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特許7318434光半導体素子、これを用いた光トランシーバ、及び光半導体素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】光半導体素子、これを用いた光トランシーバ、及び光半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0232 20140101AFI20230725BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230725BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20230725BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01L31/02 D
G02B6/12 301
G02B6/125 301
H01L31/10 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019163860
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021044316
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】下山 峰史
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220267(JP,A)
【文献】特表2016-531415(JP,A)
【文献】特開2010-212469(JP,A)
【文献】特開平05-142348(JP,A)
【文献】特開2011-053593(JP,A)
【文献】特表2006-522465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0104410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0232
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導波路と、スラブ領域を有する第2導波路とを有する方向性結合器と、
前記スラブ領域に配置される受光器と、
を有し、
前記スラブ領域は前記方向性結合器と隣接し、
前記第1導波路と前記第2導波路は、使用波長に対して透明な第1の半導体材料で形成され、
前記受光器は、前記第1の半導体材料よりもバンドギャップが狭く、かつ前記第1の半導体材料よりも屈折率の高い第2の半導体材料で形成される光吸収層と、前記光吸収層に接続される第1導電型の領域、及び第2導電型の領域を有するPINダイオードである、光半導体素子。
【請求項2】
前記スラブ領域は、前記方向性結合器と隣接する辺以外では前記第1導波路と隣接しない、
請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
光伝搬方向に沿って、前記光吸収層の開始点は、前記方向性結合器の開始点よりも後方に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1導波路は光入力導波路であり、前記光吸収層は前記第1導波路と対向する側を光導入部とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記第2の半導体材料は、長波ほど光吸光係数が小さくなる材料であることを特徴とする請求項に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第2導波路は光入力導波路であり、前記光吸収層は、光の一部を前記第2導波路から導入し、前記光の他の部分を前記第1導波路から導入することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記第2の半導体材料は、長波ほど光吸光係数が大きくなる材料であることを特徴とする請求項に記載の光半導体素子。
【請求項8】
前記方向性結合器において、前記第1導波路と前記第2導波路の間の間隔は、光の伝搬方向に沿って変化することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項9】
前記第1導波路と前記第2導波路の間は、前記第1の半導体材料よりも屈折率が2以上小さい材料で埋め込まれていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の光半導体素子を有する光トランシーバ。
【請求項11】
基板上に、第1の半導体材料で、第1導波路と、スラブ領域を有する第2導波路とで方向性結合器を形成し、前記スラブ領域は前記方向性結合器と隣接し、
前記スラブ領域に、前記第1の半導体材料よりもバンドギャップが小さく、かつ前記第1の半導体材料よりも屈折率の高い第2の半導体材料で薄膜を形成し、
前記薄膜に接続される第1導電型の領域と第2導電型の領域を設けてPINダイオードを形成する、
