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特許7318382液体吐出装置、ノズル検査方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】液体吐出装置、ノズル検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230725BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/165 211
B41J2/01 451
B41J2/165 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019134505
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021017011
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 脩平
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116139(JP,A)
【文献】特開2010-120237(JP,A)
【文献】特開2008-143150(JP,A)
【文献】特開2011-011354(JP,A)
【文献】特開2013-159068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる動作であるパージ、を行うパージ部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のノズルの各々について個別に、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定する第1判定処理を実行し、
前記第1判定処理を実行する前に、
前記パージ部に前記パージを行わせるパージ処理と、
前記パージによって排出される液体の排出量に関連する排出量パラメータの値に基づいて、前記複数のノズルの中に、液体が吐出されない不吐出ノズルがあるか否かを判定する第2判定処理と、を実行し、
前記第2判定処理で前記不吐出ノズルがないと判定したときに、前記第1判定処理を実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2判定処理において、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがあると判定したときに、再度、前記パージ処理と前記第2判定処理とを実行することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
音を検出する音検出部、を備え、
前記排出量パラメータは、前記パージが行われているときの前記音検出部の検出結果に応じたパラメータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記排出量パラメータは、前記パージが行われているときに前記音検出部によって検出された音の音量についてのパラメータであり、
前記制御部は、前記第2判定処理において、
前記排出量パラメータの値が示す音量が所定音量を超えている場合に、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがないと判定し、
前記排出量パラメータの値が示す音量が前記所定音量以下の場合に、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがあると判定することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
音を検出する音検出部、を備え、
前記パージ部が、
前記複数のノズルを覆うキャップと、
前記キャップに接続されたポンプと、
前記複数のノズルが前記キャップで覆われたキャッピング状態と、前記複数のノズルが前記キャップで覆われていないアンキャッピング状態との切り換えを行う切換部と、を備え、
前記制御部は、
前記パージ処理において、前記切換部を制御して前記キャッピング状態としたうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージを行わせ、
前記パージ処理の後、前記切換部を制御して前記アンキャッピング状態としたうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記キャップ内に溜まった液体を排出させる動作であるパージ後吸引、を行わせるパージ後吸引処理を実行し、
前記排出量パラメータは、前記パージ後吸引が行われているときの前記音検出部の検出結果に応じたパラメータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記排出量パラメータは、前記パージ後吸引が開始されてから、前記音検出部によって検出される音の音量が所定音量を超えるまでの時間についてのパラメータであり、
前記制御部は、前記第2判定処理において、
前記排出量パラメータの値が示す前記時間が所定時間を超えている場合に、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがないと判定し、
前記排出量パラメータの値が示す前記時間が前記所定時間以下の場合に、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがあると判定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
音を検出する音検出部、を備え、
前記パージ部が、
前記複数のノズルを覆うキャップと、
前記キャップに接続されたポンプと、
前記複数のノズルが前記キャップで覆われたキャッピング状態と、前記複数のノズルが前記キャップで覆われていないアンキャッピング状態との切り換えを行う切換部と、を備え、
前記制御部は、
前記パージ処理において、前記切換部を制御して前記キャッピング状態としたうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージを行わせ、
前記パージが行われているときの前記音検出部の検出結果に応じた、前記排出量パラメータとしての第1排出量パラメータの値に基づいて、前記第2判定処理としてのパージ中判定処理を実行し、
前記パージ中判定処理において前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがあると判定した場合には、
再度、前記パージ処理と、前記パージ中判定処理とを実行し、
前記パージ中判定処理において前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがないと判定した場合に、
前記パージの後、前記切換部を制御して前記アンキャッピング状態としたうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記キャップ内に溜まった液体を排出させる動作であるパージ後吸引、を行わせるパージ後吸引処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第2判定処理は、
前記パージ中判定処理と、
前記パージ後吸引が行われているときの前記音検出部の検出結果に応じた、前記排出量パラメータとしての第2排出量パラメータの値に基づくパージ後判定処理と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記パージ後判定処理において前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがないと判定したときに、前記第1判定処理を実行することを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記複数のノズルとして、
第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、
第2液体を吐出する複数の第2ノズルと、を有し、
前記パージ部として、
前記複数の第1ノズルから前記液体吐出ヘッド内の前記第1液体を排出させる、前記パージとしての第1パージ、を行う第1パージ部と、
前記複数の第2ノズルから前記液体吐出ヘッド内の前記第2液体を排出させる、前記パージとしての第2パージ、を行う第2パージ部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1パージが行われているときの前記音検出の検出結果に応じた前記排出量パラメータの値に基づいて、前記複数の第1ノズルについての前記第2判定処理を行い、
前記第2パージが行われているときの前記音検出の検出結果に応じた前記排出量パラメータの値に基づいて、前記複数の第2ノズルについての前記第2判定処理を行い、
前記第1パージと前記第2パージとを、異なるタイミングで行わせることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記複数のノズルとして、
第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、
第2液体を吐出する複数の第2ノズルと、を有し、
前記パージ部が、
前記キャップとしての、前記複数の第1ノズルを覆う第1キャップ、及び、前記複数の第2ノズルを覆う第2キャップと、
前記第1キャップ及び前記第2キャップのいずれかに選択的に接続可能に構成された前記ポンプと、を有し、
前記切換部は、
