(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型平版印刷インキおよびその印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20230725BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20230725BHJP
C09D 11/10 20140101ALI20230725BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20230725BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/037
C09D11/10
B41M1/06
B41M1/30 D
(21)【出願番号】P 2019232230
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 有香里
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-056185(JP,A)
【文献】特開平06-157964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
B41M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、(メタ)アクリレート化合物、および、体質顔料を含有する活性エネルギー線硬化型平版印刷インキであって、
前記樹脂が、ロジン変性樹脂(A)、および、ジアリルフタレート樹脂を含み、
前記ロジン変性樹脂(A)の含有量が、樹脂全量中の50~80質量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、且つ、オクタノール/水分配係数(LogP)が2.5以上のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(B)を、インキ全量中10質量%以上含むことを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ。
【請求項3】
前記体質顔料が、シリカ、炭酸マグネシウム、および、タルクからなる群から選ばれる少なくとも2種を含むことを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ。
【請求項4】
前記ロジン変性樹脂(A)が、共役系ロジン酸(A1)にα,β―不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)が付加した化合物に由来する構造単位(a12)と、前記共役系ロジン酸(A1)を除く有機一塩基酸(A3)に由来する構造単位(a3)と、ポリオール(A5)に由来する構造単位(a5)とを有し、
前記構造単位(a12)と前記構造単位(a3)との重量比が、100:10~100:350の範囲である、請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ。
【請求項5】
基材上に、請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキを用いて形成した印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な印刷適性を有する活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ及びその印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷インキは5~100Pa・sの比較的粘度の高いインキである。平版印刷機の機構は、インキが印刷機のインキ壺から複数のローラーを経由して版面の画線部に供給され、湿し水を使用する平版印刷では非画線部に湿し水が供給されることで、湿し水無し平版印刷ではシリコン層で出来た非画線部がインキを反発することで、画像が形成される。
【0003】
特に、湿し水を使用した平版印刷においてはインキと湿し水との乳化バランスが重要であり、適度な乳化特性を有する、高速印刷適性を持ったインキが求められている。インキは最大乳化量が低いとインキ中に湿し水を持ちきれずインキ表面に湿し水が吐き出され、ロール間のインキ転移や用紙へのインキ転移性が悪くなり、安定して印刷することが難しくなる。また、インキが乳化して粘弾性が低下すると、ロール間のインキ転移性が悪くなりロール上でのインキ余りを起こし、印刷時や印刷リスタート時の汚れが発生する。
【0004】
さらに近年では、印刷時の自動化、高速化の要求が高まってきており、特に印刷スピードは益々高速化してきている。印刷の高速化に伴い、インキのミスチングも課題となっており、印刷機周りの汚れ等による印刷環境の悪化や、大粒のインキが飛ぶことによる紙面の汚れ等が発生している。以上の様に、様々な印刷条件下に於いてトラブルレスで長時間安定して高品位な印刷物が得られるインキが望まれており、インキメーカーでは種々の改良を実施してきている。
【0005】
一方、活性エネルギー線硬化型インキはアクリルエステル化合物のような活性エネルギー線硬化性を有する不飽和化合物を構成成分として含有しており、活性エネルギー線照射とともに瞬時に硬化し、上記不飽和化合物の3次元架橋による強靭な皮膜を形成する。瞬時に硬化することから、印刷直後に後加工を行うことが出来るため、生産性向上および意匠の保護のため強い皮膜が要求される包装用パッケージ印刷や商業分野におけるフォーム印刷等において、活性エネルギー線硬化型インキが好適に使用されている。
【0006】
一般に活性エネルギー線硬化型インキは、樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物、顔料、ラジカル重合開始剤、各種添加剤からなる。
【0007】
活性エネルギー線硬化型インキにおいて乳化適性、地汚れ耐性といった印刷適性を発現させるためには樹脂を用いることが有効である。活性エネルギー線硬化型インキに用いられる樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂がよく知られているが、ジアリルフタレート樹脂は単体では最大乳化量が低く、高乳化状態になった際にインキ中に湿し水を持ちきれず、粘弾性が低下しロール間のインキ転移や用紙へのインキ転移性が悪くなり、安定した印刷を行うことが困難となっている。
【0008】
樹脂の乳化適性を向上させる為に不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ロジン変性樹脂等が検討されてきた。
特許文献1、2では、ロジン変性樹脂として、共役系ロジン酸にα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物、有機一塩基酸、ポリオール、を付加することで印刷適性と硬化性を改善させているが、ロジン変性樹脂単体では親水性が高くなることから湿し水との親和性が高く、印刷時の汚れや、粘弾性が低下することによるミスチングの原因になってしまう為、地汚れ耐性とミスチング適性の改善が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/164246号
