が複数存在する場合には(S309:YES)、これら複数の候補のうち、いずれかの候補に基づいて、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを設定し(S310)、
図8のフローに戻る。
【0066】
図8に戻って、制御装置80は、S215の第Nグループ分け処理の後、S203に戻る。これにより、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たす、あるいは、第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけ存在するようになるまでは、第Nグループ分け処理が実行され(S215)、S203~S207の処理が繰り返される。そして、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たすようになったときに(S208:YES)、上記のように
図7のフローに戻る。また、第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけ存在するようになったときに(S209:YES)、上記のようにS210~S213の処理を実行したうえで
図7のフローに戻る。そして、以上に説明したノズル判定処理により、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が、異常ノズルであるか否かが判定される。
【0067】
<ノズル判定処理による異常ノズルか否かの判定>
次に、上述のノズル判定処理によって、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かが判定されることについて、具体例を挙げて説明する。
【0068】
まず、第Nノズルグループを構成するノズル10の数が2つの場合の一例について、
図10(a)~(e)を用いて説明する。ここで、インクジェットヘッド4のノズル10の数は、実際には例えば数百個程度であるが、説明を簡単にするため、
図10(a)~(e)の例では、インクジェットヘッド4のノズル10の数を18個とする。
図10(a)~(e)のn1~n18は18個のノズル10に対応している。
【0069】
ノズル判定処理では、S202の第1グループ分け処理において、
図10(a)に示すように、18個のノズルn1~n18を、2つのノズル10によってそれぞれ構成される9個の第1ノズルグループG11~G19に分ける。
【0070】
そして、
図10(a)に示すように、第1条件を満たす第1ノズルグループG11,G17を構成するノズルn1,n2,n13,n14が異常ノズルでないと判定し、第2条件を満たす第1ノズルグループG13を構成するn5,n6のノズル10が異常ノズルであると判定する(S205)。ここで、
図10(a)の判定結果では、「○」が第1条件を満たすこと、「×」が第2条件を満たすこと、「△」が第3条件を満たすことを示している。
【0071】
また、
図10(a)の結果から、6つの第1ノズルグループG12,G14~G16,G18,G19が第3条件を満たすため(S209:NO)、第2グループ分け処理(S215)により、例えば、
図10(b)に示すように、第3条件を満たす第1ノズルグループG12,G14~G16,G18,G19の各々から1つのノズル10を除いた残りのn3,n7,n9,n11,n15,n17のノズル10を、2つのノズル10によってそれぞれ構成される3つの第2ノズルグループG21~G23に分ける。そして、第1条件を満たす第2ノズルグループG21を構成するノズルn3,n7が異常ノズルでないと判定する。
【0072】
さらに、2つの第2ノズルグループG22,G23が第3条件を満たすため(S209:NO)、第3グループ分け処理(S215)により、例えば
図10(c)に示すように、第3条件を満たす2つの第2ノズルグループG22,G23の各々から1つのノズル10を除いたn9,n15のノズル10によって、第3ノズルグループG31を形成する。この場合、1つの第3ノズルグループG31だけが第3条件を満たすため(S209:YES)、例えば
図10(d)に示すように、第3ノズルグループG31を構成するn9,n15の2つノズル10のうち1つであるn9のノズル10からインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する(S210)。そして、この結果から、n9のノズル10が異常ノズルであると判定する。ここで、
図10(d)の判定結果の「異常」は異常ノズルであることを示している。また、この結果と、
図10(c)の結果とから、n15のノズル10が異常ノズルでないと判定する。
【0073】
そして、以下、異常ノズルであるか否かが判定されたノズル10の情報と、
図10(a)~
図10(c)の結果とから、異常ノズルであるか否かが判定されていない残りのノズル10について、順に異常ノズルであるか否かを判定する。これにより、
図10(e)に示すようにn1~n18のノズル10について異常ノズルであるか否かを判定することができる。なお、
図10(e)では「正常」が異常ノズルでないことを示し、「異常」が異常ノズルであることを示している。
【0074】
次に、第Nノズルグループを構成するノズル10の数が3つの場合の一例について、
図11(a)~(f)を用いて説明する。
【0075】
この例では、S202の第1ノズルグループ分け処理において、18個のノズルn1~n18を、
図11(a)に示すように、3つのノズル10によってそれぞれ構成される6つの第1ノズルグループG11~G16に分ける。
【0076】
そして、第1条件を満たす第1ノズルグループG11,G16を構成するn1~n3,n16~n18のノズル10が異常ノズルでないと判定し、第2条件を満たす第1ノズルグループG13を構成するn7~n9のノズル10が異常ノズルであると判定する(S205)。また、このとき、S203の結果から、第3条件を満たす第1ノズルグループG12,G14,G15の各々について、異常ノズルの数が取得される。ここで、