ことを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子、これを用いた光トランシーバ、及び光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信容量の増大に対応するため、シリコンフォトニクスと呼ばれる技術が注目され、研究・開発が進められている。シリコン(Si)基板またはSOI(Silicon-on-Insulator)基板上に光回路を形成することで、同じ基板上に形成される電子回路との集積が容易になり、光信号と電気信号の変換が効率的になる。シリコンフォトニクス技術により、光通信モジュールの小型化、大容量の通信、消費電力の低減などが期待されている。
【0003】
図1Aのように、シリコン導波路(Si-WG)にゲルマニウム受光素子(Ge-PD)を集積する構成が知られている(たとえば、特許文献1、及び特許文献2参照)。図1B図1AのX-X'断面図である。GeはSiより屈折率が高いため、Si導波路を伝搬した光は、エバネッセント型光結合によりGe層に入射する。入射光が吸収されると、フォトキャリアが生成され、バイアスの印加により光電流が取り出される。たとえば、信号電極(SIG)をn側電極として逆バイアスをかけると、電子は信号電極(SIG)に、ホールはグランド電極(GND)に引き抜かれて、光電流が流れる。
【0004】
シリコンフォトニクスとは異なる化合物半導体の受光素子では、InGaAsの導波層とInGaAsの光吸収層の間に半絶縁性のInP層を挟んで、導波層と光吸収層を、積層方向または面内方向で平行に配置する構成が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-16694号公報
【文献】特開2011-53593号公報
【文献】特開平7-79009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1A、及び図1Bに示す公知の構成では、n型半導体の電圧がp型半導体に対して高くなる外部電界、すなわち逆バイアスが印加されて、ホールはSiとGeのヘテロ界面を通過する。SiとGeのヘテロ界面で、価電子帯に生じている障壁を超えることができない一部のホールは界面に溜まり込み、受光器の応答特性が劣化する。
【0007】
また、光吸収層となる半導体の光吸収係数は波長に依存するため、光吸収係数が大きくなる波長ほど、より短距離で光が吸収されてキャリア密度が増加し、応答特性の劣化が進む。
【0008】
本発明は、光半導体素子で入射光に対する応答特性の劣化を抑制し、光電気変換効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様では、光半導体素子は、
第1導波路と、スラブ領域を有する第2導波路とを有する方向性結合器と、
前記スラブ領域に配置される受光器と、
を有し、
前記第1導波路と前記第2導波路は、使用波長に対して透明な第1の半導体材料で形成され、
前記受光器は、前記第1の半導体材料よりもバンドギャップが狭く、かつ前記第1の半導体材料よりも屈折率の高い第2の半導体材料で形成される光吸収層と、前記光吸収層に接続される第1導電型の領域、及び第2導電型の領域を有するPINダイオードである。
【発明の効果】
【0010】
光半導体素子において入射光に対する応答特性の劣化が抑制され、光電気変換効率が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】従来のGe受光器の平面模式図である。
図1B図1AのX-X'断面図である。
図2】ヘテロ界面におけるキャリア溜まり込みを説明する図である。
図3】従来構造で評価した応答特性を示す図である。
図4】実施形態の光半導体素子が適用される光トランシーバの模式図である。
図5A】実施形態の光半導体素子の平面模式図である。
図5B図5AのI-I'断面図である。
図6】方向性結合器の動作を説明する図である。
図7】偶モードと奇モードの伝搬定数の関係を示す図である。
図8】計算に用いる構造の上面図である。
図9A】d=3μm、光波長1.50μmのときの計算結果を示す図である。
図9B】d=3μm、光波長1.55μmのときの計算結果を示す図である。
図9C】d=3μm、光波長1.60μmのときの計算結果を示す図である。
図10A】d=0μm、光波長1.50μmのときの計算結果を示す図である。
図10B】d=0μm、光波長1.55μmのときの計算結果を示す図である。
図10C】d=0μm、光波長1.60μmのときの計算結果を示す図である。
図11A】d=5μm、光波長1.50μmのときの計算結果を示す図である。
図11B】d=5μm、光波長1.55μmのときの計算結果を示す図である。
図11C】d=5μm、光波長1.60μmのときの計算結果を示す図である。
