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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】システム、方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230725BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230725BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019178746
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056736
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ ポール
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第3466750(JP,B2)
【文献】特開2019-101682(JP,A)
【文献】特開2007-201309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154744(WO,A1)
【文献】特開2007-018284(JP,A)
【文献】特開2004-110564(JP,A)
【文献】特許第3631915(JP,B2)
【文献】特開2019-028586(JP,A)
【文献】特許第5023414(JP,B2)
【文献】特開2019-101923(JP,A)
【文献】特開平04-224889(JP,A)
【文献】特許第3259146(JP,B2)
【文献】国際公開第2001/008054(WO,A1)
【文献】特開平9-150349(JP,A)
【文献】特開平6-214996(JP,A)
【文献】特許第3380814(JP,B2)
【文献】特開平1-169604(JP,A)
【文献】特開2021-56736(JP,A)
【文献】特許第6647934(JP,B2)
【文献】特許第6556328(JP,B2)
【文献】特開2013-109711(JP,A)
【文献】特開2012-59032(JP,A)
【文献】特開2011-65547(JP,A)
【文献】特許第5028991(JP,B2)
【文献】特許第4241816(JP,B2)
【文献】特開2007-18274(JP,A)
【文献】特開2007-4218(JP,A)
【文献】特開2005-165899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画モデルを用いて、対象期間において製造サイトを制御するための生産計画を生成する計画部と、
前記計画モデルを用いて、前記生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する遡及計画部と、
前記生産計画および前記遡及計画に基づいて、前記対象期間における前記製造サイトの製造パフォーマンスを分析する分析部と
を備え、
前記遡及計画部は、前記複数の事象のうちの1つの事象を順次変更し、前記1つの事象に対応する、前記計画モデルに入力する1または複数の因子を、前記生産計画を生成した時点から変更して、前記遡及計画の複数のケースを生成し、
前記分析部は、前記生産計画および前記遡及計画の複数のケースに基づいて、前記製造パフォーマンスを前記事象ごとに分析する
システム。
【請求項2】
前記遡及計画部は、前記数の事象のそれぞれに対応する前記1または複数の因子以外の因子を、前記生産計画を生成した時点から変更することなく、前記遡及計画を生成する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記遡及計画部は、前記生産計画に基づいて前記製造サイトが制御された後に前記遡及計画を生成する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記分析部は、前記製造サイトにおける実際の運転に更に基づいて、前記製造パフォーマンスを分析する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記分析部は、前記生産計画および前記遡及計画に基づいて、前記計画外の複数の事象の少なくとも1つの発生に起因した、前記製造パフォーマンスの差異を分析する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記遡及計画部は、前記計画外の複数の事象の少なくとも1つの発生を遡及的に反映させた場合にとり得る最良の生産計画を、前記遡及計画として生成する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記生産計画に基づいて、前記製造サイトを制御する制御部を更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記計画モデルは線形計画モデルである、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記遡及計画部は、前記計画モデルを用いて、前記生産計画の生成後に発生した前記対象期間における前記製造サイトの操業に影響を及ぼした計画外の前記複数の事象のうちの1つの事象を前記対象期間に遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記分析部は、前記生産計画および当該生産計画に基づく制御により運転した場合の製造サイトにおける実績に基づく製造パフォーマンスの差異と、前記生産計画および前記遡及計画に基づく製造パフォーマンスの差異とに基づいて、前記対象期間における前記製造サイトの製造パフォーマンスを分析する、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
計画モデルを用いて、対象期間において製造サイトを制御するための生産計画を生成することと、
前記計画モデルを用いて、前記生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成することと、
前記生産計画および前記遡及計画に基づいて、前記対象期間における前記製造サイトの製造パフォーマンスを分析することと
を備え、
前記遡及計画を生成することは、前記複数の事象のうちの1つの事象を順次変更し、前記1つの事象に対応する、前記計画モデルに入力する1または複数の因子を、前記生産計画を生成した時点から変更して、前記遡及計画の複数のケースを生成することを含み、
前記分析することは、前記生産計画および前記遡及計画の複数のケースに基づいて、前記製造パフォーマンスを前記事象ごとに分析することを含む、方法。
【請求項12】
前記遡及計画を生成することは、前記生産計画に基づいて前記製造サイトが制御された後に前記遡及計画を生成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータにより実行されて、前記コンピュータを、
計画モデルを用いて、対象期間において製造サイトを制御するための生産計画を生成する計画部と、
前記計画モデルを用いて、前記生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する遡及計画部と、
前記生産計画および前記遡及計画に基づいて、前記対象期間における前記製造サイトの製造パフォーマンスを分析する分析部と
して機能させ、
前記遡及計画部は、前記複数の事象のうちの1つの事象を順次変更し、前記1つの事象に対応する、前記計画モデルに入力する1または複数の因子を、前記生産計画を生成した時点から変更して、前記遡及計画の複数のケースを生成し、
前記分析部は、前記生産計画および前記遡及計画の複数のケースに基づいて、前記製造パフォーマンスを前記事象ごとに分析する
プログラム。
【請求項14】