前記複数の第1ノズルが前記第1キャップに覆われた前記キャッピング状態としての第1キャッピング状態と、前記複数の第1ノズルが前記第1キャップに覆われていない前記アンキャッピング状態としての第1アンキャッピング状態との切り換え、及び、前記複数の第2ノズルが前記第2キャップに覆われた前記キャッピング状態としての第2キャッピング状態と、前記複数の第2ノズルが前記第2キャップに覆われていない前記アンキャッピング状態としての第2アンキャッピング状態との切り換えを行い、
前記制御部は、
前記パージ処理として、
前記切換部を制御して前記第1キャッピング状態とし、前記ポンプを前記第1キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージとしての第1パージを行わせる第1パージ処理と、
前記切換部を制御して前記第2キャッピング状態とし、前記ポンプを前記第2キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージとしての第2パージを行わせる第2パージ処理と、を実行し、
前記パージ後吸引処理として、
前記第1パージの後、前記切換部を制御して前記第1アンキャッピング状態とし、前記ポンプを前記第1キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージ後吸引としての第1パージ後吸引を行わせる第1パージ後吸引処理と、
前記第2パージの後、前記切換部を制御して前記第2アンキャッピング状態とし、前記ポンプを前記第2キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージ後吸引としての第2パージ後吸引を行わせる第2パージ後吸引処理と、を実行し、
前記第1パージ後吸引が行われているときの前記音検出の検出結果に応じた前記排出量パラメータの値に基づいて、前記複数の第1ノズルについての前記第2判定処理を実行し、
前記第2パージ後吸引が行われているときの前記音検出の検出結果に応じた前記排出量パラメータの値に基づいて、前記複数の第2ノズルについての前記第2判定処理を実行し、
前記第1パージと前記第2パージとを、異なるタイミングで行わせ、
前記第1パージ後吸引と前記第2パージ後吸引とを、異なるタイミングで行わせることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記第1液体及び前記第2液体の両方が顔料インクであることを特徴とする請求項10又は11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記第1液体が、ブラックインクであり、
前記第2液体が、カラーインクであることを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記複数のノズルとして、
顔料インクを吐出する複数の第1ノズルと、
染料インクを吐出する複数の第2ノズルと、を有し、
前記パージ部として、
前記複数の第1ノズルから前記液体吐出ヘッド内の前記顔料インクを排出させる、前記パージとしての第1パージ、を行う第1パージ部と、
前記複数の第2ノズルから前記液体吐出ヘッド内の前記染料インクを排出させる、前記パージとしての第2パージ、を行う第2パージ部と、を有し、
前記制御部は、
前記パージ処理として、
前記第1パージ部に前記第1パージを行わせる第1パージ処理と、
前記第2パージ部に前記第2パージを行わせる第2パージ処理と、を実行し、
前記複数の第1ノズルの各々及び前記複数の第2ノズルの各々についての前記第1判定処理を実行する前に、
前記第1パージ処理と前記第2パージ処理のうち、前記第1パージ処理のみを実行し、
前記第1パージが行われているときの前記音検出の検出結果に応じた前記排出量パラメータの値に基づいて、前記複数の第1ノズルについての前記第2判定処理を実行することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記複数のノズルとして、
顔料インクを吐出する複数の第1ノズルと、
染料インクを吐出する複数の第2ノズルと、を有し、
前記パージ部が、
前記キャップとしての、前記複数の第1ノズルを覆う第1キャップ、及び、前記複数の第2ノズルを覆う第2キャップと、
前記第1キャップ及び前記第2キャップのいずれかに選択的に接続可能に構成された前記ポンプと、を有し、
前記切換部は、
前記複数の第1ノズルが前記第1キャップに覆われた前記キャッピング状態としての第1キャッピング状態と、前記複数の第1ノズルが前記第1キャップに覆われていない前記アンキャッピング状態としての第1アンキャッピング状態との切り換え、及び、前記複数の第2ノズルが前記第2キャップに覆われた前記キャッピング状態としての第2キャッピング状態と、前記複数の第2ノズルが前記第2キャップに覆われていない前記アンキャッピング状態としての第2アンキャッピング状態との切り換えを行い、
前記制御部は、
前記パージ処理として、
前記切換部を制御して前記第1キャッピング状態とし、前記ポンプを前記第1キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージとしての第1パージを行わせる第1パージ処理と、
前記切換部を制御して前記第2キャッピング状態とし、前記ポンプを前記第2キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージとしての第2パージを行わせる第2パージ処理と、を実行し、
前記パージ後吸引処理として、
前記第1パージの後、前記切換部を制御して前記第1アンキャッピング状態とし、前記ポンプを前記第1キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージ後吸引としての第1パージ後吸引を行わせる第1パージ後吸引処理と、
前記第2パージの後、前記切換部を制御して前記第2アンキャッピング状態とし、前記ポンプを前記第2キャップに接続したうえで、前記ポンプを駆動させることによって、前記パージ後吸引としての第2パージ後吸引を行わせる第2パージ後吸引処理と、を実行し、
前記液体吐出ヘッドに、前記複数の第1ノズルの各々及び前記複数の第2ノズルの各々についての前記第1判定処理を実行する前には、
前記第1パージ処理及び前記第1パージ後吸引処理と、前記第2パージ処理及び前記第2パージ後吸引処理のうち、前記第1パージ処理及び前記第1パージ後吸引処理のみを実行し、
前記第1パージ後吸引が行われているときの前記音検出の検出結果に応じた前記排出量パラメータの値に基づいて、前記複数の第1ノズルについての前記第2判定処理を実行することを特徴とする請求項5又は6に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記パージ部により前記パージが行われているときに前記液体吐出ヘッド内を流れる液体の流量を検出する流量検出部、を備え、
前記排出量パラメータが、前記流量検出部の検出結果に応じたパラメータであり、
前記制御部は、前記第2判定処理において、
前記排出量パラメータの値が示す流量が所定流量を超えている場合に、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがないと判定し、
前記排出量パラメータの値が示す流量が前記所定流量以下の場合に、前記複数のノズルの中に前記不吐出ノズルがあると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージ、を行うパージ部と、を備えた液体吐出装置において、前記複数のノズルの検査を行うノズル検査方法であって、
前記複数のノズルの各々について個別に、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定する第1判定ステップ、を備え、
前記第1判定ステップの前に、
前記パージ部に前記パージを行わせるパージステップと、
前記パージによって排出される液体の排出量に関連する排出量パラメータの値に基づいて、前記複数のノズルの中に、液体が吐出されない不吐出ノズルがあるか否かを判定する第2判定ステップと、を備え、
前記第2判定ステップで前記不吐出ノズルがないと判定したときに、前記第1判定ステップに進むことを特徴とするノズル検査方法。
【請求項18】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージ、を行うパージ部と、を備えた液体吐出装置を制御するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記複数のノズルの各々について個別に、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定する第1判定処理を実行させ、
前記第1判定処理を実行させる前に、
前記パージ部に前記パージを行わせるパージ処理と、
前記パージによって排出される液体の排出量に関連する排出量パラメータの値に基づいて、前記複数のノズルの中に、液体が吐出されない不吐出ノズルがあるか否かを判定する第2判定処理と、を実行させ、
前記第2判定処理で前記不吐出ノズルがないと判定されたときに、前記第1判定処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置、液体吐出装置においてノズルの検査を行うノズル検査方法、及び、液体吐出装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1にはノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、ヘッドの複数のノズルの各々について個別に、インクの吐出の有無、及び、吐出方向の検査を行う。そして、インクの吐出がないノズルがあった場合には、吸引処理を実行し、再度上記検査を行う。また、吐出方向に異常のあるノズルがあった場合には、インクの吐出動作を実行し、再度上記検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-175849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されているようなインクジェットプリンタにおいては、例えば、長期間使用されずに放置された場合などに、多数のノズルにおいてインクが吐出されなくなっていることがある。また、このような場合においては、インクが吐出されないノズルの全てを回復させるために、吸引処理を何度も繰り返す必要があることがある。
