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特許7318570レジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】レジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
G03F7/033
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020042465
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021144133
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】加治 彩花
(72)【発明者】
【氏名】青野 竜也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064768(JP,A)
【文献】特開2001-002717(JP,A)
【文献】特開2010-024229(JP,A)
【文献】国際公開第2004/035641(WO,A1)
【文献】特開2001-255699(JP,A)
【文献】特開平04-164065(JP,A)
【文献】特開平07-216007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和塩基酸モノマー(A)、該不飽和塩基酸モノマー(A)と共重合可能なモノマー(B)、及び重合開始剤(C)を含むレジスト用樹脂組成物から得られる樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含有し、該重合開始剤(C)が下記一般式(1)で示される有機過酸化物を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物
【化1】

(式(1)中、R ~R は、同一または異なって、それぞれ水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物に関し、より詳しくは、耐薬品性および耐熱性に優れる樹脂膜を与えるレジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトレジスト材料は広く応用されており、テレビやスマートフォンをはじめとする電子製品等の製造工程又は加工工程に不可欠な微細加工材料となっている。係るフォトレジスト材料はマスクを用いた活性エネルギー線の照射により、露光部と未露光部のアルカリ溶液への溶解性の差を発現させることによってパターン化が行われ、アルカリ溶液で未露光部を溶解させ、さらに加熱による溶剤の除去及び硬化を行い所定形状のパターン形成が行われる。
【0003】
近年では、電子製品の小型化、集積回路の微細化、表示装置の高精細化に伴い、レジスト性能の向上が一層強く望まれている。各種装置を製造するプロセスの中で、パターンに熱履歴がかかるため、加熱に対して変化が生じ難く耐熱性に優れることが要求されている。耐熱性に優れた樹脂膜を得る方法として、特許文献1には酸基含有マレイミドモノマーに由来する繰り返し単位を含む重合体を用いる方法が開示されている。
【0004】
さらに、パターン形成後の樹脂膜がプロセスにおいて溶剤などの薬品に接触するため、薬品に接触しても膜厚変化が生じ難く耐薬品性に優れることも要求されている。また、これまで室温下での耐薬品性が求められていたが、近年はより高温条件下での耐性も要求されるようになっている。耐薬品性に優れた樹脂膜を得る方法として、特許文献2には重合体の構成単位として2-ピロン基等の特定の官能基を有するモノマーを用いる方法が、特許文献3には重合体の構成単位としてヒドロキシフェニルマレイミドモノマーを用いる方法がそれぞれ開示されている。
【0005】
しかしながら、耐薬品性を得るためには重合体中の特定構造のモノマーの割合を多くしなければならないといった問題があり、十分に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-189883号公報
【文献】特開2017-49373号公報
【文献】特開2018-154768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐薬品性および耐熱性に優れる樹脂膜を与えるレジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、特定構造の有機過酸化物を用いたレジスト用樹脂組成物により上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のものである。
[1]不飽和塩基酸モノマー(A)、該不飽和塩基酸モノマー(A)と共重合可能なモノマー(B)、及び重合開始剤(C)を含むレジスト用樹脂組成物であって、該重合開始剤(C)が下記一般式(1)で示される有機過酸化物を含むことを特徴とするレジスト用樹脂組成物:
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、R~Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。)。
[2][1]に記載のレジスト用樹脂組成物から得られる樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐薬品性および耐熱性に優れる樹脂膜を与えるレジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包含する総称である。
【0013】
<レジスト用樹脂組成物>
本発明のレジスト用樹脂組成物は、不飽和塩基酸モノマー(A)、該不飽和塩基酸モノマー(A)と共重合可能なモノマー(B)、及び重合開始剤(C)を含む。
【0014】
<不飽和塩基酸モノマー(A)>
本発明で用いる不飽和塩基酸モノマー(A)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられ、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性から(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。不飽和塩基酸モノマー(A)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
本発明のレジスト用樹脂組成物における不飽和塩基酸モノマー(A)の含有割合としては、全モノマー成分100質量%に対して、好ましくは1~40質量%であり、より好ましくは5~30質量%であり、さらに好ましくは10~25質量%である。これら範囲にすることで、レジスト特性が良好な重合体を得ることができる。
【0016】
<モノマー(B)>
モノマー(B)としては、不飽和塩基酸モノマー(A)と共重合が可能であるモノマーであれば特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族ビニル化合物、マレイミドモノマーが好ましい。モノマー(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などが挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。耐薬品性の観点から、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが特に好ましい。
