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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/91 20110101AFI20230725BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20230725BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R12/71
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020044360
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021144913
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10057143(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0126061(US,A1)
【文献】特開平09-199240(JP,A)
【文献】特開2017-126512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装されるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記回路基板に接続される複数の固定端子部と、
前記複数の固定端子部を支点として個別に揺動可能であり、複数の相手側端子部と個別に接続される複数の可動端子部と、
前記複数の可動端子部に引っ掛かる引掛部を有し、前記複数の可動端子部を一体的に揺動させる連結部材とを備えているコネクタ装置。
【請求項2】
前記可動端子部は、前記固定端子部から前記ハウジングの正面側へ突出した細長い形状であり、
前記ハウジングは、前記複数の可動端子部を包囲する周壁部を有し、
前記連結部材は、前記ハウジングを前記相手側端子部から見た嵌合方向視において、前記周壁部で囲まれた領域内に配置されている請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記連結部材は、板状をなし、前記連結部材の板厚方向が前記可動端子部の外面と前記周壁部の内面との対向方向と同じ方向を向くように配置されている請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記引掛部は、前記連結部材を貫通した形態の複数の連結孔によって構成され、
前記可動端子部の外周面には、前記連結孔を貫通して前記連結孔の孔縁部に引っ掛かる突起部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記突起部は、塑性変形可能な板材からなり、
前記突起部には、
前記可動端子部の外周面に連なり、前記連結孔を貫通して前記連結部材の外面側へ突出した基部と、
前記基部から延出して前記連結部材の外面のうち前記連結孔と非対応の領域と対向するように配置された抜止部とが形成されており、
前記基部と前記抜止部との境界線が、前記連結部材の外面と直交する方向に延びている請求項4に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記連結孔が、
前記基部を貫通させるスリット状の保持用孔部と、
前記保持用孔部の端部から前記保持用孔部と交差する方向に延びたスリット状の取付用孔部とを有している請求項5に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記突起部と前記連結孔の孔縁部との間には、前記連結部材と前記可動端子部が相対的に傾くことを許容するクリアランスが設けられている請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項8】
前記可動端子部の外周面が、外導体によって構成され、
