(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20230725BHJP
C08G 63/60 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C08L67/04
C08G63/60
(21)【出願番号】P 2019567077
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001807
(87)【国際公開番号】W WO2019146575
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018008902
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】本多 栄一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 康明
(72)【発明者】
【氏名】野口 敬太
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 雄一郎
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161917(JP,A)
【文献】特開2010-284943(JP,A)
【文献】特開平10-306147(JP,A)
【文献】特表2004-530165(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118966(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190317(WO,A1)
【文献】特開昭60-097349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/04
C08G 63/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂を含み、
前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)の含有量が60~90mol%である、成形体。
【化1】
(前記一般式(1)において、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、nは
1である。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR
1、R
2、及びR
3が水素原子である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記単位(B)が脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位である、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記単位(C)が脂肪族ジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体、又はカルド構造を有するジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体に由来する単位である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
前記共重合ポリエステル樹脂が下記(1)~(2)を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形体。
(1)前記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が100℃以上である。
(2)前記成形体の鉛筆硬度がHB以上である。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の成形体の製造方法であって、
前記共重合ポリエステル樹脂を射出成形又は射出圧縮成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、透明性、機械物性等に優れた熱可塑性樹脂であり、自動車内装パネルやヘッドランプレンズ、携帯電話やパーソナルコンピューターの筐体等、幅広い用途がある。また、ポリカーボネート樹脂は、無機ガラスに比較して軽量で、生産性にも優れているので、自動車の窓用途等にも使用されている。しかしながら、現在広く用いられている、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」ともいう。)を用いたポリカーボネート樹脂は、鉛筆硬度に代表される表面硬度が低いという課題がある。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の表面硬度を改善するために、これまでに多くのポリカーボネート樹脂、またはポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1では、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートが、鉛筆硬度が2Hと高い表面硬度が得られることが報告されている。また、特許文献2では、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定の(メタ)アクリル共重合体とリン系安定剤、及び、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルを、それぞれ特定量含有させることにより、鉛筆硬度Hと透明性を維持しつつ、表面硬度の高い組成物が得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-500195号公報
【文献】特開2012-025790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~2に記載の技術によれば、表面硬度は向上するものの、耐候性の観点からは依然として改善の余地を有する。すなわち、成形体として、耐熱性、耐候性及び表面硬度の物性バランスに優れるものは未だ得られていない。
本発明は、以上の従来技術が有する問題点に鑑みなされたものであり、耐熱性、耐候性及び表面硬度の物性バランスに優れる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定の脂環式構造を構成単位として含む共重合ポリエステル樹脂を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表される単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂を含み、
前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)の含有量が20~90mol%である、成形体。
【化1】
(前記一般式(1)において、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、nは0又は1である。)
[2]
前記一般式(1)におけるR
1、R
2、及びR
3が水素原子である、[1]に記載の成形体。
[3]
前記単位(B)が脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位である、[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]
前記単位(C)が脂肪族ジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体、又はカルド構造を有するジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体に由来する単位である、[1]~[3]のいずれかに記載の成形体。
[5]
前記共重合ポリエステル樹脂が下記(1)~(2)を満たす、[1]~[4]のいずれかに記載の成形体。
(1)前記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が100℃以上である。
(2)前記成形体の鉛筆硬度がHB以上である。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の成形体の製造方法であって、