【0018】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、o-エチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ヒドロキシスチレン、t-ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、イソプロペニルフェノールなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0019】
マレイミドモノマーとしては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミドなどが挙げられ、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましく、N-シクロヘキシルマレイミドがより好ましい。
【0020】
本発明のレジスト用樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有割合としては、全モノマー成分100質量%に対して、好ましくは60~99質量%であり、より好ましくは70~95質量%であり、さらに好ましくは75~90質量%である。これら範囲にすることで、モノマー(B)によりレジスト特性を調整することができ、良好な重合体を得ることができる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有割合としては、全モノマー成分100質量%に対して、1~95質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましい。
【0022】
芳香族ビニル化合物の含有割合としては、全モノマー成分100質量%に対して、0~70質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましい。本範囲とすることで、耐熱性等の膜物性を付与することができる。
【0023】
マレイミドモノマーの含有割合としては、全モノマー成分100質量%に対して、0~30質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。本範囲とすることで、耐熱性を向上させることができる。
【0024】
<重合開始剤(C)>
本発明で用いる重合開始剤(C)は、下記一般式(1)で示される有機過酸化物を含む。
【0025】
【化2】
【0026】
(式(1)中、R~Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。)
【0027】
式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基などが挙げられる。合成のしやすさと有機過酸化物の活性の観点から、Rは炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
【0028】
式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基などが挙げられる。合成のしやすさと有機過酸化物の活性の観点から、Rは炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0029】
式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基などが挙げられる。合成のしやすさと有機過酸化物の活性の観点から、Rは水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0030】
一般式(1)で示される有機過酸化物としては、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシイソブチレート(R=メチル基、R=メチル基、R=水素原子)、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシピバレート(R=メチル基、R=メチル基、R=メチル基)、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエート(R=エチル基、R=メチル基、R=メチル基)、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシオクトエート(R=ブチル基、R=エチル基、R=水素原子)、1-シクロへキシル-1-メチルエチルへルオキシネオノナノエート(R=ペンチル基、R=メチル基、R=メチル基)、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート(R=ヘキシル基、R=メチル基、R=メチル基)等が挙げられ、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシイソブチレート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシピバレート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエートが好ましく、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエートが特に好ましい。
【0031】
本発明のレジスト用樹脂組成物における重合開始剤(C)の含有割合としては、全モノマー成分100質量%に対して、0.01質量%~50質量%とすることが好ましく、より好ましくは1質量%~30質量%であり、さらに好ましくは5質量%~20質量%である。
【0032】
重合開始剤(C)は、一般式(1)で示される有機過酸化物以外の重合開始剤を含んでいてもよい。このような重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一般式(1)で示される有機過酸化物と他の重合開始剤を併用する場合は、重合開始剤(C)の総量に対する一般式(1)で示される有機過酸化物の割合として、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0033】
本発明のレジスト用樹脂組成物は、上記成分および必要に応じて下記<その他成分>を混合して調製することができる。混合方法は特に限定されるものではなく、全成分を同時に混合しても良いし、各成分を順次溶解させても良い。溶解させる順序や作業条件は特に限定されず、公知の方法で調製することができる。
【0034】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明のレジスト用樹脂組成物(不飽和塩基酸モノマー(A)、該不飽和塩基酸モノマー(A)と共重合可能なモノマー(B)、及び重合開始剤(C)を含むレジスト用樹脂組成物)から得られる樹脂(以下、「レジスト用重合体」と称する場合がある。)、光重合開始剤、及び重合性化合物を含有する。
【0035】
<レジスト用重合体>
本発明におけるレジスト用重合体の重量平均分子量および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。重量平均分子量は、好ましくは3,000~100,000であり、より好ましくは4,000~50,000であり、さらに好ましくは5,000~30,000である。レジスト用重合体の重量平均分子量が3,000~100,000であれば、良好な密着性や現像性が得られやすい。レジスト用重合体の分散度(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn))は、好ましくは1.0~5.0であり、より好ましくは1.0~3.5であり、さらに好ましくは1.0~3.0である。分散度が1.0~5.0であれば、良好なレジストの現像性やパターン形状が得られやすい。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物におけるレジスト用重合体の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、10質量%~90質量%とすることが好ましく、より好ましくは15質量%~80質量%であり、さらに好ましくは20質量%~60質量%である。レジスト用重合体の含有割合が10質量%~90質量%であれば、レジストの現像性、成膜性および塗工性が十分に得られやすい。
