(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
G07D1/00 Z GBL
(21)【出願番号】P 2019210668
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2019037828
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】大栗 章平
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真明
(72)【発明者】
【氏名】田尻 俊也
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-100480(JP,A)
【文献】特開2011-070705(JP,A)
【文献】特開2006-155117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部と、
前記集積分離部から繰り出された前記硬貨を搬送する搬送部と
を有し、
前記集積分離部は、
法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面を有し、該円盤面の中心軸を回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向に回転する傾斜円盤と、
前記傾斜円盤における前記円盤面の法線方向側に設けられ、該円盤面との間に前記硬貨を集積する硬貨集積空間を形成する集積カバーと、
前記円盤面のうち外周から前記中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から前記法線方向に突出し、前記傾斜円盤と一体に回転して前記硬貨に当接し搬送する分離突起と、
前記円盤面のうち外周の一部分が前記中心軸側へ切り欠かれてなる切欠部と、
前記集積分離部側において前記分離突起の回転軌道の一部に沿って前記分離突起と同期して走行した後、前記搬送部側において前記硬貨の搬送経路の一部に沿って走行する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに設けられ、前記集積分離部側において前記搬送ベルトが前記分離突起の前記回転軌道の一部に沿って移動する場合に前記切欠部に入り込み、前記搬送部へ移動する際に前記分離突起から引き継いで前記硬貨に当接して搬送し、前記搬送部への移動後に引き続き当該硬貨に当接して搬送するピンと、
前記円盤面のうち、前記硬貨が前記集積分離部側から前記搬送部側へ繰り出される際に移動する移動経路の外であって、且つ少なくとも前記切欠部に入り込んだ前記ピンよりも外周側に形成された攪拌突起と
を具えることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記攪拌突起は、前記円盤面において前記切欠部の周縁に位置する部分のうち、該切欠部に対し前記回転方向と反対側の部分に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記攪拌突起は、前記円盤面の法線と平行な中心軸を有する柱形状である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記攪拌突起は、円柱形状である
ことを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記攪拌突起の前記円盤面から最も遠い先端部分は、前記円盤面に最も近い根元部分よりも細く形成されている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記攪拌突起は、前記根元部分及び前記先端部分を結ぶ傾斜面の円盤面に対する傾斜角度が45度以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記攪拌突起は、前記円盤面からの突出する高さが、前記硬貨の厚さ以下である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記傾斜円盤は、互いの形状が相違する2種類以上の前記攪拌突起が前記円盤面に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記傾斜円盤は、前記円盤面から突出する高さが前記硬貨の厚さよりも大きい前記攪拌突起と、前記円盤面から突出する高さが前記硬貨の厚さ以下の前記攪拌突起とが、前記円盤面に設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部と、
前記集積分離部から繰り出された前記硬貨を搬送する搬送部と
を有し、
前記集積分離部は、
法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面を有し、該円盤面の中心軸を回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向に回転する傾斜円盤と、
前記傾斜円盤における前記円盤面の法線方向側に設けられ、前記円盤面との間に前記硬貨を集積する硬貨集積空間を形成する集積カバーと、
前記円盤面のうち外周から前記中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から前記法線方向に突出し、前記傾斜円盤と一体に回転して前記硬貨に当接し搬送する分離突起と、
前記円盤面のうち外周の一部分が前記中心軸側へ切り欠かれてなる切欠部と、
前記集積分離部側において前記分離突起の回転軌道の一部に沿って前記分離突起と同期して走行した後、前記搬送部側において前記硬貨の搬送経路の一部に沿って走行する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに設けられ、前記集積分離部側において前記搬送ベルトが前記分離突起の前記回転軌道の一部に沿って移動する場合に前記切欠部に入り込み、前記搬送部へ移動する際に前記分離突起から引き継いで前記硬貨に当接して搬送し、前記搬送部への移動後に引き続き当該硬貨に当接して搬送するピンと、
前記円盤面において前記切欠部の周縁に位置する切欠周縁部のうち、該切欠部に対し前記回転方向と反対側の部分が、前記円盤面よりも前記法線方向に突出してなる攪拌突起と
を具えることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項11】
前記攪拌突起は、前記硬貨が前記集積分離部側から前記搬送部側へ繰り出される際に移動する移動経路の外であって、且つ少なくとも前記切欠部に入り込んだ前記ピンよりも外周側に形成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の硬貨処理装置。
【請求項12】
前記攪拌突起は、少なくとも前記切欠部側に、前記円盤面の前記法線方向に対して傾斜された傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の硬貨処理装置。
【請求項13】
前記攪拌突起は、前記円盤面からの突出する高さが、前記硬貨の厚さ以下である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項12の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項14】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項13の何れかに記載の硬貨処理装置と
を具えることを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び自動取引装置に関し、例えば顧客に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するものが広く普及している。
【0003】
この現金自動預払機としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば顧客との間で硬貨の授受を行う入出金部、硬貨を集積すると共に集積した硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)、及び金種ごとに硬貨を収納する収納部等を有している。
【0004】
このうち集積分離部としては、例えば中心軸を水平方向から傾斜させた傾斜円盤(回転円盤とも呼ばれる)を回転可能に構成し、円盤面に突起を設けると共に、硬貨を集積する集積空間を形成する集積カバー(ホッパとも呼ばれる)の下端を、傾斜円盤の外周における下側部分に沿うように形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この集積分離部では、傾斜円盤を回転させることにより、突起に硬貨を1枚ずつ引っかけて繰り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述した硬貨処理装置の集積分離部では、回転円盤の突起に引っかけた硬貨を搬送部に引き渡す際、該硬貨を円盤面に摺動させながら外周側へ移動させている。このため回転円盤は、外周近傍のうち硬貨が摺動する軌跡上に、他の突起等を設けること無く、円滑に摺動させるようになっている。
【0007】
また集積分離部では、集積空間の底部近傍において、傾斜円盤と集積カバーとの間隔が下方へ進むにつれて狭くなっている。これにより集積分離部では、集積空間内に集積された硬貨が円盤の回転等に伴って攪拌されるため、重力の作用によって底部へ近づいてきた硬貨を、徐々に傾斜円盤に近づけていき、やがて傾斜円盤の突起に引っかけさせることができる。
【0008】
