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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】横風影響推定装置及び車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20230725BHJP
   B60W 10/14 20120101ALI20230725BHJP
   B60W 10/16 20120101ALI20230725BHJP
   F16H 48/22 20060101ALI20230725BHJP
   F16H 48/34 20120101ALI20230725BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W10/14
B60W10/16
F16H48/22
F16H48/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019110554
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020200001
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高森 恭平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼上 寛斗
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038394(JP,A)
【文献】特開昭63-207732(JP,A)
【文献】特開2002-211380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両が受ける横風の影響を推定する横風影響推定装置であって、
前記車両の進行方向前方の所定領域における横風の情報を取得する第1の取得手段と、
前記横風の風上に位置する遮蔽物の情報を取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得した前記横風の情報及び前記第2の取得手段により取得した前記遮蔽物の情報に基づいて、前記車両が受ける横風の影響が増大及び減少する時期又は位置を含む予報情報を生成する推定手段と、を備え
前記第2の取得手段は、前記遮蔽物が他車両である場合に、当該他車両の速度及び進行方向の情報を取得し、
前記予報情報は、当該予報情報を生成する時点からの経過時間もしくは前記車両の進路における各位置に応じた横風の影響の大きさを前記他車両の速度及び進行方向に基づいて予想した予想値である、
横風影響推定装置。
【請求項2】
前記第2の取得手段は、さらに前記他車両の長さの情報を取得し、
前記推定手段は、前記他車両の全長に基づいて前記予報情報を生成する、
請求項に記載の横風影響推定装置。
【請求項3】
前記第2の取得手段は、前記他車両の全長や全高を含む車両の大きさに関する情報を車車間通信によって取得し、
前記推定手段は、前記他車両の大きさに基づいて前記横風の影響の大きさを推定する、
請求項1又は2に記載の横風影響推定装置。
【請求項4】
前記横風の影響として、前記車両に発生するヨーモーメントを推定する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の横風影響推定装置。
【請求項5】
左右の前輪及び後輪を備えた車両の各車輪への駆動力配分比を制御する車両用制御装置であって、
前記車両の進行方向前方の所定領域における横風の情報を取得する第1の取得手段と、
前記横風の風上に位置する遮蔽物の情報を取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得した前記横風の情報及び前記第2の取得手段により取得した前記遮蔽物の情報に基づいて、前記車両が受ける横風の影響が増大及び減少する時期又は位置を含む予報情報を生成する推定手段と、
前記推定手段の推定結果に基づいて、前記各車輪への駆動力配分比を制御する制御手段と、を備え
前記第2の取得手段は、前記遮蔽物が他車両である場合に、当該他車両の速度及び進行方向の情報を取得し、
前記予報情報は、当該予報情報を生成する時点からの経過時間もしくは前記車両の進路における各位置に応じた横風の影響の大きさを前記他車両の速度及び進行方向に基づいて予想した予想値である、
車両用制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記前輪及び前記後輪の一方を主駆動輪とし他方を補助駆動輪とする四輪駆動車であり、
前記制御手段により、前記補助駆動輪に駆動力を伝達する駆動力伝達装置を制御する、
請求項に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記車は、左右輪間における駆動力配分比を可変であり、
前記制御手段により、前記左右輪間における駆動力配分比を前記横風の影響を抑制するように制御する、
