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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/617 20140101AFI20230725BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230725BHJP
   H01G 11/18 20130101ALI20230725BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230725BHJP
【FI】
H01M10/617
H01G11/12
H01G11/18
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/6555
H01M10/6557
H01M10/6563
H01M10/6568
H01M50/204 401H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019236680
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106105
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】野村 博之
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-092722(JP,A)
【文献】特開2014-086414(JP,A)
【文献】特開2019-204669(JP,A)
【文献】特開2010-225344(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189708(WO,A1)
【文献】特開2015-072924(JP,A)
【文献】特開2007-305425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00-11/86
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の温度を調節する温度調節システムであって、
複数の蓄電モジュールが第1方向で積層された積層体を備える蓄電装置と、
少なくとも前記第1方向で隣り合う前記蓄電モジュール間に配置された複数の流路部と、前記複数の流路部を前記第1方向の中央部側から積層端側まで順に連通させる連通部と、を有する複数の流路と、
前記複数の流路に冷却又は加熱された媒体を供給する供給部と、を備え、
前記複数の蓄電モジュールのそれぞれは、セパレータを介して前記第1方向に積層された正極終端電極と、負極終端電極と、複数のバイポーラ電極と、有し、
前記複数の蓄電モジュールのそれぞれの前記第1方向の一端に前記正極終端電極の電極体が配置され、前記複数の蓄電モジュールのそれぞれの前記第1方向の他端に前記負極終端電極の電極体が配置され、
前記複数の流路のそれぞれは、前記第1方向の中央部側に配置された前記流路部に設けられた第1流出入口と、前記積層端側に配置された前記流路部に設けられた第2流出入口と、を有し、
前記供給部は、前記蓄電装置の温度が予め設定された第1温度以上である場合、冷却された媒体を前記第1流出入口から前記複数の流路に供給し、前記蓄電装置の温度が予め設定された第2温度未満である場合、加熱された媒体を前記第2流出入口から前記複数の流路に供給し、
前記積層体は、前記複数の蓄電モジュールのそれぞれを前記第1方向において挟むよう設けられた複数の集電板を有し、
前記複数の集電板のそれぞれは、導電部材であり、隣接する前記蓄電モジュールの前記正極終端電極又は前記負極終端電極の電極体に接触して当該蓄電モジュールと電気的に接続され、
前記複数の蓄電モジュールは、前記複数の集電板を介して電気的に並列又は直列に接続され、
前記集電板には、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に貫通する複数の第1貫通孔が設けられており、
前記複数の第1貫通孔のそれぞれは、前記流路部を構成し、
前記連通部は、前記積層体の前記第3方向の一端又は他端において、前記第1方向で隣り合う前記集電板の前記複数の第1貫通孔同士を連通させる第2貫通孔が設けられた絶縁性部材であり、
前記第1流出入口から前記複数の流路のぞれぞれに供給された前記冷却された媒体は、前記複数の流路部及び前記連通部を通って前記第2流出入口から前記複数の流路外に流出し、
前記第2流出入口から前記複数の流路のそれぞれに供給された前記加熱された媒体は、前記複数の流路部及び前記連通部を通って前記第1流出入口から前記複数の流路外に流出する、温度調節システム。
【請求項2】
前記供給部が冷却する媒体と、前記供給部が加熱する媒体とは互いに共通である、請求項に記載の温度調節システム。
【請求項3】
冷却された媒体が供給される前記複数の流路と、加熱された媒体が供給される前記複数の流路とは互いに共通である、請求項1又は2に記載の温度調節システム。
【請求項4】
前記供給部は、前記複数の流路との間で媒体を循環させる、請求項1~のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【請求項5】
前記蓄電装置の温度を検出する検出部を更に備える、請求項1~のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【請求項6】
前記蓄電モジュールの数は偶数個であり、
前記複数の流路は、前記積層体の前記第1方向の中央部から一方側に設けられた複数の第1流路と、前記積層体の前記第1方向の中央部から他方側に設けられた複数の第2流路と、を有し、
前記連通部は、前記複数の第1流路と前記複数の第2流路とに共有される共有連通部を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【請求項7】