【0037】
<光重合開始剤>
本発明において、光重合開始剤は、光照射により重合性化合物の重合反応の起点となる化合物であり、公知のいかなる光重合開始剤も使用することができる。波長については特に限定されるものではないが、波長に適した開始剤種を選択し使用することができる。本発明における光重合開始剤は、1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明における光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、9-フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物などを使用することができる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物における光重合開始剤の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、0.01質量%~50質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1質量%~40質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%~30質量%である。
【0040】
<重合性化合物>
本発明において、重合性化合物は、少なくとも1個の重合性官能基を有する化合物である。
【0041】
本発明における重合性化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、2個以上の重合性官能基を有する化合物が好ましく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物における重合性化合物の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、3質量%~200質量%とすることが好ましく、より好ましくは5質量%~150質量%であり、さらに好ましくは10質量%~100質量%である。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分および必要に応じて下記<その他成分>を混合して調製することができる。混合方法は特に限定されるものではなく、全成分を同時に混合しても良いし、各成分を順次溶解させても良い。溶解させる順序や作業条件は特に限定されず、公知の方法で調製することができる。
【0044】
<その他成分>
本発明のレジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、溶剤等のその他成分を添加することができる。溶剤は2種以上を併用してもよい。
【0045】
溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0046】
<一般式(1)で示される有機過酸化物の合成>
一般式(1)で示される有機過酸化物は、例えば次の方法で合成することができる。下記式(2)で示される脂肪酸ハライドと1-シクロヘキシル-1-メチルエチルヒドロペルオキシドとをアルカリの存在下に反応させることにより合成することができる。
【0047】
【化3】
【0048】
(式(2)中、R~Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のいずれかである。)
【0049】
上記反応に用いるアルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基或いはそれらの水溶液、又はピリジン等のアミン類である。また、合成に際してベンゼン、n-ヘキサン、ジオキサン等の溶媒存在下で反応を行なうことにより、反応時間の短縮或いは収率の向上を図ることができる。
【0050】
また、一般式(1)で示される有機過酸化物は、ヨードメトリーによる活性酸素の測定によってペルオキシド基の含有量(活性酸素量)を求めることができる。
【0051】
<レジスト用重合体の合成>
本発明のレジスト用樹脂組成物を重合させることにより、レジスト用重合体を得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、レジスト用重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合が好ましい。重合開始剤(C)ならびにモノマー(A)および(B)を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
【0052】
重合温度は、モノマー(A)および(B)の種類や重合溶媒の種類などに依存し、例えば、50℃~120℃である。重合時間は、重合開始剤(C)の半減期温度と重合温度に依存し、例えば、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシオクトエートを含む重合開始剤(C)では、90℃で7時間程度が適している。
【0053】
以上の重合反応を行なうことにより、レジスト用重合体が得られる。得られたレジスト用重合体は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0055】
(合成例1:1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート(R=ヘキシル基、R=メチル基、R=メチル基)の合成)
攪拌器を備えた200mL4つロフラスコに35%水酸化カリウム水溶液283gを入れ、攪拌下液温を20℃に保ちながら、95%1-シクロへキシル-1-メチルエチルヒドロペルオキシド17.9gとヘキサン10gの混合物を添加した。更に攪拌下、液温を20℃に保ちつつネオデカン酸クロライド19.1gを10分間で滴下した。液温を20℃に保ちつつ3時間攪拌を続けた後、冷水20gを加え更に5分間攪拌した。水相を分離し、有機相を5%水酸化ナトリウム水溶液20gで洗浄した後、水で3回洗浄した。この溶液(有機相)を無水硫酸マグネシウム上で乾燥後、真空下ヘキサンを除去した結果、無色液体の目的物24.1gを得た。その活性酸素量は4.83%であり、計算により純度94%であった。
【0056】
更にベンゼンを溶媒として熱分解速度を測定した(濃度:0.1mol/L)。その結果、この有機過酸化物の10時間半減期温度(T10)は41.4℃であった。
【0057】
(合成例2:1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシピバレート(R=メチル基、R=メチル基、R=メチル基)の合成)
脂肪酸ハライドとしてピバリン酸クロライドを用いた以外は合成例1と同様にして合成を行ない、無色液体の目的物を得た。その活性酸素量は6.21%であり、計算により純度94%であった。
【0058】
更に合成例1と同様の方法で、熱分解速度を測定した。その結果、10時間半減期温度は49.1℃であった。
【0059】
(合成例3:1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエート(R=エチル基、R=メチル基、R=メチル基)の合成)