図12A】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12B】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12C】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12D】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12E】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12F】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12G】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12H】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12I】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12J】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12K】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図12L】実施形態の光半導体素子の製造工程図である。
図13】光半導体素子の第1の変形例を示す図である。
図14】光半導体素子の第2の変形例を示す図である。
図15】光半導体素子の第3の変形例を示す図である。
図16】光半導体素子の第4の変形例を示す図である。
図17】光半導体素子の第5の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の具体的な構成を説明する前に、応答特性の劣化の問題を、より詳しく説明する。受光器の応答特性が低下する原因として、主としてヘテロ界面でのキャリアの溜まり込みが考えられ、また、特性劣化の度合いが光吸収係数の波長依存性によって左右される。
【0013】
図2は、ヘテロ界面でのキャリアの溜まり込みを説明する図である。図1A及び図1Bに示した構成で、GeとSiのヘテロ界面で価電子帯にエネルギー障壁が生じる。Geをn型、Siをp型としたとき、このヘテロ界面をホール(図中、白丸で模式化されている)が通過することで受光器の電気信号が取り出される。ホールは、量子トンネル効果等によってある確率で障壁を超えることができるが、一部は界面に溜まり込む。界面に溜まったホールは外部からの印加電圧を遮断し、空乏層に印加されている電界強度が低下する。
【0014】
定常状態で、空乏層内のフォトキャリアの輸送速度は電界強度に依存し、電界強度の低下によって、キャリア輸送速度が低下する。ヘテロ界面でのキャリアの溜まり込み量が多いほど電界遮蔽効果が大きくなり、輸送速度の低下の度合いも大きくなる。キャリア輸送速度の低下は、最終的に、入力光から電気信号への変換速度、すなわち受光器の応答特性の劣化を引き起こす。劣化の程度はフォトキャリアの量に依存するため、入射光の強度が大きいほど応答速度の劣化が顕著になる。
【0015】
コヒーレント光レシーバでは、局発光を用いてヘテロダインまたはホモダイン検波を行うが、受信感度を上げるために局発光の強度を高くする傾向にあり、高強度での応答特性の劣化は深刻な問題となる。
【0016】
図3は、図1A及び図1Bの構造で評価した応答特性を示す。図3の(A)は光入力強度が弱い場合の応答特性、図3の(B)は光入力強度が強い場合の応答特性である。横軸は周波数、縦軸は相対的な応答強度である。(A)と(B)の双方で、印加バイアスを0.0Vから-3.0Vまで変えて、種々の応答強度を評価する。
【0017】
低周波信号の応答強度から3dB低下する周波数を、受光器の応答帯域と呼ぶ。図3の(B)のように光入力強度が強い場合、図3の(A)と比較して応答帯域が低くなって、応答速度が低下する。一方、バイアス電圧(絶対値)を大きくすることで、応答劣化は緩和される。バイアス電圧の増大によって、Si/Ge界面のエネルギー障壁を超えるキャリアの割合が増えて、キャリアの溜まり込みが緩和されるためである。
【0018】
しかし、実際に受光器を光電子回路に実装して受信器として用いる際には、印加可能なバイアスレベルに制限があり、応答劣化を防ぐだけの高電圧を印加するのは困難である。
【0019】
次に、光吸収係数の波長依存性について説明する。光吸収層となる半導体では、単位伝搬距離当たりの光の吸収量を示す光吸収係数が波長に依存している。光吸収係数が大きくなる波長では、より短距離で光が吸収されて界面に溜まるキャリアの密度が増加し、劣化が早くなる。このように、受光器の応答特性は、波長依存性を持つ。たとえば、Geの光吸収層は、光通信で用いられる波長1.5μm帯の光子エネルギー付近にバンドギャップを有し、この波長近傍で急激に光吸収係数が変化する。1.5μm帯の短波長側では長波長側よりも光吸収係数が大きいため、入射端面の近傍でヘテロ界面にキャリアの溜まり込みが生じ、応答速度の劣化の度合いが大きくなる。
【0020】
<実施形態の構成>
実施形態では、ヘテロ界面でのキャリア溜まり込みの影響と、応答特性の波長依存性を緩和するために、受光器への光入射位置から伝搬方向に沿って、徐々に光が吸収されるように設計する。これにより、ヘテロ界面でのキャリア溜まり込みを伝搬方向に分散して、電界強度低下の影響を緩和する。