前記連通部は、前記積層体の前記第3方向の一端又は他端において、前記第1方向で隣り合う前記集電板の前記複数の第1貫通孔同士を連通させる複数の第2貫通孔が設けられた絶縁性部材である、請求項1~6のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の蓄電モジュールを備える蓄電装置の温度を調節する温度調節システムが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の温度調節システムでは、積層方向で隣り合う蓄電モジュール間及び積層端に配置された複数の集電板に貫通孔が形成されており、当該貫通孔に冷却媒体を流すことによって蓄電モジュールが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-305425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の温度調節システムでは、蓄電装置に温度ムラが発生する。蓄電モジュールの性能は、温度が高くなると劣化し易い。したがって、蓄電装置に温度ムラが発生すると、蓄電モジュールの性能が局所的に劣化し、蓄電装置全体の寿命が短くなるおそれがある。よって、蓄電装置の温度ムラを抑制可能な温度調節システムが求められている。
【0005】
本開示は、蓄電装置の温度ムラを抑制可能な温度調節システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の温度調節システムは、蓄電装置の温度を調節する温度調節システムであって、複数の蓄電モジュールが積層された積層体を備える蓄電装置と、少なくとも積層体の積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に配置された複数の流路部と、複数の流路部を積層方向の中央部側から積層端側まで順に連通させる連通部と、を有する流路と、流路に冷却又は加熱された媒体を供給する供給部と、を備え、流路は、積層方向の中央部側に配置された流路部に設けられた第1流出入口と、積層端側に配置された流路部に設けられた第2流出入口と、を有し、供給部は、蓄電装置の温度が予め設定された第1温度以上である場合、冷却された媒体を第1流出入口から流路に供給し、蓄電装置の温度が予め設定された第2温度未満である場合、加熱された媒体を第2流出入口から流路に供給する。
【0007】
上記温度調節システムでは、蓄電装置に設けられた流路は、少なくとも積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に配置された複数の流路部を有している。複数の流路部は、連通部によって、積層方向の中央部側から積層端側まで順に連通されている。流路は、積層体の積層方向の中央部側に配置された流路部に設けられた第1流出入口と、積層端側に配置された流路部に設けられた第2流出入口と、を有する。蓄電装置では、積層方向の中央部側で蓄電モジュールの温度が上昇し易く、積層端側で蓄電モジュールの温度が上昇し難い。
【0008】
そこで、供給部は、蓄電装置の温度が第1温度以上である場合、冷却された媒体を第1流出入口から流路に供給し、複数の流路部に対し、積層方向の中央部側から積層端側まで順に当該媒体を流通させる。冷却された媒体の温度は流路を流通するにつれて上昇し、冷却能力が低下する。したがって、複数の流路部に対し、冷却された媒体を積層方向の中央部側から積層端側まで順に流通させることにより、蓄電モジュールの温度が上昇し易い積層方向の中央部側には、冷却能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュールの温度が上昇し難い積層端側には、中央部側よりも冷却能力が低下した状態で媒体を流通させる。
【0009】
また、供給部は、蓄電装置の温度が第2温度未満である場合、加熱された媒体を第2流出入口から流路に供給し、複数の流路部に対し、積層端側から積層方向の中央部側まで順に当該媒体を流通させる。加熱された媒体の温度は流路を流通するにつれて低下し、加熱能力が低下する。したがって、複数の流路部に対し、加熱された媒体を積層端側から積層方向の中央部側まで順に流通させることにより、蓄電モジュールの温度が上昇し難い積層端側には、加熱能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュールの温度が上昇し易い積層方向の中央部側には、積層端側よりも加熱能力が低下した状態で媒体を流通させることができる。
【0010】
以上により、この温度調節システムによれば、蓄電装置の温度ムラを抑制することができる。
【0011】
積層体は、少なくとも積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に設けられた複数の集電板を有し、流路部は、複数の集電板を貫通する複数の貫通孔により構成されてもよい。この場合、流路部を構成するための部材を別途設ける必要がない。
【0012】
蓄電モジュールは、電極体と、電極体の一方の面上に設けられた正極活物質層と、電極体の他方の面上に設けられた負極活物質層と、を含む電極がセパレータを介して積層された電極積層体を有してもよい。このような蓄電モジュールを備える蓄電装置においても、温度ムラを抑制することができる。
【0013】
供給部が冷却する媒体と、供給部が加熱する媒体とは互いに共通であってもよい。この場合、冷却用と加熱用とで別の媒体を備える必要がない。
【0014】
冷却された媒体が供給される流路と、加熱された媒体が供給される流路とは互いに共通であってもよい。この場合、冷却用と加熱用とで別の流路を備える必要がない。
【0015】
供給部は、流路との間で媒体を循環させてもよい。この場合、同じ媒体を繰り返して使用できる。
【0016】
上記温度調節システムは、蓄電装置の温度を検出する検出部を更に備えてもよい。この場合、供給部は、検出部で検出した温度に基づき、流路に冷却又は加熱された媒体を供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、蓄電装置の温度ムラを抑制可能な温度調節システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図2図2は、図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールの概略断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿っての断面図である。
