(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】配筋評価システム、配筋評価方法及び配筋評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/08 20060101AFI20230725BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230725BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230725BHJP
【FI】
G01B11/08 H
G06T7/60 150Z
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2019182432
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中林 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173276(JP,A)
【文献】国際公開第2017/132167(WO,A1)
【文献】特開2019-129169(JP,A)
【文献】特開2020-095009(JP,A)
【文献】特開2007-155357(JP,A)
【文献】特開平01-202605(JP,A)
【文献】特開2013-040549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06Q 50/08
G01C 3/06
G06T 7/60
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定モデル記憶部に接続され、配筋を評価する制御部を備えた配筋評価システムであって、
前記制御部が、
鉄筋を示した画像と、前記画像において前記鉄筋の少なくとも径領域の輪郭を指定した画像とを教師データとして用いた機械学習を行なって、前記画像に含まれる鉄筋の径領域を前記画像から予測する推定モデルを生成して、前記推定モデル記憶部に記録し、
処理対象の画像を取得した場合、前記推定モデルを用いて、前記処理対象の画像に含まれる鉄筋の径領域を予測し、
前記径領域における前記鉄筋の径を算出することを特徴とする配筋評価システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像において、前記鉄筋を示した画素を指定したペイント画像を教師データとして用いて機械学習を行なって前記径領域を予測する推定モデルを生成して、前記推定モデル記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載の配筋評価システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像を撮影した撮影装置から前記鉄筋までの距離と、
前記予測した径領域の所定方向のピクセル数とを用いて、前記画像における前記鉄筋の径を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の配筋評価システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像において、前記鉄筋に付されたマーカーを検出し、前記マーカーの形状に応じて、前記鉄筋までの距離を算出することを特徴とする請求項3に記載の配筋評価システム。
【請求項5】
前記制御部は、
異なる視点から撮影した複数の画像群を取得し、
前記画像群を用いて取得した点群配置において、前記推定モデルを用いて予測した径領域から取得した点群配置により、前記鉄筋の径を算出することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の配筋評価システム。
【請求項6】
推定モデル記憶部に接続され、配筋を評価する制御部を備えた配筋評価システムを用いて配筋を評価する方法であって、
前記制御部が、
鉄筋を示した画像と、前記画像において前記鉄筋の少なくとも径領域の輪郭を指定した画像とを教師データとして用いた機械学習を行なって、前記画像に含まれる鉄筋の径領域を前記画像から予測する推定モデルを生成して、前記推定モデル記憶部に記録し、
処理対象の画像を取得した場合、前記推定モデルを用いて、前記処理対象の画像に含まれる鉄筋の径領域を予測し、
前記径領域における前記鉄筋の径を算出することを特徴とする配筋評価方法。
【請求項7】
推定モデル記憶部に接続され、配筋を評価する制御部を備えた配筋評価システムを用いて配筋を評価するプログラムであって、
前記制御部を、
鉄筋を示した画像と、前記画像において前記鉄筋の少なくとも径領域の輪郭を指定した画像とを教師データとして用いた機械学習を行なって、前記画像に含まれる鉄筋の径領域を前記画像から予測する推定モデルを生成して、前記推定モデル記憶部に記録し、