図11(a)の判定結果に括弧書きで記載している数値は、異常ノズルの数を示している。
【0077】
また、この例では、3つの第1ノズルグループG12,G14,G15が第3条件を満たすため、第2グループ分け処理(S215)により、例えば
図11(b)に示すように、第3条件を満たす第1ノズルグループG12,G14,G15の各々から1つのノズル10を除いた残りのn4,n5,n10,n11,n13,n14のノズル10を、3つのノズル10によって構成される2つの第2ノズルグループG21,G22に分ける。そして、第2ノズルグループG21,G22が第3条件を満たすと判定し、第2ノズルグループG21,G22における異常ノズルの数が、それぞれ、1つ、2つであることが取得される。
【0078】
そして、2つの第2ノズルグループG21,G22が第3条件を満たすため、第3グループ分け処理(S215)により、例えば
図11(c)に示すように、2つの第2ノズルグループG21,G22の各々から1つのノズルを除いたn5,n10,n13,n14のノズル10のうち、n5,n10,n14の3つのノズル10によって第3ノズルグループG31を形成する。そして、第3ノズルグループG31が第3条件を満たすと判定し、第3ノズルグループG31における異常ノズルの数が1つであることが取得される。また、
図11(d)に示すように、第3グループ分け処理で余ったn13のノズル10(余りのノズル)からインク吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、判定回路68から出力される信号に基づいて異常ノズルでないと判定する(S207)。
【0079】
そして、第3条件を満たす第3ノズルグループG31が1つだけであるので、
図11(e)に示すように、第3ノズルグループG31を構成するn5,n10,n14の3つノズル10のうち、1つのノズル10を除いた残りのn5,n10のノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する。そして、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、n5,n10のノズル10の各々が異常ノズルでないと判定する。また、この結果と、
図11(c)の結果とから、n14のノズル10が異常ノズルであると判定する。
【0080】
そして、以下、異常ノズルであるか否かが判定されたノズル10の情報と、
図11(a)~
図11(d)の結果とから、異常ノズルであるか否かが判定されていない残りのノズル10について、順に異常ノズルであるか否かを判定する。これにより、
図11(f)に示すようにn1~n18のノズル10について異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0081】
<記録時の制御>
また、プリンタ1では、記録用紙Pへの画像の記録を指示する記録指令が入力されたときに、制御装置80が、
図11のフローに沿って処理を行う。
【0082】
より詳細に説明すると、制御装置80は、S202と同様の第1グループ分け処理を実行する(S401)。続いて、制御装置80は、複数の第1ノズルグループの各々について、第1ノズルグループを構成する2以上のノズル10全てから同時にインクを吐出させるように、インクジェットヘッド4を駆動する(S402)。そして、制御装置80は、判定回路68からの信号に基づいて、複数の第1ノズルグループの各々について、S204と同様に、第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する(S403)。
【0083】
続いて、制御装置80は、S403の判定の結果に基づいて、インクジェットヘッド4を駆動して、第2条件を満たす第1ノズルグループ及び第3条件を満たす第1ノズルグループを構成する2以上のノズル10からインクを排出させるフラッシングを行わせる(S404)。そして、S404のフラッシングの後、記録処理を実行する(S405)。S405の記録処理では、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して複数のノズル10からインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定距離搬送させる搬送動作とを交互に行わせて、記録用紙Pへの画像の記録を行わせる。
【0084】
なお、この場合、例えば、
図10(a)の例では、S404のフラッシングおいて、第1ノズルグループG12~G16,G18,G19を構成するn3~n12,n15~n18のノズル10からインクを排出させる。その結果、異常ノズルでないn3,n7,n10,n11,n15,n18のノズル10からもインクを排出させることになる。また、
図11(a)の例では、S404のフラッシングおいて、第1ノズルグループG12~G15を構成するn3~n12,n4~n15のノズル10からインクを排出させる。その結果、異常ノズルでないn5,n10,n12,n13のノズル10からもインクを排出させることになる。
【0085】
<効果>
第1実施形態では、インクジェットヘッド4の複数のノズル10を2以上のノズル10によってそれぞれ構成される複数の第1ノズルグループに分ける。そして、複数の第1ノズルグループの各々について、上記2以上のノズル10から同時にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、複数の第1ノズルグループの各々が第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する。