図4図4は、一実施形態に係る温度調節システムを示すブロック図である。
図5図5は、第1変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図6図6は、第2変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図7図7は、第3変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図8図8は、第4変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本開示に係る実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0020】
まず、図1を参照し、本実施形態に係る温度調節システム100(図4参照)が備える蓄電装置1について説明する。図1は、一実施形態に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール11が積層されたモジュールスタック(積層体又は配列体)2と、モジュールスタック2に電気的に接続される接続部材3,4と、モジュールスタック2を拘束する一対の拘束部材5,5と、モジュールスタック2と拘束部材5との間に配置される絶縁部材7,7と、を備える。以下では、拘束部材5,5がモジュールスタック2を拘束する方向を方向Zとし、方向Zと交差(例えば直交)する方向を方向Xとし、方向Z及び方向Xと交差(例えば直交)する方向を方向Yとする。方向X及び方向Yは例えば水平方向である。
【0021】
モジュールスタック2は、積層(又は配列)された複数の蓄電モジュール11と、複数の蓄電モジュール11に接触して配置された複数の集電板12と、を有する。複数の蓄電モジュール11の積層方向(又は配列方向)は、拘束部材5,5がモジュールスタック2を拘束する方向Zと一致している。集電板12は、積層方向(方向Z)で隣り合う蓄電モジュール1111間、および、モジュールスタック2の積層端に配置されている。本実施形態のモジュールスタック2は、例えば、二つの蓄電モジュール11と、三つの集電板12と、を含む。一つの集電板12は、積層方向(方向Z)で隣り合う蓄電モジュール1111間に配置され、正極集電板として機能する。二つの集電板12,12は、モジュールスタック2の積層端に配置され、負極集電板として機能する。蓄電モジュール11の構成の詳細については、後述する。
【0022】
接続部材3は、蓄電装置1の正極として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材3は、蓄電モジュール11の積層方向(方向Z)に沿って設けられている。接続部材3は、例えば、金属板である。金属板は、例えば、銅板、アルミニウム板、チタン板、もしくはニッケル板である。金属板は、例えばステンレス鋼板(SUS301、SUS304等)であってもよいし、銅、アルミニウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる2種以上の金属を含む合金板であってもよい。接続部材3は、正極集電板として機能する集電板12に電気的に接続されている。
【0023】
接続部材4は、蓄電装置1の負極として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材4は、蓄電モジュール11の積層方向(方向Z)に沿って設けられている。接続部材4は、接続部材3と同様に、例えば、金属板である。接続部材4は、接続部材3と同一の金属板であってもよいし、異なる金属板であってもよい。接続部材4は、負極集電板として機能する二つの集電板12に電気的に接続されている。
【0024】
モジュールスタック2では、電流は接続部材3に接続された集電板12を通って一対の蓄電モジュール11に流れた後、接続部材4に接続された一対の集電板12に流れる。したがって、モジュールスタック2では、蓄電モジュール11,11は電気的に並列に接続される。
【0025】
拘束部材5,5のそれぞれは、モジュールスタック2に対して方向Zに沿った拘束力(荷重)を付加する部材である。拘束部材5,5のそれぞれは、導電性の金属材料(例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、又はステンレス鋼等の合金)から形成されている。拘束部材5,5は、例えば、締結部材(例えば、ボルト6A及びナット6B)等を用いた連結部材6を介して互いに連結されてもよい。この場合、拘束部材5,5のそれぞれには、方向Zに沿って延在するボルト等の連結部材が挿通される貫通孔等が設けられてもよい。
【0026】
図1に示される絶縁部材7,7のそれぞれは、シート状の絶縁部材であり、略直方体形状を呈している。絶縁部材7,7のそれぞれは、方向Zにおいてモジュールスタック2と拘束部材5との間に配置されている。絶縁部材7のそれぞれは、積層端に配置された集電板12に接触する。
【0027】
絶縁部材7,7のそれぞれを形成する材料の例には、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン66(PA66)が含まれる。絶縁部材7,7の少なくとも一つは、弾性を示してもよい。絶縁部材7,7の方向Zに沿った長さ(厚み)は、例えば、1mm以上10mm以下である。
【0028】
次に、図2を参照しながら、モジュールスタック2に含まれる蓄電モジュール11の詳細について説明する。図2は、図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールの概略断面図である。図2では、一方の蓄電モジュール11が示されている。他方の蓄電モジュール11は、一方の蓄電モジュール11が方向Zにおいて反転した構造を有している。すなわち、一対の蓄電モジュール11,11は、一方の蓄電モジュール11の正極終端電極18と、他方の蓄電モジュール11の正極終端電極18とが互いに対向するように配置されている。