前記遡及計画部は、前記生産計画に基づいて前記製造サイトが制御された後に前記遡及計画を生成する、請求項13に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原油を精製して複数の石油製品を生産する石油精製が知られている。(例えば、非特許文献1参照)。従来、このような石油精製を行う製油所のように、比較的規模の大きな製造サイトを操業するにあたっては、企業資源計画、製造実行、および、プロセス制御等は、組織内の異なるグループ(又は、部門)が独立したシステムを用いることによって、それぞれが独自に運用されていた。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1]横溝,"石油精製技術と石油需給動向~現状と今後の見通し~",独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油・天然ガス資源情報,2017年9月20日,石油・天然ガスレビュー Vol.51 No.5,p.1-20。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当初策定した計画通りに製造サイトの操業が進行することは稀であり、実際の操業と計画との間には少なからず差異が生じる。したがって、その差異を考慮して製造サイトのパフォーマンスを分析することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、システムを提供する。システムは、計画モデルを用いて、対象期間において製造サイトを制御するための生産計画を生成する計画部を備えてよい。システムは、計画モデルを用いて、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する遡及計画部を備えてよい。システムは、生産計画および遡及計画に基づいて、対象期間における製造サイトの製造パフォーマンスを分析する分析部を備えてよい。
【0005】
遡及計画部は、計画モデルに入力する1または複数の因子を、前記計画外の複数の事象の少なくとも1つを反映させるように変更して、遡及計画を生成してよい。
【0006】
遡及計画部は、生産計画を生成した時点において考慮し得なかったアンコントローラブルな複数の事象のそれぞれに対応する1または複数の因子を、生産計画を生成した時点から変更して、遡及計画を生成してよい。
【0007】
遡及計画部は、アンコントローラブルな複数の事象のうちの1つの事象を順次変更し、1つの事象に対応する1または複数の因子を、前記生産計画を生成した時点から変更して、遡及計画の複数のケースを生成し、分析部は、生産計画および遡及計画の複数のケースに基づいて、製造パフォーマンスを事象ごとに分析してよい。
【0008】
遡及計画部は、アンコントローラブルな複数の事象のそれぞれに対応する1または複数の因子以外の因子を、生産計画を生成した時点から変更することなく、遡及計画を生成してよい。
【0009】
分析部は、製造サイトにおける実際の運転に更に基づいて、製造パフォーマンスを分析してよい。
【0010】
分析部は、生産計画および遡及計画に基づいて、計画外の複数の事象の少なくとも1つの発生に起因した、製造パフォーマンスの差異を分析してよい。
【0011】
遡及計画部は、計画外の複数の事象の少なくとも1つの発生を遡及的に反映させた場合にとり得る最良の生産計画を、遡及計画として生成してよい。
【0012】
生産計画に基づいて、製造サイトを制御する制御部を更に備えてよい。
【0013】
計画モデルは線形計画モデルであってよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、方法を提供する。方法は、計画モデルを用いて、対象期間において製造サイトを制御するための生産計画を生成することを備えてよい。方法は、計画モデルを用いて、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成することを備えてよい。方法は、生産計画および遡及計画に基づいて、対象期間における製造サイトの製造パフォーマンスを分析することを備えてよい。
【0015】
本発明の第3の態様においては、プログラムを提供する。プログラムは、コンピュータにより実行されてよい。プログラムは、コンピュータを、計画モデルを用いて、対象期間において製造サイトを制御するための生産計画を生成する計画部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、計画モデルを用いて、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する遡及計画部として機能させてよい。プログラムは、生産計画および遡及計画に基づいて、対象期間における製造サイトの製造パフォーマンスを分析する分析部として機能させてよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るシステムが一部に含まれてよい操業管理システムのトータルソリューションモデル100の一例を示す。
図2】製油所120Rにおける石油精製フローの一例を示す。
図3】本実施形態に係るシステム300のブロック図の一例を示す。
図4】本実施形態に係るシステム300が製造サイト120の製造パフォーマンスを分析するフローの一例を示す。
図5】本実施形態に係るシステム300による製造サイト120の製造パフォーマンスの分析結果の一例を示す。
図6】本実施形態に係るシステム300が製造サイト120の製造パフォーマンスを分析する別のフローの一例を示す。
図7】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
本実施形態に係るシステムは、製造サイトの操業に関し、例えば、企業資源計画(ERP:Enterprise Resource Planning)層から製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)層、および、プロセス制御システム(PCS:Process Control System)層までの各種機能を有機的に統合し、経営情報と制御情報とをつなぐことによって、生産効率の向上を実現するトータルソリューションモデルの一部の機能として実現されてよい。本実施形態に係るシステムは、例えば、このようなトータルソリューションモデルの一部において、当初生産計画を生成した計画モデルを用いて、生産計画の生成後に発生した重大な複数の事象を遡及的に反映させた生産計画を生成し、当初の生産計画、および、遡及的な生産計画に基づいて、対象期間における製造サイトのパフォーマンスを分析する。
【0020】
以下、本実施形態に係るシステムが、製油所および石油化学サイトの操業に適用される場合を一例として説明するが、これに限定されるものではない。本実施形態に係るシステムは、例えば、製油所および石油化学サイトとは異なる他の製造サイトの操業に適用されてもよい。
【0021】
図1は、本実施形態に係るシステムが一部に含まれてよい操業管理システムのトータルソリューションモデル100の一例を示す。トータルソリューションモデル100は、同一の組織に属する(同一の事業者が経営する、または、同一の事業者グループが経営する等)複数の製造サイトを一括して管理する。例えば、トータルソリューションモデル100は、同一の事業者グループがワールドワイドに経営する複数の製油所、および、複数の石油化学サイトを一括して管理してよい。本図において、トータルソリューションモデル100は、マルチサイト計画部110、m個の製油所120Ra~120Rm(「製油所120R」と総称する)、および、n個の石油化学サイト120Ca~120Cn(「石油化学サイト120C」と総称する)を備える。なお、特に区別する必要がない場合、製油所120Rおよび石油化学サイト120Cを製造サイト120と総称する。
【0022】
マルチサイト計画部110は、同一の組織に属する複数の製造サイト120のそれぞれについての生産計画を一括して生成する。一例として、マルチサイト計画部110は、製油所120Ra~120Rm、および、石油化学サイト120Ca~120Cnのそれぞれについての生産計画を、線形計画法を用いて一括して生成する。一般に、事業や意思決定の数学モデルで、ある数理的条件のもと最大の目的関数をもたらす変数値を探る問題を数理計画問題という。特に、目的関数を表す式と数理的条件を表す式とが変数の1次式で表される場合を、線形計画問題という。そして、その問題を解く手法が線形計画法である。