【文献】特開2010-070742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高い乳化粘弾性維持率、地汚れ耐性、およびミスチング適正とを併せ持つ活性エネルギー線硬化型平版印刷インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、樹脂、(メタ)アクリレート化合物、体質顔料を含有する活性エネルギー線硬化型平版インキ組成物において、樹脂としてロジン変性樹脂、および、ジアリルフタレート樹脂を含み、尚且つ、ロジン変性樹脂の含有量が、樹脂全量中の50~80質量%である場合、高い乳化粘弾性維持率と地汚れ耐性とミスチング適正を併せ持つ活性エネルギー線硬化型平版印刷インキが得られることを見出し、本発明を完了した。
【0012】
すなわち、本発明は、樹脂、(メタ)アクリレート化合物、および、体質顔料を含有する活性エネルギー線硬化型平版印刷インキであって、
前記樹脂が、ロジン変性樹脂(A)、および、ジアリルフタレート樹脂を含み、
前記ロジン変性樹脂(A)の含有量が、樹脂全量中の50~80質量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型平版印刷インキに関する。
【0013】
また、本発明は、前記(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、且つ、オクタノール/水分配係数(LogP)が2.5以上のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(B)を、インキ全量中10質量%以上含むことを特徴とする上記の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキに関する。
【0014】
また、本発明は、前記体質顔料が、シリカ、炭酸マグネシウム、および、タルクからなる群から選ばれる少なくとも2種を含むことを特徴とする上記の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキに関する。
【0015】
また、本発明は、前記ロジン変性樹脂(A)が、共役系ロジン酸(A1)にα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)が付加した化合物に由来する構造単位(a12)と、前記共役系ロジン酸(A1)を除く有機一塩基酸(A3)に由来する構造単位(a3)と、ポリオール(A5)に由来する構造単位(a5)とを有し、
前記構造単位(a12)と前記構造単位(a3)との重量比が、100:10~100:350の範囲である、上記の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキに関する。
【0016】
また、本発明は、基材上に、上記活性エネルギー線硬化型平版印刷インキを用いて形成した印刷層を有する印刷物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、乳化量が高いロジン変性樹脂とジアリルフタレート樹脂を一定の割合で併用することにより、高い乳化粘弾性維持率、地汚れ耐性、およびミスチング適正を併せ持つ活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ及びその印刷物を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0019】
本発明の、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキはロジン変性樹脂(A)、ジアリルフタレート樹脂、(メタ)アクリレート化合物、および、体質顔料を含有し、前記ロジン変性樹脂の含有量が、樹脂全量中の50~80質量%、含有することを特徴とする。
【0020】
以下、インキの構成成分について具体的に説明する。
<ロジン変性樹脂(A)>
本明細書において、「ロジン変性樹脂(A)」は、ロジン酸類と少なくともポリオール(A5)を含む成分との重合体である。
活性エネルギー線硬化型平版印刷インキのバインダー樹脂として上記ロジン変性樹脂(A)を使用する場合、ロジン酸類に含まれる共役二重結合が硬化阻害の原因となる。そのため、ロジン変性樹脂(A)は、樹脂中の共役二重結合を低減又は消失させるために、ロジン酸類にα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)が付加した化合物を、さらにエステル化して得られる樹脂であってよい。
【0021】
上記ロジン変性樹脂は、共役系ロジン酸(A1)にα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)が付加した化合物に由来する構造単位(a12)と、上記共役系ロジン酸(A1)を除く有機一塩基酸(A3)に由来する構造単位(a3)と、ポリオール(A5)に由来する構造単位(a5)とを有し、上記構造単位(a12)と上記構造単位(a3)との重量比(a12):(a3)が、100:10~100:350である、ロジン変性樹脂(A)が好ましい。
上記重量比(a12):(a3)は、100:10~100:350であることが好ましく、100:10~100:300であることがより好ましく、100:10~100:250であることがさらに好ましい。ロジン変性樹脂(A)において、上記重量比(a12):(a3)比が上記範囲内である場合、印刷被膜に光沢性を発現させることが容易となる。また、公的な分子量分布を有する樹脂を得ることが容易であり、そのことによって活性エネルギー線硬化型化合物(B)に対する溶解性、及びインキの耐ミスチング性が向上しやすい。
【0022】
上記重量比(a12):(a3)は、ロジン変性樹脂(A)における構造単位(a12)と構造単位(a3)との重量の比であり、ロジン変性樹脂(A)における構造単位(a12)の重量を100とした場合の、構造単位(a3)の重量の値を意味する。上記構造単位(a12)の重量、及び構造単位(a3)の重量は、上記ロジン変性樹脂(A)を製造するために使用した上記単量体(A1)、(A2)、及び(A3)の仕込み量から反応終了後の各単量体の残量を減じることで算出される。具体的な算出方法は、実施例において詳細に説明する。
【0023】
上記ロジン変性樹脂(A)は、さらに、多塩基酸又はその無水物(A4)に由来する構造単位(a4)を有することが好ましい。ロジン変性樹脂(A)がさらに構造単位(a4)を有することによって、印刷適正及び印刷被膜適正がより向上しやすい。
【0024】