【0005】
そして、特許文献1では、このような場合、ヘッドの複数のノズルの各々について個別に、インクの吐出の有無の検査が何度も繰り返されることになり、この検査に必要な時間が長くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、複数のノズルにおける液体の不吐出などを判定しつつも、この判定のために必要な時間を極力短くすることが可能な液体吐出装置、ノズル検査方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる動作であるパージ、を行うパージ部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のノズルの各々について個別に、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定する第1判定処理を実行し、前記第1判定処理を実行する前に、前記パージ部に前記パージを行わせるパージ処理と、前記パージによって排出される液体の排出量に関連する排出量パラメータの値に基づいて、前記複数のノズルの中に、液体が吐出されない不吐出ノズルがあるか否かを判定する第2判定処理と、を実行し、前記第2判定処理で前記不吐出ノズルがないと判定したときに、前記第1判定処理を実行する。
【0008】
本発明のノズル検査方法は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージ、を行うパージ部と、を備えた液体吐出装置において、前記複数のノズルの検査を行うノズル検査方法であって、前記複数のノズルの各々について個別に、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定する第1判定ステップ、を備え、前記第1判定ステップの前に、前記パージ部に前記パージを行わせるパージステップと、前記パージによって排出される液体の排出量に関連する排出量パラメータの値に基づいて、前記複数のノズルの中に、液体が吐出されない不吐出ノズルがあるか否かを判定する第2判定ステップと、を備え、前記第2判定ステップで前記不吐出ノズルがないと判定したときに、前記第1判定ステップに進む。
【0009】
本発明のプログラムは、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージ、を行うパージ部と、を備えた液体吐出装置を制御するためのプログラムであって、コンピュータに、前記複数のノズルの各々について個別に、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定する第1判定処理を実行させ、前記第1判定処理を実行させる前に、前記パージ部に前記パージを行わせるパージ処理と、前記パージによって排出される液体の排出量に関連する排出量パラメータの値に基づいて、前記複数のノズルの中に、液体が吐出されない不吐出ノズルがあるか否かを判定する第2判定処理と、を実行させ、前記第2判定処理で前記不吐出ノズルがないと判定されたときに、前記第1判定処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
第1判定処理(第1判定ステップ)のためには、液体吐出ヘッドを複数のノズルについて個別に駆動させる必要があり、ある程度時間がかかる。一方で、パージは、複数のノズルに対して一度に行うものであるため、液体吐出ヘッドを複数のノズルについて個別に駆動させる場合ほど時間がかからない。また、パージによって排出される液体の量(排出量パラメータの値)は、不吐出ノズルの数によって変わるため、排出量パラメータの値によって、不吐出ノズルがあるか否かを判定することができる。

ただし、不吐出ノズルの数が少ない場合には、不吐出ノズルがない場合と、パージによって排出される液体の排出量(排出量パラメータの値)がほとんど変わらないため、排出量パラメータの値に基づく第2判定処理(第2判定ステップ)で、不吐出ノズルがないと判定した場合でも、複数のノズルの中に、多少の不吐出ノズルが残っている場合がある。
【0011】
そこで、本発明では、第1判定処理の前に、パージ処理及び第2判定処理を実行し、第2判定処理において複数のノズルの中に不吐出ノズルがないと判定されたときに第1判定処理を実行する。これにより、不吐出ノズルが多数ある状態では第2判定処理が実行され、不吐出ノズルがなくなってから、もしくは、不吐出ノズルの数が少なくなってから第1判定処理が実行される。その結果、最初から第1判定処理を実行する場合と比較して、全てのノズルについて液体の吐出に異常がなくなるまでに第1判定処理を繰り返す回数が少なくなり、液体の吐出に異常があるか否かを判定するのにかかる時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図3】プリンタにおける不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
図4】変形例1における不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
図5】変形例2における不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
図6】変形例3における不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
図7】変形例4における不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
図8】変形例5における不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
図9】変形例6のプリンタの概略構成図である。
図10】変形例6における不吐出ノズルの有無の判定、不吐出ノズルの回復のための処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0014】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8(本発明の「パージ部」)などを備えている。
【0015】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(図2参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0016】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ14を備えており、カートリッジホルダ14に4つのインクカートリッジ15が取り外し可能に装着されている。最も右側のインクカートリッジ15には、ブラックの顔料インク(本発明の「液体」、「第1液体」)が貯留されている。左側3つのインクカートリッジ15には、右側に配置されたものから、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インク(本発明の「液体」、「第2液体」)が貯留されている。サブタンク3は、4本のチューブ13を介してカートリッジホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ15と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ15からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0017】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド4は、走査方向に並んだ4列のノズル列9を有する。そして、最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10(本発明の「第1ノズル」)からは、ブラックの顔料インクが吐出され、左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10(本発明の「第2ノズル」)からは、右側のノズル列9を構成するものから、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インクが吐出される。
【0018】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(図2参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0019】
<メンテナンスユニット>
メンテナンスユニット8は、キャップ61と、切換ユニット62と、吸引ポンプ63と、廃液タンク64とを備えている。キャップ61は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。キャップ61は、キャップ部61a(本発明の「第1キャップ」)と、キャップ部61aの左側に配置されたキャップ部61b(本発明の「第2キャップ」)とを有する。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ61と対向する。より詳細には、最も右側のノズル列9を構成する、ブラックインクを吐出する複数のノズル10が、キャップ部61aと対向し、左側3列のノズル列9を構成する、カラー(イエロー、シアン、マゼンタ)インク吐出する複数のノズル10が、キャップ部61bと対向する。また、キャップ部61a、61bには、それぞれ、吸引口66a,66bが設けられている。