【0023】
より詳細には、線形計画法は、一般に、(数1)式の制約条件のもとで、(数2)式の目的関数を最大化(または、最小化)する問題を解決するための手法である。ここで、xは(数1)式によって各要素が非負に制限された(n×l)の変数行列である。また、i=1、2、または、3とすると、Aは(m×n)の係数行列であり、bは(m×l)の係数行列である。また、cは(n×l)の係数行列である。このように、線形計画法では、複数の線形方程式が用いられ、これら複数の線形方程式は、線形計画テーブルとして表される。ここで、線形計画テーブルの各エントリは、複数の変数のそれぞれに対する係数である。そして、線形計画法は、マトリックス数学を用いて複数の変数値の異なる組み合わせを繰り返し試すことによって、(数1)式で示される制約条件のもとで、(数2)式の目的関数を最大化(または、最小化)する変数値の組み合わせを導き出す。
【数1】
【数2】
【0024】
マルチサイト計画部110は、例えば、原油量、原油タイプ、原油価格、製品価格、製品デマンド、プロセスユニット可用性、および、プロセスユニット最大能力等を含むビジネス情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。なお、プロセスユニットとは、製造サイト120において、原料から製品または半製品を生産するために必要とされる各種処理、および、それに伴う付帯処理を実行するユニットをいう。ここで、このようなビジネス情報には、例えば、経営環境等によって定まる変数(例えば、原油価格等)と、経営判断等によって決定される変数(例えば、原油量等)と、が含まれる。経営環境等によって定まる変数は経営の意思によって変えることが困難であるが、経営判断等によって決定される変数は経営の意思によってある程度自由に変更することができる。マルチサイト計画部110は、このような経営判断等によって決定される変数の値を変えながら複数回マルチサイト計画処理を実行することにより、例えば"総利益"を目的関数として、当該"総利益"を最大化するような変数値の組み合わせを導き出す。そして、マルチサイト計画部110は、この場合における、例えば、オイルバランス(製造サイト120のインプットおよびアウトプット)、経済バランス(製造サイト120の全てのインプットおよびアウトプットについての価格および収入)、総利益、操業コスト・純利益、エネルギーバランス(各プロセスおよびプロセス全体における消費燃料の流量および熱量)、プロセスユニットサマリ(マテリアルバランスおよびストリームプロパティのサマリ)、マージナルバリュー(どの制約が緩和されたらより利益を出せるかを示す値)、ブレンドサマリ(各成分の量およびプロパティを含む成分の混合のサマリ)、および、これらのレポート等の情報を含む生産計画を、複数の製造サイト120のそれぞれについて生成する。
【0025】
この際、マルチサイト計画部110は、比較的長期のマルチサイト計画期間における比較的長い1または複数のマルチサイト計画インターバルごとの生産計画を、製造サイト120のそれぞれについて生成する。例えば、マルチサイト計画部110は、この先3か月の期間における各月毎の生産計画を、複数の製造サイト120のそれぞれについて生成してよい。マルチサイト計画部110は、複数の製造サイト120のそれぞれについて生成した生産計画を、複数の製造サイト120のそれぞれへ、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して供給する。
【0026】
製油所120Rは、原油を精製して複数の石油製品を生産する。製油所120Rにおける石油精製の詳細については後述する。製油所120Rは、サイト計画部130、サイトワイドシミュレーション部140、プロセスシミュレーション部150、ブレンディングシミュレーション部155、APC(Advanced Process Control)160、BPC(Blend Property Control)165、オンサイト用プロセス制御システム170、および、オフサイト用プロセス制御システム175を有する。なお、上述の説明では、これら機能部の全てが製油所120Rに設けられている場合を一例として示したが、これに限定されるものではない。これら機能部の一部、例えば、サイト計画部130、サイトワイドシミュレーション部140、プロセスシミュレーション部150、または、ブレンディングシミュレーション部155の少なくともいずれかは、製油所120Rとは異なる場所に設けられていてもよい。
【0027】
サイト計画部130は、例えば、線形計画法を用いて自身が属する製造サイト120についての生産計画を生成する。この際、サイト計画部130は、マルチサイト計画部110が生産計画を生成した際に用いたものと同じストラクチャの線形計画テーブルを用いてよい。一例として、サイト計画部130は、マルチサイト計画部110が生成した生産計画のうち、自身が属する製造サイト120についての生産計画を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。また、サイト計画部130は、マルチサイト計画部110が生産計画を生成した際に用いたビジネス情報よりも、自身が属する製造サイト120に特化したより詳細なビジネス情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。ここで、このようなより詳細なビジネス情報には、例えば、サイトレベルの運営環境等によって定まる変数と、サイトレベルの判断等によって決定される変数と、が含まれる。運営環境等によって定まる変数はサイトレベルの意思によって変えることが困難であるが、サイトレベルの判断等によって決定される変数は、サイトレベルの意思によってある程度自由に変更することができる。サイト計画部130は、例えば、マルチサイト計画部110が用いたものと同じストラクチャの線形計画テーブルを用いて、マルチサイト計画部110が生成した生産計画によって決定済みのパラメータを入力し、かつ、サイトレベルの判断等によって決定される変数の値を変えながら複数回サイト計画処理を実行することによって、例えば、"総利益"をより最大化するような変数値の組み合わせを導き出す。そして、サイト計画部130は、この場合における生産計画を、自身が属する製造サイト120に特化したより詳細な生産計画として生成する。
【0028】
この際、サイト計画部130は、マルチサイト計画部110が生成する生産計画に比べて、比較的短期のサイト計画期間における比較的短い1または複数のサイト計画インターバルごとの生産計画を、自身が属する製造サイト120について生成する。例えば、サイト計画部130は、この先1か月の期間における各週毎の生産計画を、自身が属する製造サイト120について生成してよい。サイト計画部130は、自身が生成した生産計画を、他の機能部または装置へ、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して供給する。
【0029】
また、サイト計画部130は、マルチサイト計画部110が生成した生産計画によって決定済みのパラメータを用いると自身が属する製造サイト120の生産計画に問題が生じる(例えば、総利益、生産必要高、製品品質規格、および、タンク貯蔵容量等が閾値または物理的制約条件を下回る等)場合には、その旨をマルチサイト計画部110へフィードバックして、マルチサイトでの経営判断の変更を要求してもよい。
【0030】
また、サイト計画部130は、自身が生成した生産計画に従って、製造サイト120におけるオペレーションを、例えば、日単位、または、複数日単位にスケジューリングするスケジューラとしての機能を有していてもよい。なお、上述の説明では、サイト計画部130がスケジューラとしての機能を有する場合を一例として示したが、これに限定されるものではない。製油所120Rは、スケジューラをサイト計画部130とは異なる別の機能部または装置として有していてもよい。スケジューラは、例えば、タンク情報、輸送船スケジュール、パイプラインデリバリースケジュール、ロード/レールスケジュール等を含むベーシックスケジュール情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力を介して取得する。また、サイト計画部130とは異なる別の機能部または装置として構成される場合、スケジューラは、サイト計画部130が生成した生産計画を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。そして、スケジューラは、取得した生産計画に従って、例えば、製造サイト120におけるデイリーのスケジュール情報を生成し、これを、他の機能部または装置へ、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して供給する。