処理対象の画像を取得した場合、前記推定モデルを用いて、前記処理対象の画像に含まれる鉄筋の径領域を予測し、
前記径領域における前記鉄筋の径を算出する手段として機能させることを特徴とする配筋評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事等における配筋を評価するための配筋評価システム、配筋評価方法及び配筋評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像解析技術を用いた配筋検査の効率化が検討されている。例えば、マーカーを利用し対象までの距離を算出した上で画像上の鉄筋幅をカウントすることによる2次元画像を用いる方法や、ステレオ画像やSLAM技術などを利用して3次元点群を取得する技術が検討されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された技術においては、携帯端末が、鉄筋の画像から、背景板に対して垂直方向の連続的な径長を抽出し、中央部90%のデータにおける最大値を最大径として取得する。
【0004】
特許文献2に記載された技術においては、背景バーの部分に相当する画像全体から2つのマーカーを検出し、マーカー間にある画像を切り出す。そして、切り出した画像において、鉄筋の軸方向に垂直な方向で、ピクセルの輝度が不連続な箇所を検出して、領域の境界線となるエッジを抽出し、不要なエッジを除去する。次に、画像の輝度分布に対して作成した度数分布に基づいて鉄筋、影、背景の各領域の代表輝度値を計算し、各代表輝度値を用いて各エッジに挟まれた領域を特定し、エッジを挟んで隣り合う領域が同じである場合には1つの領域として統合する。
【0005】
これら特許文献に開示された技術においては、マーカーを利用して鉄筋までの距離を測定した上で、解析したい鉄筋が画像内に占めるピクセル幅を計測することで鉄筋径を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-40549号公報
【文献】特開2013-15452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、鉄筋径の計測結果を高精度に得たい場合には、計測対象である鉄筋と、その他の部分(背景側の鉄筋や背景)とを正確に分離する必要がある。このため、既存の技術では、計測したい鉄筋列の背景側に、白いテープやボード等を配置した上で写真撮影する必要があり、手間が掛かる。更に、照明環境によっては、テープやボードに、鉄筋の影ができることがある。この影を鉄筋の一部として検出してしまうと、鉄筋径を的確に計測できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための配筋評価システムは、推定モデル記憶部に接続され、配筋を評価する制御部を備えた配筋評価システムであって、前記制御部が、鉄筋を示した画像と、前記画像において前記鉄筋の少なくとも径領域の輪郭を指定した画像とを教師データとして用いた機械学習を行なって、前記画像に含まれる鉄筋の径領域を前記画像から予測する推定モデルを生成して、前記推定モデル記憶部に記録し、処理対象の画像を取得した場合、前記推定モデルを用いて、前記処理対象の画像に含まれる鉄筋の径領域を予測し、前記径領域における前記鉄筋の径を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉄筋領域を的確に特定して、鉄筋径を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施形態の記憶部に記録されたデータの説明図であって、(a)は撮影画像、(b)は輪郭画像、(c)はペイント画像。
【
図4】実施形態の処理手順を説明する流れ図であって、(a)は教師データ作成処理、(b)は輪郭推定モデル学習処理、(c)はペイント推定モデル学習処理。
【
図5】実施形態の配筋検査処理の処理手順の流れ図。
【
図6】変更例において輪郭画像とペイント画像とを重ねた重畳画像の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図5を用いて、配筋評価システム、配筋評価方法及び配筋評価プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の配筋評価システムは、建築工事の工事現場における配筋の検査を行なう場合に用いられる。
本実施形態では、
図1に示すように、ユーザ端末10、評価サーバ20を用いる。
【0012】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、ユーザ端末10、評価サーバ20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0013】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0014】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード、カメラ(撮影装置)等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