上記ロジン変性樹脂(A)は、共役系ロジン酸(A1)にα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)を付加させた化合物、上記共役系ロジン酸(A1)を除く有機一塩素酸(A3)、及び多塩基酸又はその無水物(A4)と、ポリオール(A5)との反応によって得られるポリマー化合物であってよい。ポリマー化合物は、各々の単量体に由来する構造単位(a12)、(a3)、及び(a4)と、構造単位(a5)とが、互いにエステル結合を介して結合した構造を有する、ロジン変性ポリエステル樹脂である。
【0025】
上記ロジン変性樹脂(A)は、共役系ロジン酸(A1)に由来する構造単位(a1)、及び/又は、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)に由来する構造単位(a2)をさらに含んでもよい。
【0026】
特に限定するものではないが、例えば、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)として、(無水)マレイン酸等のカルボキシル基を2つ有する化合物を用い、多塩基酸又はその無水物(A4)として、無水コハク酸等のカルボキシル基を2つ有する化合物を用いた場合、ロジン変性樹脂(A)は、代表的に下記式(I)~(VI)で表される
部分構造を有してよい。中でも、下記式(IV)~(VI)で表される部分構造は、樹脂
の末端構造の具体例である。但し、ロジン変性樹脂(A)の部分構造はこれらに限定されない。
【0027】
また、詳細は後述するが、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)が多塩基酸又はその無水物(A4)として反応に関与する形態の場合、下記式(I)、(II)
、及び(IV)に含まれる構造単位(a4)の代わりに、α,β―不飽和カルボン酸又は
その酸無水物(A2)に由来する構造単位(a2)が含まれてもよい。また、成分(A1)に成分(A2)を付加させて反応(後述するディールスアルダー付加反応)の後、成分(A1)が残留する場合、構造単位(a3)の一部が、成分(A1)に由来する構造単位(a1)となってもよい。
【0028】
【0029】
以下、各構造単位を構成する単量体について説明する。
<(A1)共役系ロジン酸>
ロジン変性樹脂(A)を構成する構造単位(a12)を有する化合物は、共役系ロジン酸(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)とのディールスアルダー反応によって形成される。
上記共役系ロジン酸(A1)は、共役二重結合を有するロジン酸類である。本明細書において「ロジン酸類」とは、環式ジテルペン骨格を有する有機一塩基酸及びその誘導体を意味する。ロジン酸類は、例えば、ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、及びこれら化合物のアルカリ金属塩であってよい。また、「共役二重結合」とは、複数の二重結合が単結合を挟んで交互に連なっている結合を意味する。但し、芳香族化合物に含まれるπ電子共役系の共役二重結合は含まない。すなわち、本明細書で記載する「共役系ロジン酸(A1)」は、共役二重結合を持たない水添ロジン酸等を除いた、上記ロジン酸類を意味する。
【0030】
共役系ロジン酸(A1)として、具体的には、アビエチン酸、およびその共役化合物である、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸が挙げられる。またこれらの共役系ロジン酸(A)を含有する天然樹脂として、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。一般に前記天然樹脂には、共役系ロジン酸(A)とともに、共役二重結合を有さないロジン酸類が含まれているが、本発明では、これら天然樹脂を使用しても差し支えない。共役二重結合をもたないロジン酸類は、後述の有機一塩基酸(A3)として反応に関与する。また、共役系ロジン酸(A1)は、ロジン変性樹脂(A)の製造時の配合量に応じて、化合物に由来する構造単位(a1)を構成してもよい。
【0031】
<α,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(A2)>
ロジン変性樹脂(A)を構成する構造単位(a12)を有する化合物を得るために使用可能なα、β-不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物(A2)の具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、桂皮酸、2,4-ヘキサジエノン酸等、及びこれらの酸無水物が挙げられる。共役系ロジン酸(A1)との反応性の観点から、マレイン酸またはその酸無水物が好ましい。なお、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)は、ロジン変性樹脂(A)の製造時の配合量に応じて、化合物に由来する構造単位(a2)を構成してもよい。
【0032】
<有機一塩基酸(A3)>
ロジン変性樹脂(A)を構成する構造単位(a3)を得るために使用可能な有機一塩基酸(A3)は、共役二重結合を持たない有機一塩基酸であればよく、公知の材料を任意に用いることができる。具体例として、
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、及びベヘン酸等の飽和脂肪酸、
クロトン酸、リンデル酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、ゴンドレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノエライジン酸、リノレン酸、及びアラキドン酸等の不飽和脂肪酸、
安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸、
共役リノール酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸、カレンジン酸等の共役二重結合を有するが環式ジテルペン骨格を有さない化合物
が例示される。
また、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、及びデヒドロアビエチン酸等の共役二重結合を持たないロジン酸類も、有機一塩基酸(A3)として用いることができる。本発明に使用する有機一塩基酸(A3)としては、これらの共役二重結合を持たないロジン酸類のみでも構わない。
【0033】
<多塩基酸又はその無水物(A4)>
上記ロジン変性樹脂(A)は、必要に応じて、多塩基酸又はその無水物(A4)から誘導される構造単位(a4)を含むことが好ましい。多塩基酸又はその無水物(A4)としては、芳香族系多塩基酸又はその無水物、脂肪族系多塩基酸又はその無水物を使用でき、脂肪族系多塩基酸又はその無水物としては、直鎖構造、又は分岐構造のいずれであってもよい。また、環状構造を有する、すなわち脂環式多塩基酸又はその無水物であってもよい。
ロジン変性樹脂(A)を構成する構造単位(a4)を得るために使用可能な多塩基酸又は無水物(A4)の具体例を以下に記載する。
【0034】
