(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】籾判別機
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20230725BHJP
G01N 21/85 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B02B7/00 C
G01N21/85 A
(21)【出願番号】P 2019140257
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松島 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】石突 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 和也
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104470(JP,A)
【文献】特開2006-198539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0121571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 7/00
G01N 21/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾と玄米とからなる混合粒を整列させて流下させる流下樋と、
前記流下樋から吐出される前記混合粒に光を照射する発光源と、
前記発光源から光を照射された前記混合粒から、反射光及び透過光を受光することが可能な受光手段と、を有し、
前記発光源は、
前記混合粒の前記受光手段側に設けられて該混合粒に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、
前記混合粒の前記受光手段から離れる側に設けられて該混合粒に緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段と、を備えた
ことを特徴とする籾判別機。
【請求項2】
前記受光手段の受光結果として、
前記緑色成分の光の受光量が所定の緑色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記混合粒が玄米であると判別され、
前記緑色成分の光の受光量が前記所定の緑色成分閾値よりも低く、且つ、赤色成分の光の受光量が所定の赤色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記混合粒が籾であると判別される
請求項1に記載の籾判別機。
【請求項3】
前記発光源は、さらに、前記受光手段と前記混合粒とを結ぶ延長線上の位置に設けられて該混合粒のバックグラウンドに青色成分の光を照射可能な第3の照明手段を備え、
前記受光手段の前記受光結果として、前記青色成分の光の受光量が所定の範囲を外れた場合は前記流下樋から吐出されたものが前記混合粒ではない異物であると判別される
請求項1又は2に記載の籾判別機。
【請求項4】
前記流下樋は、少なくとも前記混合粒に光を照射される前記受光手段の観察領域まで延設され、前記発光源からの光を透過可能である
請求項1~3のいずれかに記載の籾判別機。
【請求項5】
籾摺選別機に搭載され、
前記受光手段の前記受光結果に基づいて算出される脱ぷ率に応じて、脱ぷ機の調整を促す報知を行う
請求項1~4のいずれかに記載の籾判別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾と玄米とからなる混合米(以下、「混合粒」と称する場合がある。)から籾や玄米を判別することのできる籾判別機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のゴムロールを、周速度を互いに異にして反対方向に回転させ、ゴムロール間隙に籾を供給して、ロール間の周速度差により、籾殻をせん断破壊して籾摺りを行うロール式籾摺機が知られている。このロール式籾摺機は、衝撃式籾摺(遠心脱ぷ)機よりも脱ぷ率は劣るが、衝撃式籾摺機よりも毎時摺出玄米量(籾摺り能力)が高いため実用性が高く、市場シェアも大きい。
【0003】
ロール式籾摺機は、籾を一対の脱ぷロール間へ1回通すだけで100%脱ぷされるのが理想的である。しかし、ロール直径、幅、ロールの同径異径の組み合わせ、ロールの毎分回転数、周速度、周速度差率、周速度差長、ゴムロール間圧力などの度量的要素の関係で、せいぜい85~95%まで脱ぷ率を高めるのが限界となっている。
【0004】