【0015】
記憶部H14は、ユーザ端末10、評価サーバ20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0016】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ端末10、評価サーバ20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0017】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0018】
(システム構成)
次に、
図1を用いて、配筋評価システムの各機能を説明する。
ユーザ端末10は、配筋を評価する担当者が用いるコンピュータ端末である。このユーザ端末10は、機械学習に用いる教師データの作成を指示するために用いる。更に、ユーザ端末10は、配筋を被写体とする画像を評価サーバ20にアップロードして、評価の実行を指示するために用いる。
【0019】
評価サーバ20は、配筋の評価を実行するコンピュータシステムである。この評価サーバ20は、制御部21、撮影画像記憶部22、輪郭画像記憶部23、ペイント画像記憶部24、推定モデル記憶部25及び確認結果記憶部26を備える。
【0020】
制御部21は、後述する処理(教師データ生成段階、学習段階、評価段階、予測段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、教師データ生成部211、学習部212、評価部213、予測部214等として機能する。
【0021】
教師データ生成部211は、学習用の撮影画像を用いて、機械学習に用いる教師データを生成する処理を実行する。
学習部212は、教師データを用いた機械学習によって、撮影画像に含まれる配筋の鉄筋径を予測するための推定モデルを生成する処理を実行する。本実施形態では、機械学習として、入力層、中間層(隠れ層)、出力層に含まれる複数のノードを結合する深層学習(ディープラーニング)を用いる。更に、この深層学習としては、畳み込み層を持つ畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を利用する。
評価部213は、配筋検査対象の鉄筋についての評価処理を実行する。
予測部214は、推定モデルを用いて鉄筋の径領域を予測する。
【0022】
撮影画像記憶部22には、教師データを作成するための撮影画像管理データが記録される。この撮影画像管理データは、多様な工事現場において配置された鉄筋(配筋)を撮影した撮影画像がアップロードされた場合に記録される。撮影画像管理データは、画像IDデータと、これに関連付けられた撮影画像に関するデータとを含む。
【0023】
画像IDデータ領域には、各撮影画像を特定するための識別子に関するデータが記録される。
撮影画像データ領域には、複数の鉄筋が配置された配筋を撮影した画像に関するデータが記録される。この配筋には、柱に埋設される鉄筋篭や、スラブ床に埋設されるスラブ筋等がある。
図3(a)に示すように、この撮影画像50には、鉄筋51だけではなく、撮影現場の背景52が含まれる。
【0024】
図1の輪郭画像記憶部23には、教師データを作成するための輪郭画像管理データが記録される。この輪郭画像管理データは、撮影画像において、輪郭画像が作成された場合に記録される。輪郭画像管理データは、画像IDデータと、これに関連付けられた輪郭画像に関するデータとを含む。
【0025】
画像IDデータ領域には、各輪郭画像を特定するための識別子に関するデータが記録される。本実施形態では、画像IDとして、輪郭画像に対応する撮影画像の画像IDを用いる。
輪郭画像データ領域には、撮影画像に含まれる鉄筋について、フシ、リブを省いて、径領域の輪郭を線書きした画像である。
【0026】
図3(b)に示すように、この輪郭画像60は、撮影画像50と同じ構図で、鉄筋61の径領域の輪郭線61aのみが描画されている。この輪郭画像60では、鉄筋が前後で重なっている場合、後ろ側の鉄筋は、前側の鉄筋に隠れて描画されている。
【0027】
ペイント画像記憶部24には、教師データを作成するためのペイント画像管理データが記録される。このペイント画像管理データは、撮影画像において、ペイント画像が作成された場合に記録される。ペイント画像管理データは、画像IDデータと、これに関連付けられたペイント画像に関するデータとを含む。
【0028】
画像IDデータ領域には、各ペイント画像を特定するための識別子に関するデータが記録される。本実施形態では、画像IDとして、ペイント画像に対応する撮影画像の画像IDを用いる。
【0029】