前記共重合ポリエステル樹脂を射出成形又は射出圧縮成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性、耐候性及び表面硬度の物性バランスに優れる成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】モノマー合成例で得られた主反応生成物の1H-NMR測定の結果を示す。
【
図2】モノマー合成例で得られた主反応生成物の13C-NMR測定の結果を示す。
【
図3】モノマー合成例で得られた主反応生成物のCOSY-NMR測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
本実施形態の成形体は、下記一般式(1)で表される単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂を含み、前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)の含有量が20~90mol%である。
【0012】
【化2】
(前記一般式(1)において、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、nは0又は1である。)
【0013】
上記のように構成されているため、本実施形態の成形体は、耐熱性、耐候性及び表面硬度の物性バランスに優れる。
【0014】
(共重合ポリエステル樹脂)
本実施形態における共重合ポリエステル樹脂は、その構成単位として、上記一般式(1)で表される単位(A)(以下、「単位(A)」ともいう。)、ジオール単位(B)(以下、「単位(B)」ともいう。)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)(以下、「単位(C)」ともいう。)を有するものである。また、本実施形態において、耐熱性及び成形性のバランスを考慮し、共重合ポリエステル樹脂が有する全単位に対する単位(A)の含有量を20~90mol%とする。上記含有量が20mol%未満であると、十分な耐熱性が得られない。また、上記含有量が90mol%以下であると、良好な耐熱性を確保しつつも成形性を向上させることができる。上記と同様の観点及び機械物性をより向上させる観点から、単位(A)の含有量は、30~90mol%であることが好ましく、より好ましくは40~85mol%であり、さらに好ましくは50~85mol%であり、よりさらに好ましくは60~85mol%である。
【0015】
単位(A)において、一般式(1)中のR1は、好ましくは水素原子又はCH3であり、R2及びR3は、好ましくは水素原子である。本実施形態において、耐熱性の観点から、一般式(1)におけるR1、R2、及びR3が水素原子であることがより好ましい。
また、上記一般式(1)中のnは、耐熱性をより向上させる観点から、1であることが好ましい。
【0016】
構成単位(B)としては、ジオールに由来する単位であれば特に限定されず、その具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7-デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、ノルボルナンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2'-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、アダマンタンジオール、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)フルオレン、キシリレングリコール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等のジオールに由来する単位が挙げられる。
構成単位(B)は、良好な透明性が得られることから、脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位であることが好ましい。このような脂肪族ジオールに由来する単位としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールに由来する単位がより好ましい。また、カルド構造を有するジオールに由来する単位としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、に由来する単位がより好ましい。
なお、これらの光学異性体は、シス体、トランス体、これらの混合物のいずれであってもよく、特に限定されない。
上記した単位は、1種を単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
共重合ポリエステル樹脂が有する全単位に対する単位(B)の含有量は、5~35mol%であることが好ましく、より好ましくは6~30mol%である。
【0017】
構成単位(C)としては、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位であれば特に限定されず、その具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2-メチルテレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構成単位;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-カルボキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、5-カルボキシ-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-カルボキシエチル)-1,3-ジオキサン、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単位;9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン等のカルド構造を有するジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単位が挙げられる。
構成単位(C)は、良好な透明性が得られることから、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、若しくはカルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位としては、透明性及び耐熱性の物性バランスの観点から、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルに由来する単位がより好ましい。また、カルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位としては、透明性及び耐熱性の物性バランスの観点から、9,9-ビス(メトキシカルボニルメチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシカルボニルエチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシカルボニルプロピル)フルオレンに由来する単位がより好ましい。
なお、これらの光学異性体は、シス体、トランス体、これらの混合物のいずれであってもよく、特に限定されない。
上記した単位は、1種を単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
共重合ポリエステル樹脂が有する全単位に対する単位(C)の含有量は、5~35mol%であることが好ましく、より好ましくは6~30mol%である。
【0018】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂は、単位(A)~(C)以外に、ヒドロキシル基及びカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(A1)等の他の単位を含んでもよい。単位(A1)としては、特に限定はされないが、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸等のオキシ酸及び/又はその誘導体に由来する単位等が挙げられる。