請求項に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が受ける横風の影響を推定する横風影響推定装置、及び車輪への駆動力配分比を制御する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行時に横風等の外乱によって車両が左右に振られる巻き込みを、左右輪の差動を制限して抑制するようにした差動制限力制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の差動制限力制御装置は、車両の重心よりも前方の部分に受ける風力を検出する風力検出手段と、動力装置により発生された動力を差動を許容して左右の駆動輪に伝達する差動装置と、左右の駆動輪の差動に対抗する差動対抗力を発生して差動装置による差動の制限を行う差動制限手段と、風力検出手段により風力が検出されたとき、検出された風力に応じた差動対抗力を発生させるように差動制限手段を制御する差動制限力制御手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-257383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の差動制限力制御装置によると、車両走行中に横風を受けた場合、風の影響をセンサ等によって検出した後でしか差動制限力を制御していないため、一時的に車両の挙動が乱れ、運転者に不安感を与えてしまうおそれがある。また、近年普及しつつある路車間通信の技術を用いて進行方向前方の風の状況を把握できれば、風が車両の走行に与える影響をある程度予測できるものの、風の遮蔽物が存在する場合には、この予測を正確に行えない場合があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意検討し、車両が受ける横風の影響を遮蔽物の存在を考慮して事前に推定できれば、車両の挙動の乱れを抑制し、運転者に不安感を与えることも防ぐことができるという着想を得て本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、車両が受ける横風の影響を事前に推定することができる横風影響推定装置、及び事前に推定した横風の影響に基づいて車両の挙動の乱れを抑制することが可能な車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、車両に搭載され、当該車両が受ける横風の影響を推定する横風影響推定装置であって、前記車両の進行方向前方の所定領域における横風の情報を取得する第1の取得手段と、前記横風の風上に位置する遮蔽物の情報を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段により取得した前記横風の情報及び前記第2の取得手段により取得した前記遮蔽物の情報に基づいて、前記車両が受ける横風の影響が増大及び減少する時期又は位置を含む予報情報を生成する推定手段と、を備え、前記第2の取得手段は、前記遮蔽物が他車両である場合に、当該他車両の速度及び進行方向の情報を取得し、前記予報情報は、当該予報情報を生成する時点からの経過時間もしくは前記車両の進路における各位置に応じた横風の影響の大きさを前記他車両の速度及び進行方向に基づいて予想した予想値である、横風影響推定装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、左右の前輪及び後輪を備えた車両の各車輪への駆動力配分比を制御する車両用制御装置であって、前記車両の進行方向前方の所定領域における横風の情報を取得する第1の取得手段と、前記横風の風上に位置する遮蔽物の情報を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段により取得した前記横風の情報及び前記第2の取得手段により取得した前記遮蔽物の情報に基づいて、前記車両が受ける横風の影響が増大及び減少する時期又は位置を含む予報情報を生成する推定手段と、前記推定手段の推定結果に基づいて、前記各車輪への駆動力配分比を制御する制御手段と、を備え、前記第2の取得手段は、前記遮蔽物が他車両である場合に、当該他車両の速度及び進行方向の情報を取得し、前記予報情報は、当該予報情報を生成する時点からの経過時間もしくは前記車両の進路における各位置に応じた横風の影響の大きさを前記他車両の速度及び進行方向に基づいて予想した予想値である、車両用制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る横風影響推定装置によれば、車両が受ける横風の影響を遮蔽物の存在を考慮して事前に推定できる。また、本発明に係る車両用制御装置によれば、推定した横風の影響に基づいて車両の挙動の乱れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る四輪駆動車の構成例を示す概略図である。
図2】車車間通信及び路車間通信の具体例を示す説明図である。
図3】制御装置及び横風影響推定装置の構成例を示すブロック図である。
図4】(a)~(e)は、旋回の外側から内側に向かう風が吹いているときに自車がカーブを旋回走行しながら他車両とすれ違う際の状況を時系列的に示す説明図である。
図5】(a)は、横風影響推定装置の推定手段によって生成される予報情報の一例を示すグラフであり、(b)は、この予報情報に基づいて駆動力伝達装置を制御した場合に左右後輪に伝達される補助駆動力を示すグラフである。