そこで、ロール式籾摺部に、様々な方式の選別部を付設し、100%脱ぷした玄米を機外排出する(すなわち、籾は機外排出させない)よう工夫がなされている。例えば、一対の脱ぷロールからなる籾摺部に、籾摺部を通過した摺米を、玄米と籾と混合米とに選り分ける揺動選別部を付設し、該揺動選別部により抽出した籾を再脱ぷして良質の玄米のみを機外排出することができる籾摺選別機(例えば、特許文献1参照)や、一対の脱ぷロールからなる籾摺部に、色彩選別による籾選別部を付設し、該籾選別部により抽出した籾を再脱ぷして良質の玄米のみを機外排出することができる籾摺選別機(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
特許文献1の籾摺選別機によれば、吊りタンクを機体の低い位置に設置することで、機械の全高を低くして安定した確実な籾摺作業が実行できるといった作用・効果の記載がある。また、特許文献2の籾摺選別機によれば、特許文献1のような揺動選別部の代わりに、色彩選別による籾選別部を付設することで、揺動選別部のような複雑な組立、角度調節作業及び振動騒音といった問題点が全て排除でき、装置全体を可及的に小型にし、かつ、自動化できるといった作用・効果の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-186679号公報
【文献】特開昭60-190243号公報
【文献】特許第2710954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような揺動選別部を備えた籾摺選別機は、矩形状の選別板に多数の凹部を形成して、この選別板を傾斜させて揺動させ、形状選別と比重選別とにより籾よりも長さが短い玄米を凹部に入り込ませて玄米を選別板の傾斜上方に移送させる一方、凹部に入り込まなかった籾は傾斜下方に移送させて偏析させることで選別を行うものである。したがって、仮に、玄米と同じ長さの籾が凹部に入り込んでしまった場合、玄米と籾とを選別することができないといった不具合が生じる。
【0008】
一方、特許文献2のような色彩選別による籾選別部を備えた籾摺選別機は、色彩選別部の機構が、光源と、受光素子と、噴射ノズルと、受光素子によって検出した光量の変化信号に基づいて噴射ノズルを作動させる制御回路とを備えたものである。そして、光量の変化といったモノクロセンサ(白・黒といった単色の濃淡の違い)による信号により玄米と籾との判別を行っているものであるから、玄米と籾との判別を混同する可能性が高くなり、選別精度が劣るといった問題があった。
【0009】
なお、カラー撮像手段を利用して、脱ぷされた後の玄米と籾との混合米中の玄米の比率(「脱ぷ率」という)を検出するための装置(「脱ぷ率センサ」という)も周知である。
【0010】
特許文献3は、混合米が流下するシュートに、ストロボ発光器とカラー撮像手段とを配設し、ストロボ発光器の断続的な発光に同期させて撮像する脱ぷ率センサであり、カラー撮像手段にて撮影された画像情報から赤色信号(R)と緑色信号(G)と青色信号(B)の3つの色信号に分離し、これらの色信号の割合(つまり色成分の比率)を演算するとともに、この色成分の比率から所定の演算にて脱ぷ率を算出する。これにより、情報量を多くするとともに、3色の色成分に比率の判別を利用して正確な判別を行うことができる。
【0011】
しかし、特許文献3の脱ぷ率センサは、光源としてストロボ発光器で点滅させているために、点滅したときの情報量しか取得することができず、情報量が少ないものであった。このため、判別及び選別精度が劣るといった問題がある。また、ストロボ発光器からの光を混合米に照射したときの反射光をカラー撮像手段により取得するものであるから、光の反射成分しか取得することができず、原料の流下状態によっては、籾又は玄米の見分けがつきにくい問題もあった。
【0012】
本発明は上記問題点にかんがみ、受光手段において受光した光の反射成分と透過成分とを取得して、籾と玄米との判別を正確に行うことのできる籾判別機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願請求項1に係る発明は、籾と玄米とからなる混合粒を整列させて流下させる流下樋と、前記流下樋から吐出される前記混合粒に光を照射する発光源と、前記発光源から光を照射された前記混合粒から、反射光及び透過光を受光することが可能な受光手段と、を有し、前記発光源は、前記混合粒の前記受光手段側に設けられて該混合粒に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、前記混合粒の前記受光手段から離れる側に設けられて該混合粒に緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段と、を備えたことを特徴とする籾判別機である。
【0014】
本願請求項2に係る発明は、前記受光手段の受光結果として、前記緑色成分の光の受光量が所定の緑色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記混合粒が玄米であると判別され、前記緑色成分の光の受光量が前記所定の緑色成分閾値よりも低く、且つ、赤色成分の光の受光量が所定の赤色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記混合粒が籾であると判別される請求項1に記載の籾判別機である。