ペイント画像データ領域には、撮影画像に含まれる鉄筋について、フシ、リブを省いて、径領域を塗りつぶしてベタ塗りした画像である。
図3(c)に示すように、このペイント画像70は、撮影画像50と同じ構図で、鉄筋の径領域71が塗りつぶされている。
【0030】
推定モデル記憶部25には、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域を推定するための推定モデルが記録される。この推定モデルは、教師データを用いた機械学習を行なった場合に記録される。推定モデルは、撮影画像を入力層として、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域を出力とするネットワークにより構成される。
【0031】
本実施形態では、輪郭推定モデル及びペイント推定モデルが記憶される。輪郭推定モデルは、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域の輪郭を予測するモデルである。この輪郭推定モデルを用いた場合、鉄筋が前後で重なっている領域では、前側の鉄筋の径領域の輪郭のみを表示する。ペイント推定モデルは、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域をベタ塗りした全体を推定するモデルである。
【0032】
確認結果記憶部26は、配筋検査において確認された鉄筋の評価結果に関するデータが記録される。この評価結果は、配筋検査が終了したときに記録される。この評価結果には、評価対象画像、鉄筋の位置及び鉄筋の径に関するデータが含まれる。
【0033】
評価対象画像データ領域には、評価を行なう配筋を撮影した撮影画像に関するデータが含まれる。
鉄筋の位置データ領域及び鉄筋の径データ領域には、評価対象画像に含まれる鉄筋の位置及び鉄筋の径に関するデータが含まれる。
【0034】
次に、上記のように構成された評価サーバ20において、配筋を評価する場合の処理手順を説明する。ここでは、教師データ作成処理、学習処理及び配筋検査処理を実行する。
(教師データ作成処理)
まず、
図4(a)を用いて、教師データ作成処理を説明する。
ここでは、まず、評価サーバ20の制御部21は、撮影画像の記録処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、制御部21の教師データ生成部211は、ユーザ端末10から、配置された鉄筋を撮影した撮影画像を取得する。この撮影画像には、背景も含まれる。この場合、教師データ生成部211は、画像IDを付与し、画像ID及び撮影画像を含む撮影画像管理データを生成して、撮影画像記憶部22に記録する。
【0035】
次に、評価サーバ20の制御部21は、輪郭画像の記録処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、ユーザ端末10において、担当者は、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域の輪郭をなぞって、線描きを行なう。ここでは、フシ、リブ以外の径領域のみの線描きを行なう。そして、制御部21の教師データ生成部211は、ユーザ端末10から、撮影画像の輪郭画像を取得する。この場合、教師データ生成部211は、撮影画像の画像IDを輪郭画像に付与し、画像ID及び輪郭画像を含む輪郭画像管理データを生成して、輪郭画像記憶部23に記録する。
【0036】
次に、評価サーバ20の制御部21は、ペイント画像の記録処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、ユーザ端末10において、担当者は、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域をベタ塗りしたペイント画像を作成する。ここでは、フシ、リブ以外の径領域のみをベタ塗りする。そして、制御部21の教師データ生成部211は、ユーザ端末10から、撮影画像のペイント画像を取得する。この場合、教師データ生成部211は、撮影画像の画像IDをペイント画像に付与して、画像ID及びペイント画像を含むペイント画像管理データを生成して、ペイント画像記憶部24に記録する。
【0037】
(学習処理)
次に、
図4(b)及び(c)を用いて、学習処理を説明する。ここでは、機械学習によって、輪郭推定モデルとペイント推定モデルとを生成する。
【0038】
まず、
図4(b)を用いて、輪郭推定モデルの学習処理について説明する。
評価サーバ20の制御部21は、撮影画像及び輪郭画像の取得処理を実行する(ステップS2-1)。具体的には、制御部21の学習部212は、撮影画像記憶部22から撮影画像管理データを抽出する。更に、学習部212は、この撮影画像管理データの画像IDを有する輪郭画像管理データの輪郭画像を抽出する。
【0039】