図6】(a)~(e)は、旋回の内側から外側に向かう風が吹いているときに自車がカーブを旋回走行しながら他車両とすれ違う際の状況を時系列的に示す説明図である。
図7】(a)は、横風影響推定装置の推定手段によって生成される予報情報の一例を示すグラフであり、(b)は、この予報情報に基づいて駆動力伝達装置を制御した場合に左右後輪に伝達される補助駆動力を示すグラフである。
図8】第2の実施の形態に係る四輪駆動車1Aの構成例を示す概略図である。
図9】第3の実施の形態に係る四輪駆動車1Aの構成例を示す概略図である。
図10】第4の実施の形態に係る四輪駆動車1Aの構成例を示す概略図である。
図11】第5の実施の形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る四輪駆動車1の構成例を示す概略図である。四輪駆動車1は、前輪及び後輪を駆動可能であり、本実施の形態では、左前輪11及び右前輪12を駆動力が常時伝達される主駆動輪として備え、左後輪13及び右後輪14を車両情報に応じて駆動力が伝達される補助駆動輪として備えている。なお、以下の説明において、四輪駆動車1を自車1という場合がある。
【0013】
また、四輪駆動車1は、駆動源としてのエンジン15と、エンジン15の出力軸の回転を変速するトランスミッション16と、GPS(Global Positioning System)アンテナ170により取得する位置情報に基づいて運転者に目的地への経路案内等を行なうカーナビゲーション装置17と、トランスミッション16で変速されたエンジン15の駆動力を左右前輪11,12及び左右後輪13,14に伝達する駆動力伝達系2とを備えている。なお、駆動源としては、例えば電動モータを用いてもよく、エンジンと電動モータとを組み合わせた所謂ハイブリッドシステムにより駆動源を構成してもよい。
【0014】
駆動力伝達系2は、前輪側の左右のドライブシャフト21,22と、後輪側の左右のドライブシャフト23,24と、前輪側の差動装置であるフロントディファレンシャル3と、後輪側の差動装置であるリヤディファレンシャル4と、車両前後方向に駆動力を伝達するプロペラシャフト20と、左後輪13及び右後輪14に駆動力を伝達する駆動力伝達装置5とを備えている。また、四輪駆動車1には、駆動力伝達装置5を制御する制御装置6と、四輪駆動車1が走行中に受ける横風の影響を推定する横風影響推定装置7とが搭載されている。
【0015】
本実施の形態では、駆動力伝達装置5がプロペラシャフト20とリヤディファレンシャル4との間に配置され、プロペラシャフト20から左後輪13及び右後輪14に伝達される駆動力を調節可能である。これにより、左右前輪11,12に配分される駆動力と左右後輪13,14に伝達される駆動力との比である前後輪駆動力配分比が可変である。
【0016】
フロントディファレンシャル3は、フロントデフケース31と、フロントデフケース31と一体に回転するピニオンシャフト32と、ピニオンシャフト32に軸支された一対のピニオンギヤ33,33と、一対のピニオンギヤ33,33にギヤ軸を直交させて噛合する第1及び第2のサイドギヤ34,35とを有し、左前輪11及び右前輪12に駆動力を配分する。第1及び第2のサイドギヤ34,35には、それぞれ前輪側の左右のドライブシャフト21,22が相対回転不能に連結されている。
【0017】
トランスミッション16が出力する駆動力は、フロントディファレンシャル3のフロントデフケース31に伝達され、フロントデフケース31からギヤ機構25を介してプロペラシャフト20に伝達される。ギヤ機構25は、例えばハイポイドギヤ対であり、フロントデフケース31と一体に回転するリングギヤ251、及びプロペラシャフト20の一端部に設けられたピニオンギヤ252を噛み合わせてなる。プロペラシャフト20の他端部は、例えば図略の十字継手を介して駆動力伝達装置5に連結されている。
【0018】
駆動力伝達装置5は、プロペラシャフト20からの駆動力が入力される有底円筒状のハウジング51と、ハウジング51と同軸上で相対回転可能に支持されたインナシャフト52と、ハウジング51とインナシャフト52との間に配置された複数のクラッチプレートからなる多板クラッチ53と、多板クラッチ53を押圧する押圧力を発生するカム機構54と、カム機構54を作動させる作動力を伝達する電磁クラッチ55と、制御装置6から励磁電流が供給される電磁コイル56とを備えている。
【0019】
電磁コイル56に通電されると、発生する磁力によって電磁クラッチ55が締結状態となり、電磁クラッチ55によってハウジング51の回転力の一部がカム機構54のパイロットカム541に伝達される。カム機構54は、所定角度範囲で相対回転可能なパイロットカム541及びメインカム542と、パイロットカム541とメインカム542との間で転動可能な複数のカムボール543とを備えている。パイロットカム541及びメインカム542には、カムボール543が転動するカム溝がそれぞれの周方向に対して傾斜して形成されている。
【0020】