【0021】
光導波路から受光器の光吸収層への光の伝搬を緩やかにするために、光導波路と光吸収層を、これらの材料よりも屈折率が十分に小さい材料で埋め込んで、光導波路と光吸収層への光閉じ込めを強くする。上述した特許文献3の構成では、エピタキシャル成長を用いるため、導波層と光吸収層の間に挿入される中間層も半導体で形成され、屈折率差を大きくとることができない。そのため、導波層から光吸収層への光伝搬が入射端面の近傍で比較的早く進行し、キャリアの偏在を期待通りに抑制することが難しい。
【0022】
図4は、実施形態の光半導体素子10が適用される光トランシーバ1の模式図である。光トランシーバ1は、たとえばコヒーレント型の光受信器RXと光送信器TXを有する。受光器100を含む実施形態の光半導体素子10は、光受信器RXの受光部(PD)に適用される。
【0023】
光トランシーバ1は、たとえば、偏波多重の変調方式で動作する。光送信器TXでは、入力光は、X側のIQ変調器(X-IQmod)とY側のIQ変調器(Y-IQmod)において送信データで変調される。一方の変調光の偏波面が偏波ローテータ(PR)で90°回転された後に、2つの偏波は偏光ビームコンバイナ(PBC)で合波され、出力される。
【0024】
光受信器RXでは、入力光信号は偏光ビームスプリッタ(PBS)で偏波分離され、一方の偏波成分が、偏波ローテータ(PR)で偏波回転を受ける。90°ハイブリッド光ミキサ(図中、「90° Hybrid」と表記)において、各光成分と局発光との干渉によって、I成分とQ成分が抽出される。90°ハイブリッド光ミキサからの出力光は、受光部(PD)の各受光器100で検出される。図4の例では、デュアル型のバランスフォトダイオードを用いた差動出力となっているが、この例に限定されない。
【0025】
光トランシーバ1を形成する光部品のうち、合分波器(PBC、PBS)や光変調器(X-IQmod、Y-IQmod)では、過剰損失を避けるため、光を吸収しない特性が求められる。一方、光を電気に変換する受光部(PD)には、光を吸収する性質が必要である。この要求を満たす有力な組み合わせとして、たとえば、受光部PDにGe系の材料を用い、それ以外の部分にSi材料を用いて、波長1.2~1.6μmの帯域の光信号を送受信する。この波長帯の光は、Siに対して透明であり、Siよりもバンドギャップの小さいGe系の材料には吸収される。他にもこの波長帯の光を吸収する半導体材料は存在するが、GeはSiと同じIV族材料であり、III-V化合物半導体を用いる場合と比較して、製造工程での汚染の影響が少ない。実施形態では、光吸収層にGeまたはGe化合物を用いる。
【0026】
コヒーレント光レシーバでは、受信感度を高めるために局発光の強度を高くする傾向がある。後述するように、実施形態の光半導体素子10は応答特性の劣化を抑制する構成を採用しており、高強度の入射光による帯域劣化を緩和して、光電気変換効率を改善する。
【0027】
図5Aは、実施形態の光半導体素子10の平面模式図、図5Bは、図5AのI-I'断面図である。光半導体素子10は、第1導波路11と第2導波路12で形成される方向性結合器13と、受光器100を有する導波路型の光検出器である。
【0028】
第2導波路12は、その一部にスラブ領域120を有し、受光器100は、スラブ領域120に形成されている。たとえば、第1導波路11を伝搬した光は、方向性結合器13で第2導波路12に光結合し、受光器100で検出される。
【0029】
第1導波路11と、第2導波路12(スラブ領域120を含む)は、使用波長に対して透明なSiで形成されている。受光器100は、Siよりもバンドギャップが小さく、かつ屈折率の大きい半導体材料で形成された光吸収層15を有する。光吸収層15の材料として、Ge、SiGe、GeSnなどを用いることができる。図5A及び図5Bでは、Geの光吸収層15を用いる例を説明する。
【0030】
図5Bを参照すると、第1導波路11と第2導波路12は、使用波長においてSi及びGeよりも屈折率が十分に小さいクラッドで埋め込まれている。クラッドとしては、Siとの屈折率差が2以上であることが望ましく、たとえばSiO2等の絶縁層を用いる。下部クラッドとなる絶縁層32の上に第1導波路11と第2導波路12が形成されている。第1導波路11、第2導波路12、及び第2導波路12上に積層された受光器100は、SiO2等の絶縁層37で埋め込まれている。
【0031】
受光器100は、一例として、p型の不純物がドープされたp型領域121及び122と、ノンドープのGeの光吸収層15と、n型の不純物がドープされたn型の導電性領域17を有するPIN型の受光器である。n型の導電性領域17は、電極21とオーミック接触し、高濃度に不純物がドープされたp型領域122は、電極22とオーミック接触する。
【0032】
電極21を信号電極、電極22をグランド電極とし、電極21に逆バイアスを印加することで、フォトキャリアが引き抜かれ、光入射に応じた光電流が得られる。
【0033】
図5Aに戻って、第1導波路11及び第2導波路12の材料であるSiと、クラッドのSiO2との屈折率差が大きいため、導波路への光の閉じ込めが強く、方向性結合器13において、光は伝搬方向に沿って徐々に第1導波路11から第2導波路12へと伝搬する。
