(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20230725BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230725BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20230725BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230725BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230725BHJP
H01G 9/20 20060101ALI20230725BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20230725BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/26
C08K5/07
H01L23/30 R
H01G9/20 303A
H01L31/04 560
(21)【出願番号】P 2019180697
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 有希
(72)【発明者】
【氏名】細井 麻衣
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167905(WO,A1)
【文献】特開2018-162418(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068805(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057708(WO,A1)
【文献】特開2014-210910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン系樹脂;
(B)吸湿性フィラー;
(C)金属錯体;および
(D)粘着付与剤
を含む封止用樹脂組成物であって、
(A)ポリオレフィン系樹脂が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂、および/または、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含み、封止用樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する(B)吸湿性フィラーの含有量が45質量%超であり、(C)金属錯体が、
一般式(1):
【化1】
(式中、
Mはアルミニウムまたはジルコニウムを表し、
R
1
およびR
3
はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
R
2
は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
Xは配位原子が酸素原子である単座配位子を表し、
[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の実線は共有結合を表し、
[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の破線は配位結合を表し、並びに
mは3または4の整数であり、nは1~3の整数であり、およびm>nである。)
で表される金属錯体である、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
(B)吸湿性フィラーが半焼成ハイドロタルサイトである、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリオレフィン系樹脂が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1
または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
(A)ポリオレフィン系樹脂が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂の反応物を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する(C)金属錯体の含有量が0.1~5質量%である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する(D)粘着付与剤の含有量が5~40質量%である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
電子デバイスの封止用である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
電子デバイスが有機ELデバイスまたは太陽電池である、請求項
7に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に形成された、請求項1~
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、封止用シート。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止されている、電子デバイス。
【請求項11】
電子デバイスが有機ELデバイスまたは太陽電池である、請求項
10に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封止用樹脂組成物に関し、特に有機EL(Electroluminescence)デバイスや太陽電池等の電子デバイスの封止に好適な封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、特に有機EL(Electroluminescence)デバイスや太陽電池等の水分に弱い電子デバイスを、水分等を含む外気から保護するため、吸湿性フィラーを含む樹脂組成物を用いて電子デバイスを封止する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2017/057708号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高い耐透湿性を有する封止用樹脂組成物を得る観点から、樹脂組成物中の吸湿性フィラーの含有量を増加させることが望ましいが、吸湿性フィラーの含有量を増大させると、樹脂組成物の接着性や透明性が低下するという問題が生じる。従って、本発明の目的は、耐透湿性に優れ、かつ接着性および透明性にも優れた封止用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物において、吸湿性フィラーを高い含有量で配合した場合でも、粘着付与剤と特定の金属錯体を配合した場合において、耐透湿性に加え、接着性と透明性にも優れた樹脂組成物となり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1](A)ポリオレフィン系樹脂;
(B)吸湿性フィラー;
(C)金属錯体;および
(D)粘着付与剤
を含む封止用樹脂組成物であって、封止用樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する(B)吸湿性フィラーの含有量が45質量%超であり、(C)金属錯体が、2つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子および配位原子が酸素原子である単座配位子が中心金属に結合した金属錯体である、封止用樹脂組成物。
[2](B)吸湿性フィラーが半焼成ハイドロタルサイトである、[1]に記載の封止用樹脂組成物。
[3](C)金属錯体の中心金属がアルミニウムまたはチタンである、[1]または[2]に記載の封止用樹脂組成物。
[4](C)金属錯体が、一般式(1):
【0007】
【0008】
(式中、
Mは周期表の第2周期から第6周期の金属を表し、
R1およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
R2は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
Xは配位原子が酸素原子である単座配位子を表し、
[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の実線は共有結合を表し、
[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の破線は配位結合を表し、並びに
mは3または4の整数であり、nは1~3の整数であり、およびm>nである。)
で表される金属錯体である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[5]式(1)中のMがアルミニウムまたはチタンである、[4]に記載の封止用樹脂組成物。
[6](A)ポリオレフィン系樹脂が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂、および/または、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[7](A)ポリオレフィン系樹脂が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[8](A)ポリオレフィン系樹脂が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂の反応物を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[9]樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する(C)金属錯体の含有量が0.1~5質量%である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[10]樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する(D)粘着付与剤の含有量が5~40質量%である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[11]電子デバイスの封止用である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