メインカム542は、インナシャフト52に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能である。電磁クラッチ55によって伝達される回転力によってパイロットカム541がメインカム542に対して相対回転すると、カムボール543がカム溝を転動し、メインカム542がパイロットカム541から離間する。これにより、多板クラッチ53が押圧されてクラッチプレート同士が摩擦接触し、ハウジング51とインナシャフト52との間で駆動力が伝達される。多板クラッチ53によって伝達される駆動力は、電磁コイル56に供給される電流の大きさに応じて変化する。制御装置6は、電磁コイル56に供給する電流の大きさを変えることで、左右後輪13,14に伝達される補助駆動力を増減させることができる。
【0021】
例えば四輪駆動車1の直進走行時において、クラッチプレート同士の相対回転が発生しない程度に多板クラッチ53が押圧された場合には、前後輪駆動力配分比が50:50となる。また、多板クラッチ53が押圧されず、駆動力伝達装置5によって伝達される駆動力はゼロである場合には、前後輪駆動力配分比が100(前輪):0(後輪)となる。
【0022】
駆動力伝達装置5のインナシャフト52には、ギヤ部261を一端部に有するピニオンギヤシャフト26が相対回転不能に連結されている。ピニオンギヤシャフト26のギヤ部261は、リヤディファレンシャル4のリヤデフケース41に固定されたリングギヤ40に噛み合っている。
【0023】
リヤディファレンシャル4は、リヤデフケース41と、リヤデフケース41と一体に回転するピニオンシャフト42と、ピニオンシャフト42に軸支された一対のピニオンギヤ43,43と、一対のピニオンギヤ43,43にギヤ軸を直交させて噛合する第1及び第2のサイドギヤ44,45とを有し、左後輪13及び右後輪14に駆動力を配分する。第1及び第2のサイドギヤ44,45には、それぞれ後輪側の左右のドライブシャフト23,24が相対回転不能に連結されている。
【0024】
制御装置6及び横風影響推定装置7は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車内通信網により、各種の車両情報を取得することが可能である。車両情報は、四輪駆動車1の各部の状態を示す情報であり、左右前輪11,12及び左右後輪13,14の各車輪速や、ステアリングホイール18の操舵角、アクセルペダル19の踏み込み量、及び車速等の情報が含まれる。
【0025】
また、横風影響推定装置7には、アンテナ70が接続されており、アンテナ70によって自車1の近くを走行する他車両との双方向の車車間通信、及び道路側の通信装置との路車間通信を行うことができる。車車間通信及び路車間通信の通信方式として代表的なものには、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)で用いられる無線通信であるDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)がある。
【0026】
図2は、車車間通信及び路車間通信の具体例を示す説明図である。図2では、カーブを旋回走行中の自車1及び対向車である他車両10、防音壁101、道路側の通信装置である路側通信装置102、及び風向風速計103を示している。自車1の横風影響推定装置7は、アンテナ70によって他車両10及び路側通信装置102との通信が可能である。図2の図示例では、路側通信装置102が防音壁101の上部に取り付けられている。路側通信装置102は、風向風速計103によって計測された風向き及び風速の情報を路側通信装置102の位置情報と共に送信する。他車両10は、自車1よりも全長が長いトラックである。
【0027】
また、図2では、風の方向を複数の矢印Aで示している。図2の図示例では、風の方向がカーブの外側から内側に向かう方向であり、他車両10の車線Loは自車1の車線Liよりも風上にあたる。他車両10の車線Loと自車1の車線Liとは、中央線CLにより区画されている。他車両10と自車1とがすれ違うとき、他車両10は自車1の風上に位置し、自車1に対する横風の遮蔽物となる。
【0028】
風向風速計103は、一般に強風が発生しやすい場所に設置されている。また、防音壁101は、車道(車線Lo,Li)と住宅等との間に設置されている。例えば矢印Aに示す方向に強風が吹いている場合、防音壁101は自車1の風上に位置する横風の遮蔽物となり、自車1が受ける横風の影響が防音壁101の終端部付近において大きく変化する。本実施の形態では、自車1が受ける横風の影響を、横風影響推定装置7が事前に、すなわち実際の横風の影響を受ける前に推定する。
【0029】
図3は、制御装置6及び横風影響推定装置7の構成例を示すブロック図である。制御装置6は、演算処理装置としてのCPU61と、ROMやRAM等の半導体記憶素子からなる記憶部62と、駆動力伝達装置5の電磁コイル56に供給する電流を生成するスイッチング回路63と、車内通信網Nを介した通信を行う通信回路64とを有している。記憶部62には、CPU61が実行すべき演算処理の手順を示すプログラム621、及び四輪駆動車1の車両情報と左右後輪13,14に伝達すべき駆動力を示す指令トルクとの関係を示すマップ情報622が記憶されている。
【0030】