前記連結部材が、導電性を有し、複数の前記外導体と接触している請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに対向する第1コネクタと第2コネクタを有し、両コネクタをアダプターを介して接続するコネクタ装置が開示されている。アダプターは、第1コネクタに相対的に揺動し得るように取り付けられる。第1コネクタと第2コネクタが対向方向と交差する方向へ位置ずれしたときには、アダプターが傾くことによって両コネクタの位置ずれが吸収されるので、両コネクタを接続させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8801459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1コネクタと第2コネクタをアダプターを介して接続する上記の接続構造を、多極のコネクタ装置に適用した場合、次のような問題が懸念される。アダプターは第1コネクタに対して自在に揺動可能なので、第1コネクタと第2コネクタが未嵌合の状態では、各アダプターが他のアダプターとは異なる方向へ傾いた状態になり得る。そのため、複数の第1コネクタと複数の第2コネクタを接続しようとしたときに、複数のアダプターを一斉に第2コネクタに接続させることが難しい。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続動作の信頼性に優れたコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタ装置は、
回路基板に実装されるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記回路基板に接続される複数の固定端子部と、
前記複数の固定端子部を支点として個別に揺動可能であり、複数の相手側端子部と個別に接続される複数の可動端子部と、
前記複数の可動端子部に引っ掛かる引掛部を有し、前記複数の可動端子部を一体的に揺動させる連結部材とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタ装置は、接続動作の信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1コネクタと第2コネクタを分離した状態をあらわす斜視図である。
図2図2は、第1コネクタと第2コネクタを嵌合した状態をあらわす断面図である。
図3図3は、可動端子部と連結部材を組み付ける前の状態をあらわす斜視図である。
図4図4は、可動端子部と連結部材の連結構造をあらわす部分拡大側面図である。
図5図5は、複数の可動端子部が一体的に揺動する状態をあらわす部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)回路基板に実装されるハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記回路基板に接続される複数の固定端子部と、前記複数の固定端子部を支点として個別に揺動可能であり、複数の相手側端子部と個別に接続される複数の可動端子部と、前記複数の可動端子部に引っ掛かる引掛部を有し、前記複数の可動端子部を一体的に揺動させる連結部材とを備えている。本開示の構成によれば、複数の可動端子部が連結部材によって一体的に揺動するので、複数の可動端子部は一定の位置関係に保たれる。これにより、複数の可動端子部が相手側端子部に対して確実に接続される。したがって、本開示のコネクタ装置は接続機能に優れている。
【0010】
(2)前記可動端子部は、前記固定端子部から前記ハウジングの正面側へ突出した細長い形状であり、前記ハウジングは、前記複数の可動端子部を包囲する周壁部を有し、前記連結部材は、前記ハウジングを前記相手側端子部から見た嵌合方向視において、前記周壁部で囲まれた領域内に配置されていることが好ましい。この構成によれば、嵌合方向視においてコネクタ装置の小型化を図ることができる。
【0011】
(3)(2)において、前記連結部材は、板状をなし、前記連結部材の板厚方向が前記可動端子部の外面と前記周壁部の内面との対向方向と同じ方向を向くように配置されていることが好ましい。この構成によれば、嵌合方向視において、コネクタ装置の更なる小型化を図ることができる。
【0012】
(4)前記引掛部は、前記連結部材を貫通した形態の複数の連結孔によって構成され、前記可動端子部の外周面には、前記連結孔を貫通して前記連結孔の孔縁部に引っ掛かる突起部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、可動端子部と連結部材の連結が、突起部を連結孔に貫通させて引っ掛ける構造なので、構造がシンプルである。
【0013】