【0019】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、本実施形態の効果を有する限り特に限定されないが、十分な耐熱性を確保する観点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは105℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、よりさらに好ましくは115℃以上であり、一層好ましくは120℃以上であり、より一層好ましくは130℃以上である。上記Tgは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記Tgは、例えば、共重合ポリエステル樹脂の原料モノマーの共重合比率を適宜調整すること等により上記範囲に調整することができる。
【0020】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂の分子量は、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されないが、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が5000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000である。Mwが5,000以上である場合、耐熱性を好ましく確保できる傾向にあり、Mwが200,000以下である場合と、溶融粘度がより良好となり、製造後の樹脂の抜き取りしやすく、更には流動性の観点から溶融状態で射出成形がしやすくなる傾向にある。
【0021】
さらに本実施形態における共重合ポリエステル樹脂を成形体とする際には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等の公知の添加剤を添加することが好適に実施される。本実施形態において、成形体に含まれ得る添加剤の含有量は特に限定されないが、例えば、成形体100質量%に対し、0.0001~5質量%とすることが好ましく、0.0001~3質量%とすることがより好ましい。換言すると、本実施形態において、成形体に含まれる共重合ポリエステル樹脂に含まれ得る添加剤の含有量も特に限定されないが、例えば、成形体100質量%に対し、0.0001~1質量%とすることが好ましく、0.0001~0.8質量%とすることがより好ましい。
【0022】
(共重合ポリエステル樹脂の製造方法)
本実施形態における共重合ポリエステル樹脂は、単位(A)~(C)に対応する各単量体を共重合することにより、得ることができる。以下、単位(A)に対応する単量体の製造方法について説明する。かかる単量体は、例えば、下記一般式(2)で表される。
【0023】
【0024】
上記一般式(2)において、R1は、水素原子、CH3又はC2H5であり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又はCH3であり、Xは、水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基である。
式(2)において、R1は、好ましくは水素原子又はCH3である。R2及びR3は、好ましくは水素原子である。上記炭化水素基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、2-ヒドロキシエチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0025】
本実施形態における一般式(2)で表される化合物は、ジシクロペンタジエン又はシクロペンタジエンと官能基を有するオレフィンを原料として、例えば、下記式(I)に示すルートで合成することが可能である。
【0026】
【化4】
(式(I)中、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、Xは水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基である。)
【0027】
〔式(I)中の一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンの製造〕
前記一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンは、例えば、官能基を有するオレフィンとジシクロペンタジエンのディールスアルダー反応を行うこと等で製造することが可能である。
【0028】
前記ディールスアルダー反応に用いる官能基を有するオレフィンの具体例としては、以下に限定されないが、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ビニル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、3-メチルクロトン酸、3-メチルクロトン酸メチル、3-メチルクロトン酸エチル等が挙げられ、好ましいオレフィンとして、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチルが挙げられ、より好ましいオレフィンとしてメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが挙げられる。
【0029】
さらに、前記ディールスアルダー反応に用いる官能基を有するオレフィンの例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、メタクロレインを挙げられる。これらのオレフィンを原料とする場合、例えば、下記式(II)、式(III)に示すルート等を経て一般式(4’)で表されるモノオレフィンを製造することができる。
【0030】
【化5】
(式(II)中、R
1は水素原子又はCH
3である)
【0031】
【化6】
(式(III)中、R
1は水素原子又はCH
3である)
【0032】
前記ディールスアルダー反応に用いるジシクロペンタジエンは高純度のものが好ましく、ブタジエン、イソプレン等の含有量を低減することが好ましい。ジシクロペンタジエンの純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、ジシクロペンタジエンは加熱条件下で解重合しシクロペンタジエン(所謂モノシクロペンタジエン)になる傾向にあるため、ジシクロペンタジエンの代わりにシクロペンタジエンを使用することも可能である。尚、一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンは、実質的に下記一般式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィン(1段目ディールスアルダー反応生成物)を経由して生成していると考えられ、生成した一般式(7)のモノオレフィンが新たな親ジエン化合物(Dienophile)として反応系内に存在するシクロペンタジエン(Diene)とディールスアルダー反応(2段目ディールスアルダー反応)に預かり、一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンが生成するものと考えられる。
以上の観点から、例えば、上記式(I)に示す反応ルートにおいて、1段目ディールスアルダー反応の反応条件を適宜制御することにより、式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンあるいは式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを選択的に得ることができる。
【0033】
【化7】
(式(7)中、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3を示し、Xは水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基を示す。)
【0034】