【0031】
サイトワイドシミュレーション部140は、製造サイト120の運転をサイトワイドに模擬する。すなわち、サイトワイドシミュレーション部140は、製造サイト120における、入力、出力、および、処理内容に応じた応答の振る舞いをサイトワイドに模擬する。本図において、サイトワイドシミュレーション部140は、オンサイトにおけるプロセスユニットおよびオフサイトにおけるプロセスユニットの運転をサイトワイドに模擬する。ここで、オンサイトとは、例えば、製油所120Rにおける精製設備が設けられたサイトを示す。また、オフサイトとは、例えば、製油所120Rにおける精製設備以外のタンクヤード回りの設備、すなわち、原油/製品/半製品の受入、貯蔵、ブレンド、および、出荷等を行う付帯設備が設けられたサイトを示す。サイトワイドシミュレーション部140は、例えば、製造サイト120における供給フロー、製品フロー、温度・圧力、および、供給品質と製品品質のラボデータ等の情報を含むサイト情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。そして、サイトワイドシミュレーション部140は、例えば、定常状態モデルにこれらサイト情報を入力して、製造サイト120の運転を模擬し、製造サイト120における生産量、プロパティ、サイトコンディション、パフォーマンス等の情報を含むサイトワイドなシミュレーション結果を出力する。なお、定常状態モデルとは、時間的に変化しない入力に対して、時間的に変化しない一定の結果を出力するモデルをいう。この際、サイトワイドシミュレーション部140は、スケジューラが生成したスケジュール情報に少なくとも部分的に基づいて、サイトワイドなシミュレーション結果を出力してよい。すなわち、サイトワイドシミュレーション部140は、スケジューラが生成したスケジュールに少なくとも部分的に従って製造サイト120を運転した場合における、サイトワイドなシミュレーション結果を出力してよい。これに代えて、サイトワイドシミュレーション部140は、スケジューラが生成したものとは異なるスケジュールに従って製造サイト120を運転した場合における、サイトワイドなシミュレーション結果を出力してもよい。サイトワイドシミュレーション部140は、出力したサイトワイドなシミュレーション結果を、他の機能部または装置へ、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して供給する。
【0032】
プロセスシミュレーション部150は、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとの運転を模擬する。すなわち、プロセスシミュレーション部150は、オンサイトのプロセスユニット(群)における、入力、出力、および、処理内容に応じた反応の振る舞いを模擬する。プロセスシミュレーション部150は、例えば、サイト計画部130の線形計画よりも、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとに特化したより詳細なサイト情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。そして、プロセスシミュレーション部150は、例えば、定常状態モデルに、より詳細なサイト情報を入力して、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとの運転を模擬し、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとのより詳細なシミュレーション結果を出力する。この際、プロセスシミュレーション部150は、スケジューラが生成したスケジュール情報に少なくとも部分的に基づいて、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を出力してよい。すなわち、プロセスシミュレーション部150は、スケジューラが生成したスケジュールに少なくとも部分的に従ってオンサイトのプロセスユニット(群)を運転した場合における、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を出力してよい。これに代えて、プロセスシミュレーション部150は、スケジューラが生成したものとは異なるスケジュールに従ってオンサイトのプロセスユニット(群)を運転した場合における、オンサイトのプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を出力してもよい。プロセスシミュレーション部150は、出力したオンサイトのプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を、他の機能部または装置へ、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して供給する。
【0033】
ブレンディングシミュレーション部155は、オフサイトにおけるブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとの運転を模擬する。すなわち、ブレンディングシミュレーション部155は、オフサイトにおけるブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)における、入力、出力、および、処理内容に応じた反応の振る舞いを模擬する。なお、ブレンド性状制御とは、オフサイトにおいて各種成分を混ぜ合せて、規格を満足する製品を最小のコストと最大のスループットで作りこむ制御をいう。ブレンディングシミュレーション部155は、サイトワイドシミュレーション部140がサイトワイドなシミュレーション結果を出力した際に用いたサイト情報よりも、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとに特化したより詳細なサイト情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して取得する。そして、ブレンディングシミュレーション部155は、例えば、定常状態モデルに、より詳細なサイト情報を入力して、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとの運転を模擬し、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのより詳細なシミュレーション結果を出力する。この際、ブレンディングシミュレーション部155は、スケジューラが生成したスケジュール情報に少なくとも部分的に基づいて、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を出力してよい。すなわち、ブレンディングシミュレーション部155は、スケジューラが生成したスケジュールに少なくとも部分的に従ってブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)を運転した場合における、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を出力してよい。これに代えて、ブレンディングシミュレーション部155は、スケジューラが生成したものとは異なるスケジュールに従ってブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)を運転した場合における、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を出力してもよい。ブレンディングシミュレーション部155は、出力したブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果を、他の機能部または装置へ、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して供給する。