しかしながら、この集積分離部では、集積空間内の底部付近において、硬貨が円盤面側と反対の集積カバー側に倒れ掛かる場合がある。そうすると集積分離部では、外周近傍の部分において突起を設けることができない部分があるため、硬貨を引っかけることができず、この硬貨を正常に繰り出し得ない恐れがある、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、集積されている効果を円滑に繰り出し得る硬貨処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部と、集積分離部から繰り出された硬貨を搬送する搬送部とを有し、集積分離部に、法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面を有し、該円盤面の中心軸を回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向に回転する傾斜円盤と、傾斜円盤における円盤面の法線方向側に設けられ、円盤面との間に硬貨を集積する硬貨集積空間を形成する集積カバーと、円盤面のうち外周から中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から法線方向に突出し、傾斜円盤と一体に回転して硬貨に当接し搬送する分離突起と、円盤面のうち外周の一部分が中心軸側へ切り欠かれてなる切欠部と、集積分離部側において分離突起の回転軌道の一部に沿って分離突起と同期して走行した後、搬送部側において硬貨の搬送経路の一部に沿って走行する搬送ベルトと、搬送ベルトに設けられ、集積分離部側において搬送ベルトが分離突起の回転軌道の一部に沿って移動する場合に切欠部に入り込み、搬送部へ移動する際に分離突起から引き継いで硬貨に当接して搬送し、搬送部への移動後に引き続き当該硬貨に当接して搬送するピンと、円盤面のうち、硬貨が集積分離部側から搬送部側へ繰り出される際に移動する移動経路の外であって、且つ少なくとも切欠部に入り込んだピンよりも外周側に形成された攪拌突起とを設けるようにした。
【0011】
また本発明の硬貨処理装置においては、硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部と、集積分離部から繰り出された硬貨を搬送する搬送部とを設け、集積分離部に、法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面を有し、該円盤面の中心軸を回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向に回転する傾斜円盤と、傾斜円盤における円盤面の法線方向側に設けられ、円盤面との間に硬貨を集積する硬貨集積空間を形成する集積カバーと、円盤面のうち外周から中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から法線方向に突出し、傾斜円盤と一体に回転して硬貨に当接し搬送する分離突起と、円盤面のうち外周の一部分が中心軸側へ切り欠かれてなる切欠部と、集積分離部側において分離突起の回転軌道の一部に沿って分離突起と同期して走行した後、搬送部側において硬貨の搬送経路の一部に沿って走行する搬送ベルトと、搬送ベルトに設けられ、集積分離部側において搬送ベルトが分離突起の回転軌道の一部に沿って移動する場合に切欠部に入り込み、搬送部へ移動する際に分離突起から引き継いで硬貨に当接して搬送し、搬送部への移動後に引き続き当該硬貨に当接して搬送するピンと、円盤面において切欠部の周縁に位置する切欠周縁部のうち、該切欠部に対し回転方向と反対側の部分が、円盤面よりも法線方向に突出してなる攪拌突起とを設けるようにした。
【0012】
さらに本発明の自動取引装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0013】
本発明は、傾斜円盤及び集積カバーの間で硬貨が該集積カバー側に傾斜し、傾斜円盤が回転した際に分離突起及びピンが該硬貨に当接できなかったとしても、攪拌突起が該硬貨に当接するため、その姿勢を崩して傾斜円盤側に倒させ、該硬貨を分離突起に当接させて搬送することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集積されている効果を円滑に繰り出し得る硬貨処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】現金自動預払機の構成を示す略線的斜視図である。
【
図6】第1の実施の形態による残留攪拌突起の構成及び硬貨の繰出を示す略線図である。
【
図7】上分離部における硬貨の繰出を示す略線図である。
【
図8】集積分離部から分離搬送部への硬貨の引き渡しを示す略線図である。
【
図9】第2の実施の形態による残留攪拌突起の構成を示す略線図である。
【
図10】第3の実施の形態による上分離部の構成を示す略線図である。
【
図11】第3の実施の形態による上分離部の構成を示す略線的斜視図である。
【
図12】第3の実施の形態による残留攪拌突起の構成を示す略線的断面図である。
【
図13】第3の実施の形態による硬貨の分離及び繰出を示す略線図である。
【
図14】第3の実施の形態による硬貨の分離及び繰出を示す略線図である。
【
図15】他の実施の形態による残留攪拌突起の構成を示す略線図である。
【
図16】他の実施の形態による残留攪拌突起の構成を示す略線図である。
【
図17】他の実施の形態による残留攪拌突起の構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0017】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、自動取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0018】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、カード入出口4、硬貨入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0019】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。硬貨入出金口5は、顧客によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。また硬貨入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに応対部3には、使用者により入金される紙幣が投入されると共に該顧客へ出金する紙幣が排出される紙幣入出金口(図示せず)等も設けられている。
【0020】
操作部としての操作表示部6は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。
【0021】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0022】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0023】
[1-2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、
図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い円板形状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径が異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。以下では、取り扱う中で最も直径が大きい硬貨を最大径硬貨と呼び、また最も直径が小さい硬貨を最小径硬貨と呼ぶ。また、取り扱う中で最も厚さが大きい硬貨を最大厚硬貨と呼び、また最も厚さが小さい硬貨を最小厚硬貨と呼ぶ。日本国内に設置される硬貨処理装置10においては、最大径硬貨及び最大厚硬貨は500円硬貨であり、最小径硬貨及び最小厚硬貨は1円硬貨となっている。ちなみに1円硬貨の厚さは約1.5[mm]となっている。
【0024】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22、及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0025】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0026】
入出金部13は、顧客との間で硬貨を受け渡すことにより、該顧客に硬貨を入金させ、又は該顧客に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
【0027】
入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で顧客により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して顧客に受け取らせる。
【0028】
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す(詳しくは後述する)。
【0029】
認識部としての認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に当該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に当該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を当該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、当該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0030】