[12]電子デバイスが有機ELデバイスまたは太陽電池である、[11]に記載の封止用樹脂組成物。
[13]支持体と、該支持体上に形成された、[1]~[12]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、封止用シート。
[14][1]~[10]のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止されている、電子デバイス。
[15]電子デバイスが有機ELデバイスまたは太陽電池である、[14]に記載の電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐透湿性に加え、接着性および透明性にも優れた封止用樹脂組成物を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[封止用樹脂組成物]
本発明の封止用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも略称する。)は、必須成分として、(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)吸湿性フィラー、(C)金属錯体、および(D)粘着付与剤を含有する。
【0011】
<(A)ポリオレフィン系樹脂>
本発明の封止用樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)を含む。ポリオレフィン系樹脂はオレフィン由来の骨格を有するものであれば特に制限なく使用することができる。なお、オレフィンは、1個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するモノオレフィンおよび/または2個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するジオレフィンが好ましい。モノオレフィンとしては、好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン(イソブテン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンが挙げられ、ジオレフィンとしては、好ましくは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。モノオレフィンおよびジオレフィンはそれぞれ1種であっても2種以上であってよい。かかるポリオレフィン系樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂は、ホモポリマー、ランダム共重合体、またはブロック共重合体のいずれであってもよい。また、共重合体は、(i)2種以上のモノオレフィンの共重合体、(ii)モノオレフィンとジオレフィンとの共重合体、または(iii)モノオレフィンと不飽和カルボン酸エステル(例えば、メチルメタクリレート等)や芳香族ビニル(例えば、スチレン等)等のオレフィン以外のエチレン性不飽和化合物(ジエン系モノマーを除く)との共重合体等が挙げられる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂は、ポリブテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。ここで、「ポリブテン系樹脂」とは、ポリマーを構成する全オレフィンモノマー単位のうちの主単位(最大含有量単位)がブテン由来である樹脂を指し、「ポリプロピレン系樹脂」とは、ポリマーを構成する全オレフィンモノマー単位のうちの主単位(最大含有量単位)がプロピレン由来である樹脂を指す。
【0014】
なお、ポリブテン系樹脂が共重合体の場合、ブテン以外のモノマーとしては、例えば、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂が共重合体の場合、プロピレン以外のモノマーとしては、例えば、エチレン、ブテン、イソプレン等が挙げられる。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂は、封止用樹脂組成物の耐透湿性等をより向上させる観点から、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))を有するポリオレフィン系樹脂、および/または、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含むことができる。酸無水物基としては、例えば、無水コハク酸に由来する基、無水マレイン酸に由来する基、無水グルタル酸に由来する基等が挙げられる。酸無水物基は1種または2種以上を有することができる。酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂は、例えば、酸無水物基を有する不飽和化合物で、ポリオレフィン系樹脂をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、酸無水物基を有する不飽和化合物を、オレフィンとともにラジカル共重合するようにしてもよい。同様に、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和化合物で、ポリオレフィン系樹脂をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、エポキシ基を有する不飽和化合物を、オレフィンとともにラジカル共重合するようにしてもよい。
【0016】
酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂としては、酸無水物基を有するポリブテン系樹脂、酸無水物基を有するポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂としては、エポキシ基を有するポリブテン系樹脂、エポキシ基を有するポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0017】
酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂において、樹脂中の酸無水物基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。酸無水物基の濃度はJIS K 2501の記載に従い、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0018】
エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂において、樹脂中のエポキシ基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。エポキシ基濃度はJIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0019】
(A)成分は、封止用樹脂組成物の耐透湿性等をより一層向上させる観点から、ポリオレフィン系樹脂が酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む態様であることが好ましい。
【0020】
このような(A)成分は、加熱により酸無水物基とエポキシ基が反応して架橋構造を形成し得る。このように(A)成分が酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂の反応物を含む場合、本発明の樹脂組成物は耐透湿性等がより一層向上した封止層を形成し得る。なお、架橋構造の形成は樹脂組成物による封止後(すなわち、封止層の形成後)に行うこともできるが、例えば有機ELデバイス等、封止対象のデバイスが熱に弱い素子を含むものである場合、例えば封止用シートの製造時に、基材上に形成した樹脂組成物層に架橋構造を形成しておくのが望ましい。
【0021】
(A)成分が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む態様の場合、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂と酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂との反応における量比は、適切な架橋構造が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基と酸無水物基とのモル比(エポキシ基:酸無水物基)で、好ましくは100:10~100:400、より好ましくは100:25~100:350、特に好ましくは100:40~100:300である。
【0022】
(A)成分の数平均分子量は、特に限定はされないが、封止用樹脂組成物をフィルム状に加工する際のワニスの良好な塗工性と樹脂組成物における他の成分との良好な相溶性をもたらすという観点から、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がより一層好ましく、400,000以下がさらに好ましい。一方、封止用樹脂組成物のワニスの塗工時のハジキを防止し、形成される封止用樹脂組成物層の耐透湿性と機械強度を向上させるという観点から、2,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、30,000以上がさら一層好ましく、50,000以上が特に好ましい。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、測定装置として社島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0023】