【0034】
APC160は、例えば、オンサイトにおいて高度な制御が必要なプロセスユニット(群)ごとにインプリメントされ、当該プロセスユニット(群)を制御するオンサイト用プロセス制御システム170を、より上位で制御する。APC160は、例えば、スケジューラが生成したスケジュール情報、2~3つのユニットのプロセスシミュレーションを集めた論理ユニット、または、プロセスシミュレーション部150が出力したオンサイトのプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果の少なくともいずれかに基づいて、プロセスユニット(群)を制御する指標となるターゲット値を設定してよい。そして、APC160は、当該ターゲット値に従ったフィードバック制御またはフィードフォワード制御を利用して、オンサイト用プロセス制御システム170を高度に制御することによって、当該プロセスユニット(群)におけるプロセス変動を制御する。なお、APC160は、高度な制御を必要としないプロセスについては、設けられていなくてもよい。
【0035】
BPC165は、例えば、オフサイトにおいてブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとにインプリメントされ、当該プロセスユニット(群)を制御するオフサイト用プロセス制御システム175を、より上位で制御することによって、当該プロセスユニット(群)におけるブレンド性状制御を行う。BPCは、例えば、スケジューラが生成したスケジュール情報、サイトワイドシミュレーション部140が出力したサイトワイドなシミュレーション情報、または、ブレンディングシミュレーション部155が出力したブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果の少なくともいずれかに基づいて、ブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)を制御するオフサイト用プロセス制御システム175を、より上位で制御してよい。
【0036】
オンサイト用プロセス制御システム170は、例えば、オンサイトにおけるプロセスユニット(群)ごとにインプリメントされ、コンピュータによって、当該プロセスユニット(群)のオペレーションやプロセスを自動的に管理するプロセス制御システムである。なお、ここでいうプロセス制御システムは、DCS(Distributed Control System)、SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)、デジタル制御システム、産業情報制御システム、プロセスIT、テクニカルITシステム等を含む。オンサイト用プロセス制御システム170は、例えば、スケジューラが生成したスケジュール情報、サイトワイドシミュレーション部140が出力したサイトワイドなシミュレーション結果、プロセスシミュレーション部150が出力したオンサイトのプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果、または、APC160からの制御情報の少なくともいずれかに基づいて、オンサイトのプロセスユニット(群)を制御してよい。
【0037】
オフサイト用プロセス制御システム175は、例えば、オンサイト用プロセス制御システム170と同様のシステムであってよい。オフサイト用プロセス制御システム175は、オフサイトにおけるプロセスユニット(群)ごとにインプリメントされ、コンピュータによって、当該プロセスユニット(群)のオペレーションやプロセスを自動的に管理するプロセス制御システムである。オフサイト用プロセス制御システム175は、例えば、スケジューラが生成したスケジュール情報、サイトワイドシミュレーション部140が出力したサイトワイドなシミュレーション結果、ブレンディングシミュレーション部155が出力したブレンド性状制御に係るプロセスユニット(群)ごとのシミュレーション結果、または、BPC165からの制御情報の少なくともいずれかに基づいて、オフサイトのプロセスユニット(群)を制御してよい。
【0038】
石油化学サイト120Cは、原料に化学反応を起こさせることで、合成繊維、合成樹脂、および、合成ゴム等の複数の化学製品を生産する。石油化学サイト120Cは、ブレンディングシミュレーション部155およびBPC165を有しない点を除き、製油所120Rと同様であるため、説明を省略する。
【0039】
トータルソリューションモデル100においては、1つのシステム、及び、1セットの事業プロセス及びモデルのみが存在し、これらは全て、データ又は情報転送フローによって統合される。したがって、このようなトータルソリューションモデル100は、組織内の異なるグループ間でデータが正確且つ効率的に処理されることを保証する。これにより、例えば、本社と製油所との間、および、各製油所間で情報を連携することができ、事業プロセスが合理化され、手作業が排除された大規模なシステムを実現することができる。
【0040】
図2は、製油所120Rにおける石油精製フローの一例を示す。製油所120Rでは、幅広い沸点範囲の炭化水素の混合物である原油を精製して複数の石油製品を生産する。一般に、製油所120Rでは、原油を常圧蒸留装置(CDU:Crude Distillation Unit)で蒸留し、カット温度により沸点範囲の異なる留分、すなわち、ガス留分、ナフサ留分、灯油留分、軽油留分、重油留分、および、残留分に分離する。ガス留分からは、LPガスが生産される。ナフサ留分は、ナフサ水素化脱硫装置で水素化脱硫された後、接触改質装置(CRU:Catalytic Reforming Unit)で接触改質され、脱ベンゼン装置でベンゼンが分離されて、ガソリン、ナフサ、および、芳香族等が生産される。灯油留分は、灯油水素化脱硫装置で水素化脱硫されて灯油が生産される。軽油留分は、ディーゼル脱硫装置で脱硫されて軽油が生産される。重油留分は、重油直接脱硫装置で水素が脱硫されて重油が生成される。重油留分は、また、減圧蒸留装置(VDU:Vacuum Distrillation Unit)で軽質留分および重質留分に分離される。VDUで分離された軽質留分は、重油間接脱硫装置で水素が脱硫された後、流動接触分解装置(FCC:Fluid Catalytic Cracking)で触媒分解され、FCCガソリン脱硫装置で水素が脱硫されて、ガソリンが生成される。あるいは、VDUで分離された軽質留分は、水素化分解装置(HCU:Hydrocracker Unit)で処理される。一方、VDUで分離された重質留分は、熱分解装置(Coker)で熱分解されてコークスが生産されるほか、アスファルト製造装置で処理されてアスファルトが生産される。なお、石油化学工業においては、ナフサが主原料であり、オレフィン、例えば、エチレンおよびプロピレンや、芳香族、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンの芳香族炭化水素(いわゆるBTX)が、得られる主なマテリアルである。
【0041】
トータルソリューションモデル100において、オンサイトのプロセスユニットは、例えば、製油所120Rにおける上記に挙げたこれら装置を含んでよく、オンサイト用プロセス制御システム170は、これら装置のオペレーションやプロセスを制御してよい。また、APC160は、例えば、これら装置のうち、CDU、VDU、FCC、および、CRU等、製油所120Rの操業に特に重要な装置にインプリメントされてよい。
【0042】
図3は、本実施形態に係るシステム300のブロック図の一例を示す。システム300は、例えば、図1に示すトータルソリューションモデル100の一部の機能として実現されてよい。本実施形態に係るシステム300は、当初生産計画を生成した計画モデルを用いて、生産計画の生成後に発生した重大な計画外の複数の事象を遡及的に反映させた生産計画を生成し、当初の生産計画、および、遡及的な生産計画に基づいて、対象期間における製造サイトのパフォーマンスを分析する。