CPU61は、プログラム621を実行することで、左右前輪11,12及び左右後輪13,14への駆動力配分比を制御する制御手段611として機能する。制御手段611は、通信回路64によって得られた車両情報に基づいてマップ情報622を参照し、指令トルクを演算する。また、制御手段611は、スイッチング回路63に供給するPWM信号のデューティー比を指令トルクに応じて設定する。これにより、指令トルクに応じた電流がスイッチング回路63から駆動力伝達装置5の電磁コイル56に供給され、左右後輪13,14に駆動力が伝達される。
【0031】
自車1の旋回走行時において制御手段611が参照するマップ情報622には、車速S及びステアリングホイール18の操舵角θと指令トルクTとの関係が定義されている。指令トルクTは、車速Sが高いほど、また操舵角θが大きいほど、大きくなる傾向にある。
【0032】
横風影響推定装置7は、演算処理装置としてのCPU71と、ROMやRAM等の半導体記憶素子からなる記憶部72と、アンテナ70による通信を行う第1の通信回路73と、車内通信網Nを介した通信を行う第2の通信回路74とを有している。CPU71は、記憶部72に記憶されたプログラム721を実行することにより、第1の取得手段711、第2の取得手段712、及び推定手段713として機能する。
【0033】
第1の取得手段711は、例えば路車間通信により、自車1の進行方向前方の所定領域における横風の情報を取得する。第2の取得手段712は、例えば車車間通信により、横風の風上に位置する遮蔽物の情報を取得する。第1の取得手段711が路車間通信により横風の情報を取得する場合、上記の所定領域は道路側の通信装置との通信が行える範囲であり、例えば半径100mの範囲である。第2の取得手段712は、この所定領域内において横風の風上に位置する遮蔽物の情報を取得する。
【0034】
推定手段713は、第1の取得手段711により取得した横風の情報、及び第2の取得手段712により取得した遮蔽物の情報に基づいて、自車1が受ける横風の影響を推定する。また、推定手段713は、この推定結果に基づいて横風の影響が変化する時期又は位置を含む予報情報を生成し、生成した予報情報を車内通信網Nを介して制御装置6に送信する。この予報情報は、予報情報を生成する時点における車速及び操舵角で自車1が走行するとした場合に、当該時点からの経過時間もしくは自車1の進路における各位置に応じた横風の強さを遮蔽物の存在を考慮して予想した予想値である。
【0035】
図2に示す例では、第1の通信回路73が、路側通信装置102との通信により、風向風速計103によって計測された風向き及び風速の情報を路側通信装置102の位置情報と共に受信し、第1の取得手段711がこの情報を取得する。第1の取得手段711は、取得した情報から自車1の進行方向に対して垂直な方向の成分の風速を横風強度として演算する。なお、自車1の位置情報は、例えばカーナビゲーション装置17から車内通信網Nを介して取得可能である。
【0036】
なお、四輪駆動車1に進行方向前方を撮像するカメラが搭載されている場合、第1の取得手段711は、例えば道路脇に設置されている吹き流しの画像に基づいて横風の情報を取得してもよい。また、第2の取得手段712は、上記のカメラで撮像された画像によって遮蔽物の情報を取得してもよい。この場合、車車間通信が可能な通信機能を有していない他車両や、例えば防音壁101や建造物等の固定物をも横風を遮る遮蔽物として認識することができ、これらの遮蔽物が横風に与える影響を考慮して、推定手段713が予報情報を生成することができる。
【0037】
第2の取得手段712は、自車1との車車間通信が可能な他車両を遮蔽物と認識した場合、当該他車両の速度及び進行方向の情報を車車間通信によって取得する。そして、推定手段713は、他車両の速度及び進行方向に基づいて横風の影響が変化する時期又は位置を含む予報情報を生成する。なお、第2の取得手段712は、自車1の近傍に他車両が存在しても、当該他車両が自車1の風下に位置する場合や自車1から遠ざかってゆく場合等には、当該他車両を遮蔽物とは認識しない。
【0038】
第2の取得手段712は、車車間通信が可能な他車両を遮蔽物と認識した場合、当該他車両の全長や全高を含む車両の大きさに関する情報を車車間通信によって取得する。推定手段713は、他車両の全長に基づいて、自車1への横風の影響が増大及び減少する時期又は位置を含む予報情報を生成する。また、推定手段713は、遮蔽物である他車両の大きさに基づいて自車1への横風の影響の大きさを推定し、この推定値を含めて予報情報を生成する。本実施の形態では、横風の影響として、自車1に発生するヨーモーメントを推定する。横風の影響の大きさは、ヨーモーメントの大きさに相当する。
【0039】
図4(a)~(e)は、自車1がカーブを旋回走行しながら他車両10とすれ違う際の状況を時系列的に示す説明図である。図4(a)~(e)に示す矢印Aは風の方向を示している。図5(a)は、推定手段713によって生成される予報情報の一例を示すグラフであり、図5(b)は、この予報情報に基づいて駆動力伝達装置5を制御した場合に左右後輪13,14に伝達される補助駆動力を示すグラフである。
【0040】
