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特許7318380評価装置、評価方法、及び評価プログラム
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  • 特許-評価装置、評価方法、及び評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、及び評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20230725BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B3/113
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019132007
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021016429
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 勝行
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098173(WO,A1)
【文献】特開2017-099513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、
前記被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を前記表示部に表示する表示制御部と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が停留しているか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部により前記注視点が停留していると判定された場合、前記表示部における前記注視点の停留領域を求める領域検出部と、
前記領域設定部により求められた前記停留領域の表示状態を示す特性値を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記特性値に基づいて、前記被験者の評価データを求める評価部と
を備える評価装置。
【請求項2】
前記特性値は、輝度、コントラスト、鮮鋭度、粗密度及び彩度のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記注視点が停留する停留時間を前記停留領域ごとに算出し、
前記評価部は、前記停留領域が複数検出される場合、前記停留時間が長い前記停留領域について重み付けをした前記評価データを求める
請求項1又は請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記誘発領域とは異なる位置に前記被験者に注視させる目標となる目標領域を含む画像を表示し、
前記誘発領域は、前記目標領域に比べて、前記特性値が低い
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記誘発領域とは異なる位置に前記被験者に注視させる目標となる目標領域を含む画像を表示し、
前記目標領域は、周辺よりも前記特性値が高い
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項6】
前記画像は、奥行方向の手前側に前記被験者に注視させる目標となる目標領域の対象物が存在し、前記奥行方向の奥側に前記誘発領域の対象物が存在するものであり、前記目標領域の対象物を焦点位置として撮影した写真画像または作画・制作した画像である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項7】
前記画像として、前記評価部による評価の結果、レビー小体型認知症ではない被験者と、レビー小体型認知症である被験者との間で有意差が見られた画像が用いられる
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項8】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出することと、
前記被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を前記表示部に表示することと、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が停留しているか否かの判定を行うことと、
前記注視点が停留していると判定された場合、前記表示部における前記注視点の停留領域を検出することと、
前記停留領域の表示状態を示す特性値を取得することと、
取得された前記特性値に基づいて、前記被験者の評価データを求めることと
を含む評価方法。
【請求項9】
表示部上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、
前記被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を前記表示部に表示する処理と、
前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が停留しているか否かの判定を行う処理と、
前記注視点が停留していると判定された場合、前記表示部における前記注視点の停留領域を検出する処理と、
前記停留領域の表示状態を示す特性値を取得する処理と、
取得された前記特性値に基づいて、前記被験者の評価データを求める処理と