【0043】
システム300は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。また、システム300は、コンピュータ内で1または複数実行可能な仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。これに代えて、システム300は、製造サイトの操業用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。また、システム300がインターネットに接続可能な場合、システム300は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
【0044】
本実施形態に係るシステム300は、計画部310、制御部320、実運転情報取得部330、遡及計画部340、および、分析部350を備える。なお、本図における各ブロックは、機能ブロックを示すものであって、実際のデバイス構成や装置構成とは必ずしも一致していなくてもよい。すなわち、本図において、別々の機能ブロックとして描かれているからといって、それらが必ずしも別々のデバイスまたは装置から構成されることに限定されるものではない。また、本図において、1つの機能ブロックとして描かれているからといって、それが必ずしも1つのデバイスまたは装置から構成されることに限定されるものではない。
【0045】
計画部310は、計画モデル315を有し、計画モデル315を用いて、対象期間において製造サイト120を制御するための生産計画を生成する。計画部310は、例えば、トータルソリューションモデル100におけるサイト計画部130であってよい。しかしながら、これに限定されるものではない。計画部310は、例えば、トータルソリューションモデル100におけるマルチサイト計画部110であってもよい。計画部310は、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介してビジネス情報を取得し、取得したビジネス情報を用いて生産計画を生成する。計画部310は、生成した生産計画を分析部350へ供給する。ここで、計画部310が生成する生産計画は、対象期間において製造サイト120を制御するためのものであってよい。計画部310は、生成した生産計画に従ったスケジュール情報を、制御部320へ供給する。計画部310は、生成した生産計画やスケジュール情報を、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して、他の機能部や装置へ供給してもよい。
【0046】
制御部320は、計画部310からスケジュール情報を取得する。そして、制御部320は、生産計画に従ったスケジュール情報に沿って、すなわち、生産計画に基づいて製造サイト120を制御する。
【0047】
実運転情報取得部330は、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介して、対象期間において製造サイト120を生産計画に基づく制御により実際に運転した場合に得られた実運転情報を、対象期間における実績として取得する。また、実運転情報取得部330は、生産計画の生成後に発生した事象であって、対象期間における製造サイト120の操業に影響を及ぼす重大な計画外の複数の事象に関する情報も併せて取得する。これについては後述する。実運転情報取得部330は、取得した実運転情報を分析部350へ供給する。また、実運転情報取得部330は、取得した事象に関する情報を遡及計画部340へ供給する。
【0048】
遡及計画部340は、計画部310と同様、ネットワーク、各種メモリデバイス、および、ユーザ入力等を介してビジネス情報を取得する。また、遡及計画部340は、実運転情報取得部330から生産計画の生成後に発生した重大な計画外の複数の事象に関する情報を取得する。そして、遡及計画部340は、計画モデル315を用いて、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つを遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する。これについても後述する。遡及計画部340は、生成した遡及計画を分析部350へ供給する。
【0049】
分析部350は、計画部310から生産計画を取得する。また、分析部350は、遡及計画部340から遡及計画を取得する。そして、分析部350は、生産計画および遡及計画に基づいて、対象期間における製造サイト120の製造パフォーマンスを分析する。そして、分析部350は、分析した結果を出力する。分析部350は、例えば、分析した結果を、モニタに表示してもよいし、データを記憶可能なメモリデバイスに出力してもよいし、ネットワークを介して他の機能部や装置へ供給してもよい。この際、分析部350は、分析した結果を、データ形式、グラフ形式、または、表形式等で出力してもよい。
【0050】
以下、これら機能部により製造サイト120の製造パフォーマンスを分析する場合について、フローを用いて詳細に説明する。
【0051】
図4は、本実施形態に係るシステム300が製造サイト120の製造パフォーマンスを分析するフローの一例を示す。
【0052】
ステップ410において、計画部310は、計画モデル315を用いて、対象期間において製造サイト120を制御するための生産計画を生成する。ここで、計画モデル315は線形計画モデルであってよい。すなわち、計画モデル315は、マトリックス数学を用いて変数値の異なる組み合わせを繰り返し試すことによって、上述の(数1)式で示される制約条件のもとで、(数2)式の目的関数を最大化(または最小化)する変数値の組み合わせを導き出す。
【0053】
計画部310は、例えば、原油量、原油タイプ、原油価格、製品価格、製品デマンド、プロセスユニット可用性、および、プロセスユニット最大能力等の情報を含むビジネス情報を、ネットワークを介して取得し、ビジネス情報を計画モデル315へ入力する。次に、計画モデル315は、上述の線形計画法を用いて、"総利益"を最大化するような変数値の組み合わせを導き出す。そして、計画部310は、この場合における、オイルバランス、経済バランス、総利益、操業コスト・純利益、エネルギーバランス、プロセスユニットサマリ、マージナルバリュー、ブレンドサマリ、および、これらのレポート等の情報を含む生産計画を生成する。そして、計画部310は、生成した生産計画を分析部350へ供給する。また、計画部310は、生成した生産計画に従ったスケジュール情報を、制御部320へ供給する。
【0054】
ステップ420において、制御部320は、ステップ410において計画部310から供給されたスケジュール情報に沿って、すなわち、生産計画に基づいて製造サイト120を制御する。
【0055】
上述したように、製造サイト120は、例えば、原油を精製して複数の石油製品を製造する製油所120Rを含んでよい。したがって、制御部320は、製油所120Rにおける常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、ナフサ水素化脱硫装置、接触改質装置、脱ベンゼン装置、灯油水素化脱硫装置、ディーゼル脱硫装置、重油脱硫装置(例えば、重油間接脱硫装置および/または重油直接脱硫装置)、流動接触分解装置、FCCガソリン脱硫装置、熱分解装置、水素化分解装置、または、アスファルト製造装置の少なくともいずれかを含むプロセスユニット(群)を制御対象としてよい。
【0056】
なお、ここでいう制御とは、制御部320が製造サイト120のプロセスユニット(群)を直接制御することに限定されるものではなく、例えば、制御部320が製造サイト120のプロセスユニット(群)を制御する指標となるターゲット値を設定することをも含む。すなわち、制御部320は、生産計画に基づいて、プロセスユニット(群)を直接制御する、または、プロセスユニット(群)を制御するAPC160、BPC165、オンサイト用プロセス制御システム170、および、オフサイト用プロセス制御システム175等においてプロセスユニット(群)を制御する指標となるターゲット値を設定する。