【0029】
図2に示されるように、蓄電モジュール11は、方向Zに積層された複数の単電池を含む。蓄電モジュール11は、略直方体形状を呈する。蓄電モジュール11は、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール11は、電気二重層キャパシタでもよい。蓄電モジュール11は、全固体電池でもよい。
【0030】
本実施形態の蓄電モジュール11は、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池である。蓄電モジュール11は、方向Zにおいて集電板12,12(図1参照)によって挟まれている。蓄電モジュール11は、集電板12,12を介して接続部材3,4(図1参照)に電気的に接続される。
【0031】
蓄電モジュール11は、電極積層体14と、封止部材15と、を備える。電極積層体14は、複数のバイポーラ電極(電極)16と複数のセパレータ17とを含む電極群114と、正極終端電極(終端電極)18と、負極終端電極(終端電極)19と、を有する。複数のバイポーラ電極16と、複数のセパレータ17とは、方向Zに沿って交互に配置されている。電極積層体14は、方向Zに交差する一対の主面及び主面をつなぐ外周面(側面)を有する。
【0032】
複数のバイポーラ電極16のそれぞれは、電極体21と、正極層(正極活物質層)22と、負極層(負極活物質層)23とを備える。電極体21は、方向Zに交差する一対の主面21a,21bを有する。電極体21の主面(一方の面)21a上には正極層22が設けられ、電極体21の主面(他方の面)21b上には負極層23が設けられる。このため、電極体21は、方向Zに沿って正極層22と負極層23とによって挟まれている。なお、バイポーラ電極16は、一方の面に正極層22が形成された導電板と、一方の面に負極層23が形成された別の導電板とを、電極層が形成されていない面同士が接触するように重ね合されて電極体21が形成されていてもよい。
【0033】
電極体21は、シート状の導電部材であり、略矩形状を呈している。電極体21は、例えば、互いに異なる種類の金属を含む複数の金属箔が一体化された構造を有する。複数の金属箔は、互いに接合されている。各金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、もしくはニッケル箔である。各金属箔は、例えば、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)、メッキ処理が施された鋼板(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等))、又はメッキ処理が施されたステンレス鋼板であってもよいし、銅、アルミニウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる2種以上の金属を含む合金箔であってもよい。機械的強度を確保する観点から、電極体21はアルミニウム箔を含んでもよい。電極体21がアルミニウム箔を含まない場合、金属箔の表面にはアルミニウムが被覆されていてもよい。電極体21の厚みは、例えば、5μm以上70μm以下である。
【0034】
正極層22は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等である。複合酸化物の組成には、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも一つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物の例には、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
【0035】
導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。粘度調整溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等である。
【0036】
負極層23は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の負極活物質は、例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等である。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は正極層22と同様のものを用いることができる。
【0037】
正極終端電極18は、電極積層体14の方向Zにおける一方の端部に設けられている。正極終端電極18は、電極体21の主面21aにのみ上記の正極層(活物質)22が塗工されて形成された電極である。すなわち、方向Zにおいて電極積層体14の一端に配置される電極体21の主面21b上には、負極層23が配置されていない。
【0038】
負極終端電極19は、電極積層体14の方向Zにおける他方の端部に設けられている。負極終端電極19も、正極終端電極18と同様に、電極体21の一方の主面21bにのみ負極層(活物質)23が塗工されて形成された電極である。すなわち、方向Zにおいて電極積層体14の他端に配置される電極体21の主面21a上には、正極層22が配置されていない。
【0039】
セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間のそれぞれを隔てる層状部材であり、略矩形状を呈している。セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間の短絡を防止する部材である。セパレータ17は、正極層22及び負極層23に含まれる電解質によって構成されてもよい。セパレータ17が固体電解質によって構成される場合、セパレータ17は、略矩形板形状を呈してもよい。セパレータ17の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0040】