【0015】
本願請求項3に係る発明は、前記発光源は、さらに、前記受光手段と前記混合粒とを結ぶ延長線上の位置に設けられて該混合粒のバックグラウンドに青色成分の光を照射可能な第3の照明手段を備え、前記受光手段の前記受光結果として、前記青色成分の光の受光量が所定の範囲を外れた場合は前記流下樋から吐出されたものが前記混合粒ではない異物であると判別される請求項1又は2に記載の籾判別機である。
【0016】
本願請求項4に係る発明は、前記流下樋は、少なくとも前記混合粒に光を照射される前記受光手段の観察領域まで延設され、前記発光源からの光を透過可能である請求
項1~3のいずれかに記載の籾判別機である。
【0017】
本願請求項5に係る発明は、籾摺選別機に搭載され、前記受光手段の前記受光結果に基づいて算出される脱ぷ率に応じて、脱ぷ機の調整を促す報知を行う請求項1~4のいずれかに記載の籾判別機である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、本発明の検証実験において得られた、籾は玄米に比べて緑色成分の光の透過性が悪く、赤色成分の光の反射性が高いという知見に基づいて、籾及び玄米の混合粒に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段とを設置し、それぞれの反射光及び透過光を受光手段で受光することで、従来に比べて大幅に籾及び玄米の判別精度を向上させることが可能となっている。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、受光手段における緑色成分の光の受光量が所定の緑色成分閾値よりも高い場合は吐出される混合粒が玄米であると判別され、緑色成分の光の受光量が上記所定の緑色成分閾値よりも低く、且つ、赤色成分の光の受光量が所定の赤色成分閾値よりも高い場合は流下樋から吐出された混合粒が籾であると判別されるため、複雑な判別処理を行うことなく、速やかに混合粒の種類を判別することが可能である。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、受光手段と混合粒とを結ぶ延長線上の位置に、バックグラウンドに対して青色成分の光を照射可能な第3の照明手段を備えたことにより、青色成分の光の受光量が所定の範囲を外れた場合には、混合粒以外の異物が流下樋から吐出されたことを速やかに判別することが可能となる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、流下樋を受光手段の観察領域まで延設するとともに、ガラス等の透明な素材で形成することにより、従来のような流下樋下端から混合粒を吐出させる場合に比べて、混合粒の粒に空気抵抗が生じにくく、粒の姿勢が安定するので、混合粒の判別精度を向上させることが可能となる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、本発明の籾判別機が籾摺選別機に搭載されることにより、受光手段による混合粒の判別結果に基づく脱ぷ率に応じて、脱ぷ機の調整を促す報知を、装置の管理者や操作者に対し適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の籾選別機を適用した籾摺選別機の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の籾選別機の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】本発明の籾選別機において籾及び玄米の光の反射率と光の波長との関係を示すグラフ(a)と、光の透過率と光の波長との関係を示すグラフ(b)である。
【
図4】本発明の籾選別機において籾と玄米とを判別する判別方法の一実施形態を説明するフローである。
【
図5】本発明の籾選別機における流下樋の別の実施形態を示す模式図である。
【
図6】本発明の籾選別機を適用した籾摺選別機の別の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の籾選別機を適用した籾摺選別機の概略断面図である。籾摺選別機1は、籾から籾殻(もみがら)を脱離して玄米にする籾摺部2と、該籾摺部2に付設し、籾摺部2で生じた籾と玄米とからなる混合粒から籾のみを選別・除去することのできる籾選別部3(籾選別機3)とから主要部が構成される。
【0025】
上記籾摺部2は、原料ホッパ4からなる供給部5と、供給部5の下部に配置した一対の脱ぷロール6、6及びロール間隙装置7からなるロール部8と、該ロール部8下部の選別風路9を配置して風選を行う風選部10と、該風選部10で風選された籾と玄米との混合粒を籾選別部3に移送する混合粒揚穀部11とを備えている。
【0026】
上記籾選別部3は、機体上部に、混合粒ホッパ12、振動装置13、振動トラフ14からなる振動供給機構と、傾斜状の流下樋15から構成される流下供給機構を備え、機体下部に、上記流下樋15下端の混合粒の落下軌跡(