前記2段階のディールスアルダー反応を効率的に進行させる、すなわち、式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンを選択的に得る観点からは、反応系内にシクロペンタジエンが存在することが重要であるため、反応温度として100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。一方で、式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを選択的に得るためには、反応温度として180℃未満が好ましい。なお、いずれの場合においても、高沸物質の副生を抑えるためには250℃以下の温度で反応を行うことが好ましい。
上記のようにして得られた式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンを、後述するヒドロホルミル化反応及び還元反応に供することで、式(1)においてn=1である場合に対応する単量体(すなわち、式(2)で表される化合物)を得ることができる。また、上記のようにして得られた式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを、同様のヒドロホルミル化反応及び還元反応に供することで、式(1)においてn=0である場合に対応する単量体(すなわち、式(8)で表される化合物)を得ることができる。
なお、反応溶媒として炭化水素類やアルコール類、エステル類等を使用することも可能であり、炭素数6以上の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、プロパノール、ブタノール等が好ましい。また、必要に応じて、AlCl
3等公知の触媒を添加してもよい。
【化8】
(上記式(8)において、R
1は、水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、Xは、水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基である。)
【0035】
前記ディールスアルダー反応の反応方式としては、槽型反応器等による回分式、反応条件下の槽型反応器に基質や基質溶液を供給する半回分式、管型反応器に反応条件下で基質類を流通させる連続流通式等、多様な反応方式を採ることが可能である。
【0036】
前記ディールスアルダー反応で得られた反応生成物は、そのまま次のヒドロホルミル化反応の原料として用いることもできるが、蒸留、抽出、晶析などの方法によって精製した後、次工程に供してもよい。
【0037】
〔式(I)中の(3)で表される炭素数14~22の二官能性化合物の製造〕
前記式(I)中の一般式(3)で表される炭素数14~22の二官能性化合物は、例えば、一般式(4)で表される炭素数13~21モノオレフィンと一酸化炭素及び水素ガスをロジウム化合物、有機リン化合物の存在下でヒドロホルミル化反応させること等で製造することができる。
【0038】
前記ヒドロホルミル化反応で使用されるロジウム化合物は、有機リン化合物と錯体を形成し、一酸化炭素と水素の存在下でヒドロホルミル化活性を示す化合物であればよく、その前駆体の形態は特に限定されない。例えば、ロジウムアセチルアセトナートジカルボニル(以下、Rh(acac)(CO)2と記す)、Rh2O3、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、Rh(NO3)3等の触媒前駆物質を有機リン化合物と共に反応混合物中に導入し、反応容器内で触媒活性を持つロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を形成させてもよいし、予めロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を調製してそれを反応器内に導入してもよい。好ましい具体例としてはRh(acac)(CO)2を溶媒の存在下で有機リン化合物と反応させた後、過剰の有機リン化合物と共に反応器に導入し、触媒活性を有するロジウム-有機リン錯体とする方法が挙げられる。
【0039】
本発明者らの検討により、一般式(4)で表されるような比較的分子量の大きな内部オレフィンを有する2段階ディールスアルダー反応生成物が極めて少量のロジウム触媒でヒドロホルミル化されることがわかっている。本ヒドロホルミル化反応におけるロジウム化合物の使用量は、ヒドロホルミル化反応の基質である一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィン1モルに対して0.1~60マイクロモルが好ましく、0.1~30マイクロモルがより好ましく、0.2~20マイクロモルが更に好ましく、0.5~10マイクロモルが特に好ましい。ロジウム化合物の使用量が炭素数13~21のモノオレフィン1モルに対して60マイクロモルより少ない場合、実用上、ロジウム錯体の回収リサイクル設備を設けなくてもよい水準と評価できる。このように、本実施形態によれば、回収リサイクル設備に関わる経済的負担を減らすことができ、ロジウム触媒にかかるコストを低減することが可能である。
【0040】
本実施形態におけるヒドロホルミル化反応において、ロジウム化合物とヒドロホルミル化反応の触媒を形成する有機リン化合物としては、特に限定されないが、例えば、一般式P(-Ra)(-Rb)(-Rc)で表されるホスフィン又はP(-ORa)(-ORb)(-ORc)で表されるホスファイトが挙げられる。Ra、Rb、Rcの具体例としては、以下に限定されないが、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基で置換され得るアリール基や、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基で置換され得る脂環式アルキル基等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイトが好適に用いられる。有機リン化合物の使用量はロジウム化合物中のロジウム原子に対して300倍モル~10000倍モルが好ましく、500倍モル~10000倍モルがより好ましく、更に好ましくは700倍モル~5000倍モル、特に好ましくは900倍モル~2000倍モルである。有機リン化合物の使用量がロジウム原子の300倍モル以上である場合、触媒活物質であるロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体の安定性が十分に確保できる傾向にあり、結果として良好な反応性が確保される傾向にある。また、有機リン化合物の使用量がロジウム原子の10000倍モル以下である場合、有機リン化合物に掛かるコストを十分に低減する観点から好ましい。
【0041】
前記ヒドロホルミル化反応は溶媒を使用せずに行うことも可能であるが、反応に不活性な溶媒を使用することにより、より好適に実施することができる。ヒドロホルミル化反応に使用できる溶媒としては、一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィン、ジシクロペンタジエン又はシクロペンタジエン、前記ロジウム化合物、及び前記有機リン化合物を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、以下に限定されないが、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類;脂肪族エステル、脂環式エステル、芳香族エステル等のエステル類;脂肪族アルコール、脂環式アルコール等のアルコール類;芳香族ハロゲン化物等の溶媒が挙げられる。これらのうち炭化水素類が好適に用いられ、中でも脂環式炭化水素、芳香族炭化水素がより好適に用いられる。
【0042】
前記ヒドロホルミル化反応を行う場合の温度としては40℃~160℃が好ましく、80℃~140℃がより好ましい。反応温度が40℃以上の場合には十分な反応速度が得られる傾向にある、原料であるモノオレフィンの残留がより抑えられる傾向にある。また、反応温度が160℃以下にすることで原料モノオレフィンや反応生成物由来の副生物の生成を抑え、反応成績の低下を効果的に防止できる傾向にある。
【0043】