セパレータ17は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ17は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ17は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。
【0041】
封止部材15は、電極積層体14に含まれる複数のバイポーラ電極16、複数のセパレータ17、正極終端電極18、及び負極終端電極19を保持する部材であり、絶縁性を有している。より詳細には、封止部材15は、バイポーラ電極16、正極終端電極18、及び負極終端電極19を構成する電極体21を保持している。封止部材15は、電極体21の主面21a及び主面21bの少なくとも一方に接合(例えば溶着)されている。封止部材15は、電極積層体14の外周面(側面)を封止するように略矩形枠形状を呈する封止部材、及び、電極積層体14内のバイポーラ電極16同士の短絡を防止する短絡防止部材としても機能し得る。
【0042】
封止部材15を形成する材料の例には、耐熱性を示す樹脂部材等が含まれる。耐熱性を示す樹脂部材の例には、ポリイミド、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)及びPA66等が含まれる。
【0043】
封止部材15によって封止された空間Sには、図示しない電解液が収容されている。電解液の例としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。電解液に含まれる支持塩は、例えばリチウム塩である。リチウム塩は、例えば、LiBF、LiPF、LiN(FSO、LiN(SOCF、LiN(SO、もしくはこれらの混合物である。
【0044】
次に、図1に示される集電板12の構成についてより詳細に説明する。集電板12は、電極積層体14に接触する導電部材であり、板形状を呈している。集電板12は、方向Zにおいて蓄電モジュール11に隣接している。正極集電板として機能する集電板12は、正極終端電極18の電極体21に接触するように配置される。負極集電板として機能する集電板12は、負極終端電極19の電極体21に接触するように配置される。集電板12は、電極体21に接触する本体部12aと、方向Xにおいて本体部12aの縁12bの一部から突出する突出部12cとを有する。突出部12cは接続部材3又は接続部材4に接続される。本体部12aは、方向Zにおいてバイポーラ電極16及びセパレータ17に重なる部分であり、略矩形状を呈している。集電板12の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0045】
図3は、図1のIII-III線に沿っての断面図である。図1及び図3に示されるように、各集電板12には、各集電板12を方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)に貫通する貫通孔が設けられている。本実施形態では、各集電板12において、複数の貫通孔が方向Xに沿って配列されていると共に、方向Yに沿って延在している。
【0046】
蓄電装置1には、冷却又は加熱された媒体が流通する流路30A,30Bが設けられている。図3では、冷却された媒体の流れが実線の矢印A1で示され、加熱された媒体の流れが破線の矢印A2で示される。流路30Aは、蓄電装置1の方向Zの中央部から一方側に設けられている。流路30Bは、蓄電装置1の方向Zの中央部から他方側に設けられている。本実施形態では、複数の流路30Aが方向Xに沿って配列されていると共に、複数の流路30Bが方向Xに沿って配列されている。
【0047】
各流路30A,30Bは、方向Zで隣り合う蓄電モジュール11,11間、及び、モジュールスタック2の積層端に配置された複数の流路部32と、複数の流路部32を方向Zの中央部側から積層端側まで順に連通させる連通部33と、を有している。流路部32は、各集電板12を方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)に貫通する上述の貫通孔により構成されている。本実施形態では、流路部32は、各集電板12を方向Yに貫通する貫通孔により構成されている。すなわち、流路部32は、方向Yに沿って延在し、方向Yの一端32a及び他端32bを有している。各集電板12には、複数の流路部32が方向Xに沿って配列されている。方向Zの中央部に配置された流路部32は、二つの流路30A,30Bに共有されている。方向Zの一方側に配置された流路部32は、流路30Aを構成し、方向Zの他方側に配置された流路部32は、流路30Bを構成する。すなわち、流路30A,30Bは、共有する流路部32を含め、二つの流路部32をそれぞれ有している。
【0048】
連通部33は、例えば、絶縁性部材により形成されている。連通部33は、方向Zで隣り合う流路部32の他端32b同士を互いに接続している。本実施形態では、方向Zの中央部に配置された流路部32が二つの流路30A,30Bに共有されているので、連通部33も二つの流路30A,30Bに共有されている。連通部33は、例えば、集電板12において方向Xに配列された複数の流路部32とまとめて連通させる大きな一つの貫通孔が設けられた部材であってもよいし、集電板12において方向Xに配列された複数の流路部32のそれぞれと連通させる小さな複数の貫通孔が設けられた部材であってもよい。
【0049】
各流路30A,30Bは、方向Zの中央部側に配置された流路部32の一端32aに設けられた第1流出入口30aと、積層端側(本実施形態では積層端)に配置された流路部32の一端32aに設けられた第2流出入口30bと、を有する。本実施形態では、方向Zの中央部側(本実施形態では中央部)に配置された流路部32が二つの流路30A,30Bに共有されているので、第1流出入口30aも二つの流路30A,30Bに共有されている。
【0050】