搬送部としてのピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、搬送経路Wを形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路Wに沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路Wに沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側から搬送方向へ付勢するピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路Wに沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出することができる。
【0031】
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
【0032】
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
【0033】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
【0034】
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部と、該案内部の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部と、該集積部の下側から硬貨を繰り出す繰出部とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部により集積部へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部に集積している硬貨を1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
【0035】
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側、すなわち
図2における紙面の手前側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
【0036】
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
【0037】
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を後方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
【0038】
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっており、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。集積分離部29Aは、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部29Bに引き渡す。分離搬送部29Bは、集積分離部29Aから受け取った硬貨を1枚ずつ上方へ持ち上げるように搬送し、一時保留部23の放出口から内部の空間へ放出する。
【0039】
[1-3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と顧客との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での処理についてそれぞれ説明する。
【0040】
[1-3-1.入金取引における硬貨の搬送]
まず、現金自動預払機1(
図1)において顧客との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、顧客に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。
【0041】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6(
図1)を介して顧客から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金計数処理を開始する。
【0042】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して硬貨入出金口5(
図1)のシャッタ及び入出金部13の上シャッタを開いて顧客に入出金部13内へ硬貨を投入させる。次に硬貨制御部12は、顧客から操作表示部6(
図1)を介して硬貨の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、硬貨入出金口5のシャッタ及び入出金部13の上シャッタを閉塞した上で、入出金部13からシュート部14を介して上分離部15に硬貨を引き渡す。
【0043】
上分離部15は、硬貨を1枚ずつに分離して繰り出し、認識搬送部16へ引き渡す。認識搬送部16は、硬貨を1枚ずつ搬送しながら認識し、受渡部17に引き渡すと共に、得られた認識結果を硬貨制御部12へ通知する。
【0044】
これに応じて硬貨制御部12は、通知された認識結果を基に、該硬貨を受け入れ得るか否かを判定すると共にその搬送先を決定し、さらに記憶する。このとき硬貨制御部12は、該硬貨が取扱可能な金種であり、且つ正当である(すなわち偽造されていない)と判定した場合にこれを受入可能とし、それ以外の場合を受入不可能とする。例えば硬貨制御部12では、外国の硬貨を受入不可能と判定することになる。また硬貨制御部12は、受入可能と判定した硬貨の金額を逐次加算することにより合計金額を集計する。
【0045】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が受入可能であれば、一時保留分岐部まで搬送して分岐させて一時保留部23へ進行させ、該一時保留部23に集積させる。またピンベルト搬送部18は、例えば該硬貨が外国の硬貨であった場合のように受入不可能であれば、入出金部13まで搬送して収容させる。
【0046】
やがて硬貨制御部12は、上分離部15から全ての硬貨を繰り出し終えると、入出金部13に受入不可能な硬貨を収容していれば、主制御部9(
図1)と協働し上シャッタ等を開放させ、該硬貨を顧客に返却して確認させると共に、必要に応じて再投入させる。一方、硬貨制御部12は、入出金部13に受入不可能な硬貨を収容していなければ、入金計数処理を完了し、入金計数処理を完了したこと及び集計した合計金額(以下これを入金額と呼ぶ)を主制御部9に通知する。これに応じて現金自動預払機1の主制御部9は、所定の操作指示画面を操作表示部6(
図1)に表示させ、顧客にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。
【0047】
ここで入金取引の中止が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、所定の入金返却処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。一方、顧客から入金取引の継続が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、入金収納処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨をスタッカ部21へ搬送して金種毎に集積させる。
【0048】
具体的に硬貨制御部12は、まず一時保留部23のベルトを走行させることにより、一時保留部23内に集積している硬貨を前方へ搬送して繰り出し、上分離部15に順次引き渡す。上分離部15及び認識搬送部16は、硬貨を1枚ずつに分離してから認識すると共に、受渡部17へ引き渡す。
【0049】
これに応じて硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、該硬貨が再利用可能であるか否か、すなわち以降の出金処理において出金可能な硬貨であるか否かを判定し、該硬貨の搬送先を決定する。このとき硬貨制御部12は、該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ部21を搬送先とし、再利用不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、再利用不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0050】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が再利用可能であれば、前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L及び後ピンベルト搬送部18Rにより該硬貨を順次搬送する。やがてピンベルト搬送部18は、該硬貨が上ピンベルト搬送部18Uに到達すると、金種に応じたスタッカ分岐部により該硬貨を分岐させ、案内部31を介して集積部32に集積させる。
【0051】
一方、ピンベルト搬送部18は、該硬貨が再利用不可能であれば、これをリジェクト庫27へ搬送して収容させる。やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、入金収納処理を終了する。
【0052】
[1-3-2.出金取引における硬貨の搬送]
次に、現金自動預払機1(