図1中の破線部r)に対向して配置された光学検査部16(本発明の「籾判別機」に対応する。)と、該光学検査部16の検査結果に基づいて混合粒の玄米と籾との判別を行って籾のみを混合粒から排除するエジェクタ部17を備えている。
【0027】
そして、上記エジェクタ部17の下方には、落下軌跡下方で玄米を集穀する玄米集穀ホッパ18と、落下軌跡から排除された籾を回収する籾回収ホッパ19とが設けられている。さらに、上記玄米集穀ホッパ18には、機外に玄米を排出する搬送機構を備えた玄米排出部20が設けられるとともに、籾回収ホッパ19には、籾を再脱ぷするために籾を移送する搬送機構を備えた籾排出部21が設けられている。籾排出部21としては、脱ぷロール式の籾摺部2へ籾を返還することのできる揚穀機22を設けてもよい。
【0028】
図2は、籾選別部3の内部構造、特に、光学検査部16とエジェクタ部17とを拡大した模式図である。以下、
図2を参照して本発明の要部となる籾選別部3の構造を説明する。
【0029】
籾選別部3は、前述したように流下樋15の下方に配置した光学検査部16と、該光学検査部16の下方のエジェクタ部17とから主に構成されている。そして、光学検査部16には、流下樋15の下流側における籾と玄米とからなる混合粒の流下軌跡rに対向する一方側(前方側)に、フルカラーカメラ30(受光手段)が設けられて、さらに、当該フルカラーカメラ30の光軸kの流下軌跡rを挟んだ先には、バックグラウンド31が設けられている。
【0030】
また、混合粒の流下軌跡rよりもフルカラーカメラ30側には、混合粒に照明する第1の照明手段32a、32bと、混合粒の流下軌跡rよりもフルカラーカメラ30から離れる側において混合粒に照明する第2の照明手段33a、33b及び上記バックグラウンド31を照明する第3の照明手段34が光学検査部16に設けられている。なお、流下軌跡rと光軸kとの交点はフルカラーカメラ30による観察領域oとなっている。
【0031】
上記した第1の照明手段32a、32b、第2の照明手段33a、33b及び第3の照明手段34は、それぞれに単色の発光源を有しており、本実施形態では最も好適な例として、第1の照明手段32a、32bに赤色LED素子からなる光源を採用し、第2の照明手段33a、33bに緑色LED素子からなる光源を採用し、第3の照明手段34に青色LED素子からなる光源を採用している。なお、使用されるLED素子は単色のLED素子のほか、RGBLED素子を使用することも可能である。
【0032】
より詳細に説明すると、第1の照明手段32a、32bから被選別物である混合粒に対して赤色成分の光を照射すると、その反射光がフルカラーカメラ30の赤色成分の受光素子で受光されるように構成され、第2の照明手段33a、33bから被選別物である混合粒に対して緑色成分の光を照射すると、その透過光がフルカラーカメラ30の緑色成分の受光素子で受光されるように構成されている。さらに、第3の照明手段34からバックグラウンド31に対して青色成分の光を照射すると、その観察領域oに被選別物が通ったか否か、また混合粒以外の異物が通ったか否かがフルカラーカメラ30の青色成分の受光量によって判別されるように構成されている。
【0033】
なお、上記した好適な実施形態は次のような理由に裏付けられたものである。すなわち、本発明の検証実験の結果に基づいて、
図3(a)には玄米と籾における光の波長と反射率の関係が、
図3(b)には光の波長と透過率の関係がグラフで示されているが、被選別物の対象である玄米、籾ともに、その光の透過率は緑色も赤色も大きな差はない。
【0034】
一方、光の反射率を見ると、緑色よりも赤色の方が玄米と籾における反射率の差が大きいことが判る。したがって、上記のような光学的な特性に基づいて、反射光をフルカラーカメラ30に受光させることを目的とした前記第1の照明手段32a、32bには、赤色LED素子からなる光源を採用することが好ましく、より正確に被選別物である混合粒の種類を判別することが可能となる。
【0035】
また仮に、上記第1の照明手段32a、32b、第2の照明手段33a、33b及び第3の照明手段34のそれぞれに、蛍光灯のような白色の光源を用いると、反射光と透過光との両成分が合わさった情報がフルカラーカメラ30に取り込まれてしまうため、特徴量(特徴的な受光量)が検出されにくくなって判別精度が低下するおそれがある。
【0036】
なお、本実施形態では好適な例として、第1の照明手段32a、32bを赤色、第2の照明手段33a、33bを緑色、第3の照明手段34を青色という設定を行ったが、必ずしもこれに限定するものではなく、以下の表1の組み合わせとすることも可能である。
【0037】
【0038】
次に、上記した籾選別部3における籾と玄米との判別方法について説明する。前述したように、第1の照明手段32a、32b、第2の照明手段33a、33b及び第3の照明手段34として、それぞれに単色の光源を用いることで、籾と玄米との判別をより正確に行うことが可能となり、さらに、籾と玄米以外の異物の判別も可能となる。
【0039】
すなわち、観察領域oに玄米が通過した場合、