【0020】
また、キャップ61は、キャップ昇降機構88(図2参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させて複数のノズル10とキャップ61とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ61を上昇させると、キャップ61の上端部がノズル面4aに密着する。これにより、最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10がキャップ部61aに覆われ、左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10がキャップ部61bに覆われたキャッピング状態(本発明の「第1キャッピング状態」、「第2キャッピング状態」)となる。一方、キャップ昇降機構88によりキャップ61が降下された状態では、複数のノズル10がキャップ部61a,61bに覆われていないアンキャッピング状態(本発明の「第1アンキャッピング状態」、「第2アンキャッピング状態」)となる。なお、本実施形態では、キャリッジ2とキャップ昇降機構88とを合わせたものが、本発明の「切換部」に相当する。また、キャップ61はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ61は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0021】
また、キャップ61の下面にはマイク65(本発明の「音検出部」)が配置されている。マイク65は、後述する吸引パージ及びパージ後吸引の際に発生する音の音量を検出し、これに対応する信号を出力する。
【0022】
切換ユニット62は、キャップ部61a,61bの吸引口66a,66b及び吸引ポンプ63とチューブで各々接続されている。切換ユニット62は、キャップ部61aの吸引口66aと吸引ポンプ63とが接続された状態と、キャップ部61bの吸引口66bと吸引ポンプ63とが接続された状態とを切り換える。これにより、切換ユニット62は、吸引ポンプ63を、キャップ部61a及びキャップ部61bのいずれかと選択的に接続させることができる。吸引ポンプ63はチューブポンプなどであり、廃液タンク64と接続されている。
【0023】
そして、メンテナンスユニット8では、後述する制御装置80により、キャリッジモータ86及びキャップ昇降機構88を制御して、上述のキャッピング状態とし、切換ユニット62を制御してキャップ部61aの吸引口66aと吸引ポンプ63とを接続させたうえで、吸引ポンプ63を駆動させることによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のブラックインクを排出させる、ブラックの吸引パージ(本発明の「パージ」、「第1パージ」)を行うことができる。また、メンテナンスユニット8では、後述する制御装置80により、キャリッジモータ86及びキャップ昇降機構88を制御して、上述のキャッピング状態とし、切換ユニット62を制御してキャップ部61bの吸引口66bと吸引ポンプ63とを接続させたうえで、吸引ポンプ63を駆動させることにより、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のカラーインクを排出させる、カラーの吸引パージ(本発明の「パージ」、「第2パージ」)を行うことができる。また、ブラックの吸引パージ及びカラーの吸引パージでインクジェットヘッド4から排出されたインクは廃液タンク64に貯留される。なお、本実施形態では、メンテナンスユニット8のうち、キャップ部61aと切換ユニット62と吸引ポンプ63と廃液タンク64とを合わせたものが、本発明の「第1パージ部」に相当する。メンテナンスユニット8のうち、キャップ部61bと切換ユニット62と吸引ポンプ63と廃液タンク64とを合わせたものが、本発明の「第2パージ部」に相当する。
【0024】
また、メンテナンスユニット8では、上述のブラックの吸引パージの後、後述する制御装置80により、切換ユニット62によりキャップ部61aの吸引口66aと吸引ポンプ63とが接続された状態を維持したまま、キャップ昇降機構88を制御して上記アンキャッピング状態としたうえで吸引ポンプ63を駆動させることにより、ブラックの吸引パージの後にキャップ部61aに溜まったブラックインクを排出させるブラックのパージ後吸引(本発明の「第1パージ後吸引」)を行うことができる。また、メンテナンスユニット8では、上述のカラーの吸引パージの後、6bと吸引ポンプ63とが接続された状態を維持したまま、切換ユニット62によりキャップ部61bの吸引口6後述する制御装置80により、キャップ昇降機構88を制御して上記アンキャッピング状態としたうえで吸引ポンプ63を駆動させることにより、カラーの吸引パージの後にキャップ部61bに溜まったカラーインクを排出させるカラーのパージ後吸引(本発明の「第2パージ後吸引」)を行うことができる。また、ブラック及びカラーのパージ後吸引でキャップ61から排出されたインクも廃液タンク64に貯留される。
【0025】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置80によって制御される。図2に示すように、制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなり、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、切換ユニット62、吸引ポンプ63などの動作を制御する。また、制御装置80には、マイク65によって検出された音の音量に対応する信号が入力される。
【0026】
また、プリンタ1は、以上に説明した構成のほかに、表示部89及び操作部90を備えている。表示部89は、液晶ディスプレイなどであり、制御装置80は、表示部89を制御して、表示部89にプリンタ1の動作に必要な情報を表示させる。操作部90は、ボタン、表示部89に設けられたタッチパネルなどである。ユーザにより操作部90が操作されると、その操作結果に応じた信号が制御装置80に入力される。
【0027】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0028】
<不吐出ノズルの検出、不吐出ノズルの回復の処理>
次に、プリンタ1において、インクジェットヘッド4の複数のノズル10における、インクが吐出されない不吐出ノズルの検出、及び、不吐出ノズルの回復を行うための処理について説明する。この処理は、例えばプリンタ1の電源がオンになったときに開始される。なお、プリンタ1では、制御装置80にこの処理を行わせるためのプログラムが、ROM82等に記憶されている。
【0029】
この処理は、図3のフローに沿って行われる。より詳細に説明すると、制御装置80は、マイク65からの信号に基づく音検出を開始したうえで(S101)、ブラックの吸引パージを行わせる(S102、本発明の「第1パージ処理」)。そして、ブラックの吸引パージの完了後、マイク65からの信号に基づく音検出を停止させる(S103)。
【0030】
続いて、制御装置80は、ブラックの吸引パージが行われているときに検出した音の音量V1(本発明の「排出量パラメータの値」、「第1排出量パラメータの値」、「音検出部の検出結果に応じたパラメータの値」)が、所定音量V1aを超えているか否かを判定する(S104、本発明の「パージ中判定処理」)。なお、音量V1は、例えば、ブラックの吸引パージが行われている間にマイク65によって検出された音の音量の平均値である。後述の音量V3についても同様である。音量V1が所定音量V1a以下の場合には(S104:NO)、制御装置80は、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあると判定し、S101に戻る。
【0031】
音量V1が所定音量V1aを超えている場合には(S104:YES)、制御装置80は、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがないと判定し、続いて、マイク65からの信号に基づく音検出を開始したうえで(S105)、ブラックのパージ後吸引を行わせる(S106、本発明の「パージ後吸引処理」、「第1パージ後吸引処理」)。そして、ブラックのパージ後吸引の完了後、マイク65からの信号に基づく音検出を停止させる(S107)。
【0032】
続いて、制御装置80は、ブラックのパージ後吸引を開始した時点から、マイク65によって検出される音の音量V2が所定音量V2aを超えた時点までの時間T1(本発明の「排出量パラメータの値」、「第2排出量パラメータの値」、「音検出部の検出結果に応じたパラメータの値」)を算出し、時間T1が所定時間T1aを超えているか否かを判定する(S108、本発明の「パージ後判定処理」)。時間T1が所定時間T1a以下の場合には(S108:NO)、制御装置80は、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあると判定し、S101に戻る。
【0033】
時間T1が所定時間T1aを超えている場合には(S108:YES)、制御装置80は、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがないと判定し、続いて、マイク65からの信号に基づく音検出を開始したうえで(S109)、カラーの吸引パージを行わせる(S110、本発明の「第2パージ処理」)。これにより、本実施形態では、S102のブラックの吸引パージと、S110のカラーの吸引パージとが、異なるタイミングで行われる。そして、カラーの吸引パージの完了後、マイク65からの信号に基づく音検出を停止させる(S111)。