脂肪酸ハライドとしてネオヘキサン酸クロライドを用いた以外は合成例1と同様にして合成を行ない、無色液体の目的物を得た。その活性酸素量は5.80%であり、計算により純度93%であった。
【0060】
更に合成例1と同様の方法で、熱分解速度を測定した。その結果、10時間半減期温度は46.2℃であった。
【0061】
(重合例1)
300mLビーカーを用い、メタクリル酸(製品名:MAA、株式会社クラレ製)28.4g、メタクリル酸メチル(製品名:MMAモノマー、株式会社クラレ製)66.0g、メタクリル酸シクロヘキシル(製品名:ブレンマーCHMA、日油株式会社製)166.3g、N-シクロヘキシルマレイミド(製品名:イミレックスC、日本触媒株式会社製)39.3g、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(製品名:MMPGAC、ダイセル株式会社製)50gを混合した後氷冷し、1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート(合成例1)24.0gを加えて、「レジスト用樹脂組成物」を得た。
【0062】
続いて撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル550.0gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。反応容器内を67℃まで昇温し、上記で得たレジスト用樹脂組成物を3時間かけて滴下し、その後67℃で3時間反応させることでレジスト用重合体P1を得た。
【0063】
(重合例2)
重合開始剤として1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシピバレート(合成例2)15.0gを用い、重合温度を80℃としたこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P2を得た。
【0064】
(重合例3)
重合開始剤として1-シクロへキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエート(合成例3)30.0gを用い、重合温度を75℃としたこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P3を得た。
【0065】
(重合例4)
モノマー(A)をメタクリル酸38.7g、モノマー(B)をメタクリル酸メチル105.1gおよびスチレン(製品名:NSスチレン、NSスチレンモノマー株式会社製)156.2gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P4を得た。
【0066】
(重合例5)
モノマー(A)をメタクリル酸39.5g、モノマー(B)をメタクリル酸メチル260.5gに、開始剤量を36.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P5を得た。
【0067】
(重合例6)
重合開始剤として2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(製品名:V-65、富士フィルム和光純薬株式会社製)18.0gを用い、重合温度を75℃としたこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P6を得た。
【0068】
(重合例7)
重合開始剤としてtert-ブチルペルオキシネオデカノエート(製品名:パーブチルND、日油株式会社製)を用い、重合温度を75℃としたこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P7を得た。
【0069】
(重合例8)
重合開始剤としてビス-4-tert-ブチルシクロヘキシルペルオキシジカーボネート(製品名:パーロイルTCP、日油株式会社製)を用い、重合温度を65℃としたこと以外は重合例1と同様の手法でレジスト用重合体P8を得た。
【0070】
(実施例1~5および比較例1~3:感光性樹脂組成物の調製)
重合例1~8で得られたレジスト用重合体10gに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDPE-6A」)1.5g、光重合開始剤(ビーエーエスエフ製「イルガキュア907」)0.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40gを混合し、孔径0.5μmのフィルターを通過させ、感光性樹脂組成物を調製した。
【0071】
〔レジスト用重合体の重量平均分子量および分散度の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、レジスト用重合体P1~P8の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0072】
〔現像性の評価〕
調製した感光性樹脂組成物10gにプロピレングリコールモノメチルエーテル10gを混合した希釈溶液をシリコンウエハにスピンコートし、120℃で乾燥させ、膜厚5μmの樹脂膜を得た。このシリコンウエハを2.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した。浸漬後のシリコンウエハを目視にて観察し、樹脂膜の残存の有無を評価した。30秒未満で樹脂膜が溶解する場合を○、溶解に30秒以上かかる場合を×とした。
【0073】
〔硬化膜の作製〕
調製した感光性樹脂組成物をガラス基板上にスピンコートにより塗布し、90℃で2分乾燥して感光性樹脂組成物層を形成した。得られた塗膜に超高圧水銀ランプにてマスクを介して200mJ/cmの強度で紫外線を照射した。照射後、0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬し、水洗後、230℃で1時間硬化して膜厚3μmの硬化膜を作製した。
【0074】
〔耐熱性の評価〕
作製した硬化膜を250℃で1時間加熱し、加熱前後の膜厚を測定した。以下のように膜厚変化率を定義し、膜厚変化率が5%未満のものを◎、5%以上8%未満のものを〇、8%以上10%未満のものを△、10%以上のものを×とした。
膜厚変化率(%)=100-[{加熱後の膜厚(μm)/加熱前の膜厚(μm)}×100]
【0075】
〔耐薬品性の評価〕
作製した硬化膜を60℃で15分間N-メチルピロリドン(NMP)に浸漬させ、浸漬前後の膜厚を測定した。以下のように膜厚変化率を定義し、膜厚変化率が2%未満のものを◎、2%以上5%未満のものを〇、5%以上8%未満のものを△、8%以上のものを×とした。
膜厚変化率(%)=100-[{浸漬後の膜厚(μm)/浸漬前の膜厚(μm)}×100]
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
なお、表1および2中、モノマー(A)および(B)、ならびに重合開始剤(C)の配合量は、全モノマー成分100質量%に対する質量%で示される。
【0079】
実施例1~5では、耐熱性および耐薬品性に優れた硬化膜を得ることができた。
一方、比較例1~3では、重合開始剤としてアゾ系の開始剤を、比較例2では、重合開始剤としてパーオキシエステル型の有機過酸化物を、および比較例3では、重合開始剤としてジカーボネート型の有機過酸化物を用いたため(本発明における一般式(1)で示される有機過酸化物を用いなかったため)、いずれも耐熱性および耐薬品性に劣る硬化膜しか得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、耐薬品性および耐熱性に優れる樹脂膜を与えるレジスト用樹脂組成物および感光性樹脂組成物を得ることができる。