【0086】
そして、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たす、あるいは、1つの第Nノズルグループだけが第3条件を満たすまで、第3条件を満たす複数の第[N-1]ノズルグループの各々について2以上のノズルのうち1つを除いたノズルを、第1~第[N-1]ノズルグループとはノズル10の組み合わせを変えて、第Nノズルグループに分け、第Nノズルグループの各々が第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する、ことを繰り返す。
【0087】
第1条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズルは全て異常ノズルではないことがわかる。また、第2条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズルは全て異常ノズルであることがわかる。そして、第1条件又は第2条件を満たす第Nノズルグループについては、各ノズル10から個別に液体を吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動して異常ノズルであるか否かを判定するよりも、異常ノズルであるか否かの判定に必要なインクジェットヘッド4の駆動回数を少なくすることができる。
【0088】
また、第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけである場合には、当該1つの第Nノズルグループから1つのノズル10を除いた残りのノズル10から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する。これにより、当該1つの第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10から同時にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力された信号(異常ノズルの数に対応する信号)と、当該1つの第Nノズルグループの上記残りのノズル10から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力された信号(上記残りノズル10の各々が異常ノズルであるか否かの信号)とに基づいて、当該1つの第Nノズルグループを構成する2以上のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0089】
さらに、この結果と、第3条件を満たす第1~第[N-1]ノズルグループの各々について、ノズルグループを構成する2以上のノズル10から同時にインクを吐出させたときに判定回路68から出力される信号とに基づいて、第3条件を満たす第1~第[N-1]ノズルグループを構成するノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0090】
そして、これらのことから、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について異常ノズルであるか否かを判定するために必要なインクジェットヘッド4の駆動回数を極力少なくすることができる。第1実施形態の場合、第1~第Nノズルグループが全て第3条件を満たす場合に、上記インクジェットヘッド4の駆動回数が、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の数と同じとなる。ただし、第1実施形態では、後述するように、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを、異常ノズルであるか否かが同じ可能性が高くなるように設定する。そのため、第1~第Nノズルグループのうち少なくとも1つのノズルグループが第1条件又は第2条件を満たす可能性が高い。そして、第1~第Nノズルグループの中に、第1条件又は第2条件を満たすノズルグループが1つでもあれば、上記インクジェットヘッド4の駆動回数が、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の数よりも少なくなる。
【0091】
また、第1実施形態では、ノズル10から吐出されたインクによる検出用導電部66の電気的な変化の信号に基づいて、判定回路68から出力される信号は、ノズル10からインクが吐出された場合と吐出されなかった場合とで異なる信号となる。また、ノズル10から吐出されたインクによる検出用導電部66の電気的な変化の信号、及び、これに基づいて判定回路68から出力される信号の電圧値が、異常ノズルの数に比例したものとなる。
【0092】
また、同じノズル列9を構成する複数のノズル10のうち、搬送方向に隣接して並ぶノズル10同士は、互いの距離が近く、異常ノズルであるか否かが同じとなる可能性が高い。したがって、第1実施形態では、第1ノズルグループを構成する2以上のノズル10を、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中から、搬送方向に隣接するノズル10を選択して設定する。これにより、第1条件又は第2条件を満たす第1ノズルグループが多くなる可能性が高くなる。そして、この場合には、複数のノズル10の各々について異常ノズルであるか否かを判定するためにインクジェットヘッド4を駆動する回数を少なくすることができる効果が高くなる。
【0093】
また、同じノズル列9を構成するノズル10(同じマニホールド流路41に連通し、吐出するインクの色が同じノズル10)同士は、異常ノズルであるか否かが同じとなる可能性が高い。また、ノズル10同士の距離が小さい場合には、異常ノズルであるか否かが同じとなる可能性が高い。さらに、同じノズル列9を構成するノズル10のうち、搬送方向に隣接するノズル10間では、異常ノズルであるか否かが同じとなる可能性が特に高い。また、前回液体が吐出されるように液体吐出ヘッドが駆動されてからの経過時間が近いノズル同士は、異常ノズルであるか否かが同じとなる可能性が高い。