図4(a)~(e)では、旋回外側から旋回内側に向かう方向に風が吹いている場合を示し、自車1の中心部に横風によって発生するヨーモーメントの方向及び大きさを示す円弧矢印を図示している。円弧矢印の長さは、発生するヨーモーメントの大きさを示している。図5(a)及び(b)では、横軸を時間軸とし、図4(a)~(e)に示す各状態に対応する時点をTa~Teで示している。すなわち、図4(a)に示す状態の発生時点が図5(a)及び(b)に示すグラフのTaであり、以下同様に、図4(b)~(e)に示す状態の発生時点が図5(a)及び(b)に示すグラフのTb~Teである。
【0041】
図5(a)は、時間軸よりも上側がオーバーステア傾向を示し、時間軸よりも下側がアンダーステア傾向を示している。また、図5(b)における破線は、風が吹いていない場合の補助駆動力を示している。
【0042】
一般に、車両の旋回時には、車輪に伝達される駆動力及びタイヤ横力(コーナリングフォース)が大きく、タイヤの接地荷重が小さいほど横滑りが発生しやすくなるので、四輪駆動車1では、左右後輪13,14に伝達される補助駆動力が大きくなればオーバーステア傾向となり、左右後輪13,14に伝達される補助駆動力が小さくなればアンダーステア傾向となる。この特性を利用して、横風によってオーバーステア傾向のヨーモーメントが発生する際には補助駆動力を小さくし、横風によってアンダーステア傾向のヨーモーメントが発生する際には補助駆動力を大きくすることで、運転者が無風状態と同じような感覚で四輪駆動車1を運転することが可能となる。
【0043】
図4(a)では、横風の方向に自車1と他車両10が重なる前の状態を示している。この状態では、自車1が横風によって旋回内側に流されるので、横風によってオーバーステア傾向のヨーモーメントが発生する。この状態では、風が吹いていない場合よりも補助駆動力を小さくすることで、横風による影響を緩和することができる。
【0044】
図4(b)では、自車1のフロント側の一部が横風の方向に他車両10と並んだ状態を示している。この状態では、自車1のリヤ側の一部が横風の影響を受けるので、自車1が旋回外側を向き、強いアンダーステアとなる。この状態では、補助駆動力を大きくすることで、横風による影響を緩和することができる。
【0045】
図4(c)では、自車1が全長にわたって他車両10の風下に並んだ状態を示している。この状態では、自車1が一時的に無風状態となるので、横風によるヨーモーメントが発生せず、風が吹いていない場合と同等の補助駆動力を左右後輪13,14に伝達する。自車1が無風状態となる時間の長さは、他車両10の全長によって変化する。
【0046】
図4(d)では、自車1のリヤ側の一部が横風の方向に他車両10と並んだ状態を示している。この状態では、自車1のフロント側の一部が横風の影響を受けるので、自車1が旋回内側を向き、強いオーバーステアとなる。この状態では、補助駆動力を小さくすることで、横風による影響を緩和することができる。
【0047】
図4(e)は、自車1が他車両10の風下にあたる位置を通過した状態を示している。この状態では、図4(a)に示す横風の方向に自車1と他車両10が重なる前の状態と同様のオーバーステア傾向のヨーモーメントが発生する。
【0048】
横風影響推定装置7は、図5(a)に示すヨーモーメントの予報情報を、実際に自車1に横風によるヨーモーメントの変化が発生する前に制御装置6に送信する。より具体的には、例えば自車1の前端部と他車両10の前端部とが横方向に並ぶ位置よりも数メートル手前を自車1が走行しているときに、図5(a)に示すTaからTeまでのヨーモーメントの予報情報を制御装置6に送信する。これにより、例えば横風に起因して発生するヨーモーメントの変化をヨーレイトセンサによって検出してから駆動力伝達装置5の電磁コイル56に供給する電流を増減する場合に比較して、運転者に不安感を感じさせることなく、自車1の挙動を安定させることができる。
【0049】
制御手段611は、例えば予報情報に示されるヨーモーメントの大きさに応じた補正係数をマップ情報622を参照して得られる指令トルクTに乗じて指令トルクを補正し、補正後の指令トルクに応じてスイッチング回路63に供給するPWM信号のデューティー比を設定する。
【0050】
図6(a)~(e)は、図4(a)~(e)とは逆に、風が旋回内側から旋回外側に向かう方向に風が吹いているときに自車1が他車両10の風下を通過する際の状況を時系列的に示す説明図である。図7(a)は、この状況において推定手段713によって生成される予報情報の一例を示すグラフであり、図7(b)は、図7(a)の予報情報に基づいて駆動力伝達装置5を制御した場合に左右後輪13,14に伝達される補助駆動力を示すグラフである。
【0051】
旋回内側から旋回外側に向かって横風が吹く場合には、図7(a)及び(b)に示すように、発生するヨーモーメントのオーバーステア及びアンダーステアの関係、及び補助駆動力の増減状態が図5(a)及び(b)とは逆となる。
【0052】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、横風の遮蔽物を考慮して、自車1が受ける横風の影響を正確に推定することができる。また、遮蔽物を考慮して推定した横風の影響に基づいて駆動力伝達装置5を制御するので、横風の影響の変化と同期して横風の影響を緩和するように補助駆動力を変化させ、車両挙動を安定化させることができる。