【0034】
続いて、制御装置80は、カラーの吸引パージの間に検出した音の音量V3(本発明の「排出量パラメータの値」、「第1排出量パラメータの値」、「音検出部の検出結果に応じたパラメータの値」)が、所定音量V3aを超えているか否かを判定する(S112、本発明の、「パージ中判定処理」)。音量V3が所定音量V3a以下の場合には(S112:NO)、制御装置80は、カラーインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあると判定し、S109に戻る。
【0035】
音量V3が所定音量V3aを超えている場合には(S112:YES)、制御装置80は、カラーインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがないと判定し、続いて、マイク65からの信号に基づく音検出を開始したうえで(S113)、カラーのパージ後吸引を行わせる(S114、本発明の「パージ後吸引処理」、「第2パージ後吸引処理」)。これにより、本実施形態では、S106のブラックのパージ後吸引と、S113のカラーのパージ後吸引とが、異なるタイミングで行われる。そして、カラーのパージ後吸引の完了後、マイク65からの信号に基づく音検出を停止させる(S115)。
【0036】
続いて、制御装置80は、カラーのパージ後吸引を開始した時点から、マイク65によって検出される音の音量V4が所定音量V4aを超えた時点までの時間T2(本発明の「排出量パラメータの値」、「第2排出量パラメータの値」、「音検出部の検出結果に応じたパラメータの値」)を算出し、時間T2が所定時間T2aを超えているか否かを判定する(S116、本発明の「パージ後判定処理」)。時間T2が所定時間T2a以下の場合には(S116:NO)、制御装置80は、カラーインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあると判定し、S109に戻る。時間T2が所定時間T2aを超えている場合には(S116:YES)、制御装置80は、カラーインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがないと判定し、S117に進む。
【0037】
なお、本実施形態では、S102,S110が、本発明の「パージ処理」及び「パージステップ」に相当し、S104,S107,S112,S116が、本発明の「第2判定処理」及び「第2判定ステップ」に相当する。
【0038】
S117では、制御装置80は、テストパターンの記録を行わせる。より詳細に説明すると、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して、複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる動作である記録パスと、搬送モータ87を制御して搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定距離搬送させる動作である搬送動作と、を交互に行わせることによって、記録用紙Pにテストパターンを記録させる。テストパターンは、複数のノズル10毎に個別に、インクが吐出されなかった不吐出ノズル(本発明の「異常ノズル」)であるか否かを判定可能なパターンである。ただし、テストパターン自体は公知のものであるので、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0039】
続いて、制御装置80は、表示部89に、テストパターンの記録結果を入力させるための入力画面を表示させる(S118)。この入力画面は、どのノズル10が不吐出ノズルであるかに応じた信号を、ユーザに入力させるための画面である。そして、制御装置80は、操作部90が上記入力画面の表示に従ってユーザに操作されて、テストパターンの記録結果に対応する信号の入力が完了するまで待機する(S119:NO)。そして、この信号の入力が完了したときに(S119:YES)、制御装置80は、入力された信号に基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定する(S120、本発明の「第1判定処理」、「第1判定ステップ」)。不吐出ノズルがないと判定した場合には(S120:NO)、そのまま、処理を終了する。
【0040】
不吐出ノズルがあると判定したときには(S120:YES)、制御装置80は、続いて、不吐出ノズルの中にブラックインクを吐出するノズル10が含まれているが否かを判定する(S121)。不吐出ノズルの中にブラックインクを吐出するノズル10が含まれていない場合には(S121:NO)、そのままS123に進み、不吐出ノズルの中にブラックインクを吐出するノズル10が含まれている場合には(S121:YES)、ブラックの吸引パージを行わせてから(S122)、S123に進む。
【0041】
S123では、不吐出ノズルの中にカラーインクを吐出するノズル10が含まれているが否かを判定する。不吐出ノズルの中にカラーインクを吐出するノズル10が含まれていない場合には(S123:NO)、そのままS117に戻り、不吐出ノズルの中にカラーインクを吐出するノズル10が含まれている場合には(S123:YES)、カラーの吸引パージを行わせてから(S124)、S117に戻る。
【0042】
<効果>
S120では、テストパターンの記録結果に基づいて、複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かを判定する。そして、S120での判定のために、これよりも前のS117において、インクジェットヘッド4を複数のノズル10について個別に駆動させてテストパターンを記録しているが、テストパターンの記録にはある程度の時間がかかる。また、テストパターンの記録結果に基づいて不吐出ノズルがあると判定した場合には、吸引パージを行って、再度、テストパターンの記録及びこれに基づく上記判定を行うことになる。例えばプリンタ1が長期間使用されていない場合等、不吐出ノズルの数が多い場合には、何度も吸引パージを行わないと、全ての不吐出ノズルが回復しないことがある。そのため、上記のような場合には、本実施形態と異なり、最初から、テストパターンを記録し、その記録結果に基づいて、複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かを判定すると(S101~S116の処理を実行せずに、S117~S124の処理を実行すると)、テストパターンの記録を何度も繰り返すことになり、全ての不吐出ノズルが回復するまでにかかる時間が長くなってしまう。また、テストパターンの記録に使用される記録用紙Pの枚数も多くなってしまう。
【0043】
一方で、S102,S110の吸引パージによって排出されるインクの量は、不吐出ノズルの数によって変わる。そして、吸引パージによって排出されるインクの量が多いほど(不吐出ノズルの数が少ないほど)、吸引パージ中に発生する、インクが流れる音の音量が大きくなる。すなわち、吸引パージ中に発生する音の音量が所定音量よりも大きいか否かによって、不吐出ノズルがあるか否かを判定することができる。また、吸引パージは、複数のノズルに対して一度に行うものであるので、インクジェットヘッド4を複数のノズル10について個別に駆動させるテストパターンの記録ほどは時間がかからない。
【0044】
また、S106,S114でパージ後吸引を行うと、キャップ部61a、61b内に十分にインクが残っている間は、インクのみが吸引されるが、キャップ部61a、61b内のインクの量が少なくなると、吸引口66a,66bの一部が外気に露出し、インクとともに空気が吸引され、このとき発生する音の音量が大きくなる。そして、吸引パージでのインクの排出量が多いほど、吸引パージ後のキャップ部61a,61b内のインクの量が多いため、パージ後吸引が開始された時点から、インクとともに空気が吸引されて発生する音の音量が大きくなるまでの時間が長くなる。すなわち、上記時間が所定時間よりも長いか否かによって、不吐出ノズルがあるか否かを判定することができる。また、パージ後吸引は、吸引パージに対して行われるものであるため、インクジェットヘッド4を複数のノズル10について個別に駆動させるテストパターンの記録ほどは時間がかからない。
【0045】
ただし、不吐出ノズルの数が少ない場合には、不吐出ノズルがない場合と、吸引パージによって排出されるインクの排出量がほとんど変わらない。そのため、吸引パージ中に発生する音の音量や、パージ後吸引における上記時間だけでは、不吐出ノズルの数が少ない場合と、不吐出ノズルがない場合とを区別して判定することができない。
【0046】
そこで、本実施形態では、テストパターンを記録し、その記録結果に基づいて、複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かを判定する前に、吸引パージ中に発生する音の音量、及び、パージ後吸引における上記時間に基づいて、それぞれ、不吐出ノズルがあるか否かを判定する。そして、これらの判定において、不吐出ノズルがないと判定されたときに、テストパターンを記録し、その記録結果に基づいて複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かを判定する。
【0047】