続いて、蓄電装置1の温度を調節する温度調節システム100について説明する。図4は、一実施形態に係る温度調節システムを示すブロック図である。図4に示されるように、温度調節システム100は、蓄電装置1と、流路30A,30Bと、供給部40と、検出部50と、を備える。図4においても、冷却された媒体の流れが実線の矢印A1で示され、加熱された媒体の流れが破線の矢印A2で示される。
【0051】
供給部40は、流路30A,30Bに冷却又は加熱された媒体を供給する。媒体は、例えば、絶縁性の流体である。媒体は、例えば、LLC(Long Life Coolant)等の液体、又は、空気等の気体である。液体の熱伝導率は、気体の熱伝導率よりも高いので、媒体として液体が用いられてもよい。本実施形態では、媒体として、LLCが用いられる。本実施形態では、供給部40が冷却する媒体と、供給部40が加熱する媒体とは互いに共通である。すなわち、流路30A,30Bの冷却用の媒体と、流路30A,30Bの加熱用の媒体とは互いに共通である。また、冷却された媒体が供給される流路30A,30Bと、加熱された媒体が供給される流路30A,30Bとは互いに共通である。すなわち、冷却用の流路30A,30Bと、加熱用の流路30A,30Bとは互いに共通である。
【0052】
供給部40は、冷却部41と、加熱部42と、ポンプ43と、三方弁44,45と、流路46,47,48,49と、制御部60と、を有している。冷却部41は、例えば、ラジエータであり、媒体を冷却(降温)する。加熱部42は、例えば、ヒータであり、媒体を加熱(昇温)する。ポンプ43は、例えば、双方向ポンプである。三方弁44は、三つのポート44a,44b,44cを有している。三方弁45は、三つのポート45a,45b,45cを有している。
【0053】
流路46は、第1流出入口30aと、ポート44aとを接続する。流路47は、ポート44bと、ポート45bとを接続する。流路47上には冷却部41が設けられている。流路48は、ポート44cと、ポート45cとを接続する。流路48上には加熱部42が設けられている。流路49は、第2流出入口30bと、ポート45aとを接続する。流路49上にはポンプ43が設けられている。
【0054】
制御部60は、冷却部41、加熱部42、ポンプ43、三方弁44,45、及び、検出部50と通信可能に接続されている。制御部60は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリと、を備えたコンピュータ装置として構成され得る。制御部60の処理は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより実現され得る。制御部60は、蓄電装置1が用いられる車両の制御部であってもよいし、蓄電装置1の制御部であってもよい。
【0055】
検出部50は、例えば、温度センサであり、蓄電装置1の温度を検出する。検出部50は、例えば、集電板12の温度を検出する。検出部50は、例えば、検出した蓄電装置1の温度を示す情報を制御部60に送信する。
【0056】
制御部60は、例えば、検出部50から蓄電装置1の温度を示す情報を受信すると、蓄電装置1の温度が、予め設定された第1温度(例えば、50度)以上、予め設定された第2温度(例えば、5度)未満、又は、第2温度以上第1温度未満のいずれであるかを判定する。第1温度及び第2温度は、同じ温度であってもよい。その場合、制御部60は、蓄電装置1の温度が第1温度以上か否か(すなわち、第1温度以上、又は、第2温度未満のいずれであるか)を判定する。蓄電モジュール11の性能は、温度が高過ぎても、低過ぎても劣化し易くなる。第1温度及び第2温度は、蓄電モジュール11の性能が劣化し易い温度範囲に基づき設定される。すなわち、第2温度以上第1温度未満の温度範囲では、蓄電モジュール11の劣化が抑制される。
【0057】
供給部40は、蓄電装置1の温度が第1温度以上である場合、冷却された媒体を第1流出入口30aから流路30A,30Bに供給し、複数の流路部32に対し、方向Zの中央部側から積層端側まで順に当該媒体を流通させる。冷却された媒体は、方向Zの中央部側から積層端側まで流路30A,30Bを連続して流通する。具体的には、制御部60は、ポート44aとポート44bとが連通するように三方弁44を制御すると共に、ポート45aとポート45bとが連通するように三方弁45を制御する。これにより、冷却部41が設けられた流路47が流路46,49と連通する。制御部60は、更に、媒体が供給部40から第1流出入口30aに向かう方向にポンプ43を動作させる。これにより、供給部40は、冷却部41により冷却された媒体を流路30A,30Bとの間で循環させる。
【0058】
供給部40は、蓄電装置1の温度が第2温度未満である場合、加熱された媒体を第2流出入口30bから流路30A,30Bに供給し、複数の流路部32に対し、積層端側から方向Zの中央部側まで順に当該媒体を流通させる。加熱された媒体は、積層端側から方向Zの中央部側まで流路30A,30Bを連続して流通する。具体的には、制御部60は、ポート44aとポート44cとが連通するように三方弁44を制御すると共に、ポート45aとポート45cとが連通するように三方弁45を制御する。これにより、加熱部42が設けられた流路48が流路46,49と連通する。制御部60は、更に、媒体が供給部40から第2流出入口30bに向かう方向にポンプ43を動作させる。これにより、供給部40は、加熱部42により加熱された媒体を流路30A,30Bとの間で循環させる。
【0059】
供給部40は、蓄電装置1の温度が第2温度以上第1温度未満である場合、流路30A,30Bに対する媒体の供給を停止するように供給部40を制御する。具体的には、制御部60は、三方弁44,45を閉じ、かつ、ポンプ43を停止させる。
【0060】
以上説明したように、温度調節システム100では、蓄電装置1に設けられた流路30A,30Bは、積層方向(方向Z)で隣り合う蓄電モジュール11,11間及び積層端に配置された複数の流路部32を有している。複数の流路部32は、連通部33によって、積層方向の中央部側から積層端側まで順に連通されている。流路30A,30Bは、モジュールスタック2の積層方向の中央部側に配置された流路部32に設けられた第1流出入口30aと、積層端側に配置された流路部32に設けられた第2流出入口30bと、を有する。蓄電装置1では、積層方向の中央部側で蓄電モジュール11の温度が上昇し易く、積層端側で蓄電モジュール11の温度が上昇し難い。