【0057】
ステップ430において、実運転情報取得部330は、対象期間において製造サイト120を生産計画に基づく制御により運転した場合に得られた実運転情報を、対象期間における実績として取得する。そして、実運転情報取得部330は、取得した実運転情報を分析部350へ供給する。
【0058】
また、実運転情報取得部330は、生産計画の生成後に発生した事象であって、対象期間における製造サイト120の操業に影響を及ぼす重大な計画外の複数の事象に関する情報を、ネットワークを介して取得する。
【0059】
ここで、ステップ410において、計画部310は、生産計画を生成する時点において取得済みのビジネス情報を計画モデル315に入力して、当該時点よりも将来の対象期間における生産計画を生成する。しかしながら、実際には、計画部310による生産計画の生成後に、対象期間における製造サイト120の操業に影響を及ぼす様々な計画外の事象が発生する。このような事象としては、例えば、原油価格や製品価格の暴落暴騰、プロセスユニットの予定外のシャットダウン、悪天候によるプロセスユニットの能力低下、悪天候による原油の到着の遅れ、予期した性状とは乖離した原油、および、計画外の受け払い等が挙げられる。そして、このような事象は、生産計画の生成時点において、製造サイト120の組織が考慮し得なかったアンコントローラブルな事象である。
【0060】
したがって、実運転情報取得部330は、このような、生産計画の生成時点において考慮し得なかったアンコントローラブルな事象に関する情報を取得する。そして、実運転情報取得部330は、取得した事象に関する情報を遡及計画部340へ供給する。
【0061】
ステップ440において、遡及計画部340は、ネットワークを介してビジネス情報を取得する。この際、遡及計画部340は、計画部310がステップ410において取得したものと同じビジネス情報を取得してよい。また、遡及計画部340は、実運転情報取得部330から、生産計画の生成後に発生した重大な計画外の複数の事象に関する情報を取得する。そして、遡及計画部340は、計画部310がステップ410において生産計画を生成した際に用いたものと同じ計画モデル315を用いて、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも一部を遡及的に反映させた生産計画である遡及計画を生成する。
【0062】
より詳細には、遡及計画部340は、計画モデル315に入力する1または複数の因子を、計画外の複数の事象の少なくとも1つを反映させるように変更して、遡及計画を生成する。この際、遡及計画部340は、生産計画を生成した時点において考慮し得なかったアンコントローラブルな複数の事象のそれぞれに対応する1または複数の因子を、生産計画を生成した時点から変更して、遡及計画を生成する。また、遡及計画部340は、当該アンコントローラブルな複数の事象のそれぞれに対応する1または複数の因子以外の因子を、生産計画を生成した時点から変更することなく、遡及計画を生成する。すなわち、遡及計画部340は、計画部310がステップ410において計画モデル315に入力したビジネス情報のうち、生産計画の生成時点において考慮し得なかったアンコントローラブルな複数の事象のそれぞれに対応する1または複数の因子のみを変更して、計画モデル315に再び入力する。一例として、遡及計画部340は、生産計画の生成時点において考慮し得なかった重大なアンコントローラブルな複数の事象に対応する全ての因子を、発生した重大なアンコントローラブルな複数の事象の全てを反映させるように一括して変更して、計画モデル315に入力してよい。
【0063】
そして、計画モデル315は、ステップ410と同様に、上述の線形計画法を用いて、"総利益"を最大化するような変数値の組み合わせを導き出す。このようにして、遡及計画部340は、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つの発生を遡及的に反映させた場合にとり得る最良の(ベストポッシブルの)生産計画を、遡及計画として生成する。遡及計画部340は、生成した遡及計画を分析部350へ供給する。
【0064】
ステップ450において、分析部350は、ステップ410において生成された生産計画、および、ステップ440において生成された遡及計画に基づいて、対象期間における製造サイト120の製造パフォーマンスを分析する。この際、分析部350は、1つの期間のみを対象として製造パフォーマンスを分析してもよい。これに代えて、分析部350は、ある期間までの累積を対象として製造パフォーマンスを分析してもよい。そして、分析部350は、分析した結果を出力する。分析部350は、例えば、分析した結果を、モニタに表示してもよいし、データを記憶可能なメモリデバイスに出力してもよいし、ネットワークを介して他の機能部や装置へ供給してもよい。この際、分析部350は、分析した結果を、データ形式、グラフ形式、または、表形式等で出力してもよい。
【0065】
一例として、分析部350は、生産計画および遡及計画に基づいて、生産計画の生成後に発生した計画外の複数の事象の少なくとも1つの発生に起因した、製造パフォーマンスの差異を分析してよい。分析部350は、例えば、生産計画の生成後に発生した事象の少なくとも一部の発生に起因した、"総利益"についての差異分析(バリアンスアナリシス)を行ってよい。また、この際、分析部350は、製造サイト120における実際の運転に更に基づいて、対象期間における製造サイト120の製造パフォーマンスを分析してよい。これについて、次の図を用いて詳細に説明する。
【0066】
図5は、本実施形態に係るシステム300による製造サイト120の製造パフォーマンスの分析結果の一例を示す。本図に示すように、計画部310は、例えば、+3.50$/bbl、すなわち、1バレルあたり+3.50ドルの利益を示す生産計画を生成したとする。しかしながら、対象期間において製造サイト120を、当該生産計画に基づく制御により運転した場合に、実際に製造サイト120が得た利益の実績が+3.26$/bblであったとする。この場合、分析部350は、例えば、生産計画が示す利益から実績が示す利益を減算することにより、生産計画と実績との間に-0.24$/bblの利益の差異が生じたものと分析する。
【0067】
また、例えば、生産計画を生成した時点において考慮し得なかったアンコントローラブルな複数の事象として、予期した性状とは乖離した原油が製造サイト120に到着し、計画外の受け払いが製造サイト120において発生したものとする。なお、これらアンコントローラブルな複数の事象には、生産計画よりも利益をプラス方向に変化させる事象もあれば、マイナス方向に変化させる事象も存在する。この場合、遡及計画部340は、これらアンコントローラブルな複数の事象のそれぞれに対応する複数の因子を、生産計画を生成した時点から変更して遡及計画を生成する。そして、遡及計画部340は、本図に示すように、これらアンコントローラブルな複数の事象を遡及的に反映させた場合にとり得る最良の(ベストポッシブルの)生産計画として、例えば、+3.36$/bblの利益を示す遡及計画を生成したとする。これにより、分析部350は、生産計画が示す利益から遡及計画が示す利益を減算することにより、アンコントローラブルな複数の事象の発生に起因して、-0.14$/bblの利益の差異が生じたものと分析する。
【0068】
また、分析部350は、遡及計画が示す利益から実績が示す利益を減算することにより、+0.10$/bblのコントローラブルな利益の差異が存在するものと分析する。ここで、コントローラブルな差異としては、例えば、設備の稼働率を変更することによる利益の差異、ギブアウェイ(求められた仕様を超えた石油製品)による利益の差異、および、計画との間の実プロセス収高の差異等が挙げられる。これらは、製造サイト120を操業するにあたって、製造サイト120の組織が制御し得るコントローラブルな差異である。
【0069】
分析部350は、このようにして生産計画と実績との間に生じた-0.24$/bblの利益の差異のうち、-0.14$/bbl分はアンコントローラブルな複数の事象の発生に起因して生じた利益の差異であると分析する。すなわち、分析部350は、計画よりも0.14$/bblマイナスとなってしまった分は、製造サイト120の操業をどのように最適化しても回避することができなかった、いわば、製造サイト120の組織が責任を負うべきでない差異であったと分析する。