【0034】
方向性結合器13では、光閉じ込めの弱い長波長側の光ほど、第2導波路12への伝搬が早いという波長依存性を有する。最初に長波長側の光(λlw)が第2導波路12に結合し、伝搬につれて、短波長側の光(λsw)も第2導波路12へと光結合する。
【0035】
第2導波路12のスラブ領域120では、光吸収層15に用いられるGeはSiよりも屈折率が高いため、エバネッセント型光結合により、第2導波路12内の光が光吸収層15に導かれ、吸収されてフォトキャリアが生成される。光吸収層15のうち、第1導波路11と対向する側が、光導入部になる。
【0036】
この構成では、方向性結合器13の入力側で、光がいっきに第1導波路11から第2導波路12へ結合するのではなく、伝搬方向に沿って徐々に第2導波路12に結合する。これにより、フォトキャリアの局所的な(特に入射開始位置での)集中を抑制し、光強度を伝搬方向に分散することができる。
【0037】
図6は、方向性結合器の動作原理を説明する図である。方向性結合器で、第1導波路11と第2導波路12が、互いに近接して並行に位置し、導波路間を光が行き来する。この原理は、以下のように説明できる。各導波路が単一モード導波路である場合を考える。
【0038】
2つの導波路を合わせた系は、2つの導波路のモードの結合により生じる偶モードと奇モードの2モード導波路となる。遇モードは、実線で示すように2つの導波路の間の中心軸に対して対称なモード、奇モードは、点線で示すように中心軸に対して反対称なモードである。2モード導波路の伝搬光の強度は、太線で示すように、遇モードと奇モードの重ね合わせで表現できる。
【0039】
遇モード(伝播定数β1)と奇モード(伝播定数β2)とでは、伝播距離に対する位相変化量が異なるため、これら2つのモードの重ね合わせで表現される伝播光の強度分布は、伝搬につれて、図6のように2つの導波路間を行き来することになる。
【0040】
奇モードと偶モードの位相関係から、位置x0では、伝播光強度は第1導波路11のみに存在している。両モードの位相関係は伝播に従って変化し、位置x1で第1導波路11と第2導波路12で均等な光強度分布になる。位置x2では、第2導波路12のみに光強度が分布する。位置x3では、再び第1導波路11と第2導波路12に均等な光強度分布となる。伝播光強度が一方の導波路から他方の導波路へと完全に移る距離(図6では(x2-x0))は完全結合長Lと呼ばれ、L=π/(β1-β2)で表される。
【0041】
図7は、偶モードと奇モードの伝搬定数の関係を示す図である。横軸は、波長で規格化した導波路間隔であり、縦軸は、伝搬係数βである。偶モードの伝搬定数と奇モードの伝播定数は、2つの導波路が離れていて没交渉の時には、それぞれの導波路固有の伝播定数に一致しているが、両導波路が近づくにつれて分裂して異なる値を持つ。この伝播定数差は、光波長に対する導波路間隔が狭いほど大きくなる。横軸の導波路間隔は波長で規格化されているので、ある導波路間隔を有する方向性結合器において、長波長ほど伝播定数差が大きいということになる。L=π/(β1-β2)からも明らかなように、長波長ほどLの値が小さくなって、光強度分布は速やかに反対側の導波路へと移動する。
【0042】
方向性結合器13が持つ波長依存性を、光吸収層15の半導体が持つ光吸収係数の波長依存性に対して打ち消す方向に利用することで、受光器100の応答特性の波長依存性を抑制することができる。
【0043】
たとえば、実施例で光吸収層15として用いるGeは、波長1.2μm~1.6μm帯の光に対しては、長波ほど光吸収係数が小さい。この場合、図5Aのように、方向性結合器13の光入力導波路である第1導波路11と反対側の第2導波路12に光吸収層15を積層することで、吸収が弱い長波長側の光成分が早く光吸収層15に移行する。吸収が強い短波長側の光成分は緩やかに光吸収層15に移行する。この構成により、本来は光吸収層15で短波の光ほど早く吸収されてしまうことに起因する波長依存性を打ち消すことができる。
【0044】
実施形態の別の特徴として、伝搬方向に沿った光吸収層15の開始点は、方向性結合器13の開始点から所定距離だけ、伝搬方向の後方に配置されている。これは、方向性結合器13の開始領域では、導波路の対称性を利用して、第1導波路11から第2導波路への光結合を効率的に行って、最後まで第2導波路へ移行しない光の割合を最小限に抑え、受信感度を確保するためである。
【0045】
図8は、方向性結合器での光伝搬効果の計算に用いるモデルの上面図である。第1導波路11と第2導波路12で方向性結合器が形成される。第2導波路12のスラブ領域120に、Ge光吸収層を含む積層(Ge-mesa)が配置される。光伝搬方向で、方向性結合器の開始点P1から、Ge光吸収層の開始点P2までのオフセット距離を「d」とする。距離dと伝搬光の波長λを種々に変えて、BPM(Beam Propagation Method:ビーム伝搬法)で実施形態の構造の光伝搬状態を計算する。
【0046】