【0094】
そこで、第1実施形態では、変数Nが2以上の場合の第Nグループ分け処理において、上述したように、ノズル列9(吐出するインクの色、連通するマニホールド流路41)に基づいて、第Nノズルグループにおけるノズル10の組み合わせの候補を設定する。そして、上記候補が複数存在する場合に、以下、各第Nノズルグループにおけるノズル10間の距離、搬送方向に隣接するノズル10によって構成される第Nノズルグループの数、第Nノズルグループを構成するノズル10における前回の吐出からの経過時間に、それぞれ基づいて、上記複数の候補に対する絞り込みを行う。これにより、第1条件又は第2条件を満たす第Nノズルグループの数が多くなる可能性が高くなる。その結果、複数のノズル10の各々について異常ノズルであるか否かを判定するために必要なインクジェットヘッド4の駆動回数を少なくすることができる効果が高くなる。
【0095】
また、第1実施形態では、ノズル判定処理の後、異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせることによって、異常ノズルを回復させることができる。
【0096】
さらに、第1実施形態では、上記フラッシングの後、異常ノズルの各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて異常ノズルが回復したか否かを判定する。そして、回復していない異常ノズルが存在する場合に吸引パージを行わせる。これにより、フラッシングによって回復できなかった異常ノズルが存在する場合にのみ、フラッシングに比べてインクの排出量の多い吸引パージが行われ、異常ノズルを回復させるために排出されるインクの量を極力少なくすることができる。
【0097】
また、第1実施形態では、記録用紙Pに記録を行うとき以外のタイミングでは、上述したようなノズル判定処理を実行して、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定する。これに対して、記録用紙Pに記録を行う直前には、インクジェットヘッド4の複数のノズル10を複数の第1ノズルグループに分けた後、上記とは異なり、第2条件を満たす第1ノズルグループ及び第3条件を満たす第1ノズルグループを構成するノズル10からインクを排出させるようにフラッシングを行わせる。
【0098】
この場合、第3条件を満たす第1ノズルグループについては、フラッシングにより異常ノズルでない一部のノズル10からもインクが排出されることになり、インクの排出量が多くなってしまう。しかしながら、このようにすれば、記録用紙Pへの記録を指示する記録指令が入力されてから、記録処理への記録が開始されるまでの時間を極力短くすることができる。
【0099】
[第2実施形態]
次に、本実施形態の好適な第2実施形態について説明する。第2実施形態では、判定回路68が、検出用導電部66から出力される信号の最大電圧値Vmを、2以上のノズル10から同時にインクを吐出させるときに、いずれのノズル10からインクが吐出されなかった(全てのノズル10が異常ノズルである)場合に対応する閾値、及び、全てのノズル10からインクが吐出された(全てのノズル10が異常ノズルでない)場合に対応する閾値と比較し、これらの比較の結果に応じた電圧値の信号を出力する。すなわち、判定回路68が、2以上のノズル10から同時にインクが吐出されたときに、上記2以上のノズルのうち、全てのノズル10が異常ノズルでない場合と、全てのノズル10が異常ノズルである場合と、一部のノズル10のみが異常ノズルである場合とで、異なる信号を出力する。そのため、第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、3以上のノズル10から同時にインクが吐出されるときに、一部のノズル10のみが異常ノズルである場合に、判定回路68から出力された信号からは、異常ノズルの数を取得することができない。
【0100】
<ノズル判定処理>
そして、第2実施形態では、制御装置80は、ノズル判定処理において、
図13のフローに沿って処理を実行する。より詳細に説明すると、制御装置80は、第1実施形態のS201~S209と同様のS501~S509の処理を実行する。ただし、第2実施形態では、S502の第1グループ分け処理において、インクジェットヘッド4の複数のノズル10を、3以上のノズル10によってそれぞれ構成される複数の第1ノズルグループに分ける。
【0101】
また、制御装置80は、第3条件を満たす第Nノズルグループが複数存在する場合に(S509:NO)、第1実施形態のS214,S215と同様のS510,S511の処理を実行する。ただし、第2実施形態では、S511の第Nグループ分け処理において、第3条件の満たす複数の第[N-1]ノズルグループの各々から1つのノズル10を除いた残りのノズル10を、2つのノズル10によってそれぞれ構成され、且つ、第1~第[N-1]ノズルグループとはノズル10の組み合わせが異なる第Nノズルグループに分ける。
【0102】
また、第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけ存在し(S509:YES)、Nが1の場合には(S512:YES)、制御装置80は、第3条件を満たす第1ノズルグループを構成する3以上のノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する(S513)。そして、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、第3条件を満たす第1ノズルグループを構成する3以上のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定する(S514)。