図1)において顧客との間で出金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、顧客に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。
【0053】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6を介して顧客から出金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、出金処理を開始する。
【0054】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して操作表示部6を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付けると、硬貨制御部12において出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を決定する。続いて各スタッカ部21は、決定した金種及び枚数に応じて、集積部32に集積している硬貨を繰出部34によりそれぞれ繰り出し、下側の出金搬送部22又は一時保留部23内へ落下させ、集積させる。出金搬送部22は、ベルトの上面を前方へ走行させることにより、集積されている硬貨を前方へ搬送し、一時保留部23内へ落下させて集積させる。
【0055】
その後、硬貨制御部12は、入金返却処理及び入金収納処理の場合と同様に、一時保留部23、上分離部15及び認識搬送部16により硬貨を1枚ずつに分離して順次搬送させ、該硬貨を認識して受渡部17へ引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0056】
また硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に該硬貨が出金可能であるか否かを判定し、その搬送先を決定すると共に記憶する。すなわち硬貨制御部12は、該硬貨が出金可能であれば、入出金部13を搬送先とし、出金不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が出金可能であれば、入出金部13へ搬送して収容させる。一方、ピンベルト搬送部18は、該硬貨が出金不可能であれば、後第1リジェクト分岐部まで搬送して分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。
【0057】
やがて硬貨制御部12は、出金額に応じた金種及び枚数の硬貨を入出金部13内に収容し終えると、主制御部9(
図1)と協働して入出金部13の上シャッタ等を開放して顧客に該硬貨が取り出されるのを待ち受ける。その後、硬貨制御部12は、顧客により入出金部13内の硬貨が取り出されたことを検知すると、再び主制御部9と協働して上シャッタ等を閉塞し、出金処理を終了する。
【0058】
[1-4.上分離部の構成]
図3(A)及び(B)に示すように、上分離部15は、左側に位置する分離部筐体40を中心に構成されており、該分離部筐体40の右側における中央ないし下側の部分を集積カバー41により覆われている。因みに上分離部15は、上下方向に関し、集積カバー41に相当する部分が集積分離部15Aとなっており、その上側が分離搬送部15Bとなっている。
【0059】
分離部筐体40には、左側にモータ42が取り付けられ、内部に複数のギア(図示せず)が組み込まれ、右側に傾斜円盤43が取り付けられている。モータ42は、右側に出力軸42Sが設けられており、この出力軸42Sを回転させることにより、内部のギアを介して傾斜円盤43に駆動力を伝達する。
【0060】
傾斜円盤43は、
図3(A)におけるA1-A2断面を
図4に示すように、硬貨と比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されており、右側の盤面である表面43Sが概ね平坦に形成されている。因みに傾斜円盤43は、例えば硬度が比較的高い金属板を切削加工することにより製造されている。この傾斜円盤43は、中心軸43Cが水平方向に対して上方へ、具体的には右斜め上方を向くようにして、傾斜している。このため表面43Sは、上側部分を鉛直方向に対して左方向へやや倒したように傾いている。さらに傾斜円盤43は、中心軸43Cを回転中心として回転可能に支持されており、モータ42からギアを介して駆動力が伝達されると、矢印R1方向(
図4の時計回り、以下これを回転方向とも呼ぶ)に回転する。
【0061】
傾斜円盤43の表面43Sには、法線方向である右斜め上方向に突出する複数の分離突起44が設けられている。分離突起44は、傾斜円盤43の外周を7等分するそれぞれの箇所において、表面43Sにおける外周からやや内側に離れた箇所に取り付けられている。
【0062】
この分離突起44は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、詳細には、右側から見て平行四辺形に類似した形状となっている。すなわち分離突起44は、表面43Sにおける中心軸43Cと外周43Tとを結ぶ放射方向に関して比較的長く、周方向に関して比較的短く、左右方向に十分に短く(すなわち薄く)なっている。また分離突起44における左右方向の長さ(すなわち厚さ)は、1枚の硬貨の厚さと同等以下である約1.5[mm]となっている。
【0063】
さらに傾斜円盤43は、外周のうち7個の各分離突起44の近傍となる7箇所に、外周から中心方向へ向かってえぐられるように切り欠かれた切欠部45が形成されている。切欠部45は、右方向から見て、傾斜円盤43の外周43Tを一辺とする三角形に類似した形状となっており、該傾斜円盤43の中心軸43Cに近い頂点の近傍において、分離突起44とほぼ隣接している。
【0064】
これに加えて傾斜円盤43には、表面43Sにおける各切欠部45の周縁、すなわち外周の近傍部分(以下これを切欠周縁部とも呼ぶ)となる7箇所に、該表面43Sから法線方向に向けて突出する残留攪拌突起46が取り付けられている。残留攪拌突起46は、全体として円柱形状であり、その中心軸を傾斜円盤43の表面43Sから右斜め上方に向け、表面43Sの法線方向に沿わせている。また残留攪拌突起46は、表面43Sからの高さが分離突起44と同等の1.5[mm]となっている。
【0065】
分離部筐体40には、硬貨ガイド50が取り付けられている。硬貨ガイド50は、傾斜円盤43における下側部分の外周側に隣接する円弧状の収納ガイド51と、該収納ガイド51の前端から上方向に向けて直線状に伸びる前搬送ガイド52とにより構成されている。
【0066】
収納ガイド51は、その内周面と傾斜円盤43の外周面との間に僅かな隙間を形成している。前搬送ガイド52は、後側面が平面状に形成されており、その下端において、収納ガイド51の内周面と連続している。説明の都合上、以下では前搬送ガイド52の後側面を搬送基準面FSとも呼ぶ。この前搬送ガイド52の上端は、傾斜円盤43の上端よりも高い位置に到達している。また前搬送ガイド52は、下側の約半分が集積分離部15Aに含まれており、上側の約半分が分離搬送部15Bに含まれている。
【0067】
図4におけるB1-B2断面を
図5に示すように、前搬送ガイド52の後側における左寄りには、左搬送ガイド53及び54が設けられている。左搬送ガイド53の右側面は、平面状に形成されており、傾斜円盤43の表面43Sとほぼ同一の平面内に位置している。また左搬送ガイド53は、前側部分を前搬送ガイド52に当接させており、下後側部分を傾斜円盤43の外周面に沿わせた緩やかな円弧状に傾斜させている。さらに左搬送ガイド53の後側部分は、法線を概ね後方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見て概ね上下方向に沿った直線状となっている。
【0068】
左搬送ガイド54は、左搬送ガイド53の後側に、該左搬送ガイド53からやや離れた位置に設けられている。左搬送ガイド54の右側面は、左搬送ガイド53の右側面と同様、平面状に形成されており、傾斜円盤43の表面43Sとほぼ同一の平面内に位置している。以下では、左搬送ガイド53及び54の右側面を搬送面FCとも呼ぶ。左搬送ガイド54の前側部分は、法線を概ね前方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見て概ね上下方向に沿った直線状となっている。これにより分離部筐体40では、左搬送ガイド53及び54の間に、上下方向に沿った溝形状が形成されている。また左搬送ガイド54の下後側部分は、傾斜円盤43の外周面に沿わせた緩やかな円弧状に傾斜されている。因みに分離部筐体40では、前搬送ガイド52、左搬送ガイド53及び左搬送ガイド54がまとめて1個の部品として一体に構成されている。
【0069】
さらに分離部筐体40には、左搬送ガイド54の後側に、後搬送ガイド55が設けられている。この後搬送ガイド55の前側面は、法線を概ね前方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見て概ね上下方向に沿った直線状となっている。説明の都合上、以下では、前搬送ガイド52、左搬送ガイド53及び54及び後搬送ガイド55により囲まれた空間を、搬送空間SCとも呼ぶ。この搬送空間SCは、搬送面FCよりも右側であり、且つ搬送基準面FSよりも後側の空間となっている。
【0070】
一方、分離部筐体40の内部における傾斜円盤43の左側、すなわち
図4における傾斜円盤43の紙面奥側には、ベルトプーリ61が配置されている。ベルトプーリ61は、全体として扁平な円盤状に形成されており、その直径が傾斜円盤43の直径よりも僅かに小さくなっている。またベルトプーリ61は、中心軸を傾斜円盤43の中心軸と一致させ、円盤面を傾斜円盤43とほぼ平行に揃えるようにして、該傾斜円盤43に取り付けられている。このためベルトプーリ61は、傾斜円盤43と一体に回転することができる。