(5)(4)において、前記突起部は、塑性変形可能な板材からなり、前記突起部には、前記可動端子部の外周面に連なり、前記連結孔を貫通して前記連結部材の外面側へ突出した基部と、前記基部から延出して前記連結部材の外面のうち前記連結孔と非対応の領域と対向するように配置された抜止部とが形成されており、前記基部と前記抜止部との境界線が、前記連結部材の外面と直交する方向に延びていることが好ましい。この構成によれば、連結孔と同じ形状の突起部を、連結孔に貫通させ、その後、基部に対して抜止部を曲げ加工すると、可動端子部に連結部材が組み付けられる。抜止部を曲げ加工する際には、基部を治具等で固定した状態で抜止部の曲げ加工を行うことができるので、抜止部に付与した曲げ力が、可動端子部の外周面に作用することがない。これにより、可動端子部の外周面の変形を防止することができる。
【0014】
(6)(5)において、前記連結孔が、前記基部を貫通させるスリット状の保持用孔部と、前記保持用孔部の端部から前記保持用孔部と交差する方向に延びたスリット状の取付用孔部とを有していることが好ましい。この構成によれば、連結部材を可動端子部に組み付ける際には、予め、基部が保持用孔部と対応し、抜止部が取付用孔部と対応するように、突起部の形状を準備しておく。この状態で、突起部を連結孔に貫通させ、その後、抜止部を曲げ加工する。保持用孔部と取付用孔部が屈曲形状をなすように連なっているので、保持用孔部に貫通されている基部が、取付用孔部へ移動することはない。これにより、連結部材と可動端子部とが大きく位置ずれすることを防止できる。
【0015】
(7)(4)~(6)において、前記突起部と前記連結孔の孔縁部との間には、前記連結部材と前記可動端子部が相対的に傾くことを許容するクリアランスが設けられていることが好ましい。この構成によれば、可動端子部が揺動したときに、突起部が連結孔の孔縁部に対して強く干渉することがないので、突起部や連結孔の孔縁部の変形を防止することができる。
【0016】
(8)前記可動端子部の外周面が、外導体によって構成され、前記連結部材が、導電性を有し、複数の前記外導体と接触していることが好ましい。この構成によれば、複数の外導体相互間で電位差が生じないようにすることができるので、アース性能が向上する。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタ装置Aを具体化した実施例1を、図1図5を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、上下の方向については、図1~5にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図4,5にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0018】
本実施例のコネクタ装置Aは、図1に示すように、第1コネクタ10と第2コネクタ20とを有している。図2に示すように、第1コネクタ10は第1回路基板Bに実装され、第2コネクタ20は第2回路基板Cに実装される。第1回路基板Bは、例えば、自動車の屋根(図示省略)に取り付けられるシャークフィンアンテナ(図示省略)に設けられるものである。第1回路基板Bは、実装面を下向き、つまり車内側に向けた状態で水平に配置される。第2回路基板Cは、例えば、自動車の屋根に取り付けられたECUに設けられるものであり、実装面を上向き、つまりシャークフィンアンテナ側に向けた状態で水平に配置される。第1回路基板Bと第2回路基板Cは、双方の実装面同士を平行に対向させた位置関係で配置される。
【0019】
第1コネクタ10と第2コネクタ20は、第1回路基板Bを第2回路基板Cに接近させることによって導通可能に嵌合される。両コネクタ10,20が嵌合することにより、第1回路基板Bと第2回路基板Cがワイヤーハーネスを介さずに接続され、第1回路基板Bと第2回路基板Cとの間で高速通信が可能となる。自動車の屋根におけるシャークフィンアンテナの取付部分では、屋根とシャークフィンアンテナとの間の組付け公差が比較的大きいため、両コネクタ10,20の嵌合方向と交差する水平方向において、第1回路基板Bと第2回路基板Cとの間で位置ずれが生じ得る。本実施例のコネクタ装置Aは、両回路基板B,Cの位置ずれを吸収しながら両コネクタ10,20の嵌合を行えるようになっている。
【0020】
第1コネクタ10は、図2に示すように、第1ハウジング11と、複数の第1端子部16とを備えている。第1コネクタ10を第1回路基板Bに実装した状態では、第1ハウジング11の上面が第1回路基板Bに固定され、複数の第1端子部16の上端部が第1回路基板Bのプリント回路(図示省略)に接続される。第1ハウジング11は、直方形の第1端子保持部12と方形の誘導部14とを有する合成樹脂製の単一部品である。第1端子保持部12には、第1端子保持部12を上下に貫通した形態の複数(実施例1では3つ)の第1端子収容室13が形成されている。第1コネクタ10を下から見た底面視において、第1端子収容室13は円形をなす。複数の第1端子収容室13は、左右方向に一列に整列するように配置されている。