本実施形態におけるヒドロホルミル化反応を行う場合、一酸化炭素(以下「CO」と記載することもある)及び水素(以下「H2」と記載することもある)ガスによる加圧下で反応を行うことが好ましい。その際、CO及びH2ガスは各々独立に反応系内に導入することも、また、予め調製された混合ガスとして反応系内に導入することも可能である。反応系内に導入されるCO及びH2ガスのモル比(=CO/H2)は0.2~5が好ましく、0.5~2がより好ましく、0.8~1.2が更に好ましい。CO及びH2ガスのモル比が上記範囲に調整する場合、ヒドロホルミル化反応の反応活性や目的とするアルデヒドの選択率が良好となる傾向にある。反応系内に導入したCO及びH2ガスは反応の進行に伴い減少していくため、予め調製されたCOとH2の混合ガスを利用すると反応制御が簡便な場合がある。
【0044】
前記ヒドロホルミル化反応の反応圧力としては、1~12MPaが好ましく、1.2~9MPaがより好ましく、1.5~5MPaが更に好ましい。反応圧力が1MPa以上とすることで十分な反応速度が得られる傾向にあり、原料であるモノオレフィンの残留を十分に抑制できる傾向にある。また、反応圧力が12MPa以下にすることで、耐圧性能に優れる高価な設備を必要としなくなるため経済的に有利である。特に、回分式や半回分式で反応を行う場合、反応終了後にCO及びH2ガスを排出・落圧する必要があり、低圧になるほどCO及びH2ガスの損失が少なくなるため経済的に有利である。
【0045】
前記ヒドロホルミル化反応を行う場合の反応方式としては、回分式反応や半回分式反応が好適である。半回分式反応はロジウム化合物、有機リン化合物、前記溶媒を反応器に加え、CO/H2ガスによる加圧や加温等を行い、既述の反応条件とした後に原料であるモノオレフィン又はその溶液を反応器に供給することにより行うことが可能である。
【0046】
前記ヒドロホルミル化反応で得られた反応生成物は、そのまま次の還元反応の原料として用いることも出来るが、例えば蒸留や抽出、晶析等により精製した後、次工程に供してもよい。
【0047】
〔式(2)で表される炭素数14~22の化合物の製造〕
前記式(I)中の一般式(2)で表される炭素数14~22の化合物は、一般式(3)で表される炭素数14~22の化合物を、水素化能を有する触媒及び水素の存在下で還元することにより製造することが出来る。
【0048】
前記還元反応では、水素化能を有する触媒として、銅、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、コバルト、及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む触媒を用いることが好ましい。より好ましい触媒としては、Cu-Cr触媒、Cu-Zn触媒、Cu-Zn-Al触媒等の他、Raney-Ni触媒、Raney-Co触媒等が挙げられ、さらに好ましい触媒はCu-Cr触媒、Raney-Co触媒である。
【0049】
前記水素化触媒の使用量は、基質である一般式(3)で表される炭素数14~22の化合物に対して1~100質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。触媒使用量をこれらの範囲とすることで好適に水素化反応を実施することが出来る。触媒使用量が1質量%以上である場合、十分に反応が進行し、結果として目的物の収率を十分に確保できる傾向にある。また、触媒使用量が100質量%以下である場合、反応に供した触媒量と反応速度の向上効果とのバランスが良好となる傾向にある。
【0050】
前記還元反応の反応温度は60~200℃が好ましく、80℃~150℃がより好ましい。反応温度を200℃以下にすることで、副反応や分解反応の発生を抑制し高い収率で目的物が得られる傾向にある。また、反応温度を60℃以上にすることで、適度な時間で反応を完結させることができ、生産性の低下や目的物収率の低下を回避できる傾向にある。
【0051】
前記還元反応の反応圧力は、水素分圧として0.5~10MPaが好ましく、1~5MPaがより好ましい。水素分圧を10MPa以下にすることで、副反応や分解反応の発生を抑制し高い収率で目的物が得られる傾向にある。また、水素分圧を0.5MPa以上にすることで、適度な時間で反応を完結させることができ、生産性の低下や目的物収率の低下を回避できる傾向にある。尚、還元反応に不活性なガス(例えば窒素又はアルゴン)を共存させることも可能である。
【0052】
前記還元反応においては溶媒を使用することが可能である。還元反応に用いられる溶媒としては、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類等が挙げられ、中でも脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類が好ましい。その具体例としてはシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、1-プロパノール等が挙げられる。
【0053】
前記還元反応の反応方式としては槽型反応器等による回分式、反応条件下の槽型反応器に基質や基質溶液を供給する半回分式、成型触媒を充填した管型反応器に反応条件下で基質や基質溶液を流通させる連続流通式等、多様な反応方式を採ることが可能である。
【0054】
前記還元反応で得られた反応生成物は、例えば蒸留や抽出、晶析等により精製することができる。
【0055】
本実施形態における一般式(2)で表される化合物又は式(8)で表される化合物を単位(A)に対応する単量体とし、単位(B)~(C)に対応する各単量体と共重合させる方法としては、特に限定されず、従来公知のポリエステルの製造方法を適用することができる。例えば、エステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げることができる。
【0056】
本実施形態の共重合ポリエステル樹脂の製造時には、通常のポリエステル樹脂の製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、重縮合触媒等を使用することができる。これらの触媒としては特に限定されないが、例えば、亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド)や金属マグネシウム等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。触媒としては、上記した中でマンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウム、アンチモン、ゲルマニウム、スズの化合物が好ましく、マンガン、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズの化合物がより好ましい。これらの触媒の使用量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂の原料に対して金属成分としての量が、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは3~750ppm、更に好ましくは5~500ppmである。
【0057】
前記重合反応における反応温度は触媒の種類、その使用量などによるが、通常150℃から300℃の範囲で選ばれ、反応速度及び樹脂の着色を考慮すると180℃~280℃が好ましい。反応層内の圧力は、大気雰囲気下から最終的には1kPa以下に調節することが好ましく、最終的には0.5kPa以下とするのがより好ましい。
【0058】
前記重合反応を行う際には、所望によりリン化合物を添加してもよい。リン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステル等を挙げることができる。リン酸エステルとしては、以下に限定されないが、例えば、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル等を挙げることができる。亜リン酸エステルとしては、以下に限定されないが、例えば、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸ブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態の共重合ポリエステル樹脂中のリン原子の濃度は1~500ppmが好ましく、5~400ppmがより好ましく、10~200ppmがさらに好ましい。
【0059】
また、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂の製造時には、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等を使用することができる。