【0071】
さらに分離部筐体40は、ベルトプーリ61の上側に、該ベルトプーリ61よりも十分に小さい円盤状の前プーリ62、上プーリ63及び後プーリ64を有している。前プーリ62は、ベルトプーリ61の前上側に位置している。上プーリ63は、前プーリ62の後上側に位置している。後プーリ64は、上プーリ63の後下側であり、ベルトプーリ61の上側に位置している。前プーリ62、上プーリ63及び後プーリ64は、それぞれ分離部筐体40により回転可能に支持されており、またそれぞれの右側の表面が、ベルトプーリ61における右側の表面と同一の平面上若しくはその近傍に位置している。
【0072】
これに加えて分離部筐体40には、ベルト65が設けられている。ベルト65は、樹脂やゴム等の可撓性を有する材料で構成された無端ベルトであり、ベルトプーリ61及び上プーリ63の周囲を周回すると共に、前プーリ62及び後プーリ64の周側面にも当接するように張架されている。
【0073】
具体的にベルト65は、ベルトプーリ61の外周面に対して上端近傍から矢印R1方向に回転するように(すなわち図の時計回りに)後側、下側、前側及び前上側までの部分に渡って当接する。さらにベルト65は、ベルトプーリ61の前上側部分に当接したまま前プーリ62の後下部分ないし後端近傍に当接し、該ベルトプーリ61の周側面から離れて該前プーリ62の後端近傍から上方へ張架され、やがて上プーリ63の前端近傍に当接する。続いてベルト65は、上プーリ63の外周面に対して前端近傍から上側及び後側に渡って当接し、該上プーリ63の後端近傍から僅かに下方向へ張架されて後プーリ64の前端近傍に当接する。さらにベルト65は、後プーリ64の外周面に対して前端近傍から下端近傍に渡って当接し、該後プーリ64の外周面を離れて間もなくベルトプーリ61の上端近傍に再び当接する。
【0074】
また搬送ベルトとしてのベルト65には、所定間隔ごとに搬送ピンとしてのピン66が取り付けられている。ピン66は、ベルト65に取り付けられた取付部と、該取付部から右方向に突出した突出部とにより構成されている。このうち突出部は、中心軸を傾斜円盤43における表面43Sとほぼ平行に向けた円柱状に形成されており、その右端(すなわち先端)が該表面43Sよりも右側に突出し、分離突起44の上面とほぼ同等の位置に到達している。
【0075】
分離部筐体40では、ベルト65におけるピン66の取付間隔や取付位置が、傾斜円盤43における切欠部45の位置に合わせて設定されている。このため分離部筐体40では、ベルト65がベルトプーリ61の外周面に当接している場合、ピン66の突出部が傾斜円盤43の切欠部45に入り込み、該切欠部45内で中心軸43Cに近い箇所、すなわち分離突起44に近接した箇所に位置する。
【0076】
ピン66は、傾斜円盤43が中心軸43Cを中心に回転すると、切欠部45に入り込んだ状態を維持したまま、該傾斜円盤43及びベルトプーリ61と一体に回転する。すなわちピン66は、傾斜円盤43の外周部分と同期して、回転軌道に沿って円弧状に走行する。また分離部筐体40では、ベルト65が前プーリ62の後端近傍から上プーリ63の前端近傍にかけて張架された部分において、左搬送ガイド53及び54の間にピン66の突出部を通過させる。このときピン66は、右端近傍を搬送面FCよりも右側に突出させている。
【0077】
一方、集積カバー41(
図3)は、下側部分が傾斜円盤43の外周に極めて近接した円弧状でなり、上側へ進むに連れて該傾斜円盤43から離れるような曲面を形成しており、該傾斜円盤43との間に硬貨集積空間48を形成している。
【0078】
[1-5.上分離部による硬貨の繰出]
上分離部15は、シュート部14(
図2)から硬貨が落下してくると、この硬貨を硬貨集積空間48内に、すなわち傾斜円盤43及び集積カバー41により挟まれる空間に収納する。その後、上分離部15は、硬貨制御部12の制御に基づいて硬貨を繰り出す繰出処理と、この硬貨を搬送して後段の認識搬送部16(
図2)に引き渡す搬送処理とを行う。
【0079】
具体的に上分離部15は、まずモータ42(
図3)からの駆動力によって傾斜円盤43を矢印R1方向(すなわち
図4の時計回り)に回転させる。これにより上分離部15は、硬貨集積空間48内に集積された硬貨を分離突起44により適宜攪拌しながら、
図6及び
図7(A)に示すように、該分離突起44に硬貨CNを1枚ずつ引っ掛ける。因みに
図7(A)は、
図6におけるC1-C2断面図である。このとき硬貨CNは、左側の盤面を傾斜円盤43の表面43Sに当接させると共に、周側面のうち後側の一部を分離突起44に当接させ、下側の一部を収納ガイド51の内側面に当接させる。
【0080】
さらに上分離部15は、傾斜円盤43を引き続き回転させることにより、硬貨CNにおける左側の盤面を該傾斜円盤43に当接させ、且つ該硬貨CNの周側面を分離突起44及び収納ガイド51に当接させた状態を維持しながら、該収納ガイド51の内側面に沿って摺動させ、前上方へ持ち上げていく。
【0081】
やがて上分離部15は、
図8(A)に示すように、硬貨が傾斜円盤43の前端付近に到達すると、該硬貨の前端部分が前搬送ガイド52の後側面、すなわち搬送基準面FSに当接し、分離突起44が該硬貨CNの後下側から前上方向へ力を加えるように、換言すれば駆動力を供給するようになる。これにより上分離部15は、この硬貨CNの前端を搬送基準面FSに摺動させる。
【0082】
上分離部15は、引き続き傾斜円盤43を回転させ、ベルト65が前プーリ62の近傍に到達すると、
図8(B)に示すように、分離突起44から引き継いでピン66が硬貨CNの後下側に、すなわち該硬貨CNの重心よりも後側に当接するようになる。これに加えて上分離部15では、この硬貨CNを上流側の集積分離部15Aから下流側の分離搬送部15Bに引き渡し、該硬貨CNの左側面を傾斜円盤43の表面43Sに当接させた状態から、左搬送ガイド53及び54の右側面、すなわち搬送面FCに当接させた状態となる。
【0083】
続いて上分離部15は、傾斜円盤43の回転に伴ってベルト65を走行させることにより、分離突起44に隣接していたピン66を該分離突起44から徐々に引き離し、左搬送ガイド53及び54の隙間に沿って上昇させる。これにより上分離部15は、
図8(C)に示すように、硬貨CNの前端近傍を搬送基準面FSに摺動させ、且つ左側面を搬送面FCに摺動させながら、搬送空間SC(
図5)内でこの硬貨CNを上方向へ搬送することができる。その後、上分離部15は、ベルト65をさらに走行させることにより、硬貨CNを上搬送ガイド57等に沿って後方向へ搬送した後、認識搬送部16(
図2)に引き渡す。
【0084】
ここで再び
図6を参照すると、傾斜円盤43では、分離突起44が該傾斜円盤43の外周43Tからやや内側に離れた箇所に位置しており、該分離突起44の外周側に切欠部45が形成されている。傾斜円盤43は、このように構成されているため、硬貨集積空間48内において切欠部45内にピン66を位置させておくことにより、集積分離部15A側から分離搬送部15B側に硬貨CNを引き渡す際に(
図8)、該ピン66を該硬貨CNの後下側に当接させたまま繰り出す、といった動作を行い得る。
【0085】
図6において、ピン66が通過する軌跡のうち外周側の境界に相当するピン外周軌跡L66を描くと、ピン66及び分離突起44は、このピン外周軌跡L66よりも内側、すなわち中心軸43C(
図4)側に位置している。
【0086】
実際上、上分離部15では、
図7(A)に示したように、硬貨集積空間48内の底部付近において、硬貨CNが鉛直方向に対して上側部分をやや左側に倒し、左側の盤面を傾斜円盤43の表面43Sとほぼ平行に向けた姿勢(以下これを分離姿勢と呼ぶ)となる場合が多い。この場合、上分離部15は、この分離姿勢の硬貨CNに対し、分離突起44又はピン66により、後方から力を加えることができる(
図6)。
【0087】
一方、上分離部15では、
図7(B)に示すように、硬貨CNが鉛直方向に対して上側部分をやや右側に倒し、すなわち傾斜円盤43と反対側に倒し、集積カバー41にもたれかかった姿勢(以下これを非分離姿勢と呼ぶ)となる場合がある。このとき上分離部15では、非分離姿勢の硬貨CNが分離突起44やピン66の通過範囲から外れているため、該硬貨CNに該分離突起44又は該ピン66を当接させることができない。
【0088】
このことを踏まえて、本実施の形態による上分離部15では、残留攪拌突起46が設けられている。この残留攪拌突起46は、
図6に示したように、表面43Sにおけるピン外周軌跡L66よりも外側の部分であり、且つ切欠部45の矢印R2方向側、すなわち傾斜円盤43が矢印R1方向に回転する際に切欠部45の下流側となる下流外側領域AR1に設置されている。
【0089】
このため上分離部15は、傾斜円盤43を回転させた場合、
図7(C)に示すように、非分離姿勢である硬貨CNに対し、この残留攪拌突起46を下側部分の後側から衝突させる。これにより上分離部15では、当該硬貨CNの姿勢を崩し、非分離姿勢から分離姿勢(
図7(A))に遷移させることができる。
【0090】
[1-6.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10では、上分離部15の傾斜円盤43における表面43Sのピン外周軌跡L66よりも外側に、残留攪拌突起46を設けた(
図4及び
図6)。このため上分離部15は、仮に硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが非分離姿勢(
図7(B))となり、分離突起44やピン66を該硬貨CNに当接させ得なかったとしても、残留攪拌突起46を該硬貨CNに当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢(