をコンピュータに実行させる評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価装置、評価方法、及び評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知機能障害および脳機能障害が増加傾向にあるといわれており、このような認知機能障害および脳機能障害を早期に発見し、症状の重さを定量的に評価することが求められている。このような認知機能障害および脳機能障害のうち、例えば、レビー小体型認知症の評価を行う場合、被験者に幻視の有無を質問し、被検者に答えさせる方法について開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-217051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、被検者の主観に依存するため客観性が低く、高精度の評価を得ることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、精度よく認知機能障害および脳機能障害の評価を行うことが可能な評価装置、評価方法、及び評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る評価装置は、表示部と、前記表示部上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、前記被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を前記表示部に表示する表示制御部と、前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が停留しているか否かの判定を行う判定部と、前記判定部により前記注視点が停留していると判定された場合、前記表示部における前記注視点の停留領域を検出する領域検出部と、前記領域設定部により求められた前記停留領域の表示状態を示す特性値を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記特性値に基づいて、前記被験者の評価データを求める評価部とを備える。
【0007】
本発明に係る評価方法は、表示部上における被験者の注視点の位置を検出することと、前記被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を前記表示部に表示することと、前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が停留しているか否かの判定を行うことと、前記注視点が停留していると判定された場合、前記表示部における前記注視点の停留領域を検出することと、前記停留領域の表示状態を示す特性値を取得することと、取得された前記特性値に基づいて、前記被験者の評価データを求めることとを含む。
【0008】
本発明に係る評価プログラムは、表示部上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、前記被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を前記表示部に表示する処理と、前記注視点の位置データに基づいて、前記注視点が停留しているか否かの判定を行う処理と、前記注視点が停留していると判定された場合、前記表示部における前記注視点の停留領域を検出する処理と、前記停留領域の表示状態を示す特性値を取得する処理と、取得された前記特性値に基づいて、前記被験者の評価データを求める処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精度よく認知機能障害および脳機能障害の評価を行うことが可能な評価装置、評価方法、及び評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る評価装置の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、評価装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、記憶部に記憶される注視点データの一例を示すテーブルである。
図4図4は、表示部に表示する評価用画像の一例を示す図である。
図5図5は、表示部に表示する評価用画像の他の例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、本実施形態に係る評価演算の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、本実施形態に係る評価演算の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る評価装置、評価方法、及び評価プログラムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
以下の説明においては、三次元グローバル座標系を設定して各部の位置関係について説明する。所定面の第1軸と平行な方向をX軸方向とし、第1軸と直交する所定面の第2軸と平行な方向をY軸方向とし、第1軸及び第2軸のそれぞれと直交する第3軸と平行な方向をZ軸方向とする。所定面はXY平面を含む。
【0013】
[評価装置]
図1は、本実施形態に係る評価装置100の一例を模式的に示す図である。本実施形態に係る評価装置100は、被験者の視線を検出し、検出結果を用いることで認知機能障害および脳機能障害の評価を行う。評価装置100としては、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する装置、又は被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する装置等、被験者の視線を検出可能な各種の装置を用いることができる。
【0014】
図1に示すように、評価装置100は、表示装置10と、画像取得装置20と、コンピュータシステム30と、出力装置40と、入力装置50と、入出力インターフェース装置60とを備える。表示装置10、画像取得装置20、コンピュータシステム30、出力装置40及び入力装置50は、入出力インターフェース装置60を介してデータ通信を行う。表示装置10及び画像取得装置20は、それぞれ不図示の駆動回路を有する。
【0015】
表示装置10は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)又は有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display:OLED)のようなフラットパネルディスプレイを含む。本実施形態において、表示装置10は、表示部11を有する。表示部11は、画像等の情報を表示する。表示部11は、XY平面と実質的に平行である。X軸方向は表示部11の左右方向であり、Y軸方向は表示部11の上下方向であり、Z軸方向は表示部11と直交する奥行方向である。表示装置10は、ヘッドマウント型ディスプレイ装置であってもよい。ヘッドマウント型ディスプレイの場合、ヘッドマウントモジュール内に画像取得装置20のような構成が配置されることになる。
【0016】