【0021】
誘導部14は、第1端子保持部12の下端における外周縁から斜め下方へスカート状に突出した形態である。誘導部14は、両コネクタ10,20の嵌合方向に対し、下方に向かって裾広がりとなるように傾斜している。誘導部14は、第1端子保持部12の全周に亘って連続している。平面視において、誘導部14は、複数の第1端子収容室13の全てを包囲している。誘導部14の内部空間は、複数の第1端子収容室13と連通しているとともに、第1ハウジング11の下方へ開放されている。
【0022】
複数の第1端子収容室13内には、複数の第1端子部16が個別に収容されている。第1端子部16は、金属製の第1内導体17と、合成樹脂製の第1誘電体18と、金属製の第1外導体19とを備えている。第1内導体17は、軸線を両コネクタ10,20の嵌合方向と平行に向けた筒形をなす。第1誘電体18は、中心孔を有する円盤形をなす。第1内導体17の上端部は第1誘電体18の中心孔に嵌合され、第1内導体17の下端部は、第1誘電体18の下方へ突出している。第1外導体19は、第1内導体17と第1誘電体18を同軸状に包囲する円筒形をなし、第1端子収容室13の内周面に嵌合されている。
【0023】
図2に示すように、第2コネクタ20は、第2ハウジング21と、第1端子部16と同数の複数の第2端子部27とを備えている。各第2端子部27は、1つの固定端子部28と1つの可動端子部35とを備えて構成されている。第2コネクタ20を第2回路基板Cに実装した状態では、第2ハウジング21の下面が第2回路基板Cに固定され、複数の固定端子部28の下端部が第2回路基板Cのプリント回路(図示省略)に接続される。第2ハウジング21は、直方形の第2端子保持部22と、方形の周壁部24とを有する合成樹脂製の単一部品である。
【0024】
第2端子保持部22には、第2端子部27と同数の複数の第2端子収容室23が形成されている。第2端子収容室23は、第2端子保持部22を上下に貫通した形態である。第2コネクタ20を上から見た平面視において、第2端子収容室23は円形をなす。複数の第2端子収容室23は、複数の第1端子収容室13と同じく、左右方向に整列するように配置されている。
【0025】
周壁部24は、第2端子保持部22の上端における外周縁から、両コネクタ10,20の嵌合方向と平行に上方へ突出した形態である。平面視において、周壁部24は、複数の第2端子収容室23の全てを包囲している。第2ハウジング21のうち、第2端子保持部22よりも上方において周壁部24により区画された空間は、揺動空間25として機能する。揺動空間25は、第2ハウジング21の上方、即ち第1コネクタ10側へ開放されている。
【0026】
複数の第2端子収容室23内には、複数の固定端子部28が個別に収容されている。固定端子部28は、金属製の固定内導体29と、合成樹脂製の固定誘電体30と、金属製の固定外導体31とを備えている。固定内導体29は、第1内導体17と同一の部品である。固定内導体29は、軸線方向において第1内導体17とは逆向きに配置されている。固定誘電体30は、第1誘電体18と同一の部品であり、軸線方向において第1誘電体18とは逆向きに配置されている。固定内導体29の下端部は固定誘電体30の中心孔に嵌合され、固定内導体29の上端部は、固定誘電体30の上方へ突出している。
【0027】
固定外導体31は、固定内導体29と固定誘電体30を同軸状に包囲する円筒形をなし、第2端子収容室23の内周面に嵌合されている。固定外導体31内のうち固定誘電体30よりも上方の空間は、上方へ開放された支持空間32として機能する。支持空間32内においては、固定内導体29の上端部が上向きに突出している。各支持空間32は揺動空間25と連通している。固定外導体31の上端部内周には、全周に亘って連続した縮径部33が形成されている。縮径部33は、支持空間32内に配置され、径方向内側へ膨らむような形状である。
【0028】
図1~3に示すように、可動端子部35は、全体として細長い形状をなす。可動端子部35の軸線方向両端部は、可動端子部35を反転させたときに同一の形状となる対称性を有している。可動端子部35は、金属製の可動内導体36と、合成樹脂製の可動誘電体38と、金属製の可動外導体42とを備えて構成された部材である。可動内導体36は、可動端子部35の軸線方向に細長い筒状をなす。可動内導体36の軸線方向両端部には、それぞれ、径方向へ弾性変形可能な一対の弾性爪片37が形成されている。