【0060】
<自動車部品>
本実施形態の成形体は、その一態様として、自動車部品とすることができる。すなわち、本実施形態の自動車部品は、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂を含むものであり、種々の自動車部品として適用でき、その具体的な用途も特に限定されない。本実施形態の自動車部品は、典型的には、自動車内外装部品として用いることができ、以下に限定されないが、例えば、フェンダー、バンパー、フェーシャ、ドアパネル、サイドガーニッシュ、ピラー、ラジエータグリル、サイドプロテクター、サイドモール、リアプロテクター、リアモール、各種スポイラー、ボンネット、ルーフパネル、トランクリッド、デタッチャブルトップ、ウインドリフレクター、ミラーハウジング、アウタードアハンドル等の自動車用外装部品、インストルメントパネル、センターコンソールパネル、メーター部品、各種スイッチ類、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品、ヘッドアップディスプレイ部品等に適用できる。また、自動車(二輪車)用ランプレンズ(ヘッドライトランプレンズ、リアランプレンズ、方向指示ランプレンズ、ルームランプレンズ等)、窓、筺体等や特殊な形状のもの等も挙げられる。
【0061】
本実施形態においては、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂の他、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々公知の添加剤を加えて自動車部品等の種々の成形体を構成することができる。上記添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、その他の樹脂、着色剤、光安定剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤、充填材、染顔料、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
なお、自動車用ランプレンズの用途としては、以下に限定されないが、典型例としては、耐衝撃性改良剤、難燃剤、難燃助剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料が挙げられる。また、例えば、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィンなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂などと混練したポリマーアロイとして自動車部品に適用することもできる。
【0062】
上述したように、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂と、他の樹脂とを含む樹脂組成物を成形して、本実施形態の成形体とすることができる。本実施形態において好ましく用いられる他の樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂としては、特に限定されず、種々公知のものを用いることができ、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることもできる。
【0063】
本実施形態における樹脂組成物において、共重合ポリエステル樹脂と、ポリカーボネート樹脂の合計質量に対するポリカーボネート樹脂の質量比は特に限定されないが、2~99.5質量%であることが好ましく、より好ましくは10~98質量%、さらに好ましくは30~95質量%、よりさらに好ましくは50~90質量%である。上記質量比が2~99.5質量%である場合、成形体の透明性、耐熱性、表面硬度、耐薬品性、機械的強度、及び成形加工性が優れたものとなる傾向にある。本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の含有量がほぼ同じであるか、ポリカーボネート樹脂の含有量の方が比較的多いことが特に好ましい。
【0064】
本実施形態における樹脂組成物は、共重合ポリエステル樹脂と、ポリカーボネート樹脂との配合割合により、種々の特徴を発現させることができる。すなわち、上述した質量比の範囲においてポリカーボネート樹脂の割合を増やすことで、耐熱性、機械的強度が特に優れたものとなる傾向にあり、共重合ポリエステル樹脂の割合を増やすことで表面硬度、耐薬品性、成形加工性が特に優れたものとなる傾向にある。
【0065】
本実施形態におけるポリカーボネート樹脂の構造としては特に限定されないが、芳香族ジヒドロキシ化合物及び任意に少量のポリヒドロキシ化合物等を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得ることのできる、分岐構造を有していてもよいポリカーボネート重合体又は共重合体であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の製造時に、末端停止剤を存在させてもよい。
【0066】
ポリカーボネート樹脂としては、下記一般式(9)及び/又は(10)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート樹脂、または、下記一般式(9)及び/又は(10)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、一般式(9)及び/又は(10)で表される繰返し単位には、副反応によって分岐したものも含まれる。
【0067】
【0068】
【0069】
(上記一般式(9)及び(10)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の非環状炭化水素基、炭素数6~18のアリール基、及び炭素数5~10の脂環式炭化水素基から選ばれ;R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10のオキシアルキル基、及び炭素数6~18のオキシアリール基から選ばれ;m1及びm2はそれぞれ独立に、0~4であり;kは4又は5である)
上記一般式(9)及び(10)において、R1及びR2は、水素原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基、及び炭素数6~8のアリール基から選ばれることが好ましく、R3及びR4は、ハロゲン原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基、及び炭素数6~8のアリール基から選ばれることが好ましく、m1及びm2は、0~2であることが好ましく、kは4又は5であることが好ましい。
【0070】
本実施形態におけるポリカーボネート樹脂の原料として使用しうる芳香族ヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールZがより好ましく、成形体の耐熱性、機械的性能、経済性等の面から、ビスフェノールAが特に好ましく、すなわちポリカーボネート樹脂がビスフェノールAのポリ炭酸エステルであることがとりわけ好ましい。
【0071】
上述した他、ポリカーボネート樹脂としては、下記一般式(11)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂(A)も好ましい。
【0072】
【化11】
(一般式(11)中、R
1はメチル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
【0073】
上記一般式(11)において、R1はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R2及びR3は特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、アルキレン基又はアルキリデン基であるが、アルキレン基としては炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。その例としては、メチレン、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,6-へキシレン等を挙げることができる。