これにより、不吐出ノズルが多数ある状態では、吸引パージ中に発生する音の音量、及び、パージ後吸引における上記時間に基づいて、それぞれ、不吐出ノズルがあるか否かが判定され、不吐出ノズルがなくなってから、もしくは、不吐出ノズルの数が少なくなってから、テストパターンが記録され、その記録結果に基づいて複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かが判定される。その結果、最初から、テストパターンを記録し、その記録結果に基づいて複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かを判定する場合(S101~S116の処理を実行せずに、S117~S124の処理を実行する場合)と比較して、全てのノズル10が不吐出ノズルでなくなるまでにテストパターンを記録する回数が少なくなる。これにより、不吐出ノズルであるか否かの判定及び不吐出ノズルの回復にかかる時間を短くすることができる。また、テストパターンの記録に使用される記録用紙Pの枚数を少なくすることができる。
【0048】
また、上記の通り、不吐出ノズルの数が多いほど、吸引パージによって排出されるインクの量が少なくなる。また、吸引パージによって排出される液体の量が多いほど、吸引パージの際に発生するインクが流れる音の音量が大きくなる。そこで、本実施形態では、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えている場合に不吐出ノズルがないと判定し、上記音量が所定音量以下の場合に不吐出ノズルがあると判定する。
【0049】
また、上記の通り、吸引パージによって排出されるインクの排出量が多いときほど、パージ後にキャップ部61a,61bに溜まっている液体の量が多くなり、パージ後吸引が開始されてから、発生する音の音量が大きくなるまでの時間が長くなる。そこで、本実施形態では、パージ後吸引が開始された時点から、検出される音の音量が所定音量を超えるまでの時間が所定時間を超えている場合に不吐出ノズルがないと判定し、上記時間が所定時間以下の場合に不吐出ノズルがあると判定する。
【0050】
また、本実施形態では、S104でS102のブラックの吸引パージの際に発生した音の音量V1が所定音量V1a以下であり、パージ中判定処理において不吐出ノズルがあると判定されている間は、ブラックのパージ後吸引を行わせず、音量V1が所定音量V1aを超えて、パージ中判定処理において不吐出ノズルがないと判定されたときに、ブラックのパージ後吸引を行わせている。これにより、音量V1が所定音量V1a以下の場合に毎回、ブラックのパージ後吸引を行わせてから、再度ブラックの吸引パージを行わせる場合と比較して、ブラックのパージ後吸引を行わせる回数を少なくすることができる。
【0051】
同様に、本実施形態では、S112でS110のカラーの吸引パージの際に発生した音の音量V3が所定音量V3a以下であり、パージ中判定処理において不吐出ノズルがあると判定されている間は、カラーのパージ後吸引を行わせず、音量V3が所定音量V3aを超えて、パージ中判定処理において不吐出ノズルがないと判定されたときに、カラーのパージ後吸引を行わせている。これにより、音量V3が所定音量V3a以下の場合に毎回、カラーのパージ後吸引を行わせてから、再度カラーの吸引パージを行わせる場合と比較して、カラーのパージ後吸引を行わせる回数を少なくすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、吸引パージでのインクの排出量の違いによる、パージ後吸引における上記時間の違いが、吸引パージの際に発生する音の音量の違いよりも識別しやすい。そのため、パージ後判定処理で不吐出ノズルがないと判定されたときには、パージ中判定処理で不吐出ノズルがないと判定されたときよりも、実際に残っている不吐出ノズルの数が少ない可能性が高い。そこで、本実施形態では、S104,S112で上記音量が所定音量を超えて、不吐出ノズルがないと判定したときに、さらに、S108,S116のパージ後吸引における上記時間に基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定する。これにより、不吐出ノズルがあるか否かをより正確に判定することができる。
【0053】
また、S104,S112で上記音量が所定音量以下であり、不吐出ノズルがあると判定された場合には、吸引パージが繰り返し行われる。これに対して、S108,S116で上記時間が所定時間以下であり、不吐出ノズルがあると判定された場合には、吸引パージとパージ後吸引とが繰り返し行われる。
【0054】
そこで、本実施形態では、S104,S112で上記音量が所定音量を超えて、不吐出ノズルがないと判定されてから、パージ後吸引を行わせ、S108,S116の判定を行う。これにより、S104,S112で上記音量が所定音量以下であり、不吐出ノズルがあると判定されている間は、パージ後吸引が行われることなく吸引パージが繰り返される。そして、S104,S112で上記音量が所定音量を超えて不吐出ノズルがないと判定された後、S108,S116で上記時間が所定時間以下であり、不吐出ノズルがあると判定されている間、吸引パージとパージ後吸引とが繰り返される。これにより、パージ後吸引が行われる回数が少なくなり、不吐出ノズルがないと判定されたときに実際に残っている不吐出ノズルの数を極力少なくしつつ、不吐出ノズルがないと判定されるまでにかかる時間を短くすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、ブラックの吸引パージとカラーの吸引パージとを別々に行うことができる。したがって、ブラックの吸引パージの際に発生する音の音量V1及びカラーの吸引パージの際に発生する音の音量V3に基づいて、ブラックインクを吐出する複数のノズル10と、カラーインクを吐出する複数のノズル10とについて別々に、不吐出ノズルがあるか否かを判定することができる。また、ブラックの吸引パージとカラーの吸引パージとを異なるタイミングで行うので、ブラックの吸引パージの際に発生する音、及び、カラーの吸引パージの際に発生する音を正確に検出することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ブラックのパージ後吸引とカラーのパージ後吸引とを別々に行うことができる。したがって、ブラックのパージ後吸引における上記時間T1及びカラーのパージ後吸引における上記時間T2に基づいて、ブラックインクを吐出する複数のノズル10と、カラーインクを吐出する複数のノズル10とについて別々に、不吐出ノズルがあるか否かを判定することができる。また、ブラックのパージ後吸引とカラーのパージ後吸引とを異なるタイミングで行うので、ブラックのパージ後吸引の際に発生する音、及び、カラーのパージ後吸引の際に発生する音を正確に検出することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ブラック及びカラーインクがいずれも顔料インクであり増粘しやすい。そのため、ブラックインクを吐出するノズル10及びカラーインクを吐出するノズル10は、いずれも不吐出ノズルとなりやすい。そこで、本発明では、上記の通り、ブラックインクを吐出するノズル10及びカラーインクを吐出するノズル10のいずれについても、吸引パージの際に発生する音の音量、及び、パージ後吸引における上記時間に基づいて、それぞれ、不吐出ノズルがあるか否かを判定する。
【0058】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0059】
上述の実施形態では、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否か、及び、パージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否に基づいて、それぞれ、不吐出ノズルがあるか否かを判定したが、これには限られない。
【0060】
変形例1では、図4に示すように、制御装置80が、上述の実施形態と同様に、S101~S104の処理を実行する。そして、S104で、音量V1が所定音量V1aを超えている場合に(S104:YES)、制御装置80は、ブラックのパージ後吸引を行わせてから(S201)、上述の実施形態と同様にS109~S112の処理を実行する。また、S112で、音量V3が所定音量V3aを超えている場合に(S112:YES)、制御装置80は、カラーのパージ後吸引を行わせた後(S202)、上述の実施形態と同様に、S117~S124の処理を実行する。
【0061】
変形例2では、図5に示すように、制御装置80が、ブラックの吸引パージを行わせてから(S301)、上述の実施形態と同様にS105~S108の処理を実行する。そして、S108において時間T1が所定時間T1a以下である場合に(S108:NO)、S301に戻る。
【0062】
また、S108において時間T1が所定時間T1aを超えている場合に(S108:YES)、制御装置80が、カラーの吸引パージを行わせてから(S302)、上述の実施形態と同様にS113~S116の処理を実行する。そして、S116において時間T2が所定時間T2a以下である場合に(S116:NO)、S302に戻り、S116において時間T2が所定時間T2aを超えている場合に(S116:YES)、上述の実施形態と同様にS117~S124の処理を実行する。
【0063】
また、上述の実施形態では、ブラックインク及びカラーインクがいずれも顔料インクであり、ブラックインクを吐出するノズル10及びカラーインクを吐出するノズル10の両方について、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否かや、パージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定したが、これには限られない。
【0064】