【0029】
可動誘電体38は、合成樹脂製であり、可動端子部35の軸線と同軸状の円筒形をなす。可動誘電体38の挿通孔39には、可動内導体36が同軸状に収容されている。可動誘電体38の軸線方向両端部には、可動誘電体38の両端面を同軸状に凹ませた形態の円形の収容凹部40が形成されている。収容凹部40は、挿通孔39の軸線方向両端部を拡径した形態である。可動内導体36の弾性爪片37は、収容凹部40内に位置する。
【0030】
可動外導体42は、全体として円筒形をなす。可動外導体42の軸線方向両端部には、周方向に間隔を空けて配された複数の弾性アーム部43が形成されている。弾性アーム部43は、軸線方向端部側へ片持ち状に延出した形態であり、径方向へ弾性変形することが可能である。弾性アーム部43の延出端部には、拡径部44が形成されている。可動外導体42は、可動誘電体38の外周に嵌合されている。
【0031】
可動端子部35の一方の端部は、可動端子部35の基端部35Pとして固定端子部28に取り付けられている。取り付けに際しては、可動端子部35の基端部35Pを第2コネクタ20の支持空間32内に挿入する。可動端子部35を固定端子部28に取り付けた状態では、収容凹部40内に固定内導体29の上端部が収容され、可動内導体36の弾性爪片37が、固定内導体29の上端部の内周に対して弾性的に接触する。可動外導体42の弾性アーム部43が弾性変形し、拡径部44が固定外導体31の内周に対して弾性的に接触する。
【0032】
可動外導体42の拡径部44が固定外導体31の縮径部33に係止することにより、可動端子部35が固定端子部28から離脱することを規制される。可動端子部35が固定端子部28から下方へ突出するように上下反転させた向きにしても、拡径部44と縮径部33との係止状態が保たれる。可動端子部35は、基端部35Pと固定端子部28との接触部分を支点として、個別に揺動することが可能である。可動端子部35が固定端子部28に対して前後方向又は左右方向へ揺動しても、拡径部44と縮径部33との係止状態が保たれる。
【0033】
固定端子部28に取り付けた可動端子部35は、第2ハウジング21から上方へ突出した形態である。可動端子部35の他方の端部、即ち上端部は、可動端子部35の先端部35Tとして、相手側端子である第1端子部16と接続するようになっている。ここで、1つの可動端子部35は1つの固定端子部28のみに接触した状態で支持されているので、複数の可動端子部35は、他の可動端子部35とは異なる方向へ個別に揺動し得るようになっている。複数の可動端子部35が互いに異なる方向へ揺動した状態では、第1コネクタ10と第2コネクタ20を嵌合するときに、複数の可動端子部35の先端部35Tを、複数の第1端子部16に対して同時に接続させることができない。以下に、複数の可動端子部35の先端部35Tを、複数の第1端子部16に対して同時に接続させるための構成について説明する。
【0034】
可動端子部35の外周面には、突起部45が形成されている。突起部45は、可動外導体42を構成する部位であり、塑性変形可能な金属製の板材からなる。突起部45は、基部46と抜止部47を有する。基部46は、可動外導体42の外周面に連なり、可動外導体42の外周面から径方向外方へ突出した平板状をなす。基部46は、複数の可動端子部35の並び方向と平行をなし、基部46の板厚方向は、可動端子部35の長さ方向と平行な上下方向を向いている。
【0035】
抜止部47は、基部46の左右方向両端縁のうち一方(右端縁)から突出している。抜止部47は、基部46の右端縁のうち突出端側の領域のみに連なっている。後述する連結部材50を可動端子部35に取り付けた状態では、抜止部47が基部46の右端縁から上方へ直角に突出している。つまり、可動端子部35を前方から見た正面視において、突起部45は、連結部材50の連結孔52と同じく、L字を鏡面反転させた形状である。基部46の後端縁と抜止部47の下端縁は、基部46と抜止部47との境界線48を構成する(図4を参照)。この境界線48は、連結部材50の外面と直交する方向に延びている。
【0036】
第2コネクタ20には、連結部材50が設けられている。連結部材50は、プレス加工により左右方向に細長い長方形に打ち抜いた金属製の平板材からなる。第2コネクタ20を上から見た平面視、即ち第2ハウジング21を第1端子部16から見た嵌合方向視において、連結部材50は、可動端子部35の外面と周壁部24の内面との間に配置されている。図2に示すように、連結部材50の板厚方向は、可動端子部35の外面と周壁部の内面との対向方向(前後方向)と同じ方向を向いている。