画像取得装置20は、被験者の左右の眼球EBの画像データを取得し、取得した画像データをコンピュータシステム30に送信する。画像取得装置20は、撮影装置21を有する。撮影装置21は、被験者の左右の眼球EBを撮影することで画像データを取得する。撮影装置21は、被験者の視線を検出する方法に応じた各種カメラを有する。例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、撮影装置21は、赤外線カメラを有し、例えば波長850[nm]の近赤外光を透過可能な光学系と、その近赤外光を受光可能な撮像素子とを有する。また、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、撮影装置21は、可視光カメラを有する。撮影装置21は、フレーム同期信号を出力する。フレーム同期信号の周期は、例えば20[msec]とすることができるが、これに限定されない。撮影装置21は、例えば第1カメラ21A及び第2カメラ21Bを有するステレオカメラの構成とすることができるが、これに限定されない。
【0017】
また、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、画像取得装置20は、被験者の眼球EBを照明する照明装置22を有する。照明装置22は、LED(light emitting diode)光源を含み、例えば波長850[nm]の近赤外光を射出可能である。なお、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線ベクトルを検出する方式の場合、照明装置22は設けられなくてもよい。照明装置22は、撮影装置21のフレーム同期信号に同期するように検出光を射出する。照明装置22は、例えば第1光源22A及び第2光源22Bを有する構成とすることができるが、これに限定されない。
【0018】
コンピュータシステム30は、評価装置100の動作を統括的に制御する。コンピュータシステム30は、演算処理装置30A及び記憶装置30Bを含む。演算処理装置30Aは、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置30Bは、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)のようなメモリ又はストレージを含む。演算処理装置30Aは、記憶装置30Bに記憶されているコンピュータプログラム30Cに従って演算処理を実施する。
【0019】
出力装置40は、フラットパネルディスプレイのような表示装置を含む。なお、出力装置40は、印刷装置を含んでもよい。入力装置50は、操作されることにより入力データを生成する。入力装置50は、コンピュータシステム用のキーボード又はマウスを含む。なお、入力装置50が表示装置である出力装置40の表示部に設けられたタッチセンサを含んでもよい。
【0020】
本実施形態に係る評価装置100は、表示装置10とコンピュータシステム30とが別々の装置である。なお、表示装置10とコンピュータシステム30とが一体でもよい。例えば評価装置100がタブレット型パーソナルコンピュータを含んでもよい。この場合、当該タブレット型パーソナルコンピュータに、表示装置、画像取得装置、コンピュータシステム、入力装置、出力装置等が搭載されてもよい。
【0021】
図2は、評価装置100の一例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、コンピュータシステム30は、表示制御部31と、注視点検出部32と、判定部33と、領域検出部34と、取得部35と、評価部36と、入出力制御部37と、記憶部38とを有する。コンピュータシステム30の機能は、演算処理装置30A及び記憶装置30B(図1参照)によって発揮される。なお、コンピュータシステム30は、一部の機能が評価装置100の外部に設けられてもよい。
【0022】
表示制御部31は、被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む評価用画像(画像)を表示部11に表示する。評価用画像は、誘発領域とは異なる位置に、被験者に注視させる目標となる目標領域を含んでもよい。この場合、評価用画像において、誘発領域は、目標領域に比べて、後述する特性値が低い。また、評価用画像において、目標領域は、後述する特性値が周辺よりも高い。評価用画像は、例えば、奥行方向の手前側に目標領域の対象物が存在し、奥行方向の奥側に誘発領域の対象物が存在する風景を、目標領域の対象物を焦点位置として撮影した写真画像である。評価用画像の表示形態については、静止画及び動画のいずれであってもよい。
【0023】
注視点検出部32は、被験者の注視点の位置データを検出する。本実施形態において、注視点検出部32は、画像取得装置20によって取得される被験者の左右の眼球EBの画像データに基づいて、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルを検出する。注視点検出部32は、検出した被験者の視線ベクトルと表示装置10の表示部11との交点の位置データを、被験者の注視点の位置データとして検出する。つまり、本実施形態において、注視点の位置データは、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルと、表示装置10の表示部11との交点の位置データである。本実施形態において、注視点は、被験者に注視されることで指定される表示部11上の指定点である。注視点検出部32は、規定のサンプリング周期毎に被験者の注視点の位置データを検出する。このサンプリング周期は、例えば撮影装置21から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)とすることができる。注視点検出部32は、表示部11に評価用画像が表示されてからの経過時間を検出するタイマと、注視点検出部32により注視点が検出された時刻をカウントするカウンタとを有する。
【0024】
図3は、記憶部38に記憶される注視点データの一例を示すテーブルである。図3に示すように、注視点検出部32は、カウンタのカウント数(CNT1)と、表示部11における注視点のX軸座標データ及びY軸座標データとを対応させて記憶部38に記憶させる。
【0025】