以下、(A)成分の具体例を説明する。
ポリプロピレン系樹脂の具体例として、例えば、星光PMC社製「T-YP341」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)、星光PMC社製「T-YP279」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:36質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,000)、星光PMC社製「T-YP276」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:36質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:57,000)、星光PMC社製「T-YP312」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:60,900)、星光PMC社製「T-YP313」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)等が挙げられる。
【0024】
ポリブテン系樹脂の具体例として、例えば、HV-1900(JXエネルギー社製):ポリブテン(数平均分子量:2,900)、HV-300M(東邦化学工業株式会社製):無水マレイン酸変性液状ポリブテン(酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)、BASF社製「オパノールB100」(ポリイソブチレン、粘度平均分子量:1,110,000)、BASF社製「N50SF」(ポリイソブチレン、粘度平均分子量:400,000)等が挙げられる。
【0025】
本発明の封止用樹脂組成物中の(A)成分の含有量は特に制限はないが、封止用樹脂組成物としての接着性や封止層の形状保持性等の観点、またフィルム加工時の塗工性や取り扱い性(タック抑制)の観点から、該含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。また、該含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
【0026】
また、(A)成分が、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂および/またはエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む態様の場合、(A)成分全体当たりの酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂および/またはエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂の量は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは10~80質量%、さらに好ましくは15~70質量%である。
【0027】
<(B)吸湿性フィラー>
本発明の封止用樹脂組成物は、吸湿性フィラー(以下、「(B)成分」ともいう)を含む。
【0028】
(B)吸湿性フィラーは、水分を吸収する能力を有するフィラーであれば特に限定はされないが、好ましくは金属酸化物、金属水酸化物等が挙げられる。具体的には、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、焼成ハイドロタルサイト、焼成ドロマイト等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、半焼成ハイドロタルサイト等の金属水酸化物等が挙げられる。中でも、吸湿性の点から、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイトが好ましく、透明性の観点から半焼成ハイドロタルサイトが好ましい。
【0029】
以下、吸湿性フィラーとして好ましい焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトについて説明する。ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、および焼成ハイドロタルサイトに分類することができ、特に樹脂組成物の透明性や耐透湿性の観点から半焼成ハイドロタルサイトが好ましい。未焼成ハイドロタルサイトは、例えば、天然ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)に代表されるような層状の結晶構造を有する金属水酸化物であり、例えば、基本骨格となる層[Mg1-XAlX(OH)2]X+と中間層[(CO3)X/2・mH2O]X-からなる。本発明における未焼成ハイドロタルサイトは、合成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト様化合物を含む概念である。ハイドロタルサイト様化合物としては、例えば、下記式(I)および下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【0030】
[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+・[(An-)x/n・mH2O]x- (I)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+などの2価の金属イオンを表し、M3+はAl3+、Fe3+などの3価の金属イオンを表し、An-はCO3
2-、Cl-、NO3
-などのn価のアニオンを表し、0<x<1であり、0≦m<1であり、nは正の数である。)
式(I)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、M3+は、好ましくはAl3+であり、An-は、好ましくはCO3
2-である。
【0031】
M2+
xAl2(OH)2x+6-nz(An-)z・mH2O (II)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+などの2価の金属イオンを表し、An-はCO3
2-、Cl-、NO3
-などのn価のアニオンを表し、xは2以上の正の数であり、zは2以下の正の数であり、mは正の数であり、nは正の数である。)
式(II)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、An-は、好ましくはCO3
2-である。
【0032】
半焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られる、層間水の量が減少または消失した層状の結晶構造を有する金属水酸化物をいう。「層間水」とは、組成式を用いて説明すれば、上述した未焼成の天然ハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト様化合物の組成式に記載の「H2O」を指す。
【0033】
一方、焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトまたは半焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られ、層間水だけでなく、水酸基も縮合脱水によって消失した、アモルファス構造を有する金属酸化物をいう。
【0034】
未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、飽和吸水率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1重量%以上20重量%未満である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1重量%未満であり、焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、20重量%以上である。
【0035】
上記の「飽和吸水率」は、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトまたは焼成ハイドロタルサイトを天秤にて1.5g量り取り、初期質量を測定した後、大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)に設定した小型環境試験器(エスペック社製SH-222)に200時間静置した場合の、初期質量に対する質量増加率を言い、下記式(i):
飽和吸水率(質量%)=100×(吸湿後の質量-初期質量)/初期質量 (i)
で求めることができる。
【0036】
半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、好ましくは3質量%以上20質量%未満、より好ましくは5質量%以上20質量%未満である。
【0037】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、熱重量分析で測定される熱重量減少率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は15質量%未満であり、かつその380℃における熱重量減少率は12質量%以上である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、15質量%以上であり、焼成ハイドロタルサイトの380℃における熱重量減少率は、12質量%未満である。
【0038】
熱重量分析は、日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA EXSTAR6300を用いて、アルミニウム製のサンプルパンにハイドロタルサイトを5mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素流量200mL/分の雰囲気下、30℃から550℃まで昇温速度10℃/分の条件で行うことができる。熱重量減少率は、下記式(ii):