【0037】
連結部材50には、複数の可動端子部35を連結するための引掛部51が形成されている。引掛部51は、可動端子部35と同数の複数のスリット状をなす連結孔52によって構成されている。複数の連結孔52は、左右方向において複数の可動端子部35と同じピッチで配置されている。連結孔52は、連結部材50を板厚方向、即ち可動端子部35の長さ方向(上下方向)及び複数の可動端子部35の並び方向(左右方向)の両方向に対して直角な方向に貫通している。図4,5に示すように、連結部材50を外面側から視た側面視において、連結孔52の形状は、L字を鏡面反転させた形状である。
【0038】
連結孔52は、スリット状の保持用孔部53と、スリット状の取付用孔部54とを有している。保持用孔部53は、複数の可動端子部35の並び方向(左右方向)と平行に延びている。取付用孔部54は、可動端子部35の長さ方向(上下方向)と平行に延びている。保持用孔部53の一方の端部(後端部)と取付用孔部54の一方の端部(下端部)とが、直角をなして互いに連通している。
【0039】
保持用孔部53の長さ寸法は、突起部45の基部46の長さよりも少し大きい寸法である。保持用孔部53の上下方向の寸法(幅寸法)は、基部46の厚さよりも少し大きい寸法である。取付用孔部54の長さ寸法は、抜止部47の長さよりも少し大きい寸法である。取付用孔部54の左右方向の寸法(幅寸法)は、抜止部47の厚さよりも大きい寸法である。
【0040】
次に、第2コネクタ20において、固定端子部28と可動端子部35と連結部材50を組み付ける手順を説明する。まず、複数の可動端子部35を連結部材50によって連結する。連結する際には、図4に想像線で示すように、突起部45の形状を、連結孔52と同じくL字を鏡面反転させた形状にしておく。次に、複数の連結孔52を複数の突起部45に個別に嵌め込む。このとき、基部46を保持用孔部53に貫通させ、抜止部47を取付用孔部54に貫通させる。
【0041】
突起部45を検知孔に貫通させた後、自動機や治具等によって基部46と抜止部47を個別に保持し、抜止部47を、基部46に対して相対的に90°変位させる。このとき、基部46は自動機や治具等で固定されているので、抜止部47を曲げるときに抜止部47側から基部46側に反力が作用しても、その反力が可動外導体42に伝達されることはない。したがって、抜止部47を曲げ加工するときに、可動外導体42が変形することを防止できる。
【0042】
抜止部47を変位させると、図4,5に示すように、基部46と抜止部47が左右方向に一直線状に延びた形状になる。抜止部47と基部46が一直線状となるように突起部45を塑性変形させると、抜止部47が、取付用孔部54に対して90°転回した位置に変位し、連結部材50の外面のうち連結孔52とは非対応の領域と対向する。これにより、連結部材50が可動端子部35の外周面から径方向(前後方向)へ離隔しようとしても、抜止部47がストッパとなるので、連結部材50は、可動端子部35から離脱することはない。
【0043】
基部46と保持用孔部53の孔縁部との間には、クリアランスが確保されているが、そのクリアランスは、可動端子部35と連結孔52が傾くことを許容するための必要最小の空間である。したがって、連結部材50が、可動端子部35に対して、左右方向及び上下方向を含む二次元方向へ変位しようとしても、連結部材50と可動端子部35との相対変位量は大きくはない。
【0044】
連結部材50を複数の可動端子部35に取り付けて、複数の可動端子部35を連結した後は、複数の可動端子部35を固定端子部28に取り付ける。可動端子部35を取り付ける際には、可動端子部35の基端部35Pを、揺動空間25内に進入させ、固定端子部28の支持空間32に嵌入する。なお、第2ハウジング21に対する連結部材50の取付けは、可動端子部35を固定端子部28に取り付けた後で行ってもよい。
【0045】
各可動端子部35が連結部材50に対する相対変位を規制されることにより、可動端子部35相互間の相対変位が連結部材50によって規制される。いずれか1つの可動端子部35に対して揺動方向の外力が作用したときには、図5に示すように、複数の可動端子部35が、連結部材50と一体となって一斉に同じ方向へ同じ角度だけ揺動する。したがって、全ての可動端子部35の先端部35Tの位置関係は、可動端子部35の揺動方向と揺動角度に拘わらず一定の位置関係に保たれる。保たれた位置関係は、複数の第1端子部16と同じ配置である。可動端子部35は、固定端子部28と可動端子部35の基端部35Pとの接続部分を支点として揺動する。可動端子部35の揺動角度は、可動端子部35が周壁部24に当接するときに最大となる。