図8のモデルで、第1導波路11及び第2導波路は、SiO2上に配置されるSi導波路であり、導波路層の厚さは200nm、導波路幅を400nmとする。方向性結合器での第1導波路11と第2導波路12の間隔を100nm、Ge光吸収層の厚さを500nmとする。ここでは、簡単のため、Geの光吸収係数は光波長によらず一定値(1000cm-1)に設定する。
【0047】
図9A図9Cは、オフセット距離d=3μmのときの計算結果である。光波長をそれぞれ1.50μm、1.55μm、1.60μmと変化させる。各図で、光強度の二次元マップの伝搬方向の位置(Z)と、右側の強度プロファイルの伝搬方向の位置は対応している。
【0048】
図9A図9Cに共通して、Z=14μmの近傍で、第1導波路11を伝搬する光W11のモニタ強度が急激に低下して、第2導波路12へ光が伝搬する。光吸収層15が配置される位置の手前に、所定のオフセット量で方向性結合器のみの領域を設けることで、伝搬光の強度は、効率的に第2導波路12へ結合する。
【0049】
右側の強度プロファイルで、矢印で示すGe光吸収層の開始位置における光W12の強度に着目すると、波長が長くなるほど、第2導波路12を伝搬する光W12の立ち上がりが急峻で光強度の移行が早い。一方、短波長では光強度の移行が遅く、Ge光吸収層の開始点で光強度が比較的低く、伝搬方向に沿って徐々に光強度が移行する。すなわち、Geメサへの光の入射が穏やかになっている。
【0050】
計算では、Geの光吸収係数を一定にしているが、実際は、Geの光吸収係数は波長依存性があり、1.50μm~1.60μmの波長帯では、短波に対する光吸収係数が大きくなる。この光吸収係数の波長依存性は、図9A図9Cで示した光強度移行の波長依存性(長波ほど早くGe光吸収層へ移行する)と打ち消し合って、伝搬方向にわたってフォトキャリア密度を均一化することができる。これにより、受光器100の応答特性の波長依存性が緩和される。
【0051】
図10A図10Cは、オフセット距離d=0μmのときの計算結果である。光波長をそれぞれ1.50μm、1.55μm、1.60μmと変える。オフセット距離dがゼロということは、方向性結合器の開始点P1と、Ge光吸収層の開始点P2が伝搬方向の同じ位置にあることを意味する。
【0052】
図10A図10Cに共通して、W11のプロファイルに示されるように、第1導波路11から第2導波路12への光強度の移行が緩慢であり、Ge光吸収層の開始点位置(Z=14μm)から伝搬距離が進んでも、第2導波路12を伝搬する光W12の光強度は低い。図10A図10Cでは、かろうじて光強度が第1導波路11から第2導波路12に移るが、図10Bでは、最後まで光は第2導波路12に移り切らず、受光感度が低下する。
【0053】
これは、方向性結合器は、2つの導波路が中心軸に対して対称な場合に、一方の導波路から他方の導波路に完全に光強度が移るという性質をもつからである。オフセット距離dがゼロで対称な領域が存在しないと、Ge光吸収層へ効率的に光を入射させることができない。
【0054】
図11A図11Cは、オフセット距離d=5μmのときの計算結果である。光波長をそれぞれ1.50μm、1.55μm、1.60μmと変える。図11A図11Cに共通して、伝搬方向に沿って、Ge光吸収層の開始位置の手前でかなりの量の光が第2導波路12に移ってしまう。この場合、Ge光吸収層の開始位置に光強度が集中して受光感度は上がるが、界面に溜まり込むフォトキャリアの量も著しく増大し、伝搬方向に沿って光の強度分布を均一化することが困難になる。
【0055】
これらの計算結果から、オフセット距離dが小さいほど、Ge光吸収層の開始位置での光強度が緩和されて、伝搬方向に沿って光強度の分布が分散される。一方、オフセット距離dが大きいほど、Ge光吸収層への光強度の移行が効率的になって受光感度が高くなるが、伝搬方向に沿った光強度の均一化は難しくなる。光強度分布の均一化と受光感度は、トレードオフの関係にある。
【0056】
オフセット距離dを適切に設定することで、光吸収層での局所的な光強度の集中を緩和し、かつ、受光感度を確保することができる。図8のモデルで用いた構造の場合、オフセット距離dは0よりも大きく、5μmよりも小さいのが望ましく(0<d<5μm)、より好ましくは、1μm以上、4μm以下である。
【0057】
図12A図12Lは、実施形態の光半導体素子10の作製工程図である。ここでは、実施形態の光半導体素子10を、コヒーレント光レシーバに用いる光集積回路の一部として作製する。各工程図で、上面図とともに、I-I'断面図を示す。
【0058】
図12Aで、たとえば、Si基板31上に、SiO2層32とSiの薄膜が積層されたSOI基板を用いて、SiO2層32上に、Siの導波路パターンを形成する。Si基板31の厚さは、たとえば750μm、SiO2層32の厚さは、たとえば2μm、Si薄膜の厚さは、たとえば250nmである。電子線ビーム(EB)リソグラフィーと、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)ドライエッチングにより、Si薄膜を加工して、所望の導波路パターンを得る。
【0059】