判定部33は、注視点の位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行い、判定データを記憶部38に記憶させる。判定部33は、規定の判定周期毎に注視点が停留しているか否かを判定する。判定周期としては、例えば撮影装置21から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)と同一の周期とすることができる。この場合、判定部33の判定周期は、注視点検出部32のサンプリング周期と同一である。本実施形態において、注視点の停留は、例えば所定の半径の領域内に注視点が所定回数以上連続して検出される状態とすることができる。例えば、判定部33は、半径100ピクセル以内の領域に10回以上連続して注視点が検出された場合に、注視点が停留していると判定することができる。判定データは、注視点が停留していると判定された場合の停留時間を含む。停留時間は、例えば停留と判定された最初の注視点の検出時刻から最後の注視点の検出時刻までの時間とすることができる。
【0026】
領域検出部34は、判定部33により注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点の停留領域を検出する。本実施形態において、停留領域は、例えば停留していると判定された連続10以上の注視点のうち最初に検出された注視点を中心とした所定半径(例えば、半径100ピクセル)内の領域とすることができる。注視点が異なるタイミングで表示部11の複数箇所で停留している場合、領域検出部34は、複数の停留領域を検出することができる。領域検出部34は、停留領域の中心点となる注視点及びそのX軸座標、Y軸座標等、停留領域についての情報を領域データとして記憶部38に記憶させる。
【0027】
取得部35は、領域検出部34によって検出される停留領域の表示状態を示す特性値を取得する。本実施形態において、特性値は、輝度、コントラスト、鮮鋭度、粗密度及び彩度のうち少なくとも1つを含む。上記の特性値のうち、取得部35は、コントラストとして、例えば停留領域内の白い部分の輝度の最大値と黒い部分の輝度の最小値との差を検出する。また、取得部35は、鮮鋭度として、例えば停留領域のエッジ部分のオーバーシュートを検出する。また、取得部35は、粗密度として、例えば停留領域内に線状部分が何本存在するかを検出する。停留領域が複数検出される場合、取得部35は、停留領域毎に特性値を取得する。取得部35は、検出した特性値を特性値データとして記憶部38に記憶させる。
【0028】
評価部36は、取得部35における取得結果に基づいて、被験者の評価データを求める。評価データは、被験者が表示部11に表示される評価用画像のうちどのような特性値を有する領域を注視しているかを評価するデータを含む。
【0029】
入出力制御部37は、画像取得装置20及び入力装置50の少なくとも一方からのデータ(眼球EBの画像データ、入力データ等)を取得する。また、入出力制御部37は、表示装置10及び出力装置40の少なくとも一方にデータを出力する。
【0030】
記憶部38は、上記の注視点データ(図3参照)、判定データ、停留領域データ、特性値データ及び評価データを記憶する。また、記憶部38は、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を表示部11に表示する処理と、注視点の位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行う処理と、注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点の停留領域を検出する処理と、停留領域の表示状態を示す特性値を取得する処理と、取得された特性値に基づいて、被験者の評価データを求める処理とをコンピュータに実行させる評価プログラムを記憶する。
【0031】
[評価方法]
次に、本実施形態に係る評価方法について説明する。本実施形態に係る評価方法では、上記の評価装置100を用いることにより、被験者の認知機能障害および脳機能障害を評価する。本実施形態では、認知機能障害および脳機能障害として、例えば、レビー小体型認知症の評価を行う場合について説明する。
【0032】
図4は、表示部11に表示する評価用画像の一例を示す図である。図4に示すように、表示制御部31は、評価用画像IM1として、写真画像を表示部11に表示させる。評価用画像IM1は、図中の下側に花が映っており、図中の上側に木立が映っている写真画像である。評価用画像IM1は、奥行方向の手前側に花が存在し、奥行方向の奥側に木立が存在する風景を、花を焦点位置として撮影した写真画像である。このため、評価用画像IM1は、花が映っている領域については、周辺の領域よりも鮮鋭度、輝度、コントラストが高い。本実施形態において、評価用画像IM1は、花が対象物として映っている領域を目標領域M1として含んでいる。目標領域M1は、被験者に注視させる目標となる領域である。
【0033】
レビー小体型認知症の症状の一つとして、幻視を誘発する症状が知られている。レビー小体型認知症である被験者は、例えば画像を注視する際に幻視が誘発された場合、幻視の対象となる領域を注視する傾向にある。このようなレビー小体型認知症を評価する際、被験者に幻視を誘発させる領域を含む画像を見せるようにする。
【0034】
本実施形態の評価用画像IM1において、奥側の木立の領域は、目標領域M1と比較して、下記の点で異なっている。
1.ピントが花に合っており、木立がぼやけている。つまり、木立の領域は、目標領域M1と比較して、鮮鋭度が低い。
2.木立の領域は、目標領域M1と比較して、輝度が低い(暗い)。
3.木立の領域は、目標領域M1と比較して、コントラストが低い。
なお、評価用画像IM1がカラー画像である場合、木立の領域の彩度が目標領域M1の彩度と比較して低い画像を採用する。
【0035】
この結果、評価用画像IM1において、木立の領域は、レビー小体型認知症である被験者に対して幻視を誘発しやすい領域を含むこととなる。例えば、木立の領域の一部である領域C1は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人影等を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C1を誘発領域C1と表記する。また、例えば木立の領域の一部である領域C2は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人の顔等を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C2を誘発領域C2と表記する。
【0036】
一方、誘発領域C1、C2は、レビー小体型認知症ではない被験者に対しては、鮮鋭度、輝度、コントラスト(又は彩度)が低い単なる木立の領域の一部であり、人影、人の顔等の幻視を誘発しにくい領域となる。したがって、被験者がレビー小体型認知症ではない場合には、表示部11に評価用画像IM1が表示された際、鮮鋭度、輝度、コントラストが高い目標領域M1を注視する可能性が高い。