【0046】
可動端子部35が傾いたときの連結部材50の変位量は、連結部材50の接触位置が可動端子部35の先端部35Tに近いほど大きくなる。誘導部14に摺接した可動端子部35が連結部材50を水平方向へ押したときに、可動端子部35と連結部材50との間に生じる押圧力は、連結部材50の接触位置が可動端子部35の基端部35Pに近いほど大きくなる。本実施例では、連結部材50の接触位置が基端部35Pと先端部35Tとの中間位置なので、可動端子部35が傾いたときの連結部材50の変位量を抑えつつ、可動端子部35と連結部材50との間に生じる押圧力を低減することができる。
【0047】
第1コネクタ10と第2コネクタ20を嵌合するときに、第1回路基板Bと第2回路基板Cが相対変位していた場合には、いずれかの可動端子部35の先端部35Tが誘導部14の内面に当接する。この状態から更に両コネクタ10,20の嵌合を進めると、可動端子部35の先端部35Tが、誘導部14の傾斜した内面に摺接することにより、全ての可動端子部35の先端部35Tが、一斉に揺動角度を変化させながら、第1端子部16との接続位置へ誘導される。この間、可動端子部35の基端部35Pは揺動空間25内で揺動し、可動端子部35の先端部35Tは誘導部14の内部で揺動する。
【0048】
可動端子部35の先端部35Tは、誘導部14を通過すると、第1端子部16に接続され、第1コネクタ10と第2コネクタ20が正規の嵌合状態となる。両コネクタ10,20が正規嵌合されると、第1回路基板Bと第2回路基板Cが、第1端子部16と第2端子部27を介して接続される。
【0049】
本実施例のコネクタ装置Aは、第1回路基板Bに実装される第1コネクタ10と、第2回路基板Cに実装される第2コネクタ20とを備えている。第1コネクタ10は、第1内導体17を第1外導体19で包囲した形態の複数の第1端子部16を有する。第2コネクタ20は、第2回路基板Cに実装される第1ハウジング11と、複数の固定端子部28と、複数の可動端子部35とを有する。固定端子部28は、第2ハウジング21に取り付けられ、第2回路基板Cに接続される。可動端子部35は、複数の固定端子部28を支点として個別に揺動可能である。可動端子部35は、複数の第1端子部16と個別に接続される。連結部材50は、複数の可動端子部35に引っ掛かる引掛部51を有し、複数の可動端子部35を一体的に揺動させる。
【0050】
複数の可動端子部35が連結部材50によって一体的に揺動するので、可動端子部35がどのような角度でどのような方向へ揺動しても、複数の可動端子部35の先端部35Tは、複数の第1端子部16の配列形態と同じ位置関係を保つ。これにより、複数の可動端子部35が複数の第1端子部16に対して確実に接続される。したがって、本実施例1のコネクタ装置Aは接続動作の信頼性に優れている。
【0051】
可動端子部35は、固定端子部28とは別体の部材である。可動端子部35の可動外導体42は拡径部44を有する。固定端子部28の固定外導体31は縮径部33を有する。拡径部44と縮径部33は、可動端子部35を固定端子部28に対して揺動可能に支持する支持部として機能する。この構成によれば、第2コネクタ20が、可動端子部35を固定端子部28から下方へ突出させる向きになっても、可動端子部35を固定端子部28に保持させておくことができる。
【0052】
可動端子部35は、固定端子部28から第2ハウジング21の正面側へ突出した細長い形状である。第2ハウジング21は、複数の可動端子部35を包囲する周壁部24を有する。連結部材50は、第2ハウジング21を第1端子部16から見た嵌合方向視において、周壁部24で囲まれた領域内に配置されている。この構成によれば、嵌合方向視においてコネクタ装置Aの小型化を図ることができる。
【0053】
連結部材50は、板状をなす。連結部材50の板厚方向は、可動端子部35の外面と周壁部24の内面との対向方向と同じ方向を向くように配置されている。この構成によれば、嵌合方向視において、コネクタ装置の更なる小型化を図ることができる。
【0054】
引掛部51は、連結部材50を貫通した形態の複数の連結孔52によって構成されている。可動端子部35の外周面には、連結孔52を貫通した突起部45を有する。突起部45の抜止部47は、連結孔52の孔縁部に引っ掛かるによって、連結部材50と可動端子部35との連結形態が保持される。この構成によれば、可動端子部35と連結部材50の連結が、突起部45を連結孔52に貫通させて引っ掛ける構造なので、構造がシンプルである。
【0055】