熱重量減少率(質量%)
=100×(加熱前の質量-所定温度に達した時の質量)/加熱前の質量 (ii)
で求めることができる。
【0039】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折で測定されるピークおよび相対強度比により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折により2θが8~18°付近に二つにスプリットしたピーク、または二つのピークの合成によりショルダーを有するピークを示し、低角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=低角側回折強度)と、高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=高角側回折強度)の相対強度比(低角側回折強度/高角側回折強度)は、0.001~1,000である。一方、未焼成ハイドロタルサイトは8~18°付近で一つのピークしか有しないか、または低角側に現れるピークまたはショルダーと高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度の相対強度比が前述の範囲外となる。焼成ハイドロタルサイトは8°~18°の領域に特徴的ピークを有さず、43°に特徴的なピークを有する。粉末X線回折測定は、粉末X線回折装置(PANalytical社製、Empyrean)により、対陰極CuKα(1.5405Å)、電圧:45V、電流:40mA、サンプリング幅:0.0260°、走査速度:0.0657°/s、測定回折角範囲(2θ):5.0131~79.9711°の条件で行った。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度:0.50、最小ピークチップ:0.01°、最大ピークチップ:1.00°、ピークベース幅:2.00°、方法:2次微分の最小値」の条件で行うことができる。
【0040】
未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトの具体例としては、以下のものが挙げられる。
・DHT-4C(協和化学工業社製):半焼成ハイドロタルサイト(平均粒子径:400nm、BET比表面積:15m2/g)
・DHT-4A-2(協和化学工業社製):半焼成ハイドロタルサイト(平均粒子径:400nm、BET比表面積:13m2/g)
・KW-2200(協和化学工業社製):焼成ハイドロタルサイト(平均粒子径:400nm、BET比表面積:146m2/g)
・DHT-4A(協和化学工業社製):未焼成ハイドロタルサイト(平均粒子径:400nm、BET比表面積:10m2/g)
【0041】
吸湿性フィラーの平均粒径は、特に限定されるものではないが、封止対象物への影響や耐透湿性の観点から、25μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましく、1μm以下が最も好ましい。一方、吸湿性フィラーの分散性や樹脂組成物の粘度の観点から、該平均粒径は、0.001μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。
【0042】
吸湿性フィラーの平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、吸湿性フィラーの粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、吸湿性フィラーを超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製LA-500等を使用することができる。
【0043】
なお吸湿性フィラーのうち、ハイドロタルサイトの平均粒径は、1~1,000nmが好ましく、10~800nmがより好ましい。ハイドロタルサイトの平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメディアン径である。
【0044】
また吸湿性フィラーのうち、ハイドロタルサイトのBET比表面積は、1~250m2/gが好ましく、5~200m2/gがより好ましい。ハイドロタルサイトのBET比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(Macsorb HM Model 1210 マウンテック社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0045】
(B)成分は、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0046】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの炭素数18以上の高級脂肪酸が挙げられ、中でも、ステアリン酸が好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。アルキルシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-オクタデシルジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
(B)成分の表面処理は、例えば、未処理の(B)成分を混合機で常温にて攪拌させながら、表面処理剤を添加噴霧して5~60分間攪拌することによって行なうことができる。混合機としては、公知の混合機を使用することができ、例えば、Vブレンダー、リボンブレンダー、バブルコーンブレンダー等のブレンダー、ヘンシェルミキサーおよびコンクリートミキサー等のミキサー、ボールミル、カッターミル等が挙げられる。また、ボールミルなどで吸湿材を粉砕する際に、前記の高級脂肪酸、アルキルシラン類またはシランカップリング剤を混合し、表面処理する方法も可能である。表面処理剤の処理量は(B)成分の種類または表面処理剤の種類等によっても異なるが、(B)成分100質量部に対して1~10質量部が好ましい。
【0048】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、耐透湿性の観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、45質量%超である。該含有量は、好ましくは46質量%以上であり、より好ましくは48質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。該含有量の上限は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されないが、樹脂組成物の接着性、透明性の観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0049】
<(C)金属錯体>
本発明の樹脂組成物は、金属錯体(以下、「(C)成分」ともいう)を含む。本発明における(C)金属錯体としては、2つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子および配位原子が酸素原子である単座配位子が中心金属に結合した金属錯体を使用する。
【0050】
本発明において、金属錯体とは、金属原子またはイオンに他の原子、分子、イオンが結合した化学種のことである。また、配位子とは、金属原子またはイオンに結合している分子またはイオンを指す。また、当該結合に直接かかわっている原子を配位原子といい、配位原子が2つの配位子を二座配位子、配位原子が1つの配位子を単座配位子という。
【0051】
(C)成分は、2つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子(以下、「酸素・二座配位子」とも略称する)および配位原子が酸素原子である単座配位子(以下、「酸素・単座配位子」とも略称する)が中心金属に結合した構造の金属錯体であれば、特に制限されず、該構造を満たす、公知の金属錯体を使用することができる。中でも、中心金属が周期表の第2周期から第6周期の金属である金属錯体が好ましく、より好ましくは中心金属が第3周期から第5周期の金属である金属錯体であり、さらに好ましくは中心金属がAl、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、In、またはSnである金属錯体であり、さらに好ましくは中心金属がAl、Ti、またはZrである金属錯体である。樹脂組成物の透明性の観点から、特に中心金属がAl(アルミニウム)またはTi(チタン)である金属錯体が好ましい。(C)成分は1種または2種以上を使用することができる。
【0052】
酸素・二座配位子としては、例えば、下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【0054】
式(a)中、R1、R2、R3は後掲の式(1)中のそれらと同義である。
【0055】
式(a)で表される化合物は中心金属に配位する前の酸素・二座配位子を表す。なお、本発明においては、中心金属に配位した状態の酸素・二座配位子と中心金属に配位する前の酸素・二座配位子とを、特に区別せずに「酸素・二座配位子」と称することがある。当該式(a)で表される化合物の具体例は、後掲の式(1)で表される金属錯体における酸素・二座配位子の具体例と同義である。
【0056】
酸素・単座配位子としては、例えば、アルコキシドアニオン(RO-)、カルボキシレートアニオン(RCOO-)等が挙げられる。酸素・単座配位子の具体例も、後掲の式(1)で表される金属錯体における酸素・単座配位子の具体例と同義である。なお、本発明においては、中心金属に配位した状態の酸素・単座配位子、中心金属に配位する前の酸素・単座配位子(アルコール(ROH)、カルボン酸(RCOOH))を特に区別せずに、「酸素・単座配位子」と称することがある。
【0057】