変形例3~5では、インクジェットヘッド4(図1参照)の最も右側のノズル列9を構成するノズル10から吐出されるブラックインクが顔料インクであり、左側3列のノズル列9を構成するノズル10から吐出されるカラーインクが染料インクである。
【0065】
そして、変形例3では、図6に示すように、制御装置80は、上述の実施形態と同様にS101~S108の処理を実行する。そして、S108において時間T1が所定時間T1aを超えている場合に(S108:YES)、S117~S124の処理を実行する。
【0066】
すなわち、変形例3では、S117~S124の処理を実行する前に、ブラックの吸引パージとカラーの吸引パージのうち、ブラックの吸引パージのみを行わせ、カラーの吸引パージを行わせない。そして、ブラックの吸引パージの際に発生した音の音量に基づいて、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあるか否かを判定する。
【0067】
また、変形例3では、ブラックのパージ後吸引とカラーのパージ後吸引のうち、ブラックのパージ後吸引のみを行わせ、カラーのパージ後吸引を行わせない。そして、ブラックのパージ後吸引における上記時間に基づいて、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあるか否かを判定する。
【0068】
また、変形例4では、図7に示すように、制御装置80は、変形例1と同様に、S101~S104,S201の処理を実行する。そして、S201のブラックのパージ後吸引の後、S117~S124の処理を実行する。すなわち、変形例4では、S117~S124の処理を実行する前に、ブラックの吸引パージとカラーの吸引パージのうち、ブラックの吸引パージのみを行わせ、カラーの吸引パージを行わせない。そして、ブラックの吸引パージの際に発生した音の音量に基づいて、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあるか否かを判定する。
【0069】
また、変形例5では、図8に示すように、制御装置80は、変形例2と同様に、S301,S105~S108の処理を実行する。そして、S108において、時間T1が所定時間T1aを超えている場合に(S108:YES)、S117~S124の処理を実行する。すなわち、変形例5では、S117~S124の処理を実行する前に、ブラックのパージ後吸引とカラーのパージ後吸引のうち、ブラックのパージ後吸引のみを行わせ、カラーのパージ後吸引を行わせない。そして、ブラックのパージ後吸引における上記時間に基づいて、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあるか否かを判定する。
【0070】
増粘しやすいブラックの顔料インクを吐出するノズル10は、不吐出ノズルになりやすいのに対して、増粘しにくいカラーの染料インクを吐出するノズル10は、不吐出ノズルになりにくい。
【0071】
そこで、変形例3では、ブラックの吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否か、及び、ブラックのパージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、それぞれ、不吐出ノズルがあるか否かを判定し、これらの判定において不吐出ノズルがないと判定したときに、S117~S124の処理を実行する。
【0072】
したがって、変形例3では、ブラック及びカラーの両方について、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否か、及び、パージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、それぞれ、不吐出ノズルがあるか否かを判定する場合と比較して、S117~S124の処理を実行する前に実行する処理にかかる時間を短くすることができる。
【0073】
また、変形例4では、ブラックの吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定し、この判定において不吐出ノズルがないと判定したときに、S117~S124の処理を実行する。したがって、変形例4では、ブラック及びカラーの両方について、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定する場合と比較して、S117~S124の処理を実行する前に実行する処理にかかる時間を短くすることができる。
【0074】
また、変形例5では、ブラックのパージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定し、この判定において不吐出ノズルがないと判定したときに、S117~S124の処理を実行する。したがって、変形例5では、ブラック及びカラーの両方について、パージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定する場合と比較して、S117~S124の処理を実行する前に実行する処理にかかる時間を短くすることができる。
【0075】
また、変形例3~5のように、ブラックインクが顔料インクであり、カラーインクが染料インクである場合や、ブラックインク及びカラーインクの両方が染料インクである場合でも、上述の実施形態及び変形例1と同様に、ブラック及びカラーの両方について、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定してもよい。また、上述の実施形態及び変形例2と同様に、ブラック及びカラーの両方について、パージ後吸引における上記時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定してもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、キャップ61が、ブラックインクを吐出するノズル10を覆うキャップ部61aと、カラーインクを吐出するノズル10を覆うキャップ部61bとを有していたが、これには限られない。
【0077】
例えば、ブラックインクを吐出するノズル10を覆う第1キャップと、カラーインクを吐出するノズル10を覆う第2キャップとが別々の部材として設けられていてもよい。また、この場合には、キャップ昇降機構を、第1キャップ及び第2キャップを個別に昇降可能なものとしてもよい。そして、この場合には、第1キャップでブラックインクを吐出するノズル10を覆う第1キャッピング状態と、第1キャップでブラックインクを吐出するノズル10を覆わない第1アンキャッピング状態とのと切り換え、及び、第2キャップでカラーインクを吐出するノズル10を覆う第2キャッピング状態と、第2キャップでカラーインクを吐出するノズル10を覆わない第2アンキャッピング状態との切り換え、を個別に行うことができる。
【0078】
あるいは、キャップは、インクジェットヘッド4の全てのノズル10をまとめて覆うものであってもよい。この場合には、吸引パージにおいてノズル10からインクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクがまとめて排出される。また、パージ後吸引においてキャップからブラックインク及びカラーインクがまとめて排出される。そして、この場合には、上記吸引パージの際に発生する音や、パージ後吸引の際に発生する音に基づいて不吐出ノズルがあるか否かを判定する。
【0079】
あるいは、ノズル列9毎に個別にキャップを有し、吸引ポンプ63がこれら複数のキャップのいずれかと選択的に接続されるようになっていてもよい。この場合には、ノズル列9毎に個別に吸引パージを行うことができる。また、パージ後吸引において各キャップから個別にインクを排出することができる。そして、この場合には、上記吸引パージの際に発生する音の音量や、パージ後吸引における上記時間に基づいて、ノズル列9毎に個別に不吐出ノズルがあるか否かを判定することができる。
【0080】
また、上述の実施形態では、吸引パージの際に発生する音の音量V1,V3そのものを排出量パラメータとし、音量V1,V3が、それぞれ、所定音量V1a,V3aを超えているか否かを判定した。また、パージ後吸引における上記時間T1,T2そのものを排出パラメータとし、時間T1,T2がそれぞれ、所定時間T1a,T2aを超えているか否かを判定したが、これには限られない。例えば、音量V1,V3と1対1の関係にある別のパラメータを排出量パラメータとし、このパラメータの値が示す音量が所定音量を超えているか否かを判定してもよい。また、時間T1,T2と1対1の関係にある別のパラメータを排出量パラメータとし、このパラメータの値が示す時間が所定時間を超えているか否かを判定してもよい。
【0081】
また、上述の実施形態では、吸引パージの際に発生する音の音量が所定音量を超えているか否かによって、不吐出ノズルがあるか否かを判定したが、これには限られない。音量の違い以外の、吸引パージの際に発生する音の違いに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定してもよい。
【0082】
また、上述の実施の形態では、パージ後吸引が開始されてから、マイク65で検出される音の音量が所定音量を超えるまでの時間が所定時間を超えているか否かに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定したが、これには限られない。上記時間の違い以外の、パージ後吸引が行われるときに発生する音の違いに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定してもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、マイク65がキャップ61の下面に配置されていたが、これには限られない。マイク65は、例えば、キャップ61の側面、キャリッジ2など、別の位置に配置されていてもよい。