図7(A))に遷移させることができる。これにより上分離部15は、この硬貨CNを分離突起44やピン66に当接させることができ、集積分離部15A側から分離搬送部15B側へ引き渡して繰り出すことができる(
図8)。
【0091】
ところで上分離部15では、
図8を参照しながら説明したように、集積分離部15A側から分離搬送部15B側に硬貨CNを引き渡す際、該硬貨CNが左側の盤面を傾斜円盤43の表面43Sに摺動させながら、外方へ、すなわち中心軸43C(
図4)から離れる方向へ、徐々に移動していく。
【0092】
このとき硬貨CNは、傾斜円盤43の表面43Sのうち、分離突起44及びこれに隣接する切欠部45よりも矢印R1方向に位置する部分、すなわち分離突起44及び切欠部45の上流側に位置する部分である上流側領域AR2に対し、左側の盤面を摺動させることになる。すなわち上流側領域AR2は、表面43Sにおいて硬貨CNの移動経路に含まれた部分となっている。
【0093】
このため上分離部15では、仮にこの上流側領域AR2のうちピン外周軌跡L66よりも外側の部分に残留攪拌突起46を配置した場合、非分離姿勢の硬貨CN(
図7(C))の姿勢を崩し得るものの、集積分離部15A側から分離搬送部15B側に引き渡される硬貨CNと干渉し、硬貨CNを正常に繰り出すことができなくなってしまう。
【0094】
そこで本実施の形態による上分離部15では、傾斜円盤43の表面43Sにおけるピン外周軌跡L66よりも外側であり、且つ切欠部45の下流側となる下流外側領域AR1に、残留攪拌突起46を配置した(
図6)。これにより上分離部15では、集積分離部15A側から分離搬送部15B側への硬貨の引き渡しを阻害すること無く、非分離姿勢の硬貨CN(
図7(C))の姿勢を崩して分離姿勢(
図7(A))に遷移させることが可能となっている。
【0095】
さらに上分離部15では、残留攪拌突起46の表面43Sからの高さを、分離突起44と同等の長さである1.5[mm]に、すなわち硬貨処理装置10により取扱可能な硬貨のうち最も薄い硬貨CNの厚さと同等にした。これにより上分離部15では、仮に硬貨集積空間48内において複数の硬貨CNが互いの盤面を当接させた状態で重なっていたとしても、これらの硬貨CNのうち最も傾斜円盤43側の1枚にのみ該残留攪拌突起46を当接させることができ、2枚以上の硬貨を重なった状態のまま繰り出してしまうことを確実に回避できる。
【0096】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、上分離部15の傾斜円盤43における表面43Sのピン外周軌跡L66よりも外側に、残留攪拌突起46を設けた。このため上分離部15は、仮に硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが非分離姿勢となった場合、残留攪拌突起46を該硬貨CNに当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢に遷移させる。これにより上分離部15は、この硬貨CNを分離突起44に引っかけて持ち上げることができ、続いてピン66により集積分離部15A側から分離搬送部15B側へ引き渡すことができるので、該硬貨CNを円滑に繰り出すことができる。
【0097】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(
図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置110(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、上分離部15に代わる上分離部115を有する点において相違するもの、他の点については同様に構成されている。
【0098】
上分離部115(
図3等)は、第1の実施の形態による上分離部15と比較して、傾斜円盤43に代わる傾斜円盤143を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。傾斜円盤143は、第1の実施の形態による傾斜円盤43と比較して、残留攪拌突起46に代わる残留攪拌突起146を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0099】
傾斜円盤143は、
図6と対応する
図9(A)に右側面図を示すと共に、該傾斜円盤143の外周側から内周方向を見た状態を
図9(B)に示すように、外周143Tからやや内周側に離れた箇所であって、ピン外周軌跡L66よりも外周側に、周方向に沿った切込線143CLが形成されている。そのうえで傾斜円盤143は、切込線143CLよりも外周側の部分、すなわち下流外側領域AR1内の一部分に対して、打出等の加工処理が施される。このように傾斜円盤143には、その一部が右方向へ隆起されることにより、すなわち表面143Sの法線に沿った方向へ突出されることにより、残留攪拌突起146が形成されている。残留攪拌突起146の一部は、表面143Sの法線に対して傾斜した傾斜面となっている。
【0100】
残留攪拌突起146は、表面143Sからの突出量、すなわち高さが、第1の実施の形態による残留攪拌突起46と同様であり、分離突起44とも同等である1.5[mm]となっている。このような構成により、残留攪拌突起146は、傾斜円盤143が回転された際に、第1の実施の形態による残留攪拌突起46と同様の作用効果を奏し得る。
【0101】
これにより上分離部115は、第1の実施の形態と同様、仮に硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが非分離姿勢(
図7(B))となり、分離突起44やピン66を該硬貨CNに当接させ得なかったとしても、残留攪拌突起146を該硬貨CNに当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢(
図7(A))に遷移させることができる。
【0102】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201(
図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置210(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、上分離部15に代わる上分離部215を有する点において相違するもの、他の点については同様に構成されている。
【0103】
[3-1.上分離部の構成]
図4と対応する
図10に示すように、上分離部215は、第1の実施の形態による上分離部15と比較して、傾斜円盤43の表面43Sに、分離突起44及び残留攪拌突起46に代わる分離突起244及び残留攪拌突起246を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0104】
分離突起244は、第1の実施の形態における分離突起44と比較して、表面43Sからの高さが同等である一方、傾斜円盤243の中心(すなわち中心軸43C)側へ延長されたような形状となっている。残留攪拌突起246には、
図11に斜視図を示すように、第1の実施の形態における残留攪拌突起46と概ね同等の大きさでなる標準残留攪拌突起246Sと、該標準残留攪拌突起246Sよりも大型の大型残留攪拌突起246Lとがある。
【0105】
標準残留攪拌突起246Sは、全体として、中心軸を表面43Sの法線方向に沿わせた円錐状に形成されており、その頂点近傍が曲面状に丸められている。この標準残留攪拌突起246Sは、
図12(A)に模式的な断面図を示すように、直径及び高さ(すなわち表面43Sから頂点までの距離)が残留攪拌突起46と同等となっている。具体的には、標準残留攪拌突起246Sの高さHSが1.5[mm]となっている。また標準残留攪拌突起246Sは、表面43Sに対する傾斜面の角度(以下これを傾斜角度θと呼ぶ)が30度となっている。
【0106】
上分離部215では、
図6と対応する
図13(A)に示すように、最も大きい硬貨CNを標準残留攪拌突起246S及び分離突起244の間に位置させて該分離突起244に引っかけた場合、当該硬貨CN及び標準残留攪拌突起246Sの間にある程度の隙間が形成される。
【0107】
一方、大型残留攪拌突起246Lは、標準残留攪拌突起246Sと同様、全体として、中心軸を表面43Sの法線方向に沿わせた円錐状に形成されており、その頂点近傍が曲面状に丸められている。その一方で大型残留攪拌突起246Lは、
図12(B)に模式的な断面図を示すように、直径及び高さが何れも標準残留攪拌突起246Sよりも大きくなっている。
【0108】
具体的には、大型残留攪拌突起246Lの高さHLが、標準残留攪拌突起246Sの高さHSよりも大きい、すなわち表面43Sからの分離突起244やピン66の突出距離よりも大きい、高さ3[mm]となっている。また大型残留攪拌突起246Lにおける傾斜面の傾斜角度は、標準残留攪拌突起246Sと同様に30度となっている。
【0109】
上分離部215では、
図13(A)と対応する
図13(B)に示すように、最も大きい硬貨CNを大型残留攪拌突起246L及び分離突起244の間に位置させて該分離突起244に引っ掛けた場合、当該硬貨CN及び大型残留攪拌突起246Lの間に隙間が殆ど形成されず、互いに隣接したような状態となる。
【0110】
[3-2.上分離部による硬貨の繰出]
上分離部215では、
図7(A)と対応する
図14(A)に示すように、硬貨集積空間48内の底部付近において、硬貨CNが上端近傍を左側に倒した分離姿勢であった場合、第1の実施の形態と同様、傾斜円盤43の回転に伴い、当該硬貨CNを分離突起244に引っかけて前方向乃至上方向へ進行させることができる。このとき上分離部215では、硬貨CNを円滑に進行させた後、上流側の集積分離部15Aから下流側の分離搬送部15Bに円滑に引き渡すことができる。