また、(C)成分の金属錯体において、酸素・二座配位子の数は1以上であり、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは2である。酸素・二座配位子の数が複数の場合、それらは同一の配位子であっても、異なる配位子であってもよいが、同一の配位子が好ましい。また、酸素・単座配位子の数は1以上であり、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは2または3である。酸素・単座配位子が複数の場合、それらは同一の配位子であっても、異なる配位子であってもよいが、同一の配位子が好ましい。
【0058】
(C)成分は、下記一般式(1)で表される金属錯体(以下、式(1)の金属錯体ともいう)がより好ましい。
【0059】
【0060】
式(1)において、
Mは金属錯体の中心金属であり、周期表の第2周期から第6周期の金属を表す。好ましくは第3周期から第5周期の金属であり、より好ましくはAl、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、In、またはSnであり、さらに好ましくはAl、Ti、またはZrであり、特に好ましくはAl(アルミニウム)またはTi(チタン)である。
R1およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表す。
R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。
Xは酸素・単座配位子を表す。
【0061】
[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の実線は共有結合を表し、[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の破線は配位結合を表す。
【0062】
mは3または4の整数であり、nは1~3の整数であり、m>nである。
【0063】
R1、R2、およびR3におけるアルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基等が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0064】
上記のハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。上記の置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、モノ-またはジ-アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジブチルアミノ基)、モノ-またはジ-シクロアルキルアミノ基(例、シクロプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、モノ-またはジ-アリールアミノ基(例、フェニルアミノ基)、モノ-またはジ-アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ基)等が挙げられる。
【0065】
R1、R2、およびR3におけるアルコキシ基は、好ましくは炭素数が1~6のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子の具体例、置換基を有していてもよいアミノ基の具体例は、前述と同様である。
【0066】
R1、R2、およびR3におけるアリール基の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0067】
上記のアルケニル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。例えば、エテニル基(即ち、ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子の具体例、置換基を有していてもよいアミノ基の具体例は、前述と同様である。
【0068】
上記のアルキニル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、4-メチル-2-ペンチニル基等が挙げられる。アルキニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子の具体例、置換基を有していてもよいアミノ基の具体例は、前述と同様である。
【0069】
R1、R2、およびR3におけるアラルキル基の炭素数は、好ましくは7~16である。例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。アラルキル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子の具体例、置換基を有していてもよいアミノ基の具体例は、前述と同様である。
【0070】
R2におけるアルコキシカルボニル基は、好ましくはアルコキシの炭素数が1~6のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子の具体例は、前述のアルキル基の置換基であるハロゲン原子のそれと同様であり、置換基を有していてもよいアミノ基の具体例は、前述のアルキル基の置換基である置換基を有していてもよいアミノ基のそれと同様である。
【0071】
式中、Xで表される酸素・単座配位子は、通常、ブレンステッド酸の共役塩基であり、例えば、アルコキシドアニオン(RO-)、カルボキシレートアニオン(RCOO-)等が挙げられる。
【0072】
アルコキシドアニオン(RO-)において、有機基Rは脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。アルコキシドアニオン(RO-)としては、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、ペンチルオキシド、ヘキシルオキシド等が挙げられる。
【0073】
カルボキシレートアニオン(RCOO-)において、有機基Rは脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。カルボキシレートアニオン(RCOO-)としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のカルボン酸に対応するカルボキシレートアニオン等が挙げられる。
【0074】
式中の[ ]内が酸素・二座配位子を表す。酸素・二座配位子の具体例としては、アセチルアセトン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、アセチルアセトアルデヒド、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、5-メチル-2,4-ヘキサンジオン、5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルアセトフェノン、サリチルアルデヒド、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン、3-メトキシ-2,4-ペンタンジオン、3-シアノ-2,4-ペンタンジオン、3-ニトロ-2,4-ペンタンジオン、3-クロロ-2,4-ペンタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、サリチル酸、サリチル酸メチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。中心金属に配位した状態では、酸素・二座配位子は、それからプロトンを一つまたはそれ以上取り去った構造となる。
【0075】
式(1)の金属錯体の具体例としては以下のものが挙げられる。中心金属MがAl(アルミニウム)の金属錯体として、例えば、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミニウム9-オクタデシニルアセト-アセテートジイソプロポキシド)、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn-ブチレート、アルミニウムプロピルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムn-ブチルアセトアセテートジイソプロピレート等が挙げられる。
【0076】
また、中心金属MがTi(チタン)の金属錯体として、例えば、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンジ-n-ブトキサイド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメチルフェノキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)等が挙げられる。
【0077】
また、中心金属MがZr(ジルコニウム)の金属錯体として、例えば、ジルコニウムアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、ジルコニウムジ-n-ブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムブトキシド(アセチルアセテート)(ビスエチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0078】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物の接着性や透明性の観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また(C)成分由来のアウトガスによる封止対象への影響を抑制し易くする観点から、該含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0079】
本発明の1つの実施態様において、本発明の樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.3~3質量%である。
【0080】