【0084】
また、以上の例では、吸引パージやパージ後吸引の際に発生する音を検出し、その検出結果に基づいて、複数のノズル10の中に不吐出ノズルがあるか否かを判定したが、これには限られない。
【0085】
変形例6では、図9に示すように、プリンタ100において、切換ユニット62と吸引ポンプ63との間に、流量計101(本発明の「流量検出部」)が接続されている。これにより、変形例6では、流量計101によって検出される流量が、ブラック及びカラーの吸引パージが行われたときに、インクジェットヘッド4内を流れるインクの流量に対応している。なお、流量計101は、ブラック及びカラーの吸引パージの際にインクが流れる別の部分に設けられていてもよい。
【0086】
そして、変形例6では、図10のフローに沿って、インクジェットヘッド4の複数のノズル10における、インクが吐出されない不吐出ノズルの有無の検出、及び、不吐出ノズルの回復のための処理が行われる。
【0087】
より詳細説明すると、制御装置80は、流量計101の検出結果に基づく流量の検出を開始したうえで(S401)、ブラックの吸引パージを行わせる(S402、本発明の「パージ処理」、「パージステップ」)。そして、ブラックの吸引パージの完了後に、流量計101の検出結果に基づく流量の検出を停止する(S403)。
【0088】
続いて、制御装置80は、ブラックの吸引パージが行われている間に検出した流量R1(本発明の「排出量パラメータの値」)が所定流量R1aを超えているか否かを判定する(S404、本発明の「第2判定処理」、「第2判定ステップ」)。ここで、流量R1は、例えば、ブラックの吸引パージが行われている間に検出された流量の平均値である。後述の流量R2についても同様である。そして、流量R1が所定流量R1a以下の場合には(S404:NO)、制御装置80は、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあると判定し、S401に戻る。
【0089】
流量R1が所定流量R1aを超えている場合には(S404:YES)、制御装置80は、ブラックインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがないと判定し、続いて、ブラックのパージ後吸引を行わせる(S405)。続いて、制御装置80は、流量計101の検出結果に基づく流量の検出を開始したうえで(S406)、カラーの吸引パージを行わせる(S407、本発明の「パージ処理」、「パージステップ」)。そして、カラーの吸引パージの完了後に、流量計101の検出結果に基づく流量の検出を停止する(S408)。
【0090】
続いて、制御装置80は、カラーの吸引パージが行われている間に検出した流量R2(本発明の「排出量パラメータ」)が所定流量R2aを超えているか否かを判定する(S409、本発明の「第2判定処理」、「第2判定ステップ」)。流量R2が所定流量R2a以下の場合には(S409:NO)、制御装置80は、カラーインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがあると判定し、S406に戻る。流量R2が所定流量R2aを超えている場合には(S409:YES)、制御装置80は、カラーインクを吐出するノズル10の中に不吐出ノズルがないと判定し、続いて、カラーのパージ後吸引を行わせてから(S410)、上述の実施形態と同様のS117~S124の処理を実行する。
【0091】
不吐出ノズルの数が多いほど、吸引パージによるインクの排出量が少なくなり、吸引パージの際にインクジェットヘッド4内を流れるインクの流量が小さくなる。そこで、変形例6では、流量計101を設け、吸引パージの際に検出した流量が所定流量以下の場合には、不吐出ノズルがあると判定して吸引パージを繰り返し、吸引パージの際に検出した流量が所定流量を超えている場合に、不吐出ノズルがないと判定する。
【0092】
また、変形例6では、吸引パージの際に検出された流量R1,R2そのものを排出量パラメータとし、流量R1,R2が、それぞれ、所定流量R1a,R2aを超えているか否かを判定したが、これには限られない。例えば、流量R1,R2と1対1の関係にある別のパラメータを排出量パラメータとし、このパラメータの値が示す流量が所定流量を超えているか否かを判定してもよい。
【0093】
さらには、排出量パラメータは、以上に説明したものであることには限られない。吸引パージによるインクの排出量に関連する、以上に説明したのとは別の排出量パラメータに基づいて、不吐出ノズルがあるか否かを判定してもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、テストパターンの記録結果に基づいて、複数のノズル10について個別に不吐出ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、複数のノズル10について個別に、吐出速度の異常、吐出方向の異常など、不吐出以外のインクの吐出の異常が発生しているか否かを判定可能なテストパターンを記録し、テストパターンの記録結果に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、ユーザにプリンタ1の操作部90を操作させることによって、テストパターンの記録結果に対応する信号を入力させたが、これには限られない。例えば、ユーザにプリンタ1に接続されたPC等を操作させることによって、テストパターンの記録結果に対応する信号を入力させてもよい。
【0096】
さらには、ユーザに、テストパターンの記録結果に対応する信号を入力させることにも限られない。例えば、プリンタ1が、スキャナを備えたいわゆる複合機である場合には、テストパターンの記録後に、表示部89にメッセージを表示させるなどして、ユーザにテストパターンが記録された記録用紙Pをスキャナにセットさせ、スキャナでテストパターンを読み取り、その読取結果に基づいて、複数のノズル10の各々について異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0097】
また、テストパターンを記録させ、その記録結果に基づいて、複数のノズル10の各々について異常ノズルであるか否かを判定することにも限られない。
【0098】
例えば、特開2013-103464号公報に記載されているのと同様に、ノズルから検出用電極に向けてインクを吐出させるようにヘッドを駆動し、このときの検出用電極における電位の変化に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0099】
あるいは、例えば、特開2006-110853号公報に記載されているのと同様に、ノズルから吐出されたインクが導体部の近傍を通過するようにヘッドを駆動し、このときに導体部に生じる誘導電流に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0100】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路を接続し、インクジェットヘッドを駆動したときに電圧検出回路から出力される信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0101】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0102】
また、以上の例では、プリンタが、メンテナンスユニット8を備え、吸引パージによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させることができるようになっていたが、これには限られない。例えば、プリンタが、インクジェットヘッド4内のインクを加圧可能な加圧ポンプを備え、キャッピング状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ61と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0103】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ63による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行ってもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0104】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4が、キャリッジ2に搭載され、走査方向に移動しつつ、複数のノズル10からインクを吐出する、いわゆるシリアル式のヘッドであったが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッドが、走査方向において記録用紙Pの全長にわたって延びた、いわゆるラインヘッドであってもよい。
【0105】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録する画像記録装置にも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0106】
1 プリンタ
2 キャリッジ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
61 キャップ
61a,61b キャップ部
63 吸引ポンプ
65 マイク
80 制御装置
88 キャップ昇降機構
100 プリンタ
101 流量計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10