【0103】
一方、第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけ存在し(S509:YES)、Nが2以上の場合には(S512:NO)、制御装置80は、第1実施形態のS210,S211,S213と同様の、S515~S517の処理を実行する。そして、第2実施形態では、以上に説明したノズル判定処理により、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が、異常ノズルであるか否かが判定される。
【0104】
<ノズル判定処理による異常ノズルか否かの判定>
次に、第2実施形態のノズル判定処理によって、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かが判定されることについて、具体例を挙げて説明する。ここでは、第1ノズルグループを構成するノズル10の数が3つの場合の一例について、
図14(a)~(f)を用いて説明する。
【0105】
この例では、S502の第1ノズルグループ分け処理において、18個のノズルn1~n18を、
図14(a)に示すように、3つのノズル10によってそれぞれ構成される6つの第1ノズルグループG11~G16に分ける。そして、第1条件を満たす第1ノズルグループG11,G16を構成するノズルn1~n3,n16~n18が異常ノズルでないと判定し、第2条件を満たす第1ノズルグループG13を構成するn7~n9のノズル10が異常ノズルであると判定する(S505)。
【0106】
また、3つの第1ノズルグループG12,G14,G15が第3条件を満たすため(S509:NO)、第2グループ分け処理(S511)において、例えば
図14(b)に示すように、第1ノズルグループG12,G14,G15を構成するn4~n6,n10~n12,n13~n15のノズル10のうち、n4~n6,n10~n12,n13、n14のノズル10を、2つのノズル10によってそれぞれ構成される4つの第2ノズルグループG21~G24に分ける。そして、第1条件を満たす第2ノズルグループG22を構成するノズルn5,n13が異常ノズルでないと判定し、第2条件を満たす第2ノズルグループG23を構成するn6,n11のノズル10が異常ノズルであると判定する(S505)。また、
図14(c)に示すように、第2グループ分け処理で余った余りのノズルであるn15のノズル10からインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、n15のノズル10が異常ノズルであると判定する(S507)。
【0107】
また、この例では、2つの第2ノズルグループG21,G24が第3条件を満たすため(S509:NO)、第3グループ分け処理(S511)により、例えば
図14(d)に示すように第3条件を満たす2つの第2ノズルグループG21,G24の各々から1つのノズルを除いたn4,n12により第3ノズルグループG31を形成する(S511)。そして、1つの第3ノズルグループG31が第3条件を満たすため、例えば
図14(e)に示すように、第3ノズルグループG31を構成するn4,n12から1つのノズルを除いた残りのn4のノズル10からインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し(S515)、このときに判定回路68から出力される信号から、n4のノズル10が異常ノズルであると判定する(S516)。また、この結果と、
図14(d)の結果とから、n12のノズル10が異常ノズルでないと判定する。
【0108】
そして、以下、異常ノズルであるか否かが判定されたノズル10の情報と、
図14(a)~
図14(e)の結果とから、異常ノズルであるか否かが判定されていない残りのノズル10について、順に異常ノズルであるか否かを判定する(S517)。これにより、
図14(f)に示すようにn1~n18のノズル10について異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0109】
この例では、第3条件を満たす第1ノズルグループが複数存在したが、第3条件を満たす第1ノズルグループが1つだけ存在することもあり得る。この場合には、例えば、第1ノズルグループG12のみが第3条件を満たす場合に、n4~n6のノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッドを駆動する(S513)。そして、各ノズル10からインクを吐出させるときに判定回路68から出力される信号に基づいて、n4~n6のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定する(S514)。
【0110】
<効果>
第2実施形態では、インクジェットヘッド4の複数のノズル10を3以上のノズル10によってそれぞれ構成される複数の第1ノズルグループに分ける。そして、複数の第1ノズルグループの各々について、上記3以上のノズル10から同時にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、複数の第1ノズルグループの各々が第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する。
【0111】
そして、第3条件を満たす第1ノズルグループが複数存在する場合に、第3条件を満たす複数の第1ノズルグループの各々の2以上のノズル10を、複数の第1ノズルグループとはノズルの組み合わせを変えて、2つのノズル10によって構成される第2ノズルグループに分け、第2ノズルグループの各々が第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する。