アルキリデン基としては、炭素数2~10のアルキリデン基が好ましく、例えばエチリデン、2,2-プロピリデン、2,2-ブチリデン、3,3-ヘキシリデン等を挙げることができる。
Xは、アルキリデン基であるのが好ましく、2,2-プロピリデン基(即ち、イソプロピリデン基)が特に好ましい。
【0074】
ポリカーボネート樹脂(A)としての好ましい具体例としては、以下のイ)~ニ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ち、R1がメチル基、R2とR3が水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ロ)2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちR1がメチル基、R2とR3がメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
上記のうち、特に上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0075】
これらポリカーボネート樹脂は、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
【0076】
なお、ポリカーボネート樹脂(A)は、上記一般式(11)で表される構造単位で表される構造単位以外のカーボネート構造単位を有することもでき、例えば、下記一般式(12)で表される構造単位、あるいは後記するような他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。この際の一般式(11)で表される構造単位以外の構造単位の共重合量は、通常60モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下であることが好ましい。
【化12】
(上記一般式(12)中、Xは前記一般式(11)におけるXと同義である。)
【0077】
上記一般式(12)で表されるポリカーボネート構造単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、下記の化学式(13)の構造単位で示されるビスフェノールA由来のカーボネート構造単位である。
【化13】
【0078】
他のジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。
【0079】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000~28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよい成形体が得られやすく、16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(A)の分子量の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000、特に好ましくは20,000であり、その上限はより好ましくは27,000である。
ここで、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、上記したポリカーボネート樹脂を混合して使用する場合は、混合物としてのポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)をいい、混合物を構成する個々のポリカーボネート樹脂自体は、上記した粘度平均分子量(Mv)を外れているものであることを排除するものではない。
【0080】
なお、本明細書において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10-4M0.83の式から算出される値を意味する。
【0081】
[樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、種々公知の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)及び本実施形態における共重合ポリエステル樹脂、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度も特に限定されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0082】
本実施形態において、成形体の鉛筆硬度は、本実施形態の効果を有する限り特に限定されないが、十分な表面硬度を確保する観点から、好ましくはHB以上であり、より好ましくはF以上である。上記鉛筆硬度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記鉛筆硬度は、例えば、共重合ポリエステル樹脂の原料モノマーの共重合比率を適宜調整すること等により上記範囲に調整することができる。
【0083】
<成形体の製造方法>
本実施形態に係る成形体の製造方法としては、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂を用いて製造する限り、特に限定されない。
例えば、上記した共重合ポリエステル樹脂をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形体とすることができる。また、ペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形体とすることもできる。
成形体の形状としては、特に限定されず、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。具体的なものとしては、自動車部品とする場合、例えば、自動車内装用パネル、自動車(二輪車)ヘッドランプレンズ、窓、筺体等や特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。また、シートやフィルム、板状等として使用する場合には、他の樹脂シートと積層した多層構造の積層体であってもよい。
成形体を成形する方法としては、特に限定されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形) 成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
本実施形態における成形方法としては、所望とする成形体の形状や寸法にもよるが、射出成形、射出圧縮成形が好適に用いられる。ランナーも通常のコールドランナー方式だけでなく、ホットランナー方式を用いることもできる。また、インサート成形、インモールドコーティング成形、二色成形、サンドイッチ成形等もできる。さらに、自動車部品とする場合に深みと清澄感のある漆黒性を得る観点からは、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形を用いることもできる。
以上のとおり、本実施形態に係る成形体の製造方法は、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂を射出成形又は射出圧縮成形する工程を含むことが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。なお、共重合ポリエステル樹脂の評価方法は次のとおりである。
【0085】
(1)樹脂組成
共重合ポリエステル樹脂中のジオール構成単位及びジカルボン酸構成単位の割合は、1H-NMR測定にて算出した。測定装置は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、商品名:JNM-AL400)を用い、400MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
【0086】
(2)重量平均分子量(Mw)
共重合ポリエステル樹脂濃度が0.2wt%になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで検量した。GPCは東ソー株式会社製カラムTSKgel SuperHM-Mを用い、カラム温度40℃で測定した。溶離液はテトラヒドロフランを0.6ml/minの流速で流し、RI検出器で測定した。
【0087】
(3)ガラス転移温度(Tg)