脂肪族多塩基酸又はその無水物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライ酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸等のアルキルコハク酸またはアルケニルコハク酸等、及びそれらの無水物が挙げられる。
脂環式多塩基酸又はその無水物としては、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、ハイミック酸、3-メチルハイミック酸、4-メチルハイミック酸等、及びそれらの無水物が挙げられる。
芳香族系多塩基酸又はその無水物としては、o-フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロリット酸等、及びそれらの無水物が挙げられる。
また、天然油脂の脂肪酸、例えば、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、(脱水)ヒマシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、菜種油脂肪酸などが挙げられる。さらに、これら脂肪酸のダイマー酸、例えば、桐油ダイマー脂肪酸、アマニ油ダイマー脂肪酸などを使用することもできる。
これらは単独または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0035】
多塩基酸又はその無水物(A4)として、上記α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)で例示した化合物のうち、二塩基酸無水物を使用することもできる。具体例として、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びイタコン酸等の酸無水物を使用することもできる。
【0036】
ロジン変性樹脂(A)の製造時に、共役系ロジン酸(A1)に対して過剰量のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)を使用した場合には、ロジン変性樹脂(A)は、ポリオール(A5)と上記成分(A2)とのエステル化反応に関与する構造単位(a2)を含むことになる。
例えば、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)として無水マレイン酸等の二塩基酸無水物を使用した場合、過剰量の二塩基酸無水物は、多塩基酸又はその無水物(A4)の一部として反応に関与する。すなわち、このような場合は、上記ロジン変性樹脂(A)における構造単位(a4)の割合は、過剰量の上記成分(A2)に由来する構造単位(a2)を含む量となる。
【0037】
ロジン変性樹脂(A)における構造単位(a4)の割合は、後述する構造単位(a5)を除いた全構造単位の合計モル数を基準として、5.0~65.0モル%の範囲が好ましく、6.5~60.0モル%の範囲がより好ましく、8.0~50.0モル%の範囲がさらに好ましい。
【0038】
本明細書において、ロジン変性樹脂(A)における各構造単位の割合(モル%)は、先に説明した構造単位の重量比と同様に、ロジン変性樹脂(A)を製造するために使用した、各構造単位に対応する単量体の仕込み量から、反応終了後の各成分の残量を減じた量を基準にして算出した値である。
【0039】
<ポリオール(A5)>
ロジン変性樹脂(A)を構成する構造単位(a5)を得るために使用可能なポリオール(A5)は、分子内に2以上の水酸基を有する化合物であればよく、特に限定されない。ポリオール(A5)は、共役系ロジン酸(A1)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、有機一塩基酸(A3)、及び多塩基酸又はその無水物(A4)におけるカルボン酸との反応によってエステル結合を形成する。
【0040】
2価アルコールの具体例として、以下が挙げられる。
(直鎖状アルキレン2価アルコール)
1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等。
【0041】
(分岐状アルキレン2価アルコール)
2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等。
【0042】
(環状アルキレン2価アルコール)
1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等。
【0043】
他の具体例として、ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0044】
3価以上の多価アルコールの具体例として、以下が挙げられる。
グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状、及び環状の多価アルコールが挙げられる。
【0045】
上記各種2価アルコール、及び3価以上の多価アルコールは、それぞれ1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記ポリオール(A5)は、2価アルコールと、3価以上の多価アルコールとを含むことが好ましい。上記2価アルコールの割合は、上記ポリオール(A5)の全量を基準として、20~95モル%の範囲であることが好ましい。上記ポリオール(A5)における2価アルコールの割合が上記範囲内である場合、乳化粘弾性維持率や地汚れ耐性を向上させることが容易となる。
【0046】
上記ロジン変性樹脂(A)は、
(1)共役系ロジン酸(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)との反応、並びに
(2)上記(1)の反応で得た化合物、有機一塩基酸(A3)、及び多塩基酸又はその無水物(A4)を含むカルボン酸含有化合物と、ポリオール(A5)との反応
を経て製造することができる。
上記(1)の反応は、共役系ロジン酸(A1)における共役二重結合(ジエン)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)における二重結合(ジエノフィル)とのディールスアルダー付加反応である。また、上記(2)の反応は、(1)の反応で得たディールスアルダー付加反応物、有機一塩基酸(A3)、及び多塩基酸又はその無水物(A4)の各化合物におけるカルボキシル基と、ポリオール(A5)における水酸基との間のエステル化反応である。
【0047】
共役系ロジン酸(A1)とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)とのディールスアルダー付加反応物は、多価カルボン酸化合物となる。そのため、ポリオール(A5)とのエステル化反応により高分子化が可能となる。また、エステル化反応時に有機一塩基酸(A3)を併用することで、過剰な高分子化を抑制することができ、分子量分布の制御が可能となる。
【0048】
以上のことから、上記ロジン変性樹脂(A)を用いることで、乳化粘弾性維持率、及び地汚れ耐性を向上させることが可能となる。
【0049】