【0061】
そこで、供給部40は、蓄電装置1の温度が第1温度以上である場合、冷却された媒体を第1流出入口30aから流路30A,30Bに供給し、複数の流路部32に対し、積層方向の中央部側から積層端側まで順に当該媒体を流通させる。冷却された媒体の温度は流路30A,30Bを流通するにつれて上昇し、冷却能力が低下する。したがって、複数の流路部32に対し、冷却された媒体を積層方向の中央部側から積層端側まで順に流通させることにより、蓄電モジュール11の温度が上昇し易い積層方向の中央部側には、冷却能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュール11の温度が上昇し難い積層端側には、中央部側よりも冷却能力が低下した状態で媒体を流通させる。
【0062】
また、供給部40は、蓄電装置1の温度が第2温度未満である場合、加熱された媒体を第2流出入口30bから流路30A,30Bに供給し、複数の流路部32に対し、積層端側から積層方向の中央部側まで順に当該媒体を流通させる。加熱された媒体の温度は流路30A,30Bを流通するにつれて低下し、加熱能力が低下する。したがって、複数の流路部32に対し、加熱された媒体を積層端側から積層方向の中央部側まで順に流通させることにより、蓄電モジュール11の温度が上昇し難い積層端側には、加熱能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュール11の温度が上昇し易い積層方向の中央部側には、積層端側よりも加熱能力が低下した状態で媒体を流通させることができる。
【0063】
以上により、この温度調節システム100によれば、各流路に同じ冷却能力又は加熱能力を有する媒体を流通させる従来の温度調節システムに比べて、蓄電装置1の温度ムラを抑制することができる。上述のように、蓄電モジュール11の性能は、温度が高過ぎても、低過ぎても劣化し易くなる。蓄電装置1の温度ムラを抑制することで、蓄電モジュール11の性能が局所的に劣化することを抑制できる。
【0064】
モジュールスタック2は、積層方向で隣り合う蓄電モジュール11,11間、及び、モジュールスタック2の積層端に設けられた複数の集電板12を有し、流路部32は、複数の集電板12を貫通する複数の貫通孔により構成されている。このため、流路部32を構成するための部材を別途設ける必要がない。
【0065】
蓄電モジュール11は、電極体21と、電極体21の主面21a上に設けられた正極層22と、電極体21の主面21b上に設けられた負極層23と、を含むバイポーラ電極16がセパレータ17を介して積層された電極積層体14を有している。このような蓄電モジュール11を備える蓄電装置1においても、温度ムラを抑制することができる。
【0066】
供給部40が冷却する媒体と、供給部40が加熱する媒体とは互いに共通である。このため、冷却用と加熱用とで別の媒体を備える必要がない。
【0067】
冷却された媒体が供給される流路30A,30Bと、加熱された媒体が供給される流路30A,30Bとは互いに共通である。このため、冷却用と加熱用とで別の流路30A,30Bを備える必要がない。
【0068】
供給部40は、流路30A,30Bとの間で媒体を循環させる。このため、同じ媒体を繰り返して使用できる。
【0069】
温度調節システム100は、蓄電装置1の温度を検出する検出部50を備える。このため、供給部40は、検出部50で検出した温度に基づき、流路30A,30Bに冷却又は加熱された媒体を供給することができる。
【0070】
以上、実施形態に係る温度調節システム100について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0071】
図5は、第1変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。第1変形例に係る温度調節システム100Aは、蓄電装置1の代わりに蓄電装置1Aを備える点で、温度調節システム100と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Aでは、一方の積層端に配置された一つの集電板12に接続部材3が電気的に接続され、他方の接続端に配置された一つの集電板12に接続部材4が電気的に接続される。蓄電モジュール1111間に配置された一つの集電板12には、接続部材3,4が接続されていないので、突出部12cが設けられていない。一対の蓄電モジュール11,11は、一方の蓄電モジュール11の正極終端電極18と、他方の蓄電モジュール11の負極終端電極19とが互いに対向するように配置されている。
【0072】
蓄電装置1Aでは、電流は接続部材3に接続された集電板12を通って一方の蓄電モジュール11に流れ、蓄電モジュール11,11に配置された集電板12を通って、他方の蓄電モジュール11に流れ、更に、接続部材4に接続された集電板12に流れる。蓄電装置1Aでは、蓄電モジュール11,11は電気的に直列に接続される。
【0073】
図6は、第2変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。第2変形例に係る温度調節システム100Bは、蓄電装置1の代わりに蓄電装置1Bを備える点で、温度調節システム100と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Bは、積層方向の中央部に配置された集電板12の代わりに、集電ユニット71を備えると共に、積層端に配置された集電板12,12の代わりに、集電ユニット72,72を備える。
【0074】