【0111】
また上分離部215では、
図7(B)及び(C)に示した場合と同様に、硬貨集積空間48の底部近傍において硬貨CNの上端近傍が傾斜円盤43の表面43Sから離れた非分離姿勢であり、且つ下端近傍が該表面43Sに近接した状態となる可能性がある。このとき上分離部215では、第1の実施の形態同様に、標準残留攪拌突起246Sを硬貨集積空間48内の底部付近に到達させて硬貨CNの下端近傍に当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢に遷移させることができる。
【0112】
しかしながら上分離部215では、
図14(A)と対応する
図14(B)に示すように、硬貨CNの上端近傍が傾斜円盤43の表面43Sから離れた非分離姿勢であり、且つ下端近傍も該表面43Sからやや離隔していた場合、標準残留攪拌突起246Sを硬貨CNの下端近傍に当接させ得ない可能性がある。具体的には、硬貨CNの下端と傾斜円盤43の表面43Sとの間に、標準残留攪拌突起246Sの高さHS(1.5[mm])よりも大きい距離の隙間を形成していた場合が該当する。
【0113】
この場合、上分離部215では、傾斜円盤43を暫く回転させることにより、
図14(C)に示すように、やがて大型残留攪拌突起246Lが硬貨集積空間48内の底部付近に到達する。このとき上分離部215では、大型残留攪拌突起246Lの高さHL(
図12(B))が標準残留攪拌突起246Sの高さHSよりも大きいため、該大型残留攪拌突起246Lを当該硬貨CNに当接させてその姿勢を崩し、非分離姿勢から分離姿勢(
図14(A))に遷移させることができる。
【0114】
[3-3.効果等]
以上の構成において、第3の実施の形態による現金自動預払機201の硬貨処理装置210では、上分離部215の傾斜円盤43における表面43Sに、6個の標準残留攪拌突起246S及び1個の大型残留攪拌突起246Lを設けた(
図10)。
【0115】
このため上分離部215は、硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが非分離姿勢となり、且つその下端近傍が表面43Sに近接していた場合(
図7(B)及び(C))、標準残留攪拌突起246Sに当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢とし、分離突起244に引っかけて進行させることができる。
【0116】
また上分離部215は、硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが非分離姿勢となり、且つその下端近傍が表面43Sに離隔していた場合、該硬貨CNに標準残留攪拌突起246Sを当接させ得ない可能性がある(
図14(B))。この場合上分離部15は、大型残留攪拌突起246Lを当該硬貨CNに当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢とし、分離突起244に引っかけて進行させることができる。
【0117】
このうち標準残留攪拌突起246Sは、非分離姿勢の硬貨CNに対し、当接してある程度姿勢を崩す効果を期待し得るものの、当該硬貨CNの下端が表面43Sから離隔している場合には当接し得ない可能性がある(
図14(B))。一方、大型残留攪拌突起246Lは、標準残留攪拌突起246Sと比較して、非分離姿勢の硬貨CNに当接してその姿勢を崩す可能性を高め得るものの(
図14(C))、硬貨集積空間48内に集積されている硬貨を過剰に攪拌してしまい、却って硬貨CNが分離突起44に引っ掛かり難くなる恐れがある。
【0118】
そこで上分離部215では、傾斜円盤43上に、互いに大きさが異なる複数種類の残留攪拌突起を配置した(
図10)。これにより上分離部215では、傾斜円盤43を回転させて硬貨集積空間48の底部付近における各残留攪拌突起246の位置を順次変化させることにより、各残留攪拌突起246を非分離姿勢の硬貨CNに当接させてその姿勢を崩すことと、分離突起244に硬貨CNを引っかけて硬貨CNを円滑に繰り出すこととを両立できる。
【0119】
また上分離部215では、標準残留攪拌突起246Sを6個設けると共に、大型残留攪拌突起246Lを1個設けた。これにより上分離部215では、硬貨集積空間48内で硬貨CNを分離突起244に引っかけることと、非分離姿勢の硬貨CNの姿勢を崩すこととを、適切な割合で実現することができる。すなわち上分離部215では、傾斜円盤43を1回転させる間に、大型残留攪拌突起246Lが硬貨集積空間48の底部近傍を通過するため、非分離姿勢の硬貨CNの姿勢を崩すことを期待できる。
【0120】
また第1の実施の形態による上分離部15では、残留攪拌突起46が円柱状であったため(
図7等)、非分離姿勢の硬貨CNにおける周側面のうち後下側の部分に対し、該残留攪拌突起46からほぼ前方向へ向かう力を作用させてしまう可能性があった。この場合、上分離部15では、当該硬貨CNを硬貨集積空間48の底部近傍から移動させることはできるものの、傾斜円盤43に対する硬貨CNの間隔や姿勢を殆ど変化させることができず、分離突起44に引っかけ得ない恐れがあった。
【0121】
この点において、本実施の形態による上分離部215では、標準残留攪拌突起246S及び大型残留攪拌突起246Lを円柱状ではなく円錐状とし、傾斜面を持たせた(
図11及び
図12等)。このため上分離部215では、非分離姿勢の硬貨CNに標準残留攪拌突起246S又は大型残留攪拌突起246Lを当接させた場合、傾斜面から当該硬貨CNに対して右前方向に向かう力を作用させることができ、その姿勢を変化させて傾斜円盤43の表面43Sや分離突起244に当接させることを期待できる。
【0122】
特に上分離部215では、残留攪拌突起246(すなわち標準残留攪拌突起246S及び大型残留攪拌突起246L)における傾斜面の傾斜角度θ(
図12)を30度とした。これにより上分離部215では、傾斜円盤43の回転に伴って硬貨集積空間48内の硬貨CNに当接した際に、前以外の方向(すなわち右方向や上方向等)に対して積極的に力を作用させ、該硬貨CNを過剰に攪拌すること無く、適度にその姿勢を変化させることができる。
【0123】
その他の点においても、上分離部215では、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0124】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による現金自動預払機201の硬貨処理装置210は、上分離部215の傾斜円盤43に、何れも円錐状でなり互いに大きさが異なる標準残留攪拌突起246S及び大型残留攪拌突起246Lを設けた。このため上分離部215は、仮に硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが上端及び下端が何れも表面43Sからある程度離隔させた非分離姿勢であった場合、大型残留攪拌突起246Lを該硬貨CNに当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢に遷移させる。これにより上分離部215は、この硬貨CNを分離突起244に引っかけて持ち上げ、集積分離部15A側から分離搬送部15B側へ引き渡すことができるので、該硬貨CNを円滑に繰り出すことができる。
【0125】
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、残留攪拌突起46を円柱状に構成し、且つその中心軸を表面43Sの法線方向に沿わせるように設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば残留攪拌突起46を4角柱状や6角柱状、或いは楕円柱状等、種々の柱形状としても良い。またこれらの場合、表面43S付近(すなわち根元部分)と該表面43Sから法線方向に離れた右端(すなわち先端部分)近傍とで、直径や外形を相違させても良い。すなわち、例えば先端近傍において、先端側へ進むに連れて直径を小さくするような、いわゆるテーパ形状としても良い。また、中心軸を表面43Sの法線方向に対して傾斜させ、或いは屈曲若しくは湾曲させても良い。さらには種々の立体形状としても良い。
【0126】
また上述した第1の実施の形態においては、表面43Sからの残留攪拌突起46の高さを、分離突起44と同等の1.5[mm]とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、
図7(B)に示した状態の硬貨CNと接触でき、且つ、複数枚の硬貨CNが重なった状態において最も傾斜円盤43側の1枚のみに当接し得るように、すなわち硬貨CNの厚さ以下となるように、残留攪拌突起46の高さを種々の値に設定しても良い。例えば、残留攪拌突起46の高さを1.3[mm]や1.0[mm]等、分離突起44よりも低く設定しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0127】
さらに上述した第2の実施の形態においては、傾斜円盤143に切込線143CLを設け、その外周側部分を表面143Sの法線方向へ隆起させることにより残留攪拌突起146を形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、傾斜円盤143に種々の加工を施すことにより、表面143Sの法線方向へ突出した残留攪拌突起146を形成しても良い。
【0128】
例えば
図9と対応する