ディールスアルダー付加反応の条件は、特に限定されず、常法に従って行うことができる。反応温度は、使用する化合物の沸点、及び反応性を考慮して決定することができる。一実施形態において、上記反応温度は、80~200℃の範囲が好ましく、100~200℃の範囲がより好ましく、100~180℃の範囲がさらに好ましい。
ディールスアルダー付加反応は、重合禁止剤の存在下で行なってもよい。使用可能な重合禁止剤の具体例として、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、t-ブチルカテコール、4-メトキシ-1-ナフトール、及びフェノチアジン等が挙げられる。
【0050】
エステル化反応の条件も、特に限定されず、常法に従って行うことができる。反応温度は、使用する化合物の沸点、及び反応性を考慮して決定することができる。一実施形態において、上記反応温度は、200~300℃の範囲が好ましく、200~280℃の範囲がより好ましく、200~260℃の範囲がさらに好ましい。
【0051】
また、必要に応じて、エステル化反応において、触媒を用いることが可能である。使用可能な触媒の一例として、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、硫酸、塩酸等の鉱酸、トリフルオロメチル硫酸、トリフルオロメチル酢酸等が挙げられる。さらに、使用可能な触媒の他の例として、テトラブチルジルコネート、テトライソブチルチタネート等の金属錯体、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の金属塩触媒なども挙げられる。これら触媒は、ロジン変性樹脂(A)の製造時に使用した全成分の総量を基準として、通常、0.01~5重量%の範囲で使用される。触媒を使用することによる樹脂の着色を抑制するために、樹脂の製造時に、次亜リン酸、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、及びトリフェニルホスフィン等を併用することもできる。
【0052】
上記ロジン変性樹脂(A)の製造において、樹脂を構成する上記(A1)~(A5)の単量体は、同時に配合することもできるし、段階的に配合することもできる。
例えば、共役系ロジン酸(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)と、有機一塩基酸(A3)と、ポリオール(A5)と、さらに必要に応じて使用される多塩基酸又はその無水物(A4)との混合物を用いて、2段階で反応を実施することができる。この場合、最初に、共役系ロジン酸(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)とのディールスアルダー付加反応が起こるように反応温度を調整すればよい。より具体的には、最初に、反応温度をディールスアルダー付加反応が進行する温度に制御し、一定時間にわたって維持した後に、エステル化反応が進行する温度まで加熱し反応を実施すればよい。
【0053】
別法として、共役系ロジン酸(A1)とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)を配合し、ディールスアルダー付加反応させた後、有機一塩基酸(A3)、及びポリオール(A5)、さらに使用する場合には多塩基酸又はその無水物(A4)を配合し、エステル化反応を実施してもよい。
【0054】
共役系ロジン酸(A1)に対して過剰量のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)を使用した場合、ディールスアルダー付加反応に関与しなかった(A2)成分は、続くエステル化反応で多塩基酸又はその無水物(A4)と同様に消費されることになる。多塩基酸又はその無水物(A4)として、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)と同じ化合物を用いてもよい。
【0055】
α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)の配合量は、共役系ロジン酸(A1)に対して、80~200モル%の範囲であることが好ましく、90~200モル%の範囲であることがより好ましく、100~200モル%の範囲であることがさらに好ましい。α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(A2)の配合量を上記範囲内に調整した場合、好適な乳化特性を有し、また優れた印刷適性を有するロジン変性樹脂(A)を得ることが容易である。
【0056】
上記ロジン変性樹脂(A)の重量平均分子量は、2500~50000の範囲が好ましく、2500~35000の範囲がより好ましく、3000~30000の範囲が特に好ましい。ロジン変性樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内である場合、当該樹脂を使用したインキは、好適な乳化特性を有し、また優れた印刷適性を有する。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
【0057】
<ジアリルフタレート樹脂>
ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合してなる樹脂である。ジアリルフタレート樹脂としては、公知のものを用いることができ、具体的には大阪ソーダ社製ダイソーダップシリーズ(ダイソーダップA、ダイソーダップK)等が挙げられる。
【0058】
<活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ>
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、ロジン変性樹脂(A)と、ジアリルフタレート樹脂とを含有する。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、樹脂全量中、ロジン変性樹脂(A)を50~80質量%含有するものである。
【0060】
インキ全量中の樹脂含有量としては、10~30%であることが好ましく、さらには10~20%であることが好ましい。さらには、10~15%であることが好ましい。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、且つ、オクタノール/水分配係数(LogP)が2.5以上であるアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(B)を、インキ全量中10質量%以上含有するものである。
アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基を3個以上有することが好ましい。
【0062】