導波路パターンは、第1導波路11と第2導波路12を含む。第1導波路11と第2導波路の所定の間隔で互いに隣接する部分で、方向性結合器13が形成される。方向性結合器13が形成される領域で、第2導波路12はスラブ領域120を有する。第1導波路11、またはスラブ領域120に接続される第2導波路12は、光入力導波路として用いられる。第1導波路11と第2導波路12の幅は、たとえば400nm、方向性結合器13における導波路間の間隔は、たとえば100nmである。
【0060】
図12Bで、フォトリソグラフィにより所定の開口42を有するレジストマスク41を形成し、イオン注入を行ってスラブ領域120(図12A参照)の一部に、p型の導電性領域121を形成する。一例として、B(ボロン)イオンを注入して、不純物濃度が2×1018cm-3となるようにする。
【0061】
図12Cで、レジストマスク41を除去し、再度フォトリソグラフィにより、開口44を有するレジストマスク43を形成して、スラブ領域120の別の一部にp+型の導電性領域122を形成する。たとえば、Bイオンを注入して、不純物濃度が1×1019cm-3となるようにする。図12Dで、レジストマスク43を除去する。
【0062】
図12Eで、たとえばCVD法により、全面にSiO2膜34を厚さ20nmに成膜し、注入した不純物を活性化するためのアニールを行う。アニールは、たとえば、1000℃の雰囲気に1分程置くことで、Si層内のドーパントが活性化される。
【0063】
図12Fで、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、SiO2膜34をパターニングして開口35を形成し、スラブ領域120のp型の導電性領域121を露出する。開口35が形成されたSiO2膜34は、Ge選択成長用のマスクとして用いられる。
【0064】
図12Gで、露出されたp型の導電性領域121に、減圧CVD(LP-CVD)法により、メサ形状のGeの光吸収層15を成長する。光吸収層15の厚さは、たとえば500nmである。Geメサの寸法は、たとえば、伝搬方向の長さ30μm、幅が5μmである。
【0065】
図12Hで、フォトリソグラフィにより、光吸収層15の上面だけを露出させるレジストマスクを形成して、たとえばPを1×1019cm-3の濃度で注入してn型の導電性領域17を形成する。その後、レジストマスクを除去する。これにより、p+型の導電性領域122と、アンドープのGeの光吸収層15と、n型の導電性領域17を有するPIN型ダイオードの受光器100が形成される。
【0066】
図12Iで、CVD法により全面にSiO2等の絶縁層37を成膜し、フォトリソグラフィにより所定の開口46を有するレジストマスク45を形成する。
【0067】
図12Jで、レジストマスク45を用いてドライエッチングを行って、n型の導電性領域17に到達するコンタクトホール38と、p+型の導電性領域122に到達するコンタクトホール39を形成する。その後、レジストマスク45を除去して、全面にAl等の金属膜49をスパッタリングする。
【0068】
図12Kで、フォトリソグラフィにより、金属膜49を残す領域のみにレジストマスク47を形成する。
【0069】
図12Lで、ドライエッチングにより金属膜49を整形して、n型の導電性領域17とオーミック接触する電極21と、p+型の導電性領域122とオーミック接触する電極22を形成する。これにより、第1導波路11と第2導波路12で形成される方向性結合器13と、第2導波路12のスラブ領域120に配置される受光器100を有する光半導体素子10が作製される。
【0070】
図13は、第1の変形例である光半導体素子10Aの平面模式図である。図5Aの構成例と異なり、図13では、第2導波路12が光入力導波路であり、いったん第1導波路11に移った長波長側の光が、徐々に第2導波路12に戻って光吸収層15に導入される。この変形例の構造を用いれば、長波ほど光吸収係数が大きな半導体材料によって光吸収層15Aを形成した場合に、好適な特性が得られる。
【0071】
入力光は、第2導波路12を伝搬する光が方向性結合器13Aに入射すると、光閉じ込めの強い短波長側の光(λsw)は、そのまま第2導波路12を伝搬して、光吸収層15Aに導かれる。
【0072】
光閉じ込めの弱い長波長側の光(λlw)は、方向性結合器13Aの入射端で、いったん第1導波路11に結合する。その後、長波に対する光吸収係数が大きい光吸収層15Aが搭載された第2導波路12へと、徐々に移行する。
【0073】
この導波路構成により、光吸収係数の波長依存性を打ち消し、伝搬方向にわたって光の吸収を均一化することができる。
【0074】
図14は、第2の変形例である光半導体素子10Bの平面模式図である。光半導体素子10Bは、方向性結合器13Bにおいて、第1導波路11Bと第2導波路12の間隔が伝搬方向に変化する。この例でも、長波に対する光吸収係数が大きい光吸収層15Bを用いる。
【0075】
第1導波路11Bは入力導波路であり、第2導波路12のスラブ領域120に受光器100が実装されている。方向性結合器13Bの入射側から伝搬方向に沿って、導波路間の間隔が徐々に狭くなっている。
【0076】