【0053】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、制御装置6によって前後輪駆動力配分比を制御可能な四輪駆動車1に適用した場合について説明したが、第2の実施の形態及び後述する第3及び第4の実施の形態では、左右輪間の駆動力配分比、より具体的には左後輪13と右後輪14との間の駆動力配分比を制御することが可能な四輪駆動車に本発明を適用した場合について説明する。
【0054】
図8は、第2の実施の形態に係る四輪駆動車1Aの構成例を示す概略図である。図8において、図1を参照して説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
この四輪駆動車1Aは、プロペラシャフト20の後端部に設けられたピニオンギヤ201にリヤ側の回転部材46のリングギヤ461が噛み合っている。リヤ側の回転部材46は、中心部に軸部462を有しており、軸部462と車幅方向に並んで左側の駆動力伝達装置5L及び右側の駆動力伝達装置5Rが配置されている。左側及び右側の駆動力伝達装置5L,5Rは、第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置5と同様に、ハウジング51、インナシャフト52、多板クラッチ53、カム機構54、電磁クラッチ55、及び電磁コイル56を備えている。
【0056】
左側の駆動力伝達装置5Lのハウジング51は、連結軸471によって軸部462に連結されてリヤ側の回転部材46と一体に回転する。右側の駆動力伝達装置5Rのハウジング51は、連結軸472によって軸部462に連結されてリヤ側の回転部材46と一体に回転する。また、左側の駆動力伝達装置5Lのインナシャフト52にはドライブシャフト23が相対回転不能に連結され、右側の駆動力伝達装置5Rのインナシャフト52にはドライブシャフト24が相対回転不能に連結されている。
【0057】
左側及び右側の駆動力伝達装置5L,5Rの電磁コイル56には、制御装置6Aからそれぞれ励磁電流が供給される。本実施の形態では、制御装置6Aが左側の駆動力伝達装置5Lの電磁コイル56及び右側の駆動力伝達装置5Rの電磁コイル56に供給する励磁電流を独立して増減させることができ、左側の駆動力伝達装置5Lの電磁コイル56に供給される電流に応じて左後輪13に駆動力が伝達され、右側の駆動力伝達装置5Rの電磁コイル56に供給される電流に応じて右後輪14に駆動力が伝達される。
【0058】
制御装置6Aは、横風影響推定装置7から取得した予報情報に基づいて、発生が予想されるヨーモーメントに応じて左側及び右側の駆動力伝達装置5L,5Rの電磁コイル56に供給する電流を増減させる。すなわち、横風によって四輪駆動車1Aの重心に対して左回りのヨーモーメントが発生すると予想される場合には、そのタイミングで左側の駆動力伝達装置5Lの電磁コイル56に供給する電流を増大させ、もしくは右側の駆動力伝達装置5Rの電磁コイル56に供給する電流を減少させて、右回りのヨーモーメントを発生させる。また、横風によって四輪駆動車1Aの重心に対して右回りのヨーモーメントが発生すると予想される場合には、そのタイミングで右側の駆動力伝達装置5Rの電磁コイル56に供給する電流を増大させ、もしくは左側の駆動力伝達装置5Lの電磁コイル56に供給する電流を減少させて、左回りのヨーモーメントを発生させる。
【0059】
このように、左後輪13と右後輪14との間の駆動力配分比を横風の影響を抑制するように制御することで、車両挙動を安定化させることができる。
【0060】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図9を参照して説明する。図9は、第3の実施の形態に係る四輪駆動車1Bの構成例を示す概略図である。図9において、図1又は図8を参照して説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0061】
第1及び第2の実施の形態では、エンジン15の駆動力の一部を左右後輪13,14に配分する場合について説明したが、本実施の形態では、左右後輪13,14を駆動するための駆動源として、エンジン15とは別に、電動モータ81を有している。電動モータ81の駆動力は、減速機構82を介してリヤ側の回転部材46に伝達される。減速機構82は、電動モータ81のシャフトに固定されたピニオンギヤ821と、ピニオンギヤ821に噛み合う大径ギヤ部822と、リングギヤ461に噛み合う小径ギヤ部823とを有し、大径ギヤ部822と小径ギヤ部823とが相対回転不能に連結されている。
【0062】
本実施の形態では、制御装置6Bが電動モータ81にモータ電流を供給して電動モータ81の回転速度及び出力トルクを制御すると共に、第2の実施の形態と同様に、横風影響推定装置7から取得した予報情報に基づいて、横風によって発生が予想されるヨーモーメントに対抗するように左側及び右側の駆動力伝達装置5L,5Rの電磁コイル56に励磁電流を供給する。これにより、本実施の形態によっても、横風の影響を受ける状況下での走行時における車両挙動を安定化させることができる。
【0063】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図10を参照して説明する。図10は、第4の実施の形態に係る四輪駆動車1Cの構成例を示す概略図である。図10において、図1を参照して説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0064】