【0112】
また、変数Nが3以上の場合について、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たす、あるいは、1つの第Nノズルグループだけが第3条件を満たすまで、第3条件を満たす複数の第[N-1]ノズルグループの各々について2つのノズルのうち1つを除いたノズルを、複数の第1~第[N-1]ノズルグループとはノズルの組み合わせを変えて、2つのノズル10によって構成される第Nノズルグループに分け、第Nノズルグループの各々が第1~第3条件のいずれを満たすかを判定する、ことを繰り返す。
【0113】
第1条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10は全て異常ノズルではないことがわかる。また、第2条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10は全て異常ノズルであることがわかる。そして、第1条件又は第2条件を満たす第Nノズルグループについては、各ノズルから個別に液体を吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動して異常ノズルであるか否かを判定するよりも、異常ノズルであるか否かの判定に必要なインクジェットヘッド4の駆動回数を少なくすることができる。
【0114】
また、第3条件を満たす第1ノズルグループが1つだけである場合には、当該1つの第1ノズルグループを構成する3以上のノズル10から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する。これにより、当該1つの第Nノズルグループを構成する3以上のノズル10の各々からインクを吐出させたときに判定回路68から出力された信号に基づいて、当該1つの第Nノズルグループを構成する3以上のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0115】
また、変数Nが2以上の場合の、第3条件を満たす第Nノズルグループが1つだけである場合には、当該1つの第Nノズルグループから1つのノズル10を除いた残りのノズル10からインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する。これにより、当該1つの第Nノズルグループの上記残りのノズル10から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力された信号に基づいて、当該1つの第Nノズルグループを構成する2つのノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0116】
さらに、この結果と、第3条件を満たす第1~第[N-1]ノズルグループの各々について、ノズルグループを構成する2以上のノズル10から同時にインクを吐出させたときに判定回路68から出力される信号とに基づいて、第3条件を満たす第1~第[N-1]ノズルグループを構成するノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0117】
そして、これらのことから、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について異常ノズルであるか否かを判定するために必要なインクジェットヘッド4の駆動回数を極力少なくすることができる。第2実施形態の場合、第1条件又は第2条件を満たす第1ノズルグループの数が多いほど、上記インクジェットヘッド4の駆動回数が少なくなる。なお、第2実施形態の場合、第1条件又は第2条件を満たす第1ノズルグループの数が存在しない又は少ない場合などには、上記インクジェットヘッド4の駆動回数がインクジェットヘッド4のノズル10の数よりも多くなってしまうこともあり得る。ただし、第2実施形態でも、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを、異常ノズルであるか否かが同じ可能性が高くなるように設定する。そのため、第1条件又は第2条件を満たす第1ノズルグループの数は多くなる可能性が高い。そして、この場合には、上記インクジェットヘッド4の駆動回数を、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の数よりも少なくすることができる。
【0118】
[変形例]
以上、本発明の好適な第1、第2実施形態について説明したが、本発明は、第1、第2実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0119】
第1実施形態では、変数Nによらず、第Nノズルグループを構成するノズル10の数が同じであったが、これには限られない。第1実施形態において、変数Nによって、第Nノズルグループを構成するノズル10の数を異ならせてもよい。
【0120】
また、第1、第2実施形態では、全ての第Nノズルグループが第1条件又は第2条件を満たす、あるいは、1つの第Nノズルグループだけが第3条件を満たすまで、第3条件を満たす複数の第[N-1]ノズルグループの各々から1つのノズル10を除いた残りのノズル10を第Nノズルグループに分け、第Nノズルグループの各々が第1条件を満たすか第2条件を満たすか第3条件を満たすかを判定する、ことを繰り返したが、これには限られない。
【0121】
例えば、第1、第2実施形態の、変数Nが2以上の場合について、第3条件を満たす第Nノズルグループが複数存在しているときに、第3条件を満たす複数の第Nノズルグループの各々について、1つのノズル10を除いた残りのノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動して、各ノズル10が異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0122】