(メタ)アクリロイル基を2個以上含有し、且つ、オクタノール/水分配係数(LogP)が2.5以上のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(B)としては、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(LogP=5.47)、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(LogP=6.10)、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(LogP=3.01)、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(LogP=2.61)等が挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリレート化合物としては、要求される物性に応じて適宜選択することが可能であり、上記の例示した化合物に加え、必要に応じて、ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の(メタ)アクリレート化合物を併用することも可能である。
【0064】
具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、アクリロイルモルホリン等の単官能活性エネルギー線硬化型化合物、
エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=2~20)、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=2~20)、アルキレン(炭素数4~12)グリコールジアクリレート、アルキレン(炭素数4~12)グリコールエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、アルキレン(炭素数4~12)グリコールプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、水素添加ビスフェノールAジアクリレート、水素添加ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート等の2官能活性エネルギー線硬化型化合物、
グリセリントリアクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート等の3官能活性エネルギー線硬化型化合物、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート等の4官能活性エネルギー線硬化型化合物、
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(5~50モル)ペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(5~50モル)ペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート等の多官能活性エネルギー線硬化型化合物、
およびそれらの混合物が挙げられる。
【0065】
(メタ)アクリレート化合物としては、要求される物性に応じて適宜選択することが可能であり、上記の例示した化合物に加え、必要に応じて、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマーを併用することも可能である。
【0066】
本発明に記載の樹脂および(メタ)アクリレート化合物を、予めワニスの形態に調製して使用する場合には、樹脂を20~70質量%と、(メタ)アクリレート化合物を30~80質量%とを含有するように調整することが好ましい。また、ワニスは、上記成分に加えて、さらに後述する光重合禁止剤等の添加剤を含んでもよい。ワニスは、例えば、常温から160℃の間の温度条件下で、上記成分を混合することで製造することができる。
【0067】
<体質顔料>
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは体質顔料を含有する。体質顔料としては、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ベントナイト等が挙げられるが、シリカ、炭酸マグネシウム、およびタルクからなる群から選ばれる少なくとも2種を含有することが好ましい。さらには、シリカ、炭酸マグネシウム、およびタルクの3種を含有することが好ましい。
また、体質顔料としては、それぞれを1~5重量%含有することが好ましい。体質顔料の種類と配合量を上記範囲内に調整した場合、高い乳化粘弾性維持率を有し、また優れたミスチング適性を有する活性エネルギー線硬化型平版印刷インキを得ることが容易である。
【0068】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、着色インキとする場合には顔料(上記体質顔料を除く)を含むが、顔料を使用しない場合には、クリアインキまたはオーバーコートワニスとして用いることができる。このため、顔料を使用することを限定するものではない。
【0069】
使用することのできる顔料としては、無機顔料および有機顔料を挙げることができる。
無機顔料としては黄鉛、亜鉛黄、紺青、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、群青、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられ、有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系モノアゾ、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系等の多環式顔料および複素環式顔料等の公知公用の各種顔料が挙げられる。
【0070】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、紫外線を使用する場合には光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、光により分子内で結合が開裂して活性種を生成するものと、分子間で水素引き抜き反応を起こして活性種を生成するものの2種類に大別できる。なお、活性エネルギー線として電子線等を使用する場合には、光重合開始剤は不要である。
【0071】
光により分子内で結合が開裂して活性種を生成するものとしては、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエトキシアセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン}、4-[(2-アクリロイル)オキシエトキシ]フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの混合物、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等がある。
【0072】
分子間で水素引き抜き反応を起こして活性種を生成するものとしては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系、ミヒラーケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等がある。