第1導波路11Bを伝搬した光は、方向性結合器13Bにおいて、光閉じ込めの弱い長波長側の光(λlw)から第2導波路12へと結合する。第1導波路11Bと第2導波路12の間隔は、伝搬方向に沿って減少するため、伝搬するほど、第2導波路12に結合する短波長の光成分(λsw)の量が増える。光吸収層15Bは、短波に対する光吸収係数が小さいため、結果として、光吸収層15Bで吸収される光強度の分布が、伝搬方向で均一化される。
【0077】
この構成により、方向性結合器13Bにおける光結合の波長依存性と、光吸収係数の波長依存性を打ち消して、光吸収層15で発生するフォトキャリアの量を伝搬方向に分散することができる。
【0078】
図15は、第3の変形例である光半導体素子10Cの平面模式図である。光半導体素子10において、第1導波路11Cと第2導波路12Cは、方向性結合器13で合流している。この例でも、長波に対する光吸収係数が大きい光吸収層15Cを用いる。
【0079】
第1導波路11Cを伝搬した光は、方向性結合器13Cにおいて、光閉じ込めの弱い長波長側の光(λlw)から第2導波路12Cへと結合する。第1導波路11Bと第2導波路12Cの間隔は、伝搬方向に沿って減少するため、伝搬するほど第2導波路12に結合する短波長の光成分(λsw)の量が増える。
【0080】
さらに、第1導波路11Cは第2導波路12Cと合流するため、最終的に、閉じ込めの強い短波長の光はすべて光吸収層15Cに吸収される。
【0081】
図15の構成は、入力された光のほぼすべてを確実に光吸収層15Cに導入することができるので、光電気変換効率の改善効果が高い。
【0082】
図16は、第4の変形例である光半導体素子10Dの断面模式図である。図5Bの光半導体素子10では、光導波路を形成するSiにp+型の導電性領域122を設け、光吸収層15を形成するGeにn型の導電性領域17を設けて、PINダイオードを実現していた。この構造ではバンドギャップの異なる第1および第2の半導体のそれぞれに導電性の極性領域が形成されていた。
【0083】
図16の光半導体素子10Dでは、Siにp+型の導電性領域122と設け、Geの光吸収層15の積層方向の上面に、n型不純物を高濃度ドープしたSiの導電性領域171を配置して、PIN構造の受光器100Dを形成する。結果として、バンドギャップの大きな第1の半導体のみに導電性の極性領域が形成される構造となる。
【0084】
作製プロセスとして、Geの光吸収層15の選択成長(図12G参照)の後に、Siの選択成長を行う。光吸収層15の上面に成長したSiのみを露出するレジストマスクを用いて、P等のn型不純物を高濃度に注入することで、n+型のSiの導電性領域171が形成される。光吸収層15を形成するGeのメサの側壁は、アンドープのSi層172で覆われる。
【0085】
図17は、第5の変形例である光半導体素子10Eの断面模式図である。図5Bでは積層方向にPINダイオードを形成していたが、図17では、Si基板31と水平な方向にPINダイオードが形成される。
【0086】
光半導体素子10Eで、スラブ領域120に形成される受光器100Eは、アンドープのGeの光吸収層151と、面内方向で光吸収層151の一方の側に配置されるp+型のGeの導電性領域173と、光吸収層151を挟んでp+型の導電性領域183と反対側に配置されるn+型のGeの導電性領域174を有する。結果として、バンドギャップの小さな第2の半導体のみに導電性の極性領域が形成される構造となる。
【0087】
作製プロセスとして、Geの光吸収層15の選択成長(図12G参照)の後に、p型の不純物を注入する領域だけを露出するレジストマスクを用いて、B等のp型の不純物を高濃度に注入する。このレジストマスクを除去し、n型の不純物を注入する領域だけを露出する別のレジストマスクを用いて、P等のn型の不純物を高濃度に注入する。
【0088】
この構成でも、方向性結合器13で長波長側の光から優先的に第2導波路12に結合する光は、エバネッセント結合で光吸収層151に入射し、伝搬方向にフォトキャリアの分布を均一化することができる。
【0089】
以上、特定の構成例に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上述した構成例に限定されず、実施例と変形例、変形例どうしの組み合わせも可能である。図16の受光器100Dと、図17の受光器100Eのどちらも、図13図15の導波路構成に適用可能である。
【0090】
いずれの場合も、光吸収層での光吸収量を伝搬方向に分散させて入射光に対する応答特性の劣化を抑制し、光電気変換効率を改善することができる。
【符号の説明】
【0091】
10、10A~10E 光半導体素子
11 第1導波路
12 第2導波路
120 スラブ領域
13,13A~13C 方向性結合器
15、15A~15C,151 光吸収層
17、171、174 n型の導電性領域(第2導電型の領域)
100、100D、100E 受光器
122,173 p型の導電性領域(第1導電型の領域)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図12I
図12J
図12K
図12L
図13
図14
図15
図16
図17