【0037】
本実施形態では、例えば複数の被験者に対して評価を行った上で、レビー小体型認知症ではない被験者と、レビー小体型認知症である被験者との間で有意差が見られた画像を用いることができる。つまり、レビー小体型認知症ではない被験者が注視する傾向が強い目標領域M1と、レビー小体型認知症ではない被験者が注視しない傾向が強く、かつレビー小体型認知症である被験者が注視する傾向が強い誘発領域C1、C2と、を含む画像を用いることができる。
【0038】
また、評価用画像IM1として上記の写真画像を用いることにより、レビー小体型認知症ではない被験者に対して手前側の目標領域M1の対象物をより確実に注視させることができる。また、レビー小体型認知症ではない被験者にとって違和感が少なく自然な状態の誘発領域C1、C2が評価用画像IM1に含まれることになる。したがって、レビー小体型認知症ではない被験者が誘発領域C1、C2を注視することが抑制される。
【0039】
注視点検出部32は、評価用画像IM1が表示される期間において、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、被験者の注視点Pの位置データを検出する。判定部33は、注視点Pの位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行う。判定部33は、例えば半径100ピクセル以内の領域に10回以上連続して注視点Pが検出された場合に、注視点Pが停留していると判定することができる。
【0040】
領域検出部34は、注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点Pの停留領域を検出する。領域検出部34は、例えば停留していると判定された連続10以上の注視点のうち最初に検出された注視点を中心とした半径100ピクセル内の領域を停留領域として検出することができる。図4では、停留領域S1が検出された状態が示されている。
【0041】
取得部35は、領域検出部34によって検出される停留領域S1の表示状態を示す特性値を取得する。取得部35は、輝度、コントラスト、鮮鋭度、粗密度及び彩度のうち少なくとも1つを特性値として検出する。取得部35は、停留領域が複数検出される場合、停留領域毎に特性値データを個別に検出する。取得部35は、検出した特性値を特性値データとして記憶部38に記憶させる。
【0042】
評価部36は、取得された特性値に基づいて評価値を求め、評価値に基づいて評価データを求める。評価部36は、停留領域が複数検出される場合、複数の停留領域について評価値を算出する。評価部36は、複数の停留領域について評価値を算出する場合、注視点の停留時間が長い停留領域から順に評価値を算出することができる。
【0043】
例えば、評価部36は、最も停留時間が長い停留領域について、特性値データに基づいて、粗密度が所定値以上か否かを判定し、所定値以上であった場合には係数K1を設定する。また、評価部36は、コントラストが所定値以上か否かを判定し、所定値以上であった場合には係数K2を設定する。また、評価部36は、鮮鋭度が所定値以上か否かを判定し、所定値以上であった場合には係数K3を設定する。また、評価部36は、輝度が所定値以上か否かを判定し、所定値以上であった場合には係数K4を設定する。また、評価部36は、彩度が所定値以上か否かを判定し、所定値以上であった場合には係数K5を設定する。評価部36は、設定した係数に基づいて評価値A1を求める。評価値A1は、停留時間をT1とすると、
A1=(K1+K2+K3+K4+K5)・T1
と表すことができる。
【0044】
また、評価部36は、2番目に停留時間が長い停留領域が存在する場合、当該停留領域について、上記同様に粗密度についての係数K6、コントラストについての係数K7、鮮鋭度についての係数K8、輝度についての係数K9、及び彩度についての係数K10を設定し、評価値A2を求める。評価値A2は、停留時間をT2とすると、
A2=(K6+K7+K8+K9+K10)・T2
と表すことができる。
【0045】
また、評価部36は、3番目に停留時間が長い停留領域が存在する場合、当該停留領域について、上記同様に粗密度についての係数K11、コントラストについての係数K12、鮮鋭度についての係数K13、輝度についての係数K14、及び彩度についての係数K15を設定し、評価値A3を求める。評価値A3は、停留時間をT3とすると、
A3=(K11+K12+K13+K14+K15)・T3
と表すことができる。
【0046】
上記同様に、評価部36は、停留時間の長さがN番目までの停留領域について、評価値ANを求めることができる。上記の係数K1~K15は、例えば誘発領域C1、C2の特徴に応じて設定することができる。
【0047】
次に、評価部36は、上記の評価値A1から評価値ANまでに基づいて、最終的な評価値ANSを算出する。評価値ANSは、
ANS=α1・A1+α2・A2+α3・A3+・・・+αN・AN
と表すことができる。なお、α1、α2、α3、・・・、αNは定数である。これらの定数は、例えば、α1>α2>α3>、・・・、>αN、と設定してもよい。これにより、停留時間が長い停留領域についての評価値について重み付けされた評価値ANSを得ることができる。
【0048】
ここで、ANSが所定値以上の場合、被験者が注視した部分は、評価用画像において粗密度、コントラスト、鮮鋭度が高い部分、つまり健常者が見る可能性の高い部分であると考えられる。また、ANSが所定値未満の場合、被験者が注視した部分は、評価用画像において粗密度、コントラスト、鮮鋭度が低く幻視を誘発しやすい部分、つまり、レビー小体型認知症の患者が見る可能性の高い部分であると考えられる。
【0049】
したがって、評価部36は、評価値ANSが所定値以上か否かを判断することで評価データを求めることができる。例えば評価値ANSが所定値以上である場合、被験者がレビー小体型認知症である可能性は低いと評価することができる。また、評価値ANSが所定値未満である場合、被験者がレビー小体型認知症である可能性は高いと評価することができる。
【0050】
また、評価部36は、評価値ANSの値を記憶部38に記憶させておくことができる。例えば、同一の被験者についての評価値ANSを累積的に記憶し、過去の評価値と比較した場合の評価を行ってもよい。例えば、評価値ANSが過去の評価値よりも高い値となった場合、脳機能が前回の評価に比べて改善されている旨の評価を行うことができる。また、評価値ANSの累積値が徐々に高くなっている場合等には、脳機能が徐々に改善されている旨の評価を行うことができる。