次に、評価サーバ20の制御部21は、輪郭推定モデルの生成処理を実行する(ステップS2-2)。具体的には、制御部21の学習部212は、抽出した撮影画像を入力層、この撮影画像に対応する輪郭画像を出力層として、入力層のノードから出力層のノードを結び付ける中間層のノード及び結合からなる輪郭推定モデルを生成して、推定モデル記憶部25に記録する。
【0040】
次に、
図4(c)を用いて、ペイント推定モデルの学習処理について説明する。
評価サーバ20の制御部21は、撮影画像及びペイント画像の取得処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、制御部21の学習部212は、撮影画像記憶部22から撮影画像管理データを抽出し、この撮影画像管理データの画像IDを有するペイント画像管理データのペイント画像を抽出する。
【0041】
次に、評価サーバ20の制御部21は、ペイント推定モデルの生成処理を実行する(ステップS3-2)。具体的には、制御部21の学習部212は、抽出した撮影画像を入力層、この撮影画像に対応するペイント画像を出力層として、入力層のノードから出力層のノードを結び付ける中間層のノード及び結合からなるペイント推定モデルを生成して、推定モデル記憶部25に記録する。
【0042】
(配筋検査処理)
次に、
図5を用いて、配筋検査処理を説明する。
まず、評価サーバ20の制御部21は、評価対象画像の取得処理を実行する(ステップS4-1)。具体的には、建築工事の工事現場において撮影を行なう場合、評価対象の鉄筋の近傍にマーカーを貼付する。このマーカーとしては、特許文献1に記載されているマーカーを利用することができる。このマーカーは、予め大きさが決まっているため、撮影画像に含まれるマーカーのピクセル数を用いて、単位ピクセルあたりの実寸を算出することができる。そして、カメラを用いて、このマーカーを含めて配筋を撮影する。次に、カメラで撮影した撮影画像をユーザ端末10に入力して、ユーザ端末10を介して、評価サーバ20にアップロードする。評価サーバ20の制御部21は、アップロードされた撮影画像をメモリに仮記憶する。
【0043】
次に、評価サーバ20の制御部21は、変換係数の算出処理を実行する(ステップS4-2)。具体的には、制御部21の評価部213は、メモリに仮記憶された撮影画像において、マーカー領域を検出する。そして、マーカー領域のピクセル数とマーカーサイズを用いて、画像から実寸を算出するための変換係数を算出する。
【0044】
次に、評価サーバ20の制御部21は、鉄筋領域の推定処理を実行する(ステップS4-3)。具体的には、制御部21の予測部214は、処理対象の撮影画像を、輪郭推定モデル及びペイント推定モデルの入力層に入力し、出力層で輪郭領域とベタ塗り領域とを推定する。この場合、処理対象の撮影画像に複数の鉄筋が含まれる場合には、複数の鉄筋の径領域が推定される。そして、輪郭径領域とベタ塗り領域を重ね合わせて、各鉄筋の位置及び径領域を推定する。
【0045】
次に、評価サーバ20の制御部21は、鉄筋領域毎に、鉄筋径の推定処理を実行する(ステップS4-4)。具体的には、制御部21の評価部213は、ステップS4-3において推定された鉄筋領域において、この領域の長辺方向を鉄筋の延在方向として特定する。次に、評価部213は、鉄筋の延在方向の直交方向(径方向)について、複数位置で、径領域のピクセル数を算出する。次に、評価部213は、算出した各位置でのピクセル数の統計値を算出する。そして、算出した統計値と変換係数とを用いて、各鉄筋の径方向の長さを算出する。この径方向の長さが鉄筋の直径に対応する。次に、評価部213は、処理対象の撮影画像、この撮影画像において特定した鉄筋の位置及び鉄筋の直径を、確認結果記憶部26に記録する。
【0046】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、評価サーバ20の制御部21は、鉄筋領域の推定処理(ステップS4-3)及び鉄筋径の推定処理(ステップS4-4)を実行する。これにより、撮影画像における鉄筋領域を推定するので、撮影画像に背景が含まれる場合にも、効率的に鉄筋領域のみを特定して、鉄筋径を算出することができる。
【0047】
(2)本実施形態では、鉄筋領域の推定処理(ステップS4-3)において、評価サーバ20の制御部21は、処理対象の撮影画像を、輪郭推定モデル及びペイント推定モデルの入力層に入力し、出力層で各鉄筋の径領域を推定する。これにより、輪郭だけでは鉄筋が存在する領域を特定できない場合にも、ペイント画像を用いることにより、鉄筋の位置を的確に特定することができる。
【0048】