これらの光重合開始剤を一種、または必要に応じて二種以上を併用して良い。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキに紫外線を照射して硬化させる場合、光重合開始剤の添加だけでも硬化するが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミン類がある。
【0074】
活性エネルギー線として紫外線を使用する場合に、光重合開始剤の配合量は、該印刷インキ中、0.01~15質量%、好ましくは0.05~10質量%である。0.01質量%未満では硬化反応が十分に行なわれ難く、15質量%を越えると熱重合反応が起こり易くインキとしての安定性が損なわれ易くなり好ましくない。
【0075】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、重合禁止剤を添加することができる。
【0076】
光重合禁止剤の具体例としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、およびシクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。特に限定するものではないが、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノンからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。
光重合禁止剤を添加する場合、硬化性を阻害しない観点から、その配合量は、インキの全質量を基準として、3質量%以下にすることが好ましく、0.01~1質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0077】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤等の各種添加剤を添加することもできる。
【0078】
活性エネルギー線を照射する雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス置換雰囲気が好ましいが、大気中で照射しても硬化性に問題がなければ差し支えない。活性エネルギー線を照射する前に赤外線ヒーター等により活性エネルギー線硬化型組成物層を加温したり、活性エネルギー線を照射後赤外線ヒーター等により活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ硬化層を加温することは硬化を速く終了させるために有効である。
【0079】
本発明の活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線、マイクロ波、高周波等をいうが、ラジカル性活性種を発生させ得るならばいかなるエネルギー種でも良く、可視光線、赤外線、レーザー光線でもよい。具体的には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、LED(発光ダイオード)などがある。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、常温から100℃の間で、上記の印刷インキ成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー等の練肉、混合、調整機を用いて製造される。インキを製造するためにロジン変性ポリエステル樹脂を添加するには、ロジン変性ポリエステル樹脂そのものの形態で添加してもよいし、ワニスの形態で添加してもよい。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、通常湿し水を使用する平版オフセット印刷に適用されるが、湿し水を使用しない水無し平版印刷にも好適に用いられる。本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキは、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。さらにオーバーコートワニスとして使用されることもある。
【0082】
本発明で使用される活性エネルギー線硬化型平版印刷インキの組成の一例としては、
樹脂 10~30質量%
(メタ)アクリレート化合物 30~75質量%
顔料(有機顔料・無機顔料) 0~40質量%
体質顔料 1~15質量%
光重合開始剤 0~15質量%
その他の成分 1~15質量%
が挙げられる。
【0083】
なお、基材としては、上質紙等の非塗工紙、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙等の塗工紙、白板紙、ボールコート等の板紙、合成紙、アルミ蒸着紙、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシートが挙げられる。
【実施例】
【0084】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本発明中の「部」は質量部を表し、「%」は、質量%を示す。
【0085】
本発明において、オクタノール/水分配係数(LogP)はPerkin Elmer社製のChemDraw Ultra ver.13.0を用いて計算した。
【0086】
本発明において、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミネイションクロマトグラフィ(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0087】
以下に示す処方により、ロジン変性ポリエステル樹脂および活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ組成物を作製した。
【0088】
<実施例用樹脂合成例> 樹脂1の合成
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、ガムロジン25部、無水マレイン酸7部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間加熱した。
その後、t-ブチル安息香酸40部、無水コハク酸2部、ネオペンチルグリコール26部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部を添加し、230℃で14時間脱水縮合し、重量平均分子量(Mw)25,000の樹脂A1を得た。
【0089】
<実施例用ワニス作製例> 樹脂ワニス1の作製
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに得られた樹脂A1を30部、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート69.8部、t-ブチルヒドロキノン0.2部を混合し、100℃で加熱溶融し樹脂ワニス1を得た。
【0090】
<実施例用樹脂合成例> 樹脂2の合成