【0051】
本実施形態において、入出力制御部37は、評価部36が評価データを出力した場合、評価データに応じて、例えば「被験者はレビー小体型認知症である可能性が低いと思われます」の文字データや、「被験者はレビー小体型認知症である可能性が高いと思われます」の文字データ等を出力装置40に出力させることができる。また、入出力制御部37は、同一の被験者についての評価値ANSが過去の評価値ANSに比べて高くなっている場合、「脳機能が改善されています」等の文字データ等を出力装置40に出力させることができる。
【0052】
図5は、表示部11に表示する評価用画像の他の例を示す図である。図5に示すように、表示制御部31は、評価用画像IM2として、写真画像を表示部11に表示させる。評価用画像IM2は、図中の右下側に自転車が映っており、図中の上側に木立が映っている写真画像である。評価用画像IM2は、奥行方向の手前側に自転車が存在し、奥行方向の奥側に木立が存在する風景を、自転車を焦点位置として撮影した写真画像である。このため、評価用画像IM2は、自転車が映っている領域については、周辺の領域よりも鮮鋭度、輝度、コントラストが高い。本実施形態において、評価用画像IM2は、自転車が対象物として映っている領域を目標領域M2として含んでいる。目標領域M2は、被験者に注視させる目標となる領域である。
【0053】
一方、評価用画像IM2において、奥側の木立の領域は、目標領域M2と比較して、下記の点で異なっている。
4.ピントが自転車に合っており、木立がぼやけている。つまり、木立の領域は、目標領域M2と比較して、鮮鋭度が低い。
5.木立の領域は、目標領域M2と比較して、輝度が低い(暗い)。
6.木立の領域は、目標領域M2と比較して、コントラストが低い。
なお、評価用画像IM2がカラー画像である場合、木立の領域の彩度が目標領域M2の彩度と比較して低い画像を採用する。
【0054】
この結果、評価用画像IM2には、レビー小体型認知症である被験者に対して、幻視を誘発しやすい領域が存在することになる。例えば、木立の領域の一部である領域C3は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人影を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C3を誘発領域C3と表記する。また、木立の領域の一部である領域C4は、レビー小体型認知症である被験者に対して、人の顔を幻視として誘発させる領域となる。以下、領域C4を誘発領域C4と表記する。
【0055】
注視点検出部32は、評価用画像IM2が表示される期間において、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、被験者の注視点Pの位置データを検出する。判定部33は、注視点Pの位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行う。領域検出部34は、注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点Pの停留領域を検出する。図5では、停留領域S2が検出された状態が示されている。取得部35は、領域検出部34によって検出される停留領域S2の表示状態を示す特性値を取得する。取得部35は、検出した特性値を特性値データとして記憶部38に記憶させる。
【0056】
表示制御部31は、例えば図4に示す評価用画像IM1を所定時間表示した後に、図5に示す評価用画像IM2を表示部11に所定時間表示することができる。このように、表示部11に複数種類の評価用画像IM1、IM2を表示させることにより、被験者を高精度に評価することが可能となる。
【0057】
次に、本実施形態に係る評価方法の一例について、図6から図8を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。以下の例では、評価用画像IM1を映像(評価用映像)として再生する場合を例に挙げて説明する。図6に示すように、表示制御部31は、評価用映像の再生(評価用画像IM1の表示)を開始させる(ステップS101)。なお、評価用画像IM1は、例えば被験者に対して他の評価を行うための画像を表示する合間に表示させてもよい。評価用画像IM1の再生を開始した後、タイマT1をリセットし(ステップS102)、カウンタのカウント値CNT1をリセットする(ステップS103)。
【0058】
次に、注視点検出部32は、表示部11に表示された評価用画像IM1を被験者に見せた状態で、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、表示部11における被験者の注視点の位置データを検出する(ステップS104)。位置データが検出されない場合(ステップS105のYes)、後述するステップS107以降の処理を行う。位置データが検出された場合(ステップS105のNo)、注視点検出部32は、カウンタにおいて注視点を検出した時刻をカウントし、カウント値CNT1を記憶部38に記憶させると共に、検出した注視点のX軸座標及びY軸座標を、カウント値CNT1と対応付けて記憶部38に記憶させる(ステップS106)。
【0059】
その後、注視点検出部32は、検出タイマT1の検出結果に基づいて、評価用画像の再生が完了する時刻に到達したか否かを判断する(ステップS107)。評価用画像の再生が完了する時刻に到達していないと判断された場合(ステップS107のNo)、上記のステップS104以降の処理を繰り返し行う。
【0060】
注視点検出部32により映像の再生が完了する時刻に到達したと判断された場合(ステップS107のYes)、表示制御部31は、指示表示動作に関する映像の再生を停止させる(ステップS108)。映像の再生が停止された後、判定部33、領域検出部34、取得部35及び評価部36は、評価値ANSを算出するための評価演算を行う(ステップS109)。評価演算については、後述する。評価部36は、評価演算により得られた評価値ANSに基づいて評価データを求める。その後、入出力制御部37は、評価部36で求められた評価データを出力する(ステップS110)。
【0061】
図7は、本実施形態に係る評価演算の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、判定部33は、注視点が検出された時刻を示すカウント値CNT1を設定し(ステップS201)、当該カウント値CNT1に対応する注視点データ(X軸座標データ及びY軸座標データ)を記憶部38から読み出す(ステップS202)。判定部33は、読み出した注視点データに基づいて、注視点が停留しているか否かを検出する(ステップS203)。