【0070】
一方、分析部350は、生産計画と実績との間に生じた-0.24$/bblの利益の差異のうち、-0.10$/bbl分はコントローラブルな差異であると分析する。すなわち、分析部350は、計画よりも0.10$/bblマイナスとなってしまった分は、製造サイト120の操業を最適化することにより改善し得た、いわば、製造サイト120の組織が責任を負うべき差異であったと分析する。
【0071】
このように、分析部350は、生産計画の生成時点において製造サイト120の組織が考慮し得なかったアンコントローラブルな複数の事象の発生に起因した利益の差異、および、生産計画のタイムインターバル中において製造サイト120の組織が避けることのできたコントローラブルな利益の差異が、どの程度であったかをそれぞれ識別することができる。したがって、分析部350は、生産計画と実績との間に生じた利益の差異から、アンコントローラブルな複数の事象の発生に起因した利益の差異を分離することができる。同様に、分析部350は、生産計画と実績との間に生じた利益の差異から、コントローラブルな利益の差異を分離することができる。
【0072】
このように、本実施形態に係るシステム300は、実際の操業と計画との間に生じた差異を考慮して製造サイト120のパフォーマンスを分析することができる。また、本実施形態に係るシステム300は、アンコントローラブルな複数の事象の発生に起因した製造パフォーマンスの差異、および、コントローラブルな製造パフォーマンスの差異をそれぞれ識別するので、製造パフォーマンスの差異が生じた原因の所在を明らかにすることができる。これにより、本実施形態に係るシステム300を用いることによって、生産計画と実績との差異をより詳細に分析・検証し、その原因を突き止め、経営課題や改善点を明確にすることができ、今後の経営戦略に活かすことができる。また、本実施形態に係るシステム300は、先に述べたトータルソリューションモデルの一部の機能として実現されており、システム300が用いる全ての情報が、トータルソリューションモデル内で一元管理されて分析されるため、各部署で数値の行き違いが起こりにくくなる。これにより分析対象とするデータの信頼性が高まり、正しく効果的な分析を行うことができる。分析対象とするデータが正確である程、本実施形態に係るシステム300の分析結果から得られた課題や改善点が、より有意義なものとなる。
【0073】
図6は、本実施形態に係るシステム300が製造サイト120の製造パフォーマンスを分析する別のフローの一例を示す。上述の説明では、システム300が、アンコントローラブルな複数の事象に対応する全ての因子を一括して変更して計画モデル315に入力することで、アンコントローラブルな複数の事象の全てを反映させた遡及計画を1つ生成する場合を一例として示した。しかしながら、本フローにおいては、システム300は、アンコントローラブルな複数の事象のうちの1つの事象を順次変更して、遡及計画の複数のケースを生成する。本図におけるステップ610からステップ630は、図3におけるステップ310からステップ330と同一であるため、説明を省略する。
【0074】
ステップ640において、システム300は、iに1を代入する。なお、iは、アンコントローラブルな複数の事象における番号を示しており、1からNまでの自然数である。
【0075】
ステップ650において、遡及計画部340は、アンコントローラブルな複数の事象のうちのi番目の事象のみを変更し、i番目の事象に対応する1または複数の因子を、生産計画を生成した時点から変更して、ステップ440と同様の手法により遡及計画のケースを生成する。
【0076】
ステップ660において、分析部350は、i番目の事象を変更したことに起因する製造パフォーマンスを、ステップ450と同様の手法により分析する。
【0077】
ステップ670において、システム300は、iがNに一致するか否かを判定する。一致すると判定された場合、システム300は、処理を終了する。一致しないと判定した場合、システム300は、ステップ680において、iをインクリメント、すなわち、i=i+1として、処理をステップ650へ戻す。
【0078】
以降、システム300は、ステップ650からステップ680の処理を、ステップ670においてiがNに一致すると判定されるまで繰り返す。このように、本フローにおいては、遡及計画部340は、アンコントローラブルな複数の事象のうちの1つの事象(i番目の事象)を順次変更し、1つの事象に対応する1または複数の因子を、生産計画を生成した時点から変更して、遡及計画の複数のケースを生成する。また、分析部350は、生産計画および遡及計画の複数のケースに基づいて、製造パフォーマンスを事象ごとに分析する。これにより、システム300は、最終的な遡及計画であるアンコントローラブルな複数の事象に起因する製造パフォーマンスの差異を、一括して分析するのではなく、アンコントローラブルな複数の事象における各事象ごとに製造パフォーマンスの差異を分析することができ、予め策定した計画と実績との差異をより詳細に分析・検証することができる。
【0079】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0080】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0081】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0082】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0083】
図7は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0084】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0085】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0086】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0087】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0088】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0089】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0090】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0091】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0092】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0093】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0094】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0095】
100 トータルソリューションモデル
110 マルチサイト計画部
120 製造サイト
120R 製油所
120C 石油化学サイト
130 サイト計画部
140 サイトワイドシミュレーション部
150 プロセスシミュレーション部
155 ブレンディングシミュレーション部
160 APC
165 BPC
170 オンサイト用プロセス制御システム
175 オフサイト用プロセス制御システム
300 システム
310 計画部
315 計画モデル
320 制御部
330 実運転情報取得部
340 遡及計画部
350 分析部
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インターフェイス
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7