本発明の(C)成分とは異なる金属錯体、例えば、酸素・二座配位子が中心金属に結合した金属錯体であっても、その中心金属に酸素・単座配位子が結合していない金属錯体や、酸素・単座配位子が中心金属に結合した金属錯体であっても、その中心金属に酸素・二座配位子が結合していない金属錯体を配合しても、目的の優れた接着性、透明性および耐透湿性を兼ね備えた樹脂組成物を実現することができない。その理由は必ずしも明らかではないが、本発明の(C)成分である酸素・二座配位子および酸素・単座配位子が中心金属に結合した構造を有する金属錯体は、加水分解されやすい酸素・単座配位子を有するため、(B)成分である吸湿性フィラーの表面を修飾しやすく、(B)成分を樹脂組成物中に十分に分散させることができ、さらに、樹脂組成物が封止対象に貼合すると、酸素・二座配位子が、封止対象の表面に存在するガラス、プラスチック、無機膜等の表面の官能基とキレート交換して強固な結合を生じ、(B)成分を高い含有量で配合した場合でも、耐透湿性に加え、接着性および透明性にも優れた樹脂組成物になると推測される。
【0081】
<(D)粘着付与剤>
本発明の封止用樹脂組成物は、粘着付与剤(以下、「(D)成分」とも略称する)」を含む。
【0082】
粘着付与剤は、特に限定されず、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂等、クマロン樹脂、インデン樹脂、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、水添脂環式石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン(以下、「DCPD」とも略称する)系石油樹脂、水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂等)等が挙げられるが、接着性および透明性の観点から、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂がより好ましく、水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂が特に好ましい。
【0083】
樹脂組成物中の(D)成分の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物の接着性等の観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また高温領域における接着安定性等の観点から、該含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0084】
本発明の1つの実施態様において、本発明の樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~30質量%であり、さらに好ましくは15~25質量%である。
【0085】
<(E)添加剤>
本発明の効果を損なわない範囲内で、本発明の樹脂組成物には、鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブファクチス、脂肪酸、脂肪酸塩、合成有機化合物、合成オイル等の軟化剤;硬化剤;ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤またはレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤;オルベン、ベントン等の増粘剤;酸化防止剤;熱安定剤;光安定剤等の添加剤を配合することができる。また、吸湿性フィラー以外の無機フィラーを配合してもよい。このような無機フィラーとしては、例えば、シリカ、マイカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。
【0086】
<(F)硬化剤および/または硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、例えばエポキシ基を有するポリイソブチレン系樹脂等を含む等の場合において、硬化剤および/または硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化剤および/または硬化促進剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化剤としては、例えばイミダゾール化合物、3級・4級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、有機ホスフィン化合物、1級・2級アミン系化合物等挙げられる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級・4級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0087】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としてのイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0088】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としての3級・4級アミン系硬化剤としては、特に制限はないが、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩等のジアザビシクロ化合物;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール(TAP)等の3級アミンおよびそれらの塩、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア等のジメチルウレア化合物;等が挙げられる。
【0089】
本発明における硬化剤としての1級・2級アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミンであるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等、脂環式アミンであるN-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等、芳香族アミンであるジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。1級・2級アミン系化合物の具体例としては、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)等が挙げられる。
【0090】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としてのジメチルウレア化合物の具体例としては、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0091】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としての有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0092】
樹脂組成物中の硬化剤および/または硬化促進剤の含有量は特に制限はないが、封止層(樹脂組成物層)の透明性等の低下を防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。一方、封止層のタックを抑制させるという観点から、該含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。
【0093】
<(G)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物には、例えば、後述の支持体上に樹脂組成物の層が形成された封止用シートを作製する際の樹脂組成物の塗工性等の観点から、有機溶剤を配合することができる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。かかる有機溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤の量は、特に限定されないが、塗工性の観点から樹脂組成物の粘度(25℃)が300~2000mPa・sとなる量を使用するのが好ましい。
【0094】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上述の成分(少なくとも(A)成分~(D)成分を含む)を、混練ローラーや回転ミキサーなどを用いて混合することによって製造することができる。
【0095】
<封止用シート>
例えば、有機溶剤を配合してワニス状にした本発明の樹脂組成物を支持体上に塗布し、得られた塗膜を加熱あるいは熱風吹きつけ等で乾燥することにより、支持体上に本発明の樹脂組成物の層が形成されたシートである封止用シートが得られる。樹脂組成物に、(A)成分として、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂およびエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を使用して調製した封止用シートの場合、その調製時に、酸無水物基とエポキシ基とを反応させて、架橋構造を形成しておくことで、樹脂組成物の層の耐透湿性が高まり、封止性能(空気中の水分や酸素の遮断性能等)がより高い封止用シートが得られる。
【0096】
封止用シートに使用する支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETが好ましい。また支持体はアルミ箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔であってもよい。支持体はマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい(以下、「離型処理が施された支持体」を「剥離性支持体」とも称す)。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。本発明において支持体が離型層を有する場合、該離型層も支持体の一部とみなす。支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~125μmである。