【0062】
ステップS203の検出の結果、注視点が停留していないと判定された場合(ステップS204のNo)、後述するステップS208以降の処理を行う。注視点が停留していると判定された場合(ステップS204のYes)、判定部33は、注視点が停留している停留時間を算出して記憶部38に記憶させる(ステップS205)。また、領域検出部34は、停留領域を検出して当該停留領域についての領域データを記憶部38に記憶させる(ステップS206)。その後、取得部35は、停留領域の特性値(輝度、コントラスト、鮮鋭度、粗密度及び彩度)を取得し、取得した特性値を記憶部38に記憶させる(ステップS207)。
【0063】
その後、判定部33は、全ての注視点データについての上記処理が完了したか否かを判定し(ステップS208)、完了していないと判定した場合には(ステップS208のNo)、上記ステップS201以降の処理を繰り返し行う。また、判定部33により完了したと判定された場合(ステップS208のYes)、評価部36は、取得した特性値に基づいて評価値ANSを算出し、算出した評価データを記憶部38に記憶させる(ステップS209)。
【0064】
図8は、ステップS209の処理を具体的に示すフローチャートである。以下、停留領域が3つ以上検出された場合を例に挙げて説明する。図8に示すように、評価部36は、検出された停留領域のうち最も停留時間が長い停留領域を選択する(ステップS301)。次に、評価部36は、選択した停留領域において、粗密度が所定値以上か否かを判定する(ステップS302)。粗密度が所定値以上と判定された場合(ステップS302のYes)、評価部36は、粗密度についての係数K1を設定し(ステップS303)、ステップS304へと移行する。粗密度が所定値以上ではない判定された場合(ステップS302のNo)、評価部36は、粗密度についての係数K1を設定することなくステップS304へと移行する。
【0065】
次に、評価部36は、コントラストが所定値以上か否かを判定する(ステップS304)。コントラストが所定値以上と判定された場合(ステップS304のYes)、評価部36は、コントラストについての係数K2を設定し(ステップS305)、ステップS306へと移行する。コントラストが所定値以上ではない判定された場合(ステップS304のNo)、評価部36は、コントラストについての係数K2を設定することなくステップS306へと移行する。
【0066】
次に、評価部36は、鮮鋭度が所定値以上か否かを判定する(ステップS306)。鮮鋭度が所定値以上と判定された場合(ステップS306のYes)、評価部36は、鮮鋭度についての係数K3を設定し(ステップS307)、ステップS308へと移行する。鮮鋭度が所定値以上ではない判定された場合(ステップS306のNo)、評価部36は、鮮鋭度についての係数K3を設定することなくステップS308へと移行する。
【0067】
次に、評価部36は、輝度が所定値以上か否かを判定する(ステップS308)。輝度が所定値以上と判定された場合(ステップS308のYes)、評価部36は、輝度についての係数K4を設定し(ステップS309)、ステップS310へと移行する。輝度が所定値以上ではない判定された場合(ステップS308のNo)、評価部36は、輝度についての係数K4を設定することなくステップS310へと移行する。
【0068】
次に、評価部36は、彩度が所定値以上か否かを判定する(ステップS310)。彩度が所定値以上と判定された場合(ステップS310のYes)、評価部36は、彩度についての係数K5を設定し(ステップS311)、ステップS312へと移行する。彩度が所定値以上ではない判定された場合(ステップS310のNo)、評価部36は、彩度についての係数K5を設定することなくステップS312へと移行する。
【0069】
そして、評価部36は、設定した係数K1~K5に基づいて、最も停留時間が長い停留領域についての評価値A1を計算する(ステップS312)。
【0070】
次に、評価部36は、2番目に停留時間が長い停留領域を選択し(ステップS313)、上記と同様に粗密度についての係数K6、コントラストについての係数K7、鮮鋭度についての係数K8、輝度についての係数K9、彩度についての係数K10を設定する(ステップS314からステップS323)。そして、評価部36は、設定した係数K6~K10に基づいて、2番目に停留時間が長い停留領域についての評価値A2を計算する(ステップS324)。
【0071】
また、評価部36は、3番目に停留時間が長い停留領域を選択し(ステップS325)、上記と同様に粗密度についての係数K11、コントラストについての係数K12、鮮鋭度についての係数K13、輝度についての係数K14、彩度についての係数K15を設定する(ステップS326からステップS335)。そして、評価部36は、設定した係数K11~K15に基づいて、3番目に停留時間が長い停留領域についての評価値A3を計算する(ステップS336)。
【0072】
その後、評価部36は、算出した評価値A1~A3及び停留時間に基づいて、最終的な評価値ANSを算出する(ステップS337)。
【0073】
なお、検出された停留領域が1つの場合には、ステップS313からステップS336までの処理については行われない。また、検出された停留領域が2つの場合には、ステップS325からステップS336までの処理については行われない。また、停留領域が4つ以上検出された場合については、上記同様に粗密度についての係数、コントラストについての係数、鮮鋭度についての係数、輝度についての係数、彩度についての係数を設定し、設定した結果を用いて最終的な評価値ANSを算出してもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る評価装置100は、表示部11と、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部32と、被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を表示部11に表示する表示制御部31と、注視点の位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行う判定部33と、判定部33により注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点の停留領域を求める領域検出部34と、領域検出部34により求められた停留領域の表示状態を示す特性値を取得する取得部35と、取得部35により取得された特性値に基づいて、被験者の評価データを求める評価部36とを備える。