図3(a)、(b)に示されるように玄米は籾に比べて光学的に透過性が良く、反射性が低いために、フルカラーカメラ30の赤色成分(反射成分)の受光素子の受光量は低く、フルカラーカメラ30の緑色成分(透過成分)の受光素子の受光量は高くなる。
【0040】
一方、観察領域oに籾が通過した場合、籾は玄米に比べて光学的に透過性が悪く、反射性が高いために、フルカラーカメラ30の赤色成分(反射成分)の受光素子の受光量は高く、フルカラーカメラ30の緑色成分(透過成分)の受光素子の受光量は低くなる。なお、フルカラーカメラ30の青色成分の受光量は、玄米、籾ともに大きさに大きな差がないため、略一定値となる。これを表2に示す。
【0041】
【0042】
図4は前述の判別方法を実行するためのフローである。ステップ1では、フルカラーカメラ30における青色成分の受光量により、混合粒が観察領域oを通過したか否かの判別が行われる。ステップ2では、フルカラーカメラ30における緑色成分の受光量が所定の緑色成分閾値より高いか又は低いかが確認され、これにより透過性の高い玄米が通過したのか、それ以外の籾や異物が通過したのかが判別される。続いて、ステップ3では、フルカラーカメラ30における赤色成分の受光量が所定の赤色成分閾値より高いか又は低いかが確認され、これにより、籾が通過したのか、それ以外の異物が通過したのかが判別される。
【0043】
なお、上記ステップ2及びステップ3では、反射成分である赤色成分の受光量と、透過成分である緑色成分の受光量との割合(例えば、「反射成分/透過成分」の値)を算出し、この値が所定の閾値より大きいものを籾と判別し、当該所定の閾値より小さいものを玄米と判別するように構成してもよい。
【0044】
(その他の実施形態)
以上、本発明の籾判別機の一実施形態について説明したが、種々の変形が可能である。例えば、前述の実施形態では、受光手段として各色の受光素子を備えたフルカラーカメラ30を使用したが、必ずしもこのような装置に限られるものではなく、赤、緑、青それぞれに対応した単色の受光センサを使用しることが可能である。また、撮像・撮影カメラを使用することも可能であり、その場合は撮像・撮影した画像の解析処理を行って、赤色成分、緑色成分、青色成分それぞれの色成分を抽出すればよい。
【0045】
また、上記実施形態では、本発明の籾判別機を籾選別機3さらには籾摺選別機1に適用した態様について説明したが、混合粒の検査装置に適用することも可能である。
【0046】
また、
図5は、本発明の籾選別機の別の実施形態を示す模式図であり、流下樋15を長尺状に形成し、観察領域o付近の底面の一部にガラス等の透明材40を設けたものである。これにより、従来のような流下樋15の下端から混合粒を吐出させ、自由落下(自由飛行)状態で流下されるものと比べて、混合粒の粒に空気抵抗が生じにくく、粒の姿勢が安定するために、混合粒の判別精度を向上させることが可能となる。なお、上記した透明材40を設ける代わりに、スリット状の空間を設けるようにしてもよく、さらには、流下樋15をベルトコンベアで構成するようにしてもよい。
【0047】
また、
図6は、本発明の籾選別機3を適用した籾摺選別機1の別の実施形態を示す概略図である。
図6に示す籾摺選別機1は、籾摺部2としてロール式脱ぷ機に代えて遠心式(インペラ式)脱ぷ機を採用することができる。また、籾選別機3はシュート式(本実施形態の流下樋15を使用した形式)の代わりにベルト式を採用することができる。
【0048】
そして、ロール式脱ぷ機を採用したときに、籾選別機3のフルカラーカメラ30の判別結果から求められた脱ぷ率が85%以下であった場合は、(1)ロール式脱ぷ機のロール間隙調節装置を制御して、基準となる脱ぷ率85~95%に近づくように制御する。ロール間隙制御を実施して一定時間経過しても基準となる上記脱ぷ率に満たない場合、今度は、(2)籾選別機3の流量が過多のおそれがあるので、流量を絞る制御を行う。(1)、(2)を経ても、基準となる上記脱ぷ率に満たない場合は、異常判定とし、警告を装置の管理者や操作者に対して報知するようにするとよい。
【0049】
また、遠心式(インペラ式)脱ぷ機を採用したときに、籾選別機3のフルカラーカメラ30の判別結果から求められた脱ぷ率が90%以下であった場合は、(1)遠心式脱ぷ機の回転数を制御して、基準となる脱ぷ率90~95%に近づくように制御する。回転数制御を実施して一定時間経過しても基準となる上記脱ぷ率に満たない場合、今度は、(2)籾選別機3の流量が過多のおそれがあるので、流量を絞る制御を行う。(1)、(2)を経ても、基準となる上記脱ぷ率に満たない場合、異常判定とし、警告を装置の管理者や操作者に対して報知するようにするとよい。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 籾摺選別機
3 籾選別部(籾選別機)
15 流下樋
16 光学検査部(籾判別機)
17 エジェクタ部
30 フルカラーカメラ(受光手段)
31 バックグラウンド
32a、32b 第1の照明手段
33a、33b 第2の照明手段
34 第3の照明手段