【0097】
剥離性支持体は、本発明の樹脂組成物の層が形成される側の片面に離型処理が施された支持体であり、封止用シートを実際に封止構造の形成に使用する前に剥離される支持体である。このため、剥離性支持体には必ずしも防湿性は必要ではないが、封止用シートが封止に供されるまでの保管期間の樹脂組成物の層への水分の侵入を防止する観点からは、防湿性を有することが好ましい。封止用シートの防湿性を向上させるために、バリア層を有するプラスチックフィルムを支持体として用いてもよい(以下、かかるバリア層を有するプラスチックフィルムを「防湿性支持体」とも称す)。このバリア層としては、例えば、窒化ケイ素等の窒化物、酸化アルミニウム等の酸化物、ステンレス箔、アルミ箔の金属箔等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、上述のプラスチックフィルムが挙げられる。バリア層を有するプラスチックフィルムは市販品を使用してもよい。また、防湿性支持体は金属箔とプラスチックフィルムを複合ラミネートしたフィルムであってもよい。例えば、アルミ箔付きポリエチレンテレフタレートフィルムの市販品としては、東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、福田金属社製「PETツキAL3025」等が挙げられる。また、2層以上の複層構造を有するもの、例えば、上記のプラスチックフィルムと上記の金属箔とを接着剤を介して張り合わせたものも使用できる。このものは安価であり、ハンドリング性の観点からも有利である。
【0098】
封止用シートにおいて、樹脂組成物の層は、保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムは、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また、保護フィルムもマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。保護フィルムの厚さは特に制限されないが、通常1~150μm、好ましくは10~100μmである。
【0099】
封止用シートは、支持体に、防湿性を有し、かつ、透過率の高い支持体を使用すれば、封止用シートを、封止対象にラミネートすることで、高い耐透湿性を備えた封止構造を形成することができる。このような、防湿性を有し、かつ、透過率の高い支持体としては、表面に酸化ケイ素(シリカ)、窒化ケイ素、SiCN、アモルファスシリコン等の無機物を蒸着させたプラスチックフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETが好ましい。市販されている防湿性を有するプラスチックフィルムの例としては、テックバリアHX、AX、LX、Lシリーズ(三菱樹脂社製)やさらに防湿効果を高めたX-BARRIER(三菱樹脂社製)等が挙げられる。支持体として、2層以上の複層構造を有するものを使用しても良い。
【0100】
なお、剥離性支持体を有した封止用シートの場合、封止用シートを封止対象にラミネート後、支持体を剥離して、別途用意した封止基材(防湿性を有するプラスチックフィルム、銅箔、アルミニウム箔などの金属箔)をラミネートすることができる。
【0101】
本発明の封止用シートの支持体には円偏光板を使用することができる。一般に円偏光板は偏光板と1/4波長板により構成される。円偏光板を支持体として使用する場合は、一般に1/4波長板が樹脂組成物層側に配置される。また、円偏光板と防湿性支持体の双方を含む支持体を用いる場合、好ましくは防湿性支持体が樹脂組成物層側に配置され、円偏光板の1/4波長板が防湿性支持体側に配置される。防湿性支持体と円偏光板は接着剤等により接着することができ、接着剤としては、透明性の高い接着剤であれば特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤等が使用される。
【0102】
なお、円偏光板には、偏光子(偏光板)を保護する保護フィルムを設けることができ、この保護フィルムも公知のものを使用することができ、例えば、特開2016-105166号公報や国際公開2014/003189号パンフレット等に記載の保護フィルムを挙げることができる。
【0103】
本発明の封止用シートにおいて、支持体は、剥離性支持体、防湿性支持体および円偏光板から選ばれる少なくとも一つで構成されていることが好ましい。
【0104】
<電子デバイス>
本発明の樹脂組成物によって、電子デバイスを封止する場合、上記封止用シートを用いて封止を行うのが好適である。すなわち、封止構造を設ける電子デバイス部分に本発明の封止用シートをラミネートすることで、本発明の封止用樹脂組成物で封止された電子デバイスが得られる。
【0105】
本発明の封止用樹脂組成物は、耐透湿性に優れ、接着性および透明性にも優れるため、電子デバイス、特にこられの特性が求められる有機ELデバイスや太陽電池等の電子デバイス用の封止用樹脂組成物として好適に用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、成分および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」を意味する。
【0107】
実施例および比較例に用いた原料は以下の通りである。
(A)ポリオレフィン系樹脂
・T-YP312(星光PMC社製):無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン単位/ブテン単位=71%/29%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:60,900)の40%トルエン溶液
・T-YP313(星光PMC社製):グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン単位/ブテン単位=71%/29%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)の40%トルエン溶液
・T-YP341(星光PMC社製):グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(プロピレン単位/ブテン単位:71%/29%、グリシジル基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)の20%シリコーン溶液
・HV-1900(JXエネルギー社製):ポリブテン(数平均分子量:2,900)
・HV-300M(東邦化学工業株式会社製):無水マレイン酸変性液状ポリブテン(酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)
【0108】
(B)吸湿性フィラー
・DHT-4C(協和化学工業社製):半焼成ハイドロタルサイト(表1中、「半焼成HT」と略記する)(平均粒子径:400nm、BET比表面積:15m2/g)
【0109】
(C)金属錯体
・アルミキレートM(川研ファインケミカル社製):アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート
・KR38S(味の素ファインテクノ社製):イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート
・オルガチックスZC540(マツモトファインケミカル社製):ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート
・オルガチックスZC320(マツモトファインケミカル社製):ステアリン酸ジルコニウム
【0110】
(D)粘着付与剤
・アルコンP125(荒川化学社製):シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂、軟化点125℃
・T-REZ HA125(東燃ゼネラル社製):水添DCPD型炭化水素樹脂(軟化点125℃)
【0111】
(F)硬化剤
・アニオン重合型アミン系硬化剤(2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、以下「TAP」と略記する。)
【0112】
(G)有機溶剤
・トルエン
【0113】
その他
・スワゾール#1000(丸善石油社製):芳香族系混合溶剤
【0114】
以下の手順で樹脂組成物のワニスを表1に示す配合比にて調製した後、封止用シートを作製した。
<実施例1>
シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂(アルコンP125、60%スワゾール溶液)77部に、無水マレイン酸変性液状ポリイソブチレン(HV-300M)35部、ポリブテン(HV-1900)60部、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)1.5部および半焼成ハイドロタルサイト(DHT-4C)270部を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン-ポリブテン共重合体(T-YP341、20%シリコーン溶液)40部、アニオン重合型アミン系硬化剤(TAP)0.5部およびトルエン170部を配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを得た。ワニスをシリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)(以下PETフィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて均一に塗布し、140℃で30分間加熱することにより、厚さ20μmの樹脂組成物層(樹脂組成物層中の残留溶媒量:約1質量%)を形成し、次いで、カバーフィルム(シリコーン系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm))を貼り合わせて封止用シートを得た。