図15に示すように、上分離部115と対応する上分離部315において、傾斜円盤343のうち下流外側領域AR1内における切欠部45からやや離れた箇所に、外周側から中心側へ向かって切込線343CLを形成すると共に、切欠部45及び切込線343CLに挟まれた部分を予め外方へ延長しておいても良い。そのうえで、この切欠部45及び切込線343CLに挟まれた部分を適宜屈曲させることにより、その一部を表面343Sの法線方向に突出させて残留攪拌突起346としても良い。
【0129】
また、
図9及び
図15と対応する
図16に示すように、上分離部115等と対応する上分離部415において、傾斜円盤443のうち下流外側領域AR1の境界線のうちピン外周軌跡L66に沿った部分に対し、切欠部45から切込線443CLを形成しても良い。そのうえで、この切込線443CLよりも外周側の部分を、外周側から見て表面443Sの法線方向に向けて突出した円弧を描くように湾曲させることにより、残留攪拌突起446を形成しても良い。
【0130】
或いは、
図9、
図15及び
図16と対応する
図17に示すように、上分離部115等と対応する上分離部515において、傾斜円盤543のうち下流外側領域AR1の境界線のうちピン外周軌跡L66に沿った部分に対し、切欠部45から切込線543CLを形成しても良い。そのうえで、この切込線543CLよりも外周側の部分を、切欠部45へ近づくに連れて表面543Sの法線方向に向けて突出する傾斜面を形成するように屈曲させることにより、残留攪拌突起546を形成しても良い。
【0131】
さらに上述した第3の実施の形態においては、硬貨集積空間48内の底部付近において硬貨CNが非分離姿勢であり、且つその下端近傍が傾斜円盤43の表面43Sから離隔していた場合(
図14(B))、該傾斜円盤43を適宜回転させ、大型残留攪拌突起246Lを該底部付近に到達させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば傾斜円盤43における大型残留攪拌突起246Lの位置を検出するセンサを設け、該センサの検出結果に基づき硬貨制御部12によってモータ42(
図3等)の回転を制御することにより、大型残留攪拌突起246Lを把握しながら底部付近に到達させても良い。さらにこの場合、大型残留攪拌突起246Lを底部付近に位置させながら傾斜円盤43を矢印R1方向及び矢印R2方向へ交互に回転させることにより、該傾斜円盤43を一方向に回転させる場合よりも短時間で、非分離姿勢であった硬貨CNの姿勢を崩すようにしても良い。
【0132】
さらに上述した第3の実施の形態においては、標準残留攪拌突起246S及び大型残留攪拌突起246Lといった、互いに形状が相違する2種類の残留攪拌突起246を傾斜円盤43の表面43Sに設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、互いに形状が相違する3種類以上の残留攪拌突起を表面43Sに設けても良い。この場合、少なくとも1種類において、傾斜円盤43の表面43Sからの高さを硬貨CNの厚さよりも大きくすれば良い。
【0133】
さらに上述した第3の実施の形態においては、傾斜円盤43に標準残留攪拌突起246Sを6個設けると共に大型残留攪拌突起246Lを1個設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば傾斜円盤43に標準残留攪拌突起246Sを5個設けると共に大型残留攪拌突起246Lを2個設ける等、標準残留攪拌突起246S及び大型残留攪拌突起246Lの数量を適宜変化させても良い。
【0134】
さらに上述した第3の実施の形態においては、標準残留攪拌突起246Sの傾斜面における表面43Sに対する角度である傾斜角度θを30度とする場合について述べた(
図12)。しかしながら本発明はこれに限らず、傾斜角度θを45度や20度等、他の種々の角度としても良い。この場合、傾斜角度θを少なくとも45度以下とすることにより、非分離状態の硬貨CNに当接した際に、該硬貨CNに対して前以外の方向に対して積極的に力を加えてその姿勢を変化させ得れば良い。
【0135】
さらに上述した第1の実施の形態においては、切欠部45(
図6)の矢印R2方向側、すなわち傾斜円盤43が矢印R1方向に回転する際に該切欠部45の下流側となる部分のうち、ピン外周軌跡L66よりも外周側である下流外側領域AR1に残留攪拌突起46を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば切欠部45の下流側となる部分のうち、下流外側領域AR1に加えて、ピン外周軌跡L66よりも内周側である下流内側領域AR3にもピン外周軌跡L66を設けても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0136】
さらに上述した第1の実施の形態においては、金属板でなる傾斜円盤43に別部品の残留攪拌突起46を取り付ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鋳造や削り出し等の加工法により、傾斜円盤43及び残留攪拌突起46を一体の部品として製造しても良い。またこの場合、さらに分離突起44も一体の部品として製造しても良い。第3の実施の形態についても同様である。
【0137】
さらに上述した第1の実施の形態においては、傾斜円盤43に設ける7個の残留攪拌突起46を互いに同等の形状とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第3の実施の形態のように、2種類以上の異なる形状でなる残留攪拌突起46を傾斜円盤43に設けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0138】
さらに上述した第1の実施の形態においては、傾斜円盤43における周方向に沿ってほぼ等間隔となる7箇所に、分離突起44、切欠部45及び残留攪拌突起46等を設ける場合について述べた(
図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、傾斜円盤43における周方向に沿って6箇所以下又は8箇所以上に、分離突起44等を設けても良い。また、傾斜円盤43における周方向に沿った分離突起44等の間隔は、互いに同等でなくても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0139】
さらに上述した第1の実施の形態においては、本発明を上分離部15に適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下分離部29に適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0140】
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金自動預払機1に組み込まれる硬貨処理装置10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば自動券売機等のように顧客との間で硬貨に関する取引を行う種々の装置や、金融機関の職員や小売店の店員等が現金を管理するために使用する現金管理装置等に本発明を適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0141】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0142】
さらに上述した実施の形態においては、集積分離部としての集積分離部15Aと、搬送部としての分離搬送部15Bとによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。さらに、傾斜円盤としての傾斜円盤43と、集積カバーとしての集積カバー41と、分離突起としての分離突起44と、切欠部としての切欠部45と、搬送ベルトとしてのベルト65と、ピンとしてのピン66と、攪拌突起としての残留攪拌突起46とによって集積分離部を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる集積分離部と、搬送部とによって硬貨処理装置を構成し、その他種々の構成でなる傾斜円盤と、集積カバーと、分離突起と、切欠部と、搬送ベルトと、ピンと、攪拌突起とによって集積分離部を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、例えば顧客との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等で利用できる。
【符号の説明】
【0144】
1、101、201……現金自動預払機、10、110、210……硬貨処理装置、12……硬貨制御部、13……入出金部、14……シュート部、15、115、215、315、415、515……上分離部、15A……集積分離部、15B……分離搬送部、16……認識搬送部、29……下分離部、29A……集積分離部、29B……分離搬送部、40……分離部筐体、41……集積カバー、43、143、243、343、443……傾斜円盤、43C……中心軸、43S、143S、243S、343S、443S……表面、43T、143T……外周、44、244……分離突起、45……切欠部、46、146、246、346、446、546……残留攪拌突起、246S……標準残留攪拌突起、246L……大型残留攪拌突起、48……硬貨集積空間、50……硬貨ガイド、51……収納ガイド、52……前搬送ガイド、53、54……左搬送ガイド、65……ベルト、66……ピン、143CL、243CL、343CL、443CL……切込線、AR1……下流外側領域、AR2……上流側領域、AR3……下流内側領域、CN……硬貨、L66……ピン外周軌跡、SC……搬送空間、HS、HL……高さ、θ……傾斜角度。