【0075】
また、本実施形態に係る評価方法は、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出することと、被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を表示部11に表示することと、注視点の位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行うことと、注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点の停留領域を検出することと、停留領域の表示状態を示す特性値を取得することと、取得された特性値に基づいて、被験者の評価データを求めることとを含む。
【0076】
また、本実施形態に係る評価プログラムは、表示部11上における被験者の注視点の位置を検出する処理と、被験者に対して幻視を誘発させやすい誘発領域を含む画像を表示部11に表示する処理と、注視点の位置データに基づいて、注視点が停留しているか否かの判定を行う処理と、注視点が停留していると判定された場合、表示部11における注視点の停留領域を検出する処理と、停留領域の表示状態を示す特性値を取得する処理と、取得された特性値に基づいて、被験者の評価データを求める処理とをコンピュータに実行させる。
【0077】
被験者がレビー小体型認知症ではない場合、表示部11に評価用画像IM1が表示された際、特性値が高い目標領域M1を注視する可能性が高い。また、被験者がレビー小体型認知症である場合、評価用画像IM1が表示部11に表示された際、幻視を誘発する誘発領域C1、C2を注視する可能性が高い。上記構成によれば、レビー小体型認知症である被験者に対して幻視を誘発しやすい領域が存在する評価用画像IM1を被験者に注視させるため、被験者の主観によらずに評価を行うことができる。また、被験者の注視点データに基づいて評価データを求めることができるため、偶然性の影響を低減することができる。
【0078】
本実施形態に係る評価装置100において、特性値は、輝度、コントラスト、鮮鋭度、粗密度及び彩度のうち少なくとも1つを含む。これにより、被験者をより高精度に評価することができる。
【0079】
本実施形態に係る評価装置100において、判定部33は、注視点が停留する停留時間を停留領域ごとに算出し、評価部36は、停留領域が複数検出される場合、停留時間が長い停留領域について重み付けをした評価データを求める。これにより、被験者が最も長く注視した領域の特性値が最も評価に反映されることになるため、被験者をより高精度に評価することができる。
【0080】
本実施形態に係る評価装置100において、表示部11は、誘発領域C1、C2とは異なる位置に被験者に注視させる目標となる目標領域M1を含む評価用画像IM1を表示し、誘発領域C1、C2は、目標領域M1に比べて、特性値が低い。これにより、レビー小体型認知症である被験者に対して、幻視を誘発しやすい領域を効率的に含ませることができる。
【0081】
本実施形態に係る評価装置100において、表示部11は、誘発領域C1、C2とは異なる位置に被験者に注視させる目標となる目標領域M1を含む評価用画像IM1を表示し、目標領域M1は、特性値が周辺よりも高い。これにより、レビー小体型認知症ではない被験者が目標領域M1を注視しようとするため、高精度の評価を行うことができる。
【0082】
本実施形態に係る評価装置100において、評価用画像IM1は、奥行方向の手前側に目標領域M1の対象物が存在し、奥行方向の奥側に誘発領域C1、C2の対象物が存在するものであり、目標領域M1の対象物を焦点位置として撮影した写真画像である。これにより、レビー小体型認知症ではない被験者に対して手前側の目標領域M1の対象物をより確実に注視させることができる。また、わざとらしさが少なく自然な状態の誘発領域C1、C2を評価用画像IM1に含ませることができる。このため、レビー小体型認知症ではない被験者が誘発領域C1、C2を注視することを抑制でき、高精度の評価を行うことができる。
【0083】
本実施形態に係る評価装置100において、評価用画像IM1、IM2として、評価部36による評価の結果、レビー小体型認知症ではない被験者と、レビー小体型認知症である被験者との間で有意差が見られた画像が用いられる。したがって、被験者がレビー小体型認知症である可能性について高精度に評価することができる。
【0084】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、人影又は人の顔を幻視として誘発させる誘発領域C1~C4が評価用画像IM1、IM2に含まれた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、小動物、虫等、人以外の動物を幻視として誘発させる誘発領域が評価用画像に含まれてもよい。
【0085】
上記実施形態では、評価用画像として写真画像を表示させる例を説明したが、評価用画像は写真画像に限定せず、作画・製作した画像を用いても良い。
【0086】
上記実施形態では、検出された複数の停留領域のうち停留時間の長い一部の停留領域について評価値を求める場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、全ての停留領域について評価値を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
C1~C4…誘発領域、EB…眼球、IM1,IM2…評価用画像、M1,M2…目標領域、P…注視点、S1,S2…停留領域、10…表示装置、11…表示部、20…画像取得装置、21…撮影装置、21A…第1カメラ、21B…第2カメラ、22…照明装置、22A…第1光源、22B…第2光源、30…コンピュータシステム、30A…演算処理装置、30B…記憶装置、30C…コンピュータプログラム、31…表示制御部、32…注視点検出部、33…判定部、34…領域検出部、35…取得部、36…評価部、37…入出力制御部、38…記憶部、40…出力装置、50…入力装置、60…入出力インターフェース装置、100…評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8