【0115】
<実施例2>
アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)1.5部の代わりにジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート(オルガチックスZC540)1.5部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0116】
<実施例3>
シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂(アルコンP125、60%シリコーン溶液)77部の代わりに水添DCPD型炭化水素樹脂(T-REZ HA125)77部を用い、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)の添加量を1部とし、かつ半焼成ハイドロタルサイト(DHT-4C)の添加量を200部としたこと以外は実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0117】
<実施例4>
ポリブテン(HV-1900)を添加せず、かつシクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂(アルコンP125、60%シリコーン溶液)の添加量を137部としたこと以外は実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0118】
<実施例5>
アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)の添加量を1.8部とし、かつ半焼成ハイドロタルサイト(DHT-4C)の添加量を350部としたこと以外は実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0119】
<実施例6>
シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂(アルコンP125、60%シリコーン溶液)77部に、ポリブテン(HV-1900)95部、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)1部、および半焼成ハイドロタルサイト(DHT-4C)200部を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン-ポリブテン共重合体(T-YP312、40%トルエン溶液)20部、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(T-YP313、40%トルエン溶液)20部、アニオン重合型アミン系硬化剤(TAP)0.5部およびトルエン170部を配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0120】
<比較例1>
アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)1部の代わりにイソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート(KR38S)1部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、封止用シートを得た。
【0121】
<比較例2>
アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)1.5部の代わりにステアリン酸ジルコニウム(オルガチックスZC320)1.5部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0122】
<比較例3>
アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、封止用シートを得た。
【0123】
<比較例4>
アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(アルミキレートM)を添加せず、かつ半焼成ハイドロタルサイト(DHT-4C)の添加量を100部としたこと以外は実施例6と同様にして、封止用シートを得た。
【0124】
<測定方法・評価方法>
各種測定方法・評価方法について以下に説明する。
【0125】
<接着性の評価>
実施例および比較例で作製した封止用シート(長さ50mm、幅20mmに裁断したもの)のカバーフィルムを剥離し、樹脂組成物層をバッチ式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製、V-160)を用いて、長さ100mmおよび幅25mmのアルミ箔/PET複合フィルム「PETツキAL1N30」(アルミ箔:30μm、PET:25μm:東洋アルミ販売社製商品名)にラミネートした。ラミネートは、温度80℃、時間300秒、圧力0.3MPaの条件で行った。そしてPETフィルムを剥離し、露出した樹脂組成物層上に、さらにガラス板(長さ76mm、幅26mm、厚さ1.2mm、マイクロスライドガラス)を上記と同じ条件でラミネートした。得られた積層体について、アルミ箔/PET複合フィルムの長さ方向に対して、180度方向に、引張り速度を300mm/分として剥離したときのピール強度により接着性を測定した。
良好(○):ピール強度が0.2kgf/cm以上
不良(×):ピール強度が0.2kgf/cm未満
【0126】
<透明性の評価>
実施例および比較例で作製した封止用シートを長さ50mmおよび幅20mmにカットし、カバーフィルムを剥離した後、樹脂組成物層をガラス板(長さ76mm、幅26mmおよび厚さ1.2mmのマイクロスライドガラス;松浪ガラス工業社製白スライドグラスS1112 縁磨No.2)にバッチ式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製、V-160)を用いてラミネートし、評価用サンプルを得た。ラミネート条件は、温度80℃、減圧時間30秒の後、圧力0.3MPaにて30秒加圧であった。封止用シートのPETフィルムを剥離し、スガ試験機社製ヘーズメーターを用いて、空気をリファレンスとしてD65光にて評価用サンプル(厚み20μm)のヘイズを測定し、以下の基準で透明性を評価した。
良好(○):ヘイズが3.5%未満
不良(×):ヘイズが3.5%以上
【0127】
<耐透湿性の評価>
各実施例および比較例で、シリコーン系離型剤で処理されたPETフィルム(支持体)の代わりに、アルミ箔/PET複合フィルム「PETツキAL1N30」(アルミ箔:30μm、PET:25μm、東海東洋アルミ販売社の商品名)を用いたこと以外は各実施例および比較例と同様にして、封止用シートを得た。
【0128】
カルシウムを蒸着した無アルカリガラスを有機ELデバイスの発行面のモデルとして使用し、有機ELデバイスの発光面積減少開始時間を測定することにより、各封止用シートの耐透湿性を評価した(カルシウム(Ca)試験)。無アルカリガラス50mm×50mm角を、煮沸したイソプロピールアルコールで5分間洗浄し、150℃において30分以上乾燥した。当該ガラスを用い、端部からの距離を3mmとしたマスクを使用し、カルシウム(純度99.8%)を蒸着した(厚さ300nm)。各実施例および比較例と同じ樹脂組成物層を有する封止用シートをグローブボックス内で130℃で1時間加熱した後、カルシウムを蒸着した無アルカリガラスをグローブボックス内で熱ラミネーター(フジプラ社製 ラミパッカーDAiSY A4(LPD2325)にて、各封止用シートと貼りあわせて、積層体(評価用サンプル)を調製した。
【0129】
カルシウムが水と接触して酸化カルシウムになると白色から透明になる。そのため、評価用サンプルへの水分侵入は、評価用サンプルの端部から白色を呈するカルシウムまでの距離(mm)を測定することによって評価できる。そのため、カルシウムを含む評価用サンプルを、有機ELデバイスの発光面のモデルとして使用した。
【0130】
まず、評価用サンプルの端部から蒸着したカルシウムの距離をミツトヨ社製Measuring Microscope MF-Uにより測定し、この値を初期値とした。次いで、温度85℃、85%RHに設定した小型環境試験器(エスペック社製SH-222)に評価用サンプルを一定時間静置し、一定時間時間ごとに、評価用サンプルの端部からカルシウムまでの距離を測定した。以下のフィックの拡散式:
【0131】
【0132】
(式中、Xは、評価用サンプルの端部からカルシウムまでの距離(mm)を示し、tは評価用サンプルを小型環境試験器に静置した時間(hr)を示し、Kは比例定数を示す。)
に基づき、「評価用サンプルの端部からカルシウムまでの距離」と「評価用サンプルを小型環境試験器に静置した時間」から、最小二乗法により理論曲線を引くことで、比例定数Kを算出した。算出したKを用いて、X=2.6mmとなる時間を、発光面積減少開始時間として算出した。耐透湿性が高いほど水分の侵入速度を遅らせることができ、発光面積減少開始時間は長くなる。
良好(○):250hr以上
不良(×):250hr未満
【0133】
【0134】
表1の結果から、実施例1~6の封止用シートは、耐透湿性に優れるとともに、接着性および透明性にも優れることが示された。一方、比較例1および3の封止用シートは、接着性は優れるものの、透明性に劣り、また、比較例2の封止用シートは、耐透湿性と透明性は優れるものの、接着性が低いことが分かる。さらに、比較例4の封止用シートは、接着性と透明性に優れるものの、耐透湿性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の封止用樹脂組成物は、耐透湿性に加え、接着性と透明性にも優れるため、電子デバイス、特に有機ELデバイスや太陽電池等の電子デバイスの封止に好適に使用することができる。