(3)本実施形態では、配筋検査処理において、評価サーバ20の制御部21は、変換係数の算出処理(ステップS4-2)及び鉄筋径の推定処理(ステップS4-4)を実行する。これにより、変換係数を用いて、鉄筋径を推定することができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、評価サーバ20の制御部21が、鉄筋領域の推定処理(ステップS4-3)を含む配筋検査処理を実行する。この配筋検査処理を行なうハードウェアは、評価サーバ20に限定されるものではない。例えば、ユーザ端末10で処理を実行してもよいし、評価サーバ20とユーザ端末とが共同して処理を実行してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、評価サーバ20の制御部21は、教師データの生成処理において、撮影画像について、輪郭や塗りつぶしを手書きにより行なう。輪郭や塗りつぶしは、手作業で行なわれる場合に限定されるものではない。例えば、輪郭抽出処理を行なった後で、鉄筋の径領域を特定してもよい。また、撮影画像において、鉄筋の配色を指定し、この配色のオブジェクトを抽出してもよい。
【0051】
・上記実施形態では、評価サーバ20の制御部21は、鉄筋領域の推定処理(ステップS4-3)において、輪郭推定モデルとペイント推定モデルとを用いて、鉄筋の径領域を推定した。鉄筋領域の推定に用いるモデルはこれらに限定されるものではない。例えば、何れか一つを用いて推定してもよいし、輪郭推定モデルとペイント推定モデルとを重畳させた重畳推定モデルを生成してもよい。この重畳推定モデルは、撮影画像に含まれる鉄筋の径領域の輪郭及びベタ塗りした領域を推定するモデルである。
【0052】
図6には、重畳画像80を示している。この重畳画像80は、ペイント画像70の鉄筋の径領域71に対して輪郭画像60の輪郭線61aを重ね合わせた画像であり、撮影画像50と同じ構図で作成される。
【0053】
この重畳推定モデルは、輪郭推定モデルとペイント推定モデルとを重畳させて生成してもよいし、この重畳推定モデルを機械学習によって生成してもよい。
機械学習による学習処理によって生成する場合には、まず、評価サーバ20の制御部21は、撮影画像記憶部22、輪郭画像記憶部23及びペイント画像記憶部24から、同じ画像IDが付与された撮影画像、輪郭画像、ペイント画像を取得する。更に、制御部21は、線描き以外の領域を透明化させた輪郭画像をペイント画像に重畳させた重畳画像を生成する。
【0054】
そして、評価サーバ20の制御部21は、重畳推定モデルの生成処理を実行する。具体的には、制御部21の学習部212は、撮影画像を入力層、重畳画像を出力層として、入力層のノードから出力層のノードを結びつける中間層のノード及び結合からなる重畳推定モデルを生成して、推定モデル記憶部25に記録する。
【0055】
そして、評価サーバ20の制御部21は、配筋検査処理の配筋領域の推定処理(ステップS4-3)において、処理対象の撮影画像を、輪郭推定モデル、ペイント推定モデル及び重畳推定モデルの入力層に入力し、出力層で各鉄筋の径領域を推定する。
【0056】
・上記実施形態では、評価サーバ20の制御部21は、鉄筋領域毎に、鉄筋径の推定処理を実行する(ステップS4-4)。ここでは、径領域のピクセル数を算出して、鉄筋径を推定する。これに代えて、鉄筋領域を異なる視点から撮影した複数の画像群を取得し、Structure from Motion技術等を用いて画像群から点群配置(3次元構造)を生成し、この3次元構造から鉄筋径を推定するようにしてもよい。この場合も、撮影画像における鉄筋の領域を、その他の領域と区別して特定するための推定モデル(輪郭推定モデル、ペイント推定モデル)を用いる。Structure from Motion技術では、各画像間で特徴点をマッチングすることで点群配置を得るが、誤ったマッチングが行なわれることもある。鉄筋領域のみを識別する推定モデルを用いることにより、画像内の鉄筋の領域が明らかになり、背景領域上にある特徴点を参照して生成された点群は誤りとして除去できるため、ノイズの低減を図ることができる。
【0057】
・上記実施形態では、鉄筋径の推定処理(ステップS4-4)において、評価サーバ20の制御部21は、評価対象の鉄筋の近傍に貼付したマーカーのマーカー領域に基づいて算出した変換係数を用いて、鉄筋径を推定する。鉄筋径の推定においては、マーカー領域に基づいて算出した変換係数を用いる場合に限定されるものではない。例えば、ステレオカメラを用いて、撮影装置から鉄筋までの距離を算出し、この距離を用いて、鉄筋領域を推定して鉄筋の径を推定してもよい。また、レーザスキャン装置を用いて取得した画像を用いて、鉄筋領域を推定して鉄筋の径を推定してもよい。このレーザスキャン装置を用いて取得した画像としては、例えば、鉄筋の表面において反射した複数の点で構成される点群を配置した点群配置画像がある。
【符号の説明】
【0058】
10…ユーザ端末、20…評価サーバ、21…制御部、22…撮影画像記憶部、23…輪郭画像記憶部、24…ペイント画像記憶部、25…推定モデル記憶部、26…確認結果記憶部、50…撮影画像、51,61…鉄筋、52…背景、60…輪郭画像、61a…輪郭線、70…ペイント画像、71…径領域、80…重畳画像、211…教師データ生成部、212…学習部、213…評価部、214…予測部。