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、次のように測定した。示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC/TA-60WS)を使用し、共重合ポリエステル樹脂約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30mL/分)気流中、昇温速度20℃/分で280℃まで加熱、溶融したものを急冷して測定用試料とした。該試料を同条件で測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
【0088】
(4)全光線透過率
住友重機械社製「SE130DU-HP型」射出成形機を使用して、シリンダー温度240℃~290℃、金型温度60℃の条件で、共重合ポリエステル樹脂より厚さ3mmの射出成形片を作製し、全光線透過率を測定した。測定には、日本電色工業(株)製ヘーズメーター(型式:NDH-4000)を用いた。
【0089】
(5)耐候性(ΔYI)
岩崎電気(株)製スーパーUVテスター(型式:SUV-W11、メタルハライドランプ光源)を用い、55℃、50%RHの条件下、上記(4)で得られた厚み3mmの射出成形片に48時間UV照射(68mW/cm2)し、耐候性試験を行った。UV照射前及び照射後の射出成形片について、黄色度を日本電色工業(株)製ヘーズメーター(型式:NDH-4000)を用い、JIS K7136に準じて測定を行い、黄色度の増加割合(ΔYI)を評価した。
○:ΔYIが10よりも小さい、×:ΔYIが10以上
【0090】
(6)鉛筆硬度
上記(4)と同様にして厚さ3mmの射出成形片を作製し、JIS K 5600-5-4に準拠し、射出成形片に対して角度45度、荷重750gで射出成形片の表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。
【0091】
(7)曲げ強度、曲げ弾性率
住友重機械社製「SE130DU-HP型」射出成形機を使用して、シリンダー温度240℃~290℃、金型温度60℃の条件で厚さ4mm、長さ80mm、幅10mmの射出成形片を作製し、JIS K7171に準じて、東洋精機株式会社製ストログラフを使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして、曲げ強度(MPa)及び曲げ弾性率(GPa)を測定した。
【0092】
<モノマー合成例>
500mLステンレス製反応器にアクリル酸メチル173g(2.01mol)、ジシクロペンタジエン167g(1.26mol)を仕込み195℃で2時間反応を行った。上記反応により、下記式(4a)で表されるモノオレフィン96gを含有する反応液を取得し、これを蒸留精製した後、一部を以下の反応に供した。
300mLステンレス製反応器を使用し、蒸留精製した式(4a)で表されるモノオレフィンのヒドロホルミル化反応をCO/H2混合ガス(CO/H2モル比=1)を用いて行った。反応器に式(4a)で表されるモノオレフィン70g、トルエン140g、亜リン酸トリフェニル0.50g、別途調製したRh(acac)(CO)2のトルエン溶液550μL(濃度0.003mol/L)を加えた。窒素およびCO/H2混合ガスによる置換を各々3回行った後、CO/H2混合ガスで系内を加圧し、100℃、2MPaにて5時間反応を行った。反応終了後、反応液のガスクロマトグラフィー分析を行い、式(3a)で表される化合物76g、式(4a)で表されるモノオレフィン1.4gを含む反応液(転化率98%、選択率97%)であることを確認すると共に、これを蒸留精製した後、一部を以下の反応に供した。
300mLステンレス製反応器に蒸留精製した式(3a)で表される化合物54g、スポンジコバルト触媒(日興リカ株式会社製:R-400)7mL、トルエン109gを添加し、水素ガスで系内を加圧し、3MPa、100℃で9時間反応を行った。反応後、得られたスラリーから、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで触媒をろ過した。その後、エバポレーターを使用して溶媒を留去し、ガスクロマトグラフィー及びGC-MSで分析し、分子量250の式(2a)で表される主生成物51gを含有することが確認された(主生成物収率93%)。これをさらに蒸留精製し、主生成物を取得した。
【0093】
【0094】
<生成物の同定>
モノマー合成例で取得した成分のNMR分析を行った。NMRスペクトルを
図1~3に示す。以下に示すGC-MS分析、及び
図1~3のNMR分析の結果から、モノマー合成例で得られた主生成物は、前記式(2a)で表される化合物であることが確認された。
<分析方法>
1)ガスクロマトグラフィー測定条件
分析装置 :株式会社島津製作所製 キャピラリガスクロマトグラフGC-2010 Plus
分析カラム :ジーエルサイエンス株式会社製、InertCap1(30m、0.32mmI.D.、膜厚0.25μm
オーブン温度:60℃(0.5分間)-15℃/分-280℃(4分間)
検出器 :FID、温度280℃
2)GC-MS測定条件
分析装置 :株式会社島津製作所製、GCMS-QP2010 Plus
イオン化電圧:70eV
分析カラム :Agilent Technologies製、DB-1(30m、0.32mmI.D.、膜厚1.00μm)
オーブン温度:60℃(0.5分間)-15℃/分-280℃(4分間)
3)NMR測定条件
装置 :日本電子株式会社製,JNM-ECA500(500MHz)
測定モード :1H-NMR、13C-NMR、COSY-NMR
溶媒 :CDCl
3(重クロロホルム)
内部標準物質:テトラメチルシラン
【0095】
以下、各種の化合物について次のとおり略記することとした。
D-NHEs:デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレン-2-メトキシカルボニル-6(7)-メタノール
DMCD:1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(シス/トランス=7/3)
CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス=3/7)
EG:エチレングリコール
TBT:テトラブチルチタネート
【0096】
(実施例1)
分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置及び窒素導入管を備えたポリエステル製造装置に、モノマー合成例より得られた式(2a)で表される化合物85.6重量部、DMCD3.8重量部、CHDM2.9重量部、TBT0.04重量部(理論樹脂量に対して、チタン原子量が70ppm)を仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温後、1時間保持し、所定量のメタノールを留出させた。その後、リン酸を0.003重量部(チタン原子量に対し、リン原子量が1/5)加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に270℃、0.1kPa以下で重縮合を行った。所定のトルクになった時点で反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、共重合ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られた共重合ポリエステル樹脂について、その樹脂組成及びガラス転移温度を評価し、さらに、得られた成形体について、その全光線透過率、鉛筆硬度、耐候性、曲げ強度及び曲げ弾性率を評価した。各種評価結果を表1に示す。
【0097】
(実施例2~6、及び比較例1)
表1に示すように原料組成比を変更した以外は実施例1と同様にして評価した。
【0098】
(比較例2)
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製;ユーピロンS2000)を用い、実施例1と同様にして評価した。
【0099】
【0100】
本出願は、2018年1月23日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-008902)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。