突起部45は、塑性変形可能な板材からなる。突起部45には、基部46と抜止部47とが形成されている。基部46は、可動端子部35の外周面に連なり、連結孔52を貫通して連結部材50の外面側へ突出している。抜止部47は、基部46から延出して連結部材50の外面のうち連結孔52と非対応の領域と対向するように配置されている。基部46と抜止部47との境界線48は、連結部材50の外面と直交する方向に延びている。
【0056】
この構成によれば、連結孔52と同じ形状の突起部45を、連結孔52に貫通させ、その後、基部46に対して抜止部47を曲げ加工すると、可動端子部35に連結部材50が組み付けられる。抜止部47を曲げ加工する際には、基部46を治具等で固定した状態で抜止部47の曲げ加工を行うことができるので、抜止部47に付与した曲げ力が、可動端子部35の可動外導体42の外周面に作用することがない。これにより、可動外導体42の外周面の変形を防止することができる。
【0057】
連結孔52は、基部46を貫通させるスリット状の保持用孔部53と、保持用孔部53の端部から保持用孔部53と交差する方向に延びたスリット状の取付用孔部54とを有している。連結部材50を可動端子部35に組み付ける際には、予め、基部46が保持用孔部53と対応し、抜止部47が取付用孔部54と対応するように、突起部45の形状を鏡面反転L字形となるように準備しておく。この状態で、突起部45を連結孔52に貫通させ、その後、抜止部47を曲げ加工する。保持用孔部53と取付用孔部54が屈曲形状をなすように連なっているので、保持用孔部53に貫通されている基部46が、取付用孔部54へ移動することはない。これにより、連結部材50と可動端子部35とが大きく位置ずれすることを防止できる。
【0058】
突起部45と連結孔52の孔縁部との間には、連結部材50と可動端子部35が相対的に傾くことを許容するクリアランスが設けられている。この構成によれば、可動端子部35が揺動したときに、突起部45が連結孔52の孔縁部に対して強く干渉することがないので、突起部45や連結孔52の孔縁部の変形を防止することができる。
【0059】
可動端子部35の外周面は、可動外導体42によって構成されている。連結部材50は、導電性を有し、複数の可動外導体42と接触可能である。この構成によれば、複数の可動外導体42相互間で電位差が生じないようにすることができるので、アース性能が向上する。
【0060】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、連結孔がL字形をなすが、連結孔の形状は、V字形、J字形等であってもよい。
上記実施例では、可動端子部に形成した突起部を、連結部材に形成した連結孔の孔縁部に引っ掛けるようにしたが、連結部材に形成した突起部を、可動端子部に形成した連結孔の孔縁部に引っ掛けるようにしてもよい。
上記実施例では、連結部材の板厚方向が可動端子部の外面と周壁部の内面との対向方向と同じ方向を向くようにしたが、連結部材の板厚方向は、可動端子部の外面と周壁部の内面との対向方向に対して交差する方向を向くようにしてもよい。
上記実施例では、1つの連結部材で3つの可動端子部を連結したが、1つの連結部材が連結する可動端子部の数は、2つ又は4つ以上でもよい。
上記実施例では、可動端子部が固定端子部とは別体の部材であるが、可動端子部は固定端子部と一体をなしていてもよい。
上記実施例では、連結部材が導電性を有するが、連結部材は導電性を有しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…第1コネクタ
11…第1ハウジング
12…第1端子保持部
13…第1端子収容室
14…誘導部
16…第1端子部(相手側端子部)
17…第1内導体
18…第1誘電体
19…第1外導体
20…第2コネクタ
21…第2ハウジング(ハウジング)
22…第2端子保持部
23…第2端子収容室
24…周壁部
25…揺動空間
27…第2端子部
28…固定端子部
29…固定内導体
30…固定誘電体
31…固定外導体
32…支持空間
33…縮径部
35…可動端子部
35P…可動端子部の基端部
35T…可動端子部の先端部
36…可動内導体
37…弾性爪片
38…可動誘電体
39…挿通孔
40…収容凹部
42…可動外導体(外導体)
43…弾性アーム部
44…拡径部
45…突起部
46…基部
47…抜止部
48…境界線
50…連結部材
51…引掛部
52…連結孔
53…保持用孔部
54…取付用孔部
A…コネクタ装置
B…第1回路基板
C…第2回路基板(回路基板)
図1
図2
図3
図4
図5