集電ユニット71は、方向Zで互いに対向する一対の集電板73,73と、一対の集電板73,73間に配置された絶縁性の板部材74と、一対の集電板73,73の方向Xの端部同士を電気的に接続する接続部75と、を有している。一方の集電板73は、一方の蓄電モジュール11における正極終端電極18の電極体21(図2参照)と接触し、一方の蓄電モジュール11と電気的に接続される。他方の集電板73は、他方の蓄電モジュール11における正極終端電極18の電極体21と接触し、他方の蓄電モジュール11と電気的に接続される。
【0075】
各集電板73は、正極終端電極18の電極体21に接触する本体部73aを有している。一方の集電板73は、方向Xにおいて本体部73aの縁73bの一部から突出する突出部73cを有する。突出部73cは、接続部材3に接続される。板部材74は、一対の集電板73,73と接触している。板部材74には、流路部32を構成する貫通孔が設けられている。
【0076】
各集電ユニット72は、方向Zで互いに対向する集電板76と、絶縁性の板部材77と、を有している。集電板76は、蓄電モジュール11における負極終端電極19の電極体21(図2参照)と接触し、蓄電モジュール11と電気的に接続される。集電板76は、負極終端電極19の電極体21と接触する本体部76aと、方向Xにおいて本体部76aの縁76bの一部から突出する突出部76cとを有する。突出部76cは、接続部材4に接続される。板部材77は、集電板76及び絶縁部材7のそれぞれに接触している。板部材77には、流路部32を構成する貫通孔が設けられている。
【0077】
蓄電装置1Bにおいても、蓄電モジュール11,11は電気的に並列に接続される。電流は接続部材3に接続された一方の集電板73に流れると共に、接続部75を通じて、他方の集電板73に流れる。その後、電流は、一対の集電板73から蓄電モジュール11に流れ、接続部材4に接続された一対の集電板76に流れる。蓄電装置1Bでは、流路部32が絶縁性の板部材74,77に設けられているため、媒体として、絶縁性の流体だけでなく、導電性の流体を用いることができる。導電性の流体としては、例えば、水等が挙げられる。
【0078】
図7は、第3変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。第3変形例に係る温度調節システム100Cは、蓄電装置1A(図5参照)の代わりに蓄電装置1Cを備える点で、温度調節システム100A(図5参照)と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Cは、三つの蓄電モジュール11と、四つの集電板12と、を備える。このため、流路30A,30Bは、方向Zの中央部に配置された流路部32を共有することなく、二つの流路部32をそれぞれ有する。したがって、第1流出入口30aも流路30A,30Bごとに設けられる。また、各流路30A,30Bは、それぞれ独立した連通部33を有する。
【0079】
図8は、第4変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。第4変形例に係る温度調節システム100Dは、蓄電装置1A(図5参照)の代わりに蓄電装置1Dを備える点で、温度調節システム100A(図5参照)と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Dは、四つの蓄電モジュール11と、五つの集電板12と、を備える。このため、流路30A,30Bは、共有する流路部32を含め、三つの流路部32をそれぞれ有する。流路30A,30Bは、積層端に配置された流路部32の方向Yの一端32aと、当該流路部32と積層方向で隣り合う流路部32の方向Yの一端32aとを連通可能に連通させる連通部33をそれぞれ更に有する。流路30A,30Bの第2流出入口30bは、積層端の流路部32の方向Yの他端32bにより構成される。流路30A,30Bは、蓄電装置1Dにおいて積層方向の中央部と積層端との間で方向Yに蛇行しながら連続している。
【0080】
温度調節システム100,100A,100B,100C,100Dでは、供給部40のポンプ43が双方向ポンプであるが、二つの一方向ポンプを備えてもよい。この場合、一つの一方向ポンプで供給部40から第1流出入口30aに向かう方向に媒体を送ると共に、もう一つの一方向ポンプで供給部40から第2流出入口30bに向かう方向に媒体を送る。
【0081】
温度調節システム100,100A,100B,100C,100Dでは、方向Xに配列された複数の流路30A,30Bの全てに冷却された媒体又は加熱された媒体が流通し、冷却用と加熱用とで複数の流路30A,30Bを使い分けていないが、冷却用と加熱用とで複数の流路30A,30Bを使い分けてもよい。例えば、方向Xに配列された複数の流路30A,30Bのうち、一部の流路30A,30Bに冷却された媒体のみを流通させ、残りの流路30A、30Bに加熱された媒体のみを流通させてもよい。この場合、例えば、冷却用の流路30A,30Bと、加熱用の流路30A,30Bとを方向Xに交互に配置することで、方向Xにおける蓄電装置1の温度ムラを抑制することができる。また、冷却用の流路30A,30Bと、加熱用の流路30A,30Bとを同数とすることで、蓄電装置1の温度ムラを更に抑制することができる。
【0082】
モジュールスタック2及びこれを構成する蓄電モジュール11は、上記実施形態に限定されない。例えば、角型あるいは丸形のケースに封止された蓄電モジュールを配列し、モジュールスタックを構成してもよい。この場合も、配列方向で隣り合う蓄電モジュール間及び配列方向の端にケースと隣接して複数の流路部が設けられる。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B,1C,1D…蓄電装置、2…モジュールスタック(積層体)、11…蓄電モジュール、12…集電板、14…電極積層体、16…バイポーラ電極(電極)、17…セパレータ、21…電極体、21a…主面、21b…主面、22…正極層(正極活物質層)、23…負極層(負極活物質層)、30A,30B…流路、30a…第1流出入口、30b…第2流出入口、32…流路部(貫通孔)、33…連通部、50…検出部、100,100A,100B,100C,100D…温度調節システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8