また、第1実施形態のS210,S211、及び、第2実施形態のS515,S516において、第3条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10から1つのノズル10を除いた残りのノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する。そして、各ノズル10からインク吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力される信号と、第3条件を満たす第Nノズルグループを構成する全てのノズル10から同時にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力される信号から得られる異常ノズルの数とに基づいて、第3条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定する。しかしながら、これには限られない。例えば、第3条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10の各々から個別にインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、各ノズル10からインク吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動したときに判定回路68から出力される信号に基づいて、第3条件を満たす第Nノズルグループを構成するノズル10の各々が異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0123】
また、第1実施形態では、判定回路68から出力される信号の値が、異常ノズルの数に比例するものであったが、これには限られない。例えば、第1実施形態において、判定回路68から出力される信号の値が、異常ノズルの数に反比例するものであってもよい。この場合でも、判定回路68からの信号に基づいて異常ノズルの数を取得することができる。
【0124】
また、第1、第2実施形態では、変数Nが2以上の場合の第Nグループ分け処理において、第3条件を満たす複数の第[N-1]ノズルグループの各々から1つのノズル10を除いた残りのノズル10を、第Nノズルグループに分けるときに、ノズル列9(吐出するインクの色、連通するマニホールド流路41)に基づいて、第Nノズルグループにおけるノズル10の組み合わせの候補を設定する。そして、上記候補が複数存在する場合に、以下、各第Nノズルグループにおけるノズル10間の距離、搬送方向に隣接するノズル10によって構成される第Nノズルグループの数、前回の吐出からの経過時間に、それぞれ基づいて、上記複数の候補に対する絞り込みを行う。しかしながら、これには限られない。
【0125】
例えば、吐出するインクの色、各第Nノズルグループにおけるノズル10間の距離、搬送方向に隣接するノズル10によって構成される第Nノズルグループの数、前回の吐出からの経過時間の4つの基準のうち、吐出するインクの色以外の基準に基づいて、第Nノズルグループにおけるノズル10の組み合わせの候補を設定してもよい。そして、上記候補が複数存在する場合に、残り3つの基準で任意の順序で、上記候補の絞り込みを行ってもよい。また、上記4つの基準のうち、一部の基準にのみ基づいて、上記候補の設定及び絞り込みを行ってもよい。また、上記4つの基準のうち、1つの基準にのみ基づいて、上記候補の設定を行い、候補が複数存在するときに、いずれかの候補に基づいて、第Nノズルグループを構成するノズル10の組み合わせを設定してもよい。
【0126】
また、第1、第2実施形態では、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中から、搬送方向に隣接するノズル10を選択して、複数の第1ノズルグループの各々を構成するノズル10を設定したが、これには限られない。複数の第1ノズルグループのうち、少なくとも一部の第1ノズルグループを構成するノズル10は、同じノズル列9の搬送方向に隣接しないノズル10、異なるノズル列9を構成するノズル10などであってもよい。
【0127】
また、第1、第2実施形態では、記録用紙Pへの記録を行う直前のタイミングでは、上述したようなノズル判定処理によって、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かの判定を行う。これに対して、記録用紙Pへの記録を行う直前のタイミングでは、インクジェットヘッド4の複数のノズル10を複数の第1ノズルグループに分け、第2、第3条件を満たす第1ノズルグループを構成するノズル10の各々からインクを排出させるようにフラッシングを行わせる。しかしながら、これには限られない。例えば、記録用紙Pへの記録を行う直前のタイミングでも、上述のノズル判定処理によって、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々が異常ノズルであるか否かの判定を行い、異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行ってもよい。
【0128】
また、第1、第2実施形態では、ノズル判定処理の後、異常ノズルからインクを排出させるようにフラッシングを行わせ、フラッシングによって回復しない異常ノズルが存在する場合に、吸引パージを行わせる。しかしながら、これには限られない。
【0129】
一変形例では、インクジェットヘッド4が、フラッシングとして、第1フラッシングと、第1フラッシングよりもインクの排出量が多い第2フラッシングとのいずれかを選択的に行わせることができるようになっている。そして、本変形例では、