本実施の形態では、左後輪13を駆動するための左側の電動モータ83と、右後輪14を駆動するための右側の電動モータ84とを備え、左側の電動モータ83の駆動力が左側の減速機構85を介してドライブシャフト23に伝達され、右側の電動モータ84の駆動力が右側の減速機構86を介してドライブシャフト24に伝達される。
【0065】
左側の減速機構85は、左側の電動モータ83のシャフトに固定されたピニオンギヤ851と、ピニオンギヤ851に噛み合う大径ギヤ部852と、ドライブシャフト23のギヤ部231に噛み合う小径ギヤ部853とを有し、大径ギヤ部852と小径ギヤ部853とが相対回転不能に連結されている。右側の減速機構86は、右側の電動モータ86のシャフトに固定されたピニオンギヤ861と、ピニオンギヤ861に噛み合う大径ギヤ部862と、ドライブシャフト24のギヤ部241に噛み合う小径ギヤ部863とを有し、大径ギヤ部862と小径ギヤ部863とが相対回転不能に連結されている。
【0066】
本実施の形態では、制御装置6Cが左側の電動モータ83及び右側の電動モータ84にモータ電流を供給して、左側及び右側の電動モータ83,84の回転速度及び出力トルクを制御する。また、制御装置6Cは、横風影響推定装置7から取得した予報情報に基づいて、横風によって発生が予想されるヨーモーメントに対抗するように左側及び右側の電動モータ83,84にモータ電流を供給する。これにより、本実施の形態によっても、横風の影響を受ける状況下での走行時における車両挙動を安定化させることができる。
【0067】
[第5の実施の形態]
次に、図11を参照して発明の第5の実施の形態について説明する。第1乃至第4の実施の形態では、制御装置6,6A,6B,6Cと横風影響推定装置7とが別体であり、横風影響推定装置7で生成された予報情報を制御装置6,6A,6B,6Cに送信する場合について説明したが、本実施の形態では、制御装置9が横風影響推定装置7の機能を有している。
【0068】
図11に示す制御装置9は、第1の実施の形態に係る四輪駆動車1の制御装置6及び横風影響推定装置7に置換可能なものであり、CPU91及び記憶部92と、駆動力伝達装置5の電磁コイル56に供給する電流を生成するスイッチング回路93と、アンテナ70による通信を行う第1の通信回路94と、車内通信網Nを介した通信を行う第2の通信回路95とを有している。記憶部92は、プログラム921と、マップ情報922とを記憶しており、CPU91は、プログラム921を実行することで、第1の取得手段911、第2の取得手段912、推定手段913、及び制御手段914として機能する。第1の取得手段911、第2の取得手段912、及び推定手段913の機能は、第1の実施の形態に係る横風影響推定装置7の第1の取得手段711、第2の取得手段712、及び推定手段713の機能と同じである。制御手段914の機能は、第1の実施の形態に係る制御装置6の制御手段611の機能と同じである。
【0069】
この制御装置9によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0070】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0071】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、第1乃至第4の実施の形態では、横風影響推定装置7で生成された予報情報を駆動力配分比を制御する制御装置6,6A,6B,6Cが取得する場合について説明したが、これに限らず、横風影響推定装置7で生成された予報情報を例えばステア・バイ・ワイヤ方式のステアリング装置に送信し、転舵輪の転舵角を変えることで横風の影響を緩和するように制御を行ってもよい。
【0072】
また、上記の各実施の形態では、本発明を四輪駆動車1,1A,1B,1Cに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば左右の前輪を駆動する二輪駆動車に本発明を適用することも可能である。この場合、左右の前輪に伝達する駆動力を横風の影響を緩和するように制御することで、横風の影響を受ける状況下での走行時における車両挙動を安定化させることができる。
【0073】
また、上記の各実施の形態では、左右の前輪11,12を主駆動輪とし、左右の後輪13,14を補助駆動輪とした場合について説明したが、これに限らず、左右の前輪11,12を補助駆動輪とし、左右の後輪13,14を主駆動輪としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B,1C…四輪駆動車(自車) 10…他車両
11,12…左右前輪 13,14…左右後輪
5,5L,5R…駆動力伝達装置 6,6A,6B,6C,9…制御装置
7…横風影響推定装置 711…第1の取得手段
712…第2の取得手段 713…推定手段
911…第1の取得手段 912…第2の取得手段
913…推定手段 914…制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11