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、ガムロジン17.5部、無水マレイン酸5部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間加熱した。
その後、t-ブチル安息香酸41部、無水フタル酸16.5部、ペンタエリスリトール20部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部を添加し、230℃で14時間脱水縮合し、重量平均分子量(Mw)21,000の樹脂A2を得た。
【0091】
<実施例用ワニス作製例> 樹脂ワニス2の作製
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに得られた樹脂A2を30部、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート69.8部、t-ブチルヒドロキノン0.2部を混合し、100℃で加熱溶融し樹脂ワニス2を得た。
【0092】
<実施例用ワニス作製例> 樹脂ワニス3の作製
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに得られた樹脂A2を30部、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート69.8部、t-ブチルヒドロキノン0.2部を混合し、100℃で加熱溶融し樹脂ワニス3を得た。
【0093】
<実施例用ワニス作製例> 樹脂ワニス4の作製
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコにジアリルフタレート樹脂(大阪ソーダ社製、ダイソーダップA)を35部、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート64.8部、t-ブチルヒドロキノン0.2部を混合し、100℃で加熱溶融し樹脂ワニス4を得た。
【0094】
<実施例用インキ作製例> 実施例1の作製
得られた樹脂ワニス1を25部、樹脂ワニス4を10部、C.I.Pigment Red 57:1(紅顔料)16部、ビスフェノールAジアクリレート11部、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート14部、シリカ3部、炭酸マグネシウム3部、タルク3部、光開始剤11部、補助剤4部を、40℃の三本ロールミルにて練肉し、インキのタックが6~7になるようにプロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートで調整し、平版印刷インキ実施例1を得た。
インキのタックは東洋精機社製インコメーターにてロール温度30℃、400rpm、1分後の値を測定した。
【0095】
<実施例用インキ作製例> 実施例2~23の作製
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で実施例2~24を得た。
【0096】
<比較例用インキ作製例> 比較例1の作製
得られた樹脂ワニスA1を17部、樹脂ワニスA4を18部、C.I.Pigment Red 57:1(紅顔料)16部、ビスフェノールAジアクリレート11部、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート14部、シリカ3部、炭酸マグネシウム3部、タルク3部、光開始剤11部、補助剤4部を、40℃の三本ロールミルにて練肉し、インキのタックが6~7になるようにプロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートで調整し、平版印刷インキ比較例1を得た。
【0097】
<比較例用インキ作製例> 比較例2~8の作製
比較例1と同様の操作にて、表2に示す配合組成で比較例2~8を得た。
【0098】
なお、体質顔料、光開始剤、補助剤は以下のものを用いた。
シリカ:エロジールR972V(日本アエロジル社製)
炭酸マグネシウム:炭酸マグネシウムTT(ナイカイ塩業社製)
タルク:ハイフィラー5000PJ(松村産業社製)
光開始剤:SB-PI769(IGM resins B.V社製)5部、SB-PI718(IGM resins B.V社製)6部
補助剤:KTL-4N(Shamrock Technologies社製)
【0099】
【0100】
【0101】
実施例および比較例で得られた平版印刷インキについて、下記の方法で乳化粘弾性維持率と地汚れ耐性、ミスチング適性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0102】
<乳化粘弾性維持率評価>
実施例1~24、比較例1~8の各平版印刷インキについて、リソトロニック乳化試験機(NOVOCONTROL社製)を使用し、インキ25gに対して40℃において回転数1200rpmで、1ml/分の速度で水を添加していき、平版印刷インキに対して25質量%の水を強制的に乳化させた時の撹拌に要するトルクを測定し、乳化前後でのトルク維持率を乳化粘弾性維持率とした。
◎:乳化粘弾性維持率90%以上
〇:乳化粘弾性維持率85%以上、90%未満
△:乳化粘弾性維持率80%以上、85%未満
×:乳化粘弾性維持率80%未満
使用可能なレベルは◎、〇、△である。
【0103】
<地汚れ耐性>
実施例1~24、比較例1~8の各平版印刷インキについて、リスロン226(コモリコーポレーション社製枚葉印刷機)を用いて、三菱特菱アート紙斤量90Kg/連(三菱製紙社製)に10,000枚/時で各インキ2万枚の印刷試験を行い、印刷物のベタ着肉状態および地汚れを目視にて確認した。刷り出し時、印刷物の地汚れが発生しなくなるまでの損紙枚数から、地汚れ耐性を評価した。評価基準を以下に示す。
◎:損紙枚数500枚未満
〇:損紙枚数500枚以上、1000枚未満
△:損紙枚数1000枚以上、1500枚未満
×:損紙枚数1500枚以上
使用可能なレベルは◎、〇である。
なお、湿し水はアストロマーク44UV(日研化学研究所社製)1.5%の水道水を用いて行い、水巾の下限付近での印刷状態の比較を行うために、水巾の下限値よりも2%高い水ダイヤル値で印刷を行った。なお「水巾の下限」とは、正常な印刷が可能である、湿し水の最低供給量を意味し、「水ダイヤル」とは、上記湿し水の供給量を調整するために、上記印刷機に備えられたダイヤルを意味する。
【0104】
<ミスチング適性>
上記印刷試験で印刷時に印刷機の安全カバーの内側に白紙を張り付け、10000通し後に白紙を取り出し、インキの飛散の程度を、以下の基準に従い、4段階で評価した。使用可能なレベルは◎、〇である。
◎:白紙の一部分に微量のインキミストが飛散している。
〇:白紙全面に薄くインキミストが飛散している。
△:白紙全面にやや厚くインキミストが飛散している。
×:白紙全面にベッタリとインキミストが飛散している。
【0105】
以上より、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、高い乳化粘弾性維持率と地汚れ耐性を有し、かつミスチング適性にも優れることがわかった。