図15に示すように、ノズル判定処理(S601)の後、異常ノズルからインクを排出させるように第1フラッシングを行わせる(S602)。続いて、異常ノズルから個別に検出用導電部66に向けてインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動する(S603)。そして、このときに判定回路68から出力された信号に基づいて、回復していない異常ノズルが存在するか否かを判定する(S604)。回復していない異常ノズルが存在しない場合には(S604:NO)、そのまま処理を終了する。回復していない異常ノズルが存在する場合には(S604:YES)、回復していない異常ノズルからインクを吐出させるように第2フラッシングを行わせ(S605)、処理を終了する。
【0130】
本変形例では、インクの排出量の少ない第1フラッシングにより異常ノズルからインクを排出させ、異常ノズルが回復したか否かを判定する。そして、第1フラッシングで回復しなかった異常ノズルが存在する場合にのみ、インクの排出量の多い第2フラッシングにより、第1フラッシングで回復しなかった異常ノズルからインクを排出させる。これにより、異常ノズルを回復させるために排出されるインクの量を極力少なくすることができる。
【0131】
また、第1、第2実施形態では、異常ノズルからインクを排出させて異常ノズルを回復させたが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち、どのノズル10が異常ノズルであるかに基づいて、記録時の少なくとも一部の搬送動作での搬送量を変更し、記録される画像の異常ノズルに対応しているドットを、異常ノズルでない別のノズル10に割り当てて記録パスを行ってもよい。
【0132】
また、第1、第2実施形態では、吸引パージによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ15とを接続するチューブ13の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ61で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動することで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ61と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0133】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ62による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行ってもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0134】
また、第1実施形態では、駆動素子50により圧力室40内のインクに圧力を付与することで、ノズル10からインクを吐出させたが、これには限られない。例えば、インクを加熱してインク流路内に気泡を発生させることで、ノズルからインクを吐出させてもよい。
【0135】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用導電部66に向けてインクを吐出させたときの検出用導電部66の最大電圧値Vmに応じて、判定回路68から、異常ノズルであるか否かの判定や、異常ノズルの数の取得のための信号を出力したが、これには限られない。
【0136】
例えば、上下方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧値に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かの判定や、異常ノズルの数の取得のための信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出し、且つ、同時に吐出されたインクの数を識別して検出する光センサを設け、光センサから、異常ノズルであるか否かの判定や、異常ノズルの数の取得のための信号を出力してもよい。
【0137】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御装置80に、ノズル10が異常ノズルであるか否か、及び、異常ノズルの数に応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0138】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否か、及び、異常ノズルの数に応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0139】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4が、キャリッジ2に搭載され、走査方向に移動しつつ、複数のノズル10からインクを吐出する、いわゆるシリアル式のヘッドであったが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッドは、走査方向において記録用紙Pの全長にわたって延びた、いわゆるラインヘッドであってもよい。
【0140】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録する画像記録装置にも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0141】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
9 ノズル列
10 ノズル
41 マニホールド流路
66 検出用導電部
67 高電圧電源回路
68 判定回路
69 抵抗
80 制御装置